IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-超音波プローブ 図1
  • 特開-超音波プローブ 図2
  • 特開-超音波プローブ 図3
  • 特開-超音波プローブ 図4
  • 特開-超音波プローブ 図5
  • 特開-超音波プローブ 図6
  • 特開-超音波プローブ 図7
  • 特開-超音波プローブ 図8
  • 特開-超音波プローブ 図9
  • 特開-超音波プローブ 図10
  • 特開-超音波プローブ 図11
  • 特開-超音波プローブ 図12
  • 特開-超音波プローブ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141332
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
H04R17/00 332A
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052915
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】久保 景太
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
(72)【発明者】
【氏名】岩井 光
(72)【発明者】
【氏名】大澤 栄治
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE03
4C601GB02
4C601GB06
4C601GB34
4C601GB41
4C601GB46
4C601GC03
4C601GC04
4C601GC07
5D019AA22
5D019BB19
5D019FF04
5D019GG01
5D019GG03
(57)【要約】
【課題】測定対象に容易に固定可能で、かつ、測定対象に高い伝搬効率で超音波を送信可能な超音波プローブを提供する。
【解決手段】超音波プローブは、超音波を送信する超音波デバイスと、前記超音波デバイスの、超音波の送信面に設けられて測定対象に接する音響シートと、を備え、前記音響シートは、前記送信面から出力された超音波を所定の方向に導く音響レンズと、前記音響レンズの少なくとも一部を覆い、前記測定対象との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる基材と、少なくとも前記基材の前記測定対象に対向する第一面に設けられて、前記音響シートを前記測定対象に対して着脱可能に固定する第一固定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する超音波デバイスと、
前記超音波デバイスの、超音波の送信面に設けられて測定対象に接する音響シートと、を備え、
前記音響シートは、
前記送信面から出力された超音波を所定の方向に導く音響レンズと、
前記音響レンズの少なくとも一部を覆い、前記測定対象との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる基材と、
少なくとも前記基材の前記測定対象に対向する第一面に設けられて、前記音響シートを前記測定対象に対して着脱可能に固定する第一固定部と、
を備える、超音波プローブ。
【請求項2】
前記音響シートは、前記超音波デバイスに対向する第二面に、当該音響シートを前記超音波デバイスに着脱可能に固定する第二固定部を備える、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記基材は、前記音響レンズの全体を覆う、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第一固定部は、前記基材の前記第一面の全体を覆う、
請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記基材は、前記送信面に直交する方向から見た場合に、前記音響レンズと重なる領域に、前記測定対象に対向する側から前記音響レンズ側に凹状となる凹部を有し、
前記第一固定部は、前記基材のうち前記凹部が設けられない部分を覆う、
請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記音響レンズは、シリンドリカル形状を有し、
前記基材は、前記音響レンズの所定の範囲を露出させる開口窓を有する、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記超音波デバイスは、前記送信面に対向する位置に前記音響レンズが配置されるように、前記音響シートを位置決めするアライメント部を備える、
請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記超音波デバイスは、
前記送信面を有し、かつ当該送信面から超音波を送信する超音波素子と、
前記超音波素子を収納する筐体と、を備え、
