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特開2024-141232電子機器、音声データ判別方法および音声データ判別プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141232
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電子機器、音声データ判別方法および音声データ判別プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/18 20060101AFI20241003BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G10H1/18 Z
G10H1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052758
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】曽我 尚人
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478HH01
(57)【要約】
【課題】複数の入力手段からMIDI変調信号またはオーディオ信号が含まれる音声データを出力する際の処理負荷を低減できる電子機器、音声データ判別方法および音声データ判別プログラムを提供すること。
【解決手段】ディスクドライブ50、PC51及び携帯端末52(入力元)から入力された音声データにおける、左チャンネル/右チャンネルがそれぞれ入力系統に設定され、入力系統ごとに音声データの判別が順次行われる。複数の入力元の入力系統を順次切り替えて入力される信号を判別することで、全ての入力元および入力系統を同時に判別することなく、各入力元で入力される音声データを判別できる。これにより、複数の入力元から音声データとしてオーディオデータまたはPPデータ含まれるものを出力する際の処理負荷を低減できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力する電子機器であって、
前記音声データを入力する複数の入力手段と、
複数の前記入力手段のうちの対象の入力手段を順次切り替えながら、その対象の入力手段から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別手段と、
前記順次判別手段によって、対象の入力手段から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力手段と、
前記順次判別手段によって、対象の入力手段から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力手段と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記PP出力手段または前記オーディオ出力手段によって音声データが出力される場合に、前記順次判別手段による判別を停止することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記PP出力手段または前記オーディオ出力手段で出力していた音声データの、前記入力手段からの入力が途絶した場合に、再度、前記順次判別手段による判別を実行することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記オーディオ出力手段によるオーディオデータの出力と共に、前記音声データがPPデータであるかを判別する出力中判別手段を備え、
前記PP出力手段は、前記出力中判別手段により音声データがPPデータであると判別された場合に、前記オーディオ出力手段によるオーディオデータの出力を停止すると共に、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するものであることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
前記MIDI変調信号は、前記MIDIデータをパルス変調した信号であり、
前記順次判別手段は、前記音声データから所定幅のパルスが連続して第1所定数検出された場合に、当該音声データがPPデータであると判別するものであり、
前記出力中判別手段は、前記音声データから所定幅のパルスが連続して第2所定数検出された場合に、当該音声データがPPデータであると判別するものであることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2所定数には、前記第1所定数よりも大きな値が設定されることを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
音声データを入力する複数の入力手段を備え、左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力する電子機器で実行される音声データ判別方法であって、
複数の前記入力手段のうちの対象の入力手段を順次切り替えながら、その対象の入力手段から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別ステップと、
前記順次判別ステップによって、対象の入力手段から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力ステップと、
前記順次判別ステップによって、対象の入力手段から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力ステップと、を備えていることを特徴とする音声データ判別方法。
