(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141310
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】顆粒の製造方法及びフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、顆粒及びフィルムコーティング錠
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20241003BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20241003BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241003BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/28
A61K47/38
A61K31/16
A61P25/08
A61K45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052889
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100217098
【弁理士】
【氏名又は名称】清 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【弁理士】
【氏名又は名称】千草 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100185856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】井出 良汰
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA41
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC01
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF04
4C076FF06
4C076GG12
4C076GG14
4C084AA17
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA06
4C206AA01
4C206AA10
4C206GA02
4C206GA19
4C206GA28
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA06
(57)【要約】
【課題】流動性に優れた造粒末(顆粒)を形成することができる、顆粒の製造方法及びこれを用いるフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、これらの製造方法によって得られる顆粒及びフィルムコーティング錠を提供する。
【解決手段】薬物及びヒドロキシプロピルセルロース粉体を混合して混合物を形成する混合工程(A)と、前記混合物に、さらに、水を加えて造粒物を形成する造粒工程(B)と、前記造粒物を乾燥する乾燥工程(C)と、を含む、顆粒の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物及びヒドロキシプロピルセルロース粉体を含む粉体を混合して混合物を形成する混合工程(A)と、
前記混合物に、造粒液を加えて造粒物を形成する造粒工程(B)と、
前記造粒物を乾燥する乾燥工程(C)と、を含む、顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程(A)が、薬物、ヒドロキシプロピルセルロース粉体及び結晶セルロース粉体を混合して混合物を形成する工程であり、前記結晶セルロース粉体の安息角が、40°以下である、請求項1に記載の顆粒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の顆粒の製造方法で得られた顆粒に、賦形剤及び崩壊剤を含む後末を加え、混合して打錠末を形成する混合工程(D)と、
前記打錠末を打錠して素錠を形成する打錠工程(E)と、
前記素錠に、コーティング液をコーティングするコーティング工程(F)と、を含む、フィルムコーティング錠の製造方法。
【請求項4】
前記造粒液が水である、請求項3に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング液がヒプロメロースを含有する、請求項4に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
【請求項6】
前記薬物がラコサミドである、請求項5に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
【請求項7】
薬物、ヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースを含有する顆粒であって、
前記顆粒の安息角が、45°以下であり、
乾式の条件でレーザー回折・散乱式の粒度分布を測定したとき、下記式(1)で求められる値が、3.0以下である、顆粒。
(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【請求項8】
請求項7に記載の顆粒に、賦形剤及び崩壊剤を加え、混合して、打錠末を形成し、
前記打錠末を打錠して得られた素錠の外側にコーティング層が形成してなる、フィルムコーティング錠。
【請求項9】
前記薬物がラコサミドである、請求項8に記載のフィルムコーティング錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,顆粒の製造方法及びフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、顆粒及びフィルムコーティング錠に関する。本発明の顆粒の製造方法及びフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、顆粒及びフィルムコーティング錠は、医薬の製造の分野において用いることができる。
