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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141300
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】排水パイプ
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02D17/20 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052868
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391047514
【氏名又は名称】緑興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡之
(72)【発明者】
【氏名】巴 直人
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044EA03
2D044EA05
(57)【要約】
【課題】地山からの排水効率が高い排水パイプの提供を目的としている。
【解決手段】本発明の排水パイプ(1)は、接続部材(5:例えば、スイベルジョイント)により、複数の排水パイプユニット(1N)同士が相互に回転自在に接続されており、複数の排水パイプユニット(1N)の各々は、周方向について、当該排水パイプユニット(1N)が配置された際に上方に位置する側の領域にのみ集水用スリット(2)が形成されており、複数の排水パイプユニット(1N)の各々には流路(3)が形成されており、当該流路(3)の周方向について、当該排水パイプユニット(1N)が配置された際に下方に位置する側の領域に重量物(4)が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部材により複数の排水パイプユニット同士が相互に回転自在に接続されており、
複数の排水パイプユニットの各々は、周方向について、当該排水パイプユニットが配置された際に上方に位置する側の領域にのみ集水用スリットが形成されており、
複数の排水パイプユニットの各々には流路が形成されており、当該流路の周方向について、当該排水パイプユニットが配置された際に下方に位置する側の領域に重量物が配置されていることを特徴とする排水パイプ。
【請求項2】
集水用スリットは、周方向について、排水パイプユニットが配置された際に上方に位置する側の領域に形成された複数のスリットである請求項1の排水パイプ。
【請求項3】
接続部材により複数の排水パイプユニット同士が相互に回転自在に接続されており、
複数の排水パイプユニットの各々には流路が形成されており、当該流路の周方向について、当該排水パイプユニットが配置された際に下方に位置する側の領域に重量物が配置されており、
排水パイプユニットの横断面は、少なくとも2か所の突起部と、当該突起部間の凹んだ領域と扇形形状の領域により構成される形状であり、
前記凹んだ領域に集水用スリットが形成され、当該集水用スリットは排水パイプユニットの長手方向に延在していることを特徴とする排水パイプ。
【請求項4】
地中側の端部に位置する排水パイプユニットには、断面形状が十文字形をしている錐形のキャップが設けられており、当該キャップには、前記地中側の端部に位置する排水パイプユニット内の流路に連通する溝部が形成されている請求項1~3の何れか1項の排水パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山斜面の崩落等を防止して安定化するため、当該斜面に設置される排水パイプに関する。ここで、排水パイプは、地山中の水を排出するためのパイプである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図12で示す盛土をした法面において、盛土した領域F(図12において、ハッチングを付して示す)の安定のため、地山Gにおける湧水を確実に排水する必要がある。そのため、盛土領域Fの表面から地山Gの所定箇所(地下水流箇所)まで排水管11を設置する。
ここで、盛土領域Fの表面から地山Gの所定箇所(地下水流箇所)まで到達する排水管11の長さLは、20m~40mとなる場合が存在する。
【0003】
明確には図示されていないが、係る長尺の排水管11を地中に配置するため、例えば二重管削孔が実施される。係る二重管削孔では、盛土領域の表面から地山に到達するまで、二重管により(地山G内の所定の箇所)まで削孔する。所定の箇所まで削孔したならば内管を引き抜いて、排水管11を挿入する。その際に、有孔管(集水用の孔が穿孔された管:図12では集水用孔は図示せず)を継ぎ足しながら、外管(ケーシング)内に排水管11を挿入することが出来る。排水管11を挿入したならば、外管(ケーシング)を引き抜く。これにより、二重管削孔により、盛土表面から地山側まで遠距離(例えば40m)に亘って排水管11を挿入することが出来る。