【請求項8】
音声データを入力する複数の入力部を備え、左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力するコンピュータで実行される音声データ判別プログラムであって、
複数の前記入力部のうちの対象の入力部を順次切り替えながら、その対象の入力部から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別ステップと、
前記順次判別ステップによって、対象の入力部から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力ステップと、
前記順次判別ステップによって、対象の入力部から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力ステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする音声データ判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、音声データ判別方法および音声データ判別プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左または右チャンネルのうちの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号を、他方のチャンネルにオーディオ信号をそれぞれ設定した音声データであるプレイヤピアノデータ(以下「PPデータ」と略す)を音楽用CDに記録し、その音楽用CDをオーディオ再生装置30で再生することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-94593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音楽用CDには、音声データとしてPPデータが記録されたものの他にも、音声データとして左右のチャンネルにオーディオ信号のみが設定されたものがある。従って、オーディオ再生装置30において音楽用CDの音声データを正確に再生するためには、音楽用CDから読み取られた音声データを解析し、その音声データがPPデータによるものか又はオーディオ信号のみによるものかを判別する必要がある。
【0005】
しかしながら昨今では、音楽用CDに加え、無線通信や有線通信による複数の入力系統によって音声データが入力され、更にそれぞれの入力系統で独立して音声データが入力可能に構成される。よって、オーディオ再生装置30の入力系統からそれぞれの入力された音声データを正確に再生するには、全入力系統から入力される音声データを常に判別しなければならず、オーディオ再生装置30の処理負荷が増大するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数の入力手段からMIDI変調信号またはオーディオ信号が含まれる音声データを出力する際の処理負荷を低減できる電子機器、音声データ判別方法および音声データ判別プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の電子機器は、左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力するものであり、前記音声データを入力する複数の入力手段と、複数の前記入力手段のうちの対象の入力手段を順次切り替えながら、その対象の入力手段から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別手段と、前記順次判別手段によって、対象の入力手段から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力手段と、前記順次判別手段によって、対象の入力手段から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力手段と、を備えている。
【0008】
本発明の音声データ判別方法は、音声データを入力する複数の入力手段を備え、左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力する電子機器で実行される方法であり、複数の前記入力手段のうちの対象の入力手段を順次切り替えながら、その対象の入力手段から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別ステップと、前記順次判別ステップによって、対象の入力手段から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力ステップと、前記順次判別ステップによって、対象の入力手段から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力ステップと、を備えている。
【0009】
また本発明の音声データ判別プログラムは、音声データを入力する複数の入力部を備え、左または右チャンネルの一方のチャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され他方のチャンネルにオーディオ信号が設定されたPPデータと、オーディオ信号のみで構成されたオーディオデータとのいずれかによって構成される音声データを出力するコンピュータで実行されるものであり、複数の前記入力部のうちの対象の入力部を順次切り替えながら、その対象の入力部から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する順次判別ステップと、前記順次判別ステップによって、対象の入力部から入力される音声データがPPデータの場合、前記PPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、前記PPデータにおけるオーディオ信号を出力するPP出力ステップと、前記順次判別ステップによって、対象の入力部から入力される音声データがオーディオデータの場合、前記オーディオデータにおけるオーディオ信号を出力するオーディオ出力ステップと、を前記コンピュータに実行させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子ピアノの外観を表す図である。
