(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141308
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】危険事象への対応情報を提示可能な危険対応提示プログラム、装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052886
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】上坂 大輔
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】所定の危険事象への対応に係る対応情報を、提示対象の危険事象に対する思い・考えや意識も考慮して、生成し提示することが可能な危険対応提示プログラムを提供する。
【解決手段】本プログラムは、提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、提示対象の危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、提示対象の危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、提示対象の決定された対象危険度と、危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、対応情報を生成し出力する対応情報生成手段としてコンピュータを機能させる。ここで所定の危険事象は、地震、津波、高潮、土砂災害、火山災害、及び洪水のうちの少なくとも1つを含むことも好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示プログラムであって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする危険対応提示プログラム。
【請求項2】
前記対象危険度決定手段は、当該パーソナリティスコアが当該基準範囲から逸脱している場合、当該リスク意識スコアが当該基準範囲から逸脱している場合、又は当該パーソナリティスコア及び当該リスク意識スコアの両方が当該基準範囲から逸脱している場合、当該提示対象の危険の度合いが高いことを示す当該対象危険度を決定することを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項3】
前記対象危険度決定手段は、複数の当該パーソナリティスコア及び/又は複数の当該リスク意識スコアにおける、当該基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いを示す数値の合計に基づき、当該対象危険度を決定することを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項4】
前記対象危険度決定手段は、複数の当該パーソナリティスコア及び/又は複数の当該リスク意識スコアにおいて、当該基準範囲から逸脱するものが所定個以上存在するか否かに基づき、当該対象危険度を決定することを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項5】
当該提示対象の取得された位置情報に係る位置を含む地域についての警戒レベル相当情報を取得し、当該警戒レベル相当情報から、当該危険事象による被害が当該提示対象に生じる可能性を示す当該警戒レベル情報を決定する警戒レベル決定手段としてコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項6】
当該提示対象の取得された位置情報と、予め設定された避難に係る場所の位置情報とから、当該提示対象が避難したか否かに係る避難行動スコアを決定する避難行動判定手段としてコンピュータを更に機能させ、
前記対応情報生成手段は、当該提示対象の決定された避難行動スコアにも基づいて、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項7】
当該警戒レベル情報と、当該提示対象の取得された所定の属性情報とに基づき、当該提示対象が避難すべきか否かに係る避難要否スコアを決定する避難要否決定手段としてコンピュータを更に機能させ、
前記対応情報生成手段は、当該提示対象の決定された避難要否スコアにも基づいて、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項8】
前記対応情報生成手段は、当該危険事象に対する準備の提案に係る当該対応情報、及び/又は、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の危険対応提示プログラム
【請求項9】
前記対応情報生成手段は、当該対象危険度及び/又は当該警戒レベル情報に応じた音量及び/又は頻度を有する音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報であって、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項10】
前記対応情報生成手段は、当該提示対象の取得された所定の属性情報、当該提示対象の当該パーソナリティスコア、及び当該リスク意識スコアのうちの少なくとも1つに基づき、当該対応情報を生成するか否か、当該対応情報の提示に係る表現、及び当該対応情報の提示の方法若しくはやり方のうちの少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項11】
当該所定の危険事象は、地震、津波、高潮、土砂災害、火山災害、及び洪水のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の危険対応提示プログラム。
【請求項12】
所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示装置であって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
を有することを特徴とする危険対応提示装置。
【請求項13】
前記対応情報生成手段は、当該対象危険度及び/又は当該警戒レベル情報に応じた音量及び/又は頻度を有する音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報であって、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成し、
当該音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報を、音若しくは音声として出力可能な音声出力デバイスを更に有する
ことを特徴とする請求項12に記載の危険対応提示装置。
【請求項14】
所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示システムであって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
を有することを特徴とする危険対応提示システム。
【請求項15】
所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示方法であって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定するステップと、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力するステップと
を有することを特徴とする、コンピュータによって実施される危険対応提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然災害等の危険事象への対応を提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然災害に如何に対処するかが重大な問題となっている。ここで自然災害の発生を的確に把握して確実な避難の勧告・指示を行ったり、自然災害のリスクを事前に把握して災害に対する適切な準備を促したりすることが強く求められてきた。
