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特開2024-141281仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141281
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052832
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩史
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA11
(57)【要約】
【課題】平面寸法の限られた枠状溝の内側に残土を仮置きするに際して、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することのできる、仮置き残土構造と残土仮置き方法と、仮置き残土による埋戻し構造を提供すること。
【解決手段】平面視において枠状の基礎20を施工するために地盤Gが掘削されて形成される、枠状溝10の内側に、平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種の堰材30が設置され、地盤Gが掘削された際に発生した残土が、堰材30の内部に仮置きされることにより、仮置き残土構造70が形成される。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において枠状の基礎を施工するために地盤が掘削されて形成される、枠状溝の内側に、平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種の堰材が設置され、
地盤が掘削された際に発生した残土が、前記堰材の内部に仮置きされていることを特徴とする、仮置き残土構造。
【請求項2】
前記枠状溝の隅角部と前記堰材との間における、前記残土が存在しない非残土領域が、作業足場として機能していることを特徴とする、請求項1に記載の仮置き残土構造。
【請求項3】
前記残土は、前記堰材で包囲される柱状残土と、該柱状残土の上に載置される錐状残土とを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮置き残土構造。
【請求項4】
前記堰材が、金網により形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮置き残土構造。
【請求項5】
請求項3に記載の仮置き残土構造を形成する、前記柱状残土と前記錐状残土が埋戻し土とされている、仮置き残土による埋戻し構造であって、
前記枠状溝の内側における埋戻し土の設計高さよりも前記堰材の高さが低い場合に、該堰材が残置された状態で、該堰材により包囲される前記柱状残土が仮置きのままの状態で埋戻し土とされ、前記錐状残土の一部もしくは全部が、前記枠状溝に施工されている前記基礎の立ち上がり部と前記堰材の間の空間における埋戻し土とされていることを特徴とする、仮置き残土による埋戻し構造。
【請求項6】
平面視において枠状の基礎を施工するために地盤を掘削して枠状溝を施工し、該枠状溝の内側に、平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種の堰材を設置する、掘削設置工程と、
地盤が掘削された際に発生した残土を、前記堰材の内部に仮置きする、残土仮置き工程とを有することを特徴とする、残土仮置き方法。
【請求項7】
前記残土仮置き工程に続いて、前記枠状溝に前記基礎を施工する、基礎施工工程をさらに有し、
前記基礎施工工程では、前記枠状溝の隅角部と前記堰材との間における、前記残土が存在しない非残土領域を、作業足場として利用し、
前記残土仮置き工程では、前記堰材で包囲される柱状残土を施工し、次いで、該柱状残土の上に錐状残土を載置することを特徴とする、請求項6に記載の残土仮置き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅や集合住宅等をはじめとする建築物の施工に際して、残土を敷地内に仮置きするに当たり、敷地が狭くて残土置場を確保できない場合は、枠状の基礎を施工するために地盤が掘削されて形成される、枠状溝の内側に残土を山積みにして仮置きが行われる。また、必要に応じて、袋状の包材である、フレコンバック(フレキシブルコンテナバック)等に残土を収容し、仮置きが行われる。この枠状の基礎は、例えばフーチングと立ち上がり部とを備えた布基礎であり、布基礎が平面視で矩形枠状の線状に施工されることになる。
【0003】
