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  • 特開-構造物および構造物の構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141311
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】構造物および構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/34 20060101AFI20241003BHJP
   E04B 7/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04B1/34 A
E04B1/34 C
E04B7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052890
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】川崎 文義
(57)【要約】
【課題】内部空間を有する構造物を、内部空間をできるだけ使用せずに構築できる構造物等を提供する。
【解決手段】構造物1は、屋根と壁を有する。構造物1では、柱部11と、柱部11から側方に張り出すように設けられた桁部12とによる橋梁状架構が、複数並列に配置され、隣り合う柱部11同士、および隣り合う桁部12同士が横梁で連結される。隣り合う桁部12の間には屋根パネル15が設けられ、桁部12と屋根パネル15が構造物1の屋根となる。また柱部11の屋根の反対側には、桁部12の張出部分121が設けられ、張出部分121により柱部11の屋根側への曲げモーメントに抵抗する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根を有する構造物であって、
柱部と、前記柱部から側方に張り出すように設けられた桁部とによる架構が、複数並列に配置され、
隣り合う前記柱部同士、および隣り合う前記桁部同士が横梁で連結され、
隣り合う前記桁部の間に屋根材が設けられ、前記桁部と前記屋根材が前記屋根となり、
前記柱部の前記屋根側への曲げモーメントに抵抗する機構が、前記柱部の前記屋根の反対側で設けられたことを特徴とする構造物。
【請求項2】
前記桁部が前記柱部から斜材により吊り支持されることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項3】
前記桁部は、前記柱部から前記屋根の反対側に張り出す張出部分を有し、
前記機構は前記張出部分であることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項4】
前記桁部の屋根部分は鋼桁であり、前記桁部の前記張出部分はコンクリート桁であることを特徴とする請求項3記載の構造物。
【請求項5】
前記構造物は壁を有し、
隣り合う前記柱部の間に壁材が設けられ、前記柱部および前記壁材が前記壁となることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項6】
屋根を有する構造物の構築方法であって、
柱部の構築後、桁部を、前記柱部側から先端側へと順次延伸するように設けることで、前記柱部と前記桁部による架構を形成する工程(a)と、
前記工程(a)により形成される前記架構であって、並列に配置される複数の前記架構の隣り合う前記柱部同士、および隣り合う前記桁部同士を横梁で連結する工程(b)と、
を有し、
隣り合う前記桁部の間に屋根材を設けることで、前記桁部と前記屋根材が前記屋根となり、
前記柱部の前記屋根側への曲げモーメントに抵抗する機構が、前記柱部の前記屋根の反対側で設けられることを特徴とする構造物の構築方法。
【請求項7】