図2】音声データの判別を説明する図である。
図3】電子ピアノの機能ブロック図である。
図4】電子ピアノの電気的構成を示すブロック図である。
図5】メイン処理のフローチャートである。
図6】順次判別処理のフローチャートである。
図7】(a)は、PPコンテンツ判別処理のフローチャートであり、(b)は、オーディオPPコンテンツ判別処理のフローチャートである。
図8】(a)は、PPデコード処理のフローチャートであり、(b)は、オーディオ再生処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して本実施形態の電子ピアノ1の概要を説明する。図1は、電子ピアノ1の外観を表す図であり、電子ピアノ1は、ユーザHの演奏に基づいた楽音や、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格の楽曲データであるMIDIデータに基づいて楽音や、音声データにおけるオーディオ信号を再生することによる楽音を発音する電子機器である。
【0012】
電子ピアノ1には、鍵盤2と、ユーザHからの各種設定が入力される設定キー3と、各種設定の設定状態等が表示されるLCD4とが設けられる。鍵盤2は、ユーザHの演奏による演奏情報を取得するための入力装置である。鍵盤2には、複数の鍵2aが配設され、ユーザHによる鍵2aの押鍵/離鍵操作に応じたMIDI規格の演奏情報が、CPU10(図4参照)へ出力され、楽音として出力される。
【0013】
鍵盤2にはまた、鍵2aのそれぞれを独立して上下に駆動させるソレノイド2bが設けられる。後述のディスクドライブ50等から入力されたMIDIデータから演奏情報のうちのノートオンが取得された場合にソレノイド2bによって鍵2aを下方に駆動させることで、鍵2aの押鍵が実現される。一方で、MIDIデータから演奏情報のうちのノートオフが取得された場合に、ソレノイド2bによって鍵2aを上方に駆動させることで鍵2aの離鍵が実現される。
【0014】
入力されたMIDIデータに基づくソレノイド2bによる鍵2aの押鍵/離鍵と、当該MIDIデータによる楽音の発音とを同期させることで、ユーザHに電子ピアノ1が自動演奏されているように見せることができる。以下、このようなMIDIデータに基づきソレノイド2bを駆動させ、鍵2aを動作させることを「鍵2aの自動操作」という。
【0015】
本実施形態の電子ピアノ1は、鍵盤2による楽音の出力に加え、入力された音声データに基づく楽音が出力できるように構成される。入力される音声データとして、オーディオデータと、プレイヤピアノデータ(PlayerPianoデータ、以下「PPデータ」と略す)とが設けられる。オーディオデータは、左チャンネル及び右チャンネルの両方にオーディオ信号が記録されたものである。音声データとしてオーディオデータが入力された場合は、そのオーディオデータにおけるオーディオ信号が放音される。
【0016】
PPデータは、音声データにおける左チャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号が設定され、右チャンネルにオーディオ信号がそれぞれ設定されたものである。本実施形態のPPデータのMIDI変調信号の変調方式としては、パルス変調が用いられる。変調方式は、PPデータを作成するユーザHやメーカによって様々なもの(例えば変調に用いられるパルス幅)が適宜採用される。
【0017】
音声データとしてPPデータが入力された場合は、PPデータの右チャンネルに含まれるオーディオ信号を放音すると共に、左チャンネルに含まれるMIDI変調信号をMIDIデータに復号されて楽音として出力され、更にそのMIDIデータを用いて鍵2aが自動操作される。
【0018】
本実施形態の電子ピアノ1には、上記のようなオーディオデータ又はPPデータによって構成された音声データが、複数の入力元から任意のタイミングで入力される。音声データの入力元として、電子ピアノ1に接続された音楽用コンパクトディスク(音楽用CD)等の光ディスクから音声データを読み取るディスクドライブ50と、電子ピアノ1に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)51と、電子ピアノ1に無線通信を介して接続された携帯端末52とが設けられる。
【0019】
これら複数の入力元から任意のタイミングで入力される音声データを正確に出力するためには、全ての入力元から入力される音声データを常に判別する必要があるが、そうすると電子ピアノの処理負荷が増大し、音声データがレスポンス良く出力されない虞がある。そこで本実施形態では、音声データの判別を、入力元からの音声データの左チャンネル/右チャンネルのチャンネル毎に順次行うことで、音声データの判別にかかる電子ピアノ1の処理負荷を低減させる。図2を参照して、本実施形態における音声データの判別手法を説明する。
【0020】
図2は、音声データの判別を説明する図である。本実施形態では、ディスクドライブ50、PC51及び携帯端末52から入力された音声データにおける、左チャンネル/右チャンネルがそれぞれ「入力系統」に設定され、入力系統ごとに音声データの判別が順次行われる。
【0021】
