(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014129
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ステントデリバリーシステムおよびステント用センサデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/86 20130101AFI20240125BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20240125BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61F2/86
A61F2/966
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116740
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】榎本 加央里
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD65
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA56
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB62
4C267CC09
4C267CC10
4C267GG32
(57)【要約】
【課題】ステントの生体内留置後において、センサを用いて、ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得た後、センサを生体内より、取り出すことが可能なステントデリバリーシステムを提供する。
【解決手段】ステントデリバリーシステム1は、ステント3を収納したシースと、ステント押出用部材4と、センサデバイス5を備える。センサデバイスは、センサ部51と、センサ部を生体内に留置されたステントの内面に接触させるための押圧部52とを備える。センサデバイスは、ステント押出用部材の後端側への移動もしくはセンサデバイスの牽引により、センサデバイスをステントの後端方向に移動可能である。センサデバイス5は、ステントデリバリーシステム1もしくはセンサデバイス5の生体からの抜去により、生体より取り出し可能となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステントと、前記ステントを先端部内に収納したシースと、先端側部分が前記シースの先端側部分内に位置するステント押出用部材と、前記シースを前記ステント押出用部材に対して後端側に移動させることにより、前記ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、
前記ステントデリバリーシステムは、センサデバイスを備え、前記センサデバイスは、センサ部と、前記センサ部を生体内に留置された状態の前記ステントの内面に接触させることが可能な押圧部を備え、さらに、前記センサデバイスは、前記ステント押出用部材の後端側への移動もしくは前記センサデバイスの牽引により、前記センサ部を前記ステントの後端方向に移動可能であり、かつ、前記ステントデリバリーシステムは、前記センサ部からの信号を用いて、前記ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっており、さらに、
前記センサデバイスは、前記ステントデリバリーシステムの生体からの抜去とともに、もしくは前記センサデバイスの前記ステントデリバリーシステムからの抜去により、生体より取り出し可能であることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記ステントの軸方向の複数の位置にて、前記センサ部を用いた検知が可能であり、前記センサデバイスは、所定間隔離間した状態となるように配置された2つ以上の前記センサ部を備える、請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記センサデバイスは、ワイヤ状の前記押圧部と、前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記センサデバイスは、コイル形状をしたワイヤ状の前記押圧部と、前記コイル形状をした前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記センサデバイスは、螺旋形状をしたワイヤ状の前記押圧部と、前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項6】
前記押圧部は、ワイヤ状の押圧部であり、前記押圧部の後端部は、前記ステント押出用部材に固定されている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項7】
前記押圧部は、ワイヤ状の押圧部であり、前記センサデバイスは、牽引ワイヤを備え、前記押圧部の後端部は、前記牽引ワイヤに連結されている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項8】
前記ステント押出用部材は、先端にて開口したルーメンを備え、前記センサデバイスは、前記ルーメン内に収納され、前記ステント押出用部材の前記開口より突出可能なデバイスチューブと、前記デバイスチューブ内に少なくとも前記押圧部および前記押圧部の後端部に連結された操作用ワイヤが収納されており、さらに、前記デバイスチューブの後端側への移動もしくは操作用ワイヤの押込により、前記押圧部が前記デバイスチューブより露出し、前記センサ部は、前記押圧部により、生体内に留置された状態の前記ステントの内面に接触するものとなる請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項9】
前記センサ部は、センサケーブルを有するセンサが用いられている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項10】
前記センサ部は、無線センサが用いられている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項11】
前記センサ部は、生体関連情報である血流速度検知用のセンサ部である請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項12】
前記センサ部は、圧力センサである請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項13】
前記センサデバイスは、前記センサ部を有するワイヤ状の歪みセンサおよびワイヤ状の前記押圧部とを備え、前記歪みセンサと前記押圧部は並行して一体とされている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項14】
前記ステントデリバリーシステムは、前記センサ部からの信号を用いて、前記ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を算出する演算処理装置を備えている請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項15】
前記センサ部は、圧力センサであり、前記演算処理装置は、同一のセンサ部により血管の径方向の異なる位置で検出される圧力関連信号値の相違を用いて、血流速度に関する情報を出力するものである請求項14に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項16】
前記センサ部は、血流速度センサであり、前記演算処理装置は、3つ以上のセンサ部より出力される血流速度関連信号値の相違を用いて、血管状態情報を出力するものである請求項14または15に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項17】
前記押圧部は、形状記憶合金を含むものである請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項18】
多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステントの内側に配置されるステント用センサデバイスであり、前記センサデバイスは、ワイヤ状の圧力センサ、接触力センサまたは歪みセンサから選択された少なくとも1種のセンサ部と、前記センサ部を前記ステントの内側に押圧するための押圧部とを備え、前記ステントが生体内に留置された後、前記センサデバイスは、前記ステントの後端側から抜去可能となっていることを特徴とするステント用センサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管(例えば、脳血管、心臓の環状動脈)、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用されるステントデリバリーシステムであり、特に、ステント留置部における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるステントデリバリーシステムおよびステント用センサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内留置用ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために用いられる。ステントは、狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するために、管状に形成されている。
ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時は直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。
【0003】
ステントは、機能および留置方法によって、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントに区別される。バルーン拡張型ステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、自己拡張型ステントはステント自体に拡張機能を持たせたものであり、細く縮めた状態として生体内に挿入し、目的部位で開放することで自ら元の拡張された状態に戻り管腔内壁に密着、固定して管腔形状を維持する。
【0004】
虚血性脳動脈障害の原因の1つとして、頭蓋内動脈の狭窄・閉塞、動脈瘤がある。一般的な治療方法として、抗血小板療法によりリスクを低減させることが出来る。ただ内科的治療にも限界があり、薬剤抵抗性を示す患者に対してはバルーン拡張術やステント留置による治療が行われる。
そして、血管動脈瘤などの塞栓のような体腔の治療のためのステントとして、特表2015-513931(特許文献1)が提案されている。特許文献1のステントは、いわゆる自己拡張型ステントであり、さらに、単一の織り込みニチノールワイヤから形成された、概して円筒形の本体を有するステントであり、ステントの遠位端部および近位端部は、複数のループを含み、そのうちいくつかは、ステントの位置を視覚化するために用いられるマーカ部材を含む、さらに、内側流れ方向転換層を備えている。
また、特表2010-502241(特許文献2)には、内部人工器官(ステント)が提案されている。特許文献2の内部人工器官は、血管壁、厳密には動脈(14)の壁の変形によって生じた患者の動脈瘤(12)に植え込まれるように設計されており、同内部人工器官は、方向(Y-Y’)に延びている管状包体(22、24)と、包体(22、24)に固定されている複数の圧力プローブ(26)を備えており、各プローブ(26)は、圧力を測定するためのセンサー(28)と、圧力の測定値を患者の体外に設置されている監視装置に送信するための手段(34、36)を備えている。圧力測定値を各プローブ(26)から送信するための手段(34、36)は、これらの手段(34、36)が一部を形成しているプローブ(26)の少なくとも1つの区別できる特徴を備えている電磁圧力測定送信信号を生成するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-513931
