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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141268
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】不溶解性アノード用めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/14 20060101AFI20241003BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20241003BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20241003BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C25D21/14 E
C25D17/00 H
C25D17/00 L
C25D17/10 101A
C25D21/14 C
C25D7/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052814
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】511165430
【氏名又は名称】三友セミコンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内海 裕二
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA09
4K024BB11
4K024BB12
4K024CB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カソード用めっき液の銅濃度の変動を極力抑制し、カソード用めっき液中に含まれる添加剤の消耗を抑制し、良好で均一な銅めっき処理を継続的に行える不溶解性アノード用めっき装置を提供する。
【解決手段】本発明は、隔膜11を備えた不溶解性アノード用めっき装置において、酸化銅粉末をキャリアガスともに、静電気除去性能を有する供給用チューブ42を介して管理槽2に供給するための酸化銅粉末供給手段を備え、管理槽の上部蓋体21には、管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に先端が配置され静電気除去性能を有する粉体供給筒体43が設けられており、粉体供給筒体に供給用チューブが接続されていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、
液供給管は、隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽よりカソード用めっき液を供給し、
隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、
酸化銅粉末をキャリアガスともに、静電気除去性能を有する供給用チューブを介して管理槽に供給するための酸化銅粉末供給手段を備え、
管理槽の上部蓋体には、管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に先端が配置され静電気除去性能を有する粉体供給筒体が設けられており、
粉体供給筒体に供給用チューブが接続されていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項2】
被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、
隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽から液供給管からカソード用めっき液を供給し、
隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、
カソード用めっき液の銅濃度を調整するための銅濃度調整槽を備えており、
銅濃度調整槽は、酸化銅粉末をキャリアガスとともに、静電気除去性能を有する供給用チューブにより酸化銅粉を搬送する酸化銅粉末供給装置を有しており、
銅濃度調整槽の上部蓋体には、銅濃度調整槽に貯留されたカソード用めっき液の液表面の近傍に先端が配置された静電気除去性能を有する粉体供給筒体が設けられるとともに、銅濃度調整槽にはカソード用めっき液を撹拌する撹拌手段が設けられており、
供給用チューブは粉体供給筒体に接続されており、酸化銅粉末を銅濃度調整槽に供給することにより銅濃度調整槽のカソード用めっき液の銅濃度を調整し、
銅濃度が調整されたカソード用めっき液を銅濃度調整槽から管理槽に供給するようになっていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項3】
酸化銅粉末は、平均粒形25~40μm、かためかさ密度1.7g/cm未満である請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項4】
粉体供給筒体は、接地されたチタン製材料で形成されたもの、または除電器が接続されたものである請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項5】

キャリアガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスである請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項6】
キャリアガス及び酸化銅粉末を供給する場合と、キャリアガスのみを供給する場合とを切り替えることができる切替手段が供給用チューブに設けられた請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項7】
供給用チューブには、酸化銅粉末の供給状態を監視する粉体流量計を有し、酸化銅粉末の供給量の調整及び供給の停止を制御するための粉体供給制御手段を備えられている請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不溶解性アノード用めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハーやプリント配線板等の被めっき物に、種々のめっき処理が行われている。このような被めっき物にめっき処理を行う場合、いわゆる噴流式のめっき装置と呼ばれるものが知られている。
【0003】
この噴流式のめっき装置は、一般的に、被めっき物が載置できる開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物と対向するように配置されたアノードとを備え、被めっき物に向けて液供給管からめっき液を供給しながらめっき処理を行う。噴流式のめっき装置は、被めっき物の被めっき面に均一なめっき処理が行うことができ、開口部に配置する被めっき物を順次取り替えてめっき処理ができるので、小ロット生産やめっき処理の自動化に好適なものとして広く利用されている。
【0004】
この噴流式のめっき装置では、上述のような利点があるものの、溶解性のアノードを使用した場合、アノード表面へ形成される皮膜、例えばブラックフィルムなどが剥離して、めっき液中の不純物となり、被めっき物に向けて供給されるめっき液と一緒に流動して、めっき処理に悪影響を与える場合がある。
【0005】
また、液中に混入したエアーやアノードから発生する気泡が被めっき面に到達して良好なめっき処理を阻害することもある。そのため、この噴流式のめっき装置では、めっき槽内に、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜を配置する方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
隔膜を備えた噴流式のめっき装置は、不溶解性アノードを使用することで、溶解性アノードの場合に比べ種々のメリットが生じる。例えば、めっき液の添加剤の消耗量を低減することや、溶解性アノードの場合のようなアノードの交換などのメインテナンスが不要となり生産性を向上できることなどが挙げられる。
【0007】
しかし、不溶解性アノードを使用した噴流式のめっき装置は、溶解性アノードの場合に比べ、種々のメリットがあるものの、貴金属めっきや銅めっきを除いてはめっき業界内での利用がほとんど進んでいないのが現状である。
【0008】
噴流式のめっき装置におけるめっき槽内に隔膜を配置すると、隔膜の上側には、開口部に載置された被めっき物と隔膜とにより上部隔離室が形成され、隔膜の下側には、めっき槽と隔膜とにより下部隔離室が形成される。そして、不溶解性アノードは、下部隔離室側に配置されるため、めっき処理時には隔膜の下側に、水の電気分解によるガス発生により、大量の気泡が現れる。そのため、隔膜の下側に発生する気泡を効率良く排出する必要がある。また、不溶解性アノードを使用した場合のメリットを得るためには、上部隔離室と下部隔離室とには、異なる種類の溶液を別々に供給することが行われる場合があるが、めっき槽内に配置された隔膜により、上部隔離室と下部隔離室とに供給された異なる種類の溶液同士が混ざり合わないようにすることが必要となる。
【0009】
特許文献1の先行技術では、上部隔離室への溶液供給において、供給時の圧損が大きいため、下部隔離室への供給流量をあまり大きくできず、不溶解性アノードから発生する大量の気泡を十分に排出することができない傾向があった。また、特許文献2では、下部隔離室での気泡排出は効率良く行えるものの、上部隔離室と下部隔離室とに供給する溶液を分離することができないため、不溶解性アノードのメリットが十分に実現することができない。
【0010】
このような、めっき槽内に隔膜を配置した噴流式の不溶解性アノード用めっき装置の問題点を解決すべく、特許文献3(WO2022/107551)に記載された先行技術が提案されている。特許文献3では、、上部隔離室と下部隔離室とに供給される溶液同士が混じりあうことがなく、下部隔離室の不溶解性アノードから発生する気泡を効率よく排出することが出来るため、不溶解性アノードのメリットを十分に実現することができる。
【0011】
ところで、不溶解性アノードを使用しためっき装置では、例えば、銅めっき処理を行う場合、めっき処理より消費されるめっき液中の銅の濃度調整を行う必要がある。その銅濃度調整方法の一つとして、酸化銅粉末を用いる方法が提案されている(特許文献4)。この特許文献4の先行技術では、ナトリウムなどの不純物の含有量を特定した酸化銅粉末を用い、めっき液へ酸化銅粉末を定期的に添加することにより、めっき液中の銅濃度を所定範囲に制御し、ウェハーなどの半導体基板に、良好な銅めっき処理を行うことができることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-273693号公報