前記工程(a)において、前記桁部のユニットを搬送装置により前記桁部の延伸方向に沿って施工済みの前記桁部の先端まで搬送し、当該先端に前記ユニットを取り付けることを特徴とする請求項6記載の構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物とその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた敷地内で大容積の内部空間を有する構造物を構築する際、当該内部空間でも様々な作業が行われる。例えば、特許文献1では、当該内部空間で地組したトラス梁等を上方へとリフトアップし、柱の間に架設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-177571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、敷地内に既存建物が存在し、当該既存建物を覆うように構造物を構築することが求められる場合もあり、このようなケースでは前記のように内部空間が使用できず、別途の方法が求められていた。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、内部空間を有する構造物を、内部空間をできるだけ使用せずに構築できる構造物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための第1の発明は、屋根を有する構造物であって、柱部と、前記柱部から側方に張り出すように設けられた桁部とによる架構が、複数並列に配置され、隣り合う前記柱部同士、および隣り合う前記桁部同士が横梁で連結され、隣り合う前記桁部の間に屋根材が設けられ、前記桁部と前記屋根材が前記屋根となり、前記柱部の前記屋根側への曲げモーメントに抵抗する機構が、前記柱部の前記屋根の反対側で設けられたことを特徴とする構造物である。
【0007】
本発明では、内部空間を有する構造物に、橋梁の架構を応用する。この架構は柱部から側方に桁部を張り出したものであり、一般的な橋梁の張出架設方法を適用して内部空間を極力使用せずに施工できる。例えば、上記の桁部は柱部から張出架設を行うことで、内部空間をほぼ使用せずに施工できる。また本発明では複数の架構の柱部同士、桁部同士を横梁により連結して一体の構造物を形成し、柱部の屋根側への曲げモーメントに抵抗する機構を設けることで、構造的安定性が向上する。
【0008】
前記桁部が前記柱部から斜材により吊り支持されることが望ましい。
屋根を構成する桁部が長スパンとなる場合は、斜張橋やエクストラドーズド橋のように、当該桁部を柱部から吊り支持するとよい。
【0009】
前記桁部は、前記柱部から前記屋根の反対側に張り出す張出部分を有し、前記機構は前記張出部分であることが望ましい。例えば、前記桁部の屋根部分は鋼桁であり、前記桁部の前記張出部分はコンクリート桁である。
上記の張出部分は、桁部の屋根部分に対するカウンターウェイトとして機能し、柱部の屋根側への曲げモーメントに抵抗することで構造的安定性が向上する。また桁部の屋根部分を鋼桁とし、張出部分はコンクリート桁とすることで、長尺の屋根部分と、短尺の張出部分との間で重量のバランスを取りやすくなる。
【0010】
前記構造物は壁を有し、隣り合う前記柱部の間に壁材が設けられ、前記柱部および前記壁材が前記壁となることが望ましい。
これにより、壁を有する構造物を構築できる。
【0011】
第2の発明は、屋根を有する構造物の構築方法であって、柱部の構築後、桁部を、前記柱部側から先端側へと順次延伸するように設けることで、前記柱部と前記桁部による架構を形成する工程(a)と、前記工程(a)により形成される前記架構であって、並列に配置される複数の前記架構の隣り合う前記柱部同士、および隣り合う前記桁部同士を横梁で連結する工程(b)と、を有し、隣り合う前記桁部の間に屋根材を設けることで、前記桁部と前記屋根材が前記屋根となり、前記柱部の前記屋根側への曲げモーメントに抵抗する機構が、前記柱部の前記屋根の反対側で設けられることを特徴とする構造物の構築方法である。
第2の発明は、第1の発明の構造物の構築方法である。
【0012】
前記工程(a)において、前記桁部のユニットを搬送装置により前記桁部の延伸方向に沿って施工済みの前記桁部の先端まで搬送し、当該先端に前記ユニットを取り付けることが望ましい。
これにより、構造物の内部空間をほぼ使用せずに、桁部を容易に施工できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、内部空間を有する構造物を、内部空間をできるだけ使用せずに構築できる構造物等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】構造物1を示す斜視図。
図2】構造物1の鉛直断面および平面を示す図。
図3】構造物1の側面を示す図。
図4】構造物1の構築方法を示す図。
図5】ユニットUの取付方法について説明する図。
