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特開2024-14134設備設計支援方法及び設備設計支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014134
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】設備設計支援方法及び設備設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240125BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20240125BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116748
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 悟
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146AA21
5B146DC05
5B146DG01
5B146DL02
5B146DL08
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとする。
【解決手段】BIMソフトウェアでの処理対象となる建築ファイルで設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、前記BIMソフトウェアの制御ツールにおいてユーザから受け付ける工程と、前記制御ツールにおいて、前記建築ファイルに含まれる意匠ないし機械の設計データに基づき、前記条件設定に対応する区画及び対象物を特定する工程と、前記制御ツールにおいて、前記特定した区画における前記対象物の周囲に配置する電気部材に関して前記条件設定で規定された、前記対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、前記建築ファイルに含まれる又は対応付けられた設備ファイルの設計データに前記建築ファイルの設計データをレイヤー表示した表示画面において、前記区画の前記対象物の周囲に、前記電気部材のオブジェクトを配置する工程を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BIMソフトウェアでの処理対象となる建築ファイルで設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、前記BIMソフトウェアの制御ツールにおいてユーザから受け付ける工程と、
前記制御ツールにおいて、前記建築ファイルに含まれる意匠ないし機械の設計データに基づき、前記条件設定に対応する区画及び対象物を特定する工程と、
前記制御ツールにおいて、前記特定した区画における前記対象物の周囲に配置する電気部材に関して前記条件設定で規定された、前記対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、前記建築ファイルに含まれる又は対応付けられた設備ファイルの設計データに前記建築ファイルの設計データをレイヤー表示した表示画面において、前記区画の前記対象物の周囲に、前記電気部材のオブジェクトを配置する工程と、
を含むことを特徴とする設備設計支援方法。
【請求項2】
前記電気部材のオブジェクトの配置を行う工程において、
電気部材の種類ごとに予め定めた略称の付与ルールに基づいて、当該電気部材のオブジェクトの周囲に当該略称を追加配置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設備設計支援方法。
【請求項3】
前記BIMソフトウェアのユーザインターフェイスを介して、前記設備ファイルの設計データにおける、前記電気部材の配置に関する修正および確定のユーザ操作を受け付け、当該確定がなされた電気部材の配置情報と、当該電気部材の配置対象となった前記区画及び前記対象物の属性情報とを紐付けて、電気部材の設計履歴として記憶装置に格納する工程をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設備設計支援方法。
【請求項4】
前記電気部材のオブジェクトの配置を行う工程に際し、
前記制御ツールにおいて、今回処理対象とする建築ファイルを前記電気部材の設計履歴に照合して、建築対象の属性及び建築主の指定仕様の少なくともいずれかに関して類似性のある設計履歴を特定し、当該設計履歴が示す電気部材の配置情報に基づいて、今回の電気部材の選定及びその配置位置の特定を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の設備設計支援方法。
【請求項5】
BIMソフトウェアでの処理対象となる建築ファイルを格納する記憶装置と、
前記建築ファイルで設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、前記BIMソフトウェアの制御ツールにおいてユーザから受け付ける処理と、前記制御ツールにおいて、前記建築ファイルに含まれる意匠ないし機械の設計データに基づき、前記条件設定に対応する区画及び対象物を特定する処理と、前記制御ツールにおいて、前記特定した区画における前記対象物の周囲に配置する電気部材に関して前記条件設定で規定された、前記対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、前記建築ファイルに含まれる又は対応付けられた設備ファイルの設計データに前記建築ファイルの設計データをレイヤー表示した表示画面において、前記区画の前記対象物の周囲に、前記電気部材のオブジェクトを配置する処理を実行する演算装置と、