【特許文献2】特開2007-169773号公報
【特許文献3】国際公開WO2022/107551号公報
【特許文献4】特開2018-62453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、不溶解性アノードを使用しためっき装置では、溶解性アノードを使用する場合に比べた種々のメリットが生じるもので、そのメリットを十分に享受できるめっき処理技術が各種提案されている。しかしながら、この不溶解性アノードを使用しためっき装置については、更なる技術開発が要求されている。
【0014】
半導体ウェハー等の被めっき物においては、微小なビアの穴埋め銅めっき処理が行われているが、最近の電子基板等の軽薄短小化はますます進行しており、例えば、ビアの微小化も目覚ましく、例えば、ビア径5μm、ビア深さ100μmのような高アスペクト比の微細なビアに、良好な銅めっき処理を均一に行えるめっき装置が要求されている。このような微細な銅めっき処理を不溶解性アノード用めっき装置で対応する場合、めっき液中の銅や添加剤の濃度管理が極めて重要となる。具体的には、半導体ウェハーに銅めっき処理を行う際、めっき液として硫酸銅溶液を用いる場合、めっき液には、アクセラレター(促進剤)、サプレッサー(抑制剤)、レベラー(平滑剤)と呼ばれる添加剤(市販品)が添加される。このような添加剤は、めっき処理を継続することにより消耗される傾向があり、隔膜を配置した不溶解性アノード用めっき装置においても同様に消耗が生じる。隔膜を配置した不溶解性アノード用めっき装置では、隔膜により形成される上部隔離室側に、カソード用めっき液として硫酸銅溶液が供給されることになるが、銅めっき処理を継続すると、カソード用めっき液の銅濃度は低下する。銅濃度が低下した硫酸銅溶液では、相対的に硫酸イオン(SO 2-)が上昇することになる。相対的に硫酸イオンが上昇した硫酸銅溶液では、液中の添加剤の消耗が大きくなる傾向があり、その結果、均一で良好な銅めっき処理をして行うことが困難となる。特に、高アスペクト比の微細なビアや微細なトレンチなどに対して銅めっき処理をする場合、銅めっき厚みは極めて薄いため、薄い厚みの銅めっき処理を均一に継続して行うためには、めっき液中の銅濃度の変動や添加剤の消耗をできるだけ抑制することが必要となる。つまり、めっき液としての硫酸銅溶液の銅濃度の変動をできるだけ抑制した状態で、継続した銅めっき処理が可能となる不溶解性アノード用めっき装置が要望されている。
【0015】
本発明は、以上のような事情の下になされたもので、隔膜を配置した不溶解性アノード用めっき装置を用いて半導体ウェハーなどの被めっき物に銅めっき処理を行う際、カソード用めっき液の銅濃度の変動を極力抑制し、カソード用めっき液中に含まれる添加剤の消耗を抑制し、高アスペクト比の微細なビアや微細なトレンチなどに対して、良好で均一な銅めっき処理を継続的に行うことが可能となる、不溶解性アノード用めっき装置の提供をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、液供給管は、隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽よりカソード用めっき液を供給し、隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、酸化銅粉末をキャリアガスともに、静電気除去性能を有する供給用チューブを介して管理槽に供給するための酸化銅粉末供給手段を備え、管理槽の上部蓋体には、管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に先端が配置され静電気除去性能を有する粉体供給筒体が設けられており、粉体供給筒体に供給用チューブが接続されていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置に関する。
【0017】
本発明によれば、カソード用めっき液にめっき処理で使用する銅量に相当する酸化銅粉末を供給することにより、設定した銅濃度範囲に継続して維持することが可能となるため、めっき処理により生じる銅濃度の変動による添加剤の消耗を確実に抑制することができる。その結果、高アスペクト比の微細なビアや微細なトレンチなどに対しても、良好で均一な銅めっき処理を継続的に行うことが可能となる。本発明においては、カソード用めっき液への酸化銅粉末の供給を管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に先端が配置され静電気除去性能を有する粉体供給筒体から行う理由は、粉末状の酸化銅を確実にカソード用めっき液に投入されるようにするためである。粉体供給筒体の先端が、管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面から離れてしまうと、粉体供給筒体から供給された酸化銅粉末が、カソード用めっき液の液面の上部空間に飛散する量が多くなり、銅濃度調整が困難となる。また、粉体供給筒体の先端が液面に接触すると、先端部分に酸粉銅粉末が凝集して付着し、酸化銅粉末の供給が困難となる。そのため、本発明は、粉体供給筒体の先端を管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に配置する。近傍とは、先端が液面に接触しない距離であり、先端から供給される酸化銅粉末がカソード用めっき液の液面の上部空間に飛散しない程度の距離をいう。この粉体供給筒体の先端とカソード用めっき液の液面との距離は、使用する酸化銅粉末の平均粒形などの物性に合わせて適宜調整可能であるが、好ましくは50~100mmである。
