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特開2024-141191結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法及び結束対象材の結束方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141191
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法及び結束対象材の結束方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/24 20060101AFI20241003BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20241003BHJP
   B65B 13/22 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B21C47/24 D
B21C51/00 C
B65B13/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052698
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大翔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅司
(72)【発明者】
【氏名】長澤 直記
(72)【発明者】
【氏名】仲田 恵太郎
【テーマコード(参考)】
3E052
4E026
【Fターム(参考)】
3E052AA42
3E052BA01
3E052KA20
3E052LA08
4E026AA03
4E026AA04
4E026BA04
4E026BA09
4E026DB07
(57)【要約】
【課題】結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重を正確に測定することができる測定方法を提供する。
【解決手段】結束バンドxによる結束対象材Aの締め付け荷重を測定する方法であって、荷重測定器具1を、結束対象材Aと結束バンドxの間に配置した状態で、結束バンドxを締め付けて結束対象材Aを結束し、この結束状態において、荷重測定器具1に作用する結束バンドxのバンド面垂直方向での荷重Gを測定する。バンド面垂直方向での荷重Gを正確に測定できるので、この測定結果に基づき、結束バンドxによる結束対象材Aの最適な締め付け張力を求めることができる。また、この測定方法を利用することで、結束対象材Aを荷崩れやバンド締結部の破断などを生じない適正な締め付け張力でバンド結束することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束対象材(A)を結束バンド(x)で結束した際に、結束バンド(x)による結束対象材(A)の締め付け荷重を測定する方法であって、
1つ以上の荷重計(2)を備えた荷重測定器具(1)を、結束対象材(A)と結束バンド(x)の間に配置した状態で、結束バンド(x)を締め付けて結束対象材(A)を結束し、この結束状態において、荷重測定器具(1)に作用する結束バンド(x)のバンド面垂直方向での荷重Gを測定することを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【請求項2】
荷重測定器具(1)が、複数の荷重計(2)と、該複数の荷重計(2)の荷重センサ部(3)にまたがるように配置され、結束バンド(x)からの荷重を受けて各荷重計(2)の荷重センサ部(3)に伝える荷重受け板(4)を備え、
結束バンド(x)が、少なくとも2つの荷重計(2)の荷重センサ部(3)間の位置で荷重受け板(4)に当接するように、荷重測定器具(1)を結束対象材(A)と結束バンド(x)の間に配置し、荷重測定器具(1)による荷重Gの測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【請求項3】
複数の荷重計(2)で計測される荷重の最大値と最小値の偏差が閾値を超える場合に、該荷重の偏差が閾値以下となるように、結束バンド(x)の結束位置又は/及び荷重測定器具(1)の位置を調整することを特徴とする請求項2に記載の結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【請求項4】
結束対象材(A)が金属帯コイルであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【請求項5】
結束対象材(A)を結束バンド(x)で結束した際に、結束バンド(x)による結束対象材(A)の締め付け荷重を測定するための測定器具であって、
複数の荷重計(2)と、該複数の荷重計(2)を支持する支持体(5)と、該支持体(5)で支持された複数の荷重計(2)の荷重センサ部(3)にまたがるように配置され、結束バンド(x)からの荷重を受けて各荷重計(2)の荷重センサ部(3)に伝える荷重受け板(4)を備え、
荷重受け板(4)は支持体(5)に対して上下スライド自在に設けられていることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定器具。
【請求項6】
支持体(5)は、底部に結束対象材(A)に吸着するための磁石(6)を備えることを特徴とする請求項5に記載の結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定器具。
【請求項7】
請求項1に記載の測定方法により、特定の性状が異なる複数の結束対象材(A)について、結束バンド(x)で結束した際の荷重測定器具(1)に作用する結束バンド(x)のバンド面垂直方向での荷重Gを測定し、各結束対象材(A)を適正に結束できる荷重Gaを求め、
当該荷重Gaが得られる結束バンド(x)の締め付け張力に基づき、特定の性状が異なる結束対象材(A)毎に結束バンド(x)の締め付け張力の適正値を設定しておき、
