(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141215
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D47/34 BRH
B65D47/34 BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052734
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】長島 弘彦
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084KB01
3E084LD22
3E084LD25
(57)【要約】
【課題】従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案する。
【解決手段】ポンプ式吐出器100は、キャップ本体10により口部に保持されステム7aが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口12dを有するとともにステム7aに連結するヘッド12と、を備え、ヘッド12に、延出部12eが設けられ、キャップに、ヘッド12をキャップに向けて前進させた際に延出部12eによって中心軸線Oから離れる向きに撓む外倒れ弾性片10fとキャップ周壁11aが設けられ、外倒れ弾性片10f及びキャップ周壁11aの何れか一方に、外倒れ弾性片10fが中心軸線Oから離れる向きに撓んだ際に外倒れ弾性片10f及びキャップ周壁11aの何れか他方に押し付けられて撓んで外倒れ弾性片10fに弾性力を付与する補助弾性片11dが設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッドに、前記キャップに向けて延出された延出部が設けられ、
前記キャップに、前記ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む外倒れ弾性片と、該外倒れ弾性片を取り囲むキャップ周壁が設けられ、
前記外倒れ弾性片及び前記キャップ周壁の何れか一方に、該外倒れ弾性片が前記中心軸線から離れる向きに撓んだ際に該外倒れ弾性片及び該キャップ周壁の何れか他方に押し付けられて撓んで該外倒れ弾性片に弾性力を付与する補助弾性片が設けられたポンプ式吐出器。
【請求項2】
前記キャップは、前記外倒れ弾性片を備えていて前記キャップ周壁が取り付けられるベースを有し、
前記キャップ周壁は、前記補助弾性片を備え、
前記補助弾性片は、前記キャップ周壁を前記ベースに取り付けた状態において前記ベースから離れる向きに撓んだ状態で該外倒れ弾性片に接触する、請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項3】
前記キャップは、前記外倒れ弾性片を備えていて前記キャップ周壁が取り付けられるベースを有し、
前記外倒れ弾性片は、前記補助弾性片を備え、
前記補助弾性片は、前記キャップ周壁を前記ベースに取り付けた状態において前記ベースに近づく向きに撓んだ状態で該キャップ周壁に接触する、請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【請求項4】
前記キャップは、前記ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線に近づく向きに撓む内倒れ弾性片を有する、請求項1に記載のポンプ式吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式吐出器として、容器の口部に装着されるキャップと、キャップにより口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、ステムに連結するヘッドとを備え、ヘッドをキャップに向けて移動させることによって容器内の内容液をヘッドの吐出口から吐出させるものが既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなポンプ式吐出器の内部には、特許文献1に示されているように、キャップに向けて移動させたヘッドを初期位置に復帰させるためにコイルスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのようなポンプ式吐出器は、大部分の部材は合成樹脂製であるものの、コイルスプリングは金属製である。このため使用後に廃棄するにあたって、このままの状態では樹脂品としてリサイクルすることができない。また一般にこの種のポンプ式吐出器では、通常の使用時において部材が外れてしまうことを避けるべく、例えば嵌合等によって部材同士は強固に固定されている。従って、ポンプ式吐出器を分解してコイルスプリングと他の部材とに分別するにも手間を要することとなる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記ヘッドに、前記キャップに向けて延出された延出部が設けられ、