図6】横梁17と屋根パネル15の取付方法について説明する図。
図7】アンカレイジ131を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.構造物1)
図1は、本発明の実施形態に係る構造物1を示す斜視図である。この構造物1は、斜張橋やエクストラドーズド橋(ED橋)などの橋梁の架構を、大容積の内部空間を有する構造物1に応用したものである。構造物1は屋根と壁とを備え、図示は省略するが、その内部空間には既存建物等が配置されている。
【0017】
構造物1は、斜張橋等の橋脚と主塔に対応する柱部11と、斜張橋等の主桁に対応する桁部12とを有し、桁部12は、柱部11から側方に張り出すように設けられる。桁部12は、柱部11の上部(桁部12より上方の部分)から斜材13により吊り支持される。柱部11、桁部12、および斜材13による架構(橋梁状架構ということがある)は、構造物1の平面の一方向に間隔を空けて複数並列に設けられる。この方向を、構造物1の幅方向という。
【0018】
図2(a)は、図1の線A-Aに沿った構造物1の鉛直断面を示す図であり、図2(b)は構造物1を上から見た平面を示す図である。桁部12は、柱部11から構造物1の屋根側およびその反対側に張り出すように設けられ、柱部11の両側の部分が、それぞれ柱部11から斜材13によって吊り支持される。桁部12において、屋根の反対側に張り出す張出部分121は、屋根側の部分122(以下、屋根部分という)に対するカウンターウェイトとして機能し、柱部11の屋根側への曲げモーメントに抵抗することで構造的安定性が向上する。
【0019】
柱部11は例えばRC(鉄筋コンクリート)造とする。また、桁部12の屋根部分122は鋼製部材によって形成された鋼桁であり、屋根の反対側に張り出す張出部分121は、RC造などコンクリートによって形成されたコンクリート桁である。ただし、柱部11や桁部12がこれに限ることはない。なお、斜材13にはPC鋼材等の緊張材が用いられる。
【0020】
隣り合う桁部12の屋根部分122の間には、板状の屋根材である屋根パネル15が設けられ、桁部12の屋根部分122と屋根パネル15が構造物1の屋根となる。また本実施形態では、屋根パネル15の下側で、隣り合う桁部12の屋根部分122の間に横梁17が設けられ、隣り合う桁部12の屋根部分122同士が横梁17によって連結される。横梁17の両端はこれらの屋根部分122のそれぞれとピン接合するが、剛接合としてもよい。
【0021】
一方、図1に示すように、隣り合う柱部11の間には、板状の壁材である壁パネル14と横梁16が設けられ、隣り合う柱部11同士が横梁16によって連結される。横梁16の両端は隣り合う柱部11のそれぞれとピン接合するが、剛接合としてもよい。
【0022】
構造物1の柱部11側の側面と対向する側面には、柱部18が配置される。図2(a)に示すように、桁部12の屋根部分122の先端は、柱部18の上に載置される。
【0023】
図3(a)は構造物1の柱部11側の側面を示す図であり、図3(b)は柱部18側の側面を示す図である。柱部18は、桁部12の位置に対応するように、構造物1の幅方向に間隔を空けて配置され、隣り合う柱部18の間にも、前記した壁パネル14と横梁16が設けられる。
【0024】
また図1に示すように、構造物1の幅方向の端面(褄面)にも柱部19が設けられる。柱部19は、桁部12の延伸方向に間隔を空けて複数配置され、壁パネル14と横梁16は、隣り合う柱部19の間にも設けられる。
【0025】
前記の柱部11、および上記の柱部18、19と壁パネル14は、構造物1の壁を構成する。なお、壁パネル14や屋根パネル15は例えば鋼製とするが、これに限ることはない。また横梁16、17は例えば鋼製の梁状部材であるが、これに限ることもない。
【0026】
(2.構造物1の構築方法)
構造物1の構築方法は特に限定されないが、例えば、前記の橋梁状架構(柱部11、桁部12、斜材13)を片押し式に施工してゆくことで、構造物1を構築できる。この際、図4(a)に示すように、既設架構の隣接位置で新たな柱部11を立ち上げ、桁部12の高さまで柱部11を構築したら、図4(b)に示すように、柱部11の立ち上げと並行して桁部12の施工を開始する。
【0027】