ところで、昨今の住宅の基礎(上記する布基礎)は、枠状の外周基礎と、この外周基礎の内側でさらにエリアを区画する間仕切り基礎を備えている形態が多く、区画される平面視矩形のエリア寸法は、4P×5P(1Pはモジュール幅を示し、例えば910mm)や、2P×2P等と比較的小さい。そのため、このような平面寸法の小さなエリアに残土を仮置きする場合に、高さを5m以下で法勾配を30度程度で山積みした際に、仮置きされる残土量が少量にならざるを得なくなる。尚、仮置きする残土量を多くするべく、法勾配を大きくすることは、山積みされた残土が崩れる等、安全上の問題があって好ましくない。
【0004】
ここで、図1には、住宅の基礎の一例の平面図を示し、図2には、そのII-II方向の矢視図であって、基礎と山積みされた残土の縦断面図を示している。敷地Sにおいて、地盤Gを掘削することにより、平面視形状が矩形枠状の外周溝D1(枠状溝Dの一例)が施工され、外周溝D1の内部に複数の直線溝D2(枠状溝Dの他の例)が相互に交差する態様で施工される。枠状溝D1には外周基礎K1(基礎Kの一例)が施工され、直線溝D2には間仕切り基礎K2(基礎Kの他の例)が施工されることにより、外周基礎K1と複数の間仕切り基礎K2とにより複数の平面視形状が小さな仮置きエリアA1乃至A3が形成される。基礎Kは、フーチングKaと立ち上がり部Kbを有する布基礎である。
【0005】
敷地Sが狭い場合には、各仮置きエリアA1乃至A3に対して、崩落を防止可能な安全な法勾配θ1を有する態様で、残土Z1乃至Z3が仮置きされることになる。
【0006】
また、上記するフレコンバックを利用して、内部に残土が収容された複数のフレコンバックを積層していくことにより、隣接するフレコンバック同士の摩擦力等により、山積みされたフレコンバックが崩れることが抑制されることから、単に残土を山積みする場合と比べて仮置きされる残土量を可及的に多くすることが可能になる。しかしながら、フレコンバックの再利用を図るべく、使用後のフレコンバックの清掃や片付け、管理等に手間がかかるといった固有の課題がある。
【0007】
以上のことから、平面寸法の限られた枠状溝の内側に残土を仮置きするに際して、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することのできる、仮置き残土構造と残土仮置き方法が望まれる。
【0008】
ここで、特許文献1には、掘り起こし残土の仮置き方法が提案されている。この仮置き方法は、汚染物質を含有する掘り起こし残土を仮置きするに当たり、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉層と、掘り起こし残土に含まれる水分を均一に分散させる流路分散層とを含む汚染物質捕捉流路分散層を仮置きヤードに形成し、汚染物質捕捉流路分散層の上に、掘り起こし残土を仮置き盛土として仮置きするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-35224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の掘り起こし残土の仮置き方法によれば、残土からの汚染物質の流出を防止できるとしているが、上記する課題、すなわち、平面寸法の限られた枠状溝の内側に残土を仮置きするに際して、可及的に多くの残土量を確保することを可能にした手段を開示するものではない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、平面寸法の限られた枠状溝の内側に残土を仮置きするに際して、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することのできる、仮置き残土構造と残土仮置き方法と、仮置き残土による埋戻し構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による仮置き残土構造の一態様は、
平面視において枠状の基礎を施工するために地盤が掘削されて形成される、枠状溝の内側に、平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種の堰材が設置され、
地盤が掘削された際に発生した残土が、前記堰材の内部に仮置きされていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、枠状溝の内側に、平面視形状が円形等の堰材が設置され、残土が堰材の内部に仮置きされていることにより、堰材の高さに相当する柱状の残土が堰材に包囲されるようにして仮置きされ、その上に法勾配を有した錐状の残土が仮置きされることから、堰材に収容される柱状の残土の残土量分が、従来の仮置き残土に比べて増加することとなり、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することが可能になる。
