(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141303
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】炎検知装置、異常監視システム及び炎検知方法
(51)【国際特許分類】
G08B 17/12 20060101AFI20241003BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08B17/12 A
H04N7/18 D
H04N7/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052873
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉夫
【テーマコード(参考)】
5C054
5C085
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054ED02
5C054ED03
5C054ED06
5C054EJ01
5C054EJ05
5C054FC12
5C054FE28
5C054FF06
5C054HA19
5C054HA20
5C085AA12
5C085AB01
5C085AC03
5C085BA36
5C085CA07
(57)【要約】
【課題】高輝度となる炎であっても炎固有な色、形状、模様等の特徴を識別可能な画像を撮像して炎を確実に検知可能とする。
【解決手段】炎検知装置12は、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件とを撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部24と、通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定する炎候補判定部16と、炎候補判定部16で炎候補と判定された場合に、撮像条件設定部24から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部18と、低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、前記通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする前記通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件とを撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、
前記撮像部から取得した前記通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定する炎候補判定部と、
前記炎候補判定部で前記炎候補と判定された場合に、前記撮像条件設定部から前記撮像部に前記第1撮像条件と前記第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、前記撮像部から前記通常画像と前記低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、
前記撮像部から取得した前記低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、
を備えたことを特徴とする炎検知装置。
【請求項2】
少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、前記通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする前記通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件とを撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、
前記撮像条件設定部から前記撮像部に前記第1撮像条件と前記第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、前記撮像部から前記通常画像と前記低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、
前記撮像部から取得した前記低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、
を備えたことを特徴とする炎検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
前記撮像条件設定部は、前記第1撮像条件として前記撮像部に所定の第1ゲインを設定し、前記第2撮像条件として前記撮像部に前記第1ゲインより低い所定の第2ゲインを設定することを特徴とする炎検知装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
前記撮像条件設定部は、前記第1撮像条件として前記撮像部に所定の第1露光時間を設定し、前記第2撮像条件として前記撮像部に前記第1露光時間より短い所定の第2露光時間を設定することを特徴とする炎検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
前記撮像条件設定部は、前記第1撮像条件として前記撮像部に所定の第1絞り開度を設定し、前記第2撮像条件として前記撮像部に前記第1絞り開度より狭い所定の第2絞り開度を設定することを特徴とする炎検知装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
前記炎判定部は、前記低輝度画像から炎の色、形状又は模様の少なくとも何れかが炎固有の条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする炎検知装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
前記撮像部から取得する画像はRGB色空間で表現され、
前記炎判定部は、前記撮像部から取得したRGB色空間で表現された前記低輝度画像をHSV色空間で表現されたHSV画像に変換し、
前記変換されたHSV画像に含まれる色相Hが炎固有の色相条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする炎検知装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の炎検知装置において、
更に、前記通常画像と前記低輝度画像を交互に含む動画ストリーム、前記通常画像からなる動画ストリーム、又は前記低輝度画像からなる動画ストリームの少なくとも何れかを出力する動画ストリーム生成部を備えることを特徴とする炎検知装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載の炎検知装置と、前記撮像部と、を備えたことを特徴とする異常監視システム。