【特許文献2】特表2010-502241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、ステントとして有効であるが、生体内に留置されたステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができない。
引用文献2のものでは、内部人工器官(ステント)が、圧力プローブ(26)を備えており、内部人工器官(ステント)が各プローブ(26)は、生体内に留置されたステント内における圧力を測定することができる。しかし、圧力プローブ(26)は、内部人工器官(ステント)に固定されているため、圧力プローブ部分において、内部人工器官(ステント)の物性が他の部分と異なる。このため、当該部分において、内部人工器官(ステント)の良好な変形が阻害されること、および、当該部位における血栓の形成が危惧される。
そこで、本発明の目的は、ステントの生体内留置後において、ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができ、かつ生体関連情報またはステント状態情報の採取のためのセンサを生体内より、取り出すことが可能なステントデリバリーシステムおよびステント用センサデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステントと、前記ステントを先端部内に収納したシースと、先端側部分が前記シースの先端側部分内に位置するステント押出用部材と、前記シースを前記ステント押出用部材に対して後端側に移動させることにより、前記ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、
前記ステントデリバリーシステムは、センサデバイスを備え、前記センサデバイスは、センサ部と、前記センサ部を生体内に留置された状態の前記ステントの内面に接触させることが可能な押圧部を備え、さらに、前記センサデバイスは、前記ステント押出用部材の後端側への移動もしくは前記センサデバイスの牽引により、前記センサ部を前記ステントの後端方向に移動可能であり、かつ、前記ステントデリバリーシステムは、前記センサ部からの信号を用いて、前記ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっており、さらに、
前記センサデバイスは、前記ステントデリバリーシステムの生体からの抜去とともに、もしくは前記センサデバイスの前記ステントデリバリーシステムからの抜去により、生体より取り出し可能であることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【0008】
(2)前記ステントの軸方向の複数の位置にて、前記センサ部を用いた検知が可能であり、前記センサデバイスは、所定間隔離間した状態となるように配置された2つ以上の前記センサ部を備える、(1)に記載のステントデリバリーシステム。
(3)前記センサデバイスは、ワイヤ状の前記押圧部と、前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている(1)または(2)に記載のステントデリバリーシステム。
(4)前記センサデバイスは、コイル形状をしたワイヤ状の前記押圧部と、前記コイル形状をした前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている(1)から(3)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(5)前記センサデバイスは、螺旋形状をしたワイヤ状の前記押圧部と、前記押圧部の先端部に位置する前記センサ部を備えている(1)から(4)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(6)前記押圧部は、ワイヤ状の押圧部であり、前記押圧部の後端部は、前記ステント押出用部材に固定されている(1)から(5)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(7)前記押圧部は、ワイヤ状の押圧部であり、前記センサデバイスは、牽引ワイヤを備え、前記押圧部の後端部は、前記牽引ワイヤに連結されている(1)から(6)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(8)前記ステント押出用部材は、先端にて開口したルーメンを備え、前記センサデバイスは、前記ルーメン内に収納され、前記ステント押出用部材の前記開口より突出可能なデバイスチューブと、前記デバイスチューブ内に少なくとも前記押圧部および前記押圧部の後端部に連結された操作用ワイヤが収納されており、さらに、前記デバイスチューブの後端側への移動もしくは操作用ワイヤの押込により、前記押圧部が前記デバイスチューブより露出し、前記センサ部は、前記押圧部により、生体内に留置された状態の前記ステントの内面に接触するものとなる(1)から(7)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(9)前記センサ部は、センサケーブルを有するセンサが用いられている(1)から(8)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(10)前記センサ部は、無線センサが用いられている(1)から(9)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(11)前記センサ部は、生体関連情報である血流速度検知用のセンサ部である(1)から(10)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(12)前記センサ部は、圧力センサである(1)から(11)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(13)前記センサデバイスは、前記センサ部を有するワイヤ状の歪みセンサおよびワイヤ状の前記押圧部とを備え、前記歪みセンサと前記押圧部は並行して一体とされている(1)から(12)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(14)前記ステントデリバリーシステムは、前記センサ部からの信号を用いて、前記ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を算出する演算処理装置を備えている(1)から(13)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(15) 前記センサ部は、圧力センサであり、前記演算処理装置は、同一のセンサ部により血管の径方向の異なる位置で検出される圧力関連信号値の相違を用いて、血流速度に関する情報を出力するものである(1)から(14)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(16)前記センサ部は、圧力センサであり、前記演算処理装置は、同一のセンサ部により血管の径方向の異なる位置で検出される圧力関連信号値の相違を用いて、血流速度に関する情報を出力するものである(1)から(14)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(17)前記押圧部は、形状記憶合金を含むものである(1)から(15)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【0009】
(18)多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステントの内側に配置されるステント用センサデバイスであり、前記センサデバイスは、ワイヤ状の圧力センサ、接触力センサまたは歪みセンサから選択された少なくとも1種のセンサ部と、前記センサ部を前記ステントの内側に押圧するための押圧部とを備え、前記ステントが生体内に留置された後、前記センサデバイスは、前記ステントの後端側から抜去可能となっていることを特徴とするステント用センサデバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステントデリバリーシステムは、多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステントと、ステントを先端部内に収納したシースと、先端側部分がシースの先端側部分内に位置するステント押出用部材と、シースをステント押出用部材に対して後端側に移動させることにより、ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムである。このステントデリバリーシステムは、センサデバイスを備え、センサデバイスは、センサ部と、センサ部を生体内に留置された状態のステントの内面に接触させるための押圧部を備え、さらに、センサデバイスは、ステント押出用部材の後端側への移動もしくはセンサデバイスの牽引により、センサ部をステントの後端方向に移動可能であり、かつ、ステントデリバリーシステムは、センサ部からの信号を用いて、ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっており、さらに、センサデバイスは、ステントデリバリーシステムの生体からの抜去とともに、もしくはセンサデバイスのステントデリバリーシステムからの抜去により、生体より取り出し可能である。
このため、このステントデリバリーシステムでは、ステントの生体内留置後において、ステント内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができ、かつ生体関連情報またはステント状態情報の採取のためのセンサをステントデリバリーシステムの生体からの抜去とともに、もしくはセンサデバイスのステントデリバリーシステムからの抜去により、取り出すことができ、センサ残留に起因する問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施例であるステントデリバリーシステムの部分省略正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したステントデリバリーシステムの縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示したステントデリバリーシステムの後端部の部分省略拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明のステントデリバリーシステムに用いられる押圧部材ワイヤ一体物の一例の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、本発明のステントデリバリーシステムに用いられる押圧部材ワイヤ一体物の他の例の拡大断面図である。
【
図10】
図10は、本発明のステントデリバリーシステムに用いられる押圧部材ワイヤ一体物の他の例の拡大断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大横断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大横断面図である。
【
図13】
図13は、本発明のステントデリバリーシステムに使用される生体内留置用ステントの一例の正面図である。
【
図16】
図16は、
