(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141275
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤および接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 153/00 20060101AFI20241003BHJP
C09J 191/06 20060101ALI20241003BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241003BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J191/06
C09J11/08
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052825
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】窪田 育夫
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA08
4J040BA182
4J040DM001
4J040HB31
4J040JA06
4J040JB01
4J040KA26
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】
接着性に優れ、さらには低温や高温環境における接着性、経時保存後の接着性に優れるホットメルト接着剤の提供を目的とする。
【解決手段】
アクリルブロック共重合体(A)およびワックス(W)を含むホットメルト接着剤であって、前記アクリルブロック共重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックを含み、前記ワックス(W)の溶解度パラメータ(SP値)が19~25(J/cm3)1/2であり、ホットメルト接着剤100質量%中、ワックス(W)を1~40質量%含む、ホットメルト接着剤により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルブロック共重合体(A)およびワックス(W)を含むホットメルト接着剤であって、
前記アクリルブロック共重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックを含み、
前記ワックス(W)の溶解度パラメータ(SP値)が19~25(J/cm3)1/2であり、
ホットメルト接着剤100質量%中、ワックス(W)を1~40質量%含む、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
さらに粘着付与剤(B)を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
基材と、請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤からなる接着層を有する接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤および接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は高温にすることによって溶融し、基材などに塗布した後に被着体を貼り合わせ、冷却することで固化して接着性能を発現するという特徴を持つ。ホットメルト接着剤と被着体との貼り合わせ方法として、ホットメルト接着剤を基材に塗布した後、すぐには被着体とは貼り合わせずにホットメルト接着剤を冷却して固化し、接着させたいときに被着体を重ねて加熱するという方法もある。ホットメルト接着剤は溶剤系接着剤や水系接着剤と異なり、基材に塗布した後に溶剤や水を揮発させるという工程が無いため、環境への負荷が小さく近年注目を集めている。
【0003】
ホットメルト接着剤に使用される樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル(EVA)系、ゴム系、オレフィン系、アクリル系など求められる性能に応じて様々な種類から選択できる。例えば、特許文献1には樹脂としてアクリルブロック共重合体を使用した、接着力や塗工性等に優れるホットメルト粘接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、開示されているアクリルブロック共重合体では、さらに高い要求性能を満たすことが難しいという課題があった。具体的には、低温および高温での接着性や経時保存後の接着性の保持である。
【0006】
よって本発明は、接着性に優れ、さらには低温や高温環境における接着性、経時保存後の接着性に優れるホットメルト接着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の[1]~[3]に関する。
[1]アクリルブロック共重合体(A)およびワックス(W)を含むホットメルト接着剤であって、
前記アクリルブロック共重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックを含み、
前記ワックス(W)の溶解度パラメータ(SP値)が19~25(J/cm3)1/2であり、
ホットメルト接着剤100質量%中、ワックス(W)を1~40質量%含む、ホットメルト接着剤。
[2]さらに粘着付与剤(B)を含む、[1]記載のホットメルト接着剤。
[3]基材と、[1]または[2]に記載のホットメルト接着剤からなる接着層を有する接着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、接着性や塗工性に優れ、さらには低温での接着性、経時保存後の接着性を有するホットメルト接着剤の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよく、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
なお、溶解度パラメータ(SP値)は単位を略して数字のみで記載する場合がある。
【0010】
<アクリルブロック共重合体(A)>
本発明のホットメルト接着剤に含まれるアクリルブロック共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックを含むブロック共重合体である。アクリルブロック共重合体(A)としては、前記アルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルから形成されるハードセグメント(AH)と、前記アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルから形成されるソフトセグメント(AS)とが、-AH-AS-AH-のように結合したトリブロック重合体、-AH-AS-のように結合したジブロック重合体などが挙げられる。トリブロック重合体とジブロック重合体を併用しても良い。
【0011】
