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特開2024-141342信号処理装置、音波システム、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141342
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】信号処理装置、音波システム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/527 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01S7/527
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052933
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】松原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】坪井 崇浩
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC05
5J083AD04
5J083AE08
5J083AF06
5J083BE21
5J083BE30
5J083BE38
5J083BE54
5J083CA01
5J083CB01
5J083CC05
(57)【要約】
【課題】近距離に位置する対象物を検出することができる信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置(1A)は、音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部(161)と、音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部(13~15)と、反射波検知部(165)と、を備える。前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間において前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号が第1閾値を下回る第1タイミングに基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部と、
音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部と、
反射波検知部と、
を備え、
前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間において前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号が第1閾値を下回る第1タイミングに基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている、信号処理装置。
【請求項2】
前記反射波検知部は、前記第1タイミングが基準タイミングより遅れた場合に、前記第1反射波を検知するように構成されている、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1閾値は、値が異なる複数の設定値を含む、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記反射波検知部は、前記第1反射波を検知し、前記残響期間の終了後に前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号が第2閾値を超えた場合に、前記包絡線検出信号が前記第2閾値を超えた第2タイミングを、対象物までの距離に関連するタイミングとして検知するように構成されている、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部と、
音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部と、
反射波検知部と、
を備え、
前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間における前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号の正の時間変化率に基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている、信号処理装置。
【請求項6】
前記反射波検知部は、前記正の時間変化率の積分値に基づき、前記第1反射波を検知するように構成されている、請求項5に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記反射波検知部は、前記第1反射波に基づき、対象物までの距離を算出するように構成されている、請求項5に記載の信号処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記信号処理装置に直接的又は間接的に接続されるように構成される音波送受信装置と、を備える、音波システム。
【請求項9】
請求項8に記載の音波システムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、音波の送波のための送波信号を処理する信号処理装置、当該信号処理装置を備える音波システム、及び当該音波システムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を発生させて障害物からの反射波が返ってくるまでの時間TOF(Time Of Flight)を計測することにより障害物までの距離を測定する超音波システムが知られている。このような超音波システムは車両に搭載されることが多く、一例として車載用クリアランスソナーが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/004609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、超音波システムでは、振動素子の駆動が終わった後も振動素子の振動が一定時間続く。この一定時間は一般的に残響期間と称される。
【0005】