前記超音波素子は、前記送信面を有する振動板と、前記振動板に設けられる圧電素子とを備え、前記圧電素子の駆動により前記振動板を振動させて前記送信面から超音波を送信する、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体に対する超音波の送受信を実施する超音波プローブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、超音波を送信する振動子及び音響レンズを備えるセンサーが組み込まれた超音波プローブ(超音波診断装置)と、当該超音波プローブへの血液等の付着を防ぐカバー(超音波診断装置用カバー)とを備える。カバーは、超音波プローブが挿入される軟質袋状の筒状体と、筒状体への超音波プローブの挿入を案内するインナーブラケットと、超音波プローブのセンサーを覆うプローブカバー体とを備える。
なお、特許文献1に示す超音波プローブは、筒状のケーシングの先端にセンサーが設けられ、作業者が手で持って生体の所定の位置にセンサーを当接させて維持するものである。
これに対して、振動膜上に圧電素子を設け、圧電素子の駆動により振動膜を振動させて超音波を出力する薄型の超音波プローブでは、装置自体もより薄型化、小型化、かつ軽量化が可能であり、生体に対して貼着して使用することが可能となる。このような薄型の超音波プローブでは、特許文献1のような超音波プローブよりも超音波の伝搬効率も高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-72369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、超音波プローブをカバーに挿入する場合、両者の間に空気層が介在する可能性が高くなり、空気層での超音波の反射によって超音波の伝搬効率が低下する。また、上述したような薄型の超音波プローブに対して、特許文献1のカバーを適用すると、超音波プローブと生体との間に樹脂プレートが介在することになる。したがって、音響インピーダンスの違いによる超音波の伝搬効率の低下がさらに生じる。
特に、圧電素子によって振動膜を振動させて超音波を出力する薄型の超音波プローブは、圧電体自体を振動させるバルク型の超音波プローブに比べて、測定対象への超音波の伝搬効率が高いが、上記のように樹脂プレートの介在による超音波の伝搬効率の低下が生じると、薄型の超音波プローブの強みが損なわれることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様の超音波プローブは、超音波を送信する超音波デバイスと、前記超音波デバイスの、超音波の送信面に設けられて測定対象に接する音響シートと、を備え、前記音響シートは、前記送信面から出力された超音波を所定の方向に導く音響レンズと、前記音響レンズの少なくとも一部を覆い、前記測定対象との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる基材と、少なくとも前記基材の前記測定対象に対向する第一面に設けられ、前記超音波デバイスを前記測定対象に着脱可能に固定する第一固定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第一実施形態に係る超音波プローブを模式的に示す斜視図。
図2図1の平面Aで切断した超音波プローブの概略断面図。
図3】第一実施形態における超音波素子の一例を示す概略平面図。
図4図3のB-B線で超音波素子を切断した場合の概略断面図。
図5】音響インピーダンスの比Z12(=Z/Z)と、音の強さの反射率RIとの関係を示す図。
図6】第二実施形態における超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図7】第二実施形態における他の超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図8】第三実施形態における超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図9】第三実施形態における他の超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図10】変形例1に係る超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図11】変形例1に係る他の超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図12】変形例1に係るさらに他の超音波プローブの概略構成を模式的に示した断面図。
図13】変形例5に係る超音波プローブをZ方向から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第一実施形態]
以下、本開示の第一実施形態について説明する。
図1は、第一実施形態に係る超音波プローブ1の斜視図である。
図2は、図1の超音波プローブ1を平面Aで切断した場合の概略断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の超音波プローブ1は、超音波デバイス10と、固定シート50(音響シート)とを備える。そして、固定シート50を用いて超音波デバイス10を生体等の測定対象に貼着することで、超音波プローブ1が測定対象に着脱自在に固定される。
【0008】
[超音波デバイス10の構成]
超音波デバイス10は、図2に示すように、筐体20と、筐体20に収納される超音波素子30とを備える。なお、図2は、超音波デバイス10の概略構成を模式的に示した図であって、筐体20に対する超音波素子30の厚みは実際とは異なる。また、図2での図示は省略しているが、筐体20には、超音波素子30を固定するための固定機構、超音波素子30を制御する制御基板、電力を供給するバッテリー等を備え、これらの各部材を収納するための配置スペースも設けられていてもよい。