【0003】
ここで、災害時における避難行動を支援する技術として、例えば特許文献1には、携帯端末装置と複数の避難指示装置とをネットワークで接続した避難経路取得システムが開示されている。このシステムにおいて、携帯端末装置は、複数の避難指示装置との位置関係を演算して、この演算結果に基づき、複数の避難指示装置の中から所定の避難指示装置を選択し、選択した避難指示装置から受信された避難経路情報を表示する。特許文献1はこれにより、ユーザに対し現状に即した避難経路を提供して、より確実に且つより安全に避難誘導を行うことができる、としている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、避難管理サーバとユーザの移動通信端末とを含む避難支援システムが開示されている。このシステムでは、避難管理サーバは、ユーザの移動通信端末の現在位置情報と、ユーザに関するユーザ情報と、複数の避難所(A~C)の位置情報及び施設に関する情報を含む避難所情報とに基づいて、ユーザに適した推奨避難所を選定し、移動通信端末に推奨避難所の情報を送信する。移動通信端末は、推奨避難所までのルートを探索し、ユーザを誘導する。特許文献2はこれにより、避難者に対して必ずしも最寄りの避難所ではなく、避難所の施設に関する情報に基づいて最適な避難所を推奨できる、としている。
【0005】
さらに、非特許文献1には、災害発生直後の通信ネットワークが利用できない状態でも利用を可能とし、また携帯電話から利用でき、且つ平常時から災害時の機能を事前体験することも可能なオフライン対応型災害時避難支援システムが提案されている。このシステムは、避難支援情報の閲覧や登録を行うことも可能とし、さらに、電子情報媒体の防災マップとして活用可能な設計にもなっている。
【0006】
さらにまた、非特許文献2には、ハザードマップアプリと連携しながら、行動選択フローで順次必要とされる情報の入力を支援する機能を備えた、水害・土砂災害時の避難行動選択支援アプリが提案されている。このアプリは、所在地に応じた避難行動の選択を支援すべく、行動選択フローで入力された災害の種類に対して、想定される災害状況をハザードマップアプリから自動で取得し、行動選択フローに反映する仕組みを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-267844号公報
【特許文献2】特開2015-195030号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】吉村考,濱村朱里,福島拓,江種伸之,「オフライン対応型災害時避難支援システム”あかりマップ”の構築」,和歌山大学防災研究教育センター紀要,第1巻,pp.13-20,2015年
【非特許文献2】北川悠一,佐野 将,田中孝治,堀 雅洋,「行動選択フローとハザードマップの連携による水害・土砂災害時の 避難行動選択支援アプリの開発と評価」,情報処理学会研究報告, VoL.2020-IS-151,No.4,2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1及び2、並びに非特許文献1及び2に開示された装置やシステムのように、従来、災害時における避難の意思決定や避難行動を支援する技術が、広く開発されてきた。このような従来技術においては、その多くが、支援対象者の置かれている客観的な状況に基づき支援情報を決定している。
【0010】
ここで実際、避難の意思決定や避難行動の内容は、支援対象者の置かれている客観的な状況だけでなく、支援対象者が災害に対し如何なる思い・考え、例えばバイアス(思考の偏り)を抱いているか、さらには、災害をどのように捉えているか若しくは意識しているかに大きく依存する。しかしながら従来、支援対象者の災害に対する思い・考えや意識も考慮して支援情報を決定することは、なされてこなかったのが実情である。そのため、例えば支援対象者毎に、その者にとって効果的な支援情報を提示することは、非常に困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、所定の危険事象への対応に係る対応情報を、提示対象の危険事象に対する思い・考えや意識も考慮して、生成し提示することが可能な危険対応提示プログラム、装置、システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示プログラムであって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
してコンピュータを機能させる危険対応提示プログラムが提供される。
【0013】
この本発明による危険対応提示プログラムの対象危険度決定手段は、当該パーソナリティスコアが当該基準範囲から逸脱している場合、当該リスク意識スコアが当該基準範囲から逸脱している場合、又は当該パーソナリティスコア及び当該リスク意識スコアの両方が当該基準範囲から逸脱している場合、当該提示対象の危険の度合いが高いことを示す当該対象危険度を決定することも好ましい。
【0014】
また、この対象危険度決定手段は、複数の当該パーソナリティスコア及び/又は複数の当該リスク意識スコアにおける、当該基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いを示す数値の合計に基づき、当該対象危険度を決定することも好ましい。
【0015】
さらに、この対象危険度決定手段は、複数の当該パーソナリティスコア及び/又は複数の当該リスク意識スコアにおいて、当該基準範囲から逸脱するものが所定個以上存在するか否かに基づき、当該対象危険度を決定することも好ましい。
【0016】
また、本発明による危険対応提示プログラムの一実施形態として、本危険対応提示プログラムは、当該提示対象の取得された位置情報に係る位置を含む地域についての警戒レベル相当情報を取得し、当該警戒レベル相当情報から、当該危険事象による被害が当該提示対象に生じる可能性を示す当該警戒レベル情報を決定する警戒レベル決定手段としてコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【0017】
さらに、本発明による危険対応提示プログラムの他の実施形態として、本危険対応提示プログラムは、当該提示対象の取得された位置情報と、予め設定された避難に係る場所の位置情報とから、当該提示対象が避難したか否かに係る避難行動スコアを決定する避難行動判定手段としてコンピュータを更に機能させ、
対応情報生成手段は、当該提示対象の決定された避難行動スコアにも基づいて、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することも好ましい。
【0018】
また、本発明による危険対応提示プログラムの更なる他の実施形態として、本危険対応提示プログラムは、当該警戒レベル情報と、当該提示対象の取得された所定の属性情報とに基づき、当該提示対象が避難すべきか否かに係る避難要否スコアを決定する避難要否決定手段としてコンピュータを更に機能させ、
対応情報生成手段は、当該提示対象の決定された避難要否スコアにも基づいて、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することも好ましい。
【0019】
さらに、本発明による危険対応提示プログラムの対応情報生成手段は、当該危険事象に対する準備の提案に係る当該対応情報、及び/又は、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することも好ましい。
【0020】
また、本発明による危険対応提示プログラムの対応情報生成手段は、具体的に、当該対象危険度及び/又は当該警戒レベル情報に応じた音量及び/又は頻度を有する音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報であって、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成することも好ましい。