具体的に入力系統として、ディスクドライブ50から入力される音声データの左チャンネルと、ディスクドライブ50から入力される音声データの右チャンネルと、PC51から入力される音声データの左チャンネルと、PC51から入力される音声データの右チャンネル、携帯端末52から入力される音声データの左チャンネルと、携帯端末52から入力される音声データの右チャンネルとの6つが設けられる。以下、入力系統の「ディスクドライブ50から入力される音声データの左チャンネル」等を「ディスクドライブ50・左チャンネル」等と略す。
【0022】
入力される信号の判別を行う入力系統の順番は、ディスクドライブ50・左チャンネル→ディスクドライブ50・右チャンネル→PC51・左チャンネル→PC51・右チャンネル→携帯端末52・左チャンネル→携帯端末52・右チャンネル、とされる。
【0023】
入力系統が判別された結果、入力される信号がPPデータ又はオーディオデータであると判別された場合は、入力系統を順次切り替えての判別が停止され、判別された入力される信号の出力が行われる。一方で「携帯端末52・右チャンネル」まで判別を行ったが、PPデータ又はオーディオデータが判別されなかった場合は、再度、最初の「ディスクドライブ50・左チャンネル」からの入力される信号の判別が繰り返される。以下、入力系統を順次切り替えて入力される信号を判別することを「順次判別」という。
【0024】
入力される信号の具体的な判別は、対象の入力系統において所定の時間LN間に入力される信号を監視することで行われる。図2中の領域Scは、判別が行われる入力系統の対象およびその期間をそれぞれ表している。
【0025】
本実施形態において、時間LNには、音声データの500サンプル分の時間の長さが設定される。例えば音声データのサンプリング周波数が44.1kHzの場合は、時間LNは500/44100秒(約11.3ミリ秒)とされる。なお、時間LNは音声データの500サンプル分以上でも、500サンプル分以下でも良い。
【0026】
時間LN間、対象の入力系統で入力される信号が観測され、その信号において所定のパルス幅(例えば260マイクロ秒または300マイクロ秒)が所定のパルス回数閾値だけ連続して検出されたかが確認される。本実施形態の順次判別におけるパルス回数閾値には、上記の時間LNや所定のパルス幅のそれぞれ長さに応じて「10」が設定される。
【0027】
なお、順次判別におけるパルス回数閾値は、10に限られず、10以上でも10以下でも良い。順次判別におけるパルス回数閾値に10以外の値が設定される場合でも、順次判別におけるパルス回数閾値には、時間LNや所定のパルス幅のそれぞれ長さに応じた値が設定されるのが好ましい。
【0028】
そして、所定のパルス幅がパルス回数閾値だけ連続して検出された場合に、その入力系統で入力される信号がMIDI変調信号と判別される。更に検出されたパルス幅からMIDI変調信号の変調方式が解析される。なお、MIDI変調信号の変調方式の解析は既知の技術が用いられる。
【0029】
一方で、時間LN間入力される信号において所定のパルス幅がパルス回数閾値だけ連続して検出されない場合は、入力される信号のレベルの絶対値を加算(積分)し、その加算値が所定のレベルを超えているかが確認される。加算値がレベル閾値を超えている場合は、その入力系統で入力される信号がオーディオ信号であると判別される。
【0030】
所定のパルス幅がパルス回数閾値だけ連続して検出されず、かつ、入力される信号のレベルの加算値が所定のレベルを超えない場合は、その入力系統は信号が入力されない無信号であると判別される。
【0031】
このような判別により、左チャンネルに対応する入力系統からの信号がMIDI変調信号であるとされた場合、これらの入力系統に該当する入力元から入力される音声データはPPデータと判別され、そのPPデータの左チャンネルのMIDI変調信号が復号されたMIDIデータによる楽音の出力および鍵2aの自動操作と、PPデータの右チャンネルのオーディオ信号の出力とが行われる。
【0032】
また、左チャンネルに対応する入力系統からの信号がオーディオ信号であるとされた場合、これらの入力系統に該当する入力元から入力される音声データは、オーディオデータと判別され、そのオーディオデータの左チャンネル及び右チャンネルのオーディオ信号の出力が行われる。
【0033】
左チャンネルに対応する入力系統で無信号と判別されたが、同一の入力元の右チャンネルに該当する入力系統からの信号がオーディオ信号である場合も、これらの入力系統に対応する入力元から入力される音声データは、オーディオデータと判別され、そのオーディオデータの左チャンネル及び右チャンネルのオーディオ信号の出力が行われる。
【0034】
一方で、左チャンネルに対応する入力系統と、同一の入力元の右チャンネルに該当する入力系統とが無信号の場合は、これらの入力系統に該当する入力元から音声データが入力されていないと判別され、その入力系統の判別を終え、次の入力系統で入力される信号の判別が継続される。
【0035】
このように、複数の入力元の入力系統を順次切り替えて入力される信号を判別することで、全ての入力元および入力系統を同時に判別することなく、各入力元で入力される音声データを判別できる。これにより、複数の入力元から音声データとしてオーディオデータまたはPPデータ含まれるものを出力する際の処理負荷を低減できる。また、入力系統を順次判別することで、複数の入力元の全て入力系統において音声データの判別が可能となる。これにより、入力元および入力系統によって音声データが判別されない事態を防止できる。
【0036】