アクリルブロック共重合体(A)のハードセグメントを形成するためのアルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル(以下MMAとも称する)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル等が挙げられる。これらの中でもホットメルト接着剤の凝集力が高くなるため、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0012】
アクリルブロック共重合体(A)のソフトセグメントを形成するための、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル(以下BAとも称する)、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下2EHAとも称する)等が挙げられる。これらの中でも、低温での接着性発現の観点からアクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル又はそれらの併用が好ましい。
【0013】
アクリルブロック重合体(A)中のアルキル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルの含有率は、初期硬化性の観点で10~55質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0014】
アクリルブロック共重合体(A)としては、クラレ(株)製のクラリティLA2140E(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:20質量%) 、クラリティLA2250(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:30質量%)、クラリティLA2330(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:20質量%)、クラリティLA3320(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:15質量%)、クラリティLA3170(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:12質量%)、クラリティLA2270(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:40質量%)、クラリティLA4285(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:50質量%)、クラリティLA1892(MMA-BA/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:52質量%)、クラリティLK9243(MMA-(BA-2EHA)/トリブロック共重合体、MMAの比率:17質量%)、クラリティKL-LK9333(MMA(BA-2EHA)/トリブロック共重合体、MMAの質量比率:20質量%)などが挙げられ、それぞれを単独で使用することもできるし、併用することも可能である。
【0015】
<ワックス(W)>
ホットメルト接着剤に通常用いられるワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、エチレン・プロピレン共重合物のスチレングラフト物、エチレン・プロピレン共重合物の無水マレイン酸化物、脂肪酸アミド化合物、脂肪酸エステル化合物など様々な種類が存在する。これらのうち、本発明のワックス(W)は溶解度パラメータ(SP値)が19~25(J/cm3)1/2となるものである。ワックス(W)は23℃において固体であるものが好ましく用いられる。
【0016】
本発明における溶解度パラメータ(SP値)は、ロバートエフフェイダース(Robert F.Fedors)らの著によるポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polymerengineering and science)第14巻、147~154ページに記載されている方法で計算したものである。以下の式(1)に計算式を示す。
・・・式(1)
ここで、δは溶解度パラメータ(SP値)、ΣEcohは凝集エネルギー、ΣVはモル分子容を示す。上述の文献に記載された、各官能基のEcoh、Vの値を以下の表1に例示する。
【0017】
【0018】
例えば、構造式がCH3(CH2)7OHで表される1-オクタノールであれば、ΣEcoh=4710+4940×7+29800=69090、ΣV=33.5+16.1×7+10.0=156.2となり、δ=21.03(J/cm3)1/2と計算できる。
【0019】
また、例えばポリエチレンのようにモノマーが重合されたポリマーの場合は、モノマーから構成される重合単位を基準にして計算する事とする。具体的には、エチレンモノマーの構造式はH2C=CH2であるが、ラジカル重合してポリマー化すると-(CH2-CH2)n-となり、(CH2-CH2)がモノマーから構成される重合単位となる。したがってポリエチレンのSP値はΣEcoh=4940×2×n、ΣV=16.1×2×nであるから、δ=17.5(J/cm3)1/2と計算できる。なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体のように二つ以上のモノマーが共重合されている場合は、それぞれのモノマーから構成される重合単位のモル百分率(mol%)をもとに計算する。すなわち、エチレンが80mol%、酢酸ビニルが20mol%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体の場合、ΣEcoh=4940×2×0.8+(4940+3430+18000+4710)×0.2、ΣV=16.1×2×0.8+(16.1-1.0+18.0+33.5)×0.2であるから、δ=18.0(J/cm3)1/2と計算できる。
【0020】
溶解度パラメータ(SP値)が19~25(J/cm3)1/2であるワックス(W)としては、例えば、メチル-12-ヒドロキシステアレート(SP値:20.0)などのヒドロキシステアリン酸エステル、N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:22.8)、N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:21.3)、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:20.9)、N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:21.5)などのヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。溶解度パラメータ(SP値)は20~24(J/cm3)1/2であることが好ましい。この範囲にある事で経時後の接着強度がより優れるホットメルト接着剤とすることが出来る。