前記キャップに、前記ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む外倒れ弾性片と、該外倒れ弾性片を取り囲むキャップ周壁が設けられ、
前記外倒れ弾性片及び前記キャップ周壁の何れか一方に、該外倒れ弾性片が前記中心軸線から離れる向きに撓んだ際に該外倒れ弾性片及び該キャップ周壁の何れか他方に押し付けられて撓んで該外倒れ弾性片に弾性力を付与する補助弾性片が設けられたポンプ式吐出器である。
【0008】
前記キャップは、前記外倒れ弾性片を備えていて前記キャップ周壁が取り付けられるベースを有し、
前記キャップ周壁は、前記補助弾性片を備え、
前記補助弾性片は、前記キャップ周壁を前記ベースに取り付けた状態において前記ベースから離れる向きに撓んだ状態で該外倒れ弾性片に接触することが好ましい。
【0009】
前記キャップは、前記外倒れ弾性片を備えていて前記キャップ周壁が取り付けられるベースを有し、
前記外倒れ弾性片は、前記補助弾性片を備え、
前記補助弾性片は、前記キャップ周壁を前記ベースに取り付けた状態において前記ベースに近づく向きに撓んだ状態で該キャップ周壁に接触することが好ましい。
【0010】
前記キャップは、前記ヘッドを該キャップに向けて前進させた際に前記延出部によって前記ステムの中心軸線に近づく向きに撓む内倒れ弾性片を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプ式吐出器によれば、ヘッドをキャップに向けて移動させた際、延出部によって一対の外倒れ弾性片がステムの中心軸線から離れる向きに撓むため、撓んだ外倒れ弾性片が復元する際にヘッドを初期位置に復帰させることができる。更に、外倒れ弾性片及びキャップ周壁の一方に補助弾性片を設けていて、補助弾性片は、外倒れ弾性片が撓んだ際に外倒れ弾性片及びキャップ周壁の他方に押し付けられて撓み、これにより外倒れ弾性片に弾性力を付与することができる。すなわちヘッドが復帰する際には、外倒れ弾性片の弾性力と補助弾性片の弾性力の両方が作用するため、ヘッドをより確実に復帰させることができる。従って、作動させる際の摺動抵抗が比較的大きなポンプを採用する場合でも、ヘッドを問題無く初期位置に復帰させることができる。また、外倒れ弾性片の如き撓み変形可能な弾性片は、比較的大きな負荷でもって繰り返し撓ませるとへたりが生じて復元性が低下することがあるが、本発明のポンプ式吐出器では、外倒れ弾性片と補助弾性片の両方でヘッドを復帰させることによって外倒れ弾性片が受ける負荷を減らすことができるため、へたりの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態における外倒れ弾性片が撓む前の状態を示した側面視での縦断面図(
図3におけるB-Bに沿う断面図)である。
【
図2】
図1に示した実施形態における内倒れ弾性片が撓む前の状態を示した背面視での縦断面図(
図3におけるC-Cに沿う断面図)である。
【
図3】
図1に示したキャップカバーにおけるキャップに取り付ける前の状態でのA-Aに沿う断面図である。
【
図4】
図1の状態からヘッドを押圧して外倒れ弾性片が撓んだ状態を示した側面視での縦断面図である。
【
図5】
図2の状態からヘッドを押圧して内倒れ弾性片が撓んだ状態を示した背面視での縦断面図である。
【
図6】本発明に係るポンプ式吐出器の変形例を
図1に準じて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態であるポンプ式吐出器100について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した中心軸線O(後述するステム7aの中心軸線)に沿う向きであって、パイプ4が位置する側が「下」であり、ヘッド12が位置する側が「上」である。また径方向とは、中心軸線Oに対して垂直な面内で中心軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で中心軸線Oを中心として周回する方向である。また正面側とは、後述するノズル12cが指向する側(