【請求項10】
撮像条件設定部により、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件、又は前記通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする前記通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件を撮像部に設定して撮像させ、
炎候補判定部により、前記撮像部から取得した前記通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定し、
前記炎候補判定部で炎候補と判定された場合に、撮像制御部により、前記撮像条件設定部から前記撮像部に前記第1撮像条件と前記第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、前記撮像部から前記通常画像と前記低輝度画像を交互に出力させ、
炎判定部により、前記撮像部から取得した前記低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする炎検知方法。
【請求項11】
撮像条件設定部により、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件、又は前記通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする前記通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件を撮像部に設定して撮像させ、
撮像制御部により、前記撮像条件設定部から前記撮像部に前記第1撮像条件と前記第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、前記撮像部から前記通常画像と前記低輝度画像を交互に出力させ、
炎判定部により、前記撮像部から取得した前記低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする炎検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部で撮像された監視領域の監視画像から炎を検知する炎検知装置、当該炎検知装置を備えた異常監視システム及び炎検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視カメラで撮像した監視領域の監視画像に対し画像処理を施して炎を検知することで、異常監視システムが異常として火災を検出できるようにした様々な炎検知装置やその炎検知方法が提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-268270号公報
【特許文献2】特開2015-114930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の炎検知装置にあっては、監視領域の様子を監視するための監視カメラで炎を含む監視領域の監視画像を撮像すると、撮像された監視画像において炎の部分が炎からの光の影響を受け、RGBのすべての画素値がダイナミックレンジの最大値を超えて飽和する現象、所謂白飛びにより炎の部分が白色となることから、炎本来の色を捉えられずに、監視領域に存在する別の白色となる物体や光源等と炎との区別が付かずに、別の物体や光源等を炎として誤検出する可能性がある。
【0005】
また、炎の周囲の床面や壁面等の部分も炎からの光を反射して炎の部分と同様に白っぽく撮像される場合や、レンズフレア等の影響により炎が本来の炎の形状とは異なるように撮像されてしまう場合もあり、炎の形状や模様(テクスチャ)を正確に捉えられず、監視領域に存在する別の白色となる物体や光源等を炎として誤検出する可能性がある。尚、「レンズフレア」とは、レンズやボディ(カメラ本体)の中で強い光の反射や回折が起こることによって、画像全体や画像中の光源付近の領域が白っぽくなる現象をいう。
【0006】
本発明は、高輝度となる炎であっても炎固有な色、形状、模様等の特徴を識別可能な画像を撮像して炎を確実に検知可能とする炎検知装置、当該炎検知装置を備えた異常監視システム及びその炎検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(炎検知装置1)
本発明は、炎検知装置であって、
少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件と、を撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、
撮像部から取得した通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定する炎候補判定部と、
炎候補判定部で炎候補と判定された場合に、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、
撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
(炎検知装置2)
本発明の別の形態なる炎検知装置であって、
少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件と、を撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、
撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、
撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
(ゲインの設定)
撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1ゲインを設定し、第2撮像条件として撮像部に第1ゲインより低い所定の第2ゲインを設定する。
【0010】
(露光時間の設定)
撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1露光時間を設定し、第2撮像条件として撮像部に第1露光時間より短い所定の第2露光時間を設定する。
【0011】
(絞り開度の設定)
撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1絞り開度を設定し、第2撮像条件として撮像部に第1絞り開度より狭い所定の第2絞り開度を設定する。
【0012】
(炎判定条件)
炎判定部は、低輝度画像から、炎の色、形状又は模様の少なくとも何れかが炎固有の条件を充足した場合に炎と判定する。
