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特開2024-141269樹脂組成物、フィルム、多層フィルム、積層体、および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141269
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、多層フィルム、積層体、および包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L23/10
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052815
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水間 貴大
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 七央
(72)【発明者】
【氏名】江川 真
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB62
3E086BB63
3E086BB75
3E086CA01
3E086CA40
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK67A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00
4F100DD01C
4F100EJ37B
4F100EJ39C
4F100GB15
4F100HB31C
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JD01C
4F100JK06A
4F100JL12A
4F100JL14
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB033
4J002BB11W
4J002BB12W
4J002BB15W
4J002BB17X
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】樹脂組成物の溶融特性(歪み硬化性)に優れ、成形性、低温シール性、イージーピール性、および密封性がバランスよく優れた積層体を構成することができるフィルムを得ることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】所定の融点を有するプロピレン系重合体(A)を5~94質量%と、所定の融点を有する1-ブテン・α-オレフィン共重合体(B)を5~75質量%と、所定のMFRを有する高圧法低密度ポリエチレン(C)を1~20質量%とを含む樹脂組成物(但し、プロピレン系重合体(A)、共重合体(B)およびポリエチレン(C)の合計は100質量%である。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)を5~94質量%と、
1-ブテン・α-オレフィン共重合体(B)を5~75質量%と、
高圧法低密度ポリエチレン(C)を1~20質量%と
を含み(但し、プロピレン系重合体(A)、共重合体(B)およびポリエチレン(C)の合計は100質量%である。);
前記プロピレン系重合体(A)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が120~170℃であり;
前記共重合体(B)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が120℃未満であるか、示差走査熱量測定(DSC)により融点が観測されず、かつ、1-ブテン由来の構成単位を51~99モル%含有し、炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を1~49モル%含有し(但し、1-ブテン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。);
前記ポリエチレン(C)は、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分の範囲にある、樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物からなるシーラント層を有する多層フィルム。
【請求項4】
前記シーラント層の厚さが3~30μmである、請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項5】
請求項2に記載のフィルムまたは請求項3もしくは4に記載の多層フィルム、および延伸フィルムを有する積層体。
【請求項6】
前記延伸フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記延伸フィルムの厚さが10~50μmである、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
70~120℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、2~10N/15mmの範囲にある、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
140~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、10N/15mm以上である、請求項5に記載の積層体。
【請求項10】
印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの機能層をさらに有し、
前記機能層は、前記フィルムまたは多層フィルム、および延伸フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムと隣接するか、または接着剤層を介して接する、請求項5に記載の積層体。
【請求項11】
請求項5に記載の積層体により形成された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、多層フィルム、積層体、および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール包装用フィルムは、多層のフィルムで構成される。ヒートシール包装用フィルムの分野において、例えば、液体向けやレトルト包装向けの高いシール強度が要求される包装体には、多層フィルム中に無延伸フィルムが採用される傾向にある。
