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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141340
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/86 20060101AFI20241003BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20241003BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20241003BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20241003BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20241003BHJP
   C11D 1/52 20060101ALI20241003BHJP
   C11D 3/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C11D1/86
C11D1/29
C11D1/90
C11D3/20
C11D1/68
C11D1/52
C11D3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052931
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】笠松 千郁
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC05
4H003AC13
4H003AD04
4H003BA12
4H003DA19
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB06
4H003EB17
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA30
(57)【要約】
【課題】十分な洗浄力と手肌への低刺激性を両立し、経時による液体粘度の安定性に優れ、かつ、スポンジでの泡立ちに優れた洗浄剤の提供。
【解決手段】ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)と、ベタイン界面活性剤(B)と、グリコールエーテル系溶剤(C)と、を含む、洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物の質量を基準として、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の量が、6~20質量%であり、前記ベタイン界面活性剤(B)の量が、3~10質量%であり、前記グリコールエーテル系溶剤(C)の量が、3~10質量%であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の質量に対する前記ベタイン界面活性剤(B)の質量の比が、0.5以上1.25以下であり、前記洗浄剤組成物の粘度が、200~3000mPa・sである、洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)と、
ベタイン界面活性剤(B)と、
グリコールエーテル系溶剤(C)と、
を含む、洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物の質量を基準として、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の量が、6~20質量%であり、
前記ベタイン界面活性剤(B)の量が、3~10質量%であり、
前記グリコールエーテル系溶剤(C)の量が、3~10質量%であり、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の質量に対する前記ベタイン界面活性剤(B)の質量の比が、0.5以上1.25以下であり、
前記洗浄剤組成物の粘度が、200~3000mPa・sである、洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物が、食器洗い用洗浄剤組成物である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
温度40±2℃、湿度75±5%で180日保存したときの粘度の上昇率が150%未満である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
アルキルグルコシドを更に含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
アルキルグルカミドを更に含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
菜種油脂肪酸アミドを更に含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の消費者の多くは、スポンジに洗浄剤をつけて泡立てて食器を洗う事が多い。この際、洗浄剤が直接皮膚に付着するため、洗浄剤は食器洗いとして十分な泡立ちと洗浄力を有するとともに、手肌に対して低刺激性である事が求められる。しかし、洗浄剤として十分な洗浄力を有するということは、手肌に対しても強く作用して手荒れにつながる可能性が高く、高い洗浄力と手肌への低刺激性はトレードオフの関係であることが一般的である。
【0003】
低刺激な洗浄剤の開発としては、例えば非特許文献1では、一般的に食器洗い用洗浄剤に使用される陰イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩に対し、脂肪酸アミドアルキルベタインなどの両性界面活性剤を添加することで、刺激性を低減できることが開示されている。
【0004】
一方で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と脂肪酸アミドアルキルベタインを混合すると、増粘効果があり、洗浄剤として最適な液体粘度にするためには、粘度調整剤も併せて配合する必要がある。