【0009】
図3は、本実施形態における超音波素子30の一例を示す平面図であり、図4は、超音波素子30を図3のB-B線で切断した際の概略断面図である。
超音波素子30には、X方向及びY方向に沿って、複数の超音波トランスデューサーTrが2次元アレイ状に配置されている。ここで、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とし、Z方向は、超音波が送信される本開示の超音波の送信方向に相当する。
なお、図3は、説明の便宜上、超音波トランスデューサーTrの配置数を減らしているが、実際には、より多くの超音波トランスデューサーTrが配置されていてもよい。
【0010】
超音波素子30は、図4に示すように、素子基板31と、素子基板31上に設けられた振動板32と、振動板32上に設けられた圧電素子33と、を備えて構成されている。
素子基板31は、例えばSi等の半導体基板により構成されている。この素子基板31には、各々の超音波トランスデューサーTrに対応した基板開口部31Aが設けられている。本実施形態では、各基板開口部31Aは、素子基板31の基板厚み方向(Z方向)を貫通した貫通孔であり、当該貫通孔の-Z側に振動板32が設けられる。
【0011】
また、基板開口部31Aの振動板32が設けられない側(+Z側)には、測定対象である生体に近い音響インピーダンスを有する音響整合材を充填してもよく、音響整合材としては、例えば、シリコーン等の樹脂材を用いることができる。
【0012】
振動板32は、例えばSiO及びZrOの積層体等より構成され、素子基板31の-Z側全体を覆って設けられている。すなわち、振動板32は、基板開口部31Aを構成する隔壁31Bにより支持され、基板開口部31Aの-Z側を閉塞する。この振動板32の厚み寸法は、素子基板31に対して十分小さい厚み寸法となる。
【0013】
圧電素子33は、各基板開口部31Aを閉塞する振動板32上にそれぞれ設けられている。この圧電素子33は、例えば、振動板32から-Z側に向かって下部電極33A、圧電膜33B、及び上部電極33Cを積層した積層体により構成されている。
ここで、振動板32のうち、基板開口部31Aを閉塞する部分は振動部32Aを構成し、この振動部32Aと、圧電素子33とにより、1つの超音波トランスデューサーTrが構成される。
このような超音波トランスデューサーTrでは、下部電極33A及び上部電極33Cの間に所定周波数の矩形波電圧(駆動信号)が印加されることで、圧電膜33Bが撓んで振動部32Aが振動して+Z側に超音波が送出される。また、生体から反射された超音波(反射波)により振動部32Aが振動されると、圧電膜33Bの上下で電位差が発生する。これにより、下部電極33A及び上部電極33Cの間に発生する電位差を検出することで、受信した超音波を検出することが可能となる。
【0014】
本実施形態では、図3に示すように、Y方向に並ぶ超音波トランスデューサーTrの下部電極33Aが互いに結線される。これらの下部電極33Aは、駆動端子33Dに接続され、当該駆動端子33Dから、例えばフレキシブルプリント基板等を介して図示略の制御基板に電気接続されている。
また、X方向に並ぶ超音波トランスデューサーTrの上部電極33Cが互いに結線される。これらの上部電極33Cは、共通端子33Eに接続され、この共通端子33Eは、例えば、フレキシブルプリント基板等を介して制御基板に電気接続されている。
ここで、本実施形態では、音響レンズ60により、超音波の進行方向を制御するものであるため、各超音波トランスデューサーTrは、同時に駆動される構成となっているが、これに限定されない。例えば、Y方向に並ぶ下部電極33Aにより結線された超音波トランスデューサーTrにより1つのチャンネルを構成し、X方向に並ぶ各チャンネルをそれぞれ独立して駆動させるように、各チャンネルに対応した駆動電極を設けてもよい。この場合、各チャンネルを遅延駆動させることで、超音波の送信方向を制御することができる。また、各超音波トランスデューサーTrをそれぞれ独立して駆動させる構成としてもよい。
【0015】
上述したような超音波素子30には、基板強度を向上させるために、さらに補強板が設けられる構成としてもよい。補強板を設ける場合、振動板32の素子基板31とは反対側の面に設ける。この際、各振動部32Aの振動スペースを確保できるように、振動部32A以外の領域にスペーサー(接合層)を設け、当該スペーサーを介して補強板を接合する。
【0016】
ところで、図4に示す例では、素子基板31に基板開口部31Aを設けることで、振動板32を各振動部32Aに分割する例であるが、補強板と振動板32との間に、例えば樹脂材等により形成される壁部を形成し、当該壁部によって振動板32を各振動部32Aに分割する構成としてもよい。この場合、素子基板31が設けられていなくてもよい。
【0017】
振動板32の+Z側の面は、圧電素子33の駆動により超音波が+Z側に送信される送受信面30A(本開示の送信面)となる。
【0018】
筐体20は、図1及び図2に示すように、略直方体矩形状を有し、生体に対向する貼着面21を有する。この貼着面21には、窓部22が設けられ、窓部22から超音波素子30の送受信面30Aが露出する。ここで、本実施形態では、筐体20の貼着面21が、送受信面30Aと同一平面である例を示す。
