(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141187
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイオガス発生槽およびバイオガス発電システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20241003BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20241003BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20241003BHJP
【FI】
B09B3/65
C02F11/04 A ZAB
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052693
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB04
4D004CB28
4D004CB31
4D004DA02
4D004DA07
4D059AA07
4D059BA12
4D059BA48
4D059BA56
4D059BE00
(57)【要約】
【課題】槽内の培養液を均質にすることのできるバイオガス発生槽およびそれを利用したバイオガス発電システムを提供する。
【解決手段】本発明のある局面に従うバイオガス発生槽(1)は、有機物を発酵することでバイオガスを生成する。バイオガス発生槽は、長手方向における一方端部および他方端部を有し、有機物を含む培養液を培養する本体槽(10)と、本体槽へ有機物を取入れるために本体槽の一方端部に設けられた有機物取入口(11)と、本体槽内の培養液を排出する排水口(12)と、本体槽内で発生したバイオガスを取り出すバイオガス取出口(13)と、本体槽の両側部から離れた位置で長手方向に延び、有機物取入口から本体槽の他方端部に向かう流路と、本体槽の他方端部から一方端部に向かう流路とに区画された循環流路を形成する整流板(14)と、有機物を含む培養液を本体槽の他方端部に向かう流路に向けて送り出す撹拌機(15)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を発酵することでバイオガスを生成するバイオガス発生槽であって、
長手方向における一方端部および他方端部を有し、前記有機物を含む培養液を培養する本体槽と、
前記本体槽へ有機物を取入れるために前記本体槽の一方端部に設けられた有機物取入口と、
前記本体槽内の培養液を排出する排水口と、
前記本体槽内で発生したバイオガスを取り出すバイオガス取出口と、
前記本体槽の両側部から離れた位置で長手方向に延び、前記有機物取入口から前記本体槽の他方端部に向かう流路と、前記本体槽の他方端部から一方端部に向かう流路とに区画された循環流路を形成する整流板と、
前記有機物を含む培養液を前記本体槽の他方端部に向かう流路に向けて送り出す撹拌機とを備える、バイオガス発生槽。
【請求項2】
前記本体槽の他方端部に向かう流路に設けられた加温部をさらに備える、請求項1に記載のバイオガス発生槽。
【請求項3】
前記整流板は、前記本体槽の一方端部から他方端部に向かう流路の流路幅が下流に向かって広がるように形成される、請求項1に記載のバイオガス発生槽。
【請求項4】
前記排水口は、前記本体槽の一方端部に設けられる、請求項1に記載のバイオガス発生槽。
【請求項5】
バイオガス取出口は、前記本体槽の他方端部に設けられる、請求項1に記載のバイオガス発生槽。
【請求項6】
前記本体槽は、球面状の一方端部および球面状の他方端部を備える円筒形である、請求項1に記載のバイオガス発生槽。
【請求項7】
請求項1に記載のバイオガス発生槽で発生したバイオガスを利用して発電するバイオガス発電機と、
前記バイオガス発生槽から排出される培養液を排水処理する排水処理槽と、
一端が前記本体槽の排水口に接続され、他端が前記排水処理槽の液中に位置するように設けられる排水管とを備え、
前記排水管は、前記排水口からオーバーフローした培養液を排水し、前記本体槽内のガス圧を一定以上に保つように前記排水管の他端の液面からの深さが調整されている、バイオガス発電システム。
【請求項8】