【0021】
さらに、本発明による危険対応提示プログラムの更なる他の実施形態として、対応情報生成手段は、当該提示対象の取得された所定の属性情報、当該提示対象の当該パーソナリティスコア、及び当該リスク意識スコアのうちの少なくとも1つに基づき、当該対応情報を生成するか否か、当該対応情報の提示に係る表現、及び当該対応情報の提示の方法若しくはやり方のうちの少なくとも1つを決定することも好ましい。
【0022】
また、本発明に係る所定の危険事象は、具体的に、地震、津波、高潮、土砂災害、火山災害、及び洪水のうちの少なくとも1つを含むことも好ましい。
【0023】
本発明によれば、また、所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示装置であって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
を有する危険対応提示装置が提供される。
【0024】
この本発明による危険対応提示装置の一実施形態として、対応情報生成手段は、当該対象危険度及び/又は当該警戒レベル情報に応じた音量及び/又は頻度を有する音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報であって、当該危険事象からの避難の要請に係る当該対応情報を生成し、
本危険対応提示装置は、当該音若しくは音声に係る情報としての当該対応情報を、音若しくは音声として出力可能な音声出力デバイスを更に有することも好ましい。
【0025】
本発明によれば、さらに、所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示システムであって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定する対象危険度決定手段と、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力する対応情報生成手段と
を有する危険対応提示システムが提供される。
【0026】
本発明によれば、さらにまた、所定の危険事象への対応に係る対応情報を提示対象に提示可能な危険対応提示方法であって、
当該提示対象の性格若しくは心理特性に係る得られたパーソナリティスコア、及び/又は、当該提示対象の当該危険事象に対する意識若しくは関心に係る得られたリスク意識スコアにおける、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、当該提示対象の当該危険事象に係る危険度である対象危険度を決定するステップと、
当該提示対象の決定された対象危険度と、当該危険事象による被害が生じる可能性を示す得られた警戒レベル情報とに基づき、当該対応情報を生成し出力するステップと
を有することを特徴とする、コンピュータによって実施される危険対応提示方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の危険対応提示プログラム、装置、システム及び方法によれば、所定の危険事象への対応に係る対応情報を、提示対象の危険事象に対する思い・考えや意識も考慮して、生成し提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による危険対応提示装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明に係る対象危険度決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【
図3】本発明に係る避難要否決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【
図4】本発明に係る対応情報生成処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
[危険対応提示装置・システム]
図1は、本発明による危険対応提示装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
図1に示した、本発明による危険対応提示装置の一実施形態としてのスマートフォン1は、所定の危険事象(本実施形態では自然災害)への対応に係る「対応情報」を、提示対象(本実施形態ではスマートフォン1のユーザ)に提示可能な装置となっている。このスマートフォン1は、具体的に、
(A)(a1)提示対象(ユーザ)の性格若しくは心理特性に係る「パーソナリティスコア」、及び(a2)提示対象(ユーザ)の危険事象(自然災害)に対する意識若しくは関心に係る「リスク意識スコア」のうちの一方又は両方における、予め設定された基準範囲からの逸脱の有無若しくは度合いに基づき、提示対象(ユーザ)の危険事象(自然災害)に係る危険度である「対象危険度」を決定する対象危険度決定部112と、
(B)提示対象(ユーザ)の決定された「対象危険度」と、危険事象(自然災害)による被害が生じる可能性を示す「警戒レベル情報」とに基づき、「対応情報」を生成し出力する対応情報生成部116と
を有している。
【0032】
ここで、上記(B)で生成される「対応情報」は、本実施形態において、
(b1)危険事象(自然災害)に対する準備の提案に係る準備提案情報、例えば(備蓄提案等の)防災提案情報、及び
(b2)危険事象(自然災害)からの避難の要請に係る避難要請情報、例えば後述する避難要請アラート
のうちの一方又は両方となっている。
【0033】
このように、スマートフォン1は、提示対象(ユーザ)における上記(a1)の「パーソナリティスコア」や上記(a2)の「リスク意識スコア」を用いて、具体的には当該スコアにおける基準範囲からの逸脱の有無や度合いに基づき「対象危険度」を決定し、この「対象危険度」を用いて「対応情報」を生成している。これにより、危険事象(自然災害)への対応に係る「対応情報」を、提示対象(ユーザ)の危険事象(自然災害)に対する思い・考えや意識も考慮して、生成し提示することが可能となるのである。
【0034】
例えば、あくまで提示内容設定のごく単純な例であってこれに限定されるものではないが、神経症傾向が顕著に低い(設定された基準範囲から逸脱している)ユーザに対しては、危険事象(自然災害)に対する楽観主義バイアスが働きやすいとして、より強めの又はより高頻度の避難要請アラートを発し(提示し)、必要な避難行動をとることをより強く促すこともできる。このように、提示対象(ユーザ)の危険事象(自然災害)に対する思い・考えや意識も考慮して「対応情報」を生成し提示することによって、例えば、個々の提示対象(ユーザ)がより確実に、危険事象(自然災害)に対し好適な対応をとるようにすることも可能となるのである。
【0035】
また本実施形態において、さらには以下の説明においても、所定の危険事象は、自然災害となっており、例えば地震、津波、高潮、土砂災害、火山災害、及び洪水のうちの少なくとも1つを危険事象とすることができる。ただし勿論、本発明に係る危険事象は自然災害に限定されるものではない。例えば(滞在先等で起こり得る)各種事故や犯罪、さらには(紛争地域等への)渡航・入国といったような、その事象についての危険レベルに係る情報が入手可能であって、その事象に対する提示対象(例えばユーザ)の思い・考えや意識がその事象への対応に影響を及ぼし得るような事象であれば、本発明に係る危険事象とすることができる。
【0036】
さらに、本実施形態のスマートフォン1は、上記(A)の対象危険度決定部112と、上記(B)の対応情報生成部116とをともに備えた装置となっているが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。例えば、対象危険度決定部112と対応情報生成部116とが互いに異なる装置に含まれていてもよい。さらに言えば、
図1の機能ブロック図に含まれる(後に詳述する)6つの機能構成部(111,112,113,114,115,116)のうちの少なくとも1つが、別の装置の機能構成部であるような形態をとることも可能である。このような場合であっても、これら全ての装置をもって、本発明による危険対応提示システムと捉えることができるのである。