結束バンド(x)で結束対象材(A)を結束する際には、当該結束対象材(A)の特定の性状に応じて、前記適正値の締め付け張力で結束対象材(A)を締め付けることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の結束方法。
【請求項8】
特定の性状が異なる複数の結束対象材(A)を、その性状の違いに応じて複数のグループ(Ag)に分け、該グループ(Ag)毎に結束対象材(A)を適正に結束できる荷重Gaを求め、
当該荷重Gaが得られる結束バンド(x)の締め付け張力に基づき、グループ(Ag)毎に結束バンド(x)の締め付け張力の適正値を設定しておき、
結束バンド(x)で結束対象材(A)を結束する際には、当該結束対象材(A)が属するグループ(Ag)に応じて、前記適正値の締め付け張力で結束対象材(A)を締め付けることを特徴とする請求項7に記載の結束バンドによる結束対象材の結束方法。
【請求項9】
結束対象材(A)が金属帯コイルであり、特定の性状が異なる結束対象材(A)がコイル径が異なる金属帯コイルであることを特徴とする請求項7又は8に記載の結束バンドによる結束対象材の結束方法。
【請求項10】
請求項9に記載の結束方法により鋼帯コイルをバンド結束する鋼帯コイルの製造方法であって、
熱間圧延、酸洗、冷間圧延、調質圧延、連続焼鈍、連続溶融めっき、連続電気めっきのいずれかの工程を経た鋼帯をコイル形状に巻き取った後、その鋼帯コイルをバンド結束することを特徴とする鋼帯コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重を測定する測定方法及び測定器具、並びに、その測定方法を利用した結束バンドによる結束対象材の結束方法などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
結束バンドによる結束対象材の結束は、結束した形状を維持して結束対象材を効率的に搬送することなどを目的として行われる。結束対象材としては、複数の束状の物体、複数の積層された物体、ロール状に巻かれた物体、開閉部を有する物体などがある。例えば、ロール状に巻かれた鋼帯コイルについては、熱間圧延や冷間圧延が施された鋼帯コイルが所定の巻取形状にてバンド結束された上で、別の工程や顧客の元に搬送される。しかし、適正なバンド張力が不明であるが故に結束バンドによる結束が適正に行われていない場合、搬送途中で結束バンドに緩みが生じて荷崩れが生じる不具合や、結束バンドあるいはバンド締結部が破断する不具合を生じる。
【0003】
例えば、バンド張力が強すぎる場合には、結束バンドやバンド締結部に大きな荷重が作用し、搬送中にこれらの箇所で破断に至る場合がある。また、バンドを溶接により締結する場合は、溶接時のバンド張力が大きすぎると溶接部のバンド間に隙間が生じてスパークが発生し、溶接不良による溶接破断に至る場合がある。一方、バンド張力が緩すぎる場合は、荷崩れが生じる不具合や、荷崩れが生じることによってバンド締結部に衝撃力や剥離力が生じ、バンド締結部が破断する不具合が生じる。
特許文献1には、結束バンドの結束状態を制御する方法として、バンドの先端部を押さえながらバンドを引き締める装置を用いる方法が開示されており、この方法によると均等なバンド拘束状態が実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-222047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、結束バンドが結束対象材を締め付ける力、すなわちバンド面の垂直方向に作用する荷重は、結束バンドの張力だけでは決まらず、結束対象材の形状(例えば、鋼帯コイルのコイル径)や結束対象材と結束バンド間に作用する摩擦力などの性状にも強く依存する。その結果、結束対象材の形状や摩擦係数が変化するたびに最適なバンド張力は変化する。このため、結束バンドの緩み具合は、結束バンドの張力だけでは判定することが難しく、特許文献1に記載の方法では、上記の緩みや破断がある頻度で発生するのを防ぐことができない。
【0006】
また、特許文献1に記載の方法は、最適なバンド結束位置を示していない。バンド結束位置が適切でない場合、バンド結束後に結束バンドの位置ずれが生じて、搬送途中で緩みが生じる場合がある。このような現象は、結束対象材の外径が一定でない場合などに生じやすい。つまり、バンド結束状態でバンド面方向(バンド面水平方向)の荷重が残存している場合、結束バンドは摩擦力でその位置を維持している状態となっている。このような状態では、結束バンドはわずかな外的荷重の付加で容易にすべり、緩みが発生する。このような現象を防止する観点から、一般には、より大きなバンド張力で結束する対策が採られるが、このような対策を講じても位置ずれによる緩みは十分には防止できず、逆にバンド張力の増加に起因した結束バンドの破断頻度を高めることになる。このような問題を抜本的に解決するためには、結束バンドをバンド面水平方向に作用する荷重が軽減される適正な位置で結束することが重要である。しかしながら、結束バンドの最適な結束位置を把握する方法は特許文献1には開示されておらず、特許文献1の方法では結束バンドの位置ずれによる緩みを解消することはできない。
【0007】
上述したような結束対象材の性状(形状や摩擦係数など)に起因したバンド面垂直方向に作用する荷重のばらつきを低減し、最適なバンド張力で結束対象材を結束するには、バンド面垂直方向に作用する荷重を直接測定することが有効であると考えられる。しかし、従来では、そのような測定ができる方法や装置は知られていない。