【0013】
(色による炎判定)
撮像部から取得する画像はRGB色空間で表現され、
炎判定部は、撮像部から取得したRGB色空間で表現された低輝度画像をHSV色空間で表現されたHSV画像に変換し、
変換されたHSV画像に含まれる色相Hが炎固有の色相条件を充足した場合に炎と判定する。
【0014】
(動画ストリーム)
更に、通常画像と低輝度画像を交互に含む動画ストリーム、通常画像からなる動画ストリーム、又は低輝度画像からなる動画ストリームの少なくとも何れかを出力する動画ストリーム生成部を備える。
【0015】
(異常監視システム)
本発明は、異常監視システムであって、前述した炎検知装置と撮像部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
(炎検知方法1)
本発明は、炎検知方法であって、
撮像条件設定部により、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件、又は通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件を撮像部に設定して撮像させ、
炎候補判定部により、撮像部から取得した通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定し、
炎候補判定部で炎候補と判定された場合に、撮像制御部により、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させ、
炎判定部により、撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする。
【0017】
(炎検知方法2)
本発明の別の形態となる炎検知方法であって、
撮像条件設定部により、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件、又は通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件を撮像部に設定して撮像させ、
撮像制御部により、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させ、
炎判定部により、撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定することを特徴とする。
【0018】
尚、これ以外の炎検知方法の特徴は、前述した炎検知装置の場合と同様になるため、その記載は省略する。
【発明の効果】
【0019】
(炎検知装置1の効果)
本発明は、炎検知装置であって、少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件と、を撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、撮像部から取得した通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定する炎候補判定部と、炎候補判定部で炎候補と判定された場合に、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、を備えたため、低輝度画像では、通常画像で発生し得る炎からの光の影響によるRGB画素値の飽和(白飛び)、炎からの光の周囲への反射やレンズフレア等の外乱要因が防止され、通常画像からでは識別が困難な炎固有の特徴、例えば炎の色、形状及び模様(テクスチャ)を確実に識別し、炎検知の精度を高めることを可能とする。
【0020】
また、炎候補判定部で炎候補を判定した場合に、撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定して通常画像と低輝度画像を交互に取得するため、炎の検知と平行して、取得した通常画像から監視領域の炎以外の監視対象、例えば人や車両等を監視継続することができる。
【0021】
(炎検知装置2の効果)
本発明の別の形態なる炎検知装置であって、少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件と、を撮像部に設定して撮像させる撮像条件設定部と、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させる撮像制御部と、撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定する炎判定部と、を備えたため、基本的に前述した炎検知装置1と同様の効果が得られる。
【0022】
また、炎検知装置1とは異なり、条件なく撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定して通常画像と低輝度画像を交互に取得するため、炎検知装置の機能構成を炎検知装置1よりも簡単にすることができる。
【0023】
(ゲイン、露光時間、絞り開度の設定の効果)
また、撮像条件設定部により撮像条件としてゲイン、露光時間又は絞り開度を設定することで、通常画像と低輝度画像を取得するようにしたため、炎固有の特徴として炎の色、形状や模様(テクスチャ)が識別可能な低輝度画像を通常画像の撮像条件から簡単に切り替えて撮像することを可能とする。
【0024】
(炎判定条件の効果)
また、炎判定部は、低輝度画像から炎の色、形状又は模様の少なくとも何れかが炎固有の条件を充足した場合に炎と判定するようにしたため、通常画像よりも暗く、画像内に炎が含まれる低輝度画像では炎固有な特徴として炎の色、形状、及び模様が鮮明に識別可能であり、これらの炎固有な特徴に基づく条件とすることで炎の判定精度を高めることを可能とする。
【0025】
(色による炎判定の効果)
また、撮像部から取得する画像はRGB色空間で表現され、炎判定部は、撮像部から取得したRGB色空間で表現された低輝度画像をHSV色空間で表現されたHSV画像に変換し、変換されたHSV画像に含まれる色相Hが炎固有の色相条件を充足した場合に炎と判定するようにしたため、炎固有な特徴として炎の色としてHSV色空間で表現されたHSV画像の色相H・彩度S・明度Vを使い、炎の判定精度を高めることを可能とする。
【0026】
(動画ストリームの効果)
また、更に、通常画像と低輝度画像を交互に含む動画ストリーム、通常画像からなる動画ストリーム、又は低輝度画像からなる動画ストリームの少なくとも何れかを出力する動画ストリーム生成部を備えたため、炎検知装置の外部にて通常画像による監視領域の監視や低輝度画像による炎の検知(火災の検出)を行うことを可能とし、監視の確実性と信頼性を向上可能とする。
【0027】
異常監視システム及び炎検知方法にあっても、前述した炎検知装置と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態の炎検知装置を示した説明図である。