ディスポーザから供給される有機物を貯留する貯留槽をさらに備える、請求項7に記載のバイオガス発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にバイオガス発生槽を備えるバイオガス発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-290241号公報(特許文献1)には、ディスポーザによる生ごみ処理によってできた排水を微生物を利用してバイオ処理する生ごみ処理システムが開示されている。生ごみ処理システムは、撹拌機を備える排水処理槽を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の処理槽は大型であり、たとえば処理槽内の底部や角部に一部の成分が溜まってしまうなど、培養液が均質となるように撹拌することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は槽内の培養液を均質にすることのできるバイオガス発生槽およびそれを利用したバイオガス発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うバイオガス発生槽は、有機物を発酵することでバイオガスを生成する。バイオガス発生槽は、長手方向における一方端部および他方端部を有し、有機物を含む培養液を培養する本体槽と、本体槽へ有機物を取入れるために本体槽の一方端部に設けられた有機物取入口と、本体槽内の培養液を排出する排水口と、本体槽内で発生したバイオガスを取り出すバイオガス取出口と、本体槽の両側部から離れた位置で長手方向に延び、有機物取入口から本体槽の他方端部に向かう流路と、本体槽の他方端部から一方端部に向かう流路とに区画された循環流路を形成する整流板と、有機物を含む培養液を本体槽の他方端部に向かう流路に向けて送り出す撹拌機とを備える。
【0007】
好ましくは、バイオガス発生槽は、本体槽の他方端部に向かう流路に設けられた加温部をさらに備える。
【0008】
好ましくは、整流板は、本体槽の一方端部から他方端部に向かう流路の流路幅が下流に向かって広がるように形成される。
【0009】
好ましくは、排水口は、本体槽の一方端部に設けられる。
【0010】
好ましくは、バイオガス取出口は、本体槽の他方端部に設けられる。
【0011】
好ましくは、本体槽は、球面状の一方端部および球面状の他方端部を備える円筒形である。
【0012】
本発明のある局面に従うバイオガス発電システムは、本実施の一態様に係るバイオガス発生槽で発生したバイオガスを利用して発電するバイオガス発電機と、バイオガス発生槽から排出される培養液を排水処理する排水処理槽と、一端が本体槽の排水口に接続され、他端が排水処理槽の液中に位置するように設けられる排水管とを備える。排水管は、排水口からオーバーフローした培養液を排水し、本体槽内のガス圧を一定以上に保つように排水管の他端の液面からの深さが調整されている。
【0013】
好ましくは、バイオガス発電システムは、ディスポーザから供給される有機物を貯留する貯留槽をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、槽内に整流板を設けて区画された複数の流路を形成し、その幅の狭くなった流路上に撹拌機を設けることで、槽内の培養液を均質にすることのできるバイオガス発生槽およびそれを利用したバイオガス発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバイオガス発電システムの概要を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るバイオガス発生槽の概要を示す図であり、(a)は平面視概要図であり、(b)は正面視概要図を示す。
【
図3】(a)~(c)は、他の実施形態に係るバイオガス発生槽の整流板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
(バイオガス発電システムの概要構成について)
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るバイオガス発電システム100(以下の説明において、単に「システム」ともいう)の概要構成について説明する。なお、バイオガス発生槽1については後述する。
【0018】
本実施形態に係るバイオガス発電システム100は、たとえばディスポーザ3が設けられた集合住宅30に備えられる。システム100は、ディスポーザ3から供給される有機物を貯留する貯留槽4と、貯留槽4に貯留されたディスポーザ排水を固形分(有機物)と液分とに分離する固液分離槽5と、固液分離槽5で分離された有機物を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽1と、バイオガス発生槽1の培養液および固液分離槽5の液分を回収して排水可能に処理する排水処理槽2と、バイオガス発生槽1で発生したバイオガスを利用して発電するバイオガス発電機6とを備える。発電により得られた電気は、たとえば集合住宅30の電力源の一部として利用できる。