したがって本発明の目的は、結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重(バンド面垂直方向に作用する荷重)を正確に測定することができる測定方法及び測定器具を提供することにある。また、本発明の他の目的は、結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重をより正確に測定することができるとともに、最適なバンド結束位置を把握することができる測定方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記のような測定方法を利用し、結束対象材を適正な締め付け張力でバンド結束することができる結束方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、荷重測定器具を結束対象材と結束バンド間に配置した状態で、結束バンドを締め付けて結束対象材を結束し、この結束状態で、荷重測定器具に作用する締め付け荷重(結束バンドのバンド面垂直方向での荷重)を測定するようにしたものである。また、この測定方法の好ましい形態では、締め付け荷重をより正確に測定するとともに、最適なバンド結束位置を把握できるようにするために、複数の荷重計を備えた荷重測定器具を用い、その複数の荷重計で計測される荷重の最大値と最小値の偏差が閾値を超える場合に、その偏差が閾値以下となるように、結束バンドの結束位置などを調整するようにしたものである。
また、上記測定方法を用いる本発明の結束方法は、特定の性状(形状や摩擦係数など)が異なる複数の結束対象材について、上記測定方法を利用して結束バンドの適正な締め付け荷重を求め、その締め付け荷重が得られる結束バンドの締め付け張力に基づき、特定の性状が異なる結束対象材毎に結束バンドの締め付け張力の適正値を設定しておき、個々の結束対象材を結束バンドで結束する際には、当該結束対象材の特定の性状に応じて、前記設定された締め付け張力の適正値で結束対象材を締め付けるようにしたものである。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]結束対象材(A)を結束バンド(x)で結束した際に、結束バンド(x)による結束対象材(A)の締め付け荷重を測定する方法であって、
1つ以上の荷重計(2)を備えた荷重測定器具(1)を、結束対象材(A)と結束バンド(x)の間に配置した状態で、結束バンド(x)を締め付けて結束対象材(A)を結束し、この結束状態において、荷重測定器具(1)に作用する結束バンド(x)のバンド面垂直方向での荷重Gを測定することを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【0010】
[2]上記[1]の測定方法において、荷重測定器具(1)が、複数の荷重計(2)と、該複数の荷重計(2)の荷重センサ部(3)にまたがるように配置され、結束バンド(x)からの荷重を受けて各荷重計(2)の荷重センサ部(3)に伝える荷重受け板(4)を備え、
結束バンド(x)が、少なくとも2つの荷重計(2)の荷重センサ部(3)間の位置で荷重受け板(4)に当接するように、荷重測定器具(1)を結束対象材(A)と結束バンド(x)の間に配置し、荷重測定器具(1)による荷重Gの測定を行うことを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
[3]上記[2]の測定方法において、複数の荷重計(2)で計測される荷重の最大値と最小値の偏差が閾値を超える場合に、該荷重の偏差が閾値以下となるように、結束バンド(x)の結束位置又は/及び荷重測定器具(1)の位置を調整することを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの測定方法において、結束対象材(A)が金属帯コイルであることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定方法。
【0011】
[5]結束対象材(A)を結束バンド(x)で結束した際に、結束バンド(x)による結束対象材(A)の締め付け荷重を測定するための測定器具であって、
複数の荷重計(2)と、該複数の荷重計(2)を支持する支持体(5)と、該支持体(5)で支持された複数の荷重計(2)の荷重センサ部(3)にまたがるように配置され、結束バンド(x)からの荷重を受けて各荷重計(2)の荷重センサ部(3)に伝える荷重受け板(4)を備え、
荷重受け板(4)は支持体(5)に対して上下スライド自在に設けられていることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定器具。
[6]上記[5]の測定器具において、支持体(5)は、底部に結束対象材(A)に吸着するための磁石(6)を備えることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重の測定器具。
【0012】
[7]上記[1]~[3]のいずれかの測定方法により、特定の性状が異なる複数の結束対象材(A)について、結束バンド(x)で結束した際の荷重測定器具(1)に作用する結束バンド(x)のバンド面垂直方向での荷重Gを測定し、各結束対象材(A)を適正に結束できる荷重Gaを求め、
当該荷重Gaが得られる結束バンド(x)の締め付け張力に基づき、特定の性状が異なる結束対象材(A)毎に結束バンド(x)の締め付け張力の適正値を設定しておき、
結束バンド(x)で結束対象材(A)を結束する際には、当該結束対象材(A)の特定の性状に応じて、前記適正値の締め付け張力で結束対象材(A)を締め付けることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の結束方法。
【0013】
[8]上記[7]の結束方法において、特定の性状が異なる複数の結束対象材(A)を、その性状の違いに応じて複数のグループ(Ag)に分け、該グループ(Ag)毎に結束対象材(A)を適正に結束できる荷重Gaを求め、
当該荷重Gaが得られる結束バンド(x)の締め付け張力に基づき、グループ(Ag)毎に結束バンド(x)の締め付け張力の適正値を設定しておき、
結束バンド(x)で結束対象材(A)を結束する際には、当該結束対象材(A)が属するグループ(Ag)に応じて、前記適正値の締め付け張力で結束対象材(A)を締め付けることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の結束方法。
[9]上記[7]又は[8]の結束方法において、結束対象材(A)が金属帯コイルであり、特定の性状が異なる結束対象材(A)がコイル径が異なる金属帯コイルであることを特徴とする結束バンドによる結束対象材の結束方法。