【
図2】第1撮像条件の設定で炎を撮像した通常ゲイン炎画像と第2撮像条件の設定で炎を撮像した低ゲイン炎画像を示した説明図である。
【
図3】炎検知装置から出力される動画ストリームを示した説明図である。
【
図4】HSV色空間における炎識別空間を示した説明図である。
【
図5】第1実施形態の炎検知の処理動作を示したフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の炎検知装置を示した説明図である。
【
図7】第2実施形態の炎検知の処理動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る炎検知装置、異常監視システム及び炎検知方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0030】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、撮像部で撮像された監視領域の監視画像から炎を検知する炎検知装置に関するものであり、また他の実施形態としては、その炎検知装置を利用した炎検知方法や炎検知装置を備えた異常監視システムを含むものである。
【0031】
ここで、「異常監視システム」とは、監視領域で発生し得る異常を監視するためのシステムであり、撮像部や炎検知装置以外の構成を含むものや、火災以外の異常を監視するものを含む概念である。例えば撮像部や炎検知装置以外の構成として、炎検知装置で検知した炎の検知結果を受信する受信機や撮像部で撮像された通常画像や低輝度画像等を表示するモニタ装置を備えているシステムや、異常として火災以外に人(不審者)、車両、ガス漏れ等を合わせて監視するシステムを含む。
【0032】
そして、第1実施形態の炎検知装置は、撮像条件設定部、炎候補判定部、撮像制御部及び炎判定部を備えることを特徴とするものである。
【0033】
ここで、「撮影条件設定部」とは、少なくとも、監視領域を監視可能とする所定の通常輝度に対応した通常画像を撮像する所定の第1撮像条件と、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする通常画像より暗い低輝度画像を撮像する所定の第2撮像条件と、を撮像部に設定して撮像させるものであり、撮影条件設定部がその他の撮像条件を撮像部に設定することや、撮像部がその他の撮像条件で撮像すること等を妨げるものではない。
【0034】
ここで、第1撮像条件により撮像される「通常画像」とは、全体的に監視領域の様子を把握して監視領域を監視できる状態の画像、即ち従来の防災監視システムの撮像部で監視領域を監視するために撮像されている画像に相当するものであり、監視領域に差し込む自然光や設置された照明からの照明光等の監視領域の各々の環境を考慮した全体的な監視領域の輝度(所定の通常輝度)に対応させて撮像されたものである。
【0035】
これに対して、第2撮像条件により撮像される「低輝度画像」とは、全体的な監視領域の輝度に対応させた通常画像では高輝度となり検知が困難な炎に対して、炎固有の特徴を識別できるように処理され炎の検知精度を高めた画像であり、炎固有の特徴を識別できるようにするために炎から発生される光等の影響を受けた高輝度に対応させ、通常画像よりも暗く撮像されたものである。
【0036】
また、撮像条件設定部は、第1撮像条件及び第2撮像条件として、撮像部のゲイン、露光時間又は絞り開度の少なくとも何れかの設定を変更(切替)させるものである。
【0037】
例えば撮像部のゲインを変更する場合には、撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1ゲインを設定し、第2撮像条件として撮像部に第1ゲインより低い所定の第2ゲインを設定する。ここで、第1撮像条件及び第2撮像条件として設定するゲインは任意であるが、例えば第1撮像条件をゲイン10dBに設定し、第2撮像条件を第1撮像条件よりも低いゲイン0dBに設定する。
【0038】
また、撮像部の露光時間を変更する場合には、撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1露光時間を設定し、第2撮像条件として撮像部に第1露光時間より短い所定の第2露光時間を設定する。
【0039】
また、撮像部の絞り開度を変更する場合には、撮像条件設定部は、第1撮像条件として撮像部に所定の第1絞り開度を設定し、第2撮像条件として撮像部に第1絞り開度より狭い所定の第2絞り開度を設定する。
【0040】
また、「炎候補判定部」とは、撮像部から取得した通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に炎候補と判定するものである。ここで、「炎候補判定条件」は任意であり、例えば通常画像の中に所定面積を超える白色領域(高輝度領域)が存在した場合に炎候補と判定する等の公知の炎領域の判定条件等を利用するものを含む。
【0041】
また、「撮像制御部」とは、炎候補判定部で炎候補と判定された場合に、撮像条件設定部から撮像部に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返すように設定させ、撮像部から通常画像と低輝度画像を交互に出力させるものである。ここで、「第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定」とは、所定の間は第1撮像条件が設定され、その後第2撮像条件に切り替わり、続く所定の間は第2撮像条件が設定されるものであり、第1撮像条件及び第2撮像条件が設定される期間は任意であり、例えば1フレーム毎に第1撮像条件と第2撮像条件を切り替えるものや複数フレーム毎に第1撮像条件と第2撮像条件を切り替えるものを含み、第1撮像条件に設定される期間と第2撮像条件に設定される期間が必ずしも同じである必要はない。
【0042】
また、「炎判定部」とは、撮像部から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定するものである。
【0043】
ここで、炎判定部で炎を判定するための「炎判定条件」は任意であるが、例えば炎判定部は、低輝度画像から、炎の色、形状又は模様(テクスチャ)の少なくとも何れかが炎固有の条件を充足した場合に炎と判定するものや、撮像部から取得する画像はRGB色空間で表現され、炎判定部は、撮像部から取得したRGB色空間で表現された低輝度画像をHSV色空間で表現された画像に変換し、変換された画像に含まれる色相Hが炎固有の色相条件を充足した場合に炎と判定するものを含む。
【0044】
