(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141229
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】全固体二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241003BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241003BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241003BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052753
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】市原 大輝
(72)【発明者】
【氏名】野地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮田 航成
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ06
5H029CJ25
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ12
5H029HJ15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050FA02
5H050FA10
5H050GA03
5H050GA08
5H050GA25
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA12
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】均質性に優れる全固体二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】全固体二次電池の製造方法は、正極層成形工程と、電解質層積層工程と、第1圧縮工程と、中間層積層工程と、第2圧縮工程と、負極層積層工程と、第3圧縮工程と、を有する。第2圧縮工程における第2圧力は、第1圧縮工程における第1圧力及び第3圧縮工程における第3圧力の各々よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極層を成形する正極層成形工程と、
前記正極層の一方の面に、固体電解質を含む電解質層を積層する電解質層積層工程と、
前記正極層及び前記電解質層を第1圧力で圧縮することによって第1圧縮体を得る第1圧縮工程と、
前記第1圧縮体において前記電解質層が露出する面に中間層を積層する中間層積層工程と、
前記正極層、前記電解質層、及び前記中間層を第2圧力で圧縮することによって第2圧縮体を得る第2圧縮工程と、
前記第2圧縮体において前記中間層が露出する面に負極層を積層する負極層積層工程と、
前記正極層、前記電解質層、前記中間層、及び前記負極層を第3圧力で圧縮することによって第3圧縮体を得る第3圧縮工程と、
を有し、
前記正極層成形工程、前記電解質層積層工程、前記第1圧縮工程、前記中間層積層工程、前記第2圧縮工程、前記負極層積層工程、及び前記第3圧縮工程は、この順に行われ、
前記第2圧力は、前記第1圧力及び前記第3圧力の各々よりも高い、
全固体二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記正極層成形工程においては、正極集電体に前記正極層を積層するように前記正極層を成形する、
請求項1に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記正極集電体は、第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、
前記正極層成形工程においては、前記正極集電体の前記第1面及び前記第2面の各々に前記正極層を成形する、
請求項2に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記中間層は、固体電解質、炭化物、及びバインダを有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記負極層は、前記中間層に対向する負極対向面を有し、
前記負極層積層工程を行う前に、前記負極対向面に粗面処理を行い、
前記粗面処理を行った後に、前記負極層積層工程を行う
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記粗面処理においては、前記負極対向面の面粗度を20μm以上とする、
請求項5に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1圧縮工程、前記第2圧縮工程、及び前記第3圧縮工程の各々においては、圧縮対象物を圧縮する圧縮部材が用いられ、