【0004】
しかし、排水管11の設置作業において、二重管の外管(ケーシング)を引き抜く作業でケーシングが回転してしまうと、排水管11もケーシングと共に回転して、集水用孔が上方の位置から偏寄してしまう。そして、排水管11の上方に集水用孔が位置していないと、地中の水は排水管11に上手く浸入せず、効率的に排水を行うことができない。
そして、排水管が長い(例えば20m~40m)と、排水管の設置は二重管削孔により行う必要があり、上述した様に、効率的な排水が出来ない場合がある。
ここで、上方の領域に集水用スリットを形成した排水管も存在するが、二重管削孔を行った場合には、排水管がケーシングと共回りをして回転して、集水用スリットが排水管の上部から偏奇してしまう。すなわち、上述したのと同様な問題が生じる。
【0005】
これに対して、排水管の全周に亘って集水用スリットを形成する技術も存在する。係る技術によれば、全周に亘って集水用スリットを形成すれば、集水用スリットの一部は常に排水管の上部に位置するので、地下水を確実に集水することが出来る。しかし、全周に亘って形成された集水用スリットの一部は常に排水管の下部に位置しているので、排水管内部に集水された水は常に排水管下部に形成されたスリットから地中に戻されてしまう。そのため、集水効率を向上することは困難であった。
【0006】
その他の従来技術として、地山内部の地下水を排水して、崩落等を防止する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、係る従来技術(特許文献1)は、上述した問題を解決することを意図してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-92520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地山からの排水効率が高い排水パイプの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排水パイプ(1)においては、
接続部材(5:例えば、スイベルジョイント)により、複数の排水パイプユニット(1N)同士が相互に回転自在に接続されており、
複数の排水パイプユニット(1N)の各々は、周方向について、当該排水パイプユニット(1N)が配置された際に上方に位置する側の領域にのみ集水用スリット(2)が形成されており、
複数の排水パイプユニット(1N)の各々には流路(3)が形成されており、当該流路(3)の周方向について、当該排水パイプユニット(1N)が配置された際に下方に位置する側の領域に重量物(4)が配置されていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、集水用スリット(2)は、周方向について、排水パイプユニット(1N)が配置された際に上方に位置する側の領域に形成された複数のスリットであるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の排水パイプ(1-1)において、
接続部材(例えば、スイベルジョイント)により、複数の排水パイプユニット(1-1N、1-11N)同士が相互に回転自在に接続する接続されており、
複数の排水パイプユニット(1-1N、1-11N)の各々には流路(3-1)が形成されており、当該流路(3-1)の周方向について、当該排水パイプユニット(1-1N、1-11N)が配置された際に下方に位置する側の領域に重量物(4-1)が配置されており、
排水パイプユニット(1-1N、1-11N)の横断面は、少なくとも2か所の突起部(6:山部)と、当該突起部(6)間の凹んだ領域(7:谷部)と扇形形状の領域(8:基部)により構成される形状であり、
前記凹んだ領域(7:谷部)に集水用スリット(9)が形成され、当該集水用スリット(9)は排水パイプユニット(1-1N、1-11N)の長手方向に延在していることを特徴としている。
【0012】
本発明の排水パイプ(請求項1~3の排水パイプ)において、地中側の端部に位置する排水パイプユニット(1NE)には、断面形状が十文字形をしている錐形のキャップ(12)が設けられており、当該キャップ(12)には、前記地中側の端部に位置する排水パイプユニット(1NE)内の流路(3、3-1)に連通する溝部(12B:端部集水スリット)が形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、接続部材(5:例えば、スイベルジョイント)により複数の排水パイプユニット(1N)同士が相互に回転自在に接続されているので、個々の排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)は隣接する排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)の状態に拘わらず、当該隣接する排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)に対して自由に回転する。
