(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141218
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】構造材の補修方法
(51)【国際特許分類】
B29C 73/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B29C73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052737
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】細川 和義
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】多氣 新
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AC03
4F213AD08
4F213AD16
4F213AP11
4F213AQ01
4F213WA14
4F213WA52
4F213WA67
4F213WA72
4F213WA87
4F213WE25
(57)【要約】
【課題】補修作業が簡単で作業時間の短縮に寄与できる構造材の補修方法を提供する。
【解決手段】損傷部を有する構造材の補修方法であって、損傷部の状況に応じて、光硬化性を有する液状組成物を含浸し未硬化部分を有する基材を備えるプリプレグシートの積層レイアウト設計を行うステップと、積層レイアウト設計されたプリプレグシートを準備するステップと、準備したプリプレグシートを損傷部に貼り付けるステップと、損傷部に貼り付けたプリプレグシートに紫外線を照射して硬化させるステップと、を含む。プリプレグシートを準備するステップは、未硬化部分を有する複数のプリプレグシートが積層された未硬化の積層シートを予め形成することを含む。プリプレグシートを損傷部に貼り付けるステップにおいては、未硬化の積層シートを損傷部に貼り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷部を有する構造材の補修方法であって、
前記損傷部の状況に応じて、光硬化性を有する液状組成物を含浸し未硬化部分を有する基材を備えるプリプレグシートの積層レイアウト設計を行うステップと、
前記積層レイアウト設計された前記プリプレグシートを準備するステップと、
準備した前記プリプレグシートを前記損傷部に貼り付けるステップと、
前記損傷部に貼り付けた前記プリプレグシートに紫外線を照射して硬化させるステップと、
を含み、
前記プリプレグシートを準備するステップは、前記未硬化部分を有する複数の前記プリプレグシートが積層された未硬化の積層シートを予め形成することを含み、
前記プリプレグシートを前記損傷部に貼り付けるステップにおいては、前記未硬化の前記積層シートを前記損傷部に貼り付ける、構造材の補修方法。
【請求項2】
前記積層レイアウト設計の前に、前記損傷部を計測するステップを有し、
前記積層シートは、前記損傷部を計測した結果に応じて形成される、
請求項1に記載の構造材の補修方法。
【請求項3】
前記損傷部に対して前記構造材における表面の面方向の寸法を計測する、
請求項2に記載の構造材の補修方法。
【請求項4】
前記損傷部に対して前記構造材における表面からの深さ方向の寸法を計測する、
請求項2に記載の構造材の補修方法。
【請求項5】
前記損傷部に対して3次元走査して計測する、
請求項2に記載の構造材の補修方法。
【請求項6】
前記積層シートは、所定の寸法および所定の積層パターンで規格化され、
規格化された前記積層シートの少なくとも一部を前記損傷部に貼り付ける、
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造材の補修方法。
【請求項7】
前記基材は、前記未硬化部分を構成する第1領域と、硬化部分を構成する第2領域と、を含み、
前記第2領域は、前記損傷部における空隙部と対向する位置に配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造材の補修方法。
【請求項8】
前記積層レイアウト設計の前に、前記損傷部に凹部を形成するステップを有し、
前記積層シートを前記凹部に貼り付ける、
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造材の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プラスチック(FRP)製の部材の補強や補修、鋼板の腐食部分の補修など、各種構造材の補修、補強、またはライニングに、プリプレグシートが用いられている。特許文献1には、半硬化状態のプリプレグシートを、未硬化樹脂を含む接着剤樹脂組成物を介して構造材に貼り付け、貼り付けられたプリプレグシートおよび接着剤樹脂組成物を加熱して硬化させることによって補修することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造材の補修方法においては、例えば、補修箇所の状況に応じてプリプレグシートの積層レイアウト設計、設計したレイアウトに応じて裁断・貼り付けされた単層のプレグシートの準備、補修箇所の事前処理、単層のプレグシートの貼り付けおよび紫外線照射による硬化の複数回実施、サンディング等の表面処理が順次行われる。