【0037】
[装置機能構成,危険対応提示プログラム及び方法]
以下、以上に説明した危険対応提示装置としてのスマートフォン1の機能構成についてより詳細に説明を行う。ちなみに以下、スマートフォン1における、危険対応提示処理に関係しない機能構成の説明は省略する。
【0038】
同じく
図1の機能ブロック図によれば、スマートフォン1(危険対応提示装置)は本実施形態において、通信インタフェース部101と、GPS(Global Positioning System)測位部102と、ユーザ情報保存部103と、災害情報保存部104と、ユーザ測位情報保存部105と、スピーカ(SP)106と、タッチパネル・ディスプレイ(TP・DP)107と、プロセッサ・メモリ(メモリ機能を備えた演算処理系)とを有する。
【0039】
ここで、このプロセッサ・メモリは、本発明による危険対応提示プログラムの一実施形態を保存しており(例えば、スマートフォン1は本発明による危険対応提示アプリをインストールしており)、またコンピュータ機能を有していて、この危険対応提示プログラム(危険対応提示アプリ)を実行することによって、危険対応提示処理を実施する。またこのことから明らかなように、本発明による危険対応提示装置は、スマートフォン(1)に限定されず、本発明による危険対応提示プログラムを搭載した、例えばノート型若しくはタブレット型コンピュータ、パーソナル・コンピュータ(PC)や、危険対応提示処理用の専用装置、さらにはクラウドサーバや、非クラウド型サーバとすることも可能である。
【0040】
さらに、プロセッサ・メモリは、アンケート実施・評価部111と、バイアス判定部112aを含む対象危険度決定部112と、警戒レベル決定部113と、避難要否決定部114と、避難行動判定部115と、対応情報生成部116と、通信制御部121と、入出力制御部122とを有する。なおこれらの機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存された危険対応提示プログラムの実行によって具現する機能と捉えることができる。また、
図1におけるスマートフォン1(危険対応提示装置)の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による危険対応提示方法の一実施形態としても理解される。
【0041】
<アンケート実施・評価手段>
同じく
図1の機能ブロック図において、本実施形態のアンケート実施・評価部111は、スマートフォン1のユーザ(対応情報の提示対象)に対し、入出力制御部122及びタッチパネル・ディスプレイ107を介して、パーソナリティ調査質問紙(本実施形態では、Big Five質問紙)やリスク意識調査質問紙(本実施形態では、防災意識尺度質問紙)を表示し、このユーザによる回答入力を取得して、その回答結果から、このユーザの
(a)パーソナリティスコア、本実施形態ではbig Fiveスコアである、外向性スコア、調和性スコア、誠実性スコア、神経症傾向スコア、及び開放性スコアと、
(b)リスク意識スコア、本実施形態では防災意識尺度である、被災状況想像力スコア、災害危機感スコア、他者指向性スコア、災害に対する関心スコア、及び災害に対する不安スコアと
を決定し、決定したこれらのスコアを、ユーザ情報保存部103において保存・管理させる。
【0042】
ここで、上記(a)のBigFiveスコアを導出するためのBig Five質問紙として、日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)等の、パーソナリティを少ない設問で測定可能な質問紙を採用することも好ましい。TIPI-Jは、例えば非特許文献:小塩真司他,「日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)作成の試み」,パーソナリティ研究,21巻,1号,pp.40-52,2012年 において提案されたBig Five質問紙である。具体的に、10個の質問に対し「1:全く違うと思う」~「7:強くそう思う」の7つのいずれかをもって回答させるだけで、上記(a)の5つのBig Fiveスコアを導出することができるので、スマートフォン1のタッチパネル・ディスプレイ107を介してのパーソナリティ調査に非常に適した質問紙となっている。
【0043】
また上記(b)の防災意識尺度は、防災科学技術研究所(NIED)が提供する防災意識を表す尺度である。具体的に防災意識尺度は、20個の質問からなる防災意識尺度質問紙に対する回答結果から導出される、上記(b)の5つのスコアで構成される。ちなみに防災意識尺度調査紙によれば、これらのスコアの合計としての綜合点(総合スコア)も導出されるが、アンケート実施・評価部111は、この総合スコアも、リスク意識スコア(の1つ)として決定してもよい。
【0044】
ちなみに、アンケート実施・評価部111は、(本発明による)危険対応提示アプリがスマートフォン1へインストール(ダウンロード)されて起動した際、上述したような調査質問紙をユーザに表示・提示して、ユーザからの回答を収集するように設定されていてもよい。またその際、後に必要となる
(c)ユーザの年齢を含むユーザ属性情報、及び
(d)例えば(自宅や職場付近の)公民館や学校といったような、災害が生じた際の避難場所の位置情報である避難位置情報
も取得できるように設定されていることも好ましい。これにより、この後の処理に必要となる情報を、より確実に、すなわちユーザから直接、取得することが可能となるのである。なお本実施形態においては、取得された(c)ユーザ属性情報や(d)避難位置情報も、決定された(a)パーソナリティスコアや(b)リスク意識スコアに紐づけられて、ユーザ情報保存部103で保存・管理される。
【0045】
また変更態様として、(a)パーソナリティスコア(本実施形態ではbig Fiveスコア)や(b)リスク意識スコア(本実施形態では防災意識尺度)、さらには(c)ユーザの年齢を含むユーザ属性情報や(d)避難位置情報は、外部から、例えば(スマートフォン1に係る通信事業者が管理する)アンケート・登録情報管理サーバ3から、通信インタフェース部101及び通信制御部121を介し取得され、ユーザ情報保存部103において保存・管理されてもよい。
【0046】
<対象危険度決定手段>
同じく
図1の機能ブロック図において、本実施形態の対象危険度決定部112のバイアス判定部112aは、
(ア)ユーザ情報保存部103から取り出したユーザ(対応情報の提示対象)のパーソナリティスコア(BigFiveスコア)及びリスク意識スコア(防災意識尺度)から、それぞれ「パーソナリティバイアススコア」及び「リスク評価バイアススコア」を決定する。
次いで、対象危険度決定部112は、
(イ)決定した「パーソナリティバイアススコア」及び「リスク評価バイアススコア」に基づき、このユーザの自然災害(危険事象)に係る危険度である「対象危険度」を決定する。
【0047】
ここで上記(ア)の「パーソナリティバイアススコア」は、パーソナリティスコア(BigFiveスコア)から判断した、ユーザ(対応情報の提示対象)の危険事象(自然災害)に対する認知バイアスの有無又は度合いを示すスコアである。また「リスク評価バイアススコア」は、リスク意識スコア(防災意識尺度)から判断した、ユーザ(対応情報の提示対象)の危険事象(自然災害)に対する認知バイアスの有無又は度合いを示すスコアとなっている。
【0048】
これらの「バイアススコア」を決定するに当たり、本実施形態では、各パーソナリティスコア及び各リスク意識スコアに対し、当該スコアの値sについての基準範囲を予め決めておく。具体的には、基準範囲として、
(a)第1基準範囲:当該スコアの値sが(s_av-2σ)以上である範囲(s≧s_av-2σ)、又は
(b)第2基準範囲:当該スコアの値sが(s_av+2σ)以下である範囲(s≦s_av+2σ)