【0018】
また、本発明は、被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽から液供給管からカソード用めっき液を供給し、 隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、カソード用めっき液の銅濃度を調整するための銅濃度調整槽を備えており、銅濃度調整槽は、酸化銅粉末をキャリアガスとともに、静電気除去性能を有する供給用チューブにより酸化銅粉を搬送する酸化銅粉末供給装置を有しており、銅濃度調整槽の上部蓋体には、銅濃度調整槽に貯留されたカソード用めっき液の液表面の近傍に先端が配置された静電気除去性能を有する粉体供給筒体が設けられるとともに、銅濃度調整槽にはカソード用めっき液を撹拌する撹拌手段が設けられており、供給用チューブは粉体供給筒体に接続されており、酸化銅粉末を銅濃度調整槽に供給することにより銅濃度調整槽のカソード用めっき液の銅濃度を調整し、銅濃度が調整されたカソード用めっき液を銅濃度調整槽から管理槽に供給するようになっていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置に関する。
【0019】
本発明の不溶解性アノード用めっき装置は、半導体ウェハー等の被めっき物への銅めっき処理に好適なものであるが、半導体ウェハーなどの被めっき物の製造は、いわゆるクリーンルーム内で行われるため、酸化銅粉末のような飛散しやすいものはクリーンルーム内を汚染することが考えられる。そこで、クリーンルームの外部に銅濃度調整槽を配置し、その銅濃度調整槽で酸化銅粉末を用いて銅濃度を調整し、調整したカソード用めっき液を管理槽に供給することにすると、クリーンルーム内の汚染を確実に防止できる。
【0020】
本発明において、酸化銅粉末は平均粒径25~40μm、かためかさ密度1.7g/cm未満であることが好ましい。かためかさ密度が1.7g/cm以上であると、カソード用めっき液への酸化銅粉末の溶解が遅くなる傾向になる。より好ましくは1.5g/cm以上1.7g/cm3未満である。なお、かためかさ密度とは、所定容器内に酸化銅粉末を静かに充填し、その容器に一定の振動を与えることにより、粉体間の隙間を埋めて、再充填した後に測定したかさ密度のこという。本発明におけるかためかさ密度は、メスシリンダーを用いて測定された数値である。さらに、本発明における酸化銅粉末は、安息角がある程度小さい(10°~12.5°)ことが好ましい。この安息角とは、メスシリンダーを用いてかためかさ密度を測定した酸化銅粉末100mLを、高さ15cmの位置から100mL全量を落下させて、山状に積みあがった状態の酸化銅粉末の塊を作製し、山形状の塊の裾野の角度を測定して得られるものである。この安息角が大きな酸化銅粉末であると、溶解速度が遅くなる傾向となる。この安息角は酸化銅粉末の流動性の指標となるもので、安息角が10°~12.5°の酸化銅粉末であると、酸化銅粉末の溶解性が高くなる。粉体間の隙間は、粒子形状の幾何学的な要因や、付着力などの表面特性による要因により発生するもので、本発明者の知見によると、酸化銅粉末のかためかさ密度が1.6g/cm程度であると、カソード用めっき液での酸化銅粉末の溶解が速やかに進行することを見出した。さらに、酸化銅粉末の粒子形態が顆粒状であると、酸化銅粉末の溶解が速やかに進行することをも見出している。このことは酸化銅粉末の安息角がある程度小さい(10°~12.5°)ことに関連すると考えれられる。
【0021】
本発明における粉体供給筒体は、静電気除去性能を有するが、好ましくは接地(アース)されたチタン製材料で形成したもの、あるいは粉体供給筒体に除電器(イオナイザー)を接続されたものを用いることができる。粉体供給筒体に静電気が生じると、酸化銅粉末の凝集が発生しやすく、酸化銅粉末の安定した供給が困難となる。
【0022】
本発明において、酸化銅粉末を酸化銅粉末供給装置より静電気除去性能を有する供給用チューブを介して供給するのに適するキャリアガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスを用いることが好ましい。窒素ガスやアルゴンガスを用いると、酸化銅粉末の凝集が抑制され、供給用チューブへの酸化銅粉末の付着軽減や詰まり防止を確実にすることができる。
【0023】
本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置には、キャリアガス及び酸化銅粉末を供給する場合と、キャリアガスのみを供給する場合とを切り替えることができる切替手段を供給用チューブに設けることが好ましい。酸化銅粉末の供給を停止する際には、供給用チューブにキャリアガスのみを供給することで、供給用チューブ内の酸化銅粉末の凝集を防止し、酸化銅粉末の付着や詰まりを確実に防止することができる。
【0024】
本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置において、供給用チューブには酸化銅粉末の供給状態を監視する粉体流量計を配置し、酸化銅粉末の供給量の調整及び供給の停止を制御するための粉体供給制御手段を設けておくことが好ましい。供給状態を粉体流量計で監視することにより、酸化銅粉末の供給量の微調整や異常時の酸化銅粉末の供給停止を適切に行うことが可能となる。また、銅めっき液中の銅濃度が確実に調整されたことを確認する手段として、銅濃度調整槽の前後配管に銅濃度計を組込んで、めっき処理で使用された銅が正確に補給されたかを監視することが好ましい。