図1における左側)であり、背面側とは、その逆側(
図1における右側)である。また左側、右側とは、正面側から背面側に向かって視る際の左右方向である。
【0014】
本実施形態のポンプ式吐出器100は、ボトル状をなす不図示の容器の口部に装着して使用される。ポンプ式吐出器100で吐出させる内容液は、例えばシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等である。
【0015】
ポンプ式吐出器100は、シリンダー1、弁部材2、パイプ4、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、ホルダー8、パッキン9、キャップ本体10、キャップカバー11、ヘッド12で構成されている。ここでシリンダー1、弁部材2、内部部材5、ピストン6、筒状部材7、及びホルダー8は、本明細書等における「ポンプ」を構成する部材であり、キャップ本体10とキャップカバー11は、本明細書等における「キャップ」を構成する部材である。そしてキャップ本体10は、本明細書等における「ベース」に相当するものである。また上記の部材のうち、弁部材2、ピストン6、パッキン9は、弾性を有する軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン(LDPE、HDPE、発泡PE))により形成されていて、その他の部材は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリアセタール(POM)・ポリケトン(POK)樹脂等)で形成されている。そしてポンプ式吐出器100を構成する各部材は、基本的に中心軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0016】
シリンダー1は、円板状をなしていて中央部が上方に突出する底壁部1aと、底壁部1aの外縁部から起立する円筒状の筒壁部1bと、筒壁部1bの上部から径方向外側に向けて延在するフランジ壁1cを備えている。底壁部1aにおける中央部の突出する部位には、貫通孔(吸込口1d)が設けられている。また底壁部1aの下面には、吸込口1dを取り囲んで下方に向けて延在し、パイプ4を保持する筒状の保持筒1eが設けられている。そして筒壁部1bには、貫通孔(通気口1f)が設けられている。
【0017】
弁部材2は、基部2aと、吸込口1dを覆って底壁部1aの上面に着座する弁体部2bと、基部2aと弁体部2bとを連結する弾性変形可能な連結片2cとを備えている。弁部材2は逆止弁として機能するものであって、シリンダー1内が減圧状態になると、吸込口1dを閉鎖していた弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dを開放させることができる。
【0018】
基部2aは、本実施形態では有蓋筒状をなしていて、吸込口1dを通過した内容液が通過する不図示の開口を備えている。基部2aは、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるものであり、これにより弁部材2は、シリンダー1内で保持される。
【0019】
パイプ4は、中空状をなすものであって、上端部は保持筒1eに挿入されてこれに嵌合保持されている。
【0020】
内部部材5は、シリンダー1の内部に配置され、シリンダー1に対して上下動する部材である。内部部材5は、円筒状をなす連結筒5aと、連結筒5aの下端部を閉鎖するとともに径方向外側に延在する底部5bとを備えている。また連結筒5aには、これを貫通する孔(連通口5c)が設けられていて、底部5bの上面には、連結筒5aとの連結部よりも径方向外側に位置する環状部5dが設けられている。
【0021】
ピストン6は、連結筒5aに挿通されて底部5bの上方に配置される。本実施形態のピストン6は、円環状の基部6aを備えている。基部6aの外縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する外側摺動片6bが設けられている。外側摺動片6bは、筒壁部1bの内周面に対して摺動可能に液密に当接するものである。そして基部6aの内縁部には、基部6aから上方及び下方に向けて延在する内側摺動片6cが設けられている。内側摺動片6cは、その下部は環状部5dの内周面に対して摺動可能に液密に当接し、その上部は筒状部材7における後述する拡径部7bの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。