【0005】
粘度調整剤としては、例えば特許文献1~3では、アルコールや2-エチルヘキシル硫酸塩を添加して洗浄剤の粘度を調整する方法が開示されている。
【0006】
しかし、アルコールを添加した場合、アルコールが手肌に対して刺激性を及ぼしてしまう懸念があり、2-エチルヘキシル硫酸塩は、手肌に対しては低刺激性ではあるが、液体の粘度安定性が低く、長期間洗浄剤商品として保管された場合に液体粘度が顕著に増大してスポンジへの染み込み難くなることで、スポンジによる泡立ち性が低下すること、かつ、特有の強い刺激臭も食器洗い用洗浄剤としての商品価値を下げてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5041113号
【特許文献2】特許第2540435号
【特許文献3】特許第6826424号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A. Tegila and G. Sechi著、「Minimizing the Cutaneous Effects of Anionic Detergents」、Cosmetics and Toiletries magazine、Vol. 111、August 1996、p 61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、十分な洗浄力と手肌への低刺激性を両立し、経時による液体粘度の安定性に優れ、かつ、スポンジでの泡立ちに優れた洗浄剤の開発が求められていた。さらに好ましくは、商品価値を高めるという観点から臭気にも優れる洗浄剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、コカミドプロピルベタインと、グリコールエーテル系溶剤を所定の量で使用し、粘度を調節することによって、前記課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明は、例えば以下の実施形態を含む。
[1]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)と、
ベタイン界面活性剤(B)と、
グリコールエーテル系溶剤(C)と、
を含む、洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物の質量を基準として、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の量が、6~20質量%であり、
前記ベタイン界面活性剤(B)の量が、3~10質量%であり、
前記グリコールエーテル系溶剤(C)の量が、3~10質量%であり、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の質量に対する前記ベタイン界面活性剤(B)の質量の比が、0.5以上1.25以下であり、
前記洗浄剤組成物の粘度が、200~3000mPa・sである、洗浄剤組成物。
[2]
前記洗浄剤組成物が、食器洗い用洗浄剤組成物である、[1]に記載の洗浄剤組成物。
[3]
温度40±2℃、湿度75±5%で180日保存したときの粘度の上昇率が150%未満である、[1]又は[2]に記載の洗浄剤組成物。
[4]
アルキルグルコシドを更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
[5]
アルキルグルカミドを更に含む、[1]~[4]のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
[6]
菜種油脂肪酸アミドを更に含む、[1]~[5]のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な洗浄力と手肌への低刺激性を両立し、経時による液体粘度の安定性に優れ、かつ、スポンジでの泡立ちに優れ、好ましくは臭気にも優れる洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
〔洗浄剤組成物〕
本実施形態の洗浄剤組成物(以下、単に「洗浄剤組成物」、「組成物」ともいう。)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(以下、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)」、「成分(A)」、「(A)」ともいう。)と、コカミドプロピルベタイン(以下、「コカミドプロピルベタイン(B)」、「成分(B)」、「(B)」ともいう。)と、グリコールエーテル系溶剤(C)(以下、「グリコールエーテル系溶剤(C)」、「成分(C)」、「(C)」ともいう。)、を含有する。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)に対するコカミドプロピルベタイン(B)の含有比(質量比)が、0.5以上1.25以下であり、該組成物の粘度範囲が200~3000mPa・sである。
【0015】
本実施形態の洗浄剤組成物は、食器洗いの用途で使用することが好ましい。
【0016】
<ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩:成分(A)>
本実施形態の成分(A)は、下記一般式(I)で示される陰イオン性界面活性剤である。
1-O-(CH2CH2O)x-SO3M ・・・(I)
式(I)中、R1はアルキル基を示し、Mは金属原子である。
【0017】
式(I)中のR1のアルキル基の炭素数は、10以上18以下であることが好ましい。R1のアルキル基の炭素数がこのような範囲内にあると、洗浄剤として十分な洗浄力と手肌への低刺激性を両立することが可能になる。炭素数は10以上であることが好ましく、12以上であるとより好ましい。また、炭素数は18以下であることが好ましく、16以下であるとより好ましく、14以下であるとさらに好ましい。また、R1のアルキル基の炭素数は、偶数、奇数、又はそれらの混合で構成される。中でも、より優れた生分解性を示すためには、炭素数が偶数のみで構成されることが好ましい。
【0018】
式(I)中のMは、ナトリウム、又はカリウムであることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。