【0025】
本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置において、下部隔離室と上部隔離室に供給される別個の溶液同士が直接的に混ざり合わないようにするためには、隔膜の外周端と隔膜の貫通孔の孔辺とに、シリコンリングを固着しておことが好ましい。隔膜にシリコンリングを固着させる場合、シリコンリングの同時鋳込みという製法を用いることが好ましい。シリコンリングの同時鋳込みとは、中央に貫通孔を設けた隔膜の外周端と貫通孔の孔辺とを上下から押圧可能とした型枠に隔膜を固定し、シリコンリングが固着される外周端部分と孔辺部分に接着剤(プライマー)を塗布しておき、接着剤が塗布された部分にシリコンを注入した後、型枠を加圧する。シリコンが硬化した後、型枠を取り外すと、隔膜の外周端と隔膜の貫通孔の孔辺とにシリコンリングが固着した状態となる。このようなシリコンリングが固着された隔膜であると、めっき槽内壁に固定される隔膜外周端の部分や、液供給管に固定される隔膜中央の貫通孔の孔周端の部分における溶液の液漏れを確実に防止することができる。使用する隔膜の材質に特に制限はなく、液透過性や耐めっき液性を考慮して選択すればよいが、隔膜基材がポリエチレンテレフタレート樹脂、隔膜膜材がポリフッ化ビニリデン樹脂系材料の隔膜を用いることが好ましい。また透水性能としては0.1mL/min/cm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置においては、銅めっき処理を対象にしたものであるが、めっき金属やめっき液成分を粉末として供給することができるめっき処理であれば、本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置を利用することが可能である。例えば、亜硫酸金を含むノンシアン金めっき処理を行う場合において、めっき処理より消耗する亜硫酸の補給を、亜硫酸塩の粉末を供給する際に、本発明の不溶解性アノード用めっき装置を利用することができる。また、不溶解性アノードを用いた電解ニッケルめっき処理などにおいても本発明に係る不溶解性アノード用めっき装置を利用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、隔膜を配置した不溶解性アノード用めっき装置において、カソード用めっき液の銅濃度を所定の範囲内に継続して維持することができるので、カソード用めっき液中に含まれる添加剤の消耗を抑制し、高アスペクト比の微細なビアや微細なトレンチなどに対して、良好で均一な銅めっき処理を継続的に行うことが可能となる、
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の不溶解性アノード用めっき装置の概略断面図。
図2】本実施形態の不溶解性アノード用めっき装置のめっき槽概略断面図。
図3】本実施形態の銅濃度調整槽を備えた不溶解性アノード用めっき装置の概略断面図。
図4】酸化銅粉末AのSEM観察写真。
図5】酸化銅粉末BのSEM観察写真。
図6】銅埋め込みめっきされたビアの断面観察写真。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1には、本実施形態の不溶解性アノード用めっき装置の概略断面図、図2にはめっき槽の概略断面を示している、
【0030】
図1の不溶解性アノード用めっき装置は、めっき槽1と管理槽2とアノード用溶液槽3とで構成されている。そして、管理槽3の近傍には、酸化銅粉末供給器4が配置されている。
【0031】
まず、図1に示すめっき槽1について、図2を参照しながら説明する。めっき槽1には、中央に貫通孔を有したドーナツ状の隔膜11が設置されており、この隔膜11は、隔膜外周端がめっき槽内壁12に固定され、貫通孔の孔周端が液供給管13の先端側に固定されることにより、液供給管13から外周方向に上昇する傾斜が与えられる状態となっている。液供給管13の外周には、環状流路14が設けられている。また、めっき槽1の底部には、メッシュ状の不溶解性アノード15が配置されている。
【0032】
めっき槽1の開口部に被めっき物となるウェハーWを載置すると、めっき槽1内には上部隔離室Uと下部隔離室Dが形成される。上部隔離室Uには、液供給管13よりカソード用めっき液が供給される。そして、下部隔離室Dには、アノード用溶液槽3のアノード用溶液が環状流路14から供給される。
【0033】
管理槽2に貯留されているカソード用めっき液は、液供給管13からめっき槽1内の上部隔離室Uに供給され、隔膜11の外周端側から排出されて管理槽2に戻るようにされている。管理槽1の近傍に配置された酸化銅粉末供給器4は、粉末貯蔵室41の酸化銅粉末をキャリアガスGとともに供給用チューブ42を通過して、管理槽1の上部蓋体21に取り付けられた粉末供給用筒体43から管理槽1内に供給されるようになっている。粉末供給用筒体43の先端は、カソード用めっき液の液面近傍に配置されている。
【0034】
酸化銅粉末供給器4の供給用チューブ42には、キャリアガス及び酸化銅粉末を供給する場合と、キャリアガスのみを供給する場合とを切り替えることができる切替装置44と、酸化銅粉末の供給状態を監視する粉体流量計を有し、酸化銅粉末の供給量の調整及び供給の停止を制御するための粉体供給制御装置45が備えられている。