を備えた情報処理装置を含むことを特徴とする設備設計支援システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記電気部材のオブジェクトの配置を行う処理において、
電気部材の種類ごとに予め定めた略称の付与ルールに基づいて、当該電気部材のオブジェクトの周囲に当該略称を追加配置するものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の設備設計支援システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、
前記BIMソフトウェアのユーザインターフェイスを介して、前記設備ファイルの設計データにおける、前記電気部材の配置に関する修正および確定のユーザ操作を受け付け、当該確定がなされた電気部材の配置情報と、当該電気部材の配置対象となった前記区画及び前記対象物の属性情報とを紐付けて、電気部材の設計履歴として記憶装置に格納する処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の設備設計支援システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
前記電気部材のオブジェクトの配置を行う処理に際し、
前記制御ツールにおいて、今回処理対象とする建築ファイルを前記電気部材の設計履歴に照合して、建築対象の属性及び建築主の指定仕様の少なくともいずれかに関して類似性のある設計履歴を特定し、当該設計履歴が示す電気部材の配置情報に基づいて、今回の電気部材の選定及びその配置位置の特定を行うものである、
ことを特徴とする請求項7に記載の設備設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備設計支援方法及び設備設計支援システムに関するものであり、具体的には、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備の設計業務においては、コンセントや照明など多くの電気部材をCAD(3Dソフト含む)上に配置する作業が含まれる。こうした作業を行う担当者らは、設計対象の建築物に関する建築図等を手元に置いて都度参照し、当該電気部材のオブジェクト(記号やアイコン等)を図面上に配置することとなる。
【0003】
こうした設計業務の効率化に関する従来技術としては、例えば、建築設計用CADにおいて、電気機器の自動設置とそれらをつなぐ配線設計の自動化を図るCADシステム(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
この技術は、建築設計CADシステムの電気設備設計において、住戸を規定する構造、住戸外への配線接続情報、建具位置などの条件を考慮したルールに基づいて、電気機器類を自動配置する手段、およびジョイントボックス(登録商標)と前記電気機器間の配線を所定配線ルールに基づいて自動配線する手段を備えたことを特徴とする建築設計CADシステムにかかる。
【0005】
また、ユニット式建物を設計するにあたって電気・ガス・水道・空調等の各設備用の設備図を容易に作成でき、営業担当者の負担を増加させることなくメーカー担当者の負担を軽減若しくは無くすことができるユニット式建物設計用CADの設備図作成方法 (特許文献2参照)なども提案されている。
【0006】
この技術は、工場で生産された複数のユニットを現場で組み立てて建築されるユニット式建物を設計する際に電気・ガス・水道・空調等の各設備用の設備図を作成するユニット式建物設計用CADの設備図作成方法であって、予め前記各設備用の設備部品を配置するための配置ルールを記憶しておき、前記各ユニットの配置を含む建築図上で前記設備部品を設けるという指示若しくは前記設備部品を設けることが必要となる指示を入力した後、この入力指示に基づき前記配置ルールに従って前記設備部品を自動生成して前記設備図を作成することを特徴とするユニット式建物設計用CADの設備図作成方法にかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06-282609号公報
【特許文献2】特開平09-134375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術においても設計業務の効率化は期待出来るが、近年の技術的な主流であるBIM(Building Information Modeling)に対応した概念とはなっていない。
【0009】
そのため、建物や部屋の属性や用途に応じた適切な電気部材を、建築主の細かな要求に応じつつ、多くの選択肢の中から効率的に選択し、CAD上で適宜な位置に配置するといった運用が難しい。このことは、建築規模が大きな案件になるほど顕著となり、結局のところ実効的なソリューションとなりがたい可能性もある。
【0010】