【0005】
上記の補修方法における単層のプレグシートの貼り付けおよび紫外線照射による硬化は、現場にて複数回実施する必要があるため、補修作業に手間が掛かり作業時間が長くなるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、補修作業が簡単で作業時間の短縮に寄与できる構造材の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1の構造材の補修方法は、損傷部を有する構造材の補修方法であって、前記損傷部の状況に応じて、光硬化性を有する液状組成物を含浸し未硬化部分を有する基材を備えるプリプレグシートの積層レイアウト設計を行うステップと、前記積層レイアウト設計された前記プリプレグシートを準備するステップと、準備した前記プリプレグシートを前記損傷部に貼り付けるステップと、前記損傷部に貼り付けた前記プリプレグシートに紫外線を照射して硬化させるステップと、を含み、前記プリプレグシートを準備するステップは、前記未硬化部分を有する複数の前記プリプレグシートが積層された未硬化の積層シートを予め形成することを含み、前記プリプレグシートを前記損傷部に貼り付けるステップにおいては、前記未硬化の前記積層シートを前記損傷部に貼り付ける。
【0008】
本発明の態様1の構成によれば、未硬化部分を有する複数のプリプレグシートが積層された未硬化の積層シートを予め形成し、プリプレグシートを損傷部に貼り付ける際には、予め形成した未硬化の積層シートを損傷部に貼り付けるため、損傷部への貼り付けおよび硬化作業は積層シート毎となる。この結果、態様1の構成によれば、単層のプレグシートの貼り付け、紫外線照射により硬化させる作業をプレグシートの層毎に行う場合と比較して、補修作業が簡単になり、補修に要する作業時間の短縮に寄与できる。
【0009】
本発明の態様2の構造材の補修方法は、態様1の構造材の補修方法において、前記積層レイアウト設計の前に、前記損傷部を計測するステップを有し、前記積層シートは、前記損傷部を計測した結果に応じて形成される。
【0010】
本発明の態様2の構成によれば、損傷部を計測し、計測した結果に応じて積層シートを形成するため、損傷部の実形状に対応した積層レイアウト設計が可能になる。そのため、態様2の構成によれば、損傷部を補修するための好適な積層シートを高精度に形成することができ、補修精度を高めることができる。
【0011】
本発明の態様3の構造材の補修方法は、態様2の構造材の補修方法において、前記損傷部に対して前記構造材における表面の面方向の寸法を計測する。
【0012】
本発明の態様3の構成によれば、構造材における表面の面方向の損傷部の寸法に好適な積層シートを高精度に形成することができる。
【0013】
本発明の態様4の構造材の補修方法は、態様2の構造材の補修方法において、前記損傷部に対して前記構造材における表面から深さ方向の寸法を計測する。
【0014】
本発明の態様4の構成によれば、構造材における表面から深さ方向の損傷部の寸法に好適な積層シートを高精度に形成することができる。
【0015】
本発明の態様5の構造材の補修方法は、態様2の構造材の補修方法において、前記損傷部に対して3次元走査して計測する。
【0016】
本発明の態様5の構成によれば、構造材における表面の面方向の損傷部の寸法および表面からの深さ方向の損傷部の寸法を含む3次元の寸法に好適な積層シートを高精度に形成することができる。
【0017】
本発明の態様6の構造材の補修方法は、態様1から態様5までのいずれか一項の構造材の補修方法において、前記積層シートは、所定の寸法および所定の積層パターンで規格化され、規格化された前記積層シートの少なくとも一部を前記損傷部に貼り付ける。
【0018】
本発明の態様6の構成によれば、規格化された積層シートを裁断することにより、損傷部の大きさに応じた積層シートを準備することができ、規格化された積層シートを複数積み重ねることにより、損傷部の深さに応じた積層シートを準備することができる。
【0019】
本発明の態様7の構造材の補修方法は、態様1から態様5までのいずれか一項の構造材の補修方法において、前記基材は、前記未硬化部分を構成する第1領域と、硬化部分を構成する第2領域と、を含み、前記第2領域は、前記損傷部における空隙部と対向する位置に配置される。
【0020】
本発明の態様7の構成によれば、損傷部における空隙部と対向する位置に硬化部分を構成する第2領域を配置することで、施工時に裏当材が不要になるとともに、表面側からの施工のみで補修することができる。
【0021】