また、ポリプロピレン(PP)フィルムおよびポリエチレン(PE)フィルムが、広くヒートシール包装用フィルムとして利用されるが、その中でも、PPモノマテリアル包装、PEモノマテリアル包装等のモノマテリアル構成のフィルムが、リサイクルニーズの観点から重要視されている。
【0003】
包装材用途のシーラントフィルムとして、プロピレン系共重合体にエチレン系共重合体をブレンドした樹脂組成物やエチレン系共重合体のみを使用したフィルムが広く用いられている。
例えば、特許文献1および2には、ポリプロピレン樹脂、プロピレン・α-オレフィン共重合体および1-ブテン・α-オレフィン共重合体を含むシーラントフィルムを含む、低温ヒートシール性に優れた積層体が記載されている。
【0004】
また、ポリプロピレン系のフィルムを成形する際、一般的にポリプロピレンは、溶融特性(例えば、伸長粘度や溶融張力)が不十分であるため、成形加工性を十分に担保できない場合が多い。ポリプロピレンの前記溶融特性の問題を補うため、長鎖分岐を有する高圧法低密度ポリエチレンをブレンドした検討が行われてきた。長鎖分岐構造を有する高圧法低密度ポリエチレンは、溶融伸長時に伸長粘度が急激に立ち上がり硬化する、歪み硬化性を示す。歪み硬化性を示すことで、フィルム成形時の膜厚ムラが安定する、また、発泡する際に均一な気泡が得られ、深絞り成形時には均一な膜厚の成形体が得られる傾向にある。
例えば、特許文献3には、ポリプロピレンと高圧法低密度ポリエチレンとを含むシーラントフィルムを有する、成形性に優れたシーラントが記載されている。また、特許文献4には、プロピレンと炭素数6以上の分岐とを含むポリエチレンを有する、イージーピール性と密封性とのバランスに優れたシーラントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/027885号
【特許文献2】特開2021-070250号公報
【特許文献3】特開2020-090559号公報
【特許文献4】特開2012-184392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、オレフィン材料(例えばPP)によるモノマテリアル包装においては、基材(例えばPP)の耐熱性が低下するため、基材が熱収縮しない温度での無延伸フィルムのシーラント層におけるシール性(低温シール性)が必要となる。しかしながら、特許文献1および2に記載のフィルムを無延伸フィルムとして用いる場合、得られる積層体の低温ヒートシール性およびヒートシール強度のバランスの観点でさらなる改良が求められている。
【0007】
特許文献3では、ポリプロピレンに高圧法低密度ポリエチレンを添加することで、溶融特性を改良して成形性を向上させることを提案しているが、該構成では十分な低温シール性およびイージーピール性が得られない傾向にある。また、長鎖分岐構造を導入することにより、直鎖型低密度ポリエチレンと比較して材料強度が低く、またポリプロピレンとの相容性が低下する。これにより、ポリプロピレンを共に含む樹脂組成物として使用する場合に、ヒートシール強度が低い、十分な耐衝撃性が得られない等の問題がある。
特許文献4では、ポリプロピレンに炭素数6以上の分岐を含むポリエチレンを添加することで、イージーピール性と密封性とのバランスを向上させることを提案しているが、該構成では十分な低温シール性が得られない傾向にある。
【0008】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、樹脂組成物の溶融特性(歪み硬化性)を有し成形性に優れ、低温シール性、イージーピール性、および密封性がバランスよく優れた積層体を構成することができるフィルムを得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、以下の[1]~[11]に関する。
[1]
プロピレン系重合体(A)を5~94質量%と、
1-ブテン・α-オレフィン共重合体(B)を5~75質量%と、
高圧法低密度ポリエチレン(C)を1~20質量%と
を含み(但し、プロピレン系重合体(A)、共重合体(B)およびポリエチレン(C)の合計は100質量%である。);
前記プロピレン系重合体(A)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が120~170℃であり;
前記共重合体(B)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が120℃未満であるか、示差走査熱量測定(DSC)により融点が観測されず、かつ、1-ブテン由来の構成単位を51~99モル%含有し、炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を1~49モル%含有し(但し、1-ブテン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。);
前記ポリエチレン(C)は、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分の範囲にある、樹脂組成物。
【0010】
[2]
[1]に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【0011】
[3]
[1]に記載の樹脂組成物からなるシーラント層を有する多層フィルム。
【0012】
[4]
前記シーラント層の厚さが3~30μmである、[3]に記載の多層フィルム。
【0013】
[5]
[2]に記載のフィルムまたは[3]もしくは[4]に記載の多層フィルム、および延伸フィルムを有する積層体。
【0014】
[6]
前記延伸フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルムである、[5]に記載の積層体。
【0015】
[7]
前記延伸フィルムの厚さが10~50μmである、[5]または[6]に記載の積層体。
【0016】
[8]
70~120℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、2~10N/15mmの範囲にある、[5]~[7]いずれかに記載の積層体。
【0017】
[9]
140~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、10N/15mm以上である、[5]~[8]いずれかに記載の積層体。