前記第1圧縮工程、前記第2圧縮工程、及び前記第3圧縮工程のうち少なくとも1つの工程においては、前記圧縮対象物と前記圧縮部材との間に保護シートを介在させた状態で、前記圧縮部材が前記圧縮対象物を圧縮する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記第3圧縮工程を行った後に、前記第3圧縮体において前記負極層が露出する面に負極集電体を積層する負極集電体積層工程と、
前記正極層、前記電解質層、前記中間層、前記負極層、及び前記負極集電体を圧縮することによって全固体二次電池を得る第4圧縮工程と、
を有する、
請求項1に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記第4圧縮工程においては、圧縮対象物を圧縮する圧縮部材が用いられ、
前記第4圧縮工程においては、前記圧縮対象物と前記圧縮部材との間に保護シートを介在させた状態で、前記圧縮部材が前記圧縮対象物を圧縮する、
請求項8に記載の全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池のなかでも、安全性、寿命、出力等の点で優れた特性を有する全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池の製造方法として、正極層、固体電解質、及び負極層からなる積層体をプレスする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池に関する技術においては、全固体電池の均質性が得ることが課題である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、均質性に優れる全固体二次電池の製造方法の達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法は、正極活物質を含む正極層を成形する正極層成形工程と、前記正極層の一方の面に、固体電解質を含む電解質層を積層する電解質層積層工程と、前記正極層及び前記電解質層を第1圧力で圧縮することによって第1圧縮体を得る第1圧縮工程と、前記第1圧縮体において前記電解質層が露出する面に中間層を積層する中間層積層工程と、前記正極層、前記電解質層、及び前記中間層を第2圧力で圧縮することによって第2圧縮体を得る第2圧縮工程と、前記第2圧縮体において前記中間層が露出する面に負極層を積層する負極層積層工程と、前記正極層、前記電解質層、前記中間層、及び前記負極層を第3圧力で圧縮することによって第3圧縮体を得る第3圧縮工程と、を有する。前記正極層成形工程、前記電解質層積層工程、前記第1圧縮工程、前記中間層積層工程、前記第2圧縮工程、前記負極層積層工程、及び前記第3圧縮工程は、この順に行われる。前記第2圧力は、前記第1圧力及び前記第3圧力の各々よりも高い。
【0008】
この方法によれば、第1圧縮工程を施すことにより、電解質層は平坦化された状態となる。電解質層が平坦化されているので、電解質層に中間層を積層して第2圧縮工程を行ったとしても、電解質層が中間層に食い込むことを抑制することができる。
第2圧縮工程を施すことにより、正極層及び中間層が緻密化する。これにより、電解質層が中間層に食い込むことを抑制することができる。
第3圧縮工程を施すことにより、全固体二次電池の強度が向上する。例えば、全固体二次電池の使用環境において、電解質層の面方向において圧縮及び非圧縮といった繰り返しの負荷が全固体二次電池に生じたとしても、電解質層における延びや割れによる破損の発生を抑制することができる。
さらに、電解質層と中間層との間の界面における平滑性が向上するので、均質性に優れる全固体二次電池を実現することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記正極層成形工程においては、正極集電体に前記正極層を積層するように前記正極層を成形してもよい。
【0010】
この方法によれば、第1圧縮体は、正極集電体、正極層、及び電解質層を有する。第1圧縮工程を行ったとしても、第1圧縮体において正極集電体の破損を抑制することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記正極集電体は、第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、前記正極層成形工程においては、前記正極集電体の前記第1面及び前記第2面の各々に前記正極層を成形してもよい。
【0012】
この方法によれば、正極集電体の第1面上に正極層が形成される。同様に、正極集電体の第2面上に正極層が形成される。つまり、正極集電体の両面に正極層が形成された構造が得られる。このような構造では、第1圧縮工程、第2圧縮工程、及び第3圧縮工程を行った後であっても、第1面に生じる正極層の復元力と、第2面に生じる正極層の復元力とが互いに打ち消し合う。したがって、全固体二次電池の全体において、反りの発生が抑制される。このため、全固体二次電池の平面度を向上することができる。特に、第1圧縮工程、第2圧縮工程、及び第3圧縮工程において、ロールプレス法を用いる場合では、ロールの表面と、正極集電体の両面に積層される積層体の表面との間の摩擦係数差を低減することができる。これにより、全固体二次電池の平面度を向上することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記中間層は、固体電解質、炭化物、及びバインダを有してもよい。