を取り決めておく。ここで、s_av及びσはそれぞれ、当該スコアの平均値及び標準偏差である。例えば、(BigFiveスコアの1つである)神経症的傾向スコアに対しては、この後説明する対象危険度への寄与を考慮して第1基準範囲(s≧s_av-2σ)が取り決められることも好ましい。
【0049】
次いで、ユーザ(対応情報の提示対象)についてのスコア(パーソナリティスコア,リスク意識スコア)であって、バイアススコアを決定する際に使用するスコア(以下、バイアス決定用スコアと略称)の値sが、このバイアス決定用スコアについて予め取り決められた基準範囲外となっているか否かを判定し、基準範囲外となっていれば、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」を1(:バイアス有り)とし、一方、基準範囲内であれば、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」を0(:バイアス無し)とする。例えば、第1基準範囲の取り決められた神経症的傾向スコアがバイアス決定用スコアならば、このバイアス決定用スコア(神経症的傾向スコア)の値sが、次式
(1) s<s_av-2σ
を満たす場合に、この「バイアス決定用スコア(神経症的傾向スコア)に係るバイアススコア」を1(:バイアス有り)とする。一方、バイアス決定用スコアにおいて第2基準範囲が取り決められているならば、このバイアス決定用スコアの値sが、次式
(2) s>s_av+2σ
を満たす場合に、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」を1(:バイアス有り)とするのである。
【0050】
ここで、ユーザの神経症的傾向スコアの値sが上式(1)のように基準範囲(第1基準範囲:s≧s_av-2σ)を下回っている場合、このユーザは、危険事象(自然災害)に対するリスクの見積もりが甘くなる傾向にあって楽観主義バイアスが働きやすいとして、「バイアス有り」と判定することができるのである。逆に言えば、このような判定が可能となるように、神経症的傾向スコアに対しては予め、第1基準範囲が取り決められる。またこの点、他のスコア(各パーソナリティスコア,各リスク意識スコア)についても、同様の考察の下、第1基準範囲又は第2基準範囲が取り決められ、次いで、取り決められた基準範囲を用いてバイアスの判定がなされるのである。例えば(防災意識尺度の1つである)災害危機感スコアについても、神経症的傾向スコアと同様の考察の下、第1基準範囲が予め取り決められてもよい。また、例えば(BigFiveスコアの1つである)開放性スコアについては、第2基準範囲が予め取り決められることも好ましい。
【0051】
なお、変更態様として、バイアス決定用スコアの値sが基準範囲(第1基準範囲,第2基準範囲)から逸脱している度合いを、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」とすることも可能である。例えば、第1基準範囲が取り決められたバイアス決定用スコアならば、次式
(3) da=(s_av-2σ)-s
で算出される逸脱度daを、0~1の値に規格化した上で、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」に決定してもよい。また、第2基準範囲が取り決められたバイアス決定用スコアならば、次式
(4) da'=s-(s_av+2σ)
で算出される逸脱度da'を、0~1の値に規格化した上で、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」に決定することも可能である。
【0052】
最後に上記(ア)の「パーソナリティバイアススコア」及び「リスク評価バイアススコア」を決定するに当たり、バイアス判定部112aは、
(a)パーソナリティスコア(BigFiveスコア)のうちの予め設定された1つ(例えば神経症的傾向スコア)をバイアス決定用スコアとして、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」を、「パーソナリティバイアススコア」に決定し、また、
(b)リスク意識スコア(防災意識尺度)のうちの予め設定された1つ(例えば災害危機感スコア)をバイアス決定用スコアとして、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」を、「リスク評価バイアススコア」に決定してもよい。
【0053】
また変更態様として、バイアス判定部112aは、
(a)パーソナリティスコア(BigFiveスコア)のうちの予め設定された複数個(例えば神経症的傾向スコア及び調和性スコアの2つ、又は(5つの)全て)をバイアス決定用スコアとして、これらの「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」の平均値を、「パーソナリティバイアススコア」に決定し、また、
(b)リスク意識スコア(防災意識尺度)のうちの予め設定された複数個(例えば災害危機感スコア及び他者指向性スコアの2つ、又は(5つの)全て)をバイアス決定用スコアとして、これらの「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」の平均値を、「リスク評価バイアススコア」に決定することも可能である。
【0054】
また更なる変更態様として、バイアス判定部112aは、
(a)パーソナリティスコア(BigFiveスコア)のうちの予め設定された複数個(例えば(5つの)全て)をバイアス決定用スコアとして、これらの「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」のうち、少なくとも所定個(例えば2つ、又は1つ)が1である場合に、「パーソナリティバイアススコア」を1(:バイアス有り)に決定し、また、
(b)リスク意識スコア(防災意識尺度)のうちの予め設定された複数個(例えば(5つの)全て)をバイアス決定用スコアとして、これらの「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」のうち、少なくとも所定個(例えば2つ、又は1つ)が1である場合に、「リスク評価バイアススコア」を1(:バイアス有り)に決定してもよい。
【0055】
以上、バイアス判定(バイアススコア決定)の種々の態様を説明したが、いずれにしても対象危険度決定部112(バイアス判定部112a)は、いわば平時のスコア(:パーソナリティスコアやリスク意識スコア)から、最終的に知りたい「危険事象が発生した際のユーザ(対応情報の提示対象)の特徴」(:認知バイアスが有る故の実際の危険度)を「推定」しているとも言えるのである。
【0056】
ここで、この「推定」において重要なパラメータとなる(平時のスコアの)平均値s_av及び標準偏差σは、例えばアンケート実施・評価部111が、他の多数のスマートフォン1から取り寄せた(当該スマートフォン1のユーザの)パーソナリティスコアやリスク意識スコアを集計して算出してもよい。また、外部のサーバ、例えばアンケート・登録情報管理サーバ3、において算出された平均値s_av及び標準偏差σや、外部の調査機関によって公表された、又は外部のデータベースから入手可能な、標準的な値としての平均値s_av及び標準偏差σを取り寄せて使用することも可能である。例えば、防災科学技術研究所(NIED)が提供する防災意識尺度の質問紙には、全国から無作為に抽出した618名の回答によって求められた防災意識尺度の各スコアにおける平均値、標準偏差や、偏差値が開示されている。
【0057】
図2は、本発明に係る対象危険度決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【0058】
図2(A)によれば、対象危険度決定部112のバイアス判定部112aは、BigFiveスコア(パーソナリティスコア)及び防災意識尺度(リスク意識スコア)から、上述した手法によって、ユーザ(対応情報の提示対象)のパーソナリティバイアススコア及びリスク評価バイアススコアを決定している。
【0059】
次いで対象危険度決定部112は、