上記した通り、入力される信号がオーディオ信号またはMIDI変調信号と判別され、入力される信号を出力する際には、順次判別が停止される。これにより、入力される信号の出力、例えばMIDI変調信号を復号する処理等に電子ピアノ1の処理能力を集中させることができるので、入力される信号の出力をレスポンス良く行うことができる。
【0037】
また、ユーザHが音声データの入力元を切り替える等して、これまで音声データが入力されていた入力元からの音声データの供給が途絶した場合は、順次判別が再開される。これにより、ユーザHが切り替えた後の入力元からの音声データの出力を、ユーザHが電子ピアノ1を操作することなく行うことができる。
【0038】
ところで、左チャンネルに対応する入力系統で無信号、かつ、同一の入力元の右チャンネルに対応する入力系統からの信号がオーディオ信号である場合に、当該入力元から入力される音声データがオーディオデータと判別され、そのオーディオデータの左チャンネル及び右チャンネルのオーディオ信号の出力が行われる。しかしこの場合、実際には、左チャンネルにMIDI変調信号が設定されているが、順次判別が行われたタイミングにおいて一時的に左チャンネルが無信号だった場合も含まれる。
【0039】
また順次判別において、左チャンネルの信号がオーディオ信号であると判別された後に、ユーザHが当該入力元から入力される音声データをPPデータに切り替えると、順次判別後において、左チャンネルの信号がオーディオ信号からMIDI変調信号に切り替わってしまう。
【0040】
これらの場合に、左チャンネルのMIDI変調信号をオーディオ信号として出力すると、MIDI変調信号のパルス信号がそのまま放音されるので、聴取者が違和感を覚える虞がある。
【0041】
そこで本実施形態では、入力元からの音声データがオーディオデータと判別された場合でも、当該入力元からの音声データがオーディオデータ又はPPデータであるかの判別が継続して行われ、音声データがPPデータである場合は、オーディオデータの出力からPPデータの出力に切り替えられる。このようなオーディオデータの出力中に行われる判別を「出力中判別」という。出力中判別における音声データの判別手法は、上記した順次判別における手法と同様だが、入力された信号がMIDI変調信号を否かの判別のために用いられるパルス回数閾値に「100」が設定される。
【0042】
このような出力中判別により、順次判別においてPPデータをオーディオデータとご判別した場合や、該当する入力元からの音声データをオーディオデータからPPデータに切り替えた場合でも、PPデータにおけるMIDI変調信号がそのまま放音されるのが抑制されるので、聴取者の違和感を抑制することができる。
【0043】
また、出力中判別におけるパルス回数閾値(「100」)には、順次判別におけるパルス回数閾値(「10」)よりも大きな値が設定される。即ち出力中判別においては、MIDI変調信号と判別するために観測されるパルスの数を多くなるので、MIDI変調信号の誤検知が抑制され、MIDI変調信号か否かをより正確に判別することができる。
【0044】
一方で順次判別においては、パルス回数閾値に出力中判別よりも小さな値が設定されることで、MIDI変調信号か否かを迅速に判別することができる。これにより、順次判別による入力系統を切り替えながら判別を迅速に行うことができる。
【0045】
なお、出力中判別におけるパルス回数閾値も100に限られず、100以上でも100以下でも良い。出力中判別におけるパルス回数閾値に100以外の値が設定される場合でも、出力中判別におけるパルス回数閾値には、上記の順次判別におけるパルス回数閾値よりも大きな値が設定されるのが好ましい。
【0046】
次に図3を参照して、電子ピアノ1の機能を説明する。図3は、電子ピアノ1の機能ブロック図である。図3に示すように、電子ピアノ1は、入力手段100と、順次判別手段101と、PP出力手段102と、オーディオ出力手段103とを有する。
【0047】
入力手段100は、音声データを入力する手段であり、図4で後述の外部入出力装置19及び無線通信装置20で実現される。入力手段100は電子ピアノ1に複数設けられる。順次判別手段101は、複数の入力手段100のうちの対象の入力手段100を順次切り替えながら、その対象の入力手段100から入力される音声データがPPデータ又はオーディオデータのいずれかであるかを判別する手段であり、図4で後述するCPU10で実現される。
【0048】
PP出力手段102は、順次判別手段101によって、対象の入力手段100から入力される音声データがPPデータの場合、そのPPデータにおけるMIDI変調信号を復号して出力し、PPデータにおけるオーディオ信号を出力する手段であり、CPU10で実現される。またオーディオ出力手段103は、順次判別手段101によって、対象の入力手段100から入力される音声データがオーディオデータの場合、そのオーディオデータにおけるオーディオ信号を出力する手段であり、CPU10で実現される。
【0049】
このように、音声データを判別する入力手段100を順次切り替えることで、全ての入力手段を同時に判別することなく、各入力手段100で入力される音声データを判別できる。これにより、複数の入力手段100からMIDI変調信号またはオーディオ信号が含まれる音声データを出力する際の処理負荷を低減できる。また、入力手段100を順次判別することで、複数の入力手段100の全てにおいて音声データの判別が可能となる。これにより、入力手段100によって音声データが判別されない事態を防止できる。
【0050】
次に図4を参照して、電子ピアノ1の電気的構成を説明する。図4は、電子ピアノ1の電気的構成を示すブロック図である。電子ピアノ1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12と、上記した鍵盤2、設定キー3及びLCD4と、音源13と、Digital Signal Processor14(以下「DSP14」と称す)と、外部入出力装置19と、無線通信装置20とを有し、それぞれバスライン15を介して接続される。
