(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141345
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】長尺状の光学積層体の外観検査方法および外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052937
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 政和
(72)【発明者】
【氏名】杉脇 正晃
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈津美
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB03
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB02
2G051DA06
2G051ED01
2G051ED09
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】ヘイズが小さい長尺状の反射防止層と、反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが大きいアンチグレア層と、アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体の外観を好適に検査する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体の検査方法は、上記長尺状の光学積層体を撮像して画像データを取得する工程と;画像データから該アンチグレア層の端部を検出する工程と;端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する工程と;画像データを解析して検査領域における欠陥候補部を抽出する工程と;欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断する工程と;欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程と;を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘイズが1.0%未満である長尺状の反射防止層と、該反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが5.0%以上のアンチグレア層と、該アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体を、長尺方向に搬送しながらその外観を検査する方法であって、
該光学積層体を撮像して画像データを取得する工程と、
該画像データから該アンチグレア層の端部を検出する工程と、
該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する工程と、
該画像データを解析して検査領域における欠陥候補部を抽出する工程と、
欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断する工程と、
欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程と、
を含む、検査方法。
【請求項2】
前記欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程が、
基準値を超えるサイズを有する欠陥候補部についてのみ、該欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断すること、および、
基準値以下のサイズを有する欠陥候補部および基準値を超えるサイズを有し、かつ、長尺方向に周期性を有さない欠陥候補部を欠陥として検出すること、
を含む、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記欠陥候補部の周期性の有無の判断が、欠陥候補部の長尺方向における位置座標に基づいて行われる、請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記画像データの取得が、前記光学積層体の連続的な撮像に基づいて行われる、請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記欠陥候補部の抽出が、前記画像データの輝度情報に基づいて行われる、請求項1に記載の検査方法。
【請求項6】
前記アンチグレア層が、長尺方向および幅方向に所定の間隔で形成されている、請求項1に記載の検査方法。
【請求項7】
前記アンチグレア層が、前記光学積層体が適用される画像表示装置の形状に対応した形状に形成されている、請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記非アンチグレア部が、前記光学積層体を前記画像表示装置に取り付けるために裁断した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている、請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の検査方法に用いられる、長尺状の光学積層体の外観検査装置であって、