[10]上記[9]の結束方法により鋼帯コイルをバンド結束する鋼帯コイルの製造方法であって、
熱間圧延、酸洗、冷間圧延、調質圧延、連続焼鈍、連続溶融めっき、連続電気めっきのいずれかの工程を経た鋼帯をコイル形状に巻き取った後、その鋼帯コイルをバンド結束することを特徴とする鋼帯コイルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定方法及び測定器具によれば、結束バンドによる結束対象材の締め付け荷重(結束バンドの締め付けによりバンド面垂直方向に作用する荷重)を正確に測定することができ、この測定結果に基づき、結束バンドによる結束対象材の最適な締め付け張力を求めることができる。また、本発明の測定方法において、複数の荷重計を備えた荷重測定器具を用い、その複数の荷重計で計測される荷重の最大値と最小値の偏差が閾値を超える場合に、その荷重の偏差が閾値以下となるように、結束バンドの結束位置又は/及び荷重測定器具の位置を調整することにより、締め付け荷重をより正確に測定できるとともに、最適なバンド結束位置を把握することが可能となる、などの効果が得られる。
また、本発明の結束方法によれば、上記のような測定方法を利用することで、結束対象材を荷崩れやバンド締結部の破断などを生じない適正な締め付け張力でバンド結束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明法の一実施形態を示すもので、荷重測定器具を結束対象材(鋼帯コイル)と結束バンド間に配置し、結束対象材の締め付け荷重を測定している状況を模式的に示す説明図(鋼帯コイルを側方から見た図面)
図2】本発明法で使用する荷重測定器具の一実施形態を示す正面図
図3図2の荷重測定器具を、荷重受け板の一部を切り欠いた状態で示す部分切欠き正面図
図4図2の荷重測定器具を、荷重受け板の一部を切り欠いた状態で示す部分切欠き平面図
図5図2の荷重測定器具を構成する荷重受け板の正面図
図6図2の荷重測定器具を構成する荷重受け板の側面図
図7図2の荷重測定器具の配置状態を模式的に示す説明図(荷重測定器具を真上から見た図面)
図8】本発明法で使用する荷重測定器具の他の実施形態と、その荷重測定器具の配置状態を模式的に示す説明図(荷重測定器具を真上から見た図面)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の測定方法は、結束対象材Aを結束バンドxで結束した際に、結束バンドxによる結束対象材Aの締め付け荷重を測定する方法である。本発明の結束対象材Aの種類に制限はないが、本発明は、特に鋼帯コイルなどの金属帯コイルを結束対象材とする場合に有用であるので、以下、主に結束対象材Aが鋼帯コイルである実施形態について説明する。
図1は、結束対象材Aである鋼帯コイルの外周を結束バンドxで結束する場合における、本発明の一実施形態を模式的に示す説明図(鋼帯コイルを側方から見た図面)である。この図1は、荷重測定器具1を結束対象材Aである鋼帯コイルと結束バンドx間に配置した状態でバンド結束し、結束対象材Aの締め付け荷重を測定している状況を示している。
鋼帯コイルの外周を結束機でバンド結束する場合、通常、鋼帯コイル幅に応じて1条または2、3条の結束条数でバンド結束がなされる。通常、結束バンドは鋼製であり、鋼帯コイルを結束した状態で両端部が溶接などで締結される。
【0017】
本発明では、荷重計2を備えた荷重測定器具1を、結束対象材Aと結束バンドxの間に配置した状態で、結束バンドxを締め付けて結束対象材Aを結束し、この結束状態において、荷重測定器具1に作用する結束バンドxのバンド面垂直方向での荷重G(以下、「垂直荷重G」という)を測定する。なお、バンド面垂直方向とは、結束バンドxのバンド面に対して垂直方向という意味である。
この測定方法によれば、結束バンドxによる結束対象材Aの締め付け荷重(垂直荷重G)を正確に測定することができ、この測定結果に基づき、結束バンドxによる結束対象材Aの最適な締め付け張力(以下、「バンド張力」という)を求めることができる。
【0018】
結束対象材Aが鋼帯コイルであって、その外周をバンド結束する場合、本発明の測定方法には、次のような利点がある。鋼帯は種々のサイズ(板厚・板幅)を有していることから、鋼帯サイズによって長さに違いがあり、このため、巻き取られたコイルの直径はコイル毎に異なる。その結果、結束対象材である鋼帯コイルと結束バンド間の拘束力(バンド面垂直方向の荷重)はコイル径によってばらつきがあり、拘束力が低位であれば緩みが生じやすい。一方で、拘束力を強くすると溶接時に隙間が生じ、バンド溶接不良につながり、破断が生じやすい。本発明によりバンド面垂直方向の荷重を直接的に測定することで、コイル径に応じた最適なバンド張力を求めることができるので、バンド張力の適正な制御が可能になり、上記のようなトラブルを大幅に軽減できる。以上の点は鋼帯コイル以外の金属帯コイルも同様である。したがって、本発明は結束対象材Aが鋼帯コイルなどの金属帯コイルである場合に特に有用である。
【0019】
荷重測定器具1は、荷重計2を1つ以上備えればよいが、締め付け荷重をより正確に測定するために、複数の荷重計2を備えることが好ましい。すなわち、荷重測定器具1が荷重計2を1つだけ備える場合、荷重計2の荷重センサ部3を結束バンドxの真下に位置させないと、荷重計2(荷重センサ部3)に作用する力が垂直にならないので、荷重計測値は小さくなり、垂直荷重Gを精度よく測定できない。しかし、荷重計2の荷重センサ部3が結束バンドxの真下に位置するように、荷重測定器具1を設置することは簡単ではない。これに対して、荷重計2を2つ以上設置すれば、垂直荷重を複数の荷重計2に分散して出力できるので、各荷重計2の計測値の合計値を算出することで、垂直荷重G(合計荷重)を精度よく測定することができる。換言すると、荷重測定器具1の配置位置に起因した荷重測定誤差を軽減することが可能となる。なお、荷重計2を2つ以上設置する場合、少なくとも2つの荷重計2の荷重センサ部3間の位置に結束バンドxを通す必要がある。
【0020】