【背景技術】
【0002】
錠剤型の医薬品を製造する上で重要な特性として、各成分粉体および添加剤粉体の流動性、より具体的には有効成分を含んだ造粒末(顆粒)及び/又は打錠末の流動性が挙げられる。
【0003】
流動性とは、粉末がどの程度サラサラな状態であるかを表す指標である。この流動性が悪い場合、カプセル剤や錠剤などの医薬品製造工程におけるカプセル充填機や打錠機への充填過程において、有効成分を含む各粉体が機器などの中でスムーズに流れず、充填時の重量バラつきが起こったり、製造途中で詰まることでスムーズに製造できなかったりといった不具合が生じてしまう。
【0004】
従来、流動性を高める上では、製剤末中の各添加剤又は造粒末の粒子サイズを揃えることにより高められることが知られているが、当該知見だけでは、造粒末自身の流動性を高めることができない。そもそも、有効成分を含んだ造粒末(顆粒)自身の流動性を高めることができれば、打錠末の流動性を高めることが比較的容易であるが、例えば、使用する核粒子の粒子サイズを揃えるだけで一概に造粒末(顆粒)自身の流動性を高めることができないという課題を有している。
【0005】
当該課題については、例えば、以下のような放出制御ラコサミド製剤の製造方法の発明が開示されている(特許文献1)。
特許文献1には、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶かして結合剤溶液を準備し、薬物を含む乾燥混合物に結合剤溶液を追加して、湿式で顆粒を作製(造粒)することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法で作製される造粒末(顆粒)は、流動性が乏しい。また、この造粒末(顆粒)に後末を加えて得られる打錠末も、流動性が乏しい。そのため、打錠末を打錠用臼に挿入する際に、一定時間で挿入することができなかったり、打錠末の計量安定性が損なわれたりするといった課題がある。
造粒末(顆粒)の流動性を高めるためには、例えば、使用する核粒子の粒子サイズを揃えるだけで一概に造粒末(顆粒)自身の流動性を高めることができない。
本発明は、流動性に優れた造粒末(顆粒)を形成することができる、顆粒の製造方法及びこれを用いるフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、これらの製造方法によって得られる顆粒及びフィルムコーティング錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記流動性に関する課題を解決するため、有効成分を含む造粒末(顆粒)に使用する賦形剤及び結合剤並びに結合剤の調製に着目した。鋭意検討した結果、有効成分に加えて特定の賦形剤及び結合剤を含む造粒末(顆粒)とすることにより、更には特定の方法を用いて前記造粒末(顆粒)を製造することにより、前記造粒末(顆粒)と後末とを混合した際にその流動性を高めることができた。そこで本発明は、下記の各種の態様の発明を提供するものである。
【0009】
[1] 薬物及びヒドロキシプロピルセルロース粉体を含む粉体を混合して混合物を形成する混合工程(A)と、
前記混合物に、造粒液を加えて造粒物を形成する造粒工程(B)と、
前記造粒物を乾燥する乾燥工程(C)と、を含む、顆粒の製造方法。
[2] 前記混合工程(A)が、薬物、ヒドロキシプロピルセルロース粉体及び結晶セルロース粉体を混合して混合物を形成する工程であり、前記結晶セルロース粉体の安息角が、40°以下である、[1]に記載の顆粒の製造方法。
[3] [1]又は[2]に記載の顆粒の製造方法で得られた顆粒に、賦形剤及び崩壊剤を含む後末を加え、混合して打錠末を形成する混合工程(D)と、
前記打錠末を打錠して素錠を形成する打錠工程(E)と、
前記素錠に、コーティング液をコーティングするコーティング工程(F)と、を含む、フィルムコーティング錠の製造方法。
[4] 前記造粒液が水である、[3]に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
[5] 前記コーティング液がヒプロメロースを含有する、[4]に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
[6] 前記薬物がラコサミドである、[5]に記載のフィルムコーティング錠の製造方法。
【0010】
[7] 薬物、ヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースを含有する顆粒であって、
前記顆粒の安息角が、45°以下であり、
乾式の条件でレーザー回折・散乱式の粒度分布を測定したとき、下記式(1)で求められる値が、3.0以下である、顆粒。
(D90-D10)/D50 ・・・(1)
[8] [7]に記載の顆粒に、賦形剤及び崩壊剤を加え、混合して、打錠末を形成し、
前記打錠末を打錠して得られた素錠の外側にコーティング層が形成してなる、フィルムコーティング錠。
[9] 前記薬物がラコサミドである、[8]に記載のフィルムコーティング錠。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、流動性に優れた造粒末(顆粒)を形成することができる、顆粒の製造方法及びこれを用いるフィルムコーティング錠の製造方法、並びに、これらの製造方法によって得られる顆粒及びフィルムコーティング錠が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の整粒顆粒の粒度分布を示すグラフである。
【
図2】比較例1の整粒顆粒の粒度分布を示すグラフである。
【