桁部12の張出部分121と屋根部分122は、根元側(柱部11側)から先端側へと順次延伸するように、張出部分121と屋根部分122の重量のバランスを取りながら張出架設してゆく。前記したように、桁部12の張出部分121はコンクリート桁となっており、現場打ちのコンクリートまたはプレキャストコンクリート部材により、従来の橋梁と同様の張出架設方法で施工できる。
【0028】
一方、桁部12の屋根部分122は鋼桁となっているが、屋根部分122についても、鋼製のユニットを用いて従来の橋梁と同様の張出架設方法で施工できる。より具体的には、例えば、図5(a)に示すようにリフト30を用い、柱部11に沿って鋼製のユニットUをリフトアップするか、または柱部11の外側でクレーン(不図示)によってユニットUを吊り上げることで、矢印aに示すように、ユニットUを桁部12より若干低い高さまでまず上昇させる。
【0029】
その後、ユニットUを搬送装置40に取り付け、搬送装置40を矢印bに示すように桁部12の延伸方向に沿って移動させ、施工済みの屋根部分122の先端までユニットUを搬送する。その後、ユニットUを当該先端に取り付け、必要に応じてユニットUと柱部11の間に斜材13を張設する。係る手順によるユニットUの取り付けを繰り返すことで、桁部12の屋根部分122の張出架設が行われる。
【0030】
図5(b)は搬送装置40の例であり、搬送装置40を桁部12の屋根部分122の先端側から見た図である。搬送装置40は、斜材13の位置を避けるように、斜材13の両側で桁部12上に配置された移動フレーム41を備え、各移動フレーム41から鉤型の垂下材42を桁部12を避けるように垂下させ、両垂下材42の下端同士を桁部12の下方の梁部43で連結した構成を有する。前記のユニットUは梁部43に支持される。
【0031】
各移動フレーム41は桁部12の延伸方向のレール44に沿って移動可能であり、これにより、ユニットUを桁部12の延伸方向に沿って搬送できる。レール44は、施工済みの屋根部分122の先端に新たなユニットUを取り付けるごとに、そのユニットUの上面に設置される。
【0032】
こうして図4(c)に示すように柱部11と桁部12を施工し、新たな橋梁状架構が形成されたら、図4(d)に示すように、桁部12の屋根部分122の先端に柱部18を設けるともに、屋根パネル15と横梁17の施工を行う。
【0033】
屋根パネル15と横梁17の施工時は、まず横梁17を、前記のユニットUと同様にリフト30等で上昇させた後、図6(a)に平面を示す搬送装置50に取り付ける。その後、矢印cに示すように、搬送装置50を桁部12の延伸方向に沿って移動させ、横梁17の設置箇所まで横梁17を搬送し、当該設置箇所において桁部12の屋根部分122の間に横梁17を取り付ける。この手順を繰り返すことで、隣り合う桁部12の屋根部分122の間に全ての横梁17が設置される。
【0034】
図6(b)は搬送装置50の例であり、搬送装置50を桁部12の屋根部分122の先端側から見た図である。搬送装置50は、隣り合う桁部12のそれぞれに配置した移動フレーム51を備え、各移動フレーム51の上端部同士を梁部52で連結した構成を有する。
【0035】
各移動フレーム51は、斜材13の位置を避けるように、斜材13に対し、隣り合う桁部12の間側に配置され、前記の横梁17は、隣り合う桁部12の間で、梁部52から吊材53により吊り支持される。各移動フレーム51は桁部12の延伸方向のレール54に沿って移動可能であり、これにより、横梁17を桁部12の延伸方向に沿って搬送できる。
【0036】
本実施形態では、横梁17の設置後、屋根パネル15も横梁17と同様にリフト30等や搬送装置50で搬送し、隣り合う桁部12の屋根部分122の間に設置する。図6(b)に示すように横梁17は桁部12の下方で吊り支持するが、屋根パネル15を搬送装置50で搬送する際は、図6(c)に示すように、屋根パネル15を桁部12の上方で吊り支持する。屋根パネル15のリフトアップと干渉しないよう、桁部12の屋根部分122の根元側での幅を、それより先端側での幅に比べて小さくすることも可能である。
【0037】
屋根パネル15と横梁17の施工後、隣り合う柱部11の間、および隣り合う柱部18の間で、壁パネル14と横梁16の施工を行う。これらの部材は、構造物1の外側でクレーン(不図示)等により吊り上げ、設置箇所に設置することができる。
【0038】