【0014】
一般的に、電解質層は、粉体で構成されている。このため、負極層に電解質層を直接的に接合する構造では、電解質層に対する負極層の接合性が低い。これに対し、本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法においては、中間層が、負極層と電解質層との間に介在されており、かつ、中間層は、固体電解質、炭化物、及びバインダを有している。
したがって、負極層に電解質層を直接的に接合する構造に比べて、中間層を備えた構造では、電解質層に対する負極層の接合性を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記負極層は、前記中間層に対向する負極対向面を有し、前記負極層積層工程を行う前に、前記負極対向面に粗面処理を行い、前記粗面処理を行った後に、前記負極層積層工程を行ってもよい。
【0016】
この方法によれば、負極層の負極対向面に粗面処理を施すことで、負極対向面に微細な凹凸形状を形成することができる。この場合、負極対向面と中間層とが接触する界面では、中間層が負極対向面の凹凸形状に入り込み易くなる。したがって、負極層と中間層との接合性を高めることができる。
【0017】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記粗面処理においては、前記負極対向面の面粗度を20μm以上としてもよい。
【0018】
この方法によれば、負極層の負極対向面における表面粗さを十分に確保することができる。また、負極対向面は、変形が生じやすい面となる。したがって、第3圧縮工程において負極層が変形した場合、負極層と中間層との間で生じる応力が吸収され、クッション性を高めることができる。したがって、意図しない変形を抑制することができ、負極層と中間層との間に均一な圧力を付与することができる。負極層と中間層との接合性を高めることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記第1圧縮工程、前記第2圧縮工程、及び前記第3圧縮工程の各々においては、圧縮対象物を圧縮する圧縮部材が用いられ、前記第1圧縮工程、前記第2圧縮工程、及び前記第3圧縮工程のうち少なくとも1つの工程においては、前記圧縮対象物と前記圧縮部材との間に保護シートを介在させた状態で、前記圧縮部材が前記圧縮対象物を圧縮してもよい。
【0020】
この方法によれば、保護シートを用いて、第1圧縮工程、第2圧縮工程、及び第3圧縮工程のうち少なくとも1つの工程が行われる。したがって、全固体二次電池を構成する層に圧力が加わったとしても、層における破損を抑制することができる。ここで、全固体二次電池を構成する層とは、例えば、正極集電体及び負極層等である。特に、全固体二次電池を構成する層が薄い箔状の材料である場合、層の破損を抑制する効果が得られる。
【0021】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法は、前記第3圧縮工程を行った後に、前記第3圧縮体において前記負極層が露出する面に負極集電体を積層する負極集電体積層工程と、前記正極層、前記電解質層、前記中間層、前記負極層、及び前記負極集電体を圧縮することによって全固体二次電池を得る第4圧縮工程と、を有してもよい。
【0022】
この方法によれば、負極層に負極集電体が積層された構造を得ることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法において、前記第4圧縮工程においては、圧縮対象物を圧縮する圧縮部材が用いられ、前記第4圧縮工程においては、前記圧縮対象物と前記圧縮部材との間に保護シートを介在させた状態で、前記圧縮部材が前記圧縮対象物を圧縮してもよい。
【0024】
この方法によれば、保護シートを用いて、第4圧縮工程が行われる。したがって、全固体二次電池を構成する負極集電体に圧力が加わったとしても、負極集電体における破損を抑制することができる。特に、負極集電体が薄い箔状の材料である場合、負極集電体の破損を抑制する効果が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様に係る全固体二次電池の製造方法によれば、均質性に優れる全固体二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る全固体二次電池の構造を部分的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る全固体二次電池の製造に用いられるロールプレス法を説明する図であって、ロールプレス装置の一部を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を説明する図であって、製造の途中で得られる第1圧縮体の構造を部分的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を説明する図であって、製造の途中で得られる第2圧縮体の構造を部分的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を説明する図であって、製造の途中で得られる第3圧縮体の構造を部分的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る全固体二次電池の製造に用いられるロールプレス法を説明する図であって、ロールプレス装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を図面に基づいて説明する。