【0014】
ここで、堰材の平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種であることにより、円形やトラック状等の形状が曲率を有する形状故に、堰材の内部にある仮置き残土から堰材に作用した土圧が堰材の周方向の圧縮力となり、圧縮力が作用した状態の硬い(強固)な堰材にて仮置き残土を拘束することが可能になる。すなわち、堰材の本来の剛性がそれほど大きくない場合であっても、作用する土圧にて生じる周方向の圧縮力によって堰材が硬くなり、仮置き残土から作用する土圧にて転倒や変形し難い堰材が形成される。仮に、矩形枠状の堰材の場合は、作用する土圧にてその周方向に圧縮力が作用することがないため、矩形枠状の隅角部は剛性が高い一方で、矩形枠状の直線部の例えば中央領域(隅角部から離れた領域)は剛性が低いことから、地盤に差し込んだ鉄筋等で堰材の転倒防止や変形防止の措置を講じる必要が生じ得る。
【0015】
枠状溝には、既述する平面視形状が矩形枠状の枠状溝と、枠状溝の内部に施工されている複数の直線溝が含まれ、これらによって、複数の平面寸法を有する複数の枠状溝が形成される。また、枠状溝には、既述する布基礎(外周基礎や間仕切り基礎)に代表される基礎が施工される。
【0016】
また、堰材としては、ラス型枠等の金網、鋼製の堰板、硬質な樹脂製の堰板の他、木製の堰板等が含まれる。
【0017】
また、本発明による仮置き残土構造の他の態様は、
前記枠状溝の隅角部と前記堰材との間における、前記残土が存在しない非残土領域が、作業足場として機能していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、堰材の平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種であることから、枠状溝の隅角部と堰材との間には自ずと残土が存在しない非残土領域が形成されることになるが、この非残土領域が作業足場として機能することにより、鉄筋コンクリート製の基礎を施工する際の配筋作業やコンクリート打設作業等の作業性(施工性)が良好になる。
【0019】
また、本発明による仮置き残土構造の他の態様において、
前記残土は、前記堰材で包囲される柱状残土と、該柱状残土の上に載置される錐状残土とを有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、残土が、堰材で包囲される柱状残土と、柱状残土の上に載置される錐状残土とを有することにより、柱状残土に相当する残土量を従来の仮置き残土に比べて増加させることができ、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することが可能になる。
【0021】
また、本発明による仮置き残土構造の他の態様において、
前記堰材が、金網により形成されることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、堰材がラス型枠等の金網にて形成されることによって、金網を介した仮置き残土からの余剰水の排水性が良好になる。
【0023】
また、本発明による仮置き残土による埋戻し構造の一態様は、
前記仮置き残土構造を形成する、前記柱状残土と前記錐状残土が埋戻し土とされている、仮置き残土による埋戻し構造であって、
前記枠状溝の内側における埋戻し土の設計高さよりも前記堰材の高さが低い場合に、該堰材が残置された状態で、該堰材により包囲される前記柱状残土が仮置きのままの状態で埋戻し土とされ、前記錐状残土の一部もしくは全部が、前記枠状溝に施工されている前記基礎の立ち上がり部と前記堰材の間の空間における埋戻し土とされていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、枠状溝の内側における埋戻し土の設計高さよりも堰材の高さが低い場合に、堰材により包囲される柱状残土が仮置きのままの状態で埋戻し土とされ、錐状残土の一部もしくは全部が、枠状溝に施工されている基礎の立ち上がり部と堰材の間の空間における埋戻し土とされていることにより、堰材にて拘束されている柱状残土が十分に締固められた埋戻し土を有する、埋戻し構造が形成される。
【0025】
柱状残土の上に錐状残土を載置した際に、錐状残土の荷重が柱状残土に載荷され、この荷重により柱状残土が締固められることになり、締固められた柱状残土が周囲の堰材にて拘束されることになる。また、堰材が埋戻し土の内部に残置されることから、仮置きエリアの中央領域(柱状残土の領域)からランマ等で埋戻し土を転圧する際に、堰材にて転圧された埋戻し土が拘束されることにより、埋戻し土が締固められ易いといった施工上の効果も奏される。
【0026】