【0019】
式(I)中のxは、成分(A)各分子のxの平均値であり、1.0以上3.0以下であると組成物の生分解性が優れる点で好ましく、1.0以上2.5以下であるとより好ましく、1.5以上2.5以下であるとさらに好ましい。
【0020】
具体的な成分(A)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0021】
成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
組成物中の成分(A)の含有量は、該組成物の総量(100質量%)に対して、6.0以上20質量%以下であることが好ましい。成分(A)の含有量が6.0質量%以上であると、例えば洗浄剤組成物が洗浄過程でその濃度が薄まった場合でも、必要な洗浄力を発揮できる濃度をより長く保つことができる傾向にあり、8.0質量%以上であるとより好ましい、10質量%以上であると更に好ましい。成分(A)の含有量が20質量%以下であると、食器洗い後の手肌の刺激性を低減できる傾向にあり、14質量%以下がより好ましく、13質量%以下が更に好ましい。
成分(A)の含有量は、例えば、8~14質量%、10~13質量%としてもよい。
【0023】
<ベタイン界面活性剤:成分(B)>
本実施形態の成分(B)は、両性界面活性剤であるベタイン界面活性剤である。ベタイン界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタインなどが挙げられ、好ましくは式(II)を満たす。
2-CONH-(CH23-N+(CH32-CH2-COO- ・・・(II)
式(II)中、R2はアルキル基を示す。
【0024】
式(II)中のR2の炭素数は、8.0以上20以下であることが好ましい。R2の炭素数がこのような範囲内にあると、必要な洗浄力と食器洗い後の手肌への刺激性をより低減できる傾向にある。式(II)中のR2の炭素数は、偶数、奇数、又はそれらの混合で構成される。中でも、より優れた生分解性を示すためには、炭素数が偶数のみで構成されることが好ましい。
【0025】
具体的な成分(B)としては、特に限定されないが、例えば、コカミドプロピルベタインが挙げられる。
【0026】
成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
組成物中の成分(B)の含有量は、該組成物の総量(100質量%)に対して、3.0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、このような範囲内にあると、適正な粘度により調整が容易となり、食器洗い後の手肌への刺激性をより抑制できる傾向にある。成分(B)の含有量は、5.0質量%以上10質量%以下であると好ましい。
【0028】
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比(以下、「(B)/(A)」ともいう。)は、0.5以上1.25以下である。(B)/(A)が0.5以上であると、必要な洗浄力と食器洗い後の手肌への低刺激性とを両方達成でき、0.7以上であるとより好ましく、0.75以上であると更に好ましい。(B)/(A)が1.25以下であると、食器洗い後の手肌の低刺激性を維持しながらも、粘度調整剤の添加量を抑え適正な粘度に調整できる。
(B)/(A)は、例えば、0.7以上1.1以下、0.75以上1以下としてもよい。
【0029】
<グリコールエーテル系溶剤:成分(C)>
グリコールエーテル系溶剤は、式(III)で示されるグリコールエーテルから選択す
ることができる。
1O(R2O)nR3・・・(III)
式(III)中、
1は直鎖又は分枝鎖のC4、C5又はC6アルキル、置換又は非置換フェニルであり、好ましくはn-ブチルである。
2はエチル又はイソプロピル、好ましくはエチルであり、
3は、水素又はメチル、好ましくは水素であり、
nは1、2、又は3、好ましくは2である。
【0030】
式(III)に係る好適なグリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリ
コールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールn-ペンチルエーテル、ジエチレングリコールn-ペンチルエーテル、トリエチレングリコールn-ペンチルエーテル、プロピレングリコールn-ペンチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ペンチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ペンチルエーテル、エチレングリコールn-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、プロピレングリコールn-ヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールn-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールn-ヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルエーテル、トリプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル、プロピレングリコールベンジルエーテル、ジプロピレングリコールベンジルエーテル、トリプロピレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールイソペンチルエーテル、トリエチレングリコールイソペンチルエーテル、プロピレングリコールイソペンチルエーテル、ジプロピレングリコールイソペンチルエーテル、トリプロピレングリコールイソペンチルエーテル、エチレングリコールイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールイソヘキシルエーテル、プロピレングリコールイソヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールイソヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールイソヘキシルエーテル、エチレングリコールn-ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルメチルエーテルトリエチレングリコールn-ブチルメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルメチルエーテル、エチレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、ジエチレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、トリエチレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ペンチルメチルエーテル、エチレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、トリエチレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、プロピレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ヘキシルメチルエーテル、エチレングリコールフェニルメチルエーテル、ジエチレングリコールフェニルメチルエーテル、トリエチレングリコールフェニルメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルメチルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルメチルエーテル、トリプロピレングリコールフェニルメチルエーテル、エチレングリコールベンジルメチルエーテル、ジエチレングリコールベンジルメチルエーテル、トリエチレングリコールベンジルメチルエーテル、プロピレングリコールベンジルメチルエーテル、ジプロピレングリコールベンジルメチルエーテル、トリプロピレングリコールベンジルメチルエーテル、エチレングリコールイソブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルメチルエーテル、プロピレングリコールイソブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールイソブチルメチルエーテル、エチレングリコールイソペンチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソペンチルメチルエーテル、トリエチレングリコールイソペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールイソペンチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールイソペンチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールイソペンチルメチルエーテル、エチレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、トリエチレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、プロピレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、ジプロピレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、トリプロピレングリコールイソヘキシルメチルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
好ましいグリコールエーテル系溶剤は、エチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、及びこれらの混合物である。
【0032】
グリコールエーテル系溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
組成物中の成分(C)の含有量は、該組成物の総量(100質量%)に対して、3質量%以上10質量%以下である。成分(C)の含有量がこのような範囲内にあると、適正な粘度に調整でき、低温安定性に優れ、食器洗い後の手肌への低刺激性を実現できる。成分(C)の含有量は、8.0質量%以下であると好ましく、6.0質量%以下であるとより好ましい。
成分(C)の含有量は、例えば、3~8質量%、3~6質量%としてもよい。
【0034】
<その他界面活性剤成分:成分(D)>
本実施形態に係る組成物は、その他の界面活性剤成分としてノニオン系界面活性剤を含んでいてもよい。ノニオン系界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ノニオン界面活性剤の中でも、アルキルグルコシド、アルキルグルカミド、菜種油脂肪酸アミドを用いるとより好ましい。
【0035】
本実施形態のアルキルグルコシドは、下記一般式(IV)で示される界面活性剤である

3-(O-G)y-OH・・・(IV)
【0036】
式(IV)中のR3は炭素数8以上18以下のアルキルであることが好ましく、10以
上16以下のアルキルであることがより好ましい。式(IV)中のGはグリコシド基を示
し、yは、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
【0037】
アルキルグルコシドを添加することで、油汚れに対する洗浄力が向上し、スポンジに使用したときの泡立ちが向上する。また、手肌への刺激性に関しても低減させることが可能となる。
【0038】
具体的なアルキルグルコシドとしては、特に限定されないが、例えば、ラウリルグルコシドが挙げられる。
【0039】
本実施形態のアルキルグルカミドは、下記一般式(V)で示される界面活性剤である。

【化1】
【0040】
式(V)中のRは、8~18個の炭素原子を含有するアルキル鎖であることが好ましい
。アルキルグルカミドを使用することで手肌への刺激性を低減することができる。
【0041】
本実施形態の菜種油脂肪酸アミドは、下記一般式(VI)で示される界面活性剤である