本発明の態様8の構造材の補修方法は、態様1から態様5までのいずれか一項の構造材の補修方法において、前記積層レイアウト設計の前に、前記損傷部に凹部を形成するステップを有し、前記積層シートを前記凹部に貼り付ける。
【0022】
本発明の態様8の構成によれば、損傷部に積層シートに対応する凹部を形成することで、準備した積層シートを容易、且つ、高精度に貼り付けて損傷部を補修することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、補修作業が簡単で作業時間の短縮に寄与できる構造材の補修方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の補修方法が実施された構造材の部分断面図である。
【
図2】発明の補修方法が実施される前の構造材の部分断面図である。
【
図3】第1実施形態の構造材の補修方法の処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の構造材の補修方法の処理を示すフローチャートである。
【
図5】第3実施形態の補修方法が実施された構造材の部分断面図である。
【
図6】第4実施形態の補修方法が実施された構造材の部分断面図である。
【
図7】構造材の補修方法の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構造材の補修方法の実施の形態を、
図1から
図7を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0026】
図1は、本発明の補修方法が実施された構造材10の部分断面図である。
図2は、本発明の補修方法が実施される前の構造材10の部分断面図である。
図3は、本発明の構造材10の補修方法の処理を示すフローチャートである。
【0027】
図1に示すように、構造材10は、表面10Aに開口する凹部11を有する。凹部11は、表面10Aから裏面10Bに向かうにつれて長さ寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。凹部11のテーパ角は、一例として、1/16に設定されている。凹部11の裏面10B側の端部には、空隙部12が形成されている。構造材10は、凹部11に貼り付けられたプリプレグシート13を有する。
【0028】
構造材10としては、特に限定されないが、例えば、風車翼、FRPボート等の長尺の構造を有するものに好適に適用できる。
【0029】
プリプレグシート13は、光硬化性を有する液状組成物を含浸し未硬化部分を有する基材14を備える。基材14は、強化繊維および紫外線硬化樹脂を含む。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等の無機繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維等の樹脂繊維を挙げることができる。中でも、光透過性及び強度の点で優れ、また低廉でもあるガラス繊維を好適に用いることができる。これらの構成繊維は、1種のみ用いることとしてもよく2種以上を併用してもよい。基材14は、織物(織布)であってもよいし、編物であってもよいし、不織布であってもよい。
【0030】
プリプレグシート13は、構造材10の厚さ方向に複数積層されている。本実施形態では、一例として、5層に積層されている。未硬化部分を有し、積層されたプリプレグシート13は、補強用途に応じ、強化繊維の種類(マット、短方向、2軸(多軸)等)の積層順序、隣り合う層で繊維方向が異ならせる等、積層方向の組み合わせ等を種々選択可能である。未硬化部分を有し、複数積層されたプリプレグシート13は、積層シート15を構成する。
【0031】
図2に示すように、プリプレグシート13が貼り付けられる前の構造材10は、損傷部20を有する。損傷部20は、表面10Aに開口する。損傷部20は、裏面10Bに開口する空隙部12を含む。
【0032】
[構造材10の補修方法の第1実施形態]
図3に示すように、第1実施形態における構造材10の補修方法は、損傷部20の状況に応じて、プリプレグシート13の積層レイアウト設計を行うステップ(ステップS10)と、積層レイアウト設計に応じて、未硬化の積層シート15を形成するステップ(ステップS20)と、損傷部20に凹部11を形成するステップ(ステップS30)と、損傷部20に未硬化の積層シート15を貼り付けるステップ(ステップS40)と、積層シート15に紫外線を照射して硬化させるステップ(ステップS50)と、表面処理を行うステップ(ステップS60)と、を含む。
【0033】
プリプレグシート13の積層レイアウト設計を行うステップS10においては、構造材10における損傷部20の大きさに応じて凹部11の大きさを決めること、凹部11の大きさに応じて積層シート15の接着強度を決定すること、凹部11の大きさおよび接着強度に応じて未硬化の積層シート15の形状、プリプレグシート13の積層数等を決定する。
【0034】