【0022】
筒状部材7は、全体的に筒状をなす部材である。筒状部材7は、円筒状をなすステム7aと、ステム7aの下端部に連結するとともにステム7aよりも大径になる拡径部7bを備えている。ステム7aに連結筒5aが挿入されると両者は嵌合されるため、内部部材5と筒状部材7は、シリンダー1に対して一体的に移動する。
【0023】
ホルダー8は、ステム7aの径方向外側に位置する部位と拡径部7bの径方向外側に位置する部位を持ち、筒壁部1bの内周面に嵌合保持されるホルダー基部8aを備えている。ホルダー基部8aの上端部には、径方向外側に向けて延在するフランジ8bが設けられている。ホルダー8によって、内部部材5、ピストン6、筒状部材7のシリンダー1からの抜け出しを防止している。
【0024】
パッキン9は、円環板状をなすものであって、シリンダー1の筒壁部1bに挿通されてこれに嵌合保持されている。ポンプ式吐出器100を不図示の容器に取り付けた際、パッキン9は容器の口部とフランジ壁1cに挟持される。これにより、例えば容器を倒した際に内容液が口部から溢れる等の不具合が防止される。
【0025】
キャップ本体10は、円板状をなしていて中央部に貫通孔を備える天壁10aを備えている。天壁10aの外縁部には、下方に向けて延在する下側周壁10bが設けられている。下側周壁10bの内周面における上部は、径方向内側に向けて膨出してフランジ壁1cを嵌合保持することが可能であって、これによりシリンダー1は、キャップ本体10に保持される。また下側周壁10bの内周面には、容器の口部に設けた雄ねじ部に螺合する雌ねじ部10cが設けられていて、雄ねじ部と雌ねじ部10cとを螺合させることにより、キャップ本体10を容器に装着することができる。そして天壁10aと下側周壁10bがつながる部位には、
図1の部分拡大図に示すように、周方向全周に亘って延在する凹部10dが設けられていて、凹部10dの周面には、爪状の係合突起10eが設けられている。
【0026】
またキャップ本体10は、
図1に示すように、天壁10aの上面から上方に向けて延在し、径方向外側に向けて弾性変形可能な板状の外倒れ弾性片10fを備えている。本実施形態の外倒れ弾性片10fは、
図3に示すように平面視において、中心軸線Oを中心とする円弧状である。外倒れ弾性片10fの上端部は、上方に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜している。また本実施形態の外倒れ弾性片10fは、中心軸線Oに対向するように正面側と背面側にそれぞれ1つ(合計2つ)設けられている。
【0027】
更にキャップ本体10は、
図2に示すように、天壁10aの上面から上方に向けて延在し、径方向内側に向けて弾性変形可能な板状の内倒れ弾性片10gを備えている。本実施形態の内倒れ弾性片10gは、
図3に示すように平面視において、中心軸線Oを中心とする円弧状である。内倒れ弾性片10gの上端部は、上方に向かうにつれて径方向内側に狭まるように傾斜している。また内倒れ弾性片10gは、本実施形態では合計2つ設けられていて、それぞれの内倒れ弾性片10gは、2つの外倒れ弾性片10fのそれぞれに隣り合う位置に(本実施形態では中心軸線Oに対向するように左側と右側に)設けられている。なお、
図3に示すように外倒れ弾性片10fは、内倒れ弾性片10gよりも径方向外側に位置している。
【0028】
キャップカバー11は、円筒状になるキャップ周壁11aを備えている。キャップカバー11をキャップ本体10に取り付けるにあたり、キャップ周壁11aは、ヘッド12を取り付ける前に外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gに挿入され、更にキャップ周壁11aの下端部が凹部10dに挿入される。なお、キャップ周壁11aの下端部における内周面には、