図1に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図17】
図17は、
図1に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図18】
図18は、
図1に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図19】
図19は、
図1に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図20】
図20は、
図1に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図21】
図21は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図22】
図22は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図23】
図23は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図24】
図24は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図25】
図25は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図27】
図27は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの縦断面図である。
【
図28】
図28は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの縦断面図である。
【
図30】
図30は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部の拡大断面図である。
【
図31】
図31は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの縦断面図である。
【
図33】
図33は、
図31に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図34】
図34は、
図31に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図35】
図35は、
図31に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図36】
図36は、
図31に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図37】
図37は、
図31に示したステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図38】
図38は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
【
図39】
図39は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの部分省略縦断面図である。
【
図40】
図40は、
図39に示したステントデリバリーシステムの他の作用を説明するための説明図である。
【
図41】
図41は、
図31に示したステントデリバリーシステムの他の作用を説明するための説明図である。
【
図42】
図42は、
図31に示したステントデリバリーシステムの他の作用を説明するための説明図である。
【
図43】
図43は、
図31に示したステントデリバリーシステムの他の作用を説明するための説明図である。
【
図44】
図44は、
図31に示したステントデリバリーシステムの他の作用を説明するための説明図である。
【
図45】
図45は、本発明のステントデリバリーシステムを用いたステントデリバリー装置の説明図である。
【
図46】
図46は、
図45に示したステントデリバリー装置の作用を説明するための説明図である。
【
図47】
図47は、
図45に示したステントデリバリー装置の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のステントデリバリーシステムについて、図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明のステントデリバリーシステム1は、多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能なステント3と、ステント3を先端部内に収納したシース(ステント収納チューブ)21と、先端側部分がシース21の先端側部分内に位置するステント押出用部材(
図1~
図25に示す実施例では、ステント押出用部材4)と、シース21をステント押出用部材に対して後端側に移動させることにより、ステント3を放出可能であるステントデリバリーシステムである。
【0013】
ステントデリバリーシステム1は、センサデバイス5を備え、センサデバイス5は、センサ部と、センサ部を生体内に留置された状態のステント3の内面に接触させるための押圧部とを備え、さらに、センサデバイス5は、ステント押出用部材の後端側への移動もしくはセンサデバイス5の牽引により、センサデバイスをステント3の後端方向に移動可能である。ステントデリバリーシステム1は、センサ部からの信号を用いて、ステント3内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっている。生体関連情報は、生体に関連する情報であり、例えば、血管内の血液の液圧、血流速度等に関する情報である。ステント状態情報とは、ステントの配置状態に関する情報であり、例えばステントを血管に留置した際の形状、ステントマルアポジション(ステントが血管壁から浮いている箇所がある等、正常ではない状態で血管内に留置されていること)に関する情報である。センサデバイス5は、ステントデリバリーシステム1の生体からの抜去とともに、もしくはセンサデバイス5のステントデリバリーシステム1からの抜去により、生体より取り出し可能となっている。
【0014】
図1から
図6に示す実施例のステントデリバリーシステム1について説明する。
この実施例のステントデリバリーシステム1は、
図1から
図6に示すように、ステント収納チューブ21を備えるチューブ組立体2と、ステント収納チューブ21内に収納された自己拡張型ステント3、チューブ21内に摺動可能に収納されたステント押出用部材4と、ステント3内に配置されたセンサデバイス5とを備える。
【0015】
ステント収納チューブ21は、管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント3を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント3の放出口として機能する。ステント3は、ステント収納チューブ21を後端側にスライドさせることにより、この先端開口より放出され、応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。ステント収納チューブ21の先端部は、ステント3を内部に収納するステント収納部位となっている。
【0016】
ステント収納チューブ21の外径としては、0.4~4.0mm程度が好ましく、特に、0.5~3.0mmが好ましい。また、ステント収納チューブ21の内径としては、0.3~2.0mm程度が好ましい。ステント収納チューブ21は、可撓性チューブが好適である。ステント収納チューブ21としては、ある程度の可撓性を有する材料、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体など、さらに、架橋もしくは部分架橋物も含む)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂である。
【0017】
また、チューブ組立体2は、
図1および
図2に示すように、内部にルーメン20を有し、ステント収納チューブ21の後端部に固定されたチューブハブ22を備える。チューブハブ22は、チューブハブ本体23と、チューブハブ本体23の後端フランジ部24内に収納され、ステント押出用部材4を摺動可能、かつ液密に保持するシール部材27を備えている。また、チューブハブ22は、チューブハブ本体23の中央付近より斜め後方に分岐する分岐ポート部25を備えている。分岐ポート部25の開口部26は、ステント収納チューブ21内と連通している。
【0018】
ステント押出用部材4は、
図1から
図6に示すように、中空シャフト部41と、先端誘導部45と、中空シャフト部41の先端に設けられた弾性管状部43と、弾性管状部43の先端に設けられたステント押圧部42と、先端誘導部45の後端に設けられた誘導部固定部49と、ステント押圧部42と誘導部固定部49とを連結する弾性管状連結部71とを備えている。
【0019】
先端誘導部45は、誘導部シャフト48と、誘導部シャフト48の先端に固定された球状先端部47と、球状先端部47の後部より、誘導部シャフト48の後端方向に延びる先端コイル部材46とを備えている。先端コイル部材46は、先端が、球状先端部47の後部に固定されており、後端が、誘導部シャフト48の先端部側部に固定されている。この実施例では、先端コイル部材46の後端部より、先端側が、ステント3の先端より、突出している。誘導部シャフト48は、中実のシャフト部となっている。先端コイル部材46は、コイルスプリングが好適である。
【0020】
誘導部シャフト48および球状先端部47は、ステントデリバリーシステム1の先端部でもあるため、X線透視下において位置を容易に確認できることが好ましい。先端誘導部45の材質として、Pt、Pt合金(例えば、Pt-Ir合金)、W、W合金、Ag、Ag合金などを用いることが好ましい。
【0021】
誘導部シャフト48の後端部は、誘導部固定部49の中央開口部内に挿入され、固定されている。中空シャフト部41の先端に設けられた弾性管状部43は、所定長延びるコイルスプリングが用いられている。ステント押圧部42と誘導部固定部49とを連結する弾性管状連結部71は、コイルスプリングが用いられている。弾性管状連結部71に用いられているコイルスプリングは、弾性管状部43に用いられるコイルスプリングより、小径かつ短いものとなっている。
【0022】
ステント押圧部42と誘導部固定部49は、X線造影性を有することが好ましく、全体もしくは表面が、X線造影性材料により形成されることが好ましい。また、後述するステント3は、後端部に設けられたストッパー33を備え、このストッパー33は、ステント押圧部42と誘導部固定部49間に位置するものとなっている。さらに、ステント押圧部42の先端は、ストッパー33の後端に当接可能なものとなっている。また、誘導部固定部49の後端は、ストッパー33の先端に当接可能なものとなっている。また、中空シャフト部41の後端には、シャフトハブ72が固定されている。
【0023】
この実施例のステントデリバリーシステム1は、
図1から
図5に示すように、センサデバイス5を備える。センサデバイス5は、センサ部51(51a,51b,51c,51d)と、センサ部51(51a,51b,51c,51d)を生体内に留置された状態のステント3の内面に接触させるための押圧部52(52a,52b,52c,52d)と、センサ部51(51a,51b,51c,51d)に先端が電気的に接続されたセンサケーブル53(53a,53b,53c,53d)を備える。
【0024】
また、この実施例のセンサデバイス5および後述するセンサデバイスは、本発明のステント用センサデバイスでもある。
ステント用センサデバイス5は、多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント3の内側に配置されるものである。センサデバイスは、ワイヤ状の圧力センサ、接触力センサまたは歪みセンサから選択された少なくとも1種のセンサ部51と、センサ部51をステントの内側に押圧するための押圧部52とを備え、ステントが生体内に留置された後、前記センサデバイスは、ステント3の後端側から抜去可能となっている。
【0025】
センサデバイス5は、ステント押出用部材(ステント押出用部材4)の後端側への移動もしくはセンサデバイス5の牽引により、センサ部をステント3の後端方向に移動可能である。
【0026】
この実施例のステントデリバリーシステム1は、センサ部からの信号を用いて、生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっている。
【0027】
センサ部51(51a,51b,51c,51d)としては、圧力センサ、接触力センサまたは歪みセンサなどが用いられる。圧力センサとしては、例えば、薄膜型圧力センサ、極細径光ファイバ圧力センサなどが使用可能である。
【0028】
この実施例のステントデリバリーシステム1は、
図1から
図5に示すように、センサ部51(51a,51b,51c,51d)は、センサ部51(51a,51b,51c,51d)に先端が固定された押圧部52(52a,52b,52c,52d)により、ステント3の内面に当接された状態となっており、さらに、
図16から
図20に示すように、センサ部51(51a,51b,51c,51d)は、生体内に留置された状態のステント3の内面に、押圧部52(52a,52b,52c,52d)により、押圧(当接)可能なものとなっている。また、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、取り付けられているセンサ部51(51a,51b,51c,51d)をほぼ均等の圧力にて、生体内に留置された状態のステント3の内面に、押圧(当接)可能なものものとなっている。
【0029】
この実施例のセンサデバイス5では、押圧部は、ワイヤ状の押圧部となっている。具体的には、直線状の本体部と、本体部より屈曲した屈曲部55a,55b,55c,55dを備えている。そして、それぞれの押圧部の屈曲部55a,55b,55c,55dの先端にセンサ部が固定されている。
押圧部52(52a,52b,52c,52d)としては、センサ部51(51a,51b,51c,51d)を押圧可能なバネ性を有する弾性線状体(弾性ワイヤ)が用いられている。なお、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、センサ部51(51a,51b,51c,51d)をステントの内面に当接させることができればよく、そのバネ性は強いものでなくてもよい。押圧部は、バネ性を持たせるために形状記憶合金を含むものとしてもよい。
【0030】
この実施例では、
図1から
図5に示す状態では、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、ステント3により押圧されたセンサ部により、押され、内側に弾性変形した状態となっている。この実施例では、
図1から
図5に示すように、押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端部は、誘導部シャフト48の後端部もしくは誘導部固定部49の先端部に固定されたものとなっている。この実施例では、押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端部56a,56b,56c,56dは、誘導部シャフト48の後端部とリング状固定部57間に位置し、固定されている。
【0031】
センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、先端がセンサ部51(51a,51b,51c,51d)に電気的に接続され、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、ステント収納チューブ21内を通り、誘導部固定部49の先端部より、誘導部固定部49に設けられた4つの開口部49a,49b,49c,49dより、ステント押出用部材4内に進入し、誘導部固定部49、弾性管状連結部71、ステント押圧部42、弾性管状部43、中空シャフト部41を通り、中空シャフト部41の後端に位置するコネクタ50に電気的に接続されている。また、この実施例では、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、ステント押出用部材4内に、具体的には、誘導部固定部49内にて、束ねられ、または、撚り線とされ、1本のワイヤ体54となり、ステント押出用部材4内を延び、コネクタ50に電気的に接続されている。
【0032】
また、この実施例では、コネクタ50は、シャフトハブ72に固定されており、センサデバイスのみの牽引は不能なものとなっている。また、この実施例では、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、先端側部分では、押圧部52(52a,52b,52c,52d)に巻き付けられたものとなっている。
【0033】
また、後述するすべての実施例であって、センサデバイスが、センサケーブルと押圧部の両者を有するものにおいて、上記のように、センサケーブルが押圧部に巻き付けられたタイプに限定されるものではない。
例えば、
図8に示すように、押圧部11の側面に、導電線12aと被膜12bを備えるセンサケーブル12が配置され、接着部13にて両者が固定された一体化物10であってもよい。また、
図9に示すように、押圧部11の側面に導電線12aと被膜12bを備えるセンサケーブル12が配置され、両者を被包し固定する被包チューブ14により構成された一体化物10aであってもよい。さらには、
図10に示すように、押圧部11の側面に導電線12aと被膜12bを備えるセンサケーブル12が配置され、両者を被覆し固定する樹脂層15により構成された一体化物10bであってもよい。
【0034】
この実施例では、
図1から
図6、特に、
図4に示すように、センサデバイス5は、所定間隔離間した状態となるように配置された2つ以上のセンサ部を備えている。具体的には、3つ以上のセンサ部を備えることが好ましい。また、3つ以上のセンサ部を設ける場合には、生体内に留置された状態のステント3の内面に、環状かつ所定間隔離間した状態となるように当接するように配置されることが好ましい。
図1から
図6、特に、
図4に示す実施例では、4つのセンサ部を備えており、かつ、
図16に示すように、生体内に留置された状態のステント3の内面に、環状かつ所定間隔離間した状態となるように当接するものとなっている。
【0035】
また、センサデバイスにおけるセンサ部の数は、上記の4つに限定されるものではなく、
図11に示す実施例のステントデリバリーシステム1bのように、3つであってもよい。この場合も、生体内に留置された状態のステント3の内面に、環状かつ所定間隔離間した状態となるように当接するものであることが好ましい。また、
図12に示す実施例のステントデリバリーシステム1cのように、5つであってもよい。この場合も、生体内に留置された状態のステント3の内面に、環状かつ所定間隔離間した状態となるように当接するものであることが好ましい。なお、この実施例のステントデリバリーシステム1cでは、センサデバイスは、センサ部51(51a,51b,51c,51d,51e)と、それぞれのセンサ部を生体内に留置された状態のステント3の内面に押圧するための押圧部52(52a,52b,52c,52d,52e)と、各センサ部と電気的に接続されたセンサケーブル53(53a,53b,53c,53d、53e)とを備える。さらに、ステント押出用部材4の誘導部固定部49は、それぞれのセンサケーブル53(53a,53b,53c,53d、53e)が、通過する5つの開口部49a,49b,49c,49d,49eを備えている。
【0036】
さらに、
図1から
図6に示す実施例では、
図16から
図20に示すように、センサデバイス5のセンサ部51(51a,51b,51c,51d)は、ステント押出用部材(ステント押出用部材4)の後端側への移動により、生体内に留置された状態のステント3の内面に、環状かつ所定間隔離間して当接した状態にて、センサ部をステント3の後端方向に移動可能である。このため、ステント3内の複数の位置にて、センサ部からの信号を用いて、ステント3内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができるものとなっている。
【0037】
また、
図1ないし
図6に示す実施例のステントデリバリーシステム1では、センサデバイスにおける押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、ステント押出用部材4の誘導部固定部49に固定されたものとなっているが、このようなタイプのものに限定されるものではない。例えば、
図7に示すステントデリバリーシステム1aのセンサデバイス5aのように、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、ステント押出用部材4の誘導部固定部49に固定されていないものであってもよい。特に、この実施例のステントデリバリーシステム1aでは、押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端は、誘導部固定部49の開口部より、誘導部固定部49内に進入し、束ねられたものとなっている。さらに、この実施例のステントデリバリーシステム1aでは、センサケーブルと電気的に接続されたコネクタ50は、シャフトハブ72に固定されているものの、シャフトハブ72は、中空シャフト41の後端に固定されていないものとなっている。このため、シャフトハブ72とともにコネクタ50を後方に牽引すると、センサデバイスの先端部は、後方に移動し、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、ステント押出用部材4の誘導部固定部49内に収納可能となっている。この実施例では、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、束ねられて、牽引ワイヤを形成している。なお、牽引ワイヤを別に設けて、牽引ワイヤに、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)を巻き付けてもよい。牽引ワイヤを別に設ける場合、押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端は、牽引ワイヤの先端に固定することが好ましい。また、センサ部51(51a,51b,51c,51d)も誘導部固定部49内に収納可能であってもよい。
【0038】
ステント3としては、多数の側壁開口を有し、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なもの、いわゆる自己拡張型ステントが用いられる。
【0039】
自己拡張型ステントとしては、どのようなものを用いてもよいが、例えば、
図13から
図15に示すようなステント3が好適に使用できる。この実施例のステント3は、脳血管の動脈瘤形成部の改善に有効である。
【0040】
ステント3としては、例えば、脳血管内に留置される場合には、拡張時(非圧縮時)の直径が、0.5~6.0mm程度が好適であり、特に、0.9~5.0mmがより好ましい。また、ステントの拡張時(非圧縮時)の長さは、5~50mm程度が好適である。また、ステントの肉厚としては、0.05~0.15mm程度が好適であり、特に、0.06~0.13mmがより好適である。
【0041】