これにより図4(e)に示すように構造物1が幅方向に延伸し、図4(a)~図4(e)の工程を繰り返すことで、構造物1が完成する。なお、構造物1の幅方向の端面では、前記した柱部19も設置され、柱部19の間には、上記と同様に壁パネル14と横梁16が設けられる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、内部空間を有する構造物1に斜張橋等の橋梁の架構を応用する。この架構(橋梁状架構)は柱部11から側方に桁部12を張り出したものであり、一般的な橋梁の張出架設方法を適用して内部空間を極力使用せずに施工できる。例えば、上記の桁部12は柱部11から張出架設を行うことで、内部空間をほぼ使用せずに施工できる。
【0040】
また本実施形態では複数の橋梁状架構の柱部11同士、桁部12同士を横梁16、17により連結して一体の構造物1を形成し、柱部11の屋根側への曲げモーメントに抵抗する張出部分121を設けることで、構造的安定性が向上する。
【0041】
また本実施形態では、斜張橋やエクストラドーズド橋のように、柱部11から桁部12の屋根部分122を吊り支持することで、屋根部分122の長スパン化(内部空間の大容積化)に対応できる。本実施形態では、桁部12の張出部分121がコンクリートによって形成される一方、桁部12の屋根部分122は鋼構造により軽量化されるので、長尺の屋根部分122と、これより短尺の張出部分121との間で重量のバランスは取りやすい。
【0042】
また本実施形態では隣り合う柱部11、18、19の間に壁パネル14が設けられ、柱部11、18、19および壁パネル14が壁となることで、壁を有する構造物1を構築できる。
【0043】
また本実施形態では、桁部12の屋根部分122を構築する際、そのユニットUを搬送装置40により施工済みの屋根部分122の先端まで搬送し、当該先端にユニットUを取り付けることで、施工が容易になる。
【0044】
しかしながら、本発明は前記の実施形態に限定されない。例えば前記の実施形態では桁部12の張出部分121をカウンターウェイトとして機能させ、柱部11の屋根側への曲げモーメントに抵抗させているが、その代わりに、敷地に余裕があれば、図7に示すように、柱部11から屋根の反対側に延びる斜材13をアンカーとして用い、その下端を、地上に設けたアンカレイジ131または地表面下に固定してもよい。係る機構によっても、柱部11の屋根側への曲げモーメントに抵抗することができ、この場合では張出部分121を省略できる。
【0045】
また、搬送装置40、50の構成も前記したものに限らず、桁部12の延伸方向に沿って移動できる構成であればよい。さらに、構造物1の内部空間に位置する既存建物の解体時などでは、桁部12の屋根部分122に解体後の部材の搬出装置を取り付け、これにより、桁部12の延伸方向に沿って解体後の部材を構造物1の外に搬出できるようにしても良い。
【0046】
また、前記の搬送装置40、50や上記の搬出装置を、桁部12の屋根部分122だけでなく、張出部分121を含めた桁部12の全長に亘って移動できるようにしてもよい。この場合、例えば前記のユニットUを、構造物1の外側で搬送装置40に取り付け、搬送装置40を桁部12の張出部分121から施工済みの屋根部分122の先端まで桁部12に沿って移動させることも可能である。
【0047】
また柱部11や桁部12等の橋梁状架構の形状、構成も前記に限ることはない。例えば桁部12の屋根部分122のスパンが短ければ、PC桁橋のように斜材13による吊り支持を省略した構成とすることも可能である。また斜材13による吊り支持を行う場合でも、例えば、一対の斜材13により桁部12の幅方向の両側のそれぞれを吊り支持する二面吊りの構成を適用してよい。この場合も、搬送装置40、50は斜材13と干渉しないように設けられる。
【0048】
また、桁部12の張出部分121の先端に、屋根部分122の先端と同様に柱部18を設け、張出部分121の先端を柱部18上に載置してもよい。また構造物1の使用目的にもよるが、構造物1の壁を省略することも可能であり、この場合は、壁パネル14が不要となる。
【0049】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0050】
1:構造物
11、18、19:柱部
12:桁部
13:斜材
14:壁パネル
15:屋根パネル
16、17:横梁
30:リフト
40、50:搬送装置
121:張出部分
122:屋根部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7