【0018】
[10]
印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの機能層をさらに有し、
前記機能層は、前記フィルムまたは多層フィルム、および延伸フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムと隣接するか、または接着剤層を介して接する、[5]~[9]のいずれかに記載の積層体。
【0019】
[11]
[5]~[10]のいずれかに記載の積層体により形成された包装体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の樹脂組成物は、所定の割合で特定のプロピレン系重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、および高圧法低密度ポリエチレンを用いることにより、歪み硬化性を有し成形性に優れるとともに、低温シール性、イージーピール性、および密封性がバランスよく優れる。また、本発明の樹脂組成物からなるフィルムを用いた積層体は、剥離外観にも優れる傾向にある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、下記(A)~(C)を所定の割合で含む。
(A)示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120~170℃でありプロピレン系重合体(以下「(共)重合体(A)」ともいう。)
(B)DSCにより測定した融点が120℃未満であるか、DSCにより融点が観測されず、1-ブテン由来の構成単位を51~99モル%含有し、炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を1~49モル%含有する(但し、1-ブテン由来の構成単位と炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)1-ブテン・α-オレフィン共重合体(以下「共重合体(B)」ともいう。)
(C)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分の範囲にある高圧法低密度ポリエチレン(C)(以下「ポリエチレン(C)」ともいう。)
【0022】
本組成物は、(共)重合体(A)、共重合体(B)、およびポリエチレン(C)を含む。各成分の含有量については、(共)重合体(A)を5~94質量%、好ましくは13~84質量%、より好ましくは25~70重量%含み、共重合体(B)を5~75重量%、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~65質量%含み、共重合体(C)を1~20重量%、好ましくは3~17質量%、より好ましくは5~15質量%含む(但し、(共)重合体(A)、共重合体(B)、およびポリエチレン(C)の含有量の合計は100質量%である。)。
【0023】
(共)重合体(A)の含有量が前記範囲内であると、得られる組成物が剛性、耐熱性と密封性に優れる。共重合体(B)の含有量が前記範囲内であると、得られる組成物が低温シール性と表面特性に優れる。ポリエチレン(C)の含有量が前記範囲内であると、得られる組成物が歪み硬化性に優れ、成形性が向上する。
【0024】
<プロピレン系重合体(A)>
前記プロピレン系重合体(A)としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとのブロック共重合体が挙げられ、好ましくはプロピレンの単独重合体、またはプロピレンと炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体である。前記(共)重合体(A)は、1種類の共重合体でもよく、2種類以上の共重合体でもよい。
【0025】
本組成物においては、フィルムに耐熱性と剛性を付与できる観点から、特にプロピレンの単独重合体を用いることが好ましく、一方、シーラント層に柔軟性と透明性を付与できる観点からは、特にプロピレンと炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体を用いることが好ましい。
【0026】
プロピレンと共重合する炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。前記α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0027】
前記(共)重合体(A)として、プロピレンと炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体を用いる場合、前記(共)重合体(A)は、プロピレン由来の構成単位を好ましくは91~99.9モル%、より好ましくは92~99.8モル%、さらに好ましくは93~99.7モル%含有し、炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィン由来の構造単位を0.1~9モル%、好ましくは0.2~8モル%、さらに好ましくは0.3~7モル%含有する(但し、プロピレン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)。
【0028】
前記(共)重合体(A)は、示差走査熱量測定(Diferential Scanning Calorimetry(DSC))により測定した融点(Tm)が120~170℃であり、好ましくは125~165℃である。融点(Tm)が前記範囲内にある(共)重合体(A)を用いることで、フィルムの成形性が向上し、フィルムに耐熱性および透明性を付与することができる。
さらに、DSCにより融点と同時に得られる融解熱量(ΔH)は、50mJ/mg以上であることが好ましい。
【0029】
前記(共)重合体(A)の融点(Tm)は、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7)を用いて、窒素雰囲気下(20mL/min)、約5mgの試料を200℃まで昇温し10分間保持した後、10℃/minで30℃まで冷却し5分間保持し、次いで10℃/minで200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点の温度を重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