ステントの構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49~53原子%NiのTi-Ni合金、38.5~41.5重量%ZnのCu-Zn合金、1~10重量%XのCu-Zn-X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36~38原子%AlのNi-Al合金、15~25原子%ScのMg-Sc合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi-Ni合金である。また、Ti-Ni合金の一部を0.01~10.0%Xで置換したTi-Ni-X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi-Ni合金の一部を0.01~30.0%Xで置換したTi-Ni-X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi-Ni-X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5~200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8~150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3~180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5~130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0042】
この実施例のステント3は、ステント本体31と、先端側マーカ32と、後端側ストッパー33を備えている。この実施例のステントでは、先端側マーカ32、後端側ストッパー33ともに、コイルスプリングにより形成されている。また、先端側マーカ32、後端側ストッパー33ともに、X線透視下において位置を容易に確認できることが好ましく、先端側マーカ32、後端側ストッパー33の材質として、Pt、Pt合金(例えば、Pt-Ir合金)、W、W合金、Ag、Ag合金などを用いることが好ましい。
【0043】
この実施例のステント3は、二重層ステントであり、ステント本体31は、二重層となっている。ステント本体31は、
図13および
図14に示すように、筒状のステント外層34と、
図13および
図15に示すように、ステント外層34の内側に配置された筒状のステント内層35を備える。
【0044】
ステント外層34は、ワイヤブレイドにより筒状に形成されており、両端部には、上述した先端側マーカ32および後端側ストッパー33を備えている。ステント内層35は、ステント外層34より細いワイヤブレイドにより筒状に形成され、かつ、目が詰まった筒状体となっている。このため、ステント内層35の筒状側面に形成される側壁開口は、ステント外層34の筒状側面に形成される側壁開口より、十分小さいものとなっている。
【0045】
また、ステント内層35は、ステント外層34より短いものとなっている。つまり、ステント本体31の両端部は、ステント外層34のみにより形成され、ステント内層35が存在しないものとなっている。上述した先端側マーカ32および後端側ストッパー33は、ステント外層34のみにより形成されたステント本体31の端部に設けられている。
【0046】
この実施例のステント3では、ステント内層35は、血流の方向を転換させるための流れ方向転換層として機能するものとなっている。流れ方向転換層として機能するステント内層35としては、細径の超弾性金属線を編み込むことにより、筒状に形成されたものが好適であり、ステント拡張時におけるステント内層35の筒状側面に形成される側壁開口の大きさとしては、孔径として、0.3mm以下、開口面積として、0.07mm2以下であることが好ましい。また、ステント拡張時におけるステント内層35の側壁開口の大きさとしては、孔径として、0.03mm以上、開口面積として、0.0007mm2以上であることが好ましい。ステント内層35の両端部は、レーザ切断または細管のエッチングによって形成することが好ましい。また、ステント拡張時のステント内層35の筒状側面における気孔率は、45~70%が好ましい。
【0047】
二重層ステントであるこの実施例のステント3は、ステント外層34およびステント内層35のいずれか単独よりも、大きい半径方向力(ステントの約50%の半径方向の圧縮においてかけられる半径方向力として規定される)を有するものであることが好ましい。特に、ステント3の半径方向力は、ステント外層34およびステント内層35の個々の半径方向力の合算値よりも大きいことが好ましい。
【0048】
また、ステント内層35の両端部には、ステント外層34とステント内層35とを接続させる複数の固定部(図示せず)を備えている。固定部は、細径のワイヤを巻き付けることにより、形成することができる。また、固定部は、ステント内層35の両端部上に、当該位置に対応する部分のステント外層34を圧着することによっても形成できる。さらに、固定部は、ステント内層35の両端部をステント外層34に織り込むことによっても形成できる。
【0049】
図1から
図6に示す実施例のステントデリバリーシステム1の使用方法について、
図16~
図20を用いて説明する。
ステント3を留置する生体内(例えば、脳動脈16内)に配置させた後、具体的には、ステントデリバリーシステム1の先端誘導部45の先端側部分(球状先端部47および先端コイル部材46)が、目的とする生体内留置部、具体的には、動脈瘤17を有する脳動脈16の動脈瘤17より、所定距離前方(所定距離末梢側)に位置するように配置させた後、ステント押出用部材4の前進もしくはステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を後退させることにより、ステント3の後端部のストッパー33は、ステント押出用部材4のステント押圧部42の先端面に当接して押され、ステント収納チューブ21より、ステント3が吐出する。
【0050】
ステント収納チューブ21より吐出したステント3の先端部分は、
図16に示すように、自己拡張し、生体内面、具体的には、脳動脈16の内面に当接する。同時に、センサデバイス5の押圧部52(52a,52b,52c,52d)の先端側部分もステント収納チューブ21の外方となり、広がり、センサ部51(51a,51b,51c,51d)が拡張したステント(ステント本体31)3の内面に当接される。そして、ステント押出用部材4の前進もしくはステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を後退させることにより、
図17に示すように、ステント3の全体が、ステント収納チューブ21より吐出し、脳動脈16内かつ動脈瘤17の血管との開口部を覆うように留置される。
【0051】
図16に示す状態および
図17に示す状態において、センサ部からの信号を用いて、ステント3(ステント本体31)内における生体関連情報またはステント状態情報を得ることができる。センサ部51(51a,51b,51c,51d)として、例えば、圧力センサまたは接触力センサを用いた場合、ステント状態情報を得ることができる。そして、この実施例のステントデリバリーシステム1では、
図17の状態より、ステントデリバリーシステム1を後退させることにより、
図18および
図19に示すように、ステント3(ステント本体31)内におけるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)の軸方向位置を変えることができ、複数の部位にて、ステント状態情報を得ることができる。そして、この実施例では、
図20に示すように、情報収集終了後には、ステント収納チューブ21に対して、ステント押出用部材4を後退させることにより、センサデバイス5をステント収納チューブ21内に収納させることができる。
【0052】
本発明のステントデリバリーシステム1は、
図45に示すような演算処理装置100を備えることが好ましい。この実施例の演算処理装置100は、装置本体部101と、装置本体部100に接続されたケーブル102と、ケーブル102の先端に設けられ、ステントデリバリーシステム1のコネクタ50と接続可能なカプラー103を備える。装置本体部101内には、センサ信号入力部104、センサ信号入力部104からの信号を用いて演算する演算部105と、演算結果に基づいた出力行う表示部106と、入力データおよび出力データなどを記憶する記憶部107とを備えている。
【0053】
ステント3が、生体内留置部にて、良好な状態にて拡張している場合は、
図46に示すような状態となり、それぞれの押圧部52a,52b,52c,52が、ほぼ同じ接触力(押圧力)にて、センサ部51a,51b,51c,51dをステント3(ステント本体31)の内面に押圧しているため、出力される接触力に起因する信号(データ)もほぼ同じものとなる。
【0054】
この実施例の演算処理装置100としては、センサ部51a,51b,51c,51dからの信号を用いて算出した各センサ部における接触力の値を表示部106に表示させる機能を備えている。また、演算処理装置100の演算部105は、センサ部51a,51b,51c,51dからの信号を算出した各センサ部における接触力の値が、所定範囲内の場合には、ステント状態が良好であることを出力するものとなっている。
【0055】
ステント3が、拡張状態不良のケースとしては、例えば、
図47に示すような状態が考えられる。
図47に示す状態では、ステント3(ステント本体31)は、脳動脈(血管)16の変形部16aに押されて、内側に湾曲したステント変形部31aを有している。そして、このステント変形部31aには、センサ部51aが、当接している。センサ部51aは、他のセンサ部51b,51c,51dに比べて、強く内側に押されているため、出力される接触力(押圧力)に起因する信号(データ)は、センサ部51aのみ異なるものとなる。そして、表示部106に表示されるセンサ部51aからの信号を用いて算出した各センサ部における接触力の値は、他のセンサ部51b,51c,51dからの信号を用いて算出した各センサ部における接触力の値と異なる(具体的には、接触力の値よりも大きい)ものとなる。そして、演算処理装置100の演算部105は、センサ部51aの接触力の値とセンサ部51b,51c,51dからの信号を算出した各センサ部における接触力の値の差が、所定範囲外の場合、ステント状態が不良であることを出力する。そして、ステント状態が不良であることが検知された場合(
図47のような場合)は、ステントデリバリーシステム1を生体内から抜去した後、バルーンカテーテル(図示せず)をステント3内に挿入し、バルーンを拡張することにより、ステント3の形状改善を行うことができる。
【0056】
次に、
図21に示す実施例のステントデリバリーシステム1dについて、説明する。この実施例のステントデリバリーシステム1dでは、センサデバイス5bにおいて、センサ部として通信機能を備えた無線センサが用いられている。このため、センサデバイス5bは、センサ部51(51a,51b,51c,51d)と、それぞれのセンサ部を生体内に留置された状態のステント3の内面に押圧するための押圧部52(52a,52b,52c,52d)を備えるものの、センサケーブルは備えないものとなっている。ステントデリバリーシステム1dのその他の構成については、上述したステントデリバリーシステム1と同じである。
【0057】
次に、
図22に示す実施例のステントデリバリーシステム1eについて、説明する。この実施例のステントデリバリーシステム1eでは、センサデバイス5cは、螺旋形状をしたワイヤ状の押圧部60a,60b,60cと、それぞれの押圧部の先端部に位置するセンサ部51a,51b,51cを備えている。具体的には、この実施例のステントデリバリーシステム1eでは、センサデバイス5cは、センサ部51(51a,51b,51c)を持ち、それぞれ押圧する押圧部が、上述した実施例のような直線状のワイヤではなく、螺旋状ワイヤ60a,60b,60cにより形成されている。螺旋状ワイヤ60a,60b,60cは、圧縮可能に編み組されており、さらに、ステント3が拡張した際には、拡張し、螺旋状ワイヤ60a,60b,60cの先端部に固定されたセンサ部51(51a,51b,51c)をステント3の内面に押し付けるものとなっている。そして、この実施例のセンサデバイス5cでも各センサケーブルは、各螺旋状ワイヤ60a,60b,60cに巻き付けたものであってもよいが、