そこで本発明は、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の設備設計支援方法は、BIMソフトウェアでの処理対象となる建築ファイルで設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、前記BIMソフトウェアの制御ツールにおいてユーザから受け付ける工程と、前記制御ツールにおいて、前記建築ファイルに含まれる意匠ないし機械の設計データに基づき、前記条件設定に対応する区画及び対象物を特定する工程と、前記制御ツールにおいて、前記特定した区画における前記対象物の周囲に配置する電気部材に関して前記条件設定で規定された、前記対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、前記建築ファイルにおける含まれる又は対応付けられた設備ファイルの設計データに前記建築ファイルの設計データをレイヤー表示した表示画面において、前記区画の前記対象物の周囲に、前記電気部材のオブジェクトを配置する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
これによれば、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとできる。
【0013】
なお、本発明における設備設計支援方法において、前記電気部材のオブジェクトの配置を行う工程において、電気部材の種類ごとに予め定めた略称の付与ルールに基づいて、当該電気部材のオブジェクトの周囲に当該略称を追加配置する、としてもよい。
【0014】
これによれば、記号やアイコンといった従来の情報表示手段に加えて、当業者間でも認識しやすい略称を図面上で明示可能となる。
【0015】
また、本発明における設備設計支援方法において、前記BIMソフトウェアのユーザインターフェイスを介して、前記設備ファイルの設計データにおける、前記電気部材の配置に関する修正および確定のユーザ操作を受け付け、当該確定がなされた電気部材の配置情報と、当該電気部材の配置対象となった前記区画及び前記対象物の属性情報とを紐付けて、電気部材の設計履歴として記憶装置に格納する工程をさらに実行する、としてもよい。
【0016】
これによれば、設計履歴を後に利活用する際の有意な情報として管理可能となる。
【0017】
また、本発明における設備設計支援方法において、前記電気部材のオブジェクトの配置を行う工程に際し、前記制御ツールにおいて、今回処理対象とする建築ファイルを前記電気部材の設計履歴に照合して、建築対象の属性及び建築主の指定仕様の少なくともいずれかに関して類似性のある設計履歴を特定し、当該設計履歴が示す電気部材の配置情報に基づいて、今回の電気部材の選定及びその配置位置の特定を行う、としてもよい。
【0018】
これによれば、属性等が類似する過去の設計履歴に基づいて、電気部材の配置処理の効率および精度をさらに向上可能としうる。
【0019】
また、本発明の設備設計支援システムは、処理対象となる建築ファイルを格納する記憶装置と、前記建築ファイルで設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、前記BIMソフトウェアの制御ツールにおいてユーザから受け付ける処理と、前記制御ツールにおいて、前記建築ファイルに含まれる意匠ないし機械の設計データに基づき、前記条件設定に対応する区画及び対象物を特定する処理と、前記制御ツールにおいて、前記特定した区画における対象物の周囲に配置する電気部材に関して前記条件設定で規定された、前記対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、前記建築ファイルに含まれる又は対応付けられた設備ファイルの設計データに前記建築ファイルの設計データをレイヤー表示した表示画面において、前記区画の前記対象物の周囲に、前記電気部材のオブジェクトを配置する処理を実行する演算装置と、を備えた情報処理装置を含むことを特徴とする。
【0020】
これによれば、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとできる。
【0021】
なお、本発明における設備設計支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記電気部材のオブジェクトの配置を行う処理において、電気部材の種類ごとに予め定めた略称の付与ルールに基づいて、当該電気部材のオブジェクトの周囲に当該略称を追加配置するも これによれば、記号やアイコンといった従来の情報表示手段に加えて、当業者間でも認識しやすい略称を図面上で明示可能となる。
【0022】
これによれば、記号やアイコンといった従来の情報表示手段に加えて、当業者間でも認識しやすい略称を図面上で明示可能となる。
【0023】
また、本発明における設備設計支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記BIMソフトウェアのユーザインターフェイスを介して、前記設備ファイルの設計データにおける、前記電気部材の配置に関する修正および確定のユーザ操作を受け付け、当該確定がなされた電気部材の配置情報と、当該電気部材の配置対象となった前記区画及び前記対象物の属性情報とを紐付けて、電気部材の設計履歴として記憶装置に格納する処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0024】
これによれば、設計履歴を後に利活用する際の有意な情報として管理可能となる。
【0025】