【0030】
前記(共)重合体(A)のASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~40g/10min、より好ましくは0.1~10g/10minである。MFRが前記範囲内にある(共)重合体(A)を用いることで、樹脂組成物の流動性を向上させ、比較的大きめのシートであっても成形が容易となる。
【0031】
前記(共)重合体(A)は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。融点を120~170℃とする方法としては、一例として、モノマーフィード量等の重合条件を制御して、チーグラー・ナッタ系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を20モル%未満、メタロセン系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を10モル%未満に制御する方法が挙げられ、この方法により目標とする融点を有する重合体を得ることができる。
【0032】
<1-ブテン・α-オレフィン共重合体(B)>
前記1-ブテン・α-オレフィン共重合体(B)としては、例えば、1-ブテンと炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。前記共重合体(B)は、1種類の共重合体でもよく、2種類以上の共重合体でもよい。
一般的に、1-ブテン・α-オレフィン共重合体を用いることで、積層体の低温シール性およびイージーピール性が向上する。
【0033】
1-ブテンと共重合する炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられ、これらのα-オレフィンのうち、エチレン、プロピレン、1-ペンテンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。前記α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0034】
前記共重合体(B)は、1-ブテン由来の構成単位を51~99モル%、好ましくは60~97モル%、さらに好ましくは70~95モル%含有し、炭素原子数2~3または炭素原子数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を1~49モル%、好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~30モル%含有する(但し、1-ブテン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)。各構成単位を前記範囲で含有することで、成形時のハンドリング性に優れ、比較的低温であってもヒートシールが容易となる。
【0035】
前記共重合体(B)は、DSCにより測定した融点(Tm)が120℃未満であるか、DSCにより融点(Tm)が観測されず、好ましくは融点(Tm)が50~115℃、より好ましくは60~110℃、さらに好ましくは65~110℃である。融点(Tm)が前記範囲内にある共重合体(B)を用いることで、比較的低温であっても積層体のヒートシールが容易、かつ良好な表面特性となる。
【0036】
前記共重合体(B)の融点(Tm)は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製DSC)を用いて、測定用アルミパンに約10mgの試料を詰めて、100℃/minで200℃まで昇温し5分間保持した後、10℃/minで-100℃まで冷却し、次いで10℃/minで200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点の温度を重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
【0037】
前記共重合体(B)の、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~30g/10min、より好ましくは0.5~20g/10min、さらに好ましくは1.0~10g/10minである。さらに、230℃におけるMFRが前記範囲にある共重合体(B)において、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~30g/10min、より好ましくは0.5~20g/10min、さらに好ましくは1.0~10g/10minである。MFRが前記範囲内にある共重合体(B)を用いることで、シーラント層を構成する樹脂組成物の流動性を向上させ、比較的大きめのシートであっても成形が容易となる。
【0038】
前記共重合体(B)は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。融点を120℃未満とする方法としては、一例として、モノマーフィード量等の重合条件を制御して、チーグラー・ナッタ系触媒で重合する場合はコモノマー含有率を20モル%以上、50モル%以下、メタロセン系触媒で重合する場合はコモノマー含有率を10モル%以上、50モル%以下に制御する方法が挙げられ、この方法により目標とする融点を有する共重合体を得ることができる。
【0039】
<高圧法低密度ポリエチレン(C)>
前記高圧法低密度ポリエチレン(C)としては、例えば、エチレン単独重合体が挙げらる。前記ポリエチレン(C)は、1種または2種以上用いてもよい。
一般的に、高圧法低密度ポリエチレンを用いることで、得られる組成物が歪み硬化性に優れ、成形性が向上する。
【0040】
前記ポリエチレン(C)の、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、0.1~100g/10min、好ましくは0.2~50g/10min、より好ましくは0.5~30g/10min、さらに好ましくは1.0~20g/10minである。MFRが前記範囲内にある共重合体(C)を用いることで、シーラント層を構成する樹脂組成物の流動性を向上させ、比較的大きめのシートであっても成形が容易となる。
【0041】
前記ポリエチレン(C)のASTM D1505に準拠して測定した密度は、好ましくは900~940kg/m、より好ましくは900~930kg/m、さらに好ましくは900~925kg/m、特に好ましくは910~925kg/mである。密度が前記範囲内にあるポリエチレン(C)を用いることで、シーラント層を構成する樹脂組成物の流動性を向上させ、比較的大きめのシートであっても成形が容易となる。