図3】実施例2及び比較例2のフィルムコーティング錠をそれぞれに1ヵ月保管した試験品ついて、溶出率を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<顆粒の製造方法>
本実施形態の顆粒の製造方法は、薬物及びヒドロキシプロピルセルロース粉体を含む粉体を混合して混合物を形成する混合工程(A)と、
前記混合物に、さらに、水を加えて造粒物を形成する造粒工程(B)と、
前記造粒物を乾燥する乾燥工程(C)と、を含む。
以下に本実施形態の顆粒の製造方法の好ましい形態について記載するが、一例であって、下記に限定されるものではない。
【0014】
混合工程(A)は、薬物及び少なくとも結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロース粉体を混合して混合物を形成する。造粒工程(B)において、前記混合物に、さらに、水を加えて造粒物を湿式で形成する。その後、乾燥工程(C)において、前記造粒物を乾燥する。造粒工程(B)は、湿式の造粒工程であるにも拘わらず、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースを結合剤溶液の形態で添加するのではなく、ヒドロキシプロピルセルロース粉体の形態で添加し、混合し、その後、水を加えて造粒することによって、流動性に優れた顆粒とすることができる。造粒品を整粒して、その後、乾燥してもよい。乾燥した後、さらに、整粒してもよい。これらの整粒の工程は、巨大な粒を除くことを目的としており、最終的な顆粒の流動性に影響するものではない。
【0015】
薬物は単独の1種でもよいし、2種以上であってもよい。当該薬物は苦味等の不快な味を有していてもよく、不快な味を有さない薬物であってもよい。
【0016】
本実施形態において、顆粒は、公知の製剤工程によって得られるもの、例えば、他の添加剤と混合して得られるものや、造粒して得られる造粒物であってもよい。造粒する方法としては、例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法などの慣用の造粒法が例示できる。
【0017】
顆粒に混合されうる添加剤としては、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロース粉体の他、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、甘味剤、香料、安定化剤、可塑剤、着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、一種または二種以上を組み合わせて適宜適量添加される。
【0018】
顆粒に混合されうる賦形剤としては、例えば結晶セルロース粉体、D-マンニトール、エリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールを挙げることができる。
当該賦形剤として、好ましくは結晶セルロース粉体が挙げられる。前記結晶セルロース粉体の安息角は、40°以下であることが好ましく、38°以下であることがより好ましく、36°以下であることがさらに好ましい。さらに本実施形態に用いられる結晶セルロースとしては、セオラス(登録商標)UF-702、セオラス(登録商標)UF-711、セオラス(登録商標)PH-101、セオラス(登録商標)PH-102、セオラス(登録商標)PH-200、セオラス(登録商標)PH-301、セオラス(登録商標)PH-302(以上、旭化成社製)等が挙げられ、好ましくはセオラスUF-702、セオラスPH-200又はセオラスPH-302であり、より好ましくはセオラスUF-702である。
上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0019】
当該賦形剤の含有量は、顆粒中、好ましくは1~70重量%であり、より好ましくは5~60重量%であり、さらに好ましくは10~50重量%である。
【0020】
顆粒に混合されうる崩壊剤としては、クロスポビドンの他に、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドンコポリマー等の崩壊剤を挙げることができる。
当該崩壊剤として、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンであり、さらに好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該崩壊剤の配合量としては、顆粒中1~15重量%が好ましく、さらに好ましくは4~12重量%である。
【0021】
顆粒に混合されうる流動化剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、フュームドシリカ等の流動化剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該流動化剤として好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、フュームドシリカ、軽質無水ケイ酸及びタルクであり、より好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸であり、さらに好ましくは、軽質無水ケイ酸でである。
当該流動化剤の配合量としては、後末中0.1乃至10.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1乃至5.0重量%であり、さらに好ましくは、0.5%乃至2.0%である。
【0022】
顆粒に混合されうる滑沢剤としては、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、タルク等の滑沢剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0023】