また、「炎固有の色相条件」は任意であるが、例えばHSV色空間での炎固有の色相条件として「橙色」の判定条件を設定することで、HSV色空間に変換した低輝度画像において「橙色」の判定条件を充足した場合に炎と判定することになる。尚、「HSV色空間」とは、コンピュータ等で色を表す表現形式の一つで、色を「色相」(H:Hue)、「彩度」(S:Saturation)、「明度」(V:Value)の三つの要素の強弱の組み合わせで表現するものである。
【0045】
また、炎判定部で炎の判定は、前述した特許文献1及び特許文献2に記載された炎判定条件を充足した場合に炎と判定するようにしてもよい。
【0046】
また、炎検知装置は、更に、通常画像と低輝度画像を交互に含む動画ストリーム、通常画像からなる動画ストリーム、又は低輝度画像からなる動画ストリームの少なくとも何れかを出力する動画ストリーム生成部を備える。これにより、炎検知装置を含む異常監視システムが構成された場合に、異常監視システムを構成する他の構成物、例えば受信機やモニタ装置に炎検知装置から各動画ストリームを伝送して通常画像と低輝度画像を表示させることができる。
【0047】
尚、炎検知装置が上記で説明した以外の機能を持つことを妨げず、例えば炎検知装置が行った炎候補の判定結果や炎の検知結果等を外部に出力できるようにしても良い。
【0048】
また、本発明の別の形態なる第2実施形態の炎検知装置にあっては、第1実施形態の炎検知装置から炎候補判定部が除かれたものであり、基本的に前述した「撮像条件設定部」、「撮像制御部」及び「炎判定部」を備えるものであるから、その説明は省略する。
【0049】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「撮像部」が設けられ、カラー動画を撮像する「監視カメラ」を備え、「炎検知装置」の「撮像条件設定部」の機能を監視カメラ側に設けた場合で、第1実施形態と第2実施形態に分けて説明する。
【0050】
[実施形態の具体的内容]
炎検知装置の実施形態について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.第1実施形態の炎検知装置に接続される監視カメラ
a1.監視カメラ
a2.撮像条件設定部
a3.撮像条件変更による炎画像
b.炎検知装置
b1.画像受信部
b2.炎候補判定部
b3.撮像制御部
b4.動画ストリーム生成部
b5.炎判定部
c.第1実施形態の炎検知の処理動作
d.第2実施形態の炎検知装置
d1.監視カメラ
d2.炎検知装置
d3.第2実施形態の炎検知の処理動作
e.本発明の変形例
【0051】
[a.第1実施形態の炎検知装置に接続される監視カメラ]
まず、第1実施形態の炎検知装置に接続される監視カメラについて説明する。当該説明にあっては、第1実施形態の炎検知装置を示した
図1を参照する。
【0052】
(a1.監視カメラ)
図1に示すように、炎検知装置12には、監視領域を撮像する撮像部を備えた監視カメラ10が接続される。監視カメラ10は火災の監視対象となる所定の監視領域に設置され、監視領域を逐次、例えば毎秒30フレーム又は毎秒60フレームのフレーム速度で撮像したカラーのフレーム画像(RGBフレーム画像)の連続からなる動画から、毎秒30フレーム又は毎秒60フレームとなる監視領域のRGBフレーム画像の画像データを炎検知装置12に伝送する。
【0053】
ここで、監視カメラ10による動画像のサイズは任意であるが、例えば1280×720ピクセルとする。また、カラーのフレーム画像のカラー画素は、R画素、G画素、B画素から構成され、それぞれ8ビットデータであることから、1カラー画素の画素値は24ビットデータとなる。尚、以下の説明で「画像」といった場合には「フレーム画像」を意味する。
【0054】
(a2.撮像条件設定部)
また、監視カメラ10には炎検知装置12の機能の一部である撮像条件設定部24が設けられる。撮像条件設定部24は、炎検知装置12の撮像制御部18からの指示を受けて監視カメラ10の撮像条件として、第1撮像条件と第2撮像条件とを切り替えて設定する。尚、撮像条件設定部24を炎検知装置12側に設けることを妨げない。
【0055】
監視カメラ10の第1撮像条件は、監視領域に差し込む自然光や設置された照明からの照明光等の監視領域の環境を考慮した全体的な監視領域の輝度に対応させた通常画像を撮像するための撮像条件であり、全体的に監視領域の様子を把握して監視できる画像が撮像できるように、監視カメラ10に設けられた撮像部(撮像素子)のゲイン、撮像部の蓄積時間又は光学系の絞り開度の少なくとも何れかを設定するものである。通常、監視カメラ10の撮像条件の変更は、撮像部の蓄積時間及び絞り開度を所定値に固定し、撮像部のゲインを変更するようにしている。
【0056】
そして、撮像部のゲインを変更する場合に、通常画像を撮像するための第1撮像条件として設定されるゲインは任意であるが、例えば監視カメラ10に設けられたゲイン切替機能によるゲイン10dBを第1撮像条件のゲインとして設定する。尚、監視カメラ10のゲイン10dBは、監視カメラ10に使用している撮像部により決まる相対的な値となる。また、以下の説明では、通常画像は、監視カメラ10に第1撮像条件としてゲイン10dBを設定して撮像されたものである場合には「通常ゲイン画像」と呼ばれる場合があり、炎が含まれている通常画像の場合には、「通常炎画像」又は「通常ゲイン炎画像」と呼ばれる場合がある。
【0057】
また、監視カメラ10の第2撮像条件は、通常画像では検知困難な炎を含む高輝度に対応し、所定の炎固有の特徴を識別可能とする、通常画像より暗い低輝度画像を撮像するための撮像条件であり、炎の部分が白飛びせずに、所定の炎固有の特徴として、例えば炎の色、炎の形状、炎の模様(テクスチャ)が鮮明に識別できる画像が撮像できるように、監視カメラ10に設けられた撮像部(撮像素子)のゲイン、撮像部の蓄積時間又は光学系の絞り開度の少なくとも何れかを設定するものである。第2撮像条件の場合にも、通常、監視カメラ10の撮像条件の変更は、撮像部の蓄積時間及び絞り開度を所定値に固定し、撮像部のゲインを変更するようにしている。
【0058】
そして、ゲインを変更する場合に、低輝度画像を撮像するための第2撮像条件として設定されるゲインは任意であるが、例えば監視カメラ10に設けられたゲイン切替機能による所定のマイナスゲインとしてゲイン0dBを第2撮像条件のゲインとして設定する。尚、以下の説明では、低輝度画像は、監視カメラ10に第2撮像条件としてゲイン0dBを設定して撮像されたものである場合には「低ゲイン画像」と呼ばれる場合があり、炎が含まれている低輝度画像の場合には、「低輝度炎画像」又は「低輝度ゲイン炎画像」と呼ばれる場合がある。また、炎が含まれていない低輝度画像としては、後述する炎検知装置12の炎候補判定部16で炎候補と判定されたものの、炎判定部22で炎と判定されなかった低輝度画像が該当する。
【0059】
(a3.撮像条件変更による炎画像)