【0042】
前記ポリエチレン(C)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、500~2000気圧、150~300℃の条件下でラジカル重合させるラジカル重合法が挙げられる。また、重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。
【0043】
本組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(共)重合体(A)、共重合体(B)、およびポリエチレン(C)以外の樹脂、粘着付与剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0044】
本組成物に用いられる(共)重合体(A)、共重合体(B)、ポリエチレン(C)および後述する基材層を構成する樹脂組成物に用いられる(共)重合体は、それぞれ、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(バイオマス由来プロピレン、バイオマス由来エチレン、炭素数が4~20のバイオマス由来α-オレフィン)を含んでいてもよい。重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみであってもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。
【0045】
[フィルム、多層フィルム]
本発明のフィルム(以下「本フィルム」ともいう。)は、本組成物からなることを特徴とし、本組成物からなるシーラント層を有する多層フィルムであることが好ましい。本フィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムは、通常、シーラント層と、基材層等の前記シーラント層を保持する層とが積層された構造である。
【0046】
≪シーラント層≫
シーラント層は、本フィルムおよび後述する延伸フィルムを有する積層体に、熱融着性を付与する層である。前記シーラント層は、一層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。前記シーラント層を複数用いる場合、1種単独で用いても2種以上用いてもよい。
【0047】
前記シーラント層の厚さは、好ましくは3~30μm、より好ましくは5~25μmである。シーラント層が複数ある場合は、各シーラント層の厚さが、前記範囲内となることが好ましい。
【0048】
≪基材層≫
前記基材層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンであることが好ましい。前記ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、およびプロピレンを主モノマーとする共重合体を挙げることができる。共重合体の場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。プロピレンと共重合する他のモノマーとしては、炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィン、ジエン化合物などが挙げられる。
前記ポリプロピレンはプロピレン由来の構造単位を、85~100モル%、好ましくは90~99.5モル%含有し、他のモノマー由来の構造単位を、0~15モル%、好ましくは0.5~10モル%含有する(但し、プロピレン由来の構成単位と他のモノマー由来の構造単位との合計は100モル%である。)。
【0049】
プロピレンと共重合する炭素原子数2または炭素原子数4~20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等が例示できる。前記α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0050】
前記ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定され、好ましくは0.01~400g/10min、より好ましくは0.1~100g/10minであり、融点(Tm)が好ましくは115~175℃、より好ましくは120~170℃である。
【0051】
前記ポリプロピレンとしては、具体的には、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体などが挙げられる。前記ポリプロピレンは1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0052】
前記ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。
前記基材層を構成する樹脂組成物に含まれるポリプロピレンは、本組成物に含まれる(共)重合体(A)であることが好ましい。基材層を構成する樹脂組成物に(共)重合体(A)が含まれる場合、該(共)重合体(A)の種類は、本組成物に使用している(共)重合体(A)と同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
前記基材層は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン以外の樹脂、粘着付与剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を含むことができる。
前記基材層は、一層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。前記基材層を複数用いる場合、1種単独で用いても2種以上用いてもよい。
【0054】
前記基材層の厚さは、好ましくは10~100μm、より好ましくは20~75μmである。基材層が複数ある場合は、各基材層の厚さが、前記範囲内となることが好ましい。
【0055】
≪フィルムの作製方法≫
本フィルムは、無延伸フィルムであっても延伸されたフィルムであってもよく、無延伸フィルムであることが好ましい。本フィルムは、公知の押出機を用いて押出成形することで作成することができる。例えば、本フィルムがシーラント層を有する多層フィルムである場合は、シーラント層と基材層とを積層することで得られる。具体的には、Tダイが接続された2台の押し出し機を用いて、本組成物と、基材層を構成する樹脂組成物をそれぞれの押出機に供給し、共押出成形することにより作製することができる。