図8から
図10に示した押圧部とセンサケーブルが一体化した一体化物10a、10b、10cを用いることが好ましい。
【0058】
次に、
図23に示す実施例のステントデリバリーシステム1fについて、説明する。この実施例のステントデリバリーシステム1fでは、センサデバイス5dは、コイル形状をしたワイヤ状の押圧部18と、コイル形状をした押圧部18の先端部に位置するセンサ部を備えている。具体的には、センサデバイス5dは、コイル形状をしたワイヤ状の押圧部、いわゆるスプリング形状の押圧部18を備えており、その先端部に、所定距離離間して固定された複数のセンサ部51a,51b,51cを備えている。具体的には、この実施例のセンサデバイス5dは、スプリング形状の押圧部18の後端18aは、直線状となっており、ステントデリバリーシステム1fの先端誘導部のシャフト部48に固定されている。スプリング形状の押圧部18は、先端側部分が所定長延びるスプリング状に形成されており、その側面にセンサ部51a,51b,51cが固定されている。そして、スプリング形状の押圧部18は、圧縮可能であり、かつ、ステント3が拡張した際には、拡張し、スプリング形状の押圧部18の先端部の側面に固定されたセンサ部51a,51b,51cをステント3の内面に押し付けるものとなっている。そして、この実施例のセンサデバイス5dでは、センサケーブル53a,53b,53cは、スプリング形状の押圧部18内を通過し、誘導部固定部49の開口より、誘導部固定部49内に進入するものとなっている。また、
図23に示す実施例のステントデリバリーシステム1fにおいても、
図24に示す実施例のステントデリバリーシステム1gのように、センサデバイス5eのセンサ部として、通信機能を有する無線センサ51a,51b,51cを用いてもよい。この場合、センサデバイス5eは、センサケーブルを持たないものとなる。
【0059】
次に、
図25に示す実施例のステントデリバリーシステム1hについて、説明する。
図26は、
図25のC-C線断面図である。
この実施例のステントデリバリーシステム1hでは、センサデバイス5fは、細長いループ形状をしたワイヤ状の押圧部52a,52b,52c,52dと、それぞれの押圧部の先端部に位置するセンサ部51a,51b,51c,51dを備えている。具体的には、この実施例のステントデリバリーシステム1hでは、センサデバイス5fは、センサ部51a,51b,51c,51dを持ち、それぞれを押圧する押圧部が、上述した実施例のような直線状のワイヤではなく、長楕円状のループ状ワイヤ52a,52b,52c,52dにより形成されている。ループ状ワイヤ52a,52b,52c,52dの後端は、誘導部固定部49の先端部に固定されている。ループ状ワイヤからなる押圧部52a,52b,52c,52dは、それぞれの先端部にセンサ部51a,51b,51c,51dが固定されている。そして、ループ状ワイヤからなる押圧部52a,52b,52c,52dは、押圧により、内側に変形可能であり、かつ、ステント3が拡張した際には、ループ状ワイヤからなる押圧部52a,52b,52c,52dにより、センサ部51a,51b,51cをステント3の内面に押し付けるものとなっている。そして、この実施例のセンサデバイス5fでは、センサケーブル53a,53b,53cは、それぞれのループ状ワイヤ52a,52b,52c,52dの内を通過し、誘導部固定部49の開口より、ステント押出用部材4内に進入するものとなっている。
【0060】
次に、
図27に示す実施例のステントデリバリーシステム1iについて、説明する。この実施例のステントデリバリーシステム1iでは、センサデバイス5gは、ステント押出用部材4aの中空シャフト部41内に摺動可能に挿入されたデバイスチューブ70を備えている。デバイスチューブ70は、後端部が、中空シャフト部の後端部より突出している。また、この実施例では、デバイスチューブ70は、先端が、ステント押出用部材4aの先端部内に位置し、デバイスチューブ70の先端より、センサ部、押圧部、センサケーブルが突出している。
【0061】
この実施例では、ステント押出用部材4aは、ステント押圧部42の先端部が、誘導部固定部となっており、先端誘導部45は、ステント押圧部42の先端部に固定されている。押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端は、ステント押圧部42の開口部より、ステント押圧部42内に進入し、束ねられたものとなっている。
【0062】
また、この実施例のステントデリバリーシステム1iでは、センサケーブルと電気的に接続されたコネクタ50は、シャフトハブ72に固定されておらず、デバイスチューブ70の後端部は、シャフトハブ72に固定されている。また、中空シャフト部41の後端部は、シャフトハブ72に固定されていない。このため、コネクタ50を後方に牽引すると、センサデバイス5gの先端部は、後方に移動し、押圧部52(52a,52b,52c,52d)は、ステント押出用部材4a内を通り、デバイスチューブ70内に収納可能となっている。そして、シャフトハブ72とともにデバイスチューブ70を後方に牽引すると、デバイスチューブ70とともに、センサデバイス5gは、後方に移動する。必要により、さらにデバイスチューブ70を後方に引くことにより、デバイスチューブ70を含むセンサデバイス5gをステントデリバリーシステム1iより抜去可能である。
【0063】
なお、この実施例のステントデリバリーシステム1iにおいて、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)は、束ねられて、牽引ワイヤを形成している。なお、牽引ワイヤを別に設けて、牽引ワイヤに、センサケーブル53(53a,53b,53c,53d)を巻き付けてもよい。牽引ワイヤを別に設ける場合、押圧部52(52a,52b,52c,52d)の後端は、牽引ワイヤの先端に固定することが好ましい。また、センサ部51(51a,51b,51c,51d)もデバイスチューブ70内に収納可能であってもよい。
この実施例のステントデリバリーシステム1iにおいて、上述した以外の構成は、上述したステントデリバリーシステム1と同じである。
【0064】
次に、
図28に示す実施例のステントデリバリーシステム1jについて、説明する。この実施例のステントデリバリーシステム1jでは、センサデバイス5hは、先端部61aがコイル形状をしたワイヤ状のセンサ61が用いられている。ワイヤ状のセンサ61としては、ワイヤ状の歪みセンサが用いられる。そして、
図29に示すように、ワイヤ状のセンサ61は、コイル状先端部61aを備え、コイル状先端部61aは、圧縮可能であり、かつ、ステント3が拡張した際には、拡張し、コイル状先端部61aの自らの側面をステント3の内面に押し付けるものとなっている。ワイヤ状のセンサ61のコイル状先端部61aより後方部分は、直線状部61bとなっており、ステント押出用部材4内を通り、直線状部61bの後端は、コネクタ50に電気的に接続されている。
【0065】
上記のように、ワイヤ状のセンサ61の弾性力を用いてコイル状先端部61aが形成されたものに限らず、
図8から
図10に示した押圧部とセンサケーブルが一体化した一体化物10a、10b、10cと同様に、ワイヤ状のセンサ61とその側部に配置されたワイヤ状の押圧部とを一体化したワイヤ状のセンサ補強物を用いてもよい。
【0066】
この実施例のステントデリバリーシステム1jにおいて、上述した以外の構成は、上述したステントデリバリーシステム1と同じである。
【0067】
ワイヤ状の歪みセンサとしては、例えば外側から外部導体、圧電材料、中心導体の三層の同軸構造のものを使用することができる。このタイプの歪みセンサは、標準状態である直線状態から変形すると、変形の度合いに応じて外部導体と中心導体の間に電位差が生じる。外部導体と中心導体の電位差を測定することにより、歪センサの標準状態からの変形の度合いを算出することができる。この実施例のステントデリバリーシステム1jでは、1本のワイヤ状のセンサ61(ワイヤ状の歪みセンサ)を用いており、ステント3の内面と接触するコイル状先端部61aに部分的変形があると、通常と異なる電位差の信号(データ)が出力される。例えば、
図46に示すように、ステント3が、生体内留置部にて、良好な状態にて拡張している場合は、ステント3の内面と接触するコイル状先端部61aは、部分的な変形もなく、良好な連続した湾曲形状であるため、ステント状態が良好であることを示す所定値の信号を出力されるものとなっている。
【0068】
このステントデリバリーシステム1jにおいても、使用時には、
図45に示したような演算処理装置100が用いられ、この場合、演算処理装置100の記憶部107は、上述したステント状態が良好であることを示す所定値(正常出力値または基準値)を記憶するものとなる。そして、ステント3が、
図47に示すような状態である場合、ステント3(ステント本体31)は、脳動脈16の変形部16aに押されて、内側に湾曲したステント変形部31aを有するものとなる。このステント変形部31aに、コイル状先端部61aの一部が当接するため、当該部分においてセンサが歪み、歪みに影響された信号(データ)が出力される。そして、演算処理装置100は、入力された歪みに影響された信号(データ)と記憶部107が記憶する正常出力値を対比し、差が所定範囲外の場合、ステント状態が不良であることを表示部に出力する。そして、ステント状態が不良であることが検知された場合(
図47のような場合)は、ステントデリバリーシステム1jを生体内から抜去した後、バルーンカテーテル(図示せず)をステント3内に挿入し、バルーンを拡張することにより、ステント3の形状改善を行うことができる。
【0069】
なお、ステントを留置する途中で、ステントの先端部分の一部に歪みが検出された場合、ステントをシースに再度収納し、留置位置を変更し、再度ステントの留置を試みることが可能である。このような利用を想定した場合、ステント3の内面と接触するコイル状先端部61aはステントの先端側の一部に配置する必要があり、例えばステントの先端側において、ステントの全長の50%の長さ以下の範囲でコイル状先端部61aを配置する必要がある。
ワイヤ状のセンサを用いるステントデリバリーシステムとしては、上述したステントデリバリーシステム1jのように、1本のワイヤ状のセンサを用いるものに限定されるものではない。
【0070】
図30に示す実施例のステントデリバリーシステム1kのように、複数本(具体的には、2本)のワイヤ状のセンサ58,59を用いるものであってもよい。この実施例では、
図30に示すように、各ワイヤ状のセンサ58,59は、螺旋状先端部58a、59a(緩いコイル状先端部)を備え、螺旋状先端部58a,59aは、圧縮可能であり、かつ、ステント3が拡張した際には、拡張し、螺旋状先端部58a、59a自らの側面をステント3の内面に押し付けるものとなっている。ワイヤ状のセンサ58,59の螺旋状先端部58a,59aより後方部分は、直線状部58b、59bとなっており、ステント押出用部材4内を通り、直線状部58b、59bの後端は、コネクタ50に電気的に接続されている。また、各ワイヤ状のセンサ58,59としては、ワイヤ状のセンサが用いられている。この実施例においても、ワイヤ状のセンサの弾性力を用いてコイル状先端部58a、59bが形成されたものに限らず、
図8から
図10に示した押圧部とセンサケーブルが一体化した一体化物10a、10b、10cと同様に、ワイヤ状のセンサとその側部に配置されたワイヤ状の押圧部とを一体化したワイヤ状のセンサ補強物を用いてもよい。
【0071】
そして、このステントデリバリーシステム1kにおいても、使用時には、