【0019】
また、本実施形態の筐体20には、固定シート50を貼着した際に固定シート50の固定を補助する固定部24を備える。
本実施形態では、固定部24は、図1に示すように、係合突起241と、係合凹部55とを備える。係合突起241は、筐体20の貼着面21に交差する側面23に設けられ、外側に向かって突出する。係合凹部55は、係合突起241と略同一サイズを有する凹部であり、固定シート50の基材70に設けられる。固定シート50は、後述する第二粘着層54により筐体20に固定されるが、この固定部24は、第二粘着層54による固定を補助し、固定シート50の剥がれを抑制する。また、固定部24は、アライメント部として機能させてもよい。例えば、係合突起241を係合凹部55に係合させることで、後述する音響レンズ60が超音波素子30の送受信面30Aに対向する位置に位置合わせされるよう構成されていてもよい。
【0020】
[固定シート50の構成]
本実施形態の超音波プローブ1を生体に対して固定する場合、超音波デバイス10の貼着面21に対して、固定シート50を貼着し、かつ、この固定シート50を生体に貼着して固定する。固定シート50は、超音波デバイス10の貼着面21のみに貼着されて固定されてもよく、図1に示すように、筐体20の貼着面21から、筐体20の側面に亘って貼着されていてもよい。
この固定シート50は、音響レンズ60と、基材70とを備える。固定シート50の生体に対向する面は、第一面51であり、反対側の面、つまり超音波デバイス10に対向する面は、第二面52である。音響レンズ60及び基材70の-Z側の面は同一平面であり、固定シート50の第二面52を構成する。
【0021】
音響レンズ60は、固定シート50を貼着面21に貼着した場合に、送受信面30Aに対向する位置に配置される。音響レンズ60は、送受信面30Aから送信された超音波の送信方向を変更する素子である。例えば、本実施形態では、シリンドリカル形状に形成された音響レンズ60によって、超音波を所定の深さ位置に収束させる。また、音響レンズ60の曲率がそれぞれ異なる複数の固定シート50を用意しておき、生体の対象深度に応じた音響レンズ60を有する固定シート50を超音波デバイス10に貼着するようにしてもよい。
【0022】
基材70は、音響レンズ60とともに固定シート50を構成する。基材70は、可撓性を有し、生体表面や超音波プローブの形状に応じて変形可能となる。例えば、図1に示す例では、固定シート50を超音波デバイス10に固定する場合に、可撓性を有する基材70を貼着面21から側面23に亘って湾曲させて(折り曲げて)、固定シート50を超音波デバイス10の表面に沿わせる。
本実施形態では、基材70は、音響レンズ60の全体及び、貼着面21の全体を覆って設けられ、基材70の超音波デバイス10とは反対側の面(つまり、+Z側の面)が、生体に貼着される第一面51となる。基材70は、音響レンズ60と異なる音響インピーダンスを有し、例えば、音響レンズ60における音速は、基材70における音速よりも遅い。
また、基材70には、上述したように固定部24を構成する係合凹部55が設けられる。
【0023】
固定シート50の第一面51には、固定シート50を生体に固定するための第一粘着層53(第一固定部)が設けられる。固定シート50の第二面52には、固定シート50を超音波デバイス10に固定するための第二粘着層54(第二固定部)が設けられる。
第一粘着層53は、生体に対して固定シート50を着脱自在に固定する粘着部材により構成される。本実施形態では、基材70が、音響レンズ60の+Z側の全体を覆って設けられ、第一粘着層53は、当該基材70の+Z側の全体を覆って設けられている。
第二粘着層54は、超音波デバイス10に対して固定シート50を着脱自在に固定する粘着部材により構成される。第二粘着層54は、音響レンズ60及び基材70の-Z側の面である第二面52全体を覆って設けられている。
【0024】
ここで、これらの音響レンズ60、基材70、第一粘着層53、及び第二粘着層54は、それぞれ生体との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる。第一粘着層53及び第二粘着層54は、同一の音響インピーダンスを有してもよく、異なっていてもよい。音響インピーダンスが異なる場合、第一粘着層53は、生体及び基材70に近い音響インピーダンスを有する素材により構成され、第二粘着層54は、音響レンズ60に近い音響インピーダンスを有する素材により構成される。ここで、互いの素材において「音響インピーダンスの差が所定の閾値未満」とは、音の強さの反射率RIが所定値未満となることを意味する。「所定値」とは、例えば、測定対象における所定の深度に対して、所定の超音波処理(例えば、内部断層画像の表示処理や、対象幹部の超音波治療等)に応じた強さの超音波を伝達させるための許容値であり、測定深度や超音波処理の内容に応じて適宜設定することができる。
【0025】
ここで、媒質Iの音響インピーダンスをZとし、媒質IIの音響インピーダンスをZとすると、媒質Iから媒質IIに超音波が入射する場合の音の強さの反射率RIは、RI=(1-Z12/(1+Z12により表される。図5は、音響インピーダンスの比Z12(=Z/Z)と、音の強さの反射率RIとの関係を示す図である。