図2図6は、そのような荷重測定器具1の一実施形態を示すものであり、図2は正面図、図3は、荷重受け板の一部を切り欠いた状態で示す部分切欠き正面図、図4は、荷重受け板の一部を切り欠いた状態で示す部分切欠き平面図である。また、図5は、図2の荷重測定器具を構成する荷重受け板の正面図、図6は、同じく荷重受け板の側面図である。
この荷重測定器具1は、2個(左右一対)の荷重計2と、これら荷重計2を支持する支持体5と、結束バンドxからの荷重を受けて各荷重計2の荷重センサ部3に伝えるための荷重受け板4を備えている。
【0021】
各荷重計2は、荷重センサ部3を備える本体部7と、この本体部7の側部に付設された表示部8などで構成されている。荷重センサ部3には、ロードセル式、バネ式、電磁式、光電子式などの荷重センサを用いることができる。この実施形態では、バネ式の荷重センサを用いている。なお、図4では、表示部8の目盛は図示を省略してある。本実施形態のように複数の荷重計2を備えた荷重測定器具1では、複数の荷重計2による計測値の総和が測定荷重(垂直荷重G)となる。
支持体5は、両端寄りの上面に荷重計2の本体部7を嵌め込んで保持するための取付部9(凸状部90で囲まれるスペース)を有している。各荷重計2は、その本体部7が取付部9に嵌め込まれることで支持体5に支持され、この支持状態で表示部8が支持体5の端部から外方に延出(突出)している。また、支持体5の底部には、荷重測定器具1を結束対象材Aである鋼帯コイルに配置する際に、鋼帯コイルに吸着するための磁石6が嵌め込まれている。このような吸着手段を備えることにより作業の利便性が高まる。
【0022】
荷重受け板4は、結束バンドxが当接する部材であり、支持体5で支持された複数の荷重計2の荷重センサ部3にまたがるように配置(複数の荷重計2の荷重センサ部3の上に掛け渡されるように配置)されている。この荷重受け板4は、結束バンドxからの荷重を受けて各荷重計2の荷重センサ部3に伝える。
本実施形態の荷重受け板4は、上板部40と両側板部41からなる断面門型の板材であり、その断面門型の内側に支持体5の上部が嵌め込まれるように、支持体5に対して上下スライド自在に設けられている。荷重受け板4の両側板部41には、荷重受け板両端部寄りの位置に縦長のガイド孔10が貫設されている。このガイド孔10にはボルト11が挿通されている。このボルト11は、その先端が支持体5の側部に設けられたネジ孔50に螺挿されることで、支持体5の側部に固定されている。荷重受け板4は、その縦長のガイド孔10内でボルト11が案内されつつ、支持体5に対して上下方向スライド可能(自在)である。
【0023】
この実施形態のように、複数の荷重計2を備えた荷重測定器具1を用いる場合、結束バンドxが、少なくとも2つの荷重計2の荷重センサ部3間の位置(以下、説明の便宜上「2つの荷重計2の荷重センサ部3間の位置」のことを『2つの荷重計2間の位置』という)で荷重受け板4に当接するように、荷重測定器具1を結束対象材A(鋼帯コイル)と結束バンドxの間に配置する。すなわち、荷重測定器具1を真上から見て、少なくとも2つの荷重計2間の位置を結束バンドxが通るように、荷重測定器具1を配置する。したがって、例えば、荷重測定器具1が2つの荷重計2を備える場合には、その2つの荷重計2間の位置で結束バンドxが荷重受け板4に当接するように、荷重測定器具1を配置する。また、荷重測定器具1が3つ以上の荷重計2を備える場合には、少なくとも、任意のいずれか2つの荷重計2間の位置で結束バンドxが荷重受け板4に当接するように、荷重測定器具1を配置する。そして、以上のように配置された荷重測定器具1による垂直荷重Gの測定を行うが、複数の荷重計2の計測値の総和を算出することで、荷重測定器具1の配置位置に起因した荷重測定誤差を軽減し、より高精度に垂直荷重Gの測定を行うことができる。
【0024】
図7は、図2の荷重測定器具1の配置状態を模式的に示す説明図(荷重測定器具1を真上から見た図面)である。上述したように、結束バンドxが2つの荷重計2間の位置で荷重受け板4に当接するように、荷重測定器具1を結束対象材A(鋼帯コイル)と結束バンドxの間に配置している。
また、図8は、本発明法で使用する荷重測定器具1の他の実施形態と、その荷重測定器具1の結束バンドxに対する配置状態を模式的に示す説明図(荷重測定器具1を真上から見た図面)である。このうち図8(ア)は、3つの荷重計2を備えた荷重測定器具1を用いた場合を示している。この例では、器具両端側の2つの荷重計2a,2b間の位置で結束バンドxが荷重受け板4に当接するとともに、結束バンドxの直下に器具中央側の荷重計2c(荷重センサ部3)が位置するように荷重測定器具1が配置されている。ただし、例えば、2つの荷重計2a,2c間の位置で結束バンドxが荷重受け板4に当接するように荷重測定器具1が配置されてもよい。一方、図8(イ)は、1つの荷重計2のみを備えた荷重測定器具1を用いた場合であり、結束バンドxの直下に荷重計2(荷重センサ部3)が位置するように荷重測定器具1が配置されている。
【0025】
ここで、図8(ア)のように3つ以上の荷重計2を備えた荷重測定器具1を用いた場合、2つの荷重計2a,2b間の位置で結束バンドxが荷重受け板4に当接するようにすることで、荷重測定器具1の配置位置に起因した荷重測定誤差を軽減することができるが、さらに、結束バンドxの真下に位置する荷重計2cで計測される荷重と荷重計2a又は/及び荷重計2bで計測される荷重の荷重差を検出することにより、結束バンドxの結束方向(結束バンド周方向)における荷重測定器具1の配置位置が適正かどうかを判断することができ、結束バンドxの結束方向における荷重測定器具1の配置位置を適正化できる利点がある。例えば、結束対象材のバンド結束方向での断面が円形でない場合には、荷重測定器具1にかかる垂直荷重がバンド結束方向の各位置で大きく異なる場合があり、そのような場合には荷重測定誤差が生じやすくなる。したがって、例えば、結束バンドxの真下に位置する荷重計2cで計測される荷重と荷重計2a又は/及び荷重計2bで計測される荷重の荷重差が閾値以下となるような、バンド結束方向における荷重測定器具1の配置位置を選択し、荷重測定器具1を配置することにより、荷重測定誤差を軽減することができる。この場合、荷重計2cで計測される荷重と荷重計2a又は/及び荷重計2bで計測される荷重の荷重差の閾値としては、例えば、荷重計2cと荷重計2a又は/及び荷重計2bで計測される合計荷重の30%程度とすることが望ましい。そして、計測される荷重差がその閾値以下となるように、バンド結束方向における荷重測定器具1の配置位置を調整することが望ましい。