本フィルム全体の厚さは、通常13~130μm、好ましくは25~100μmである。
【0056】
≪積層体≫
本発明の積層体(以下「本積層体」ともいう。)は、本フィルムおよび延伸フィルムを有する。前記積層体の態様としては、例えば、本フィルム/延伸フィルム、本フィルム/延伸フィルム/延伸フィルムのような構造が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本フィルムを複数用いる場合、1種単独で用いても2種以上用いてもよい。
また、本フィルムと延伸フィルムとの間に任意で接着剤層を設けることもできる。本積層体において、本フィルムに基材層が含まれる場合、前記延伸フィルムに隣接しているか、接着剤層を介して接していることが好ましい。
【0057】
<延伸フィルム>
前記延伸フィルムを構成するフィルムは、用途に合わせて従来公知のものを採用することができる。その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなるフィルム、ポリエチレンカーボネートフィルム、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンからなるフィルムなどが挙げられる。
これらフィルムから構成される延伸フィルムは、1種単独で用いても2種以上用いてもよい。また、これらフィルムは、アルミニウム、亜鉛、シリカ等の無機物またはその酸化物を蒸着したフィルムであってもよい。
【0058】
これら中でも好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されたフィルムに延伸処理を施して得られる延伸PETフィルム、およびポリプロピレン(PP)から形成されたフィルムに延伸処理を施して得られる延伸PPフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的には、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸等を挙げることができる。延伸倍率としては、通常1.5~20倍、好ましくは2~15倍である。
【0059】
前記延伸フィルムの厚さは、通常10~50μm、好ましくは15~45μmであり、延伸フィルムが複数ある場合は、各延伸フィルムの厚さが、前記範囲内となることが好ましい。また、本発明の積層体全体の厚さは、通常30~150μm、好ましくは40~115μmである。
【0060】
本積層体は、低温シール性、イージーピール性、密封性のバランスに優れる。
低温シール性に優れるとは、70~120℃の温度範囲における積層体のヒートシール強度の最大値、すなわち、後述するヒートシール強度の測定において、上部のシールバーの温度を70~120℃の範囲内で変更して作製した各試験片の剥離強度の中で最大の値が、好ましくは2~10N/15mmであり、より好ましくは3~10N/15mm以上、さらに好ましくは4~10N/15mm以上であることを意味する。70~100℃の温度範囲における積層体のヒートシール強度の最大値が前記範囲内であると、低温でのヒートシールが可能であり、また、高速充填にも対応できる。
【0061】
イージーピール性(易剥離性)に優れるとは、本発明において、ヒートシール強度が好ましくは2~10N/15mmであり、かつ、ヒートシール強度の最大値と最小値の差が1.5N/15mm未満であるヒートシール温度の範囲幅が好ましくは20℃以上であるヒートシール温度の範囲が存在することを意味する。ヒートシール強度は、易剥離性の観点から、より好ましくは2~9N/15mmであり、さらに好ましくは2~7N/15mmである。また、ヒートシール強度の最大値と最小値の差が1.5N/15mm未満であるヒートシール温度の範囲幅が30℃以上であると、易剥離性が発現するヒートシール温度の範囲が広くなるためより好ましい。
【0062】
密封性に優れるとは、140~160℃の温度範囲における積層体のヒートシール強度の最大値、すなわち、後述するヒートシール強度の測定において、上部のシールバーの温度を140~160℃の範囲内で変更して作製した各試験片の剥離強度の中で最大の値が、好ましくは10N/15mm以上であり、より好ましくは11N/15mm以上であり、さらに好ましくは12N/15mm以上であり、特に好ましくは13N/15mm以上であることを意味する。140~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値の上限は、通常100N/15mmである。
【0063】
ここで、前述したヒートシール強度の測定において、シールされた2体の積層体は、ヒートシール部がエッジ切れ、凝集剥離等の形態で剥離する、または、フィルム切れ、フィルムの引き裂き等が発生する。本発明においては、70~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度測定において、ヒートシール強度が最大の値を示した時、積層体のヒートシール部が剥離して、その剥離形態がエッジ切れ、または凝集剥離であることが好ましい。
【0064】
本明細書中、ヒートシール強度とは、2体の同一の積層体のシーラント層面同士を、重ね合せ、下部のシールバーの温度を70℃、上部のシールバーの温度を70、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃で、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅5mmで加熱した後、放冷し、次いで、ヒートシールできた試験体からそれぞれ15mm幅の試験片を切り取り、各試験片について、積層体面に対して180°方向にクロスヘッドスピード300mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度(N/mm)である。
【0065】
本積層体は、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、サンドラミネーション等により、本フィルムと延伸フィルムとを積層して製造してもよく、溶融押出しラミネートにより本フィルムと延伸フィルムとを積層して製造してもよい。中でも、ドライラミネーションまたは溶融押出ラミネーションで積層する方法が好適である。