次に、監視カメラに第1撮像条件を設定した場合の通常炎画像と第2撮像条件を設定した場合の低輝度炎画像について説明する。当該説明にあっては、第1撮像条件としてゲイン10dBを設定して炎を撮像した通常ゲイン炎画像と第2撮像条件としてゲイン0dBを設定して炎を撮像した低ゲイン炎画像を示した
図2を参照する。尚、
図2(A)は第1撮像条件で撮像した通常ゲイン炎画像を示し、
図2(B)は第2撮像条件で撮像した低ゲイン炎画像を示す。
【0060】
図2(A)に示す通常ゲイン炎画像26は、第1撮像条件として監視カメラ10の撮像部にゲイン10dBを設定して撮像した画像であり、炎の部分が炎からの光の影響を受けRGBの画素値がダイナミックレンジの最大値を超えて飽和する所謂「白飛び」により白色となり画像からでは正しく炎の色を捉えることができずに、通常ゲイン炎画像26に基づく炎検知では同じく白色となる別の物体や光源等を炎として誤検出する可能性がある。
【0061】
また、通常ゲイン炎画像26では、炎の周囲の床面も炎からの光を反射して白っぽくなっており、また、レンズフレア等の影響により画像上では炎の形状が変化しており、通常ゲイン炎画像26からでは炎の色、形状及び模様(テクスチャ)を正確に捉えることは困難となっている。
【0062】
これに対して、
図2(B)に示す低ゲイン炎画像28は、第2撮像条件として監視カメラ10の撮像部にゲイン0dBを設定して撮像した画像であり、炎の部分のRGBの画素値がダイナミックレンジの範囲内に入って階調が識別可能となっており、炎の色、形状及び模様(テクスチャ)を鮮明に捉えることを可能としている。
【0063】
[b.第1実施形態の炎検知装置]
続いて、第1実施形態の炎検知装置について説明する。当該説明にあっては、同様に第1実施形態の炎検知装置を示した
図1を参照する。
【0064】
炎検知装置12は、ハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、画像受信部14、炎候補判定部16、撮像制御部18、動画ストリーム生成部20及び炎判定部22が設けられている。
【0065】
(b1.画像受信部)
まず、画像受信部14について説明する。画像受信部14は監視カメラ10から伝送された動画データ、即ちRGBフレーム画像の画像データを逐次受信(取得)してメモリ上に記憶するものである。例えば、画像受信部14に対しては少なくともの2フレーム分のフレームメモリ領域が確保され、所定の1フレーム分のフレームメモリ領域に監視カメラ10から伝送されたフレーム画像の画像データを書き込み、これと並行して異なるフレームメモリ領域に書き込まれていたフレーム画像の画像データを読み出す処理を可能としている。
【0066】
(b2.炎候補判定部)
次に、炎候補判定部16について説明する。炎候補判定部16は、画像受信部14で取得された通常画像が所定の炎候補判定条件を充足した場合に、通常画像に炎が含まれている可能性があるとして炎候補と判定し、判定結果を撮像制御部18へ出力する。
【0067】
炎候補判定部16の炎候補判定条件は任意であるが、例えば通常画像内で白色となる画素数が所定値以上又は所定値を超えた場合に炎候補と判定する炎候補判定条件を設定している。
【0068】
ここで、通常画像内に高輝度の光源となる炎が存在する場合には、例えば
図2(A)に示したように、炎の部分が炎からの光の影響を受けRGBの画素値がダイナミックレンジの最大値を超えて飽和する「白飛び」により白色となり、また、炎の周囲の床面も炎からの光を反射して白っぽくなる。このため、監視カメラ10から取得した通常画像の白色となる画素数が炎候補判定条件として設定した所定値以上又は超えることから、通常画像に炎が含まれている場合に炎候補と判定することが可能となる。
【0069】
(b3.撮像制御部)
次に、撮像制御部18について説明する。撮像制御部18は、炎候補判定部16から炎候補の判定結果が出力されていない状態では監視カメラ10の撮像条件設定部24に第1撮像条件の設定を指示しており、このため、監視カメラ10は、通常、第1撮像条件の設定により撮像された通常画像を炎検知装置12の画像受信部14に伝送している。
【0070】
これに対して、炎候補判定部16から炎候補の判定結果が出力された場合には、撮像制御部18は、監視カメラ10の撮像条件設定部24に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定を指示し、監視カメラ10から第1撮像条件で撮像された通常画像と第2撮像条件で撮像された低輝度画像を交互に炎検知装置12の画像受信部14に伝送させる制御を行う。
【0071】
このように、撮像制御部18が監視カメラ10の撮像条件設定部24に対して第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定の指示を行うことで、画像受信部14は、例えば
図2(A)に示した第1撮像条件で撮像された通常ゲイン炎画像26と第2撮像条件で撮像された低ゲイン炎画像28をフレーム単位で交互に繰り返すフレーム画像の画像データを取得することになる。
【0072】
(b4.動画ストリーム生成部)
次に、動画ストリーム生成部20について説明する。動画ストリーム生成部20は、撮像条件設定部24により設定された撮像条件で撮像され、画像受信部14により監視カメラ10から取得したフレーム画像の画像データに基づき、対応する第1動画ストリーム信号E1、第2動画ストリーム信号E2、第3動画ストリーム信号E3を出力する。
【0073】
動画ストリーム生成部20から出力される第1動画ストリーム信号E1は、画像受信部14で監視カメラ10から逐次受信したフレーム画像の画像データを動画ストリームとしてそのまま出力する信号であり、炎候補判定部16により炎候補が判定されていない場合には、第1撮像条件の設定で撮像された通常画像からなる通常動画ストリームの出力となる。このため、防災監視システムを構成する防災監視室等に設置されたモニタ装置等へ通常動画ストリームを伝送して表示させることで、通常時には監視領域の状況を監視可能とする。
【0074】
これに対して、炎候補判定部16で炎候補が判定された場合には、第1動画ストリーム信号E1は、第1撮像条件と第2撮像条件を交互に切り替えて撮像された通常画像と低輝度画像を交互に繰り返す混在動画ストリームとなる。
【0075】
例えば、第1撮像条件としてゲイン10dBが設定され、第2撮像条件としてゲイン0dBが設定され、第1撮像条件と第2撮像条件をフレーム単位で切り替える場合には、
図3(A)に示すような第1撮像条件により撮像された通常ゲイン炎画像26と第2撮像条件により撮像された低ゲイン炎画像28をフレーム単位で交互に繰り返す混在動画ストリーム30の出力となる。
【0076】