従来の超音波システムでは、残響期間における反射波の誤検出を防止するために残響期間は測定しない、または、反射波を検出する判定閾値が高く設定されており、残響期間中に反射波が返ってくるような近距離に位置する障害物を検出できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている一の局面に係る信号処理装置は、音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部と、音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部と、反射波検知部と、を備え、前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間において前記受波信号の振幅が第1閾値を下回る第1タイミングに基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている。
【0007】
本明細書中に開示されている他の局面に係る信号処理装置は、音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部と、音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部と、反射波検知部と、を備え、前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間における前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号の正の時間変化率に基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている。
【0008】
本明細書中に開示されている音波システムは、上記いずれかの構成の信号処理装置と、前記信号処理装置に直接的又は間接的に接続されるように構成される音波送受信装置と、を備える。
【0009】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の音波システムを備える。
【発明の効果】
【0010】
本明細書中に開示されている信号処理装置、音波システム、及び車両によれば、近距離に位置する対象物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る超音波システムが搭載された車両と対象物とを模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る超音波システムの構成を示す図である。
図3図3は、近距離に対象物が存在する場合及び近距離に対象物が存在しない場合それぞれにおけるエンベロープ部の出力信号及びLNAの出力信号の各音圧の一例を示す図である。
図4図4は、第1反射波及び第2反射波の概要を示す図である。
図5図5は、LNAの出力信号と残響判定閾値とを示す図である。
図6図6は、エンベロープ部の出力信号と残響判定閾値とを示す図である。
図7図7は、第2実施形態に係る超音波システムの構成を示す図である。
図8図8は、近距離に対象物が存在しない場合におけるエンベロープ部の出力信号の音圧及び微分値の一例を示す図である。
図9図9は、近距離に対象物が存在する場合におけるエンベロープ部の出力信号の音圧及び微分値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する第1実施形態に係る超音波システム及び第2実施形態に係る超音波システムそれぞれは、一例として車両に搭載することを想定しており、車両と対象物との間の距離を測定することによる警報機能、自動ブレーキ機能および自動駐車機能等に利用できる。
【0013】
以下の説明では、第1実施形態に係る超音波システム及び第2実施形態に係る超音波システムをまとめて実施形態に係る超音波システムと称する場合がある。
【0014】
図1は、実施形態に係る超音波システム100を搭載した車両200と、対象物(障害物)300とを示す模式図である。実施形態に係る超音波システム100から送波された超音波は、対象物300で反射して反射波として実施形態に係る超音波システム100により受波される。
【0015】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態に係る超音波システム100A(以下、「超音波システム100A」と称す)の構成を示す図である。
【0016】
超音波システム100Aは、信号処理装置1Aと、トランスTrと、コンデンサC1及びC2と、超音波送受信装置2と、を備える。超音波送受信装置2は、信号処理装置1Aに対してトランスTrとコンデンサC1及びC2とを介して外付けに接続される。なお、トランスTrとコンデンサC1及びC2とは、必ずしも設けなくてもよい。
【0017】
信号処理装置1Aは、半導体集積回路装置である。信号処理装置1Aは、DAC(Digital to Analog Converter)11と、ドライバ12と、LNA(Low Noise Amplifier)13と、PGA(Programmable Gain Amplifier)14と、ADC(Analog to Digital Converter)15と、デジタル処理部16と、残響期間判定部17と、外部端子T1~T5と、を備える。
【0018】
DAC11は、デジタル処理部16に含まれる送波信号生成部161から出力される送波信号をデジタル信号からアナログ信号へD/A変換し、D/A変換後の信号をドライバ12に出力する。
【0019】
ドライバ12の差動対の出力端は、外部端子T1及びT2を介してトランスTrの1次側に接続される。トランスTrの2次側には超音波送受信装置2が接続される。ドライバ12は、DAC11の出力信号に基づき超音波送受信装置2を駆動する。
【0020】
超音波送受信装置2は、不図示の圧電素子を有し、超音波の送波および受波を行う。すなわち、超音波送受信装置2は、音源としても受信部としても機能する超音波送受信装置である。超音波送受信装置2は、送波および受波で共通の圧電素子を有する構成であってもよく、送波専用の圧電素子と受波専用の圧電素子とを有する構成であってもよい。
【0021】