以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
文言「積層」の意味は、層を対象部材上に成形することに限定されず、層を予め成形しておき、この層を対象部材上に転写することを含む。
【0028】
<第1実施形態>
<全固体二次電池の構成>
図1に示すように、全固体二次電池1は、正極集電体2と、正極層3U、3Lと、電解質層4U、4Lと、中間層5U、5Lと、負極層6U、6Lと、負極集電体7U、7Lとを有する。
正極集電体2は、第1面2Uと、第1面2Uとは反対の第2面2Lとを有する。
正極集電体2から負極集電体7Uに向かう方向において、第1面2U上に、正極層3U、電解質層4U、中間層5U、負極層6U、及び負極集電体7Uが、順に積層されている。正極層3U、電解質層4U、中間層5U、負極層6U、及び負極集電体7Uは、正極集電体2に対して圧縮されており、積層圧縮構造体1Uを構成する。
正極集電体2から負極集電体7Lに向かう方向において、第2面2L上に、正極層3L、電解質層4L、中間層5L、負極層6L、及び負極集電体7Lが、順に積層されている。正極層3L、電解質層4L、中間層5L、負極層6L、及び負極集電体7Lは、正極集電体2に対して圧縮されており、積層圧縮構造体1Lを構成する。
【0029】
<正極集電体>
正極集電体2は、正極層3U、3Lに接触する層である。正極集電体2を構成する材料は、特に限定されず、固体二次電池の正極集電体として利用可能な公知の物質を正極集電体2に用いることができる。正極集電体2としては、例えば、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム(Al)箔等の金属箔が挙げられる。
【0030】
<正極層>
正極層3U、3Lの各々は、電解質層4U、4Lに接触する層である。正極層3U、3Lの各々は、正極活物質を含む層である。正極活物質は、特に限定されず、固体二次電池の正極活物質として公知の物質を用いることができる。正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、NCM(Li(NixCoyMnz)O2、(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1))等の三元系正極材料、LiVO2、LiCrO2等の層状正極活物質粒子、LiMn2O4、Li(Ni0.25Mn0.75)2O4、LiCoMnO4、Li2NiMn3O8等のスピネル型正極活物質、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFePO4等のオリビン型正極活物質等を用いることができる。
【0031】
正極層3U、3Lの各々は、正極活物質以外に、固体電解質、導電助剤、バインダ等をさらに含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤、バインダ等は、特に限定されず、固体二次電池の電極材料として公知の物質を適用することができる。正極層3U、3Lの外表面には、接着剤層が積層されてもよい。
【0032】
<電解質層>
電解質層4U、4Lの各々は、中間層5U、5Lに接触する層である。電解質層4U、4Lの各々は、固体電解質を含む層である。電解質層4U、4Lには、上記以外に、バインダ等が含まれていてもよい。
固体電解質の種類は、特に限定されず、固体電解質として、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、窒化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等が挙げられる。
バインダの材料は、特に限定されず、バインダの材料として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイソブテン(PIB)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン-酢酸ビニル共重合体(PEVA)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
<中間層>
中間層5U、5Lの各々は、負極層6U、6Lに接触する層である。中間層5U、5Lの材料としては、例えば、固体電解質、炭化物、及びバインダが挙げられる。炭化物としては、例えば、SnCを用いることができる。
中間層5Uは、対応する電解質層4Uと負極層6Uとの間でイオン伝導性を高める機能、及び、負極層6Uの表面を保護する機能の少なくとも1つを有する。
同様に、中間層5Lは、対応する電解質層4Lと負極層6Lとの間でイオン伝導性を高める機能、及び、負極層6Lの表面を保護する機能の少なくとも1つを有する。