【0066】
また、本積層体は、シ本フィルムおよび延伸フィルムに特定の機能を付与するため、印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの機能層をさらに有することができる。本フィルムおよび延伸フィルムへの機能付与という観点から、前記機能層は、本フィルムおよび延伸フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムと隣接しているか、接着剤層を介して接していることが好ましい。
【0067】
前記機能材層には、無機化合物や無機酸化物を蒸着させた樹脂フィルム、金属箔、特殊な機能を有する樹脂の塗布膜、絵柄が印刷された樹脂フィルム等を用いることが出来る。
ここで、用いられる樹脂フィルムとしては、基材フィルムに用いられた樹脂フィルムと同様な樹脂フィルムを用いることが可能であり、さらには、同様なプラスチック配合剤や添加剤等を、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて、任意の量で添加することもできる。
【0068】
樹脂フィルムは、例えば、基材フィルム用の樹脂と同様な樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等従来から使用されている製膜化法により、又は、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化法により、製造することができる。さらに、フィルムの強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して、1軸ないし2軸方向に延伸することができる。
【0069】
例えば、バリア層をさらに含む積層体は、前記バリア層を金属蒸着、コーティング法または共押出法によって本フィルムまたは延伸フィルム中の一層として形成する工程、および前述した本フィルムと延伸フィルムとを積層する工程を含む積層体の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0070】
<包装体>
本積層体により形成された包装体は、低温シール性に優れ、またイージーピール性にも優れる。また、本積層体により形成された包装体は、従来通りのヒートシール温度(例えば100℃超~160℃)で成形した場合のヒートシール強度も、従来品と同等に維持できる。
【0071】
前記包装体の製造方法は、例えば、本積層体のシーラント層同士を向かい合わせ、あるいは積層体のシーラント層と他のフィルムとを向かい合わせ、その後、外表面側から所望の容器形状になるようにその周囲の少なくとも一部をヒートシールするが挙げられる。また、その周囲を全てヒートシールすることにより、密封された包装体を製造することができる。この包装体の成形加工を内容物の充填工程と組み合わせると、すなわち、包装体の底部および側部をヒートシールした後内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで内容物入りの包装体を製造することができる。この包装体は、スナック菓子やパン等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に利用することができる。
【0072】
また、本積層体ないし、本積層体からなるシートを、予め真空成形や圧空成形等によりカップ状に成形した容器、射出成形等で得られた容器、あるいは紙基材から形成された容器等に内容物を充填し、その後本積層体を蓋材として被覆し、容器上部ないし側部をヒートシールすることにより、内容物を包装した容器が得られる。この容器は、即席麺、味噌、ゼリー、プリン、スナック菓子等の包装に好適に利用される。
【0073】
本積層体または本積層体により形成された包装体は、モノマテリアル構成をとる場合、リサイクル品としても有効利用することができる。本積層体または包装体のリサイクル品である成形体は、新たに重合されたプラスチックの使用量を減らすことを可能にし、環境負荷低減に貢献可能な物品となる。
【実施例0074】
次に、本発明の積層体について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例に使用した材料を以下に示す。
【0075】
(A)プロピレン系重合体
・rPP(A-1):ランダムポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):7g/10min、融点:138℃、プロピレン含量:95モル%、エチレン含量:2モル%、1-ブテン含量:3モル%)
【0076】
(B)1-ブテン・α-オレフィン共重合体
・BPR(B-1):1-ブテン・プロピレン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):9g/10min、MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):4g/10min、融点:100℃、1-ブテン含量:87モル%、プロピレン含量:13モル%)
【0077】
(C)高圧法低密度ポリエチレン
・LDPE(C-1):三井・ダウポリケミカル(株)製 ミラソン16P(MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3.7g/10min、密度(ASTM D1505に準拠):923kg/m
【0078】
[融点の測定方法]
(プロピレン系重合体)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSCPyris1)を用いて、窒素雰囲気下(20mL/min)、約5mgの試料を200℃まで昇温し10分間保持した後、10℃/minで30℃まで冷却し5分間保持し、次いで10℃/minで200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点の温度をプロピレン系重合体の融点(Tm)とした。
【0079】
(1-ブテン・α-オレフィン共重合体)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製 DSC)を用いて、窒素雰囲気下(20mL/min)、測定用アルミパンに約10mgの試料を詰めて、100℃/minで200℃まで昇温し5分間保持した後、10℃/minで-100℃まで冷却し、次いで10℃/minで200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点の温度を1-ブテン・α-オレフィン共重合体またはプロピレン・α-オレフィン共重合体の融点(Tm)とした。