このため、混在動画ストリーム30を防災監視室等のモニタ装置へ伝送して表示した場合には、炎の部分に対応した白色の領域の中に炎の画像が重ねて表示された混合画像となり、通常ゲイン炎画像26と低ゲイン炎画像28それぞれのフレームレートが炎候補判定部16により炎候補が判定されていない場合通の通常動画ストリームの半分になるため、画面のちらつきが感じられる低画質の画像となるが、当該画像から監視領域の様子を監視しつつ炎の有無を容易に識別できる。
【0077】
また、動画ストリーム生成部20から出力される第2動画ストリーム信号E2は、炎候補判定部16で炎候補が判定された場合に、第1撮像条件と第2撮像条件を交互に切り替えて撮像された通常画像と低輝度画像の内、第1撮像条件により撮像された通常画像を抽出して並べた通常動画ストリームを出力する。
【0078】
例えば、第1動画ストリーム信号E1として、
図3(A)に示す混在動画ストリーム30を出力している場合には、通常ゲイン炎画像26と低ゲイン炎画像28の中から通常ゲイン炎画像26を抽出して並べた
図3(B)に示す通常動画ストリーム32の出力となる。通常動画ストリーム32は、監視カメラ10から画像データが毎秒60フレームで伝送されている場合には半分の毎秒30フレームで出力される。
【0079】
このため、通常動画ストリーム32を防災監視室等のモニタ装置に伝送して表示した場合には、炎の部分が白飛びにより白色となった通常画像(通常ゲイン炎画像)が表示され、当該画像から炎の有無の識別は困難であるが、監視領域の様子を監視することができる。
【0080】
また、動画ストリーム生成部20から出力される第3動画ストリーム信号E3は、炎候補判定部16で炎候補が判定された場合に、第1撮像条件と第2撮像条件を交互に切り替えて撮像された通常画像と低輝度画像の内、第2撮像条件により撮像された低輝度画像を抽出して並べた低輝度動画ストリームを出力する。
【0081】
例えば、第1動画ストリーム信号E1として、
図3(A)に示す混在動画ストリーム30を出力している場合には、通常ゲイン炎画像26と低ゲイン炎画像28の中から低ゲイン炎画像28を抽出して並べた
図3(C)に示す炎動画ストリーム34の出力となる。炎動画ストリーム34は、通常動画ストリーム32と同様に、監視カメラ10から毎秒60フレームで伝送されている場合には半分の毎秒30フレームで出力される。
【0082】
このため、炎動画ストリーム34を防災監視室等のモニタ装置に伝送して表示した場合には、黒色の背景の中に、炎の色、形状及び模様(テクスチャ)が鮮明に識別可能な炎画像(低ゲイン炎画像)が表示され、当該画像から監視領域の様子を監視することは困難であるが、炎の有無は容易に識別できる。
【0083】
尚、炎候補判定部16で炎候補が判定された場合には、表示される通常動画ストリームから監視領域全体の様子を監視可能となると共に、表示される低輝度動画ストリームから炎の有無を容易に識別可能となることから、炎候補判定部16で炎候補が判定された場合には混在動画ストリームの表示(第1動画ストリーム信号E1の出力)は行わないようにしてもよい。
【0084】
また、炎候補判定部16により炎候補が判定されていない場合には、画像受信部14は通常画像のみ取得していることから第1動画ストリーム信号E1(通常動画ストリーム)の出力とし、第2動画ストリーム信号E2及び第3動画ストリーム信号E3の出力は行われていないが、第2動画ストリーム信号E2及び第3動画ストリーム信号E3として、通常動画ストリームを出力することを妨げるものではない。
【0085】
(b5.炎判定部)
次に、炎判定部22について説明する。炎判定部22は、監視カメラ10から取得した低輝度画像が所定の炎判定条件を充足した場合に炎と判定して、判定結果(炎検知装置としての検知結果)を炎検知信号E4として防災監視システムを構成する火災報知設備の受信機等へ出力する。
【0086】
実施形態にあっては、炎判定部22が判定するための低輝度画像を取得するために、例えば炎判定部22に動画ストリーム生成部20から出力される第3動画ストリーム信号E3、即ち第2撮像条件により撮像された低輝度画像を抽出して並べた低輝度動画ストリームが入力されるように構成されている。そして、監視領域で火災が発生した場合には、
図3(C)に示したような低ゲイン炎画像28を抽出して並べた炎動画ストリーム34が炎判定部22に入力されることになり、炎動画ストリーム34に含まれる所定数(1又は複数)の低ゲイン炎画像28が所定の炎判定条件を充足した場合に炎判定部22は炎と判定する。
【0087】
炎判定部22の炎判定条件は任意であるが、例えば低輝度画像から炎の色、形状又は模様の少なくとも何れかが炎固有の判定条件を充足した場合に炎と判定する。
【0088】
例えば、炎判定部22の炎判定条件として炎固有な色による炎判定条件を充足した場合に炎と判定するとした場合には、炎判定部22は、監視カメラ10から取得したRGBフレーム画像、即ちRGB色空間で表現された低輝度画像をHSV色空間のHSV画像に変換する。
【0089】
また、炎判定部22は、
図4に示すHSV色空間36の中に、炎固有の色として、例えば「橙色」を識別するための炎識別空間38を設定している。ここで、HSV色空間36では、円周方向が色相Hを示し、半径方向が彩度Sを示し、縦軸方向が輝度Vを示し、色相Hについて、赤が0°、黄が60°であることから、例えば炎識別空間38の色相Hは0°~60°の範囲に設定され、彩度Sは輝度V及び所定値に基づいて範囲が設定され、輝度Vは所定の範囲に設定されている。
【0090】
そして、炎判定部22は、HSV色空間で表現された画像に変換された低輝度画像の画素に対して、例えば炎識別空間38に属する炎画素数を求め、別途炎の輪郭部で囲まれた領域となる炎輪郭領域内の領域画素数を求め、領域画素数と炎画素数との比率(=炎画素数/領域画素数)を算出し、当該比率が所定値以上又は所定値を超えた場合に炎判定条件を充足したとして炎と判定する。
【0091】
また、炎の判定精度を高めるために、炎の色、形状又は模様の少なくとも何れかではなく、複数又は全ての判定条件を充足した場合に炎と判定するようにしてもよい。また、炎判定部22による炎の判定は、先行技術文献として前述した特許文献1や特許文献2に示された公知の炎判定を行うようにしてもよい。このような公知の炎判定を利用する場合にも、黒色の(暗い)背景の中に、炎の色、形状及び模様が鮮明に表示された低ゲイン炎画像28のような低輝度画像を対象に炎判定部22による炎の判定が行われるため、炎以外の背景による影響を受けず、高精度の炎判定が可能となる。
【0092】
[c.第1実施形態の炎検知の処理動作]
続いて、第1実施形態の炎検知装置による炎検知の処理動作について説明する。当該説明にあっては、
図1の炎検知装置の処理動作を示したフローチャートとなる
図5を参照する。
【0093】
図5に示すように、炎検知装置12の画像受信部14は、第1撮像条件の設定で撮像した通常画像を監視カメラ10から取得する(ステップS1)。続いて、炎検知装置12の炎候補判定部16は、画像受信部14で取得した通常画像を対象に炎候補の判定処理を行う(ステップS2)。