顆粒に混合されうる矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1-メントール等の矯味剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0024】
顆粒に混合されうる甘味剤としては、糖アルコール、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等の甘味剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0025】
顆粒に混合されうる香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等の香料を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0026】
顆粒に混合されうる可塑剤、としては、例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の日本薬局方および医薬添加物規格等の公定書に記載のものが挙げられる。
【0027】
<顆粒>
上述の実施形態の顆粒の製造方法により、薬物、ヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースを含有する顆粒であって、前記顆粒の安息角が、45°以下であり、乾式の条件でレーザー回折・散乱式の粒度分布を測定したとき、下記式(1)で求められる値が、3.0以下である、顆粒を製造できる。
(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【0028】
安息角は、粉体の流動性を評価するための物性値である。日本薬局方(第十八改正)参考情報安息角測定法により、例えば、市販の電磁振動式安息角測定器を用いて測定できる。
顆粒の安息角は、45°以下であり、44°以下が好ましい。
【0029】
式(1)において、D50はメディアン径であり、粉体の母集団の半分がこの値より下にある直径をいう。D90は、粉体の母集団の90%がこの値より下にある直径をいう。D10は、粉体の母集団の10%がこの値より下にある直径をいう。顆粒の粒度分布を測定したとき、式(1)で求められる値が、3.0以下であり、2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下がさらに好ましい。
【0030】
<フィルムコーティング錠の製造方法>
本実施形態のフィルムコーティング錠の製造方法は、上述の実施形態の顆粒の製造方法で得られた顆粒に、賦形剤及び崩壊剤を含む添加剤(本明細書において、後末という)を加えて混合した混合末(本明細書において、打錠末という)を形成する混合工程(D)と、
前記打錠末を打錠して素錠を形成する打錠工程(E)と、
前記素錠に、コーティング液をコーティングするコーティング工程(F)と、を含む。
【0031】
混合工程(D)において、打錠末に含まれる、後末部としての添加剤としては、賦形剤、崩壊剤の他、流動化剤、滑沢剤、甘味剤、香料、安定化剤、可塑剤、着色剤、矯味剤などが挙げられる。これらの添加剤は、一種または二種以上を組み合わせて適宜適量添加される。
【0032】
後末に使用される賦形剤としては、例えば結晶セルロース、D-マンニトール、エリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールを挙げることができる。
当該賦形剤として、好ましくは結晶セルロースが挙げられる。
上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該賦形剤の含有量は、素錠中、好ましくは1~70重量%であり、より好ましくは5~60重量%であり、さらに好ましくは10~50重量%である。
【0033】
後末に使用される崩壊剤としては、クロスポビドンの他に、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドンコポリマー等の崩壊剤を挙げることができる。
当該崩壊剤として、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンであり、さらに好ましくはクロスポビドンである。
上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該崩壊剤の配合量としては、後末中1~15重量%が好ましく、さらに好ましくは4~12重量%である。
【0034】
後末に混合されうる流動化剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、フュームドシリカ等の流動化剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該流動化剤として好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、フュームドシリカ、軽質無水ケイ酸及びタルクであり、より好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸であり、さらに好ましくは、軽質無水ケイ酸でである。
当該流動化剤の配合量としては、後末中0.1乃至10.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1乃至5.0重量%であり、さらに好ましくは、0.3%乃至2.0%である。
【0035】
後末に混合されうる滑沢剤としては、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、タルク等の滑沢剤を挙げることができる。
当該滑沢剤として好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムであり、より好ましくは、ステアリン酸マグネシウムでである。