前記長尺状の光学積層体を撮像して画像データを取得する撮像装置と、
該画像データを解析して該光学積層体の欠陥を検出する画像解析装置と、を備え、
該画像解析装置が、
該画像データから前記アンチグレア層の端部を検出し、該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する検査領域判断部と、
該画像データに基づいて検査領域における欠陥候補部を抽出する欠陥候補部抽出部と、
欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断するサイズ判断部と、
欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断する周期性判断部と、
欠陥候補部のサイズ、または、欠陥候補部のサイズと周期性の有無とに基づいて欠陥を検出する欠陥検出部と、を有する、
長尺状の光学積層体の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の光学積層体の外観検査方法および外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター(PC)等の画像表示装置には、カメラ等の内部電子部品が搭載されているものがある。このような画像表示装置には、多くの場合、一部に非光学機能部が形成された光学フィルムが用いられている。このような光学フィルムとしては、例えば、一部に非偏光部が形成された偏光子、一部に非アンチグレア部が形成されたアンチグレアフィルムが挙げられる。非偏光部、非アンチグレア部のような非光学機能部は、代表的には透明部であり得る。ところで、光学フィルムは、通常、原反フィルムロールを外観検査に供した後、所定サイズ(適用される画像表示装置に対応するサイズ)のフィルム片に裁断されることにより作製され得る。しかし、一部に非光学機能部が形成された光学フィルムの場合、当該外観検査において非光学機能部(代表的には、透明部)が誤って欠陥として検出される場合がある。その結果、品質管理が不十分となる、歩留まりが低下する、製造効率が低下する等の問題が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ヘイズが小さい長尺状の反射防止層と、反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが大きいアンチグレア層と、アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体の外観を好適に検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態によれば、光学積層体の検査方法が提供される。該検査方法は、ヘイズが1.0%未満である長尺状の反射防止層と、該反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが5.0%以上のアンチグレア層と、該アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体を、長尺方向に搬送しながらその外観を検査する方法である。該検査方法は、該光学積層体を撮像して画像データを取得する工程と;該画像データから該アンチグレア層の端部を検出する工程と;該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する工程と;該画像データを解析して検査領域における欠陥候補部を抽出する工程と;欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断する工程と;欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程と;を含む。
[2]上記[1]において、上記欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程は、基準値を超えるサイズを有する欠陥候補部についてのみ、該欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断すること;および、基準値以下のサイズを有する欠陥候補部および基準値を超えるサイズを有し、かつ、長尺方向に周期性を有さない欠陥候補部を欠陥として検出すること;を含む。
[3]上記[2]において、上記欠陥候補部の周期性の有無の判断は、欠陥候補部の長尺方向における位置座標に基づいて行われる。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記画像データの取得は、上記光学積層体の連続的な撮像に基づいて行われる。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記欠陥候補部の抽出は、上記画像データの輝度情報に基づいて行われる。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記アンチグレア層は、長尺方向および幅方向に所定の間隔で形成されている。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記アンチグレア層は、上記光学積層体が適用される画像表示装置の形状に対応した形状に形成されている。