本実施形態では、音の強さの反射率RIが5%未満となるように設定する。この場合、図5のように、音響インピーダンスの比Z12が0.65<Z12<1.55を満たすように、各部の素材を選択すればよい。例えば、生体を対象とする場合、基材70をシリコーンとし、音響レンズ60をシリコーンゴムとし、第一粘着層53及び第二粘着層54をシリコーン系粘着剤とする。なお、音響レンズ60と基材70とは異なる音響インピーダンスを有する必要があるが、第一粘着層53や第二粘着層54は、音響レンズ60や基材70、または生体と同一の音響インピーダンスを有していてもよい。
【0026】
[超音波プローブ1の生体への固定]
上述したような、固定シート50は、超音波デバイス10に貼着されていない状態で、第一粘着層53及び第二粘着層54に、それぞれ、図示略の保護シートが貼付されている。保護シートは、超音波プローブ1の使用前に、第一粘着層53及び第二粘着層54への異物の付着を抑制するためのシートである。使用時に、第一粘着層53及び第二粘着層54から保護シートを剥がす。
【0027】
まず、固定シート50から、第二粘着層54に貼付された保護シートを剥がし、筐体20の貼着面21に、第二粘着層54を当接させて固定シート50を貼着する。
この際、固定部24を用いて、固定シート50と貼着面21との位置合わせを行ってもよい。これにより、超音波素子30の送受信面30Aに対して、適切に音響レンズ60を位置決めすることができる。
【0028】
この後、固定シート50から、第一粘着層53に貼付された保護シートを剥がし、生体に対して第一粘着層53を当接させて固定シート50を生体に貼着固定する。これにより、超音波プローブ1が生体に固定される。
【0029】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波プローブ1は、超音波を送信する超音波デバイス10と、超音波デバイス10の送受信面30Aに設けられて測定対象である生体に接する固定シート50と、を備える。固定シート50は、超音波デバイス10から送信された超音波を所定の方向に導く音響レンズ60と、音響レンズ60の少なくとも一部を覆い、生体との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる基材70と、基材70の生体に対向する第一面51に設けられ、超音波デバイス10を生体に着脱可能に固定する第一粘着層53と、を備える。
このような本実施形態では、超音波デバイス10と生体との間に固定シート50が介在して、当該固定シート50を構成する音響レンズ60、基材70、第一粘着層53は、それぞれ、生体との音響インピーダンスの差が近い、つまり、音の強さの反射率RIが5%未満となるように構成されている。したがって、超音波プローブ1から送信される超音波が、生体との間に介在する固定シートによって阻害される不都合が抑制され、生体に対して高い伝搬効率で超音波を送信することができる。
また、医療現場等において、超音波デバイス10を生体に繰り返し使用する場合では、感染防止のために超音波デバイス10を滅菌処理する必要がある。この滅菌処理では、通常、滅菌装置が用いられ、当該滅菌装置では、滅菌チャンバー内に超音波プローブ1を投入した後、チャンバー内を減圧して真空にし、滅菌ガスを充満させて滅菌を行う。この際、本実施形態では、超音波プローブ1は、超音波デバイス10に固定シート50を貼着した状態で、滅菌チャンバー内に投入される。したがって、チャンバー内を減圧した際に筐体20から露出する振動板32が固定シート50で覆われることになり、減圧によって作用する振動板32への応力を軽減することができ、超音波デバイス10の破損を抑制できる。
【0030】
本実施形態では、固定シート50は、超音波デバイス10に対向する第二面52に設けられ、超音波デバイス10に固定シート50を着脱可能に固定する第二粘着層54をさらに備える。
このため、超音波デバイス10に対して貼着する固定シート50を交換することができる。つまり、生体に対して接触する固定シート50を、超音波プローブ1の使用毎に交換することができ、衛生的に、超音波プローブ1を生体に貼着することができる。
また、音響レンズ60の超音波の送信方向が異なる複数の固定シート50を用意しておくことで、生体内の対象深度や、超音波プローブの使用目的に応じた音響レンズ60を有する固定シート50を選択することができる。
【0031】
本実施形態では、基材70は、音響レンズ60の全体を覆う。
これにより、本実施形態では、基材70の生体側の第一面51を平坦面に形成できる。このような構成では、音響ジェル等を用いずとも、音響レンズ60と基材70との間に気泡が混入することなく、高い伝搬効率で超音波を生体内に送信することができる。
【0032】
本実施形態では、第一粘着層53は、基材70の第一面51の全体を覆う。
上記のように、音響レンズ60の全体を基材70で覆う場合、基材70の生体側の第一面51を平坦面にできる。そして、当該第一面51の全体を覆うように第一粘着層53を設けることで、固定シート50を生体に固定する場合に、固定シート50と生体との間での気泡の混入を抑制できる。
【0033】