【0021】
≪ホットメルト接着剤≫
本発明のホットメルト接着剤は、アクリルブロック重合体(A)およびワックス(W)を含む。
本発明のホットメルト接着剤100質量%中のワックス(W)の含有率は1~40質量%であるが、3~30質量%が好ましく、5~20質量%が最も好ましい。このような範囲にある事で、接着力や経時安定性に優れるホットメルト接着剤となる。
【0022】
<粘着付与剤(B)>
本発明のホットメルト接着剤はアクリルブロック重合体(A)、ワックス(W)の他に粘着付与剤(B)を使用することが好ましい。粘着付与剤(B)を使用することによって、より接着性に優れるホットメルト接着剤とすることが出来る。粘着付与剤(B)としてはフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂やα-メチルスチレン樹脂およびこれらの共重合体等のスチレン系樹脂、脂肪族系および芳香族系等の石油樹脂、ロジンエステル、重合ロジン、水添されたロジンエステル及び重合ロジン等のロジン系樹脂などが挙げられる。これらの中でもロジン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。これらの粘着付与剤を使用する事で、初期接着強度や低温での接着強度、経時後の接着強度により優れたホットメルト接着剤とすることが出来る。
【0023】
本発明のホットメルト接着剤が粘着付与剤(B)を含む場合、ホットメルト接着剤中のアクリルブロック重合体(A)の含有率は15~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、45~80質量%が最も好ましい。ホットメルト接着剤中の粘着付与剤(B)の含有率は5~45質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%が最も好ましい。ホットメルト接着剤中のワックス(W)の含有量は1~40質量%であり、3~30質量%が好ましく、5~20質量%が最も好ましい。これらの範囲にある事で室温における接着力、5℃のような低温や60℃のような高温での接着力に優れるホットメルト接着剤となる。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤が粘着付与剤(B)を含まない場合は、ホットメルト接着剤中のアクリルブロック重合体(A)の含有量は60~99質量%が好ましく、70~97質量%がより好ましく、80~95質量%が最も好ましい。ホットメルト接着剤中のワックス(W)の含有量は1~40質量%であり、3~30質量%が好ましく、5~20質量%が最も好ましい。これらの範囲にある事で室温における接着力や経時後の接着力および5℃のような低温や60℃のような高温での接着力に優れるホットメルト接着剤となる。
【0025】
<添加剤>
本発明のホットメルト接着剤には発明の目的を損なわない範囲で添加剤を配合しても良い。添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、消臭剤、香料などが挙げられる。これらの添加剤は単独で使用しても、2種類以上を併用しても良い。
可塑剤としては、23℃で液状のフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、シクロヘキセンジカルボン酸エステル、リシノール酸エステル、ポリエステル系、酢酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテルエステル系、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アクリルポリマーのオリゴマーなどが挙げられる。
【0026】
酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
【0027】
紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの通常使用されるものが挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系の通常使用されるものが挙げられる。
【0028】
<ホットメルト接着剤の製造方法>
本発明のホットメルト接着剤を製造する方法としては、特に限定されず、ミキシングロール、ロール、バンバリーミキサー、一軸又は二軸の押出機、ニーダー、エクストルーダー、溶融押出機、撹拌機を備えた溶融釜などを用いて混合する方法が挙げられる。ホットメルト接着剤中の各成分が均一となるように、それぞれの成分が溶融して液体の状態で混合する事が好ましい。その後、任意の容器に充填したり、紐状に吐出して冷却し、取り扱いやすいサイズにカットしたりして取り出すことが出来る。
【0029】
≪接着シート≫
本発明の接着シートは、基材とホットメルト接着剤からなる接着層を有する。ホットメルト接着剤を基材上に塗工する事で、本発明のホットメルト接着剤からなる接着層を有する接着シートを形成する事が出来る。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤は通常知られた接触塗工法、非接触塗工法により塗工することができる。接触塗工法とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法である。非接触塗工法とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法である。接触塗工法として、例えば、スロットコーター塗工、グラビアコーター塗工、ロールコーター塗工などが挙げられ、非接触塗工法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工、コントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工、カーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工などが挙げられる。
【0031】
本発明の接着シートは、接着層を冷却してロール状に巻き取った後、被着体と貼り合わせるときにロールから巻きだして、熱をかけながら接着層と被着体とを圧着する事で接着させることが出来る。熱圧着するときの圧力は例えば0.1~0.5MPa、温度は120~180℃、時間は0.1~10秒など、適宜選択出来る。また、ホットメルト接着剤を塗布した後、冷却せずにそのまま被着体を重ね合わせて接着させることも出来る。接着層の厚みに特に制限は無いが、1~500μmであることが好ましい。
【0032】
基材は、樹脂フィルム、紙、ガラス、金属箔、不織布、布などを使用する事が出来る。これらは単独で使用しても良いし、接着剤などで2種類以上が積層された積層体を使用しても良い。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂などの樹脂から形成される樹脂フィルムが挙げられる。
【実施例0033】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0034】