【0034】
<負極層>
負極層6U、6Lの各々は、負極集電体7U、7Lに接触する層である。負極層6U、6Lの各々は、負極活物質を含む層である。負極活物質は、特に限定されず、固体二次電池の負極活物質として公知の物質を用いることができる。負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等のリチウム遷移金属酸化物、TiO2、Nb2O3、及びWO3等の遷移金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料、シリコン単体、シリコン合金、シリコン化合物等のシリコン系材料、並びにリチウム金属、リチウム合金及び金属インジウム等が挙げられる。
負極層6U、6Lの各々は、負極活物質以外に、固体電解質、導電助剤、バインダ等をさらに含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤、バインダ等は、特に限定されず、固体二次電池の電極材料として公知の物質を適用することができる。
【0035】
<負極集電体>
負極集電体7U、7Lの各々は、全固体二次電池1の最外層に相当する。言い換えると、負極集電体7Uは、積層圧縮構造体1Uの最外層に相当する。負極集電体7Lは、積層圧縮構造体1Lの最外層に相当する。
負極集電体7U、7Lの材料は、特に限定されず、固体二次電池の負極集電体として公知の物質を用いることができる。負極集電体としては、銅(Cu)箔、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム(Al)箔等の金属箔が挙げられる。
【0036】
<第1実施形態に係る全固体二次電池の製造方法>
次に、
図1~
図5を参照して、第1実施形態に係る全固体二次電池1の製造方法を説明する。
全固体二次電池1の製造方法は、次の工程を有する。
・ステップ1:正極層成形工程
・ステップ2:電解質層積層工程
・ステップ3:第1圧縮工程
・ステップ4:中間層積層工程
・ステップ5:第2圧縮工程
・ステップ6:負極層積層工程
・ステップ7:第3圧縮工程
・ステップ8:負極集電体積層工程
・ステップ9:第4圧縮工程
さらに、全固体二次電池1の製造方法においては、ステップ1~9をこの順番で行う。さらに、第1圧縮工程、第2圧縮工程、第3圧縮工程、及び第4圧縮工程においては、公知の圧縮工程が行われる。圧縮工程の一例として、本実施形態では、ロールプレス法が採用されている。
【0037】
<ロールプレス装置>
図2は、ロールプレス法を行うロールプレス装置の一部を示す断面図である。
ロールプレス装置は、互いに対向する第1ロールR1と第2ロールR2と、不図示の送り出し機構とを有する。第1ロールR1は、反時計回りに回転可能である。第2ロールR2は、時計回りに回転可能である。送り出し機構は、挿入部11から排出部12に向かう方向において、圧縮対象物20を第1ロールR1と第2ロールR2との間の隙間に送ることが可能である。第1ロールR1と第2ロールR2との間の距離は、適宜調整することが可能である。また、ロールプレス装置は、圧縮対象物20に加える圧縮力を適宜調整することが可能である。以下の説明では、第1ロールR1と第2ロールR2とを区別しない場合、第1ロールR1と第2ロールR2を単に「ロールR」と称する場合がある。
第1ロールR1及び第2ロールR2の各々は、圧縮対象物を圧縮する圧縮部材の一例である。
【0038】
<ロールプレス法>
圧縮対象物20は、第1層10A及び第2層10Bを有する積層体である。圧縮される前の状態において、圧縮対象物20は、厚さh0を有する。まず、送り出し機構は、挿入部11を通じて、圧縮対象物20を第1ロールR1と第2ロールR2との間の隙間に送る。第1ロールR1及び第2ロールR2の回転に伴って、圧縮対象物20は、挿入部11から排出部12に向けて移動する。圧縮対象物20は、第1ロールR1及び第2ロールR2によって圧縮され、圧縮対象物20の厚さが徐々に減少する。圧縮対象物20を構成する第1層10A及び第2層10Bの各々の厚さも徐々に減少する。圧縮された後の状態において、圧縮対象物20は、厚さh0よりも薄い厚さhを有する。
【0039】
次に、ステップ1~9の各々について説明する。
【0040】
<ステップ1:正極層成形工程>
まず、正極集電体2と、正極層3U、3Lとを準備する。
次に、正極集電体2の第1面2Uに正極層3Uを積層する。正極集電体2の第2面2Lに正極層3Lを積層する。これにより、正極集電体2と正極層3U、3Lとが積層された積層体が得られる。
【0041】
<ステップ2:電解質層積層工程>
次に、電解質層4U、4Lを準備する。
次に、正極層3Uに電解質層4Uを積層する。正極層3Lに電解質層4Lを積層する。これにより、正極集電体2、正極層3U、3L、及び電解質層4U、4Lが積層された積層体が得られる。
なお、電解質層積層工程においては、電解質層4U、4Lを直接的に正極層3U、3Lに成形するだけでなく、予め、別に成形された電解質層4U、4Lを正極層3U、3Lを転写する方法が採用されてもよい。
【0042】
<ステップ3:第1圧縮工程>
次に、