本実施形態において、超音波デバイス10は、送受信面30Aを有し、かつ当該送受信面30Aから超音波を送信する超音波素子30と、超音波素子30を収納する筐体20と、を備える。超音波素子30は、送受信面30Aを有する振動板32と、振動板32に設けられる圧電素子33とを備える。圧電素子33の駆動により振動板32を振動させて送受信面30Aから超音波を送信する。筐体20は、固定シート50に対向する貼着面21に、送受信面30Aを露出させる窓部22を有し、さらに、固定シート50を筐体20に係合する固定部24を備える。そして、本実施形態では、固定シート50は、第二粘着層54により筐体20に固定されるが、この固定部24を第二粘着層54による固定の補助として用いることができ、固定シート50の剥がれを抑制できる。
さらに、本実施形態において、この固定部24を本開示のアライメント部として機能させてもよい。これにより、超音波デバイス10に固定シート50を固定する場合に、固定部24により、超音波デバイス10に対する固定シート50の位置を適切に調整できる。すなわち、窓部22から露出する送受信面30Aに対して音響レンズ60が対向するように、固定シート50を超音波デバイス10に位置決めすることができる。
【0034】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、固定シート50の基材70は、音響レンズ60の全体を覆ったが、第二実施形態では、音響レンズ60の一部が露出する点で上記第一実施形態と相違する。
図6は、第二実施形態における超音波プローブ1Aの概略構成を模式的に示した断面図である。
なお、以降の説明にあたり、同一構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0035】
本実施形態の超音波プローブ1Aでは、第一実施形態と同様、超音波デバイス10と、固定シート50Aとを備える。超音波デバイス10の構成は第一実施形態と同様である。
一方、固定シート50Aは、音響レンズ60と、基材70Aとを備え、基材70Aは、開口窓71を備える。
【0036】
この開口窓71は、音響レンズ60の所定範囲を露出させる。すなわち、本実施形態では、基材70Aは、音響レンズ60の全体を覆うものではなく、開口窓71において、音響レンズ60が+Z側に露出する。
例えば、図6では、音響レンズ60は、第一実施形態と同様、シリンドリカル形状を有し、Y軸に沿った中心軸が頂部60Aとなる凸状に形成される。そして、開口窓71は、音響レンズ60の頂部60Aを中心として、±X方向に所定寸法の範囲が露出される。
【0037】
第一粘着層53は、基材70Aの+Z側の面に形成される。つまり、図6の例では、第一粘着層53は、音響レンズ60の+Z側面には設けられず、音響レンズ60の頂部60Aを中心とした所定範囲は、生体に対して直接接触する。
【0038】
このような超音波プローブ1Aでは、第一実施形態と同様、固定シート50Aを超音波デバイス10に固定した後、第一粘着層53を露出させる。そして、第一粘着層53の開口窓71に音響ジェルを充填して、生体に対して第一粘着層53を貼着する。これにより、開口窓71と音響レンズ60との間のすきまに空気層が形成される不都合を抑制でき、かつ、音響レンズ60から基材70Aや第一粘着層53を介さずに生体に超音波を送信できる。なお、開口窓71への音響ジェルの充填は必須ではなく、例えば体内組織に超音波プローブ1Aを直接貼着する場合等では、体液が音響ジェルの代わりとなるので、音響ジェルを用いる必要がない。
【0039】
また、図7は、第二実施形態における他の超音波プローブ1Bの構成を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、第一粘着層53は、基材70A及び音響レンズ60の+Z側の全体を覆って設けられていてもよい。この場合、生体と固定シート50Aとの間に粘着ジェルを充填する必要がない。
【0040】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、音響レンズ60は、シリンドリカル形状を有し、基材70Aは、音響レンズ60の所定の範囲を露出させる開口窓71を有する。
これにより、音響レンズ60の一部が開口窓71から生体側に露出する。このため、基材70により音響レンズ60が覆われないため、超音波をより効率よく生体に伝搬させることができる。
【0041】
[第三実施形態]
次に第三実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、第一面51、つまり基材70の+Z側の面は、平坦面であるが、第三実施形態では、凹部を有する点で上記第一実施形態と相違する。
図8は、第三実施形態の超音波プローブ1Cの概略構成を模式的に示した断面図である。
【0042】
本実施形態では、図8に示すように、基材70Bは、+Z側の第一面51にZ方向から見て音響レンズ60と重なる位置に、音響レンズ60側に凹状となる凹部72が設けられる。
この凹部72は、音響ジェルの充填位置である。つまり、本実施形態では、超音波プローブ1Cを生体に固定する場合に、凹部72に対して音響ジェルを充填した上で固定シート50を第一粘着層53により生体に固定する。この場合、第二実施形態の図6に比べて、凹部72が設けられることで、音響ジェルを保持することができ、音響ジェルが流れ出る不都合を抑制できる。
【0043】
また、図9は、第三実施形態における他の超音波プローブ1Dの構成を模式的に示す断面図である。
図8に示す例では、基材70Bは、音響レンズ60の全体を覆い、凹部72の底部が、Z方向から見て音響レンズ60と重なる位置で、音響レンズ60を覆う。