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、上記非アンチグレア部は、上記光学積層体を上記画像表示装置に取り付けるために裁断した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている。
[9]本発明の別の実施形態によれば、光学積層体の検査装置が提供される。該検査装置は、上記[1]から[8]のいずれかの検査方法に用いられる、長尺状の光学積層体の外観検査装置である。該検査装置は、上記長尺状の光学積層体を撮像して画像データを取得する撮像装置と、該画像データを解析して該光学積層体の欠陥を検出する画像解析装置と、を備える。該画像解析装置は、該画像データから前記アンチグレア層の端部を検出し、該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する検査領域判断部と;該画像データに基づいて検査領域における欠陥候補部を抽出する欠陥候補部抽出部と;欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断するサイズ判断部と;欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断する周期性判断部と;欠陥候補部のサイズ、または、欠陥候補部のサイズと周期性の有無とに基づいて欠陥を検出する欠陥検出部と;を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、ヘイズが小さい長尺状の反射防止層と、反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが大きいアンチグレア層と、アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体の外観を好適に検査する方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態による外観検査方法に供され得る長尺状の光学積層体の概略平面図である。
【
図2】
図1の光学積層体のII-II線による概略断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による外観検査方法に用いられ得る外観検査装置を説明する概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による外観検査方法における検査領域の設定手順を説明する概略平面図である。
【
図5】本発明の実施形態による外観検査方法における欠陥検出の一例の具体的手順を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による外観検査方法における欠陥検出の別の例の具体的手順を説明するフローチャートである。
【
図7】
図6の欠陥検出の具体的手順を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、見やすくかつ理解を容易にするために、図面は模式的または概念的に描かれており、長さ、幅、形状、大きさ、比率、方向、個数等は実際と異なっている場合があり、図面間(例えば、
図1と
図4)で対応していない場合がある。
【0009】
A.外観検査方法の概要
本発明の実施形態によれば、光学積層体の外観検査方法が提供される。該検査方法は、ヘイズが1.0%未満である長尺状の反射防止層と、該反射防止層に所定のパターンで形成されたヘイズが5.0%以上のアンチグレア層と、該アンチグレア層の所定の位置に形成された非アンチグレア部と、を有する長尺状の光学積層体を、長尺方向に搬送しながらその外観を検査する方法である。該検査方法は、該光学積層体を撮像して画像データを取得する工程と;該画像データから該アンチグレア層の端部を検出する工程と;該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する工程と;該画像データを解析して検査領域における欠陥候補部を抽出する工程と;欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断する工程と;欠陥候補部のサイズに基づいて欠陥を検出する工程と;を含む。以下、検査対象となる光学積層体、外観検査装置、および外観検査方法の各工程を具体的に説明する。
【0010】
B.光学積層体
図1は、本発明の実施形態による外観検査方法に供され得る長尺状の光学積層体の概略平面図であり;
図2は、