【0026】
また、上記のように複数の荷重計2を備えた荷重測定器具1を用い、結束バンドxが、少なくとも2つの荷重計2間の位置で荷重受け板4に当接するように、荷重測定器具1を結束対象材Aと結束バンドxの間に配置する場合、少なくとも2つの荷重計2間で計測荷重に大きな偏差が生じると、垂直荷重Gの測定精度が低下しやすい。したがって、そのような偏差が低減すると、垂直荷重Gの測定精度が向上し、バンド張力をより適切に設定することが可能となる。また、結束バンドxの結束位置(巻き位置)にずれが生じ、結束対象材Aを正しい位置で結束できていない場合、搬送時に結束バンドxの位置ずれが生じやすく、バンドのすべりによる緩みによって荷崩れを生じやすい。そして、そのようなバンド結束位置にずれが生じていると、荷重計2間での計測荷重に大きな偏差が生じやすい。したがって、結束バンドxは、特にその両側に位置する荷重計2間での計測荷重の偏差を極力低減した結束位置で結束対象材Aを結束する必要があり、その偏差が小さくなるように結束バンドxの結束位置を調整することが極めて重要である。また、荷重測定器具1の位置(結束バンドxに対する荷重測定器具1の位置)が適正でないために、荷重計2間での計測荷重に大きな偏差が生じる場合もあり、この場合、荷重測定器具1の位置を調整することで、垂直荷重Gをより高い精度で測定することができる。
【0027】
そこで、本発明では、複数の荷重計2でそれぞれ計測される荷重のうちの最大値と最小値の偏差が閾値を超える場合に、その荷重の偏差が閾値以下となるように、結束バンドxの結束位置又は/及び荷重測定器具1の位置を調整(変更)することが好ましい。ただし、荷重測定器具1の位置の調整により、垂直荷重Gをより高い精度で測定することができるようにしても、バンド結束位置が適切でない場合は、バンド水平方向の荷重は残存することになるので、バンドのすべりによる緩みを十分に解消することはできない。したがって、荷重計2間の計測荷重の偏差が所定の閾値を超える場合は、特に結束バンドxの結束位置を調整して計測荷重の偏差が閾値以下となるようにすることが好ましい。
【0028】
閾値の設け方は任意であるが、鋼帯コイル外周をバンド結束する際に、図7図8(ア)に示すように2つ以上の荷重計2を備えた荷重測定器具1を用いる場合、例えば、2つの荷重計2で測定される垂直荷重(2つの荷重計2による測定荷重の合計)の30%を閾値とし、2つの荷重計2の測定荷重の偏差がこの閾値を超えた場合、バンド結束位置が不適と判断し、その偏差が閾値以下となるように、結束バンドxの結束位置を調整(変更)する。一般に、2つの荷重計2の測定荷重の偏差が、垂直荷重(2つの荷重計2による測定荷重の合計)の30%を超えると、上述したように、荷重測定器具の位置が適正でないために垂直荷重の測定誤差が大きくなる。また、その位置で結束バンドを結束した場合には水平方向の荷重が残存していることにより、バンドのすべりによる緩みが発生しやすくなる。一般に、閾値は、垂直荷重(2つの荷重計2による測定荷重の合計)の10~50%程度の範囲で設定するのが好ましい。
【0029】
次に、上述した本発明の測定方法を利用した結束対象材の結束方法について説明する。
上述した本発明の測定方法で結束バンドxによる結束対象材Aの締め付け荷重(垂直荷重G)を測定するには、3分程度の時間を要する。そのため、量産ラインでは、全ての結束対象材Aについて締め付け荷重の測定を実施することは難しい場合がある。例えば、鋼帯コイルの製造工程では、1コイル当たり3分未満の時間で製造される場合がある。また、本発明の測定方法で締め付け荷重を測定した結束対象材Aについては、結束部分を開放して荷重測定器具1を取り外し、測定された締め付け荷重から適正なバンド張力を求め、そのバンド張力・バンド結束位置にて結束しなおす必要がある。量産ラインで、全ての結束対象材Aについて締め付け荷重の測定とこれに基づくバンド再結束を行うことになると、膨大な工数増加につながる。
【0030】
そこで、結束対象材Aの特定の性状(例えば、形状、摩擦係数などの1つ以上)の違いによって、結束対象材Aを適正に結束できるバンド張力が変化する点に着目し、量産ラインで結束作業を連続的に行う場合は、以下のような結束方法を採ることが好ましい。
まず、事前のバンド張力設定のために、上述した本発明の測定方法により、特定の性状(適正な垂直荷重Gが変化する要因となる性状)が異なる複数の結束対象材Aについて垂直荷重Gを測定し、結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaを求める。ここで、結束対象材Aを適正に結束できるとは、バンドの緩み、バンド自体やバンド締結部の破断などを生じることなく適正な結束状態を維持できることである。通常は、このような適正な結束状態を維持できるかどうかの試験を複数回実施し、結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaを求める。本発明法では、実際にバンド結束した状態で垂直荷重Gが測定されるので、垂直荷重Gが測定されれば、必然的にその垂直荷重Gが得られるバンド張力も求まることになる。したがって、上述した結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaが得られれば、この垂直荷重Gaが得られるバンド張力は求まるので、その適正な垂直荷重Gaが得られるバンド張力に基づき、「特定の性状が異なる結束対象材A」毎に、バンド張力の適正値(適正範囲の場合を含む。以下同様)を設定しておく。
【0031】
そして、結束バンドxで個々の結束対象材Aを結束する際には、当該結束対象材Aの特定の性状に応じて、前記適正値のバンド張力で結束対象材Aを結束する。これにより、個々の結束対象材Aを結束するに際して、いちいち締め付け荷重の測定を行うことなく、当該結束対象材Aの特定の性状に応じて、適正なバンド張力でバンド結束することができる。