また、本発明における設備設計支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記電気部材のオブジェクトの配置を行う処理に際し、前記制御ツールにおいて、今回処理対象とする建築ファイルを前記電気部材の設計履歴に照合して、建築対象の属性及び建築主の指定仕様の少なくともいずれかに関して類似性のある設計履歴を特定し、当該設計履歴が示す電気部材の配置情報に基づいて、今回の電気部材の選定及びその配置位置の特定を行うものである、としてもよい。
【0026】
これによれば、属性等が類似する過去の設計履歴に基づいて、電気部材の配置処理の効率および精度をさらに向上可能としうる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好に実行可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態における設備設計支援システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態における情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本実施形態における施工支援方法のフロー例を示す図である。
図4】本実施形態における出力例を示す図である。
図5】本実施形態における出力例を示す図である。
図6】本実施形態における出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<システム構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における設備設計支援システム100の構成例を示す図である。
【0030】
本実施形態における設備設計支援システム100は、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好に実行可能とするシステムである。
【0031】
すでに述べたように、従来技術で実装されている設計業務の効率化手法は、BIMを前提としておらず、近年の設備設計の技術潮流には対応しきれていない。
【0032】
そのため、建物や部屋の属性、用途に応じた適切な電気部材を、建築主の細かな要求に応じつつ、多くの選択肢の中から効率的に選択し、CAD上で適宜な位置に配置するといった運用は期待できない状況であった。一方、本発明の設備設計支援技術においては、BIMをベースとした設備設計において、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとするものとなっている。
【0033】
こうした設備設計支援システム100の実施形態として、3次元CADのBIMソフトウェアと、こうしたBIMソフトウェアを制御する制御ツールをそれぞれ実装する、BIMプログラム1021及び制御ツールプログラム1022を自身で備える、サーバなど情報処理装置を想定する。
【0034】
こうした設備設計支援システム100は、例えば、インターネットなどの適宜なネットワーク1を介して、1または複数のユーザ端末200と接続可能に構成されている。また、このネットワーク1には、必要に応じて、電気部材のメーカーが運用する部材仕様データの公開サーバなど、設備設計業務に必要な情報を提供する外部装置が接続されているとしてもよい。
【0035】
その場合、設備設計支援システム100は、そうした外部装置から電気部材に関する最新の詳細情報を取得し、自身における設備設計処理に利活用することとする(ただし、こうした運用形態はあくまでも一例であり、必須ではない)。
【0036】
設備設計業務に従事する担当者らは、自身のユーザ端末200を操作して設備設計支援システム100にアクセスし、意匠設計や構造設計のデータを含む建築ファイルを入力し、上述の制御ツールを操作して電気部材の選定・配置に関する条件設定や、建築主が要望する条件などの各種情報を設定していく。
【0037】
また、ユーザ端末200は、担当者設備設計支援システム100による処理結果、すなわち電気部材を建築物中に配置した設備設計結果をディスプレイ等に表示し、上述の担当者らの確認作業に供する。
【0038】
なお、上記では、設備設計支援システム100が、(ユーザ端末200との間で情報の入出力を行うものの)主たる機能や情報を保持してスタンドアロンマシンとして機能しうる形態で説明したが、こうした形態に限定しない
例えば、設備設計支援システム100が備える機能や情報が、ネットワーク1における複数の装置(ユーザ端末200も含みうる)に分散配置され、互いに協働することで設備設計支援方法を実行して必要な機能を実装するとしてもよい。
<ハードウェア構成例>
続いて、上述の設備設計支援システム100のハードウェア構成例について、図2に基づき説明する。図2で例示するように、本実施形態の設備設計支援システム100を構成する情報処理装置は、一般的なコンピュータ装置であって、記憶装置101、メモリ103、演算装置104、入力装置105、出力装置106、及び通信装置107を有している。
【0039】
このうち記憶装置101は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)といった不揮発性の記憶素子から構成され、処理に必要なプログラム102やデータ、或いは処理結果を格納するものとなる。
【0040】
なお、記憶装置101で保持するプログラム102は、本実施形態の設備設計支援システム100として必要な機能を実装する為のプログラムである。そのためプログラム102は、BIMプログラム1021や制御ツールプログラム1022を含むこととなる。
【0041】