図1の光学積層体のII-II線による概略断面図である。光学積層体は、上記のとおり長尺状である。図示例の光学積層体100は、長尺状の反射防止層10と、反射防止層10に所定のパターンで形成されたアンチグレア層20と、を有する。アンチグレア層20は、代表的には、アンチグレア層の大部分を占めアンチグレア機能を有するアンチグレア部21と、所定の位置に形成された非アンチグレア部22と、有する。アンチグレア層20は、代表的には、反射防止層10の長尺方向および幅方向に所定の間隔で形成されている。1つの実施形態においては、アンチグレア層は、光学積層体がフィルム片に裁断されて適用される画像表示装置の形状に対応した形状に形成されている。言い換えれば、アンチグレア層は、最終的に使用される光学積層体の形状に対応した形状を有し得る。図示例のアンチグレア層は、反射防止層の長尺方向および幅方向においてそれぞれ対向する一対の辺で規定された矩形形状を有する。非アンチグレア部22は、代表的には、光学積層体を画像表示装置に取り付けるためにフィルム片に裁断した際に、画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている。なお、本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の光学積層体は、代表的にはロール搬送可能である。
【0011】
反射防止層のヘイズは、1.0%未満であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。ヘイズは低いほど好ましく、ヘイズの下限は例えば0.1%であり得る。反射防止層のヘイズがこのような範囲であれば、光学積層体(フィルム片)が最終的に画像表示装置に適用される場合に、表示性能に悪影響を与えることなく反射防止機能を付与することができる。
【0012】
反射防止層は、所望の反射防止特性を有し、上記のようなヘイズを満足する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、反射防止層は、硬化性樹脂組成物の硬化層であってもよく、ドライプロセスにより形成された層であってもよい。硬化性樹脂組成物は、代表的には、バインダー樹脂と必要に応じて光重合開始剤とを含む。バインダー樹脂は、代表的には硬化性化合物を含む。硬化性化合物としては、例えば、多官能モノマー、当該多官能モノマー由来のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。ドライプロセスにより形成された層としては、例えば、低屈折率材料のWETコーティング層、スパッタリング層または蒸着処理層が挙げられる。
【0013】
アンチグレア層のアンチグレア部のヘイズは、5.0%以上であり、好ましくは15%~55%であり、より好ましくは25%~45%であり、さらに好ましくは30%~40%である。アンチグレア層のヘイズがこのような範囲であれば、光学積層体(フィルム片)が最終的に画像表示装置に適用される場合に、良好なアンチグレア機能(防眩機能)を付与することができる。非アンチグレア部のヘイズは、代表的には、反射防止層と同等であり得る。非アンチグレア部のヘイズは、例えば1.0%未満であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。ヘイズは低いほど好ましく、ヘイズの下限は例えば0.1%であり得る。
【0014】
アンチグレア層は、所望のアンチグレア機能(防眩機能)を有し、上記のようなヘイズを満足する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、アンチグレア層は、バインダー樹脂と粒子とを含む硬化性樹脂組成物から形成され得る。硬化性樹脂組成物は、粒子を含むこと以外は反射防止層と同様である。アンチグレア層の詳細は、例えば特開2021-139981号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0015】
アンチグレア層は、1つの実施形態においては、反射防止層に直接形成されている。例えば、アンチグレア層は、所定のパターンを有するマスクを介して上記硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布膜を硬化させることにより形成され得る。
【0016】
光学積層体は、代表的には上記のとおり、画像表示装置に取り付けるためにフィルム片に裁断して用いられる。その際、代表的には、アンチグレア層の外縁から所定距離内側の領域が裁断され得る。このように裁断すれば、最終的に使用される光学積層体(フィルム片)全体にわたってアンチグレア機能が付与される(ただし、非アンチグレア部を除く)。
【0017】
光学積層体は、代表的には偏光板と貼り合わせられて、機能層付偏光板として用いられ得る。偏光板の偏光子は、代表的には非偏光部を有する。非偏光部は、代表的には、非アンチグレア部に対応する位置に形成されている。光学積層体と偏光板とは、それぞれがフィルム片に裁断されてから貼り合わせられてもよく、長尺状の光学積層体と長尺状の偏光板とをロールトゥロールにより貼り合わせてもよい。機能層付偏光板において、非アンチグレア部および非偏光部は、画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている。このような構成であれば、画像表示装置に所望の特性を付与しつつ、カメラ性能に対する悪影響を抑制することができる。
【0018】
C.検査装置