【0080】
[歪み硬化性の評価方法]
実施例1-1~1-3、比較例1-1~1-4にて得られた樹脂組成物を、単軸押出機(φ40mm)を用いて混練し、得られたペレット230℃の成形温度にて熱プレス成形して厚さ1mmのシートを作成する。レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製 Ares-G2)を用いて以下の条件にて、一軸伸長粘度を測定した。
(測定条件)
・変形モード:一軸伸長
・測定温度:190℃
・歪み速度:10/秒
・環境:窒素雰囲気下
得られた一軸伸長粘度の結果を用いて、以下の基準に従い、樹脂組成物の歪み硬化性を評価した。
(歪み硬化性の有無の評価)
○(歪み硬化性あり):横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットした際に、得られるグラフが上に凸の曲線にならない
×(歪み硬化性なし):横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットした際に、得られるグラフが上に凸の曲線となる
【0081】
[ヒートシール強度の測定方法]
2体の積層体のシーラント層面同士を、重ね合せ、下部のシールバーを70℃、上部のシールバーを70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または160℃で、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅5mmで加熱した後、放冷した。次いで、ヒートシールできた試験体からそれぞれ15mm幅の試験片を切り取り、各試験片について、積層体面に対して180°方向にクロスヘッドスピード300mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定し、その数値をヒートシール強度とした。
【0082】
(低温シール性)
以下の基準に従い、積層体の低温シール性を評価した。
○:70~100℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、8N/15mm以上
×:70~100℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、8N/15mm未満
【0083】
(イージーピール性)
以下の基準に従い、積層体のイージーピール性を評価した。
○:ヒートシール強度が2~10N/15mmであり、かつ、ヒートシール強度の最大値と最小値の差が1.5N/15mm未満であるヒートシール温度の範囲幅が20℃以上であるヒートシール温度の範囲が少なくとも1つ存在する。
×:ヒートシール強度が2~10N/15mmであり、かつ、ヒートシール強度の最大値と最小値の差が1.5N/15mm未満であるヒートシール温度の範囲幅が20℃以上であるヒートシール温度の範囲が存在しない。
【0084】
(密封性)
以下の基準に従い、積層体の密封性を評価した。
○:前記イージーピール性の評価が〇であり、かつ、140~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が10N/15mm以上
×:前記イージーピール性の評価が〇であり、かつ、140~160℃の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が10N/15mm未満、または前記イージーピール性の評価が×
【0085】
(剥離外観(剥離形態))
前記ヒートシール強度の測定において、ヒートシール温度が140℃におけるの時のヒートシール部が剥離されたサンプルのヒートシール部の剥離形態を確認し、エッジ切れ、凝集剥離、フィルム切れ、フィルムの引き裂きの発生を評価した。
【0086】
[実施例1-1]
rPP(A-1)63質量部、BPR(B-1)30質量部、およびLDPE(C-1)7質量部をブレンドし、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物について、前記測定方法に従い歪み硬化性を評価した。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例1-2、比較例1-1~1-2]
樹脂組成物の組成を表1に示した組成に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂組成物を調製した。得られた各樹脂組成物について、前記測定方法に従い歪み硬化性を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
[実施例2-1]
rPP(A-1)66.5質量部、BPR(B-1)28.5質量部、および高圧法低密度ポリエチレン(C)5質量部をブレンドし、シーラント層作製用の樹脂組成物を調製した。さらにスリップ剤としてエルカ酸アミドを樹脂組成物に対して1000ppm、およびアンチブロッキング剤としてシリカ(粒径3μm)を樹脂組成物に対して1200ppmを加えブレンドした。
【0090】
Tダイが接続された二台の押出機を用いて、前記添加剤を加えた前記シーラント層作製用の樹脂組成物および基材層作製用のrPP(A-1)をそれぞれの押出機に供給し、ダイおよび樹脂温度を230℃に設定し、各押出機の押出し量を調整して、共押出成形により、厚さ25μmの無延伸の基材層と、厚さ10μmの無延伸のシーラント層とが積層された無延伸フィルムを製造した。次いで、得られた無延伸フィルムの基材層面に厚さ25μmの延伸PPフィルム(三井化学東セロ(株)製)を、ドライラミネーション法により接着剤層を介して積層し、積層体を製造した。この積層体を用いて、前記方法に従い低温シール性、イージーピール性、密封性を求めた。結果を表2に示す。
【0091】
[実施例2-2~2-5、比較例2-1~2-3]
シーラント層作製用の樹脂組成物の組成を表1に示した組成に変更したこと以外は実施例2-1と同様にして積層体を製造した。得られた積層体について、前記方法により低温シール性、イージーピール性、密封性を求めた。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】