図2(A)に示したテーブルを用いて、決定したパーソナリティバイアススコア(1, 0)及びリスク評価バイアススコア(1, 0)から、対象危険度(1:危険度高, 0.5:危険度中, 0:危険度低)を決定するのである。ここで、このテーブルを用いて決定された対象危険度は、パーソナリティバイアススコアとリスク評価バイアススコアとの相加平均となっている。また(一方のバイアススコアの影響を強く見積もって)一方のバイアススコアの重みをより大きくした重み付け相加平均をとって対象危険度を算出することもできる。また、
図2(A)に示したテーブルにおける、2つの「0.5(危険度中)」をいずれも「1(危険度高)」に変更したテーブルを用いて対象危険度を決定することも可能である。
【0060】
さらに、相加平均ではなく相乗平均をとって対象危険度を算出してもよい。この場合、パーソナリティバイアススコア(1, 0)及びリスク評価バイアススコア(1, 0)から、対象危険度(1:危険度高, 0:危険度低)が算出されることになる。ここで、対象危険度が1(:危険度高)となるのは、パーソナリティバイアススコアもリスク評価バイアススコアも1である場合のみであって、それ以外の場合、対象危険度は0(:危険度低)となる。また、上述した各「パーソナリティスコア(バイアス決定用スコア)に係るバイアススコア」bs_personalityと、各「リスク意識スコア(バイアス決定用スコア)に係るバイアススコア」bs_risk-assessmentとから、相加平均及び相乗平均を含む次式
(5) risk=(Σbs_personality/n_per×Σbs_risk-assessment/n_risk)0.5
を用いて、対象危険度riskを算出してもよい。
【0061】
ここで、上式(5)のn_perは、バイアス決定用スコアとして採用されたパーソナリティスコアの数であり、n_riskは、バイアス決定用スコアとして採用されたリスク意識スコアの数である。この場合、Σbs_personality/n_perは、0から1までの値をとるパーソナリティバイアススコアと解釈され、Σbs_risk-assessment/n_riskは、0から1までの値をとるリスク評価バイアススコアと解釈され、さらに、対象危険度riskは、0から1までの値をとる、それらの相乗平均であると捉えることができる。
【0062】
さらに言えば、パーソナリティバイアススコア及びリスク評価バイアススコアのうちの一方のみから対象危険度を決定することも可能である。この場合、例えばパーソナリティバイアススコア(又はリスク評価バイアススコア)をそのまま、対象危険度とみなしてもよい。ただし本実施形態では、最終的に知りたい「危険事象が発生した際のユーザ(対応情報の提示対象)の特徴」(:認知バイアスが有る故の実際の危険度)をより精度よく推定するために、パーソナリティバイアススコア及びリスク評価バイアススコアの両方を用いている(平時の特徴をできるだけ多く用いている)のである。
【0063】
次に、
図2(B)を用いて、バイアス判定処理(パーソナリティバイアススコア及びリスク評価バイアススコアの決定処理)についての他の実施形態を説明する。
図2(B)に示した実施形態によれば、バイアス判定部112aは、
(a)(例えば外部のデータベースから)多数収集されたパーソナリティスコア(例えばBigFiveスコア)及びリスク意識スコア(例えば防災意識尺度)のデータを学習データとし、SVDD(Support Vector Data Description)を用いて、スコア空間内に、正常と判定されるスコアのデータ点が収まる且つ最小の大きさを有する超球(基準範囲)を決定し、
(b)このスコア空間内において、ユーザ(対応情報の提示対象)のバイアス決定用スコアのデータ点が、この超球(基準範囲)内にあれば、このバイアス決定用スコアのバイアススコアを0(:バイアス無し)とし、この超球(基準範囲)の外にあれば、このバイアススコアを1(:バイアス有り)とする。
【0064】
ここでSVDDは、データ群を別次元の空間に写像し、この空間内において正常クラスのデータが収まる最小の超球を求め、判定データがこの超球の外となるか否かによって異常であるか否かを判定する、いわば1クラスSVM((one-class Support Vector Machine)による異常検知の手法となっている。
【0065】
ここで、
図2(B)に示された、バイアス決定用スコアのデータ点と超球(基準範囲)との距離(超球からの逸脱度)daを、0から1までの値に規格化して、この「バイアス決定用スコアに係るバイアススコア」とすることも可能である。以上述べたように、多数の学習データによって訓練された機械学習モデルを用いることにより、より精度の高い若しくはより実際に即したバイアススコアを導出することも可能となるのである。
【0066】
以上、バイアス判定(バイアススコア決定)に基づく対象危険度決定処理について、様々な形態・態様のものを説明したが、これらを上位概念化して取りまとめると、以下の通りとなる。
(a)対象危険度決定部112は、パーソナリティスコアが設定された「基準範囲」から逸脱している場合、リスク意識スコアが設定された「基準範囲」から逸脱している場合、又はパーソナリティスコア及びリスク意識スコアの両方がそれぞれに設定された「基準範囲」から逸脱している場合、ユーザ(対応情報の提示対象)の危険の度合いが高いことを示す対象危険度を決定することも好ましい。また、
(b)対象危険度決定部112は、複数のパーソナリティスコア及び/又は複数のリスク意識スコアにおける、設定された「基準範囲」からの逸脱の有無若しくは度合い(例えば距離)を示す数値又は当該数値の合計に基づき、対象危険度を決定することも好ましい。さらに、
(c)対象危険度決定部112は、複数のパーソナリティスコア及び/又は複数のリスク意識スコアにおいて、設定された「基準範囲」から逸脱するものが所定個(例えば1つ、又は全て)以上存在するか否かに基づき、対象危険度を決定することも好ましい。
【0067】
ここで上記の「基準範囲」は、上述した第1基準範囲や第2基準範囲、さらにはSVDDによって求められる超球、とすることができるが、勿論これらに限定されるものではない。例えば、経験に基づき予め決定されたスコア範囲を、この「基準範囲」とすることも可能である。
【0068】
<警戒レベル決定手段>
図1の機能ブロック図に戻って、警戒レベル決定部113は、ユーザ(対応情報の提示対象)の取得された「位置情報」に係る位置を含む地域についての「警戒レベル相当情報」を取得し、この警戒レベル相当情報から、(危険事象(自然災害)による被害がユーザに生じる可能性を示す)「警戒レベル情報」を決定する。
【0069】
ここで、ユーザの「位置情報」は本実施形態では、スマートフォン1に内蔵されたGPS測位部102で生成された現在位置に係る緯度・経度情報であり、定期的に又は適宜、ユーザ測位情報保存部105へ出力され、同保存部105において保存・管理された情報となっている。変更態様として、スマートフォン1は、接続先の基地局から基地局測位方式によって測定された自身の位置情報を受け取って、これをユーザの位置情報としてユーザ測位情報保存部105に保存・管理させることも可能である。いずれにしても、警戒レベル決定部113は本実施形態において、この後説明する「警戒レベル相当情報」を受信した時点におけるユーザの「位置情報」を、ユーザ測位情報保存部105から読み出して使用する。
【0070】
また「警戒レベル相当情報」は、危険事象(自然災害)による被害が生じる可能性を示す通知情報である。例えば大雨等の自然災害の場合、気象庁が発令する
・大雨特別警報(警戒レベル5相当) ・土砂災害警戒情報(警戒レベル4相当)
・大雨・洪水警報(警戒レベル3相当) ・大雨・洪水注意報(警戒レベル2相当)
・早期注意情報(警戒レベル1相当)
が「警戒レベル相当情報」に該当する。
【0071】