そして、排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)が配置された際に上方に位置する側の領域にのみ集水用スリット(2、9)が形成されており、排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)が配置された際に下方に位置する側の領域に重量物(4、4-1)が配置されているので、当該流路(3、3-1)の周方向について集水用スリット(2、9)が上方に位置した状態から傾いたとしても、排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)が自由に回転することにより重量物(4、4-1)が常に下方に位置して、集水用スリット(2、9)を常に上方の領域に位置させることが出来る。すなわち、集水用スリット(2、9)が排水パイプ(1、1-1)の上方に位置する状態に復帰させることが出来る。
その結果、隣接する排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)の状態の如何に拘わらず、排水パイプ(1、1-1)は常に集水用スリット(2、9)が上方を向いている状態に保持される。
すなわち、本発明の排水パイプ(1、1-1)によれば、例えばケーシングを引き抜く際に共回りしても、常に集水用スリット(2、9)が上方に配置される。
【0014】
そして本発明では、集水用スリット(2、9)は、排水パイプユニット(1N、1-1N、1-11N)の周方向について、常に上方の領域に位置する様に構成されているので、地山(G)の湧水は上方のスリット(2、9)から排水パイプ(1、1-1)内に、効率的に浸入する。
ここで、排水パイプ(1、1-1)の下方の領域にはスリット(2、9)は存在しないので、集水された水が排水パイプ(1、1-1)の下方から地中に水が漏れ出てしまうことは無く、その結果、高い集水効率を発揮することが出来る。
【0015】
本発明において、地中側の端部に位置する排水パイプユニット(1NE)に、断面形状が十文字形をしている錐形のキャップ(12)が設けられていれば、錐形のキャップ(12)の十文字を構成する稜線部(12A)が地下水を受け止めることが出来る。そして、前記地中側の端部に位置する排水パイプユニット(1NE)内の流路(3、3-1)に連通する溝部(12B:端部集水スリット)が形成されていれば、稜線部(12A)により受け止められた地下水を、当該溝部(12B)により排水パイプユニット(1NE)内に流入させることが出来る。その結果、前記キャップ(12)を設けない場合に比較して、より多くの地下水が排水パイプ(1NE)内に集水される。
【0016】
本発明において、排水パイプユニット(1-1N)の横断面が、少なくとも3か所の突起部(6:山部)と、当該突起部(6)間の凹んだ領域(7:谷部)と扇形形状の領域(8)により構成される形状であり、
集水用スリット(9)は、前記凹んだ領域(7:谷部)に形成され、排水パイプユニット(1-1N)の長手方向に延在していれば、前記突起部(6:山部)により地山における地下水を集水して、前記凹んだ領域(7:谷部)に誘導して、集水用スリット(9)により、排水パイプ(1-1)内(排水パイプユニット1-1N内)に集水することが出来る。ここで、集水用スリット(9)は排水パイプユニット(1-1N)の長手方向に亘って延在する様に構成すれば、
排水パイプの断面積を増加することなく、多数の集水用スリットを排水パイプユニットの上部に形成する場合と同等に、効率的に地山の湧水を集水して、排水効率を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態を示す説明図である。
図2】実施形態において、複数の排水パイプ同士の接続箇所を示す説明断面図である。
図3】実施形態に係る排水パイプの地中側端部に設けられるキャップを示す説明図である。
図4図3のAL矢視端面図である。
図5】実施形態に係る排水パイプの横断面を示す説明断面図である。
図6図5とは異なる横断面を示す説明断面図である。
図7図5で示す錘と、図6で示す錘を比較して示す図である。
図8】本発明の第2実施形態を示す説明斜視図である。
図9】第2実施形態を示す説明平面図である。
図10図9におけるAK-AK線拡大断面図である。
図11】第2実施形態に変形例を示す説明斜視図である。
図12】盛土において、排水パイプを配置した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の簡略化のため、実施形態を示す図面において、地山法面に金網を敷設する場合であっても、金網の表示は省略している。