[実施例1]
<ホットメルト接着剤の製造>
[ホットメルト接着剤1]
クラリティLA3320を80部と、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド20部をヘンシェルミキサーに投入し、5分間プリブレンドした。次いで、この混合物をホッパーに投入し、スクリューフィーダを用いて二軸押出機(アイ・ケー・ジー社製の同方向回転二軸押出機PMT32-40.5)に供給した。そして、スクリュー回転速度:50rpm、供給速度:5kg/hrの条件で押出し工程を行い、ホットメルト接着剤1を得た。なお、バレル温度は各成分が溶融する温度に適宜調整した。
【0035】
<接着シート1の作製>
加温した塗工台の上にA4サイズに切り出した膜厚25μmのポリエチレンテレフタレート(以下PET)フィルムを置き、ここに加温して溶融したホットメルト接着剤1を適量垂らし、アプリケーターを使用してホットメルト接着剤1を膜厚100μmとなるように塗布した。ここで、アプリケーターとは一定の厚さのすき間が切削された金属製の道具である。アプリケーターの手前に液体を垂らして一定速度でアプリケーター本体を手前に引くことで、すき間を通り抜けた液体が基材の上に一定の膜厚で塗布される仕組みとなっている。塗布されたホットメルト接着剤1を室温まで徐冷し、接着シート1を得た。
【0036】
<初期接着強度の評価>
得られた接着シート1を15mm幅に切り、同じ幅に切り出した膜厚250μmのPETフィルムを接着シート1の接着層側に重ね、温度140℃、圧力0.1MPa、1秒の条件で熱圧着した。その後、この試験片における接着層とPETフィルムの初期接着強度を引張試験機を使用して、温度23℃、剥離角度180°、剥離速度200mm/分の条件で測定し、最大接着強度を読み取った。同じ条件で測定を三回繰り返し(N=3)、その平均値を計算して以下のように評価した。評価2以上を実用可と判断した。評価結果を表2中に記載した。
5:N=3の平均値が7N/15mm以上
4:N=3の平均値が5N/15mm以上7N/15mm未満
3:N=3の平均値が3N/15mm以上5N/15mm未満
2:N=3の平均値が1N/15mm以上3N/15mm未満
1:N=3の平均値が1N/15mm未満(実用不可)
【0037】
<接着強度の保持率の評価>
得られた接着シート1を50℃の環境下に二週間静置した後、上述の初期接着強度の評価と同様にして接着層とPETフィルムの経時後接着強度を評価した。同じ条件で測定を三回繰り返し(N=3)、その平均値を算出した。経時後接着強度の値と初期接着強度の値を使用して、以下の計算式から接着強度の保持率を計算し、以下のように評価した。評価2以上を実用可と判断した。評価結果を表2中に記載した。
(接着強度の保持率)[%]=100×[(経時後接着強度)/(初期接着強度)]
5:接着強度の保持率が90%以上
4:接着強度の保持率が80%以上90%未満
3:接着強度の保持率が70%以上80%未満
2:接着強度の保持率が60%以上70%未満
1:接着強度の保持率が60%未満(実用不可)
【0038】
<5℃接着強度の評価>
引張試験機での測定時の温度を5℃とした事以外は、初期接着強度の評価と同様にして5℃接着強度を以下のように評価した。評価2以上を実用可と判断した。評価結果を表2中に記載した。
5:N=3の平均値が7N/15mm以上
4:N=3の平均値が5N/15mm以上7N/15mm未満
3:N=3の平均値が3N/15mm以上5N/15mm未満
2:N=3の平均値が1N/15mm以上3N/15mm未満
1:N=3の平均値が1N/15mm未満(実用不可)
【0039】
<60℃接着強度の評価>
引張試験機での測定時の温度を60℃とした事以外は、初期接着強度の評価と同様にして60℃接着強度を以下のように評価した。評価2以上を実用可と判断した。評価結果を表2中に記載した。
5:N=3の平均値が7N/15mm以上
4:N=3の平均値が5N/15mm以上7N/15mm未満
3:N=3の平均値が3N/15mm以上5N/15mm未満
2:N=3の平均値が1N/15mm以上3N/15mm未満
1:N=3の平均値が1N/15mm未満(実用不可)
【0040】
【0041】
[実施例2~40、比較例1~8]
使用した原料を表2~表5に示すとおりに変更した事以外はホットメルト接着剤1と同様にして、実施例2~40、比較例1~8のホットメルト接着剤および接着シートを作成し、評価した。なお、表2~表5に記載されている原料は以下のとおりである。
【0042】
<アクリルブロック共重合体(A)>
A1:クラリティLA3320(クラレ(株)製、メタクリル酸メチルの質量比率が15質量%のメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルのトリブロック共重合体)
A2:クラリティLK9243(クラレ(株)製、メタクリル酸メチルの質量比率が17質量%のメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-エチルへキシルの混合のトリブロック共重合体)
A3:クラリティLA2270(クラレ(株)製、メタクリル酸メチルの質量比率が40質量%のメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルのトリブロック共重合体)
A4:クラリティLA4285(クラレ(株)製、メタクリル酸メチルの質量比率が50質量%のメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルのトリブロック共重合体)
【0043】
<ワックス(W)>
W1:メチル-12-ヒドロキシステアレート(SP値:20.0)
W2:N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:20.9)
W3:N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:21.3)
W4:N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:21.5)
W5:N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリン酸アミド(SP値:22.8)
W6:ソルビタンモノステアレート(SP値:24.2)
<その他のワックス(W’)>
W’1:エルカ酸アミド(SP値:18.6)
W’2:ステアリン酸アミド(SP値:18.8)
【0044】
<粘着付与剤(B)>
B1:クリスタレックス3085(イーストマンケミカル社製、α-メチルスチレン樹脂)
B2:クリスタレックスF100(イーストマンケミカル社製、α-メチルスチレン樹脂)
B3:ペンセルGA100(荒川化学工業社製、ロジンエステル)
B4:クイントンA100(日本ゼオン社製、石油系樹脂)
B5:YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂)
B6:ハリタックKF125(ハリマ化成(株)社製、変性ロジン)
【0045】
【0046】
【0047】