【0019】
本実施形態の貯留槽4は、集合住宅30の各戸に設けられたディスポーザ3から供給される野菜かすなどの食品系廃棄物を含むディスポーザ排水、すなわち有機物を貯留する。集合住宅30は、時間帯によって有機物の発生にばらつきが生じ易い。そこで、貯留槽4に一旦貯留することで、時間帯によらないでバイオガス発生槽1へ有機物を供給することができる。貯留された有機物は、有機物供給路40を介して後述する固液分離槽5へ供給される。
【0020】
ディスポーザ排水は、有機物を含む固形分に比して液分が非常に多い。すなわち液分は不要であり、本実施形態のシステム100は、貯留槽4に貯留されたディスポーザ排水をバイオガス発生槽1へ送り込む前に、固液分離槽5で固形分と液分とに分離することが好ましい。分離された固形分は、固形分供給路51を介してバイオガス発生槽1に供給される。分離された液分は、液分排水路52を介して排水処理槽2へ送り出される。これにより、バイオガス発生槽1で利用する有機物を効率よく集めて供給することができる。
【0021】
排水処理槽2は、固液分離槽5で発生した液分およびバイオガス発生槽1から排出された培養液を貯留して排水処理を行う。処理された水は、下水として外部へ排水される。
【0022】
本実施形態のシステム100は、バイオガス発生槽1と排水処理槽2との間に排水管20を備える。本実施形態の排水管20は、一端がバイオガス発生槽1の排水口12に接続され、他端が排水処理槽2の液中に位置するように設けられる。これにより、排水管20は、排水口12からオーバーフローした培養液を排水し、培養液面の高さレベルを略一定に保つことができる。また、排水管20の他端の、排液面からの深さレベル(水圧)を調整することで、バイオガス発生槽1内のガス圧を一定以上に保つことができる。
【0023】
他の実施形態として、排水管20は、中継槽20bを有していてもよい。この場合、排水管20は、一端がバイオガス発生槽1の排水口12に接続され、他端が中継槽20bの液中に位置するように設けられた一側排水管20aと、一端が中継槽20bの下方壁面に設けられた開口部に接続され、他端が排水処理槽2と接続された他側排水管20cとを備える。これにより、排水処理槽2内の排水液面に排水管の他端を挿し込む実施形態と比較して、液面からの差し込み深さ(水圧)を容易に調節することができる。なお、中継槽20bが設けられる場合、固液分離槽5で分離された液分を排水する液分排水路52の他端が中継槽20bの液中に位置するように設けられていてもよい。
【0024】
バイオガス発電機6は、バイオガス取出口13より供給されるバイオガスを燃焼することで発電する。発電により、電気および排ガスの熱(排熱)が生成される。
【0025】
なお、システム100は、バイオガス発生槽1と、バイオガス発電機6と、排水処理槽2とを備えていればよく、その他の構成は必須でない。
【0026】
(バイオガス発生槽について)
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るバイオガス発生槽1について説明する。
図2は、本実施形態に係るバイオガス発生槽1の概要を示す図であり、(a)は平面視概要図であり、(b)は正面視概要図を示す。
【0027】
本実施形態に係るバイオガス発生槽1は、有機物を発酵することでバイオガスを生成する。バイオガス発生槽1は、有機物を含む培養液を培養する本体槽10と、本体槽10へ有機物を取入れるための有機物取入口11と、本体槽10内に循環流路を形成する整流板14と、有機物を含む培養液を本体槽10の他方端部に向かう流路に向けて送り出す撹拌機15とを備える。
【0028】
バイオガス発生槽1は、有機物取入口11を介して供給される有機物を発酵させてバイオガス発電機6で利用するガスを生成するための槽である。バイオガス発生槽1は、典型的には1以上のメタン菌を含む発酵液が貯留されている「メタン発酵槽1」である。メタン菌は、嫌気発酵によりメタンガスを含むバイオガスを生成する。また、活性化しやすい温度帯によって低温性メタン菌(30℃未満)、中温性メタン菌(30~45℃)、高温性メタン菌(45℃を超える温度)に分別される。本実施形態では、中温性メタン菌を使用し、特に40~45℃、好ましくは40~42℃の温度帯で活性化する中温性メタン菌を主に用いるものとして説明する。この温度帯のメタン菌は、それよりも低い温度帯のメタン菌よりもメタン発酵速度が速く、それよりも高い温度帯のメタン菌よりも発酵阻害が起こりにくいという利点がある。