最初に図1図7を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、全体を符号1で示す排水パイプは、複数の排水パイプユニット1N-1、1N、・・・を有し、円管状の排水パイプユニット1N-1、1Nはスイベルジョイント5(接続部材)により、相互に回転自在に接続されている。第1実施形態では接続部材としてスイベルジョイントを採用するが、排水パイプユニット1N-1、1N同士を相互に回転自在に接続する機能を有するものであれば、その他の接続機構を採用することも出来る。図1では複数の排水パイプユニット1N、1N-1、・・・のうち2個の排水パイプユニット1N、1N-1が表示している。
【0019】
図1において、複数の排水パイプユニット1N-1、1Nの各々は、周方向について、排水パイプユニット1N-1、1Nが配置された際に上方に位置する側の領域(図1で排水パイプユニット1N-1、1Nにおける上方の領域)に、複数の集水用スリット2が形成されている。
また、円管状の複数の排水パイプユニット1N-1、1Nの内部には、各々流路3が形成されている。
流路3の周方向について、排水パイプユニット1N-1、1Nが配置された際に下方に位置する側の領域には、重量物4(錘)が配置されている。図1において、符号4で示す破線より下方の領域に錘が配置されている。
第1実施形態では、周方向について、排水パイプユニット1N-1、1Nが配置された際に上方に位置する側の領域に形成された複数の集水用スリット2が形成されている。そして、図2図5を参照して後述する通り、スイベルジョイント5(接続部材)及び錘4(重量物)の作用により、常に集水用スリット2が上方に位置する様に構成されている。そのため、図1で示す様に排水パイプユニット1N、1N-1の上方の領域に形成された複数の集水用スリット2から、地下水(地山の湧水)が排水パイプ1内に流入する。そして、排水パイプユニット1N、1N-1の下方の領域には集水用スリット2は形成されていないので、当該下方の領域から水が流出してしまうことは無い。そのため、集水効率が高い。
スイベルジョイント5によって排水パイプユニット1N-1、1Nが接続されている態様は、図2を参照して後述する。また、排水パイプユニット1N-1、1Nの流路3及び錘4(重量物)については図2及び図5を参照して後述する。
【0020】
図2で示す様に、(排水パイプ1を構成する)排水パイプユニット1N-1、排水パイプユニット1N(隣接する排水パイプユニット)は、スイベルジョイント5(接続部材)により、相互に回転自在に接続されている。スイベルジョイント5はインナーレース5A、アウターレース5Bを有し、インナーレース5Aとアウターレース5Bは、複数の転動体RBを有する軸受部5Cにより相互に回転自在である。
インナーレース5Aにはインナーレース側凸部5AAが設けられ、アウターレース5Bにはアウターレース側凸部5BAが設けられている。インナーレース5Aの内部にはスイベルジョイント内流路31、32が形成されている。
インナーレース側凸部5AAには排水パイプユニット1Nの左端部の凹部1NAが、いわゆる「インロー」で結合(固定)されている。そして、アウターレース側凸部5BAは排水パイプユニット1N-1の右端部の凹部1N-1Aが、いわゆる「インロー」で結合(嵌合:固定)されている。すなわち、排水パイプユニット1N-1、1Nは、スイベルジョイント5により、相互に回転自在に結合されている。その結果、個々の排水パイプユニット1N、1-1Nは、隣接する排水パイプユニット1-1N、1Nの状態に拘わらず、当該隣接する排水パイプユニット1-1N、1Nに対して自由に回転して、後述する錘4(重量物)に作用する重力により、集水用スリット2を常に上方の領域に位置させることが出来る。
視認を容易にするため、図2では、インナーレース側凸部5AAと排水パイプユニット1Nの左端部の凹部1NAとの結合部にはスペースが存在する態様で表示されており、アウターレース側凸部5BAと排水パイプユニット1N-1の右端部の凹部1N-1Aと結合部にもスペースが示されているが、実際にはインロー結合されている箇所にはその様なスペースは存在しない。
また、図示の煩雑を防止するため、図2において、集水用スリット2の図示は省略されている。
【0021】
図2において、円管状の排水パイプユニット1N-1、1Nの内部には流路3が形成され、流路3の周方向について、排水パイプユニット1N-1、1Nが配置された際に下方に位置する側の領域に錘4(重量物)が配置されている。図2において、符号4で示す実線は錘4の上端を示している。錘4の断面形状(図2で延在しているのとは垂直に延在する平面における配置)については、図5を参照して後述する。
図2における排水パイプ1内の流路3は、排水パイプユニット1N-1、1Nの内壁面1NB-1、1NBと、錘4の半径方向内方の面により形成される空間である(図5を参照)。排水パイプユニット1N-1の内部の流路3は、スイベルジョイント5内の流路32、31を介して排水パイプユニット1Nの内部の流路3に連続している。ここで、排水パイプ1を構成するすべての排水パイプユニット1-N、1N・・・の流路3は、相互に接続されている。
【0022】