図3は、本発明の実施形態による外観検査方法に用いられ得る外観検査装置を説明する概略図である。図示した実施形態においては、長尺状の光学積層体100が検査装置300に搬送されて外観検査が行われる。検査装置300は、光学積層体100を撮像して画像データを取得する撮像装置50と、得られた画像データを解析して光学積層体100の欠陥を検出する画像解析装置80と、を備える。画像解析装置80は、得られた画像データからアンチグレア層の端部を検出し、該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する検査領域判断部81と;画像データに基づいて検査領域における欠陥候補部を抽出する欠陥候補部抽出部82と;欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断するサイズ判断部84と;欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断する周期性判断部86と;欠陥候補部のサイズ、または、欠陥候補部のサイズと周期性の有無とに基づいて欠陥を検出する欠陥検出部88と;を有する。
【0019】
D.外観検査方法の各工程
D-1.画像データを取得する工程(1)
工程(1)は、撮像装置50を用いて、光学積層体100を撮像して画像データを得ることにより行われ得る。撮像装置50は、代表的には、照明部52と撮像部54とを備える。
【0020】
照明部52は、任意の適切な光源を用いて構成され得る。光源は、白色光源であってもよく、単色光源であってもよい。光源の具体例としては、蛍光灯、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED等が挙げられる。
【0021】
撮像部54は、代表的には、レンズおよびイメージセンサを用いて構成されたカメラである。撮像部は、好ましくは光学積層体100の全幅が撮像可能となるように1つまたは複数設けられる。また、撮像部は、好ましくは長尺方向に連続した画像を撮像可能とされている。1つの実施形態において、撮像部は、ラインセンサカメラである。
【0022】
図3に示す実施形態においては、光学積層体100の一方の側に配置された照明部52から光学積層体100に対して光を照射し、光学積層体100の他方の側に照明部52と対向するように配置された撮像部54によって光学積層体100を透過した光を撮像する。透過光を撮像することにより、アンチグレア層以外の領域の輝度がアンチグレア層に対応する領域の輝度よりも高い像が得られ得る。
【0023】
別の実施形態(図示せず)においては、光学積層体100の一方の側に照明部と撮像部を配置し、該照明部から光学積層体100に対して斜め方向から光を照射し、照明部と同じ側に配置された撮像部によって光学積層体100に反射された光を撮像する。
【0024】
さらに別の実施形態(図示せず)においては、光学積層体100の一方の側に照明部と撮像部とを配置し、該撮像部のカメラの光軸と照射光の光軸とが一致するように、光学積層体100に対して垂直に光を照射し、その反射光を撮像する。
【0025】
光学積層体100の構成等に応じて適切な撮像方法を選択して光学積層体100を撮像することにより、アンチグレア層に対応する領域の輝度とその他の部分に対応する領域の輝度との差が大きい(結果として、コントラスト比が大きい)画像が得られ得る。光学積層体100の撮像は、上記実施形態のいずれか1つに従って行われてもよく、2つ以上の実施形態を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
好ましくは、光学積層体100を長尺方向に搬送しながら撮像を行う。搬送しながら撮像を行うことにより、製造ラインの停止を回避して製造効率を維持し得る。
【0027】
D-2.検査領域と非検査領域とを設定する工程(2)
工程(2)は、光学積層体における検査領域と非検査領域とを設定する。これは本発明の実施形態に特有の構成であり、かつ、当該構成により本発明の実施形態に特有の効果が得られ得る。具体的には以下のとおりである。長尺状の光学フィルムの外観検査を行う場合、通常は光学フィルム全体にわたって外観検査を行う必要がある。この場合、検査する必要のない部分を検査することにより検査効率(検査スピード)が不十分となるといった問題が生じる場合がある。一方、本発明の実施形態に用いられる光学積層体は、ヘイズの小さい(実質的に透明な)長尺状の反射防止層にヘイズの大きい(実質的に不透明な)アンチグレア層が所定のパターンで形成されているので、アンチグレア層とアンチグレア層が形成されていない部分との境界を撮像により検出することができる。さらに、光学積層体はフィルム片に裁断して用いられ得るところ、フィルム片のサイズおよび形状は実質的にはアンチグレア層のサイズおよび形状に対応し得る。したがって、アンチグレア層が形成されていない部分が裁断クズとなるので、この部分を非検査領域に設定することにより、不要なノイズの検出および不要な検査を回避することができる。その結果、高い検査精度および高い検査効率での外観検査を実現することができる。
【0028】
工程(2)は、代表的には、上記画像データからアンチグレア層の端部を検出すること;および、該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定すること;を含む。以下、
図3および
図4を参照して具体的に説明する。
【0029】
撮像装置50によって得られた画像データは、電気信号として画像解析装置80に送信される。送信された画像データは、検査領域判断部81によって解析され、これにより、検査領域Aと非検査領域Bとが設定される。
【0030】