また、本発明による残土仮置き方法の一態様は、
平面視において枠状の基礎を施工するために地盤を掘削して枠状溝を施工し、該枠状溝の内側に、平面視形状が、円形、楕円形、もしくはトラック状のいずれか一種の堰材を設置する、掘削設置工程と、
地盤が掘削された際に発生した残土を、前記堰材の内部に仮置きする、残土仮置き工程とを有することを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、枠状溝の内側に平面視形状が円形等の堰材を設置し、残土を堰材の内部に仮置きすることにより、堰材の高さに相当する柱状の残土が堰材に包囲されるようにして仮置きされ、その上に法勾配を有した錐状の残土が仮置きされることから、柱状の残土の残土量分だけ従来の仮置き残土に比べて仮置きされる残土量を増加させることができ、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することが可能になる。
【0028】
また、本発明による残土仮置き方法の他の態様は、
前記残土仮置き工程に続いて、前記枠状溝に前記基礎を施工する、基礎施工工程をさらに有し、
前記基礎施工工程では、前記枠状溝の隅角部と前記堰材との間における、前記残土が存在しない非残土領域を、作業足場として利用し、
前記残土仮置き工程では、前記堰材で包囲される柱状残土を施工し、次いで、該柱状残土の上に錐状残土を載置することを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、非残土領域を作業足場に利用することによって、鉄筋コンクリート製の基礎を施工する際の配筋作業やコンクリート打設作業等の作業性が良好になる。さらに、堰材で包囲される柱状残土を施工し、柱状残土の上に錐状残土を載置することにより、柱状残土に相当する残土量を従来の仮置き残土に比べて増加させることができ、可及的に多くの残土量を確保することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造によれば、平面寸法の限られた枠状溝の内側に残土を仮置きするに際して、フレコンバックを使用することなく、可及的に多くの残土量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】枠状の基礎の内側の仮置きエリアにおける、従来の仮置き残土構造の一例の平面図である。
図2図1のII-II矢視図であって、従来の仮置き残土構造の一例の縦断面図である。
図3A】実施形態に係る仮置き残土構造の一例の平面図である。
図3B図3AのB-B矢視図であって、実施形態に係る仮置き残土構造の一例の縦断面図である。
図4】実施形態に係る仮置き残土構造の他の例の平面図である。
図5】実施形態に係る仮置き残土による埋戻し構造の一例の縦断面図である。
図6図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係る仮置き残土による埋戻し構造の一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造]
図1乃至図6を参照して、実施形態に係る仮置き残土構造と残土仮置き方法、及び仮置き残土による埋戻し構造について説明する。ここで、図1は、枠状の基礎の内側の仮置きエリアにおける、従来の仮置き残土構造の一例の平面図であり、図2は、図1のII-II矢視図であって、従来の仮置き残土構造の一例の縦断面図である。また、図3Aは、実施形態に係る仮置き残土構造の一例の平面図であり、図3Bは、図3AのB-B矢視図であって、実施形態に係る仮置き残土構造の一例の縦断面図である。また、図4は、実施形態に係る仮置き残土構造の他の例の平面図であり、図5は、実施形態に係る仮置き残土による埋戻し構造の一例の縦断面図である。さらに、図6は、図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係る仮置き残土による埋戻し構造の一例の平面図である。
【0034】
図3A図3Bに示すように、住宅が施工される敷地Sにおいて、地盤Gを掘削することにより、平面視形状が矩形枠状の枠状溝10が施工される。ここで、図示例は、理解を容易にするために1つの矩形枠状(正方形枠状)の枠状溝10を例示するものであるが、例えば、図1に示すように、平面視形状が矩形枠状の外周溝の内部に複数の直線溝が設けられて、複数の仮置きエリアを有する形態であってもよい。
【0035】
敷地Sのうち、枠状溝10の外側の領域には十分な仮置きエリアを確保するだけのスペースが存在しないことから、枠状溝10の内側は、地盤Gを掘削して枠状溝10を施工した際に発生した残土の仮置きエリアA5となっている。
【0036】