【0051】
CPU10は、バスライン15により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は、CPU10により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、制御プログラム11aを含む。CPU10によって制御プログラム11aが実行されると、図5のメイン処理が実行される。
【0052】
RAM12は、CPU10がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、上記のパルス回数閾値が記憶されるパルス回数閾値12aと、対象の入力系統から入力される信号から所定のパルス幅が連続して検出された回数が記憶されるパルス検出回数12bと、対象の入力系統から入力される信号のレベルの絶対値の加算値が記憶されるレベル加算値12cと、MIDI変調信号が検出されたかどうかが記憶されるMIDI検出フラグ12dと、オーディオ信号が検出されたかどうかが記憶されるオーディオ検出フラグ12eと、順次判別において入力系統の観測時間に相当するループ回数が記憶されるループ回数12fとが設けられる。
【0053】
音源13は、CPU10から入力される演奏情報に基づく波形データを出力する装置である。DSP14は、音源13から入力された波形データを演算処理するための演算装置である。DSP14には、デジタルアナログコンバータ(DAC)16が接続され、そのDAC16にはアンプ17が接続され、そのアンプ17にはスピーカ18が接続される。
【0054】
外部入出力装置19は、外部の機器からの情報を入出力するための装置である。外部入出力装置19には、上記したディスクドライブ50及びPC51が接続され、これらからの音声データが入力される。無線通信装置20は、外部の機器と無線通信をするための装置である。無線通信装置20を介して、上記した携帯端末52からの音声データが入力される。
【0055】
次に図5~8を参照して、電子ピアノ1のCPU10で実行される処理を説明する。図5は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、電子ピアノ1の電源が投入された場合に実行される処理である。
【0056】
メイン処理はまず、電子ピアノ1の動作モードに「自動検出モード」を設定し、入力系統に「ディスクドライブ50・左チャンネル」を設定し、パルス回数閾値12aに10を設定し、MIDI検出フラグ12d及びオーディオ検出フラグ12eに「オフ」を設定し、パルス検出回数12b、レベル加算値12c及びループ回数12fにそれぞれ0を設定する(S1)。電子ピアノ1の動作モードとして、上記した順次判別を行う「自動検出モード」と、PPデータの出力を行う「PPデコードモード」と、オーディオデータの出力を行う「オーディオ再生モード」とが設けられる。
【0057】
S1の処理の後、入力系統(即ちS1の処理で設定された「ディスクドライブ50・左チャンネル」)からの信号の取得を開始する(S2)。S2の処理の後、動作モードを確認する(S3)。S3の処理において、動作モードが自動検出モードの場合は(S3:「自動検出モード」)、S4の順次判別処理を行い、動作モードがPPデコードモードの場合は(S3:「PPデコードモード」)、S5のPPデコード処理を行い、また、動作モードがオーディオ再生モードの場合は(S3:「オーディオ再生モード」)、S6のオーディオ再生処理を行う。図6~8を参照して、S4の順次判別処理、S5のPPデコード処理およびS6のオーディオ再生処理を説明する。
【0058】
図6は、順次判別処理のフローチャートである。順次判別処理はまず、ループ回数12fの値が、上記の時間LNに相当する値以上かを確認する(S20)。S20の処理の後、入力系統を次の入力系統に変更し(S21)、ループ回数12fに0を設定する(S22)。
【0059】
即ち対象の入力系統の信号の、後述のS23のPPコンテンツ判別処理やS27のオーディオ判別処理による監視および判別が時間LN継続したため、対象の入力系統が次の入力系統に切り替えられる。判別する入力系統の順番は、上記した通り、ディスクドライブ50・左チャンネル→ディスクドライブ50・右チャンネル→PC51・左チャンネル→PC51・右チャンネル→携帯端末52・左チャンネル→携帯端末52・右チャンネルとされる。
【0060】
S22の処理の後、又は、ループ回数12fの値が、上記の時間LNに相当する値より小さい場合は(S20:No)、S23のPPコンテンツ判別処理を実行する。ここで図7(a)を参照して、PPコンテンツ判別処理を説明する。
【0061】
図7(a)は、PPコンテンツ判別処理のフローチャートである。PPコンテンツ判別処理はまず、対象の入力系統から取得された信号から所定のパルス幅(例えば0.2ミリ秒または0.3ミリ秒)が連続して検出されたかを確認する(S40)。より具体的に、対象の入力系統から所定のパルス幅が初めて検出されたか、又は、所定のパルス幅が連続して検出されたかが確認される。
【0062】
S40の処理において、対象の入力系統から取得された信号から所定のパルス幅が検出された場合は(S40:Yes)、パルス検出回数12bに1を加算する(S41)。S41の処理の後、パルス検出回数12bの値がパルス回数閾値12aの値以上かを確認する(S42)。S42の処理において、パルス検出回数12bの値がパルス回数閾値12aの値以上の場合は(S42:Yes)、対象の入力系統から取得された信号がMIDI変調信号であると判別されるので、MIDI検出フラグ12dにオンを設定する(S43)。S43の処理の後、レベル加算値12cに0を設定する(S44)。