図2において、排水パイプユニット1N-1、1Nの最下方部分1Bに対して、排水パイプユニット1N-1、1N内部における錘4の最上方位置(或いは半径方向最内方位置)の高さ寸法は、符号HHで示されている。排水パイプユニット1N-1、1Nの最下方部分1Bは、点線の引き出し線で示す。
また、排水パイプユニット1N-1、1Nの最下方部分1Bに対して、スイベルジョイント5の内部における流路31、32の最下方位置B5の高さ寸法は、符号Hで示されている。流路31、32の最下方位置B5は、1点鎖線の引き出し線で示す。
ここで、排水パイプユニットN内の流路3を流れる水(地山Gから集水された水:錘4の上方を流れる水)がスイベルジョイント5内の流路31に円滑に流入する様に、錘4の最上方位置の高さHHは、スイベルジョイント5内部の流路31、32の最下方位置B5の高さ寸法Hよりも長くなる様に設定され、 HH>H となる様に設定されている。
【0023】
次に図3図4を参照して、地中側の端部に位置する排水パイプユニットの端面1Eに設けられたキャップ12について説明する。
図3において、排水パイプ1を構成する複数の排水パイプユニット1N・・・のうち、地中側の端部(図3で左側端部)に位置する排水パイプユニット1NEの地中側端面1Eにはキャップ12が設けられる。なお、排水パイプユニット1NEの上方にも、複数の集水用スリット2が形成されている。
図3図4において、キャップ12は、断面形状が十文字形をしている錐形形状であり、当該十文字形は4本の稜線部12Aにより構成されている。
排水パイプユニット1NEの端面1Eにおいて、稜線部12A間の領域には、円周方向全体に亘って2本の端部集水スリット12B(溝部)が形成されている(図4)。なお、2本の端部集水スリット12Bは稜線部12Aにより分断されており、稜線部12Aにより8本に分断された端部集水スリット全体を、符号12Bで表示している。
端部集水スリット12Bは排水パイプユニット1NE内の流路3(図2参照)に連通している。
キャップ12における十字形を構成する稜線部12Aは、下方に移動しようとする地下水を受け止め、稜線部12Aにより受け止められた地下水は、端面1Eに形成された端部集水スリット12Bから、排水パイプユニット1NE内の流路3に流入する。
その結果、キャップ5を設けない場合に比較して、より多くの地下水が排水パイプ1NE内に集水され、排水パイプ1における地下水の集水効果が向上する。
【0024】
図示の実施形態に係る排水パイプ1の横断面を示す図5において、排水パイプユニット1N内部の内壁面1NBにより流路3が形成されており、流路3の周方向について、排水パイプユニット1Nが配置された際に下方に位置する側の領域に、錘4が配置されている。
二重管削孔で排水パイプ1を設置する際に、ケーシングを引き抜く工程で排水パイプ1が共回りして、排水パイプユニット1Nに形成した集水用スリット2(図1参照)が上方の領域から偏寄してしまう場合がある。この様な場合に、排水パイプユニット1Nはスイベルジョイント5により隣接する排水パイプユニット1N-1に対して自在に回転することが出来る。そして、集水用スリット2が上方に位置した状態から偏寄すると、錘4も最下方の位置よりも上方に移動するので、錘4に作用する重力より、共回りした排水パイプユニット1Nは、錘4の重心が最下方となる状態(錘4が排水パイプユニット1Nの下方の領域に位置する状態)まで回転する。
その結果、隣接する排水パイプユニット1N-1の状態の如何に拘わらず、排水パイプユニット1Nは、常に、集水用スリット2が上方の領域に位置している状態に復帰し、その状態が保持される。
したがって、図示の第1実施形態の排水パイプ1によれば、例えばケーシングを引き抜く際に共回りしても、排水パイプ1を構成する全ての排水パイプユニット1Nは、各々における集水用スリット2は常に上方の領域に位置する状態が維持される。
【0025】
図5において、錘4は、排水パイプユニット1Nの内壁面1NBに固着する態様で配置されており、錘4の円周方向中央部(図5における左右方向中央部)の厚さ寸法が大きく、円周方向両端(図5における左右方向両端)に向かうにつれて錘4の厚さ寸法は減少する。
錘4は、その半径方向内方の面は流路3の内壁面を形成する円弧と概略平行に図5の紙面と垂直な方向に延在している。ただし、錘4の半径方向内方の面における円弧の曲率半径は、流路3の内壁面の円弧の曲率半径よりも大きい。
図6で示す様に、錘4Aの半径方向内方の面を、流路3の内壁面を形成する円弧の弦となる様に配置することも可能である。
図5の錘4と図6の錘4Aの両方を示す図7において、排水パイプユニット1Nが錘4、4Aの重心が最下方にある位置から回転(偏奇)した際に、図5の錘4の方が、図6の錘4Aよりも、上方に位置している領域が多い。そのため、図5の錘4の方が、矢印R7方向に回転して錘4の最下方位置に復帰しようとする重力が強く、集水用スリット(図示しない)が上方に位置した状態に復元する力が強くなる。
【0026】