このような「警戒レベル相当情報」を、気象庁が管理する災害情報管理サーバ2から受信して災害情報保存部104に保存した場合において、本実施形態の警戒レベル決定部113は、保存された警戒レベル相当情報のうちで、その時点でのユーザの「位置情報」に係る位置を含む地域についての「警戒レベル相当情報」を取り出し、取り出した情報が相当する「警戒レベル」を、「警戒レベル情報」に決定するのである。例えば、ユーザが「飯田橋駅」付近に滞在している場合、東京都千代田区についての「警戒レベル相当情報」(例えば大雨・洪水警報)が相当する警戒レベル(例えば警戒レベル3)を、「警戒レベル情報」とするのである。この「警戒レベル情報」はまさに、危険事象(例えば大雨等)による被害がこのユーザに生じる可能性を示す情報となっている。
【0072】
<避難要否決定手段>
同じく
図1の機能ブロック図において、本実施形態の避難要否決定部114は、
(a)警戒レベル決定部113で決定されたユーザ(対応情報の提示対象)の「警戒レベル情報」と、
(b)ユーザ情報保存部103から取り出したユーザ(対応情報の提示対象)の所定の属性情報、本実施形態では「年齢」と
に基づき、このユーザが避難すべきか否かに係る「避難要否スコア」を決定する。
【0073】
図3は、本発明に係る避難要否決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。ここで同図のテーブルは、危険事象として大雨等を設定した場合のものとなっている。
【0074】
図3に示したテーブルによれば、避難要否決定部114は本実施形態において、「警戒レベル情報」の指し示す警戒レベルと、ユーザが高齢者(65歳以上の者)か否かとによって、「避難要否スコア」(1:要避難,0:要避難に非ず)を決定する。
【0075】
例えば、「警戒レベル情報」が警戒レベル3である場合、ユーザが非高齢者ならば「避難要否スコア」を0(:要避難に非ず)とし、一方、高齢者ならば「避難要否スコア」を1(:要避難)としている。これは、市町村等の自治体が発令する避難情報において「警戒レベルが4や5であれば全住民に対し避難指示が出されるが、高齢者等に対しては警戒レベルが3であっても避難指示が出される」といったことに対応した好適な要否判断内容となっている。ただし勿論、本発明の避難要否決定処理は、
図3に示したものに限定されず、例えば警戒レベルが2であっても高齢者については「避難要否スコア」を1(:要避難)としてもよい。また、「年齢」以外のユーザ属性、例えば(ユーザの許可の下、取得された)既往歴に基づき、「避難要否スコア」を決定することも可能である。
【0076】
<避難行動判定手段>
図1の機能ブロック図に戻って、本実施形態の避難行動判定部115は、
(a)ユーザ測位情報保存部105から読み出したユーザの「位置情報」と、
(b)ユーザ測位情報保存部105から読み出したユーザの(予め登録された)「避難位置情報」
とから、ユーザが避難したか否かに係る避難行動スコアを決定する。
【0077】
避難行動判定部115は具体的に、ユーザの現時点での「位置情報」に係る位置と「避難位置情報」に係る位置との距離を算出し、この距離が所定閾値(例えば500メートル)未満となる状態が、少なくとも所定時間(例えば300秒)継続した場合に、避難行動スコアを0(:避難完了)とし、それ以外の場合、避難行動スコアを1(:避難未了)としてもよい。
【0078】
ちなみに、避難行動判定部115は、避難要否決定部114で避難要否スコアが1(:要避難)に決定された際、又は警戒レベル決定部113で「警戒レベル情報」が決定された際、以上に述べたような避難行動判定処理を実施することも好ましい。
【0079】
<対応情報生成手段>
同じく
図1の機能ブロック図において、本実施形態の対応情報生成部116は、
(a)ユーザ(対応情報の提示対象)について決定された「対象危険度」と、
(b)ユーザ(対応情報の提示対象)について決定された「警戒レベル情報」と
に基づき、
(ア)危険事象(自然災害)に対する準備の提案に係る対応情報である「準備提案情報」、及び
(イ)危険事象(自然災害)からの避難の要請に係る対応情報である「避難要請情報」
のうちの一方又は両方、本実施形態では両方を生成する。
【0080】
ここで、上記(ア)の「準備提案情報」(対応情報)は、例えば、危険事象(自然災害)の発生に備えて食料品等の備蓄や所定設備等の点検を勧める防災提案情報とすることができる。この「準備提案情報」は、1つの態様として、ユーザの「対象危険度」が1(:危険度高)であって、ユーザの「警戒レベル情報」が1以上となった際(警戒レベル情報が決定された際)、生成され提示されてもよい。
【0081】
また「準備提案情報」は、ユーザの「対象危険度」が1(:危険度高)であって、ユーザの現在位置を含む地域において、警戒レベル相当情報(気象庁の発令する警報・注意報等)が過去の所定期間(例えば3年間)に所定回数以上発令されている場合に、生成され提示される設定とすることもできる。なお本実施形態において、「準備提案情報」は、プッシュ通知としてタッチパネル・ディスプレイ107にテキストやロゴとして表示されるが、プッシュの提案音声としてスピーカ106から出力されてもよい。
【0082】
また本実施形態の対応情報生成部116は、上記(イ)の「避難要請情報」を、
(c)ユーザ(対応情報の提示対象)について決定された「避難要否スコア」と、
(d)ユーザ(対応情報の提示対象)について決定された「避難行動スコア」と
にも基づいて生成する。具体的には、ユーザにおいて「避難要否スコア」が1(:要避難)であって「避難行動スコア」も1(:避難未了)である場合に、このユーザの「対象危険度」と「警戒レベル情報」とから、それらに合った「避難要請情報」(対応情報)を生成するのである。
【0083】
次に
図4を用いて、上記(イ)の「避難要請情報」の生成処理を説明する。
【0084】
図4は、本発明に係る対応情報生成処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【0085】
最初に
図4(A)において、対応情報生成部116は、非高齢者(64歳以下)であるユーザの「避難要否スコア」が1(:要避難)であって「避難行動スコア」も1(:避難未了)である場合、
図4(A)に示したように、このユーザの「対象危険度」と「警戒レベル情報」とに応じた「避難要請アラート情報」(対応情報)を生成し、入出力制御部122を介してスピーカ106(音声出力デバイス)に対し、対応するアラート音(又はアラート音声)を出力させる。
【0086】
例えば、(要避難であって避難未了の)ユーザの「対象危険度」が0(:危険度低)であって「警戒レベル情報」が警戒レベル4である場合、音量が“中”であって出力頻度(プッシュ頻度)が“通常”である避難要請アラート情報が生成される。一方、このユーザの「対象危険度」が1(:危険度高)であって「警戒レベル情報」が警戒レベル5である場合、音量が“最大”であって出力頻度(プッシュ頻度)が“頻繁”である「避難要請アラート情報」が生成されるのである。
【0087】
ここで音量や出力頻度(プッシュ頻度)が、「対象危険度」及び「警戒レベル情報」のいずれか一方の値で決定されてもよく、「対象危険度」及び/又は「警戒レベル情報」によって音量のみ又は出力頻度(プッシュ頻度)のみが変わってもよい。いずれにしても、「対象危険度」及び/又は「警戒レベル情報」に応じた音量及び/又は出力頻度(プッシュ頻度)を有する音若しくは音声に係る情報としての「避難要請アラート情報」(対応情報)が生成されるのである。
【0088】
ちなみに本実施形態では、
図4(A)に示したように、「警戒レベル情報」が警戒レベル3であっても「対象危険度」が1又は0.5であれば、さらには「警戒レベル情報」が警戒レベル2であっても「対象危険度」が1であれば、「避難要請アラート情報」を生成する。このように「警戒レベル情報」が警戒レベル3や警戒レベル2の場合、「避難要否スコア」は0(:要避難に非ず)となっているが、本実施形態ではユーザの安全をより確実に確保すべく、「避難要請アラート情報」を生成するのである。なお勿論、「避難要否スコア」が0(:要避難に非ず)ならば、あくまで「避難要請アラート情報」を生成しない設定とすることも可能である(この場合、
図4(A)のテーブルにおける対応情報(アラート)の内容を示した欄内の「亀甲括弧(〔〕)部分」は「無し」となる)。