【0029】
本体槽10は、たとえば平面視略楕円形状のレースウェイ型槽であり、長手方向における一方端部および他方端部を有している。なお、図中矢印A1の示す方向を一方側、逆方向を他方側とする。本体槽10の形状は、球面状の一方端部および球面状の他方端部を備える円筒形状であることが好ましい。これにより、角部に固形分が蓄積してしまうことを防止でき、槽内の培養液の成分を均質にすることができる。
【0030】
本体槽10は、典型的には1~9m3の容積を備えており、使用規模に応じて矢印A1の方向に延びる長手方向の長さを調節することができる。これにより、本体槽10の高さを固定しつつ長手方向の長さを調節するだけで、種々の規格に対して容易に対応することができる。
【0031】
図2(b)の矢印A2は、高さ方向を示している。本体槽10は、上方領域H
1にバイオガスを貯留し、液面高さレベルH
0を境界にして、下方領域H
2に培養液が貯留される。すなわち、液面高さレベルH
0を調節することで、ガス貯留量を調節することができる。
【0032】
有機物取入口11は、本体槽10の一方端部に設けられており、本体槽10内に有機物を取入れる。好ましくは、有機物取入口11は液面よりも上方、すなわち上方領域H1内に設けられる。これにより、有機物が槽内に流入する際に槽内の培養液が撹拌されるため、培養液中の成分を均質にすることができる。
【0033】
排水口12は、本体槽10の一方端部に設けられており、本体槽10から培養液の一部(発酵の終了した消化液)を排出する。排水口12は、培養液面高さが所望の高さレベルとなるように設けられる。排水口12は両端が開放されていることが好ましく、培養液はオーバーフローすることにより排出される。
【0034】
排水口12は、上述したように排水管20の一端と接続しており、排水管20の他端は排水処理槽2の液中または中継槽20bに位置している。排水管20の一端および他端は弁等を有さない開放端であり、一端側のガス圧PGと他端側の水圧PWとは等しくなる。すなわち、排水管20の他端側の水圧PWを調節することで、本体槽10内のガス圧PGを制御することができる。これにより、バイオガス発生槽1はガス圧PGが所望の値を超えるまでバイオガス発電機6へ送り込まれないため、所望のガス圧(ガス濃度)を有したバイオガスをバイオガス発電機6に供給することができる。
【0035】
なお、
図1では説明の都合上、排水管20と固形分供給路51とが反対側に位置するように図示されているが、上述のとおり、固形分供給路51の下流端に位置する有機物取入口11と、排水管20の上流端に位置する排水口12とは、同じ側に配置されることが好ましい。
【0036】
バイオガス取出口13は、本体槽10の他方端部に設けられることが好ましい。これにより、一方端側に設けられる場合と比較して、培養液中の発酵も進んでいるため、濃度の高いバイオガスを取出すことができる。また、仮に有機物取入口11および排水口12と同じ一方端側にバイオガス取出口13を設けると、バイオガス発生槽1外の空気が、取出されるバイオガス中に混入してしまう。すなわち本実施の形態のバイオガス取出口13は、他方端部に設けることで、効率よくバイオガスを回収することができる。
【0037】
また、バイオガス取出口13は、上方領域H1に設けられる。これにより、バイオガス発生槽1内のメタン菌が生成したバイオガスは、上方領域H1に貯留され、バイオガス取出口13を介してバイオガス発電機6へ送り出される。
【0038】
整流板14は、本体槽10の両側部17から離れた位置で長手方向に延び、有機物取入口11から本体槽10の他方端部に向かう流路F1と、本体槽10の他方端部から一方端部に向かう流路F2とに区画された循環流路を形成する。本実施形態の整流板14は、レースウェイ型の槽の略中央に配置される。整流板14を設けることで狭い流路幅の流路F1、F2を形成し、この狭い流路に撹拌機15を設けることで本体槽10内の培養液の成分が均質となるよう撹拌することができる。広い流路幅の流路に撹拌機を設けた場合、撹拌機の周囲で培養液がショートサーキットしてしまい、槽内全体を撹拌できないといった不具合が生じるおそれがある。本実施形態は、そのような不具合を防ぐことができる。
【0039】