図2に示すロールプレス装置を用いて、電解質層積層工程で得られた積層体を圧縮する。具体的に、圧縮対象物20として、電解質層積層工程で得られた積層体を第1ロールR1と第2ロールR2との間に挿入する。第1ロールR1及び第2ロールR2の回転に伴って、積層体は徐々に圧縮される。これにより、
図3に示す第1圧縮体1MAが得られる。第1圧縮工程において、第1ロールR1及び第2ロールR2が積層体に付与する圧力(第1圧力)は、例えば、300MPa~500MPaである。
【0043】
<ステップ4:中間層積層工程>
次に、中間層5U、5Lを準備する。
次に、第1圧縮体1MAにおいて電解質層4Uが露出する面に中間層5Uを積層する。第1圧縮体1MAにおいて電解質層4Lが露出する面に中間層5Lを積層する。これにより、正極集電体2、正極層3U、3L、電解質層4U、4L、及び中間層5U、5Lが積層された積層体が得られる。
【0044】
<ステップ5:第2圧縮工程>
次に、
図2に示すロールプレス装置を用いて、中間層積層工程で得られた積層体を圧縮する。具体的に、圧縮対象物20として、中間層積層工程で得られた積層体を第1ロールR1と第2ロールR2との間に挿入する。第1ロールR1及び第2ロールR2の回転に伴って、積層体は徐々に圧縮される。これにより、
図4に示す第2圧縮体1MBが得られる。第2圧縮工程において、第1ロールR1及び第2ロールR2が積層体に付与する圧力(第2圧力)は、例えば、700MPa以上である。したがって、第1圧力と第2圧力との比較において、第2圧力は、第1圧力よりも高く設定されている。
【0045】
<ステップ6:負極層積層工程>
次に、負極層6U、6Lを準備する。
次に、第2圧縮体1MBにおいて中間層5Uが露出する面に負極層6Uを積層する。第2圧縮体1MBにおいて中間層5Lが露出する面に負極層6Lを積層する。これにより、正極集電体2、正極層3U、3L、電解質層4U、4L、中間層5U、5L、及び負極層6U、6Lが積層された積層体が得られる。
【0046】
<ステップ7:第3圧縮工程>
次に、
図2に示すロールプレス装置を用いて、負極層積層工程で得られた積層体を圧縮する。具体的に、圧縮対象物20として、負極層積層工程で得られた積層体を第1ロールR1と第2ロールR2との間に挿入する。第1ロールR1及び第2ロールR2の回転に伴って、積層体は徐々に圧縮される。これにより、
図5に示す第3圧縮体1MCが得られる。第3圧縮工程において、第1ロールR1及び第2ロールR2が積層体に付与する圧力(第3圧力)は、例えば、400MPa以下である。したがって、第2圧力と第3圧力との比較において、第2圧力は、第3圧力よりも高く設定されている。より好ましくは、第1圧力、第2圧力、及び第3圧力の比較において、第2圧力は第3圧力よりも高く、第1圧力は、第3圧力よりも高く設定されている。
【0047】
<ステップ8:負極集電体積層工程>
次に、負極集電体7U、7Lを準備する。
次に、第3圧縮体1MCにおいて負極層6Uが露出する面に負極集電体7Uを積層する。第3圧縮体1MCにおいて負極層6Lが露出する面に負極集電体7Lを積層する。これにより、正極集電体2、正極層3U、3L、電解質層4U、4L、中間層5U、5L、負極集電体7U、7L、及び負極集電体7U、7Lが積層された積層体が得られる。
【0048】
<ステップ9:第4圧縮工程>
次に、
図2に示すロールプレス装置を用いて、負極集電体積層工程で得られた積層体を圧縮する。具体的に、圧縮対象物20として、負極集電体積層工程で得られた積層体を第1ロールR1と第2ロールR2との間に挿入する。第1ロールR1及び第2ロールR2の回転に伴って、積層体は徐々に圧縮される。これにより、
図1に示す全固体二次電池1が得られる。
【0049】
<作用効果>
上述した方法によれば、第1圧縮工程を施すことにより、電解質層4U、4Lの各々は平坦化された状態となる。電解質層4U、4Lの各々が平坦化されているので、電解質層4U、4Lの各々に中間層5U、5Lを積層して第2圧縮工程を行ったとしても、電解質層4Uが中間層5Uに食い込むことを抑制することができ、電解質層4Lが中間層5Lに食い込むことを抑制することができる。
【0050】
第2圧縮工程を施すことにより、正極層3U、3L及び中間層5U、5Lが緻密化する。これにより、電解質層4Uが中間層5Uに食い込むことを抑制することができ、電解質層4Lが中間層5Lに食い込むことを抑制することができる。
【0051】
第3圧縮工程を施すことにより、全固体二次電池1の強度が向上する。例えば、全固体二次電池1の使用環境において、電解質層4U、4Lの面方向において圧縮及び非圧縮といった繰り返しの負荷が全固体二次電池1に生じたとしても、電解質層4U、4Lにおける延びや割れによる破損の発生を抑制することができる。
さらに、電解質層4Uと中間層5Uとの間の界面における平滑性が向上し、電解質層4Lと中間層5Lとの間の界面における平滑性が向上するので、均質性に優れる全固体二次電池1を実現することができる。
【0052】
さらに、第1圧縮体1MAは、正極集電体2、正極層3U、3L、及び電解質層4U、4Lを有する。第1圧縮工程を行ったとしても第1圧縮体1MAにおいて正極集電体2の破損を抑制することができる。
【0053】