なお、これらBIMプログラム1021や制御ツールプログラム1022は、ネットワーク1を介して外部システムから必要な機能のみ呼び出して都度利用するとしてもよい。その場合、記憶装置101にそれらプログラムを常時保持する必要はない。
【0042】
また、記憶装置101には、建築ファイル1251、設備ファイル1252、及び設計履歴1253を格納したデータベース125が保持されている。これらデータ類については後述する。
【0043】
また、メモリ103は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性記憶素子で構成される。
【0044】
また、演算装置104は、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central Processing Unit)である。
【0045】
また、入力装置105は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付けるキーボード、マイク、マウスといった装置である。この入力装置105は、ユーザ端末200に置換して、省略するとしてもよい。
【0046】
また、出力装置106は、演算装置104での処理データを表示するディスプレイやスピーカーといった装置である。この出力装置106も、ユーザ端末200に置換して、省略するとしてもよい。
【0047】
また、通信装置107は、ネットワーク1を介したユーザ端末200などの外部装置との通信処理を担うインターフェイスカード等を想定する。勿論、設備設計支援システム100はがスタンドアロンマシンとして構成、運用されている場合は不要となる。
<設備設計支援方法>
図3は、本実施形態における設備設計支援方法のフロー例を示す図である。ここで、本実施形態における設備設計支援方法の工程について説明する。ここで説明する各工程は、基本的には設備設計支援システム100が実行するものとする。
【0048】
なお、本発明の発明者らは、3DのCADソフトとしてRevit(登録商標)を使用し、またその制御ツールとしてDynamo(登録商標)を採用し、設備設計支援システム100の機能として利用する形態を採用した。そこで、以降の説明におけるBIMソフトウェア及び制御ツールは、それら既存のソフトウェアやツールの使用を前提として説明するものとする(ただし、これらソフトウェアやツールに限定しない)。
【0049】
まず、設備設計支援システム100は、ユーザ端末200からのアクセスを受けて、BIMプログラム1021を実行してBIM設計ツールを起動し、このBIM設計ツール上で当該ユーザ端末200から、設備ファイルの生成指示を受けて、設備ファイル1252を生成する(s1)。この設備ファイル1252の生成自体は、BIM設計ツールで予め規定の動作である。また、生成される設備ファイル1252は、現時点では電気部材の配置情報を含まない状態のファイルである。
【0050】
続いて、設備設計支援システム100は、上述のs1と同様に、BIM設計ツール上でユーザ端末200から、建築ファイルの生成指示を受けて、建築ファイル1251を生成する(s2)。この建築ファイル1251の生成も、BIM設計ツールで予め規定の動作である。また、建築ファイル1251は、意匠設計データと構造設計データを含むもので、上述のユーザ端末200を操作する担当者が必要なデータを実際に入力し、生成されたものとなる。
【0051】
また、設備設計支援システム100は、上述のs1、s2で得た建築ファイル1251と設備ファイル1252をリンクさせる(s3)。このリンクは、BIM設計ツール上で備わる機能によるものであり、建築ファイル1251に含まれる意匠ないし機械の設計データが示す建物の各部屋(区画)と、当該部屋に関する設備ファイルの設計データ1252を紐付ける処理となる。
【0052】
このリンクにより、BIM設計ツール上で、意匠ないし機械の設計データ上に設備設計データがレイヤー表示可能となる。なお、上述のように建築ファイルと設備ファイルをリンクさせる処理に代えて、設備部材と建築部材を同一ファイル上に作成する方式を採用してもよい。
【0053】
続いて、設備設計支援システム100は、上述の建築ファイル1251の意匠や機械の設計データ等で規定するレベル(いわゆるGL、SL、FLなど)を、設備ファイル1252でのレベルとして設定し、両者のレベルの設定内容を同一とする(s4)
また、設備設計支援システム100は、制御ツールプログラム1022を実行して制御ツールを起動し、s2で得た建築ファイル1251で設計対象とした建築物での、電気部材の配置に関する条件設定を、ユーザ端末200から受け付ける(s5)。
【0054】
この条件設定とは、例えば、「オフィスビルの各部屋のドア部材からの所定の距離及び床面からの高さにある壁面上に、掃除用コンセントと照明スイッチを配置する」といった条件の設定となる。或いは、当該電気部材の配置を回避したい部屋がある場合、その部屋名称(キーワードを含む)を設定する。
【0055】
他の条件設定の例としては、「大便器部材から所定の距離及び床面から所定の高さの壁面位置にウォシュレット(登録商標)用コンセント、及び添え字タグを配置する」といったものや、「洗面台部材から所定の距離及び所定の高さの壁面位置に、自動水栓用コンセント、電気温水器用コンセント、オートソープ用コンセント、及び添え字タグを配置する」といったものや、「小便器部材から所定の距離及び所定の高さの壁面位置に、自動水栓用電源ボックスを配置する」といったものや、「部屋名称にEPSが含まれる部屋内に、分電盤を配置する。また、分電盤の盤名称タグも合わせて配置する」といったものを想定できる。