仮置きエリアA5には、平面視形状が円形の堰材30が載置される。ここで、図示を省略するが、堰材30の位置ずれを防止するべく、堰材30の周方向の複数箇所において、地盤に差し込まれた鉄筋等が設けられていてもよい。
【0037】
地盤Gを掘削して枠状溝10を施工した際に発生する残土は、平面視円形の堰材30の内部に柱状残土40(図示例は円柱状残土)として仮置きされ、さらに、柱状残土40の上に錐状残土50(図示例は円錐状残土)として仮置きされることにより、柱状残土40と錐状残土50からなる仮置き残土60が形成される。ここで、錐状残土50の法勾配θ1は、残土が崩落しない安全な低勾配に設定され、例えば30度程度かそれ以下の勾配である。
【0038】
堰材30は、金網であるラス型枠により形成されている。堰材30がラス型枠にて形成されることにより、内部にある残土60から作用する土圧P2に抗する剛性を備え、さらに、残土60の内部を浸透する余剰水を効果的に外部に排水することができる。ここで、堰材30は、ラス型枠の他にも、鋼製の堰板や硬質な樹脂製の堰板、木製の堰板等により形成されてもよい。このような堰板が適用される場合は、残土60を浸透する余剰水は堰材30の下面から外部へ排水される。
【0039】
枠状溝10の内側の仮置きエリアA5に、平面視形状が円形の堰材30が設置され、地盤Gを掘削した際に発生した残土60の全部もしくは一部が堰材30の内部に仮置きされることにより、仮置き残土構造70が形成される。
【0040】
図3Bに示すように、堰材30の内部にある柱状残土40には、その上方にある錐状残土50の重量が荷重P1として作用する。そして、この荷重P1を上載荷重として、柱状残土40から平面視円形の堰材30に対して、図3Aに示すように、堰材30の径方向(放射方向)に土圧P2が作用することになる。
【0041】
この際、平面視円形の堰材30が曲率を有する形状であることから、堰材30にはその周方向に向かう圧縮力Q1が生じることになり、この周方向の圧縮力Q1によって堰材30が強固になり、仮置き残土60の拘束効果が高く、土圧P2にて転倒や変形し難い堰材30が形成される。
【0042】
仮に、平面視矩形の仮置き残土を平面視矩形の堰材が包囲する場合は、堰材の隅角部の剛性は高いものの、各直線部の中央領域の剛性は小さく、また、図3Aに示す堰材30のように周方向の圧縮力Q1が生じないことから、作用する土圧P2によって当該直線部の中央領域は変形したり転倒し易くなる。そのため、このような変形や転倒を防止するべく、堰材の周方向に多数の鉄筋等の抑え材を地盤に差し込む等する防護措置を講じる必要が生じ、施工手間に繋がる。
【0043】
図3A図3Bに示す平面視円形の堰材30を適用することにより、このような変形や転倒を防止するための多数の抑え材の施工を不要にでき、残土の仮置きの際の施工手間の発生を抑制できて好ましい。
【0044】
図1及び図2に示す従来の仮置き残土構造と比較すると明らかなように、図3A及び図3Bに示す仮置き残土構造70では、堰材30の内部にある柱状残土40の残土量だけ、図1等に示す仮置き残土よりも多くの残土を仮置くことができるため、従来に比べて可及的に多くの残土量を確保することが可能になる。また、この仮置き残土の残土量を増加させるに当たり、再利用に際して使用後の清掃や片付け、管理等に手間のかかるフレコンバックの使用も不要となる。
【0045】
例えば、本発明者等による試算結果として、平面視形状及び平面視寸法が、1辺4mの正方形であり、高さが1mの四角錐の残土の体積V1は、V1=1/3×4m×4m×1m=5.33mとなる。
【0046】
対して、平面視形状が円形で直径が4m(上記1辺が4mに相当)、堰材の高さが0.2m(よって柱状残土の高さが0.2m)で、錐状(円錐)残土の高さが上記と同様に1mの残土の体積V2は、V2=(0.2m×2m×2m×π)+(1/3×2m×2m×1m×π)=6.70mとなり、体積V1よりも1.37m(約25%)増加する試算結果となる。
【0047】
次に、図3A図3Bを参照して、実施形態に係る残土仮置き方法の一例を説明する。
【0048】
敷地Sにおいて、地盤Gを掘削して枠状溝10を施工し、この施工の際に発生した残土を枠状溝10の内部の仮置きエリアA5に仮置きする。この残土の仮置きに当たり、仮置きエリアA5に平面視形状が円形の堰材30を設置する(以上、掘削設置工程)。
【0049】
次に、地盤Gの掘削にて発生した残土の一部もしくは全部を、まず、堰材30の内部に堰材30の天端レベルまで仮置きして柱状残土40を形成し、柱状残土40の上にさらに残土を積み上げて錐状残土50を形成することにより、仮置き残土60とする。ここで、掘削にて発生した残土の残土量が仮置き残土60よりも多い場合は、その余剰分の残土は場外搬出する(以上、残土仮置き工程)。
【0050】