さらに、正極集電体2の第1面2U上に正極層3Uが形成される。同様に、正極集電体2の第2面2L上に正極層3Lが形成される。つまり、正極集電体2の両面に正極層3U、3Lが形成された構造が得られる。このような構造では、第1圧縮工程、第2圧縮工程、及び第3圧縮工程を行った後であっても、第1面2Uに生じる正極層3Uの復元力と、第2面2Lに生じる正極層3Lの復元力とが互いに打ち消し合う。したがって、全固体二次電池1の全体において、反りの発生が抑制される。このため、全固体二次電池1の平面度を向上することができる。特に、第1圧縮工程、第2圧縮工程、及び第3圧縮工程において、ロールプレス法を用いる場合では、ロールRの表面と、正極集電体2の両面に積層される積層体の表面との間の摩擦係数差を低減することができる。これにより、全固体二次電池1の平面度を向上することができる。
【0054】
一般的に、電解質層は、粉体で構成されている。このため、負極層に電解質層を直接的に接合する構造では、電解質層に対する負極層の接合性が低い。これに対し、本実施形態によれば、中間層5Uが、負極層6Uと電解質層4Uとの間に介在されている。さらに、中間層5Lが、負極層6Lと電解質層4Lとの間に介在されている。また、中間層5U、5Lの各々は、固体電解質、炭化物、及びバインダを有している。
したがって、負極層に電解質層を直接的に接合する構造に比べて、中間層5U、5Lを備えた構造では、電解質層4Uに対する負極層6Uの接合性を高めることができ、電解質層4Lに対する負極層6Lの接合性を高めることができる。
【0055】
さらに、負極集電体積層工程と第4圧縮工程とを行っているので、負極層6U、6Lの各々に負極集電体7U、7Lが積層された構造を得ることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る全固体二次電池1について説明する。
第2実施形態は、負極層6U、6Lの構成の点で、第1実施形態とは異なる。
第2実施形態においては、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0057】
<負極層>
第2実施形態において、負極層6Uは、中間層5Uに対向する負極対向面を有する。負極層6Lは、中間層5Lに対向する負極対向面を有する。
【0058】
<第2実施形態に係る全固体二次電池の製造方法>
まず、第1実施形態と同様に、上述したステップ1~5を行う。
次に、ステップ6の負極層積層工程を行う前に、負極層6U、6Lの各々の負極対向面に粗面処理を行う。粗面処理においては、負極対向面の面粗度を20μm以上とする。
【0059】
粗面処理を行った後に、第1実施形態と同様に、上述したステップ6~9を行う。
【0060】
<作用効果>
この方法によれば、負極層6U、6Lの負極対向面に粗面処理を施すことで、負極対向面に微細な凹凸形状を形成することができる。この場合、負極対向面と中間層5U、5Lとが接触する界面では、中間層5U、5Lが負極対向面の凹凸形状に入り込み易くなる。したがって、負極層6Uと中間層5Uとの接合性を高めることができ、負極層6Lと中間層5Lとの接合性を高めることができる。
【0061】
さらに、負極対向面の面粗度を20μm以上に設定することによって、負極層6U、6Lの負極対向面における表面粗さを十分に確保することができる。また、負極対向面は、変形が生じやすい面となる。したがって、第3圧縮工程において負極層6U、6Lが変形した場合、負極層6Uと中間層5Uとの間で生じる応力が吸収され、負極層6Lと中間層5Lとの間で生じる応力が吸収される。したがって、クッション性を高めることができる。したがって、意図しない変形を抑制することができ、負極層6Uと中間層5Uとの間に均一な圧力を付与することができ、負極層6Lと中間層5Lとの間に均一な圧力を付与することができる。負極層6Uと中間層5Uとの接合性を高めることができ、負極層6Lと中間層5Lとの接合性を高めることができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る全固体二次電池1について説明する。
第3実施形態は、負極層6U、6L及び負極集電体7U、7Lの構成の点で、第1実施形態とは異なる。
第3実施形態においては、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0063】
<負極層>
第3実施形態において、負極層6U、6Lの各々は、負極層の機能と負極集電体の機能とを兼ね備えている。負極層6U、6Lの各々は、全固体二次電池1の最外層に相当する。言い換えると、負極層6Uは、積層圧縮構造体1Uの最外層に相当する。負極層6Lは、積層圧縮構造体1Lの最外層に相当する。
負極層6U、6Lの各々は、負極活物質層と、負極集電層とが積層された構造を有する。負極活物質層は、第1実施形態で説明した負極活物質を含む。負極集電層は、銅(Cu)箔、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム(Al)箔等の金属箔である。
【0064】
<第3実施形態に係る全固体二次電池の製造方法>
まず、第1実施形態と同様に、上述したステップ1~6を行う。