LNA13の差動対の入力端は、外部端子T3及びT4とコンデンサC1及びC2とを介してトランスTrの2次側に接続される。LNA13は、外部端子T3及びT4から受け取った差動信号を増幅するとともにシングルエンドの信号に変換してPGA14に出力する。また、LNA13は、シングルエンドの信号が所定のレベルを超えないようにクリッピングも行う。PGA14は、LNA13から受け取った信号を増幅してADC15に出力する。ADC15は、PGA14の出力信号をアナログ信号からデジタル信号へA/D変換し、A/D変換後の信号をBPF162に出力する。
【0022】
デジタル処理部16は、送波信号生成部161と、BPF(Band Pass Filter)162と、ABS(Absolute value処理部)163と、エンベロープ部164と、反射波検知部165と、TOF計測部166と、インタフェース167と、共振周波数測定部168と、を備える。
【0023】
送波信号生成部161は、超音波の送波のための送波信号を生成するように構成される。より詳細には、送波信号生成部161は、車両200(図1参照)に搭載される不図示のECU(Electronic Control Unit)からインタフェース167を介して送波命令を受けると、所定の波数を含む送波信号を生成し、当該送波信号をDAC11に出力する。
【0024】
BPF162は、ADC15の出力信号に対して、所定の周波数帯域のみを通過させ、当該所定の周波数帯域以外の周波数帯域は減衰させる。BPF162は、前記送波信号の周波数設定に応じた周波数特性を有する。例えば、当該所定の周波数帯域は、送波信号の周波数帯域と一致するように設定される。
【0025】
ABS163は、BPF162の出力信号に対して、絶対値処理を行う。すなわち、ABS163は、BPF162の負の出力信号に対して反転処理を行って正の信号に変換する。
【0026】
エンベロープ部164は、ABS163の出力信号を包絡線検出した信号を出力する。
【0027】
図3は、近距離に対象物300が存在する場合及び近距離に対象物300が存在しない場合それぞれにおけるエンベロープ部から出力される包絡線検出信号及びLNA13の出力信号の各音圧の一例を示す図である。図3において、近距離に対象物300が存在する場合の包絡線検出信号は、太い点線で描写され、近距離に対象物300が存在する場合の包絡線検出信号は、細い実線で描写され、LNA13の出力信号OUT13は太い実線で描写されている。図3の横軸は送波からの経過時間を示し、図3の縦軸はエンベロープ部164から出力される包絡線検出信号及びLNA13の出力信号の各音圧を示している。送波からの経過時間は、超音波システム100Aから対象物300までの距離に比例している。
【0028】
図3中の第1ピークP1は、図4に示すように、近距離に存在する対象物300で反射して超音波システム100Aに返ってくる第1反射波によって生じるピークである。図3中の第2ピークP2は、図4に示すように、近距離に存在する対象物300で反射して超音波システム100Aに返ってくる第1反射波が超音波システム100Aで反射し、その後再び対象物300で反射して超音波システム100Aに返ってくる第2反射波によって生じるピークである。
【0029】
図1で示されている反射波検知部165は、送波の残響が残存している残響期間においてエンベロープ部164から出力される包絡線検出信号が第1閾値TH1を下回る第1タイミングTM1に基づき、受波に含まれ得る送波の第1反射波を検知するように構成されている。より詳細には、反射波検知部165は、第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れた場合に、受波に含まれ得る送波の第1反射波を検知するように構成されている。これにより、超音波システム100Aは、近距離に位置する対象物300を検出することができる。
【0030】
近距離に対象物300が存在する場合、残響期間内のどのあたりに第1ピークP1が出現するかは、超音波システム100Aと対象物300との距離によって変動する。したがって、第1閾値TH1は、値が異なる複数の設定値を含むことが望ましい。図3に示す例では、第1閾値TH1は、設定値TH1_1及び設定値TH1_2を含む。
【0031】
図3に示す例では、反射波検知部165は、設定値TH1_1によって送波の第1反射波を検知するが、設定値TH1_2では基準タイミングTM0及び第1タイミングTM1(図3において図示省略)が一致するため、設定値TH1_2によって送波の第1反射波を検知できていない。
【0032】
反射波検知部165は、送波の第1反射波を検知し、残響期間の終了後にエンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の音圧が第2閾値TH2を超えた場合に、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の音圧が第2閾値TH2を超えた第2タイミングTM2を、対象物までの距離に関連するタイミングとして検知するように構成されている。なお、図3に示す例では、設定値TH1_2と第2閾値TH2とが一致しているが、設定値TH1_2と第2閾値TH2とは互いに異なる値であってよい。
【0033】
超音波システム100Aでは、第2タイミングTM2と、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の音圧が第2閾値TH2を超えた後に第2閾値TH2を下回った第3タイミングTM3との中間時点が利用され、送波期間の開始時点から当該中間時点までの時間が超音波システム100Aと対象物300との距離dの4倍に対応する時間であるものとして利用される。なお、本実施形態とは異なり、例えば、送波期間の開始時点から第2タイミングTM2までの時間が超音波システム100Aと対象物300との距離dの4倍に対応する時間であるものとして利用されてもよい。
【0034】
残響期間判定部17は、LNA13の出力信号OUT13と第3閾値TH3とを比較し、図5に示すようにLNA13の出力信号OUT13の振幅が第3閾値TH3を下回った状態がLNA13の出力信号OUT13の指定周期以上続くと、残響期間が終了したと判定する。なお、残響期間の開始時点は、送波信号生成部161からの送波信号の出力が終了した時点つまり図3中の送波期間の終了時点である。上記の指定周期は、外部端子T5及びインタフェース167を利用して、信号処理装置1Aから任意の値に設定することができる。