【0063】
S40の処理において、対象の入力系統から取得された信号から所定のパルス幅が連続して検出されない場合(S40:No)、又は、S44の処理の後、パルス検出回数12bに0を設定する(S45)。S42の処理において、パルス検出回数12bの値がパルス回数閾値12aの値より小さい場合、又は、S45の処理の後、PPコンテンツ判別処理を終了する。
【0064】
図6に戻る。S23のPPコンテンツ判別処理の後、MIDI検出フラグ12dがオンかを確認する(S24)。S24の処理において、MIDI検出フラグ12dがオンの場合は(S24:Yes)、動作モードに「PPデコードモード」を設定し(S25)、MIDI検出フラグ12dにオフを設定する(S26)。これによって、S23のPPコンテンツ判別処理で、MIDI変調信号、つまりPPデータと判別された対象の入力系統に該当する入力元の音声データが、図8(a)で後述のS5のPPデコード処理で出力される。
【0065】
S24の処理において、MIDI検出フラグ12dがオフの場合は(S24:No)、S27のオーディオ判別処理を実行する。ここで図7(b)を参照して、オーディオ判別処理を説明する。
【0066】
図7(b)は、オーディオ判別処理のフローチャートである。オーディオ判別処理はまず、対象の入力系統から取得された信号のレベルの絶対値をレベル加算値12cに加算する(S50)。S50の処理の後、レベル加算値12cが所定のレベル以上かを確認する(S51)。
【0067】
S51の処理において、レベル加算値12cが所定のレベル以上の場合は(S51:Yes)、オーディオ検出フラグ12eにオンを設定し(S52)、レベル加算値12cに0を設定する(S53)。S51の処理において、レベル加算値12cが所定のレベルより小さい場合(S51:No)、又は、S53の処理の後、オーディオ判別処理を終了する。
【0068】
図6に戻る。S27のオーディオ判別処理の後、オーディオ検出フラグ12eがオンかを確認する(S28)。S28の処理において、オーディオ検出フラグ12eがオンの場合は(S28:Yes)、動作モードに「オーディオ再生モード」を設定し(S29)、パルス回数閾値12aに100を設定し(S30)、オーディオ検出フラグ12eにオフを設定する(S31)。これによって、S27のオーディオ判別処理で、オーディオ信号、つまりオーディオデータと判別された対象の入力系統に該当する入力元の音声データが、図8(b)で後述のS6のオーディオ再生処理で出力される。
【0069】
S26,S31の処理の後、パルス検出回数12b、レベル加算値12c及びループ回数12fに0を設定する(S32)。S28の処理において、オーディオ検出フラグ12eがオフの場合は(S28:No)、ループ回数12fに1を加算する(S33)。S32,S33の処理の後、順次判別処理を終了する。
【0070】
次に図8(a)を参照して、S5のPPデコード処理を説明する。図8(a)は、PPデコード処理のフローチャートである。PPデコード処理はまず、対象の入力元、即ちS23のPPコンテンツ判別処理により、MIDI変調信号が入力される入力系統に該当する入力元(ディスクドライブ50、PC51又は携帯端末52)から音声データとしてPPデータが検出されているかを確認する(S60)。
【0071】
S60の処理において、PPデータが検出されている場合は(S60:Yes)、検出されたPPデータのMIDI変調信号を取得し(S61)、取得されたMIDI変調信号をMIDIデータに復号して出力する(S62)。S62の処理においては、復号されたMIDIデータが楽音として出力され、更にそのMIDIデータを用いて鍵2aが自動操作される。S62の処理の後、検出されたPPデータのオーディオ信号を取得し、取得されたオーディオ信号を放音する(S63)。
【0072】
S60の処理において、対象の入力元からPPデータが検出されない場合(S60:No)、例えば、対象の入力元からのPPデータの入力が途絶した場合や、前回のS62の処理やS63の処理でPPデータから取得されたMIDIデータやオーディオ信号の出力に失敗した場合は、再度S4の順次判別処理を行うため、動作モードに「自動検出モード」を設定する(S64)。S63,S64の処理の後、PPデコード処理を終了する。
【0073】
次に図8(b)を参照して、S6のオーディオ再生処理を説明する。図8(b)は、オーディオ再生処理のフローチャートである。オーディオ再生処理はまず、対象の入力元、即ちS27のオーディオ判別処理により、オーディオ信号が入力される入力系統に該当する入力元から音声データとしてオーディオデータが検出されているかを確認する(S70)。
【0074】
S70の処理において、オーディオデータが検出されている場合は(S70:Yes)、検出されたオーディオデータのオーディオ信号を取得し、取得されたオーディオ信号を出力(放音)する(S71)。S71の処理の後、S23のPPコンテンツ判別処理を実行する。
【0075】
S23のPPコンテンツ判別処理の後、MIDI検出フラグ12dがオンかを確認する(S72)。S72の処理において、MIDI検出フラグ12dがオンの場合は(S72:Yes)、対象の入力元からPPデータが入力されている場合なので、S5のPPデコード処理を行うため、動作モードに「PPデコードモード」を設定し(S73)、MIDI検出フラグ12dにオフを設定し(S74)、パルス検出回数12b、レベル加算値12c及びループ回数12fに0を設定する(S75)。
【0076】
S70の処理において、オーディオデータが検出されない場合(S70:No)、例えば、対象の入力元からのオーディオデータの入力が途絶した場合や、前回のS71の処理でオーディオ信号の出力に失敗した場合は、再度S4の順次判別処理を行うため、動作モードに「自動検出モード」を設定する(S76)。