本実施形態において積層シート15は、所定の寸法および所定の積層パターンで規格化されている。規格化された未硬化の積層シート15における表面10Aの面方向の寸法は、例えば、想定される凹部11の表面10Aの面方向の大きさ以上に設定されている。規格化された未硬化の積層シート15における表面10Aからの深さ方向の寸法は、例えば、想定される凹部11の表面10Aからの深さ以上に設定されている。規格化された未硬化の積層シート15におけるプリプレグシート13の層数は、紫外線照射による硬化時の発熱等を考慮して、一例として、5層に設定されている。凹部11のテーパ角を一定に固定する場合、積層シート15は、断面がテーパ角に傾斜した錐状としてもよい。
【0035】
積層レイアウト設計に応じて未硬化の積層シート15を形成するステップS20は、積層レイアウト設計された未硬化部分を有するプリプレグシート13を準備するステップの一部である。積層シート15を形成するステップS20は、規格化された未硬化の積層シート15に対して、凹部11に貼り付けられる大きさの未硬化の積層シート15を形成する。後述する表面処理を考慮して、未硬化の積層シート15における表面10Aの面方向の寸法は、凹部11の表面10Aの面方向の大きさよりも大きいことが好ましい。
【0036】
構造材10における凹部11の最大深さが、未硬化の積層シート15の最大厚さよりも大きい場合には、未硬化の積層シート15を重ねて用いるために複数準備する。未硬化の積層シート15の形成は、構造材10への施工前に予め工場等で行われる。予め形成された未硬化の積層シート15は、外光等によって硬化させないために遮光性を有する袋等に収納して現場に搬送することが好ましい。規格化された未硬化の積層シート15に対する加工が容易であれば、構造材10への施工が行われる現場で未硬化の積層シート15を形成してもよい。
【0037】
損傷部20に凹部11を形成するステップS30においては、構造材10における積層シート15の貼り付け面を貼り付けに適した面に加工する。なお、面加工の前には、アセトン等を用いて汚れを除去することが好ましい。面加工は、例えば、サンディングによって行われ、損傷部20における白化部を十分に削り取り、
図1に示したテーパ形状を形成する。凹部11を形成した後には、アセトン等を用いてサンディングダストを拭き取ることが好ましい。
【0038】
また、未硬化の積層シート15を貼り付ける前には、パテを使用して構造材10における破損部を「充填・形整」することに加えて、補修部を「形整」することが好ましい。さらに、プライマーを用いて構造材10を下地処理することにより、構造材10と積層シート15の接着性および接着強度を向上させることができるとともに、構造材10と積層シート15の貼り付け面における空隙を防止することができる。
【0039】
損傷部20に未硬化の積層シート15を貼り付けるステップS40においては、
図1に示すように、構造材10における裏面10Bに空隙部12と対向して裏当材10Cを設置する。裏面10Bに裏当材10Cを設置することにより、空隙部12を介して裏当材10Cに接する積層シート15を裏面10Bと面一にできる。
【0040】
この後、凹部11に未硬化の積層シート15を貼り付ける。積層シート15における表面10Aの面方向の寸法は、凹部11の表面10Aの面方向の大きさよりも大きいため、より確実に凹部11を塞いで補修することができる。積層シート15を貼り付けるステップS40においては、例えば、テープ等を含む固定具やマスキングテープ等の補助具を適宜用いてもよい。
【0041】
積層シート15に紫外線を照射して硬化させるステップS50においては、凹部11に貼り付けられた未硬化の積層シート15に対して紫外線を照射する。紫外線の照射は、紫外線硬化樹脂が構造材10に対して十分な接着強度を発現させる強度、波長帯域および照射時間で行われる。未硬化の積層シート15を複数用いる場合には、最初に裏面10B側に未硬化の積層シート15を貼り付けて紫外線を照射した後に、順次表面側10A側に未硬化の積層シート15を貼り付けて紫外線を照射すればよい。これにより、ステップS50においては、硬化した積層シート15が構造材10の凹部11に接着固定される。硬化した積層シート15が構造材10の凹部11に接着固定された後には、裏当材10Cを取り外す。
【0042】
表面処理を行うステップS60においては、構造材10に固定された硬化した積層シート15と、構造材10の表面10Aおよび裏面10Bとの段差をサンディングして面一化する。サンディングが完了すると、ゲルコートを含む塗料を構造材10の表面10Aおよび裏面10Bに塗布することによりトップコート層を形成する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の構造材10の補修方法においては、未硬化部分を有する複数のプリプレグシート13が積層された未硬化の積層シート15を予め形成することによって、現場にて単層のプリプレグシートの貼り付けおよび紫外線照射による硬化をプリプレグシート13毎に実施する必要がなく、複数層のプリプレグシート13が積層された積層シート15毎に貼り付けおよび紫外線照射による硬化を実施すればよいため、補修作業が簡単で作業時間の短縮に寄与できる。