【0035】
なお、反射波検知部165は、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号を利用して残響期間の終了を判定する。すなわち、反射波検知部165は、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と第1閾値TH1とを比較し、図6に示すように送波期間後に、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164が第1閾値TH1以下になると、残響期間が終了したと判定する。
【0036】
第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れたことを反射波検知部165が検出する手法の例について説明する。
【0037】
第1の例では、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_1との比較結果によって求まる残響期間の終了時点と、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_2との比較結果によって求まる残響期間の終了時点との差が利用される。
【0038】
エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_1との比較結果によって求まる残響期間の終了時点と、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_2との比較結果によって求まる残響期間の終了時点との差が所定値より大きければ、反射波検知部165は、第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れていないと判定する。
【0039】
一方、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_1との比較結果によって求まる残響期間の終了時点と、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_2との比較結果によって求まる残響期間の終了時点との差が所定値以下であれば、反射波検知部165は、第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れていると判定する。
【0040】
第2の例では、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_1との比較結果によって求まる残響期間の終了時点と、LNA13の出力信号OUT13と第3閾値TH3との比較結果によって求まる残響期間の終了時点との差が利用される。
【0041】
近距離に位置する対象物300での反射波を含むLNA13の出力信号OUT13のレベルは、第3閾値TH3に対して低い。したがって、近距離に位置する対象物300の有無にかかわらず、LNA13の出力信号OUT13が第3閾値TH3を下回った状態がLNA13の出力信号OUT13の1周期以上続くタイミングはほぼ変わらない。そのため、以下のような判定が可能である。
【0042】
エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_2との比較結果によって求まる残響期間の終了時点が、LNA13の出力信号OUT13と第3閾値TH3との比較結果によって求まる残響期間の終了時点に対して所定時間以上遅れれば、反射波検知部165は、第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れていると判定する。
【0043】
一方、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号OUT164と設定値TH1_2との比較結果によって求まる残響期間の終了時点が、LNA13の出力信号OUT13と第3閾値TH3との比較結果によって求まる残響期間の終了時点に対して所定時間以上遅れていなければ、反射波検知部165は、第1タイミングTM1が基準タイミングTM0より遅れていないと判定する。
【0044】
TOF計測部166は、カウンタ166Aを用いて、超音波を送波してから対象物300での反射による反射波を受波するまでの時間(TOF)を計測する。
【0045】
インタフェース167は、一例としてLIN(Local Interconnect Network)に準拠し、外部端子T5を介して車両200(図1参照)に搭載される不図示のECUとの間で通信を行う。
【0046】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る超音波システム100B(以下、「超音波システム100B」と称す)の構成を示す図である。
【0047】
超音波システム100Bは、信号処理装置1Bと、トランスTrと、コンデンサC1及びC2と、超音波送受信装置2と、を備える。超音波送受信装置2は、信号処理装置1Aに対してトランスTrとコンデンサC1及びC2とを介して外付けに接続される。なお、トランスTrとコンデンサC1及びC2とは、必ずしも設けなくてもよい。
【0048】
信号処理装置1Bは、半導体集積回路装置である。信号処理装置1Bは、反射波検知部165で実行される処理内容について信号処理装置1Aと異なり、それ以外の点で信号処理装置1Aと同様である。
【0049】
本実施形態では、反射波検知部165は、演算部165Aを備える。演算部165Aは、微分演算及び積分演算を行う。
【0050】
反射波検知部165は、送波の残響が残存している残響期間におけるエンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の正の時間変化率に基づき、受波に含まれ得る送波の第1反射波を検知するように構成されている。エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の時間変化率は、演算部165Aがエンベロープ部164から出力される包絡線検出信号を微分することで得られる。
【0051】