【化2】
【0042】
式(VI)中のRは菜種油の脂肪酸に由来する基であることが好ましい。式中のnは1
以上3以下であることが好ましく、2であることがより好ましい。菜種油脂肪酸アミドを使用することで手肌への刺激性を低減することができる。
【0043】
組成物中の成分(D)の含有量は、該組成物の総量(100質量%)に対して、2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、このような範囲内にあると、適正な粘度により容易に調整でき、食器洗い後の手肌への刺激性を低減することができる。
【0044】
<水:成分(E)>
本実施形態に係る組成物は、水を含んでいてもよい。
【0045】
組成物中の成分(E)の含有量は、該組成物の総量(100質量%)に対して、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であるとより好ましい。
【0046】
<保存剤:成分(F)>
本実施形態の組成物は、上述した成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)以外にも、保存剤(以下、「成分(F)」、「(F)」ともいう。)をさらに含有していてもよい。
【0047】
成分(F)としては、特に限定されないが、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、L-乳酸、塩化ナトリウム、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、安息香酸ナトリウム、及びプロピオン酸ナトリウムが挙げられる。
【0048】
成分(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
組成物中の成分(F)の急性経口毒性(ラットの半数致死量、LD50、単位:ラットの体重(kg)あたりの投与質量(mg))は、2000mg/kg以上であると、組成物の生分解性が優れる点で好ましく、3000mg/kg以上であるとより好ましく、4000mg/kg以上であるとさらに好ましい。
【0050】
本実施形態において、経口毒性(半数致死量、LD50)は、化学物質毒性データ総覧(Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,RTECS)の値を用いる。
【0051】
本実施形態の組成物は、上記成分のほかにも、さらに添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、香料、色素、及び天然抽出物が挙げられる。
【0052】
本実施形態の組成物の粘度は、200mPa・s以上3000mPa・s以下であることが好ましい。粘度が200mPa・s以上であると、食器用洗剤のボトルから組成物をスポンジに付着させる際、使用量のコントロールがしやすい傾向にある。また、粘度が3000mPa・s以下であると、食器用洗剤のボトルから組成物をスポンジに付着させる際、容器から組成物が吐出する際に糸を引かず、容器から容易に吐出することができる傾向にある。
【0053】
粘度は200mPa・s以上1300mPa・sであることがより好ましい。粘度がこの範囲にあることにより、スポンジで泡立てて洗浄する際の泡立ちがよりよくなり、皿を洗う際の洗浄力が向上する。
【0054】
粘度は、粘度計(BROOKFIELD社製のB型粘度計DV-I Prime)を用い、20℃条件下で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0055】
本実施形態の組成物の、温度40±2℃、湿度75±5%で180日保存したあとの粘度は、保管前の粘度に対し、変化率が150%未満であることが好ましい。ここで、一般的に室温で3年相当の加速試験の条件として、温度40±2℃、湿度75±5%にて180日保存が実施されている。温度40±2℃、湿度75±5%、180日間保存したときの粘度変化率が150%未満であると、洗剤を使用する初期と使い終わりで粘度の差が小さく、良好な使用感を消費者に与える。
【0056】
本実施形態の組成物の、手肌への刺激性は低いことが好ましい。
【0057】
手肌への刺激性の評価方法として、経表皮水分蒸散量測定がある。健康的な肌は水分を多く蓄えており、うるおいがある。うるおいのある肌はバリア機能が高く、外界からの刺激から肌を守り、肌内部にある水分の蒸発を防ぎ、潤いが保たれている。一方で、乾燥した肌はバリア機能が低いため、水分を蓄える力が弱くなっており、肌荒れの原因になっている。この肌のバリア機能の指標として経表皮水分蒸散量(以下「TEWL」)測定がある。TEWLが高いほど、皮膚の水分が蒸散しやすい状態であり、バリア機能が弱くなっていることを表す。
【0058】
TEWLの評価として、三次元的に培養した皮膚モデルに対し、洗剤組成物を適用し、その前後でのTEWLの変化率を測定することとした。洗剤組成物適用前と後でTEWLの変化率が多いほど、洗剤組成物における手肌への刺激性は高いという指標となる。
【0059】
手肌の刺激性の観点から、この変化率は145%未満であることが好ましく、130%未満であることがより好ましい
【0060】
TEWLは、インテグラル社の商品名「TewitroTW24」を用いて測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0061】
本実施形態の組成物は、特有の臭気を有しないことが好ましい。特有の強い刺激臭があると、洗浄剤としての商品価値を下げてしまう。臭気に関しては、専門の評価者により特有の臭気を感じるか感じないかで判断し、特有の臭気を感じないことが好ましい。
【0062】
本実施形態の洗浄剤組成物は、各成分の原料を攪拌機により均一に混合して調製することにより得られる。
【実施例0063】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例と比較例によって何ら限定されるものではない。後述する実施例及び比較例における評価は、以下の方法により評価された。
【0064】
(評価1)粘度