【0094】
炎候補判定部16で炎候補を判定した場合には、炎検知装置12の撮像制御部18は、監視カメラ10の撮像条件設定部24に対して第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定を指示し、画像受信部14は、監視カメラ10から通常画像と低輝度画像を交互に含む画像を取得する(ステップS3~S5)。
【0095】
続いて、炎検知装置12の動画ストリーム生成部20は、画像受信部14で取得した通常画像と低輝度画像を交互に含む画像から第2撮像条件で撮像した低輝度画像を抽出して並べた低輝度動画ストリームを炎判定部22に出力し、炎検知装置12の炎判定部22は、動画ストリーム生成部20から出力された低輝度動画ストリームに含まれる低輝度画像に基づき炎の判定を行う(ステップS6~S7)。
【0096】
炎判定部22で炎を判定した場合には、判定結果(検知結果)を炎検知信号として出力し、例えば防災監視システムを構成する火災報知設備の受信機等で火災警報を出力させる(ステップS8~S9)。
【0097】
一方、ステップS3で炎候補判定部16が炎候補を判定しない場合、及び炎判定部22が炎を判定しない場合(ステップS8のNo)には、最初に処理が戻る(ステップS1)。尚、炎候補判定部16が炎候補を判定しない場合(ステップS3のNo)、及び炎判定部22が炎を判定しない場合(ステップS8のNo)であっても、その判定結果を外部の受信機等に出力するようにしても良い。
【0098】
[d.第2実施形態の炎検知装置]
続いて、第2実施形態の炎検知装置について説明する。当該説明にあっては、第2実施形態の炎検知装置を示した
図6を参照する。
【0099】
(d1.監視カメラ)
図6に示すように、炎検知装置12には、監視領域を撮像する撮像部を備えた監視カメラ10が接続され、監視カメラ10には撮像条件設定部24が設けられる。
図6に示した第2実施形態の監視カメラ10及び撮像条件設定部24は、
図1に示した第1実施形態と同様になることから、その説明は省略する。
【0100】
(d2.炎検知装置)
次に、炎検知装置12について説明する。
図6に示した第2実施形態の炎検知装置12は、ハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、画像受信部14、撮像制御部18、動画ストリーム生成部20及び炎判定部22が設けられており、
図1に示した第1実施形態の炎検知装置12から炎候補判定部16を除いた構成としている。
【0101】
このため、第2実施形態にあっては、炎検知装置12が動作を開始すると、撮像制御部18は監視カメラ10の撮像条件設定部24に第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定を指示し、第1撮像条件の設定で撮像された通常画像と第2撮像条件の設定で撮像された低輝度画像を監視カメラ10から交互に伝送させる制御を行う。
【0102】
また、炎検知装置12に設けられた画像受信部14、動画ストリーム生成部20及び炎判定部22の構成及び機能は、
図1に示した第1実施形態と同様になることから、その説明は省略する。
【0103】
(d3.第2実施形態の炎検知の処理動作)
続いて、第2実施形態の炎検知装置による炎検知の処理動作について説明する。当該説明にあっては、
図6の炎検知装置の処理動作を示したフローチャートとなる
図7を参照する。
【0104】
図7に示すように、炎検知装置12の撮像制御部18は、監視カメラ10の撮像条件設定部24に対して第1撮像条件と第2撮像条件を交互に繰り返す設定を指示し、画像受信部14は、監視カメラ10から通常画像と低輝度画像を交互に含む画像を取得する(ステップS11~S12)。
【0105】
続いて、炎検知装置12の動画ストリーム生成部20は、画像受信部14で取得した通常画像と低輝度画像を交互に含む画像から第2撮像条件で撮像した低輝度画像を抽出した低輝度動画ストリームを炎判定部22に出力し、炎検知装置12の炎判定部22は、動画ストリーム生成部20から出力された低輝度動画ストリームに含まれる低輝度画像に基づき炎の判定処理を行う(ステップSS13~14)。
【0106】
炎判定部22で炎を判定した場合には、判定結果(検知結果)を炎検知信号として出力し、例えば防災監視システムを構成する火災報知設備の受信機等で火災警報を出力させる(ステップS15~S16)。
【0107】
一方、炎判定部22が炎を判定しない場合(ステップS15のNo)には、最初に処理が戻る(ステップS1)。尚、炎判定部22が炎を判定しない場合(ステップS15のNo)であっても、その判定結果を外部の受信機等に出力するようにしても良い。
【0108】
[e.本発明の変形例]
本発明による炎検知装置及び炎検知方法の変形例について説明する。本発明の炎検知装置及び炎検知方法は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0109】
(監視カメラの撮像条件)
上記の実施形態にあっては、監視カメラの撮像部に対する第1撮像条件と第2撮像条件の設定として、監視カメラのゲイン、露光時間、絞り開度の設定を例にとっているが、これに限定されず、例えば監視カメラの光学系に透明度を制御可能な液晶フィルタを設け、第1撮像条件の設定として液晶フィルタを透明状態とし、第2撮像条件の設定として液晶フィルタを駆動して減光率を高くすることで、撮像部に対する光量を減少させるようにしてもよい。
【0110】
(第1撮像条件と第2撮像条件の切替)
また、上記の実施形態にあっては、監視カメラ10での第1撮像条件と第2撮像条件の設定切替を1フレーム単位に行っているが、複数のフレーム単位で監視カメラ10での第1撮像条件と第2撮像条件の設定切替を行うようにしてもよい。
【0111】
(炎判定部)
上記の実施形態は、監視カメラ10を接続した炎検知装置12に炎判定部22を設けて炎を判定しているが、別の装置を用意し、その装置に炎判定部22を設けて炎を判定してもよい。この場合には、当該炎判定部22を設けた装置に対して炎検知装置12から少なくとも第3動画ストリーム信号E3を出力できるようにすれば良く、合わせて第1動画ストリーム信号E1及び第2動画ストリーム信号E2を炎検知装置12から当該炎判定部22を設けた装置に出力できるようにしても良い。
【0112】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0113】
10:監視カメラ
12:炎検知装置
14:画像受信部
16:炎候補判定部
18:撮像制御部
20:動画ストリーム生成部
22:炎判定部
24:撮像条件設定部
26:通常ゲイン炎画像
28:低ゲイン炎画像
30:混在動画ストリーム
32:通常動画ストリーム
34:炎動画ストリーム
36:HSV色空間
38:炎識別空間