上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0036】
後末に使用される流動化剤、滑沢剤、矯味剤、甘味剤、香料、安定化剤、可塑剤、着色剤としては、顆粒に混合されうるものとして挙げられたものを使用することができる。
【0037】
打錠工程(E)において、前記打錠末を打錠して素錠を形成する。例えば、ロータリー式打錠機にて打錠して素錠を形成することができる。
【0038】
本実施形態において、素錠は、例えば丸状、楕円状、球状、多角形板状、棒状、ドーナツ状の形状および積層錠、有核錠などに成形されてもよい。また、必要に応じて被膜剤によってコーティングすることもできる。また、識別性向上のためのマーク、文字などの印字を施すことも可能であり、分割用の割線を付してもよい。
【0039】
素錠の大きさとしては小型である方が好ましく、好ましくは直径が5~12mm程度、厚みが2~7mm程度である。
【0040】
素錠の重量としては好ましくは50~600mg程度である。
【0041】
素錠の硬度としては特に限定されないが、錠剤の運搬等による破損を防ぐうえである程度の硬度が必要となる。本実施形態においては、好ましくは30~150N、より好ましくは40~130N、さらに好ましくは50~120Nであり、最も好ましくは、50~100Nである。
【0042】
コーティング工程(F)において、前記素錠に、コーティング液をコーティングすることで、フィルムコーティング錠を得る。
【0043】
コーティング液に含まれる「被膜剤」としては、コーティング基剤、可塑剤、滑沢剤、着色剤などが挙げられる。これらの被膜剤は、一種または二種以上を組み合わせて適宜適量添加される。ここで、被膜剤とは、コーティング液に含まれる固形成分をいい、フィルムコーティング錠に形成されるコーティング層の成分と同じである。
【0044】
被膜剤に使用されるコーティング基剤としては、特に限定されないが、ヒプロメロース(すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等の腸溶性セルロース誘導体類、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D-55、エボニック デグサ ジャパン株式会社製、商品名:ポリキッドPA-30、ポリキッドPA-30S、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)、メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS、オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)などの腸溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
当該コーティング基剤として好ましくは、ヒプロメロース、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーS等が挙げられ、より好ましくは、ヒプロメロースである。これらコーティング基剤は1種または2種以上混合して用いてもよい。
【0045】
本実施形態の製造方法においては、前記コーティング液がヒプロメロースを含有することで、溶出性に優れるフィルムコーティング錠とすることができる。
【0046】
ここで、溶出性とは、経口投与した錠剤やカプセル剤などの体内での溶け方を表す指標である。フィルムコーティング錠が薬物の効果を発揮するためには消化管内で溶けた後、腸から吸収される必要がある。溶出性は、どのような溶け方をするかを表す。
また、例えば錠剤型の医薬品が薬効を発現するまでには生体内でいくつかの過程を経るが、その上で重要な特性に溶出性が挙げられる。
いずれの性能も高ければ高いほど優れたフィルムコーティング錠と判断できる。
【0047】
また溶出性を高める上では、例えば有効成分が難溶性の場合、例えば、有効成分の化合物を塩や水和物にしたり、有効成分を微粉砕することでそのサイズを極力小さくしたり、崩壊剤を適宜組み合わせることが挙げられるが、それだけでは溶出性を改善しない場合がある。特に医薬品は製造から2~3年の有効期間が設定されるのが一般的だが、有効期間中安定した溶出性能を保持しなければならないという課題を有している。
本発明者らは、溶出性に関する課題を解決するため、コーティング基剤に着目した。
特定のコーティング基剤を用いることで顆粒又は錠剤・口腔内崩壊錠などの製剤において、苛酷条件又は長期保存しても溶出性能が低下しない顆粒又は製剤とすることで、前述した課題を解決することができた。
また、高い溶出性とした顆粒又は製剤であっても、医薬品の有効期間内において高い溶出性を保持し続けるという課題がある。さらには、両者を兼ね備えた顆粒又は製剤が求められている。本実施形態の製造方法においては、前記コーティング液がヒプロメロースを含有することで、60℃、一ヵ月の保管時間を経た後も、溶出性に優れるフィルムコーティング錠とすることができる。
【0048】
当該コーティング基剤の被膜剤中の重量割合としては、被膜剤100重量%に対して、10~100重量%、好ましくは25~90重量%、より好ましくは、35~85重量%程度である。
【0049】
被膜剤に使用される可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム等の日本薬局方および医薬添加物規格等の公定書に記載のものが挙げられる。
当該可塑剤として好ましくは、ポリエチレングリコールである。
当該可塑剤の配合量としては、コーティング基剤100重量部(ただし、これは固形分重量を意味する)に対して、5~40重量部程度、好ましくは5~20重量部程度である。当該可塑剤の被膜剤中の重量割合としては、被膜剤100重量%に対して、4~200重量%、好ましくは6~10重量%、より好ましくは、7~9重量%程度である。
【0050】