【0077】
S75,S76の処理の後、次回の自動検出モードによる順次判別に備えるため、パルス回数閾値12aに10を設定する(S77)。S72の処理において、MIDI検出フラグ12dがオフの場合(S72:No)、又は、S77の処理の後、オーディオ再生処理を終了する。
【0078】
図5に戻る。S4~S6の処理の後、電子ピアノ1のその他の処理を実行し(S7)、S3以下の処理を繰り返す。
【0079】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0080】
上記実施形態では、音声データを入力する入力元を、ディスクドライブ50、PC51及び携帯端末52としたが、これに限られない。これら以外の入力元(例えばインターネットに接続された音声データの配信サーバ)から音声データを入力しても良い。
【0081】
また、楽音の出力と鍵2aの自動操作とを、同一のMIDIデータで行うものに限られず、楽音の出力と鍵2aの自動操作とを別々のMIDIデータで行っても良い。この場合、楽音を出力するためのMIDIデータをディスクドライブ50から取得し、鍵2aの自動操作を行うためのMIDIデータをPC51から取得する等、楽音を出力するためのMIDIデータと鍵2aの自動操作を行うためのMIDIデータとを別々の入力元から取得しても良い。
【0082】
上記実施形態では、入力元の左チャンネル/右チャンネルのチャンネル毎に入力系統を構成したが、入力系統の構成はこれに限られない。例えば、入力元をまとめて1つの入力系統としても良い。この場合、入力元の左チャンネル/右チャンネルから入力される信号を並行して判別しても良いし、入力元の左チャンネル/右チャンネルを交互に判別しても良い。また、複数の入力元(例えば、ディスクドライブ50及びPC51)を1つの入力系統としても良い。
【0083】
上記実施形態では、判別する入力系統の順番を、ディスクドライブ50・左チャンネル→ディスクドライブ50・右チャンネル→PC51・左チャンネル→PC51・右チャンネル→携帯端末52・左チャンネル→携帯端末52・右チャンネルとしたが、これに限られず、例えば、判別する入力系統の順番を都度ランダムに異ならせても良い。
【0084】
また、判別された入力系統の回数をそれぞれの入力系統ごとにカウントして記憶しておき、当該回数が多い入力系統の順に判別を行っても良い。これにより、ユーザHが音声データを入力させる回数が多い入力系統(入力手段)から判別が行われるので、ユーザHが音声データの入力を開始してから、その音声データが判別されて再生されるまでのタイムラグを短縮することができる。
【0085】
上記実施形態では、PPデータとして、左チャンネルにMIDIデータを変調したMIDI変調信号を設定し、右チャンネルにオーディオ信号を設定したものを用いたが、これに限られない。PPデータを、左チャンネルにオーディオ信号を設定し、右チャンネルにMIDI変調信号を設定したものを用いても良い。その場合、判別における入力系統の順番を、右チャンネルを左チャンネルよりも先に(「右チャンネル→左チャンネル」)すれば良い。
【0086】
また上記実施形態では、オーディオデータとして、左チャンネル及び右チャンネルの両方にオーディオ信号を記録したものとしたが、これに限られない。オーディオデータとして、左チャンネル又は右チャンネルのいずれか一方にオーディオ信号を記録したもの(所謂モノラル)としても良いし、左チャンネル及び右チャンネル以外のチャンネルを更に追加し、そのチャンネルにもオーディオ信号を記録しても良い。左チャンネル及び右チャンネル以外のチャンネルを更に追加する場合は、追加したチャンネルも上記の入力系統に追加して判別を行えば良い。
【0087】
上記実施形態では、オーディオデータの出力中に出力中判別を行ったが、これに限られない。PPデータの出力中にも出力中判別を行っても良い。また、オーディオデータの出力中における出力中判別を省略しても良い。
【0088】
上記実施形態では、入力された信号において所定幅のパルスをカウントすることで、入力された信号がMIDI変調信号かPPデータかを判別したが、これに限られない。例えば、入力された信号がパルスであった場合に、そのパルスを一定期間取得した後に復号し、その復号した結果が有効なMIDIデータである場合に、その信号はMIDI変調信号と判別しても良い。また、MIDI変調信号に対応するパルスの波形を学習データに学習させ、当該学習データを用いたAIによって、入力された信号がMIDI変調信号かどうかを判別しても良い。
【0089】
上記実施形態では、電子機器として電子ピアノ1を例示したが、これに限られず、シンセサイザや電子吹奏楽器等、他の電子機器に本発明を適用しても良い。また、制御プログラム11aを他のパーソナルコンピュータや携帯端末等の情報処理装置で実行できるようにしても良い。
【0090】
上記実施形態では、楽曲データとしてMIDIデータを例示したが、これに限られず、MIDI規格以外の他の楽曲に関するデータを楽曲データとして用いても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 電子ピアノ(電子機器)
11a 制御プログラム(音声データ判別プログラム)
19 外部入出力装置(入力手段、入力部)
20 無線通信装置(入力手段、入力部)
S4 順次判別手段、順次判別ステップ
S5 PP出力手段、PP出力ステップ
S6 オーディオ出力手段、オーディオ出力ステップ
S23,S72,S73 出力中判別手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8