【0089】
次いで対応情報生成部116は、(要避難であって避難未了である)ユーザが高齢者(65歳以上)である場合も、
図4(B)に示したように、このユーザの「対象危険度」と「警戒レベル情報」とに応じた「避難要請アラート情報」(対応情報)を生成し、対応するアラート音(又はアラート音声)を出力させる。
【0090】
ただし
図4(B)に示したように、ユーザが高齢者である場合は、非高齢者の場合(
図4(A))と比べてより要請度の高い、具体的には音量がより大きく出力頻度(プッシュ頻度)がより高い「避難要請アラート情報」(対応情報)が生成される。例えば、高齢者のユーザにおける「警戒レベル情報」が5であって「対象危険度」が1であれば、音量が“最大”であって出力頻度(プッシュ頻度)が“最頻繁”である「避難要請アラート情報」が生成されるのである。
【0091】
ちなみに本実施形態では、
図4(B)に示したように、ユーザが高齢者である場合に、「警戒レベル情報」が警戒レベル2であっても「対象危険度」が1又は0.5であれば、さらには「警戒レベル情報」が警戒レベル1であっても「対象危険度」が1であれば、「避難要請アラート情報」を生成する。このように高齢者ユーザの「警戒レベル情報」が警戒レベル2や警戒レベル1の場合、「避難要否スコア」は0(:要避難に非ず)となっているが、本実施形態では、高齢ユーザの安全をより確実に確保すべく、「避難要請アラート情報」を生成するのである。なお勿論、高齢ユーザの場合も、「避難要否スコア」が0(:要避難に非ず)ならば、あくまで「避難要請アラート情報」を生成しない設定とすることも可能である(この場合、
図4(B)のテーブルにおける対応情報(アラート)の内容を示した欄内の「亀甲括弧(〔〕)部分」は「無し」となる)。
【0092】
また以上に述べたことから理解されるように、本実施形態の対応情報生成部116は、予め設定された
図4(A)や
図4(B)のテーブルを利用することができれば、「避難要否スコア」を用いずに対応情報(避難要請アラート情報)を生成することも可能となっている。また変更態様として、対応情報生成部116は、避難行動スコアに基づかず、対応情報(避難要請アラート情報)を生成してもよい。この場合、ユーザが避難完了か否かにかかわらず、より確実な避難の行われることを期して対応情報(避難要請アラート情報)を出力するのである。
【0093】
さらに、生成される「避難要請情報」は、音若しくは音声に係る避難要請アラート情報ではなくて、避難要請「表示」情報とすることもでき、この場合、この避難要請表示情報は例えばタッチパネル・ディスプレイ107に表示される。しかしながら、防災意識の低いユーザはそもそも、自らの通信端末を利用して最新の災害情報を端末ディスプレイで確認する、といったような行動をとらない可能性が高い。そこで上述したように、(特に、防災意識が低いと判断される)ユーザに対し、音若しくは音声に係る避難要請アラートをプッシュ通知として提示することによって、災害に対処する方向の行動変容をより確実に促すことも可能となるのである。
【0094】
また、
図4(A)及び(B)に示した実施形態では、1、0.5又は0の値をとる「対象危険度」に基づき「対応情報」(避難要請アラート情報)を生成しているが、対象危険度が0から1までの(4つ以上の)値をとる場合でも同様に、「対応情報」(避難要請アラート情報)を生成することができる。例えば、「対象危険度」が0以上であって0.3未満であれば“危険度低”とし、0.3以上であって0.7未満であれば“危険度中”とし、0.7以上であって1以下であれば“危険度高”とした上で、後は
図4(A)や
図4(B)をそのまま用いて、対応情報(避難要請アラート情報)を生成してもよい。
【0095】
さらに、
図4(A)及び(B)に示した実施形態では、ユーザが非高齢者か高齢者かによって生成する「対応情報」を変えているが、変更態様として、他のユーザ属性によって、例えばユーザが所定の既往歴を有するか否かによって、生成する「対応情報」を変化させてもよい。例えば、ユーザが所定の既往歴を有する場合、
図4(B)相当の「対応情報」(避難要請情報)を生成し、一方、所定の既往歴を有しない場合、
図4(A)相当の「対応情報」(避難要請情報)を生成することも可能である。
【0096】
また、対応情報(避難要請情報,準備提案情報)生成処理における好適な他の実施形態として、対応情報生成部116は、
(a)ユーザの取得された所定の属性情報(例えば、年齢)、
(b)ユーザのパーソナリティスコア(例えば、BigFiveスコア)、及び
(c)ユーザのリスク意識スコア(例えば、防災意識尺度)
のうちの少なくとも1つに基づき、生成する「対応情報」の提示に係る表現、及び生成する「対応情報」の提示の方法若しくはやり方、のうちの少なくとも1つを決定することも好ましい。
【0097】
例えば、高齢者であって(防災意識尺度における)被災状況想像力スコアが所定閾値以下であるユーザ(対応情報の提示対象)に対しては、「予想される被災の具体的な内容(例えば、床上浸水や家屋倒壊等)」を音声で簡潔に述べた避難要請アラートを出力し、さらに同じ「具体的な内容(例えば、床上浸水や家屋倒壊等)」をテキスト又はロゴで簡潔に示した避難要請表示を行ってもよいのである。
【0098】
さらに、以上説明した実施形態では、「対応情報」の提示対象は、スマートフォン1(危険対応提示装置)のユーザであり、スマートフォン1(危険対応提示装置)は、このユーザに適した「対応情報」を生成し提示してきた。ここで他の実施形態として、本発明による危険対応提示装置は、配下に多数のユーザの通信端末が接続されたサーバとすることもできる。この場合、このサーバ(危険対応提示装置)は、配下の(登録された)多数のユーザを「対応情報」の提示対象とし、個々のユーザについて、当該ユーザの位置情報、パーソナリティスコアやリスク意識スコア等を取得した上で、以上説明したような(対応情報生成処理を含む)危険対応提示処理を実施し、個々のユーザに適した効果的な対応情報を、当該ユーザの端末へ個別に配信することができるのである。
【0099】
以上詳細に説明したように、本発明は、提示対象におけるパーソナリティスコアやリスク意識スコアを用いて、具体的には当該スコアにおける基準範囲からの逸脱の有無や度合いに基づき、対象危険度を決定し、この対象危険度を用いて対応情報を生成する。その結果、危険事象への対応に係る対応情報を、提示対象の危険事象に対する思い・考えや意識も考慮して、生成し提示することが可能となる。
【0100】
さらに、所定地域における各住人の安全な且つ健康的な生活を維持し発展させるべく、本発明によって、当該地域で発生し得る自然災害についての住人単位の対象危険度を把握し、この対象危険度を用いて、防災に関するアドバイスや災害時における避難要請を、個々人に適した形で個別に行うこともできる。すなわち本発明によれば、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」や、目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することも可能となるのである。
【0101】
上述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。上述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0102】
1 スマートフォン(危険対応提示装置)
101 通信インタフェース部
102 GPS(Global Positioning System)測位部
103 ユーザ情報保存部
104 災害情報保存部
105 ユーザ測位情報保存部
106 スピーカ(SP)
107 タッチパネル・ディスプレイ(TP・DP)
111 アンケート実施・評価部
112 対象危険度決定部
112a バイアス判定部
113 警戒レベル決定部
114 避難要否決定部
115 避難行動判定部
116 対応情報生成部
121 通信制御部
122 入出力制御部
2 災害情報管理サーバ
3 アンケート・登録情報管理サーバ