【0035】
図示は省略するが、管理槽2には、液撹拌手段としてマグネットスターラー機能が備えられており、管理槽2に酸化銅粉末が供給された際に、液撹拌をすることにより、酸化銅粉末の溶解を迅速に行えるようにされている。また、図示は省略するが、管理槽2には、銅濃度計が取り付けられており、常時、カソード用めっき液の銅濃度を計測できるようになっている。めっき処理により、カソード用めっき液の銅濃度が設定範囲を外れて銅濃度低下をした場合、銅濃度計の信号により、酸化銅粉末供給器4が作動し、必要量の酸化銅粉末が管理槽2に供給されるように制御されている。
【0036】
図3には、銅濃度調整槽を備えた不溶解性アノード用めっき装置を示している。銅濃度調整槽5は、銅濃度が調整されたカソード用めっき液を、管理槽2に送液し、管理槽2のカソード用めっき液を回収できるようにされている。銅濃度調整槽5の近傍には、酸化銅粉末供給器4が配置されている。図3の太線破線の右側がクリーンルーム内で、太線破線の左側がクリーンルーム外である。銅濃度調整槽5及び酸化銅粉末供給器4がクリーンルーム外に配置されているため、酸化銅粉末によるクリーンルーム内の汚染を確実に防止することが可能となる。
【0037】
図3の銅濃度調整槽5は、図示は省略するが、液撹拌手段としてマグネットスターラー機能が備えられており、銅濃度調整槽5に酸化銅粉末が供給された際に、液撹拌をすることにより、酸化銅粉末の溶解を迅速に行えるようにされている。また、図示は省略するが、銅濃度調整槽5には、銅濃度計が取り付けられており、常時、カソード用めっき液の銅濃度を計測できるようになっている。そして、管理槽2に貯留されているカソード用めっき液の銅濃度が設定範囲を外れて銅濃度低下をした場合、管理槽2に取り付けられた銅濃度計の信号により、酸化銅粉末供給器4が作動し、必要量の酸化銅粉末を銅濃度調整槽5に供給されるように制御されている。図3におけるめっき槽1、アノード用溶液槽2、酸化銅粉末供給器4については、図1で説明した内容の同様である。
【0038】
<酸化銅粉末の溶解性>
次に、本発明における酸化銅粉末の溶解性を調べた結果について説明する。評価に用いた酸化銅粉末は次の3種類のものを用いた。
酸化銅粉末A:平均粒径30μm
(FCO-M6 古河ケミカルズ(株)社製)
酸化銅粉末B:平均粒径3.7μm
(FCO-500 古河ケミカルズ(株)社製)
酸化銅粉末C:平均粒径 μm
(YS-808 昆山徳▲ケン▼新材料科技有限公司社製)
【0039】
各酸化銅粉末について、溶解速度、かためかさ密度、安息角の測定を行った。各試験条件は以下のとおりである。
溶解速度:めっき液として、硫酸銅溶液(MF-Cu525 EEJA(株)社製)を用い、1Lのめっき液(液温22℃)を投入したビーカーに所定量の酸化銅粉末を添加して、黒色になった硫酸銅溶液が酸化銅粉末の全溶解により元の硫酸銅溶液色に戻るまでの時間と、その後所定時間経過しためっき液の銅濃度を測定した。酸化銅粉末添加前の銅濃度と、添加後所定時間経過後の銅濃度から溶解量を測定し、全溶解するまでの時間から酸化銅粉末の溶解速度を測定した。
かためかさ密度:200mLのメスシリンダーを用い、酸化銅粉末を少量添加して、メスシリンダーの底部を3回机上に当てることで粉末を固め、この固め操作を繰り返して、100mLとなるまで酸化銅粉末を添加した。その添加した酸化銅粉末の重さを測定してかためかさ密度を測定した。
安息角:上記したかためかさ密度を測定した200mLメスシリンダーに充填された酸化銅粉末(100mL)を、高さ15cmの位置から机上に落下させて、山状に積みあがった状態の酸化銅粉末の塊を作成し、山形状の塊の裾野の角度を測定した。
【0040】
各酸化銅粉末の溶解速度、かためかさ密度、安息角の測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、酸化銅粉末Aは溶解速度値が最も早く、かためかさ密度値が1.6であった。一方、溶解速度が最も遅かった酸化銅粉末Bでは、かためかさ密度値が2.23で、安息角値も22.5と大きくなっていた。酸化銅粉末Cの溶解速度値はAよりも遅い結果となったが、そのかためかさ密度値は1.22で、その安息角値も15であった。このことから、かためかさ密度1.6g/cm程度で、安息角が12.5°程度の酸化銅粉末であれば、溶解速度が速いことが分かった。
【0043】
酸化銅粉末AとBについて、SEMによる粒子形態の観察と比表面積測定結果について説明する。図4には酸化銅粉末AのSEM観察写真で、図5には酸化銅粉末BのSEM観察写真を示す。図4及び図5において、上段が倍率1000倍での観察写真で、下段側が倍率50000倍での観察写真である。図4で示すように倍率1000倍では酸化銅粉末Aは粒径20μm以上の粒子が多数確認された。また、倍率50000倍観察によると、酸化銅粉末Aでは、粒径サブμm以下の微粒子が視野全面で確認された。そして、図5に示すように、酸化銅粉末Bでは、倍率1000倍、50000倍のどちらでも粒径2~3μmの粒子が多数確認された。酸化銅粉末Aの比表面積は23m/gで、酸化銅粉末Aの比表面積は0.8m/gとなっていた。このSEM観察と比表面積測定の結果を考慮すると、酸化銅粉末Aの平均粒径は30μmと大きな値であるが、この平均粒径の粒子は、微細な粒子が凝集して形成されていることがわかる。酸化銅粉末Aは、微細な粒子で構成された顆粒状の粉末であるため、粉末の流動性がよく、安息角がある程度小さくなるものと考えられる。
【0044】
<銅めっき試験>