BROOKFIELD社製B型粘度計DV-I Primeに、少量サンプルアダプターのウォータージャケットSC4-45Yを取り付けた。測定対象の液体洗浄剤組成物をチャンバーSC4-13Rに7.1±0.1gを充てんし、ウォータージャケットにセットした後、スピンドルSC4-21をセットした。液体洗浄剤組成物を20±0.5℃になるまで温度調整し、5分安定化させた。安定化後、スピンドルを回転させ、その際のトルク値が50±10%になるようにスピンドルの回転数を調整し、粘度の測定値(mPa・s)とした。
【0065】
(評価2)粘度変化率
温度40±2℃、湿度75±5%条件の恒温恒湿槽(ESPEC社製 PL―2J)内で、液体洗浄剤組成物を500mlペットボトルに充てんした状態で180日保存し、保存安定性試験とした。保存試験後の粘度を、上記の粘度の測定方法の通り測定した。
【0066】
測定した粘度を下記に代入し、粘度変化率を算出し、以下の基準で判定した。
粘度変化率(%)=(保存試験後(180日後)の粘度測定値)÷(保存試験前の粘度測定値)×100
<評価基準>
〇:150%未満
×:150%以上
【0067】
(評価3)スポンジの泡立ち
スポンジ(スリーエム ジャパン スコッチブライト抗菌ウレタンスポンジS S-21KS)に、JIS K3362 9 洗浄力試験方法の使用水(20±2℃)を20±1g含侵させ、液体洗浄剤組成物2.0±0.1gをもみ込んで泡立たせた際の泡量を専門評価者が、下記評価基準をもとに判定した。
<評価基準>
◎:泡が多い
○:泡がやや多い
×:泡が少ない又はほとんどない
【0068】
(評価4)洗浄力
磁器製皿(直径22cm)にカレー汚れ(大塚食品(株) ボンカレー中辛)を5g塗布し、評価用汚染皿とした。カレー汚れの塗布後、10分以内に洗浄を完了することとした。評価用汚染皿は、複数枚用意した。スポンジ(スリーエム ジャパン スコッチブライト抗菌ウレタンスポンジS S-21KS)に、JIS K3362 9洗浄力試験方法の使用水(20±2℃)を20±1g含侵させ、液体洗浄剤組成物2.0±0.1gをもみ込んで泡立たせたあと、評価用汚染皿を洗浄した。
評価用汚染皿を複数枚洗浄後に残ったスポンジに含まれている泡を300mlビーカーに搾り取り、残泡量が50mlとなる汚染皿の洗浄枚数を計測し、洗浄力を下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:10枚以上
〇:8枚以上10枚未満
△:5枚以上8枚未満
×:5枚未満
【0069】
(評価5)経表皮水分蒸散量TEWL
三次元皮膚モデル(J-TEC社製商品名「EPIMODEL24」)を、37.0℃、CO2濃度5%(残り95%は空気)、湿度90%以上の環境下で20~24時間前培養を行った。前培養後のTEWLを株式会社インテグラル(メーカー:Courage+Khazaka)の商品名「TewitroTW24」を用いて下記のTEWL測定方法に従い測定した。次に、後述する各洗浄剤組成物をリン酸緩衝液(サニスペック滅菌希釈水)で2.0質量%に希釈したもの50μLを皮膚モデルに適用したのち、EPIMODEL24の蓋をしめて常温で1時間放置した。1時間後、PBS+(SIGMA ALDRICH社商品名「D8662」)25mLで表面を洗浄した。その後、皮膚モデルを37℃、CO2濃度5%、湿度90%以上環境下で23時間後培養したあと、洗浄剤組成物適用後のTEWLを「TewitroTW24」を用いて下記のTEWL測定方法に従い測定した。得られた結果からTEWL変化率(%)を下記式にて算出した。
TEWL測定方法:EPIMODEL24を培養中のインキュベータから取り出し、安全キャビネットのファンを止めた状態で、EPIMODEL24の蓋を開けて20分間乾燥させる。乾燥後、「TewitroTW24」をEPIMODEL24にセットし測定を開始する。「TewitroTW24」においては1秒間に1点ずつデータを測定、測定開始10分後から10分間(測定開始10分後から20分後まで)のデータ(計600点)の算術平均値を算出、TEWL測定値とした。
TEWL変化率(%)=(洗浄剤組成物適用後のTEWL測定値のn数が3の平均値)÷(洗浄剤組成物適用前のTEWL測定値のn数が3の平均値)×100
【0070】
上記で計算して得られたTEWLの増加量から、洗浄剤組成物の水分蒸散増加量を下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:TEWLの変化率が130%未満
○:TEWLの変化率が130%以上145%未満
×:TEWLの変化率が145%以上
【0071】
(評価6)液だれ試験
洗浄剤組成物を100mlビーカーに50ml入れ、その中に径8mmのガラス棒を浸けて引き出したときに液がガラス棒に付着して糸を引く状態を×、糸を引かない状態を〇とした。
【0072】
(評価7)におい
調製した洗浄剤組成物について、専門評価者5名が、洗浄剤組成物の臭気を判定した。特有の臭気を感じた人が3人以上の場合を〇、感じない人が2人以下の場合を×とした。
【0073】
(成分)
以下に、表1に示す組成の内容を示す。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製商品名「エマール270J」)
コカミドプロピルベタイン(花王株式会社製商品名「アンヒトール55AB」)
ラウリルグルコシド(BASFジャパン株式会社製商品名「GLUCOPON CSUP600」)
アルキルグルカミド(クラリアントジャパン株式会社製商品名「GlucoPureSense」)
菜種油脂肪酸アミド(花王株式会社商品名「AMIDET N」)
2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム(Sigma-Aldrich社製商品名「Sodium 2-ethylhexyl sulfate」)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0074】
[実施例及び比較例]
表1に示す混合率(質量%)に従って実施例及び比較例の洗浄剤組成物を調製し、上述した評価を実施した。結果を表1に併記する。
【0075】
【表1】
表1中、洗浄剤組成物中の各組成の量は質量%で示す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る洗浄剤組成物は、食器洗いの分野で好適に利用できる。