図1の部分拡大図に示すように、係合突起10eに係合する係合凹部11bが設けられていて、キャップカバー11は、係合突起10eと係合凹部11bが係合することによってキャップ本体10に抜け止め保持される。キャップカバー11を取り付けた際、キャップ周壁11aは外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gを取り囲んでいて、これにより外倒れ弾性片10fや内倒れ弾性片10gは側方から直接視認できなくなるため、見栄えを良くすることができる。更にキャップ周壁11aの上端部には、径方向内側に向けて延在する内向きフランジ11cが設けられていて、この内向きフランジ11cによって外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gは、上方からも直接視認できないため、見栄えを更に良くすることができる。
【0029】
またキャップカバー11は、キャップ周壁11aの内周面に一体的につながる補助弾性片11dを備えている。本実施形態の補助弾性片11dは、
図3に示すように周方向に等間隔で合計6つ設けられている。補助弾性片11dは、キャップカバー11をキャップ本体10に取り付ける前の状態において、
図2に示すように径方向内側に向かうにつれて下向きに傾いて延在するものである。なお6つの補助弾性片11dのうち、キャップカバー11をキャップ本体10に取り付けた状態で内倒れ弾性片10gに対向する補助弾性片11dは、
図2に示したように、キャップカバー11をキャップ本体10に取り付ける前とほぼ同じ状態で内倒れ弾性片10gに接触するか、内倒れ弾性片10gに対して僅かに離隔している。一方、外倒れ弾性片10fは内倒れ弾性片10gよりも径方向外側に位置している。このため、
図1に示すように外倒れ弾性片10fに対向する補助弾性片11dは、キャップカバー11を取り付けるにあたってキャップカバー11をキャップ本体10に対して相対的に下方に移動させると、その先端部が外倒れ弾性片10fに対して不動に接触した状態で、その根元部がつながるキャップ周壁11aが外倒れ弾性片10fに対して相対的に下方に移動するため、図示したように上方に向けて撓むように反転し、その状態で維持される。
【0030】
ヘッド12は、円筒状をなし、ステム7aが挿入されてこれに嵌合保持される筒状部12aを備えている。筒状部12aの上部には、上面が下方に凹むように形作られ、内部に筒状部12aに通じる通路を有する頂部12bが設けられている。頂部12bには、円筒状をなしていて径方向外側に向けて延在し、頂部12bの内部に設けた通路に通じるノズル12cが設けられている。ノズル12cの先端には、ポンプ式吐出器100によって内容液が吐出される吐出口12dが設けられている。
【0031】
またヘッド12は、頂部12b及びノズル12cから下方に向けて延出された延出部12eを備えている。本実施形態の延出部12eは、中心軸線Oを中心とする円筒状である。また延出部12eの下端部(先端部)は、
図1~
図2、及び
図4~
図5に示すように、概ね下方に向かうにつれて径方向内側に狭まるように傾斜している。なお、
図1~
図2では、
外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gは垂直方向に延在し、外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gの上端部に対して延出部12eの下端部が重なるように図示したが、実際にはこの重なりが解消されるように、外倒れ弾性片10fは径方向外側に向けて若干傾いた状態にあり、内倒れ弾性片10gは径方向内側に向けて若干傾いた状態にあって、ヘッド12は上昇限(後退限)まで移動している。
【0032】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器100は、
図1、
図2に示すようにヘッド12を押圧する前の状態においては、外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gに延出部12eの先端部が接触し、ヘッド12は上昇した状態(ヘッド12はキャップ本体10から後退した状態)にある。またこの状態において、
図1に示すように外倒れ弾性片10fに対向する補助弾性片11dは、上方に向けて撓んだ状態で外倒れ弾性片10fに接触していて、補助弾性片11dの弾性力が外倒れ弾性片10fに作用しているため、ヘッド12を上昇限まで確実に移動させることができる。
【0033】
そしてヘッド12を上方から押圧してヘッド12を下降させる(ヘッド12をキャップ本体10に向けて前進させる)と、
図4、