図45に示したような演算処理装置100が用いられ、この場合、演算処理装置100の記憶部107は、上述したステント状態が良好であることを示す所定値(正常出力値)を個々のワイヤ状のセンサ58,59について記憶するものとなる。そして、ステント3が、
図47に示すような状態である場合、ステント3(ステント本体31)は、脳動脈16の変形部16aに押されて、内側に湾曲したステント変形部31aを有するものとなる。このステント変形部31aに、ワイヤ状のセンサ58,59のいずれかの螺旋状先端部58a、59aの一部が当接するため、当該部分においてセンサが歪み、歪みに影響された信号(データ)が出力される。そして、演算処理装置100は、入力された歪みに影響された信号(データ)と記憶部107が記憶する正常出力値を対比し、差が所定範囲外の場合、ステント状態が不良であることを表示部に出力する。そして、ステント状態が不良であることが検知された場合(
図47のような場合)は、ステントデリバリーシステム1kを生体内から抜去した後、バルーンカテーテル(図示せず)をステント3内に挿入し、バルーンを拡張することにより、ステント3の形状改善を行うことができる。
【0072】
次に、
図31に示す実施例のステントデリバリーシステム1mについて、説明する。
実施例のステントデリバリーシステム1mでは、ステント押出用部材4bと、センサデバイス5iを備える。
図31に示すように、ステント押出用部材4bは、先端にて開口したルーメンを備え、センサデバイス5iは、ステント押出用部材4bのルーメン内に摺動可能に収納され、ステント押出用部材4bの先端開口より突出可能なデバイスチューブ73と、デバイスチューブ73内に少なくとも押圧部75a,75b,75c,75dおよび押圧部の後端部に連結された操作用ワイヤ64が収納されている。押圧部75a,75b,75c,75dのそれぞれの先端部には、センサ部51(51a,51b,51c,51d)が固定されている。また、デバイスチューブ73の後端側への移動もしくは操作用ワイヤ64の押込により、押圧部75a,75b,75c,75dがデバイスチューブ73より露出し、センサ部51(51a,51b,51c,51d)は、押圧部75a,75b,75c,75dにより、生体内に留置された状態のステント3の内面に接触するものとなる。
【0073】
この実施例では、押圧部75a,75b,75c,75dは、
図8から
図10に示した押圧部とセンサケーブルが一体化した一体化物10a,10b,10cと同様に、ワイヤ状のセンサとその側部に配置されたワイヤ状の押圧部とを一体化したものが好適である。そして、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73の先端部内にて終端し、それより後方は、センサケーブルが束ねられたもしくは撚り線となることにより形成された牽引ワイヤ(操作用ワイヤ)64となっている。センサケーブルからなる牽引ワイヤ64は、ステント押出用部材4bの後端より突出し、コネクタ50に電気的に接続されている。
【0074】
また、
図31に示すように、センサデバイス5iのデバイスチューブ73は、後端部が、中空シャフト部の後端部より突出している。また、この実施例では、
図32に示すように、デバイスチューブ73の先端部が、ステント押出用部材4bの先端より突出し、その先端がステント3の先端内に位置するものとなっている。そして、センサデバイス5iは、センサ部51(51a,51b,51c,51d)、センサ部51(51a,51b,51c,51d)に先端部が取り付けられた押圧部75a,75b,75c,75dを備え、この押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73からの突出時に、放射状に広がるものとなっている。
【0075】
また、この実施例のステントデリバリーシステム1mでは、
図31に示すように、コネクタ50と電気的に接続されたセンサケーブルからなる牽引ワイヤ64は、その後端部が、シャフトハブ72より突出している。さらに、コネクタ50には、牽引ワイヤ64を内部に挿通した保護チューブ65の基端部が固定されている。また、保護チューブ65の先端部は、シャフトハブ72および中空シャフト部41内に、摺動可能に進入している。このため、コネクタ50を先端方向に押し込むことにより、牽引ワイヤ64が前進し、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73の先端より、突出するものとなっている。また、突出後、コネクタ50を後端方向に引くことにより、牽引ワイヤ64が後退し、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73内に収納可能となっている。
【0076】
センサデバイス5iのデバイスチューブ73の後端部は、シャフトハブ72に固定されている。また、中空シャフト部41の後端部は、シャフトハブ72に固定されていない。このため、シャフトハブ72を後方に牽引すると、デバイスチューブ73は後方に移動する。また、コネクタ50を保持した状態にて、シャフトハブ72を後方に引くと、押圧部75a,75b,75c,75dが突出している場合、それらをデバイスチューブ73内に収納可能となっている。
【0077】
また、シャフトハブ72を引くことにより、デバイスチューブ73とともに、センサ部、押圧部、牽引ワイヤは、後方に移動することができる。必要により、さらにデバイスチューブ73を後方に引くことにより、デバイスチューブ73を含むセンサデバイス5iをステントデリバリーシステム1mより抜去可能である。また、センサ部51(51a,51b,51c,51d)は、デバイスチューブ73内に収納可能であってもよい。
【0078】
この実施例のステントデリバリーシステム1mは、生体関連情報である血流速度を検知し、動脈瘤形成部に留置した場合における動脈瘤の閉塞状態を確認できるものとすることが好ましい。血流速度の検知は、センサ部51(51a,51b,51c,51d)として、圧力センサを用い、それより得られる信号を利用することにより行うことができる。これは、血管内(動脈瘤が形成された脳動脈)に留置したステントの内腔における複数部位における圧力値のばらつきを数値化し、瘤内への血液流れ込みの有無を検出するものである。
【0079】
この実施例のステントデリバリーシステム1mを用いた瘤内への血液流れ込みの有無の検出ステップについて、
図33ないし
図38を用いて説明する。
ステント3を留置する動脈瘤17が形成された脳動脈16内に配置させた後、具体的には、ステントデリバリーシステム1mのセンサデバイス5iのデバイスチューブ73の先端を動脈瘤17を有する脳動脈16の動脈瘤17より、所定距離前方(所定距離末梢側)に位置するように配置させた後、ステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を所定長後退させることにより、ステント3の後端部のストッパー33は、ステント押出用部材4bのステント押圧部42の先端面に当接して押され、ステント収納チューブ21より、ステントの先端側部分が吐出し、
図33に示す状態となる。
図33に示す状態では、ステントの先端側部分が自己拡張し、脳動脈16の内面に当接し、ステントの後端側部分が、ステント収納チューブ21内に位置している。
【0080】
そして、ステント収納チューブ21の位置を保持した状態にて、デバイスチューブ73およびコネクタ50を後端方向に引き、
図34に示すように、デバイスチューブ73の先端部をステントの中央部分もしくは動脈瘤部分に位置させる。続いて、
図34におけるデバイスチューブ73の位置を保持した状態にて、コネクタ50を押し込むことにより、デバイスチューブ73の先端より、押圧部75a,75b,75c,75dの先端部を突出させる。先端部にセンサ部を有する押圧部75a,75b,75c,75dは、突出することにより、放射状に若干広がり、
図35に示す状態となる。なお、この状態では、押圧部75a,75b,75c,75dの先端部に固定されたセンサ部51(51a,51b,51c,51d)は、若干離間するものの脳動脈(血管)16の中心付近に位置するものとなる。
【0081】
この実施例のステントデリバリーシステム1mにおいても、
図45に示したような演算処理装置100が用いられる。この実施例のステントデリバリーシステム1mでは、
図35の状態において、圧力センサであるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)からの信号を用いて、脳動脈16の中心付近における4つの部位の圧力値を検出する。検出された圧力値は、演算処理装置100の記憶部に記憶される。そして、検出された4つの圧力値が、演算処理装置100が記憶する閾値内であれば、次のステップに進む。なお、検出された圧力値に、演算処理装置100の記憶する閾値を越えるばらつきがあった場合には、若干コネクタ50を押し込むまたはデバイスチューブ73を引くことにより、押圧部75a,75b,75c,75dをさらに露出させ、センサ部51a,51b,51c,51dをさらに離間した状態とする。そして、再度脳動脈16の中心付近における4つの部位の圧力値を検出し、検出された4つの圧力値が、演算処理装置100が記憶する閾値内であれば、次のステップに進む。
【0082】
次のステップでは、
図35におけるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)の位置を保持した状態にて、ステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を所定長後退させることにより、ステント3の全体をステント収納チューブ21より吐出させる。続いて、センサ部51(51a,51b,51c,51d)の位置を保持した状態にて、デバイスチューブ73を後方に引く。これにより、押圧部75a,75b,75c,75dの全体が、デバイスチューブ73より突出し、
図36および
図37に示すように、放射状に大きく広がるとともに、センサ部51(51a,51b,51c,51d)が、
図35の位置よりも外側に移動し、拡張したステント(ステント本体31)3の内面に接触する。これにより、センサ部51(51a,51b,51c,51d)は、血管内壁に近接するものとなる。
【0083】
特に、図示するものでは、この実施例では、センサ部51のうちの一つであるセンサ51aは、動脈瘤17の開口部付近に位置している。このような場合に限らず、いずれかのセンサ部は、他のセンサ部に比べて、動脈瘤17の開口部に近い部位に位置するものとなる。この実施例のステントデリバリーシステム1mでは、
図36および
図37の状態において、センサ部51(51a,51b,51c,51d)を用いて、血管壁付近の圧力を測定できる。圧力センサであるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)からの信号を用いて、脳動脈16の血管壁付近における4つの部位の圧力値を検出する。検出された圧力値は、演算処理装置100に送られる。
【0084】
演算処理装置100では、脳動脈16の中心部分における4つの部位の圧力値と、血管壁付近の圧力における4つの部位の圧力値を用いて、ステントによる動脈瘤17の塞栓状況を判定する判定機能を備えている。例えば、血管壁付近の圧力における4つの部位の圧力値において、他のセンサ部に比べて、1または2のセンサ部において、閾値を超える圧力低下が検出された場合、動脈瘤17への血液の流れ込みが起きていることが推測される。また、同じセンサ部により検出され脳動脈16の中心部分における圧力値に比べて、血管壁付近における圧力値が所定値を越えて低い場合には、動脈瘤17への血液の流れ込みが起きていることが推測される。この実施例の演算処理装置100では、脳動脈16の中心部分における4つの部位の圧力値と、血管壁付近の圧力における4つの部位の圧力値を用いて、総合的にステントによる動脈瘤17の塞栓状況を判定する機能を備えている。
【0085】