これに対して、図9に示す基材70Cのように、凹部72の底部に底部開口窓721が設けられ、第二実施形態のように、音響レンズ60が凹部72から露出する。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では。基材70B,70Cは、Z方向から見た場合に、音響レンズ60と重なる領域に、生体に対向する側から音響レンズ60側に凹状となる凹部72を有する。そして、第一粘着層53は、基材70B、70Cのうち凹部72が設けられない部分を覆う。
これにより、固定シート50を生体に貼着する場合に、凹部72に音響ジェルを充填して超音波プローブ1Cを生体に固定することができる。したがって、第一粘着層53として音響インピーダンスを考慮する必要がなく、固定シート50の設計自由度を向上させることができる。
【0045】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0046】
[変形例1]
上記実施形態では、筐体20の貼着面21と、超音波素子30の送受信面30Aと、が同一平面状にある例を示したが、これに限定されない。
図10は、変形例1に係る超音波プローブ1Eの概略構成を模式的に示した断面図である。図11は、変形例1に係る他の超音波プローブ1Fの概略構成を模式的に示した断面図である。
例えば、図10に示すように、貼着面21に対して、送受信面30Aが生体から遠くに位置し、凹状となる形状であってもよい。また、図11に示すように、貼着面21に対して、送受信面30Aが生体側に突出していてもよい。いずれの場合でも、貼着面21と送受信面30Aとの段差が第二粘着層54の厚みの半値以内であれば、図10及び図11に示すように、第二粘着層54の変形により超音波デバイス10と固定シート50との間への気泡の進入を抑制しつつ、超音波デバイス10に固定シート50を貼着できる。
【0047】
図12は、変形例1に係るさらに他の超音波プローブ1Gの概略構成を模式的に示した断面図である。
図12に示すように、送受信面30Aが、貼着面21に対して、第二粘着層54の厚み以上に生体から離れた位置にある場合、送受信面30Aと貼着面21との段差部分に充填剤30Bを充填する。これにより、貼着面21及び充填剤30Bの+Z側の面が同一平面となり、第二粘着層54を貼着する際の気泡の混入を抑制できる。
【0048】
[変形例2]
上記実施形態では、超音波素子30として、振動板32に圧電素子33を配置し、圧電素子33により、振動板32の振動部32Aを振動させることで、超音波を送信する構成を例示した。これに対して、超音波素子30として、圧電体に電圧を印加して、圧電体自体を振動させる構成としてもよい。
【0049】
[変形例3]
上記実施形態では、音響レンズ60として、シリンドリカル形状を有し、送受信面30Aから送信された超音波を生体の所定深さ位置に収束させる例を示した。これに対して、音響レンズ60として、超音波を発散させる構成、つまり凹形状の音響レンズを設けてもよい。言い換えると、生体内から送信された超音波を超音波素子30に収束させる。
この場合、超音波プローブを、超音波受信用のプローブとして機能させてもよい。
【0050】
[変形例4]
上記実施形態では、固定シート50は、超音波デバイス10に対して第二粘着層54によって着脱自在に固定される例を示したが、これに限定されない。
例えば、固定シート50は、超音波デバイス10に対して、接合層等によって強固に接合されていてもよい。
【0051】
[変形例5]
上記実施形態では、固定部24を、筐体20に対して固定シート50を位置決めするためのアライメント部として機能させてもよい旨を説明した。これに対して、固定部24とは別のアライメント部をさらに設ける構成としてもよい。
つまり、上記実施形態では、固定シート50が筐体20の貼着面21から側面23に亘って貼着され、固定部24に係合される構成例であるが、固定シート50は、筐体20の貼着面21のみに貼着される構成としてもよい。この場合、筐体20と固定シート50との位置合わせを行うためのアライメント部を、貼着面21に設けることがより好ましい。
図13は、変形例5に係る超音波プローブ1HをZ方向から見た図である。
例えば、図13の超音波プローブ1Hでは、アライメント部24Aは、貼着面21に設けられている。この場合、貼着面21、及び、固定シート50の基材70の第二面52のいずれか一方に係合突起を設け、他方に係合凹部を設ける構成としてもよい。
【0052】
また、アライメント部24Aとしては、また、係合突起に係合凹部を係合させる構成に限定されない。例えば、基材が透明部材により構成されている場合、筐体20に第一アライメントマークを設け、固定シート50に第二アライメントマークを設け、音響レンズ60が送受信面30Aに対向する位置に配置された時に、第一アライメントマークと第二アライメントマークとが一致するように構成してもよい。この場合、目視により第一アライメントマークと第二アライメントマークとが一致するように固定シート50を位置決めする。その他、いかなる方法により、固定シート50を超音波デバイス10に位置決めしてもよい。
【0053】
[本開示のまとめ]