ステップ6の負極層積層工程では、第2圧縮体1MBにおいて中間層5Uが露出する面に、負極活物質層及び負極集電層の積層体である負極層6Uが積層される。同様に、第2圧縮体1MBにおいて中間層5Lが露出する面に、負極活物質層及び負極集電層の積層体である負極層6Lが積層される。
【0065】
次に、上述したステップ7を行う。ステップ7によって得られた第3圧縮体は、
図1に示す全固体二次電池1である。
【0066】
<作用効果>
この方法によれば、負極層6U、6Lの各々が負極活物質層及び負極集電層の積層体である。このため、ステップ8で説明した負極集電体7U、7Lを準備する必要がなく、ステップ9で説明した負極集電体7U、7Lを含む積層体を圧縮する必要もない。したがって、全固体二次電池1を製造するための工程数を削減することができる。
【0067】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る全固体二次電池の製造方法について説明する。
第4実施形態は、圧縮対象物20とロールRとの間に保護シートを介在させる点で、上述した第1~第3実施形態の各々とは異なる。
第4実施形態においては、第1~第3実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0068】
<保護シート>
上述した第1圧縮工程、第2圧縮工程、第3圧縮工程、及び第4圧縮工程のうち少なくとも1つの工程においては、
図6に示すように、圧縮対象物20と第1ロールR1との間に保護シート30を介在させている。言い換えると、第1ロールR1の第1圧縮面RF1と圧縮対象物20の第1圧縮対象面20Fとの間に保護シート30を介在させている。
同様に、圧縮対象物20と第2ロールR2との間に保護シート30を介在させている。言い換えると、第2ロールR2の第2圧縮面RF2と圧縮対象物20の第2圧縮対象面20Sとの間に保護シート30を介在させている。
この状態で、第1ロールR1及び第2ロールR2は、回転しながら、圧縮対象物20を圧縮する。
【0069】
上述した実施形態に係る全固体二次電池の製造方法において、保護シート30は、正極集電体2とロールRとの間に介在することが可能である。保護シート30は、負極層6U、6Lの各々とロールRとの間に介在することが可能である。また、保護シート30は、負極集電体7U、7Lの各々とロールRとの間に介在することが可能である。
【0070】
保護シート30は、正極集電体2、負極層6U、6L、及び負極集電体7U、7Lの各々とは別体である。言い換えると、保護シート30は、全固体二次電池を構成しない部材である。このため、保護シート30は、上述した複数の圧縮工程の各々が終了した後に、圧縮対象物20から取り除かれる。なお、1つの圧縮工程が終了した後に次の圧縮工程が行われるまでの間、保護シート30は、圧縮対象物20を覆ったままでもよい。
なお、
図6に示す例では、圧縮対象物20の両面に保護シート30が配置されているが、圧縮対象物20の少なくも一方の面に保護シート30が配置されていればよい。
【0071】
保護シート30の材料としては、例えば、金属箔や樹脂フィルムが採用される。金属箔としては、例えば、銅(Cu)箔、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム(Al)箔等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。保護シート30の厚さは、例えば、5~150μmの範囲内である。
【0072】
<作用効果>
この方法によれば、上述した実施形態によって得られる効果と同様又は類似の効果が得られる。第1圧縮工程、第2圧縮工程、第3圧縮工程、及び第4圧縮工程のうち少なくとも1つの圧縮工程において、正極集電体2、負極層6U、6L、及び負極集電体7U、7Lに圧力が加わったとしても、保護シート30が用いられているため、正極集電体2、負極層6U、6L、及び負極集電体7U、7Lにおける破損を抑制することができる。
特に、正極集電体2、負極層6U、6L、及び負極集電体7U、7Lが薄い箔状の材料である場合、正極集電体2、負極層6U、6L、及び負極集電体7U、7Lの破損を抑制する効果が得られる。
【0073】
<変形例>
上述した実施形態においては、正極集電体2の第1面2U及び第2面2Lの各々に積層圧縮構造体1U、1Lを形成する場合を説明した。正極集電体2の一方の面のみに積層圧縮構造体を形成してもよい。
上述した実施形態においては、圧縮工程の一例としてロールプレス法を用いる場合を説明した。圧縮部材を用いて圧縮対象物20を圧縮可能であれば、ロールプレス法以外の圧縮方法が採用されてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0075】
1 全固体二次電池
1U、1L 積層圧縮構造体
1MA 第1圧縮体
1MB 第2圧縮体
1MC 第3圧縮体
2 正極集電体
2U 第1面
2L 第2面
3U、3L 正極層
4U、4L 電解質層
5U、5L 中間層
6U、6L 負極層
7U、7L 負極集電体
10A 第1層
10B 第2層
11 挿入部
12 排出部
20 圧縮対象物
30 保護シート
3U 正極層
R1 第1ロール
R2 第2ロール
R ロール