本実施形態では、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の時間変化率が正である場合に、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の微分値を+1に変換する。また、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の時間変化率が0である場合に、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の微分値を0に変換する。エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の時間変化率が負である場合に、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の微分値を-1に変換する。
【0052】
ここで、図8は、近距離に対象物が存在しない場合におけるエンベロープ部の出力信号の音圧及び微分値の一例を示す図である。また、図9は、近距離に対象物が存在する場合におけるエンベロープ部の出力信号の音圧及び微分値の一例を示す図である。
【0053】
演算部165Aは、エンベロープ部164から出力される包絡線検出信号の微分値である三値のうち+1のみを積分する。反射波検知部165は、演算部165Aによって積分された値(積分値)が閾値を超えると、受波に含まれ得る送波の第1反射波を検知するように構成されている。これにより、超音波システム100Bは、近距離に位置する対象物300を検出することができる。
【0054】
超音波システム100Bでは、上記の積分値が閾値を超えた時点が利用され、送波期間の開始時点から上記の積分値が閾値を超えた時点までの時間が超音波システム100Aと対象物300との距離dの2倍に対応する時間であるものとして利用される。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、反射波検知部165が、第2タイミングTM2を、対象物までの距離に関連するタイミングとして検知するようにしてもよい。
【0055】
<その他>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0056】
上記実施形態では、超音波(可聴音を超える高い振動数の音波)を送波する超音波システム100について説明したが、超音波以外の音波を送波する音波システムに対しても本発明を適用することができる。
【0057】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0058】
本開示の一の局面に係る信号処理装置(100A)は、音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部(161)と、音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部(13~15)と、反射波検知部(165)と、を備え、前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間において前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号が第1閾値を下回る第1タイミングに基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている構成(第1の構成)である。
【0059】
上記第1の構成の信号処理装置において、前記反射波検知部は、前記第1タイミングが基準タイミングより遅れた場合に、前記第1反射波を検知するように構成されている構成(第2の構成)であってもよい。
【0060】
上記第1又は第2の構成の信号処理装置において、前記第1閾値は、値が異なる複数の設定値を含む構成(第3の構成)であってもよい。
【0061】
上記第1~第3いずれかの構成の信号処理装置において、前記反射波検知部は、前記第1反射波を検知し、前記残響期間の終了後に前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号が第2閾値を超えた場合に、前記包絡線検出信号が前記第2閾値を超えた第2タイミングを、対象物までの距離に関連するタイミングとして検知するように構成されている構成(第4の構成)であってもよい。
【0062】
本開示の他の局面に係る信号処理装置(100B)は、音波の送波のための送波信号を生成するように構成された送波信号生成部(161)と、音波の受波に基づく受波信号を出力するように構成された受波信号出力部(13~15)と、反射波検知部(165)と、を備え、前記反射波検知部は、前記送波の残響が残存している残響期間における前記受波信号の絶対値を包絡線検出した信号である包絡線検出信号の正の時間変化率に基づき、前記受波に含まれ得る前記送波の第1反射波を検知するように構成されている構成(第5の構成)であってもよい。
【0063】
上記第5の構成の信号処理装置において、前記反射波検知部は、前記正の時間変化率の積分値に基づき、前記第1反射波を検知するように構成されている構成(第6の構成)であってもよい。
【0064】
上記第5又は第6の構成の信号処理装置において、前記反射波検知部は、前記第1反射波に基づき、対象物までの距離を算出するように構成されている構成(第7の構成)であってもよい。
【0065】
本開示の音波システム(100A、100B)は、上記第1~第7いずれかの構成の信号処理装置と、前記信号処理装置に直接的又は間接的に接続されるように構成される音波送受信装置(2)と、を備える構成(第8の構成)である。
【0066】
本開示の車両(200)は、上記第8の構成の音波システムを備える構成(第9の構成)である。
【符号の説明】
【0067】
1A、1B 信号処理装置
2 超音波送受信装置
11 DAC
12 ドライバ
13 LNA
14 PGA
15 ADC
16 デジタル処理部
161 送波信号生成部
162 BPF
163 ABS
164 エンベロープ部
165 反射波検知部
165A 演算部
166 TOF計測部
166A カウンタ
167 インタフェース
17 残響期間判定部
100 実施形態に係る超音波システム
100A 第1実施形態に係る超音波システム
100B 第2実施形態に係る超音波システム
200 車両
300 対象物(障害物)
C1、C2 コンデンサ
T1~T5 外部端子
Tr トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9