図5に示すように、ステム7aがヘッド12とともに押し下げられる(中心軸線Oに沿ってステム7aがキャップ本体10に向けて移動する)。またステム7aが押し下げられるに伴い、連結筒5aを介して底部5bも下降するため、環状部5dと内側摺動片6cの下部との液密な当接が解除される。そしてヘッド12を更に押し下げていくと、筒状部材7及び内部部材5とともにピストン6も下降して、シリンダー1の内部が加圧される。このためシリンダー1内の内容液は、連通口5cを通過し、連結筒5a、ステム7a、筒状部12a、頂部12bの内部に設けた通路、及びノズル12cの内側を通って吐出口12dから外界に吐出される。なお、ヘッド12を押圧してピストン6が通気口1fよりも下降すると、不図示の容器は、通気口1fを介して外界と連通する。これにより容器に収容した内容液が減っても容器内は負圧化されず、容器がつぶれるように変形する不具合が防止される。
【0034】
またヘッド12が押し下げられると、延出部12eが外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gに押圧力を付与するため、外倒れ弾性片10fは径方向外側に撓んでいき、内倒れ弾性片10gは径方向内側に撓んでいく。また、外倒れ弾性片10fに対向する補助弾性片11dは、
図4に示すように径方向外側に撓む外倒れ弾性片10fによって、更に上方に向けて撓んだ状態になる。
【0035】
その後、ヘッド12への押圧を解除すると、弾性変形していた外倒れ弾性片10f、内倒れ弾性片10g、及び補助弾性片11dの弾性力がヘッド12に作用し、ヘッド12は上昇し始める。これに伴い、環状部5dに対して内側摺動片6cの下部が再び液密に当接しつつ、ピストン6が内部部材5とともに上昇するため、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dが開放されて、パイプ4を通して容器内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0036】
このように本実施形態のポンプ式吐出器100によれば、金属製のコイルスプリングを用いずとも、内容液を吐出させた後のヘッド12を復帰させることができ、従来のポンプ式吐出器と同じように使用することができる。また、外倒れ弾性片10f、内倒れ弾性片10g、及び補助弾性片11dの如き撓み変形可能な弾性片は、比較的大きな負荷でもって繰り返し撓ませるとへたりが生じて復元性が低下することがあるが、ポンプ式吐出器100では、3種の弾性片で負荷を分担して各弾性片に作用する負荷を減らすことができるため、へたりの影響を抑えることができる。そして、外倒れ弾性片10fが撓む方向と内倒れ弾性片10gが撓む方向は逆であるため、外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gとの間では延出部12eを捻り出すような力も作用する。従って、ヘッド12をより確実に復帰させることができる。
【0037】
図1~
図5に示したポンプ式吐出器100は、補助弾性片11dがキャップ周壁11aに設けられていたが、
図6に示した変形例のポンプ式吐出器100Aのように、外倒れ弾性片10fに補助弾性片10hを設けてもよい。本実施形態の補助弾性片10hは、キャップ本体10にキャップカバー11が取り付けられる前の状態では、
図6において仮想線で示すように、径方向外側に向かうにつれて上向きに傾いて延在するものであるが、キャップカバー11をキャップ本体10に取り付けるにあたってキャップカバー11をキャップ本体10に対して相対的に下方に移動させると、その先端部はキャップ周壁11aに対して不動に接触した状態でキャップ周壁11aとともに下方に移動するため、
図6で実線で示すように下方に向けて撓むように反転し、その状態で維持される。すなわち、変形例のポンプ式吐出器100Aにおいても、ヘッド12を押圧する前の状態においては、外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gに延出部12eの先端部が接触してヘッド12は上昇した状態にあり、更に補助弾性片10hが下方に向けて撓んだ状態でキャップ周壁11aに接触して補助弾性片10hの弾性力が外倒れ弾性片10fに作用しているため、ヘッド12を上昇限まで確実に移動させることができる。
【0038】
また図示は省略するが、
図6に示した状態からヘッド12を押し下げると、外倒れ弾性片10fは径方向外側に撓んでいき、内倒れ弾性片10gは径方向内側に撓んでいく。そして、外倒れ弾性片10fに設けた補助弾性片10hは、径方向外側に撓む外倒れ弾性片10fによって、