次に、本実施形態のめっき装置により、硫酸銅めっき液を用いた銅のめっき処理を行った銅めっき試験結果について説明する。この銅めっき試験には、図1で説明した不溶解性アノード用めっき装置を用いて行った。酸化銅粉末供給器としては、市販の装置(MX‐750型:株式会社金星社製)を採用した。
【0045】
本試験においては、カソード側となる上部隔離室には、アクセラレター(促進剤)、サプレッサー(抑制剤)、レベラー(平滑剤)と呼ばれる3種類の添加剤(市販品)を含んだ硫酸銅めっき液を供給し、アノード側となる下部隔離室には、添加剤を含まない硫酸銅めっき液を供給して行った。以下に液組成を示す。
【0046】
*上部隔離室供給液:
・硫酸銅めっき液(市販品 ミクロファブCu525 / EEJA株式会社製)
銅濃度 ・・・60g/L
硫酸濃度・・・30g/L
・アクセラレター5W(促進剤)・・・3mL/L
・サプレッサー(抑制剤)・・・10mL/L
・レベラー(平滑剤)・・・10mL/L
・液温 22~23℃
・液量 40L
・供給流量 25L/min

*下部隔離室供給液:
・硫酸銅めっき液(市販品 ミクロファブCu525 / EEJA株式会社製、上部隔離室と同じ液)
・液温 22~25℃
・液量 20L
・供給流量 5L/min
【0047】
めっき装置では、Pt-Ti製のメッシュ状不溶解性アノードを用い、隔膜は市販品(膜材:フッ素系樹脂製、厚さ:0.12mm、透水性能:0.08mL/min/cm 25℃)を用いた。被めっき物としては、8インチのPCB製ウェハーを用いた。このPCB製ウェハーは、ガラスエポキシ基材に銅箔を張り付けて、円形状に加工してウェハー状にした被めっき物である。
【0048】
この銅めっき試験においては、銅めっき処理と酸化銅粉末供給を行うランニング試験を行って、上部隔離室供給液に含まれる添加剤の濃度変化を調べた。使用した酸化銅粉末は、上述した酸化銅粉末Aを用い、キャリアガスは窒素ガスを用いた。供給用チューブは、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製の内径1mm、外径2mmを用い、粉末供給用筒体は製の内径
20.4mm、外径25mmを用いた。この粉末供給用筒体の先端(酸化銅粉末の吹き出し側)は、管理槽内のめっき液面から約80mm離れた上方に位置するよう配置した。
【0049】
銅めっき条件は、ウェハー1枚当たりのCu析出量が0.45gとなるように平均電流密度0.91A/dm2(めっき時間 44min)でめっき電流を供給した。また、一枚のウェハーに銅めっき処理を行う際、酸化銅粉末Aを0.5625g、管理槽のめっき液に供給されるように制御した。窒素ガス流量は0.06L/min(酸化銅粉末A供給量0.3g/min相当)で行った。そして、酸化銅粉末Aを供給する管理槽内では、マグネットスターラー機能により液撹拌を行った。
【0050】
4枚のウェハーに順次銅めっき処理を行い、各めっき処理後の上部隔離室内のめっき液を採取して、添加剤の濃度を分析した。合わせて各めっき処理後の銅濃度も分析した。その結果、上部隔離室に供給された硫酸銅めっき液中の3つの添加剤の濃度はほとんど変動していないことが確認された。また、上部隔離室に供給された硫酸銅めっき液の銅濃度もほぼ一定に保持されていた。そして、各めっき処理後の下部隔離室内の硫酸銅めっき液を分析したところ、3つの添加剤の成分は分析されなかった。これは、上部隔離室内の硫酸銅めっき液中の添加剤が下部隔離室へ移動していないことが確認された。
【0051】
次に、ビアの銅埋め込みめっき試験の結果について説明する。この試験では、Siウェハーに、径30μm、深さ70μmのビアが形成されたものを用いた。このビア内に銅埋め込みをして、そのビア上部に厚さ12μm、径80μmのパッド(Pad)を銅めっきで連続して形成した。使用した硫酸銅めっき液や酸化銅粉末A、その他装置条件等は上記した添加剤の濃度変化調査のランニング試験と同様である。
【0052】
銅埋め込みめっき前には、減圧雰囲気内にSiウェハーを設置し、その後、酸洗、純水洗浄を順次行い、ビアの銅埋め込みめっきを行った。めっき条件は、初期処理 電流密度0.9A/dm、0.5mi、第一段処理 電流密度0.9A/dm、19.5min、第二段処理 電流密度1.36A/dm、14.6minで行った。第一段処理がビアの埋め込みで、第二段処理がビア上部の銅めっき処理に対応する。
【0053】
図6にビアの銅埋め込みめっきを行った断面観察写真を示す。ビア内が銅めっきにより完全に埋められていることが確認された。本実施形態のめっき装置により、径30μm、深さ70μmの微細なビアに銅埋め込みめっきが確実に行えることが判明した。
【符号の説明】
【0054】
1 めっき槽
11 隔膜
12 めっき槽内壁
13 液供給管
14 環状流路
15 不溶解性アノード
2 管理槽
21 上部蓋体
3 アノード用溶液槽
4 酸化銅粉末供給器
41 粉末貯蔵室
42 供給用チューブ
43 粉末供給用筒体
44 切替装置
45 粉体供給制御装置
5 銅濃度調整槽
51 上部蓋体

U 上部隔離室
D 上部隔離室
W ウェハー
G キャリアガス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、
液供給管は、隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽よりカソード用めっき液を供給し、
隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、
平均粒径25~40μm、かためかさ密度1.7g/cm 未満である酸化銅粉末をキャリアガスともに、静電気を発生しないようにされた供給用チューブを介して管理槽に供給するための酸化銅粉末供給手段を備え、
管理槽の上部蓋体には、静電気を除去された粉体供給筒体が設けられており、当該粉体供給筒体の先端は、先端から供給された酸化銅粉末がカソード用めっき液の液面の上部空間に飛散しない程度に液面から50~100mm離れた距離に配置されており、
粉体供給筒体に供給用チューブが接続されていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項2】
被めっき物を載置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物に対向するように配置された不溶解性アノードと、被めっき物と不溶解性アノードとを隔離するための隔膜とを、有するめっき槽とを備え、めっき槽内壁に隔膜外周端が固定されるとともに、隔膜中央に設けられた貫通孔の孔周端を液供給管に固定されることにより、液供給管から外周方向に上昇する傾斜が与えられるように配置されており、
隔膜と載置した被めっき物とにより形成されるめっき槽内の上部隔離室に、カソード用めっき液を貯留した管理槽から液供給管からカソード用めっき液を供給し、
隔膜の下側に形成されるめっき槽内の下部隔離室に、アノード用溶液を貯留したアノード溶液槽よりアノード用溶液を供給するようになっている不溶解性アノード用めっき装置において、
カソード用めっき液の銅濃度を調整するための銅濃度調整槽を備えており、
銅濃度調整槽は、平均粒径25~40μm、かためかさ密度1.7g/cm 未満である酸化銅粉末をキャリアガスとともに、静電気を発生しないようにされた供給用チューブにより酸化銅粉を搬送する酸化銅粉末供給装置を有しており、
銅濃度調整槽の上部蓋体には、静電気を除去された粉体供給筒体が設けられており、当該粉体供給筒体の先端は、先端から供給された酸化銅粉末がカソード用めっき液の液面の上部空間に飛散しない程度に液面から50~100mm離れた距離に配置されており、
銅濃度調整槽にはカソード用めっき液を撹拌する撹拌手段が設けられており、
供給用チューブは粉体供給筒体に接続されており、酸化銅粉末を銅濃度調整槽に供給することにより銅濃度調整槽のカソード用めっき液の銅濃度を調整し、
銅濃度が調整されたカソード用めっき液を銅濃度調整槽から管理槽に供給するようになっていることを特徴とする不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項3】
粉体供給筒体は、接地されたチタン製材料で形成されたもの、または除電器が接続されたものである請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項4】
キャリアガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスである請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項5】
キャリアガス及び酸化銅粉末を供給する場合と、キャリアガスのみを供給する場合とを切り替えることができる切替手段が供給用チューブに設けられた請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【請求項6】
供給用チューブには、酸化銅粉末の供給状態を監視する粉体流量計を有し、酸化銅粉末の供給量の調整及び供給の停止を制御するための粉体供給制御手段を備えられている請求項1または請求項2に記載の不溶解性アノード用めっき装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明によれば、カソード用めっき液にめっき処理で使用する銅量に相当する酸化銅粉末を供給することにより、設定した銅濃度範囲に継続して維持することが可能となるため、めっき処理により生じる銅濃度の変動による添加剤の消耗を確実に抑制することができる。その結果、高アスペクト比の微細なビアや微細なトレンチなどに対しても、良好で均一な銅めっき処理を継続的に行うことが可能となる。本発明においては、カソード用めっき液への酸化銅粉末の供給を管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に先端が配置され静電気除去性能を有する粉体供給筒体から行う理由は、粉末状の酸化銅を確実にカソード用めっき液に投入されるようにするためである。粉体供給筒体の先端が、管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面から離れてしまうと、粉体供給筒体から供給された酸化銅粉末が、カソード用めっき液の液面の上部空間に飛散する量が多くなり、銅濃度調整が困難となる。また、粉体供給筒体の先端が液面に接触すると、先端部分に酸粉銅粉末が凝集して付着し、酸化銅粉末の供給が困難となる。そのため、本発明は、粉体供給筒体の先端を管理槽に貯留されたカソード用めっき液の液面近傍に配置する。近傍とは、先端が液面に接触しない距離であり、先端から供給される酸化銅粉末がカソード用めっき液の液面の上部空間に飛散しない程度の距離をいう。この粉体供給筒体の先端とカソード用めっき液の液面との距離は、使用する酸化銅粉末の平均粒径などの物性に合わせて適宜調整可能であるが、好ましくは50~100mmである。