次に図8図10を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図8において、第2実施形態に係る排水パイプ1-1は、複数の排水パイプユニット1-1Nを接続して構成されている。図8では単一の排水パイプユニット1-1Nのみを表示している。
図8図10では明示されていないが、第2実施形態においても、複数の排水パイプユニット1-1Nは、接続部材(例えば、スイベルジョイント)により、排水パイプユニット1-1N同士が相互に回転自在となる様に接続されている。そして当該接続部材は、排水パイプユニット1-1N同士を相互に回転自在に接続する機能を有している従来公知の機器が採用される。
【0027】
図8図10で示す第2実施形態では、排水パイプユニット1-1Nの横断面は、3か所の突起部6(山部)と、山部6間の2か所の凹んだ領域7(谷部)と、扇形形状の領域8(基部)により構成されている。3か所の山部6は、両端の第1の縁側山部6A及び第2の縁側山部6Bと、縁部山部6A、6B間に形成されている中央山部6Cにより構成されている。なお、前記山部6を4か所、谷部7を3か所とすることも可能であり、さらに数を増やすことも可能である。
2か所の谷部7(凹んだ領域)にはそれぞれ集水用スリット9が形成され、図9で示す様に、集水用スリット9は排水パイプユニット1-1Nの長手方向に両端部近傍まで延在している。
縁部山部6A、6B間の領域から落下する地下水は、縁部山部6A、6B及び中央山部6Cにより補足されて、谷部7に流入し、集水用スリット9を介して排水パイプ1-1内に流入する。そのため、縁部山部6A、6B間の領域を通過する地下水は確実に排水パイプ1-1によって集水され、排水される。
【0028】
図10において、複数の排水パイプユニット1-1Nの各々の内部であって、山部6、谷部7の下方の扇形形状の領域8(基部)の内側の領域には、流路3-1が形成される。
また、流路3-1の周方向について、排水パイプユニット1-1Nが配置された際に下方に位置する側の領域には、錘4-1(重量物)が配置される。錘4-1の断面形状は図1図7の第1実施形態と同様であり、図5を参照して上述した通りである。
そして、流路3-1は、排水パイプユニット1-1Nの扇形形状の基部8内の空間における内壁面8Aと、錘4-1の半径方向最内方の面とにより包囲された空間により構成される。
【0029】
図示されていないが、図8図10の第2実施形態においても第1実施形態と同様に、排水パイプ1-1を構成する複数の排水パイプユニットのうち、地中側の端部に位置する排水パイプユニット1-1NE(図示せず)の地中側端面には、キャップ(第1実施形態の図3図4のキャップ12に相当)が設けられている。
第2実施形態のキャップも、断面形状が十文字形をしている錐形形状であり、稜線部(図3図4の稜線部12Aに相当)、端部集水スリット(図3図4の端部集水スリット12Bに相当)が設けられており、地下水は端部集水スリットを介して、地中側の端部に位置する排水パイプユニット1-1NE(図示せず)内の流路3に流入する。ただし、排水パイプユニットの断面形状の違いに起因して、第2実施形態のキャップの断面形状は、第1実施形態のキャップ12の断面形状とは相違している。すなわち、第2実施形態のキャップにおける排水パイプユニット1-1NE側端部の断面形状は、排水パイプユニット1-1NEの断面形状と等しい。
図8図10の第2実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図1図7の第1実施形態と同様である。
【0030】
図11を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。
図8図10の第2実施形態に係る排水パイプユニット1-1Nでは、3か所の突起部6(山部)と、山部6間の2か所の凹んだ領域7(谷部)を備えている。
それに対して図11の第2実施形態に係る排水パイプユニット1-11Nの断面は、2か所の突起部6A1、6B1(山部)と、突起部6A1、6B1間の凹んだ領域である谷部71を備えている。図11では明示されていないが、谷部71には集水用スリット(図示せず)が形成されており、図示しない集水用スリットを介して谷部71は排水パイプユニット1-11内に連通している。
図8図10の第2実施形態の変形例における上述した以外の構成及び作用効果は、図8図10の第2実施形態と同様である。
【0031】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0032】
1、1-1・・・排水パイプ(地山中の水を排出するためのパイプ)
1N-1、1N、1-1N、1-11N・・・排水パイプユニット
2、9・・・集水用スリット
3、3-1・・・流路
4、4-1・・・錘(重量物)
5・・・接続部材(例えばスイベルジョイント)
6・・・山部(突起部)
7・・・谷部(凹んだ領域)
8・・・扇形形状の領域
12・・・キャップ(錐形のキャップ)
12A・・・稜線部
12B・・・溝部(端部集水スリット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12