本開示の一態様の超音波プローブは、超音波を送信する超音波デバイスと、前記超音波デバイスの、超音波の送信面に設けられて測定対象に接する音響シートと、を備え、前記音響シートは、前記送信面から出力された超音波を所定の方向に導く音響レンズと、前記音響レンズの少なくとも一部を覆い、前記測定対象との音響インピーダンスの差が所定の閾値未満となる基材と、少なくとも前記基材の前記測定対象に対向する第一面に設けられて、前記音響シートを前記測定対象に対して着脱可能に固定する第一固定部と、を備える。
【0054】
本態様では、超音波デバイスと測定対象との間に音響シートが介在して、当該音響シートを構成する音響レンズ、基材、及び第一固定部層は、それぞれ、測定対象との音響インピーダンスの差が近い。音標インピーダンスの差が近いとは、例えば、音の強さの反射率が所定値未満となるように構成されていることを意味する。これにより、超音波プローブで送受信される超音波が、測定対象との間に介在する音響シートによって阻害される不都合が抑制され、測定対象に対して高い伝搬効率で超音波を送信することができる。
【0055】
本態様の超音波プローブにおいて、前記音響シートは、前記超音波デバイスに対向する第二面に、当該音響シートを前記超音波デバイスに着脱可能に固定する第二固定部を備えることが好ましい。
これにより、超音波デバイスに対して貼着する音響シートを交換することができる。つまり、測定対象に対して接触する音響シートを、超音波プローブの使用毎に交換することが可能であり、測定対象として生体を対象とする場合に、衛生的に超音波プローブを使用することができる。
また、音響レンズの超音波の送信方向が異なる複数の音響シートを用意しておけば、測定対象の測定深度や、超音波プローブの使用目的に応じた音響レンズの音響シートを適宜選択して使用することができる。つまり、1つの超音波プローブを様々な測定深度での測定に使用することができる。
【0056】
本態様の超音波プローブにおいて、前記基材は、前記音響レンズの全体を覆うことが好ましい。
これにより、基材の測定対象側の第一面を平坦面に形成できる。このような構成では、音響ジェル等を用いずとも、音響レンズと基材との間に気泡が混入することなく、高い伝搬効率で超音波を測定対象内に送信することができる。
【0057】
本態様の超音波プローブにおいて、前記第一固定部は、前記基材の前記第一面の全体を覆うことが好ましい。
上記態様のように、音響レンズの全体を基材で覆う場合、基材の測定対象側の第一面を平坦面にできる。そして、当該第一面の全体を覆うように第一固定部を設けることで、音響シートを測定対象に固定する場合に、音響シートと測定対象との間での気泡の混入をより抑制できる。
【0058】
本態様の超音波プローブにおいて、前記基材は、前記送受信面に直交する方向から見た場合に、前記音響レンズと重なる領域に、前記測定対象に対向する側から前記音響レンズ側に凹状となる凹部を有し、前記第一固定部は、前記基材のうち前記凹部が設けられない部分を覆う構成としてもよい。
本態様では、凹部に測定対象との音響インピーダンスが近い音響ジェルを充填して超音波プローブを測定対象に固定することができる。この場合、第一固定部と測定対象との音響インピーダンスの差を考慮する必要がなく、第一固定部の素材選択の自由度を向上できる。
【0059】
本態様の超音波プローブにおいて、前記音響レンズは、シリンドリカル形状を有し、前記基材は、前記音響レンズの所定の範囲を露出させる開口窓を有する構成としてもよい。
本態様では、シリンドリカル形状の音響レンズを測定対象に押圧して超音波プローブを固定してもよく、当該音響レンズと測定対象との間に音響ジェルを充填して超音波プローブを固定してもよく、音響レンズを覆うように第一固定部を設ける構成としてもよい。いずれの場合も、測定対象と基材との音響インピーダンスの差を考慮する必要がなく、基材の素材選択の自由度を向上できる。
【0060】
本態様の超音波プローブにおいて、前記筐体は、前記送信面に対向する位置に前記音響レンズが配置されるように、前記音響シートを位置決めするアライメント部を備えることが好ましい。
これにより、超音波デバイスに対して、音響シートを適正に位置決めして固定することができる。
【0061】
本態様の超音波プローブにおいて、前記超音波デバイスは、前記送信面を有し、かつ当該送信面から超音波を送信する超音波素子と、前記超音波素子を収納する筐体と、を備え、前記超音波素子は、前記送信面を有する振動板と、前記振動板に設けられる圧電素子とを備え、前記圧電素子の駆動により前記振動板を振動させて前記送信面から超音波を送信することが好ましい。
本態様のように、超音波デバイスが、振動板と、振動板上の圧電素子とを備える構成では、薄型の超音波デバイスを構成でき、超音波プローブの小型化を図れる。また、振動板の送信面を窓部から露出させる構成とすることで、窓部に対応した設けられた音響レンズに超音波を直接伝搬させることができ、高い伝搬効率で強い超音波を送信することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…超音波プローブ、10…超音波デバイス、20…筐体、21…貼着面、22…窓部、23…側面、24,24A…アライメント部、30…超音波素子、30A…送受信面、30B…充填剤、50,50A…固定シート(音響シート)、51…第一面、52…第二面、53…第一粘着層(第一固定部)、54…第二粘着層(第二固定部)、60…音響レンズ、60A…頂部、70,70A,70B,70C…基材、71…開口窓、72…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13