被膜剤に使用される滑沢剤としては、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、タルク等の滑沢剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
当該滑沢剤として好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
当該滑沢剤の配合量としては、コーティング基剤100重量部(ただし、これは固形分重量を意味する)に対して、5~40重量部程度、好ましくは5~20重量部程度である。当該滑沢剤の被膜剤中の重量割合としては、被膜剤100重量%に対して、4~200重量%、好ましくは6~10重量%、より好ましくは、7~9重量%程度である。
【0051】
被膜剤に使用される着色剤としては、黄色三二酸化鉄、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビン等の着色剤を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0052】
更に、pH調整剤、着色剤、矯味剤、香料等が被膜剤に含まれていてもよい。
【0053】
また、本実施形態の効果を損なわない範囲において、他の高分子を1種または2種以上を被膜剤に混合してもよい。例えば、水溶性高分子、水不溶性高分子、胃溶性高分子および熱可塑性物質(ワックス状物質)等が挙げられる。
【0054】
<フィルムコーティング錠>
上述の実施形態のフィルムコーティング錠の製造方法により、上述の実施形態の顆粒に、賦形剤及び崩壊剤等の後末を加え、混合して、打錠末を形成し、前記打錠末を打錠して得られた素錠の外側にコーティング層が形成してなる、フィルムコーティング錠を製造できる。
【0055】
こうして得られるフィルムコーティング錠の溶出率(5分後)は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは、91%以上である。
フィルムコーティング錠の溶出率(15分後)は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上であり、最も好ましくは、100%である。
溶出時間は、特には限定されないが、例えば溶出試験(装置:パドル法、試験液:日本薬局方の溶出試験第2液)において、好ましくは15分以内であり、より好ましくは10分以内であり、さらに好ましくは5分以内である。
【0056】
上述のフィルムコーティング錠は、常態で1ヵ月保管した試験品でも、溶出率(5分後)は、好ましくは80%以上とすることができ、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは、91%以上である。
フィルムコーティング錠の、常態で1ヵ月保管した試験品でも、溶出率(15分後)は、好ましくは90%以上とすることができ、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上であり、最も好ましくは、100%である。
本明細書において、「常態」とは、約1気圧(すなわち、86kPa以上106kPa以下)、「常温」及び「常湿」の環境を意味し、「常温」とは、5~35℃(室温と称する場合がある)をいい、「常湿」とは、相対湿度45~85%RHの環境を意味する。
【0057】
上述のフィルムコーティング錠は、さらに、60℃の常湿で1ヵ月保管した試験品でも、溶出率(5分後)は、好ましくは80%以上とすることができ、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは、91%以上である。
フィルムコーティング錠の、常態で1ヵ月保管した試験品でも、溶出率(15分後)は、好ましくは90%以上とすることができ、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上であり、最も好ましくは、100%である。
【実施例0058】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、当該実施例は本願発明の一例であり、本願発明が下記に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]:整粒顆粒
(薬物)
実施例・比較例における薬物として、ラコサミド(D10:5.0μm、D50:10.8μm、D90 :29.7μm)を用いた。
【0060】
(結晶セルロース)
結晶セルロースとして、旭化成株式会社製「セオラス UF-702」(平均粒子径:90μm、かさ密度:0.29 g/cm3、乾燥減量:2.0~6.0%、安息角:34°)を用いた。
【0061】
(混合工程(A))
前記ラコサミド(350g)、前記結晶セルロース(98g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(87.5g(信越化学工業社製、「L-HPC(登録商標)LH-21」))、ヒドロキシプロピルセルロース(21g(日本曹達社製、「NISSO(登録商標) HPC SL」))及び軽質無水ケイ酸(4.9g(フロイント産業社製、「アドソリダー(登録商標)101」))を湿式高剪断造粒機(株式会社パウレック製、「VG-5」)に入れ、混合して混合物を得た。
【0062】
(造粒工程(B))
この混合物に、造粒液(精製水、対末(混合工程(A)で得られた混合物)55%相当重量(g))を加え造粒した。
造粒品を整粒機(株式会社パウレック製、「QC-197S」)に入れ、整粒して、整粒品を作製した。
【0063】
(乾燥工程(C))
整粒品を乾燥機(株式会社パウレック製、「MP-01」)に入れ、給気温度80℃で排気温度45℃になるまで乾燥して乾燥品を得た。
乾燥品を整粒機(株式会社パウレック製、「QC-197S」)に入れ、整粒して、実施例1の整粒顆粒を得た。
実施例1の処方を表1に示す。
【0064】
【0065】
[比較例1]:整粒顆粒
(結合剤溶液の調製)