図6に示した状態よりも更に下方に向けて撓んだ状態になる。従って、ヘッド12への押圧を解除すると、弾性変形していた外倒れ弾性片10f、内倒れ弾性片10g、及び補助弾性片10hの弾性力がヘッド12に作用するため、ヘッド12を上昇限まで確実に移動させることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0040】
例えば上述したポンプは一例であって、他の形式のポンプを採用した場合も本発明に含まれる。そして、外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gの数は、上述した実施形態に限られるものではなく、適宜変更可能である。外倒れ弾性片10fと内倒れ弾性片10gを設ける位置も適宜変更可能であり、例えば外倒れ弾性片10fをキャップ本体10の左側と右側に設け、内倒れ弾性片10gをキャップ本体10の正面側と背面側に設けてもよい。更に内倒れ弾性片10gと外倒れ弾性片10fは、図示したように平面視で円弧状になるものに限られず、例えば平面視で直線状になるものでもよい。また延出部12eは円筒状になるものに限られず、例えば角筒状になるものでもよい。
【0041】
そして補助弾性片11d、10hも適宜変更可能であって、上記のように6つに限られず、5以下でも7以上でもよい。また上述した実施形態では、
図3に示すように補助弾性片11dを周方向に複数配置し、更に隣り合う補助弾性片11dの間隔(周方向の間隔)を外倒れ弾性片10fの周方向長さよりも狭く設定しているため、キャップ本体10にキャップカバー11を取り付ける際、キャップカバー11の周方向の向きにかかわらずに補助弾性片11dを外倒れ弾性片10fに接触させることができる。特に上述した実施形態では、補助弾性片11dは全て同一形状である一方、内倒れ弾性片10gは、補助弾性片11dの先端部が内倒れ弾性片10gに接触する(内倒れ弾性片10gに対して僅かに離隔している)位置に設けられていて、外倒れ弾性片10fは内倒れ弾性片10gよりも径方向外側に位置しているため、キャップ本体10にキャップカバー11を取り付けると、キャップカバー11の周方向の向きにかかわらず、内倒れ弾性片10gに対向する補助弾性片11dは
図2に示したように下向きに傾斜した状態になり、外倒れ弾性片10fに対向する補助弾性片11dは
図1に示したように上方に向けて撓むように反転した状態になる。すなわち上述した実施形態によれば、キャップ本体10にキャップカバー11を取り付けるにあたり、キャップ本体10に対するキャップカバー11の周方向の位置合せが不要になる。但し本発明に係るポンプ式吐出器はこれに限られず、例えば中心軸線Oに対向するように補助弾性片11dを2つ設け、それぞれの補助弾性片11dが外倒れ弾性片10fに対向するようにキャップカバー11をキャップ本体10に取り付けてもよい。なおこのように構成する場合は、キャップ本体10とキャップカバー11の周方向の位置が決まるようにするための周方向位置決め手段(例えばキャップ本体10の凹部10dに位置決め突起を設け、キャップカバー11のキャップ周壁11aには位置決め突起に係合する位置決め凹部を設ける等)を設けることが好ましい。
【0042】
また補助弾性片11d、10hは、
図1、
図6ではヘッド12を押圧する前の状態で撓んでいるが、この状態では撓まず、ヘッド12を押圧して外倒れ弾性片10fが径方向外側に撓んだときに撓むものでもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:シリンダー
1a:底壁部
1b:筒壁部
1c:フランジ壁
1d:吸込口
1e:保持筒
1f:通気口
2:弁部材
2a:基部
2b:弁体部
2c:連結片
4:パイプ
5:内部部材
5a:連結筒
5b:底部
5c:連通口
5d:環状部
6:ピストン
6a:基部
6b:外側摺動片
6c:内側摺動片
7:筒状部材
7a:ステム
7b:拡径部
8:ホルダー
8a:ホルダー基部
8b:フランジ
9:パッキン
10:キャップ本体(ベース)
10a:天壁
10b:下側周壁
10c:雌ねじ部
10d:凹部
10e:係合突起
10f:外倒れ弾性片
10g:内倒れ弾性片
10h:補助弾性片
11:キャップカバー
11a:キャップ周壁
11b:係合凹部
11c:内向きフランジ
11d:補助弾性片
12:ヘッド
12a:筒状部
12b:頂部
12c:ノズル
12d:吐出口
12e:延出部
100、100A:ポンプ式吐出器
O:中心軸線