そして、演算処理装置100は、下記の機能を備えることが好ましい。演算処理装置100が、動脈瘤17への血液の流れ込みが起きてないと判定した場合は、ステント留置が良好であることを表示部106に表する。また、演算処理装置100が、動脈瘤17への血液の流れ込みが起きてると判定した場合には、例えば、脳動脈16の中心部分における4つの部位の圧力値と血管壁付近の圧力における4つの部位の圧力値を用いて、今回のステント留置におけるフローダイバージョン効果(親動脈から動脈瘤内への血液流入を阻害)を概算し、その結果(フローダイバージョン効果率)を表示部106に表示する。さらには、演算処理装置100は、上記結果より、注意事項、今後の対処方法などを表示部103に表示することが好ましい。本実施例により、動脈瘤17に通常よりも多くの血流量が流れ込んでいることが判明した場合は、そのことを考慮した治療方針、治療計画を策定する必要がある。したがって、本実施例によれば、動脈瘤17の血流の状態、血流速度の分布に応じた適切な治療方針、治療計画を策定することができる。
【0086】
次に、コネクタ50を引き、押圧部75a,75b,75c,75をデバイスチューブ73内に収納させた後、デバイスチューブ73を引き、デバイスチューブ73内の先端部をステント収納チューブ21(チューブ組立体2)の先端部内に収納させることにより、
図38の状態となる。そして、ステントデリバリーシステム1mを生体内から抜去する。
【0087】
また、この実施例のステントデリバリーシステム1mは、上述した瘤内への血液流れ込みの有無以外に、上述した、ステントの拡張状態の確認に用いることができる。この場合を
図33、
図41から
図44を用いて説明する。
【0088】
最初に、ステント3を留置する脳動脈16内に配置させた後、具体的には、ステントデリバリーシステム1mのセンサデバイス5iのデバイスチューブ73の先端をステント3の先端内に位置するように配置させる。続いて、ステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を所定長後退させることにより、ステント3の後端部のストッパー33は、ステント押出用部材4bのステント押圧部42の先端面に当接して押され、ステント収納チューブ21より、ステントの先端側部分が吐出し、
図33に示す状態となる。
図33に示す状態では、ステントの先端側部分が自己拡張し、脳動脈16の内面に当接し、ステントの後端側部分が、ステント収納チューブ21内に位置している。
【0089】
そして、
図33におけるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)の位置を保持した状態にて、ステント収納チューブ21(チューブ組立体2)を所定長後退させることにより、ステント3の全体をステント収納チューブ21より吐出させる。続いて、センサ部51(51a,51b,51c,51d)の位置を保持した状態にて、デバイスチューブ73を後方に引く。これにより、押圧部75a,75b,75c,75dの全体が、デバイスチューブ73より突出し、
図41に示すように、放射状に大きく広がるとともに、センサ部51(51a,51b,51c,51d)が拡張したステント(ステント本体31)3の内面に接触する。
【0090】
この実施例においてもそれぞれの押圧部52a,52b,52c,52dが、ほぼ同じ圧力にて、センサ部51a,51b,51c,51dをステント3(ステント本体31)の内面に押圧しているため、出力される圧力に起因する信号(データ)もほぼ同じものとなる。そして、
図41に示す状態において、ステント3(ステント本体31)内におけるステント状態情報(圧力値)を得ることができる。さらに、
図41の状態より、ステントデリバリーシステム1mを後退させることにより、
図42および
図43に示すように、ステント3(ステント本体31)内におけるセンサ部51(51a,51b,51c,51d)の軸方向位置を変えることができ、複数の部位にて、ステント状態情報(圧力値)を得ることができる。
【0091】
そして、ステント3が、
図47に示すような状態である場合、ステント3(ステント本体31)は、脳動脈16の変形部16aに押されて、内側に湾曲したステント変形部31aを有するものとなる。このステント変形部31aに、センサ部のいずれかが当接もしくは近接した場合、当該部分においてセンサが歪み、歪みに影響された信号(データ)が出力される。そして、演算処理装置100は、入力された歪みに影響された信号(データ)と記憶部107が記憶する正常出力値を対比し、差が所定範囲外の場合、ステント状態が不良であることを表示部106に出力する。そして、ステント状態が不良であることが検知された場合(
図47のような場合)は、ステントデリバリーシステムを生体内から抜去した後、バルーンカテーテル(図示せず)をステント3内に挿入し、バルーンを拡張することにより、ステント3の形状改善を行うことができる。そして、この実施例では、
図44に示すように、情報収集終了後には、押圧部およびデバイスチューブをステント収納チューブ21に収納した状態とした後、生体より抜去する。
【0092】
次に、
図39および
図40に示す実施例のステントデリバリーシステム1nについて、説明する。
実施例のステントデリバリーシステム1nでは、ステント押出用部材4cと、センサデバイス5iを備える。
図39および
図40に示すように、ステント押出用部材4cの押圧部材42aは、先端にて開口し、貫通するチューブルーメン76,ガイドワイヤルーメン74を備える。また、ステント押出用部材4cの中空シャフト部41もその先端にて開口し、貫通するチューブルーメン81,ガイドワイヤルーメン77を備える。後述するチューブハブ79は、ガイドワイヤ挿入口78を備えている。このステントデリバリーシステム1nでは、チューブハブ79のガイドワイヤ挿入口78から挿入されるガイドワイヤー(図示せず)は、中空シャフト部41のワイヤールーメン77、弾性管状部43、ステント押出用部材4cのガイドワイヤルーメン74を通過し、それより先端側に突出する。このため、ステントデリバリーシステム1nの生体内への挿入および目的部位へのその先端部をガイドワイヤールーメン74より挿入したガイドワイヤーを用いて誘導することができる。
【0093】
センサデバイス5iは、ステント押出用部材4cのチューブルーメン76内に摺動可能に収納され、ステント押出用部材(押圧部材42a)4cの先端開口(チューブルーメン76の先端)より突出可能なデバイスチューブ73と、デバイスチューブ73内に少なくとも押圧部75a,75b,75c,75dおよび押圧部の後端部に連結された操作用ワイヤ64が収納されている。押圧部75a,75b,75c,75dのそれぞれの先端部には、センサ部51(51a,51b,51c.51d)が固定されている。また、デバイスチューブ73の後端側への移動もしくは操作用ワイヤ64の押込により、押圧部75a,75b,75c,75dがデバイスチューブ73より露出し、センサ部51(51a,51b,51c.51d)は、押圧部75a,75b,75c,75dにより、生体内に留置された状態のステント3の内面に接触するものとなる。
【0094】
この実施例では、押圧部75a,75b,75c,75dは、
図8から
図10に示した押圧部とセンサケーブルが一体化した一体化物10a,10b,10cと同様に、ワイヤ状のセンサとその側部に配置されたワイヤ状の押圧部とを一体化したものが好適である。そして、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73の先端部内にて終端し、それより後方は、センサケーブルが束ねられたもしくは撚り線となることにより形成された牽引ワイヤ(操作用ワイヤ)64となっている。センサケーブルからなる牽引ワイヤ64は、ステント押出用部材4cの後端より突出し、コネクタ50に電気的に接続されている。
【0095】
また、
図39に示すように、センサデバイス5iのデバイスチューブ73は、後端部が、中空シャフト部41のチューブルーメン81の後端部より突出し、その後端がチューブハブ79に固定されている。チューブハブ79は、ガイドワイヤ挿入口78を備えている。また、この実施例では、
図39および
図40に示すように、ステント押出用部材4cの押圧部材42aに設けられたチューブルーメン76は、押圧部材42aの中心ではなく、周辺側となる位置に設けられている。
【0096】
デバイスチューブ73の先端部は、ステント押出用部材4cの先端より突出し、その先端がステント3の先端内に位置するものとなっている。そして、センサデバイス5iは、センサ部51(51a,51b,51c,51d)、センサ部51(51a,51b,51c,51d)に先端部が取り付けられた押圧部75a,75b,75c,75dを備え、この押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73からの突出時に、放射状に広がるものとなっている。特に、この実施例では、
図40に示すように、チューブルーメン76が、押圧部材42aの中心よりずれた位置に設けられているが、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73からの突出時に、放射状かつ、センサ部51(51a,51b,51c,51d)が、ほぼ同じ円周状に位置するものとなっている。また、この実施例では、
図40に示すように、デバイスチューブ73およびチューブルーメン76は、断面が楕円状となるように形成されており、チューブルーメン76内でのデバイスチューブ73の回動を制限するものとなっている。
【0097】
また、この実施例のステントデリバリーシステム1nでは、
図39に示すように、ステント押出用部材4cの中空シャフト部41は、ガイドワイヤルーメン77を備えている。また、中空シャフト部41の後端には、シャフトハブ72が固定されている。また、センサケーブルからなる牽引ワイヤ64は、その後端部が、チューブハブ79の後端より突出し、さらに後端は、コネクタ50と電気的に接続されている。そして、コネクタ50を先端方向に押し込むことにより、牽引ワイヤ64が前進し、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73の先端より、突出するものとなっている。また、突出後、コネクタ50を後端方向に引くことにより、牽引ワイヤ64が後退し、押圧部75a,75b,75c,75dは、デバイスチューブ73内に収納可能となっている。
【0098】
センサデバイス5iのデバイスチューブ73の後端部は、チューブハブ79に固定されている。また、中空シャフト部41の後端部は、シャフトハブ72に固定されている。しかし、チューブハブ79とシャフトハブ72は固定されていない。このため、コネクタ50、チューブハブ79は、シャフトハブ72とは別に移動させることができる。具体的には、コネクタ50の位置を保持した状態にて、チューブハブ79を後方に引くと、押圧部75a,75b,75c,75dが突出している場合、それらをデバイスチューブ73内に収納することができる。さらに、デバイスチューブ73を後方に引くことにより、センサデバイス5iの先端部をステント押出用部材4c内に収納することができる。また、さらに、デバイスチューブ73を後方に引くことにより、センサデバイス5iをステントデリバリーシステム1nより抜去することができる。また、この実施例では、シャフトハブ72を引くことにより、ステント押出用部材4cとともに、センサデバイス5iを後方に移動可能である。
【0099】
この実施例のステントデリバリーシステム1nは、生体関連情報である血流速度を検知し、動脈瘤形成部に留置した場合における動脈瘤の閉塞状態を確認、また、ステントの拡張状態の確認に用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 ステントデリバリーシステム
2 チューブ組立体
21 ステント収納チューブ
3 ステント
4 ステント押出用部材
5 センサデバイス