【0044】
[構造材10の補修方法の第2実施形態]
続いて、構造材10の補修方法の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。
この図において、
図1から
図3に示す第1の実施の形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、本実施形態の構造材10の補修方法は、積層レイアウト設計を行うステップS10の前に、損傷部20を計測するステップS1を含む。損傷部20を計測するステップS1においては、損傷部20に対して構造材10における表面10Aの面方向の寸法および表面10Aからの深さ方向の寸法を計測する。上記寸法等の計測は、例えば、損傷部20に対して3次元スキャナーを用いた3次元走査(スキャン)により行われる。
【0046】
積層レイアウト設計を行うステップS10においては、3次元走査により得られた事前計測データを用いて積層レイアウト設計を行い、積層シート15を形成するステップS20においては、事前計測データ(計測結果)を用いて事前多層加工された積層シート15を形成する。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、積層レイアウト設計を行うステップS10の前に、損傷部20を計測するため、損傷部20を補修するための積層シート15をより高精度に形成することが可能になる。
【0048】
また、本実施形態では、3次元走査により損傷部20を計測するため、損傷部20に対して構造材10における表面10Aの面方向の寸法および表面10Aからの深さ方向の寸法を迅速に計測することができ、補修作業の効率化に寄与できる。
【0049】
[構造材10の補修方法の第3実施形態]
続いて、構造材10の補修方法の第3実施形態について、
図5を参照して説明する。
この図において、
図1から
図3に示す第1の実施の形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、本実施形態の積層シート15は、未硬化部分を構成する第1領域15Aと、硬化部分を構成する第2領域15Bと、を含む。硬化部分の第2領域15Bは、空隙部12と例えば、同一幅であり、空隙部12と対向する位置に配置される。
【0051】
第2領域15Bは、予め積層シート15を形成する際に、例えば、マスク等を用いて局所的に紫外線を照射することにより硬化される。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、硬化部分を構成する第2領域15Bが空隙部12と対向する位置に配置されるため、積層シート15を貼り付けるステップS40において裏当材10Cが不要になるとともに、表面10A側からのみでの施工が可能となり、補修作業の効率化に寄与できる。
【0053】
[構造材10の補修方法の第4実施形態]
続いて、構造材10の補修方法の第4実施形態について、
図6を参照して説明する。
この図において、
図1から
図3に示す第1の実施の形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
上記実施形態では、構造材10の厚さ方向の表面10A側に位置する窪んだ損傷部20を補修する構成を例示したが、本実施形態では構造材10を突き合わせ接合する構成について説明する。
【0055】
図6に示すように、構造材10は長手方向の端面同士が接合部10Dにおいて突き合わせ接合される。積層シート15は、表面10Aおよび裏面10Bのそれぞれにおいて、最も厚い位置が構造材10の長手方向における接合部10Dの位置に配置される。
【0056】
本実施形態においては、構造材10突き合わせ接合する際にも、現場にて単層のプリプレグシートの貼り付けおよび紫外線照射による硬化をプリプレグシート13毎に実施する必要がなく、複数層のプリプレグシート13が積層された積層シート15毎に貼り付けおよび紫外線照射による硬化を実施すればよいため、補修作業が簡単で作業時間の短縮に寄与できる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上記第1実施形態から第3実施形態では、損傷部20が構造材10の厚さ方向の表面10A側に位置する場合を例示して説明したが、この構成に限定されず、損傷部20が構造材10の厚さ方向の両側に位置する場合についても適用可能である。
【0059】
また、上記第4実施形態では、厚さ方向に損傷部20を有さない構造材10を突き合わせ接合する構成について説明したが、例えば、
図7に示すように、表面10A側および裏面10B側の両方に凹部11が形成された構造材10を突き合わせ接合する場合についても適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…構造材、 11…凹部、 12…空隙部、 13…プリプレグシート、 14…基材、 15…積層シート、 20…損傷部