代表的には、画像データの輝度情報に基づいてアンチグレア層の端部を検出する。アンチグレア層とそれ以外の部分とではヘイズが有意に異なるので、画像データの輝度情報が不連続に変化する部分がアンチグレア層の端部(アンチグレア層とそれ以外の部分との境界)として認識され得る。図示例では、アンチグレア層20(アンチグレア部21)は、対向する一対の辺23、23と辺23、23に直交する辺24、24とで規定される矩形形状を有する。さらに、図示例では、辺23、23は反射防止層の幅方向に平行であり、辺24、24は反射防止層の長尺方向に平行である。したがって、辺23、23が長尺方向におけるアンチグレア層21の端部となり、辺24、24が幅方向におけるアンチグレア層21の端部となる。アンチグレア層の端部の検出は、代表的には、好ましくは辺23および辺24の両方(長尺方向および幅方向の両方向)について行われる。このように検出することにより、長尺方向および幅方向の両方向における非検査領域を精度良く設定することができる。なお、辺23、23および辺24、24については、それぞれ、いずれか一方を検出すればよい。この場合、アンチグレア層の端部の検出は、代表的には、同じ側の辺23(図面の上側または下側の辺23)ならびに同じ側の辺24(図面の左側または右側の辺24)について行われ得る。
【0031】
次に、検出した端部から内側に距離dの位置に境界30を設定し、境界30の内側(端部と反対側)の領域Aを検査領域とする。このように設定すれば、アンチグレア層全体を含む領域(最終製品となる領域)を検査領域とすることができる。その結果、アンチグレア層の検査漏れを防止することができる。境界30の外側(端部側)の領域Bは、非検査領域とする。これにより、不要な検査を回避することができ、その結果、高い検査効率での外観検査を実現することができる。なお、検査領域Aは、図示例のように非アンチグレア部を含む。
【0032】
D-3.欠陥候補部を抽出する工程(3)
次に、検査領域Aにおいてのみ、画像データが欠陥候補部抽出部82によって解析され、欠陥候補部が抽出される。
【0033】
1つの実施形態においては、画像データの輝度情報に基づいて欠陥候補部を抽出する。具体的には、予め正常なアンチグレア層を撮像して正常と判定される輝度基準を設定し、該基準に基づいて欠陥候補部を抽出する。例えば、正常と判定される輝度の上限を超える高輝度部、正常と判定される輝度の下限を超える低輝度部等を欠陥候補部と判定し得る。異物、気泡、ピンホール等の外観不良の原因となる欠陥部は、通常、アンチグレア層の正常領域と透過率、反射率等が異なることから、上記のような輝度基準により欠陥候補部として抽出される。一方、得られた画像データにおいては、非アンチグレア部に対応する領域も、アンチグレア層に対応する領域と透過率、反射率等が異なることから欠陥候補部として抽出され得る。
【0034】
欠陥候補抽出部82は、好ましくは欠陥候補部の位置情報(例えば、長尺方向に連続した画像における長尺方向および幅方向の位置座標(X,Y))を記憶し、周期性判断部86に送信する。
【0035】
D-4.欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断する工程(4)
欠陥候補部抽出部82によって欠陥候補部が抽出されると、抽出された個々の欠陥候補部について、サイズ判断部84でそのサイズを決定し、さらには、そのサイズが基準値以下であるか否かを判断する。最終的には、後述の欠陥を検出する工程(6)において、例えば、基準値を超えるサイズを有する欠陥候補部を非アンチグレア部と認識して区別し、基準値以下のサイズを有する欠陥候補部を欠陥として検出することができる。
【0036】
欠陥候補部のサイズの決定は任意の適切な方法によって行われ得る。例えば、画像データ中における欠陥候補部の画素数、径、面積等に基づいてサイズを決定することができる。欠陥候補部の径は、代表的には、画像データにおいて、欠陥候補部の外周上の任意の2点を結ぶ直線のうち、もっとも長いものの長さを径として決定され得る。面積は、画素数または径に基づいて算出され得る。
【0037】
上記基準値は、任意の適切な方法によって決定され得る。例えば、上記基準値は、非アンチグレア部のサイズに基づいて決定され得る。例えば、径によってサイズを判断する場合、上記基準値(径の基準値)は、以下のようにして決定することができる。すなわち、設計上の非アンチグレア部の形状および寸法に基づいて非アンチグレア部の径(理論値)を算出するか、あるいは、実際に形成された非アンチグレア部の径(実測値)を測定し、得られた非アンチグレア部の径の例えば90%、好ましくは95%を基準値とすることができる。また、例えば、欠陥の平均サイズが非アンチグレア部のサイズに比べて十分に小さい場合(例えば、欠陥の平均径が非アンチグレア部の径の1/8以下である場合)、上記基準値は、非アンチグレア部の径の1/4~1/2の値とすることができる。具体例として、非アンチグレア部の径が2800μm程度であり、欠陥の平均径が150μm~300μmである場合、上記基準値を1000μm程度とすることができる。
【0038】
D-5.欠陥候補部が該長尺方向に周期性を有するか否かを判断する工程(5)