なお、「特定の性状が異なる結束対象材A」毎に結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaを求めるに当たっては、特定の性状(例えば鋼帯コイルのコイル径)と垂直荷重Gとの関係をプロットし、回帰分析により算出することもできる。
【0032】
また、上述した結束バンドxの適正なバンド張力は、「特定の性状(適正な垂直荷重Gが変化する要因となる性状)が異なる結束対象材群」毎に設定しておいてもよい。この場合には、特定の性状が異なる複数の結束対象材Aを、その性状の違いに応じて複数のグループAgに分け、これらグループAg毎に、上記と同様に本発明の測定方法により、結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaを求める。そして、この適正な垂直荷重Gaが得られるバンド張力に基づき、グループAg毎にバンド張力の適正値(適正範囲の場合を含む。以下同様)を設定しておく。
そして、結束バンドxで個々の結束対象材Aを結束する際には、当該結束対象材Aが属するグループAgに応じて、前記適正値のバンド張力で結束対象材Aを結束する。これにより、個々の結束対象材Aを結束するに際して、いちいち締め付け荷重の測定を行うことなく、当該結束対象材Aの特定の性状に応じて、適正なバンド張力でバンド結束することができる。
【0033】
具体例を挙げると、結束対象材Aが鋼帯コイルの場合、例えば、表1に示すようにコイル径の大きさに応じて複数のグループに分け、各グループ毎に適正な垂直荷重Gaを求め、この垂直荷重Gaが得られるバンド張力を設定しておく。そして、この設定条件にしたがい、例えば、コイル径1350mmの鋼帯コイルはバンド張力1450kgfで、コイル径1500mmの鋼帯コイルはバンド張力15200kgfで、それぞれバンド結束する。
【表1】
なお、上述した結束対象材Aの「特定の性状」、すなわち適正な垂直荷重Gaが変化する要因となる性状とは、形状(例えば鋼帯コイルのコイル径)、摩擦係数(表面処理の有無や種類、表面粗さに基づく摩擦係数)などの1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0034】
なお、グループAg毎に結束対象材Aを適正に結束できる垂直荷重Gaを求めるに当たっては、特定の性状(例えば鋼帯コイルのコイル径)と垂直荷重Gとの関係をプロットし、回帰分析により算出することもできる。
本発明の測定方法及び結束方法を適用する結束対象材Aとしては、金属帯コイルのほかに、例えば、積層した金属シート、パイプや棒鋼の束、線材コイルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、上述したように、本発明は、結束対象材Aが鋼帯コイルなどの金属帯コイルである場合に特に有用であり、特に鋼帯コイルの場合には、膨大なバンド結束工数の削減のメリットが享受できる。結束対象材Aが金属帯コイルの場合に「適正な垂直荷重Gが変化する要因となる性状」は主にコイル径であり、したがって、特定の性状が異なる結束対象材(A)はコイル径が異なる金属帯コイルとするのが適当である。
【0035】
結束対象材Aが鋼帯コイルである場合、本発明のバンド結束方法は、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、調質圧延、連続焼鈍、連続溶融めっき、連続電気めっきのいずれかの工程を経た鋼帯をコイルに巻き取る工程で実施することが好ましい。これらの工程を経た鋼帯コイルは、鋼帯コイルの運搬時に結束バンドの破断や結束バンド位置のずれによるコイル巻姿崩れがある頻度で発生するが、本発明のバンド結束方法を採用することで、結束した鋼帯コイルの出荷運搬時のバンドの破断や巻きずれによるコイル巻姿崩れの発生頻度を大幅に削減できる。これによる具体的なメリットとしては、(i)巻き姿崩れによる不良率の減少、(ii)不良コイルの引き取り回数の減少、(iii)再結束回数の減少、(iv)再ライン装入に伴うカットロスの減少、などが挙げられる。したがって、上記各工程において鋼帯コイルを効率的かつ低コストに製造することができる。
【実施例0036】
[実施例1]
板厚0.8mm、板幅1000~1650mmの溶融亜鉛めっき鋼帯をコイル状に巻いた外径(コイル径)1000mm、1400mmの鋼帯コイルについて、鋼帯コイル外周を結束バンドで結束した。このバンド結束した鋼帯コイルをコンベヤで所定の位置まで搬送した後、クレーンでコイル保管ヤードまで搬送し、その際の結束バンドの緩みの有無と程度を確認した。
ここで、評価に用いた鋼帯コイルは、連続溶融亜鉛めっきラインでコイル形状に巻き取った後、結束バンドで結束される工程まで自動搬送し、バンディングマシンを用いて板厚1mm、板幅20mmの鋼製の結束バンドでバンド張力を制御して結束した。発明例では、鋼帯コイルと結束バンドの間に荷重測定器具を挟み込んだ状態でバンド結束し、このバンド結束した状態で荷重測定器具により垂直荷重Gを計測した。また、発明例では、事前に、本発明の各測定方法により各コイル径毎に緩みが発生し難く且つ溶接部破断の生じ難い適正な垂直荷重Gaを求めるとともに、この垂直荷重Gaが得られるバンド張力(適正値)を求めた。そして、それらを、コイル径毎にバンド張力の適正値として設定し、鋼帯コイルのコイル径に応じてそのバンド張力でバンド結束を行った。
この実施例の結果を、垂直荷重Gの測定条件、バンド結束条件などとともに表2に示す。
【0037】
発明例であるNo.1~5のうち、No.1、No.2は鋼帯コイルのコイル径が異なり、荷重計が1個の荷重測定器具を用いた例、No.3、No.4は荷重計が2個の荷重測定器具を用いた例、No.5は荷重計が3個の荷重測定器具を用いた例である。これらのうちNo.4、No.5は、各荷重計の荷重偏差を読み、その荷重偏差(測定荷重の最大値と最小値の偏差)が当該2つの荷重計の測定荷重の合計の30%(閾値)以下となるようにバンド結束位置を調整して垂直荷重Gを測定し、その結果を元にバンド張力を設定してバンド結束した例である。