撹拌機15は、典型的には有機物取入口11近傍に設けられる。これにより、新たに投入された有機物を大きく撹拌し、培養液の成分を均質にすることができる。撹拌機15は、有機物取入口11近傍に少なくとも1つ設けられればよいが、整流板14の形状等に応じて、複数設けることとしてもよい。
【0040】
撹拌機15は、固形分が本体槽10の底面上に堆積しない程度の流速を形成するように回転すればよく、たとえば培養液が1時間で1周、12時間で1周、24時間で1周するような流速を形成することができる。
【0041】
本実施形態のバイオガス発生槽1は、本体槽10の有機物取入口11から最初に到達する流路F1に設けられた加温部16をさらに備えることができる。加温部16は、内部を温水などの熱媒が流れる回路であり、バイオガス発生槽1内の培養液を直接的または間接的に加温する。すなわち、バイオガス発生槽1の内部へ挿通して液分を直接的に加温したり、槽1の外周を取り囲んで間接的に加温するように構成される。本実施形態の加温部16は、流路F1に沿う長手方向に延びるように設けられている。加温部16は、バイオガス発電機6と直接的または熱交換器などを介して間接的に接続されており、バイオガス発電機6で発生した排熱を利用して、加温部16内を流れる熱媒を加温する。これにより、槽内温度低下によるバイオガス発生槽1のガス生成効率の低下を防止することができる。
【0042】
本実施の形態のバイオガス発生槽1は、槽内温度を測定する温度センサをさらに備えていてもよい。これにより、バイオガス発生槽1内の加温が必要な場合にのみ加温部16を稼働できるため、槽内温度を省エネルギーで維持することができる。
【0043】
なお、バイオガス発生槽1は、その下方領域H2にメタン発酵により発生した汚泥を取り除くための汚泥取出口(図示せず)およびポンプを備えていてもよい。これにより、槽内の汚泥量を容易に調節することができる。
【0044】
(変形例について)
次に、
図3を参照して、整流板14の変形例について説明する。整流板14は、典型的には
図2(a)に示すような板状部材であるが、流れのよい循環流路を形成するという観点で種々の形状を採ることができる。
【0045】
図3(a)を参照して、図示した実施形態のバイオガス発生槽1Aは、板状の整流板14Aを本体槽10の略中央部において対角線上に配置した形態である。つまり本実施形態では、本体槽10の一方端部から他方端部に向かう流路F
1および他方端部から一方端部に向かう流路F
2の流路幅が、下流に向かって広がるように形成される。また、撹拌機15Aは、流路F
1,F
2の上流側に一つずつ設けられている。これにより、各流路F
1、F
2に送り込まれる培養液を撹拌機15Aの撹拌により均質にしつつ、スムーズに下流側へ送り込むことができる。
【0046】
図3(b)を参照して、図示した実施形態のバイオガス発生槽1Bは、三角形状の整流板14Bを本体槽10の略中央部に配置した形態である。撹拌機15Bは、有機物取入口11近傍に1つだけ設けられている。本実施形態では、流路F
1の下流に向かって流路幅を広くしてゆき、流路F
2の下流に向かって流路幅を狭くしてゆく。これにより、撹拌後の培養液をスムーズに下流へ送り込むことができるとともに、流速の遅い領域(流路幅の広い、他方端部側の領域)で発酵を促進させることができる。
【0047】
図3(c)を参照して、図示した実施形態のバイオガス発生槽1Cは、ジグザグ形状の整流板14Cを本体槽10内に配置した形態である。本実施形態では、複数の流路F
1および流路F
2を蛇行させて、全長が長い環状流路を形成することで、発酵を促進させている。撹拌機15Cは、蛇行により培養液が滞留してしまうことを防ぐため、図に示すように流路が切り替わる境界位置に複数個配置されることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態に係るシステム100は、集合住宅30に用いられることを例に挙げて説明したが、これに限定されない。したがって、システム100には有機物が供給されればよく、たとえば商業施設、宿泊施設であってもよい。この場合であっても、施設内で発生した有機物を利用した発電を行い、発電された電気を施設内の設備に利用することができ、エコフレンドリーな建物を提供することができる。
【0049】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 バイオガス発生槽、2 排水処理槽、3 ディスポーザ、4 貯留槽、5 固液分離槽、6 バイオガス発電装置、10 本体槽、11 有機物取入口、12 排水口、13 バイオガス取出口、14 整流板、15 撹拌機、16 加温部、20 排水管、100 バイオガス発電システム。