次に、枠状溝10に対して、鉄筋コンクリート製の布基礎20を施工する。この施工では、不図示のフーチング用の鉄筋と立ち上がり部用の鉄筋を配筋し、不図示の型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化を待って脱型することにより、フーチング21と立ち上がり部22とを備え、矩形枠状の線形を有する布基礎20が施工される。
【0051】
この布基礎20の施工において、配筋作業や型枠の設置作業、コンクリートの打設作業等に際して、枠状溝10の隅角部と堰材30との間における、残土が存在しない非残土領域A7を作業足場として利用することにより、基礎の施工性が良好になる(以上、基礎施工工程)。
【0052】
堰材の平面視形状に関し、図3Aに示す例は円形であるが、堰材の平面視形状がその途中に曲率を有する湾曲区間を有する形状であることにより、残土の土圧P2が堰材に作用した際に堰材の周方向の圧縮力を生じさせることに鑑みると、図3Aに示す平面視円形以外の形状の堰材が適用されてもよい。
【0053】
例えば、図4に示すように、平面視が長方形の枠状溝10Aでは、枠状溝10Aの内側の仮置きエリアA6の平面視形状も長方形となる。そこで、この形態では、仮置きエリアA6の平面視形状である長方形の隅角部を湾曲状にした、平面視形状がトラック状の堰材30Aを設置し、この内部に残土60A(平面視トラック状の柱状残土と、その上の錐状残土50Aとにより形成される)を収容することにより、可及的に多くの残土量を確保することができる。
【0054】
さらに、堰材30Aの四隅の平面視形状が湾曲状(図示例では、1/4円)であることから、残土60Aによる土圧P3が作用した際に、堰材30Aの周方向に圧縮力Q2が生じることとなり、この圧縮力Q2によって堰材30Aが強固になり、仮置き残土60の拘束効果が高く、土圧P3にて転倒や変形し難い堰材30Aが形成される。
【0055】
図示例では、平面視長方形の枠状溝10Aの内部に、線形が長方形の布基礎20Aが施工されることになる。尚、平面視長方形の仮置きエリアA6に対して、図示例のように平面視トラック状の堰材30Aを設置して仮置き残土60Aを収容することの他に、平面視形状が横長の楕円形の堰材を設置して仮置き残土を収容してもよい。
【0056】
次に、図5図6を参照して、実施形態に係る仮置き残土による埋戻し構造について説明する。
【0057】
図3A図3Bに示す仮置き残土構造70に関し、錐状残土50の一部もしくは全部を崩して、堰材30と布基礎20の間の空間に埋め戻し、さらに、布基礎20の外周側の掘削法面領域にも埋め戻す。具体的には、図5に示すように、枠状溝10の内側における埋戻し土50Aの設計高さt2よりも堰材30の高さt1が低い場合に、堰材30が残置された状態で、堰材30により包囲される柱状残土40が仮置きのままの状態で埋戻し土とされ、錐状残土50の一部が基礎20の立ち上がり部22と堰材30の間の空間における埋戻し土50Aとされ、さらに、布基礎20の外側の掘削法面領域にも埋戻し土50Bとして埋戻されることにより、埋戻し構造80が形成される。
【0058】
この埋戻し土50Aの施工に当たり、図5に示すように、埋戻し土50Aの上方をランマ等の転圧装置にて転圧する。例えば、埋戻し土50Aの中央領域から転圧する場合に、転圧の際に埋戻し土50Aに付与される転圧力P5により、図6に示すように、堰材30には径方向への押し広げ力P6が作用することになる。そして、この径方向への押し広げ力P6により、平面視円形の堰材30には、既述する土圧作用の際と同様に圧縮力Q3が作用して堰材30が強固になり、内部にある埋戻し土50Aが堰材30によって拘束されることで、埋戻し土50Aが締固められ易くなる。
【0059】
以上のことから、平面視円形の堰材30が残置された状態で、仮置き残土60の一部が崩され、締固められながら埋戻し土50A,50Bとされることにより、効率的かつ十分に締固められた埋戻し土50A,50Bを有する埋戻し構造80を形成することができる。
【0060】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10A:枠状溝
20,20A:基礎(布基礎)
21:フーチング
22:立ち上がり部
30,30A:堰材(ラス型枠)
40:柱状残土(埋戻し土)
50,50A:錐状残土
60,60A:残土(仮置き残土)
70,70A:仮置き残土構造
80:仮置き残土による埋戻し構造(埋戻し構造)
S:敷地
G:地盤
A5,A6:仮置きエリア
A7:非残土領域(作業足場)
P2,P4:土圧
Q1,Q2,Q3:圧縮力(周方向の圧縮力)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6