表2において、「荷重偏差」は、No.4,No.5については、本発明法による垂直荷重測定に基づきバンド結束位置を調整した後の値(測定荷重の最大値と最小値の偏差)である。また、No.5の「荷重偏差」は、3つの荷重計の測定荷重のうちの最大値と最小値の荷重偏差である。また、「垂直荷重Gの測定値」は、No.4,No.5については、バンド結束位置を調整した後の値である。また、「バンド張力」は、事前に設定されたバンド張力のことであり、No.1~5では、その事前に設定されたバンド張力でバンド結束した。
【0038】
表2に示すように、荷重計を1個以上備えた荷重測定器具を結束対象材と結束バンド間に挟んで荷重を測定したNo.1~5では、垂直荷重Gを測定することが可能となった。また、事前に、各コイル径毎に本発明の測定方法により適正な垂直荷重Gaを求め、この垂直荷重Gaが得られるバンド張力(適正値)を設定しておき、鋼帯コイルのコイル径に応じてそのバンド張力(適正値)でバンド結束したNo.1~5では、鋼帯コイルを搬送する工程後の緩みが2mm以下に軽減された。
No.3は荷重計が2個の荷重測定器具を用いた例であり、荷重の測定精度がNo.2より改善する。バンド張力が摩擦力等として作用し難く、主に垂直荷重として作用するので、垂直荷重の測定値がNo.2よりもNo.3の方が高めに出力される。荷重測定器具が2個以上の荷重計を有する場合には、適正なバンド結束位置を把握することが可能になる。No.4、No.5は、荷重計をそれぞれ2個、3個有する荷重測定器具を用いて、バンド結束位置の調整を行った例である。No.4、No.5では、より精度よく垂直荷重を測定でき、かつ結束位置がより適正なので、その後の搬送時の位置のずれによる緩みや溶接部の破断が発生し難くなる。No.4、No.5では、搬送時の位置のずれによる溶接部破断を軽減できることにより、垂直荷重Gaおよび適正なバンド張力をNo.3より高い値に設定することが可能になる。このように、No.4、No.5では適正なバンド張力設定と適正なバンド位置の選定によって、バンドの緩みが大幅に軽減される。
No.6は、本発明法による垂直荷重の測定を行わず実施した比較例である。このNo.6は、過去の複数のコイル径のコイルをバンド結束した実績の中で、溶接部破断の少なかったバンド張力条件を採用したものである。過去の製造において緩みの生じるコイルと生じ難いコイルが存在するが、正確な垂直荷重を測定していないので、コイル径に対応した緩みを軽減できる適正なバンド張力は不明であり、緩みの軽減は十分考慮できていない。
【0039】
【表2】
【0040】
[実施例2]
板厚0.8mm、板幅1000~1650mmの溶融亜鉛めっき鋼帯をコイル状に巻いた外径(コイル径)1000~1400mmの鋼帯コイルについて、鋼帯コイル外周を結束バンドで結束した。
その際、鋼帯コイルを外径1000mm~1100mm、1100mm超~1200mm、1200mm超~1300mm、1300mm超~1400mmという4つの外径区分(グループ)に分けた。各外径区分に該当する鋼帯コイルを選定し、上記[実施例1](表2)のNo.3と同じ手法でコイルを適正に結束できる垂直荷重Gaを求めた。さらに、この垂直荷重Gaが得られるバンド張力を求め、バンド張力1200~1450kgfの範囲で各外径区分ごとにバンド張力の適正値を設定した。この外径区分ごとの適正な垂直荷重Gaと、これに応じて設定されたバンド張力(適正値)は、表1のNo.1~4と同じであった。各外径区分毎に設定したバンド張力で50コイルの鋼帯コイルをバンド結束し、このバンド結束した鋼帯コイルを、コンベヤで所定の位置まで搬送した後、クレーンでコイル保管ヤードまで搬送した。それらの鋼帯コイルについて、結束バンドに不良(3mm以上の緩み若しくは溶接部破断)が認められたコイルの本数を調べた。表3の符号B(方法B)は、その結果を示している。
【0041】
上記方法Bに対して、外径1000~1400mmの鋼帯コイルを外径区分に分けることなく、上記[実施例1](表2)のNo.3の測定・調整方法(荷重計の個数は2個、荷重測定器具の配置位置は図7、バンド結束位置調整無し)を用い、コイル外径1200mmのコイルを代表形状として選定して、このコイル径に対して表1のNo.2と同じくバンド張力1290kgfを設定した。このバンド張力1290kgf一定で50コイルの鋼帯コイルをバンド結束し、このバンド結束した鋼帯コイルを、コンベヤで所定の位置まで搬送した後、クレーンでコイル保管ヤードまで搬送した。それらの鋼帯コイルについて、結束バンドに不良(3mm以上の緩み若しくは溶接部破断)が認められたコイルの本数を調べた。表3の符号A(方法A)は、その結果を示している。
【0042】
また、比較のために、上記[実施例1](表2)のNo.6の条件、すなわちコイル外径に関わりなく一律1200kgfのバンド張力で50コイルの鋼帯コイルをバンド結束し、このバンド結束した鋼帯コイルを、コンベヤで所定の位置まで搬送した後、クレーンでコイル保管ヤードまで搬送した。それらの鋼帯コイルについて、結束バンドに不良(3mm以上の緩み若しくは溶接部破断)が認められたコイルの本数を調べた。表3の符号C(方法C)は、その結果を示している。
表3の結果から、本発明法により垂直荷重Gを測定して適正なバンド張力を設定した方法A,Bでは、従来法である方法Cに較べて不良コイルの発生本数が抑えられている。さらに、コイル外径区分毎に垂直荷重Gを測定し、その結果をもとにコイル外径毎に適正なバンド張力を設定した方法Bでは、不良コイルの発生頻度が大幅に抑えられている。
【0043】
【表3】
【符号の説明】
【0044】
1 荷重測定器具
2,2a,2b,2c 荷重計
3 荷重センサ部
4 荷重受け板
5 支持体
6 磁石
7 本体部
8 表示部
9 取付部
10 ガイド孔
11 ボルト
40 上板部
41 側板部
50 ネジ孔
90 凸状部
A 結束対象材
Ag 結束対象材群
x 結束バンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8