実施例1の混合工程(A)に前記ヒドロキシプロピルセルロース(21g)を加えず、替わりに実施例1の造粒液(精製水、対末(混合工程(A)で得られた混合物)40%相当重量(g))に予め前記ヒドロキシプロピルセルロース(21g)を溶解させた造粒液を使用し、追加で実施例1の造粒液(精製水、対末(混合工程(A)で得られた混合物)30%相当重量(g))を使用して、造粒した。その他は実施例1と同じ方法にて比較例1の整粒顆粒を得た。
【0066】
[試験例1]: 安息角の測定
前記実施例1及び比較例1で得られた整粒顆粒について、日本薬局方(第十八改正)参考情報安息角測定法により安息角を測定した。測定器は、電磁振動式安息角測定器 AOR-57型(筒井理化学機器株式会社)を使用し、10メッシュふるいの上から試料を投入し(試料投入高さ約2~4cm)、直径6cmのステンレス製の測定用円板全体から試料がこぼれ落ちるまで、試料を堆積させ、試料が最も高く積み上がった状態で、試料の吐出を停止する。その後、測定用分度器を用い、安息角を測定した。
【0067】
(試験結果)
5回測定の平均値の結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
実施例1の整粒顆粒は、安息角が小さく、流動性に優れる。
【0070】
[試験例2]: 粒子サイズ(粒度分布)の測定
前記実施例1及び比較例1で得られた顆粒につき、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3200II」)を用いて、乾式で粒度分布を測定した。測定条件は、測定時間:10s、分散圧:0MPaとした。
【0071】
(試験結果)
結果を表3並びに
図1(実施例1)及び
図2(比較例1)に示す。
【0072】
【0073】
下記式(1)で求められる値は、実施例1の整粒顆粒が2.13であり、比較例1の整粒顆粒は3.66であった。実施例1の整粒顆粒は比較例1の整粒顆粒よりも、粒度分布がシャープであることが示された。
(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【0074】
[実施例2]:フィルムコーティング錠
(混合工程(D))
実施例1の整粒顆粒(320.8g)、結晶セルロース(13.2g(旭化成社製、「セオラス UF-702」))、クロスポビドン(40g(アシュランド社製、「ポリプラスドン(登録商標)XL-10」))及び軽質無水ケイ酸(1.2g(フロイント産業社製、「アドソリダー(登録商標)101」))をポリ袋に入れ、前記ポリ袋を手に取って上下に振って均一になるまで(少なくとも30回振って)混合した。これに、ステアリン酸マグネシウム4.8gを入れ、同様に15回上下に振って混合することにより、打錠末を得た。
【0075】
(打錠工程(E))
打錠末を、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所製、「VELA5」)を用いて、平均錠重量(240mg)、錠厚(3.8~4.2mm)、硬度(30N以上)となるように打錠することにより、素錠を得た。実施例1の整粒顆粒から作製した打錠末は、流動性が優れ、打錠末を打錠用臼に挿入する際に、一定時間で挿入することができた。
【0076】
(コーティング液の調整)
次に、精製水(800g)にヒプロメロース(80g(信越化学社製、「TC-5(登録商標)R」))及びマクロゴール6000(12g(三洋化成社製「PEG6000SP」))を投入し、溶解するまで撹拌した。別途、精製水(200g)にタルク(8g(松村産業社製、「クラウンタルク局方PP」))及び黄色三二酸化鉄(1.4g)を投入し、超音波分散した。これらの液を混合撹拌し、精製水(120g)で共洗いを行い、混合撹拌し、篩過を行い、固形分濃度8重量%のコーティング液を調製した。
【0077】
(コーティング工程(F))
打錠工程(E)で得られた素錠をコーティング機(フロイント産業株式会社製、「ハイコーターMINI」)入れ、前記素錠に対して平均錠重量が250mgとなるように前記コーティング液でコーティングした後、乾燥し,実施例2のフィルムコーティング錠を得た。
【0078】
実施例2の処方を表4に示す。
【0079】
【0080】
[比較例2]:フィルムコーティング錠
実施例2におけるヒプロメロース(80g)を、ポリビニルアルコール(PVA、80g(三菱ケミカル社製、「ゴーセノール(登録商標)EG-05PW」))に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2のフィルムコーティング錠を得た。
【0081】
[試験例3]:溶出試験
前記実施例2及び比較例2で得られた錠剤につき、それぞれ、常態で1ヵ月保管した試験品と、60℃の常湿で1ヵ月保管した試験品を準備した。それぞれの錠剤(計4種)につき、試験液として精製水を用い、日本薬局方一般試験法溶出試験第2法(パドル法)50rpmにより、溶出試験を行った。なお、HPLCの条件は以下のとおり。
【0082】
(HPLC測定条件)
HPLCの測定条件は、以下のとおり行った。
装置: 高速液体クロマトグラフ装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(日本ウォーターズ)。
カラム: 内径2.1mm、長さ5cmのステンレス管に1.7μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
【0083】
【0084】
【0085】
コーティング剤としてヒプロメロース(HPMC)を用いた実施例2のフィルムコーティング錠では、常態で1ヵ月保管した試験品でも、60℃で1ヵ月保管した試験品でも、速やかに溶出した。これに対して、コーティング剤としてポリビニルアルコール(PVA)を用いた比較例2のフィルムコーティング錠では、常態で1ヵ月保管した試験品では速やかに溶出したけれども、60℃で1ヵ月保管した試験品では、溶出が遅れた。