【0056】
なお、上述の「部屋名称にEPSが含まれる部屋内」に分電盤や盤名称タグを配置するロジックとしては、EPSの部屋境界の内、最も長い辺を抽出し、その辺の中央の壁面上に分電盤や盤名称タグを配置する、といったものを想定できる。
【0057】
なお、こうした条件設定は、制御ツールが提供するビジュアルプログラミング機能を用いて、ノーコードで行うことが可能である(図4参照)。
【0058】
続いて、設備設計支援システム100は、上述の制御ツールにおいて、建築ファイル1251の含む意匠または機械の設計データに基づき、s5で受け付けた条件設定に対応する部屋(区画)及び対象物(ドア部材や便器等々)を特定する(s6)。
【0059】
本実施形態の場合、建築ファイル1251の含む意匠や機械の設計データはBIM形式で構成されるため、対象となる建築物における各種部材(対象物)やその配置位置(座標値)、サイズなどは具体的な値として利用可能となっている。よって、こうした対象物の特定は容易かつ的確に行えることとなる。
【0060】
続いて、設備設計支援システム100は、上述の制御ツールにおいて、s6で特定した部屋における対象物の周囲に配置する電気部材に関して、s5で得た条件設定にて規定された、当該対象物からの距離およびレベル面からの高さに基づいて、意匠または機械の設計データが示す当該部屋の対象物の周囲に、設備ファイルの設計データとして当該電気部材のオブジェクトを配置する(s7)。
【0061】
この場合、制御ツールは、設備ファイル1252の設計データに建築ファイル1251の含む意匠または機械の設計データをレイヤー表示し、このレイヤー表示中の意匠または機械の設計データ上でオブジェクトを配置した表示形態を、ユーザ端末200に出力することとなる(図5参照)。
【0062】
なお、上述の電気部材のオブジェクトの配置を行う際、設備設計支援システム100は、当該電気部材の種類ごとに予め定めた略称の付与ルールに基づいて、当該電気部材のオブジェクトの周囲に当該略称を追加配置するものとする。
【0063】
例えば、電気室(EPS)に配置した分電盤のオブジェクトの周囲に、略称として「3-L4」を追加配置した例を示す(図6参照)。この場合の付与ルールは、当該部屋の所在階である「3」を先頭にし、分電盤を示す「L」を配分でつなげ、当該部屋における分電盤の通し番号「4」を末尾に配置するといったものとなる。
【0064】
また、設備設計支援システム100は、上述のs7で設備設計データにおける電気部材の配置結果をユーザ端末200で表示させ、BIMソフトウェアのユーザインターフェイスを介して、当該電気部材の配置に関する修正および確定のユーザ操作を受け付ける(s8)。
【0065】
設備設計支援システム100により電気部材の自動配置を行ったが、担当者からすると修正が必要と判断するケースもあり、そうしたケースに対応した処理となる。
【0066】
設備設計支援システム100は、こうした確定がなされた電気部材の配置情報と、当該電気部材の配置対象となった、(建築ファイル1251の設計データ上の)部屋及び対象物の属性情報とを紐付けて、電気部材の設計履歴1253として記憶装置101に格納する(s9)。
【0067】
なお、こうした設計履歴1253の保持を継続的に行う運用とした場合、設備設計支援システム100は、以後の機会において新たにフローを実行する際、電気部材のオブジェクトの配置を行う場合、制御ツールにおいて、今回処理対象とする建築ファイルを電気部材の設計履歴1253に照合する。
【0068】
この照合の結果、建築対象の属性(例:オフィスビル、マンション、学校、病院、個人の一軒家など)及び建築主の指定仕様(例:外国人向けに電気部材の配置高を通常より20cmアップ、など)の少なくともいずれかに関して類似性のある設計履歴を特定する。
【0069】
そして、設備設計支援システム100は、当該設計履歴が示す電気部材の配置情報に基づいて、今回の電気部材の選定及びその配置位置の特定を行う。
【0070】
具体的には、建築対象が「マンション」で建築主の指定使用として「外国人向けに全コンセントを床面から40cmとする」というものであった場合、設備設計支援システム100は、設計履歴のうち当該条件を含むものを抽出する。
【0071】
また、設備設計支援システム100は、ここで抽出した設備履歴1253から、電気部材の種類および配置結果の情報を取得し、これを、今回建築対象となっている建築物の設備設計の内容として(仮に)採用し、電気部材の自動配置を行う。
【0072】
こうした過去の履歴を用いた設備設計の自動化をさらに図ることで、本発明の効果である、電気部材の配置処理を効率的かつ精度良好なものとする点について、さらなる向上が期待出来る。
【0073】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 ネットワーク
100 設備設計支援システム(情報処理装置)
101 記憶装置
102 プログラム
1021 BIMプログラム
1022 制御ツールプログラム
103 メモリ
104 演算装置
105 入力装置
106 出力装置
107 通信装置
125 データベース
1251 建築ファイル
1252 設備ファイル
1253 設計履歴
200 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6