工程(5)は、欠陥候補部が長尺方向に周期性を有するか否かを判断する。工程(5)は、好ましくは工程(4)に付随して行われる。すなわち、工程(4)で基準値以下のサイズを有する欠陥候補部を欠陥として検出するとともに、工程(5)で周期性を有さない欠陥候補部も欠陥として検出する。工程(4)と工程(5)とを組み合わせることにより、欠陥候補部をサイズと周期性との2つの側面から評価することができるので、検査精度をさらに向上させることができる。工程(5)は、周期性判断部86により行われる。周期性判断部86は、抽出された欠陥候補部の全てを周期性の判断対象としてもよく、サイズ判断部84において基準値を超えるサイズを有することが確認された欠陥候補部のみを判断対象としてもよい。好ましくは、サイズ判断部84において基準値を超えるサイズを有することが確認された欠陥候補部のみを判断対象とする。これにより、検査スピードをさらに向上させることができる。
【0039】
1つの実施形態においては、3つ以上の欠陥候補部が任意の方向に伸びる直線上に等間隔に存在するとき、これらの欠陥候補部は周期性を有すると判断することができる。
【0040】
検査対象の光学積層体においては、少なくとも長尺方向に所定の間隔で非アンチグレア部が配置されていることから、長尺方向における非アンチグレア部間の間隔に基づいて周期性を判断することができる。よって、光学積層体における判断対象の欠陥候補部の位置を決定し、上記所定の間隔で存在するものをスクリーニングすること等により、周期性の有無を効率的に判断することができる。
【0041】
1つの実施形態においては、欠陥候補部の周期性の有無の判断は、欠陥候補部の位置座標(例えば、長尺方向における位置座標)に基づいて行われる。例えば、欠陥候補部抽出部から送信される欠陥候補部(例えば長尺方向に2つ以上、好ましくは3つ以上隣接する欠陥候補部)の位置座標を、設計上(理論上)の非アンチグレア部の位置座標と照らし合わせ、位置座標が一致した場合には、該欠陥候補部は周期性を有すると判断できる。また、例えば、欠陥候補部抽出部から送信される欠陥候補部の長尺方向の位置座標に基づいて、判断対象の欠陥候補部と、その搬送方向上流側に存在する非アンチグレア部(欠陥ではないとの判断済みの欠陥候補部であり得る)との長尺方向の距離を求め、該距離が、所定の距離であるか否かに基づいて行われる。該距離は、例えば、長尺方向における非アンチグレア部の配置間隔(すなわち、上記長尺方向における所定の間隔)、または、該所定の間隔を整数倍した距離であり得る。
【0042】
D-6.欠陥を検出する工程(6)
欠陥検出部88は、欠陥候補部のサイズ、または、欠陥候補部のサイズと周期性の有無とに基づいて欠陥を検出する。具体的には、欠陥検出部88は、サイズ判断部84において基準値以下のサイズを有すると判断された欠陥候補部を欠陥として検出する。欠陥検出部88はさらに、周期性判断部86において周期性を有すると判断された欠陥候補部を非アンチグレア部と認識して欠陥候補部と区別し、残りの欠陥候補部を欠陥として検出することができる。換言すれば、欠陥検出部88は、基準値以下のサイズを有すると判断された欠陥候補部および周期性を有さないと判断された欠陥候補部を欠陥として検出し得る。
【0043】
図5は、本発明の1つの実施形態における欠陥検出の具体的手順を説明するフローチャートである。
図5に示す実施形態においては、まず、光学積層体の画像データを取得する(上記工程(1))。次いで、画像データに基づいてアンチグレア層の端部を検出し、該内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する(上記工程(2))。次いで、検査領域において欠陥候補部を抽出する(上記工程(3))。次いで、欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断し(上記工程(4))、基準値を超えるサイズを有する欠陥候補部を非アンチグレア部と判断する一方で、基準値以下のサイズを有する欠陥候補部を欠陥として検出する(上記工程(6))。
【0044】
図6は、本発明の別の実施形態における欠陥検出の具体的手順を説明するフローチャートである。
図6に示す実施形態においては、まず、光学積層体の画像データを取得する(上記工程(1))。次いで、画像データに基づいてアンチグレア層の端部を検出し、該端部から内側の所定距離に境界を設定し、該境界の内側を検査領域および該境界の外側を非検査領域に設定する(上記工程(2))。次いで、検査領域において欠陥候補部を抽出する(上記工程(3))。次いで、欠陥候補部が基準値以下のサイズを有するか否かを判断し(上記工程(4))、基準値を超えるサイズを有する欠陥候補部について、周期性の有無を判断する(上記工程(5))。得られた結果に基づいて、基準値以下のサイズを有する欠陥候補部および基準値を超えるサイズを有するが、周期性を有さない欠陥候補部を欠陥として検出する(上記工程(6))。なお、
図7(a)中の白円は、当該実施形態による工程(3)において抽出された全ての欠陥候補部を示し、
図7(b)中の白円は、基準値を超えるサイズを有し、周期性の有無の判断対象となる欠陥候補部を示し、
図7(c)中の黒円は、周期性を有すると判断された欠陥候補部(非偏光部)を示し、白円は、周期性を有さないと判断された欠陥候補部(欠陥)を示し、
図7(d)中の白円は、最終的に検出される欠陥を示す。
【0045】
D-7.マーキング工程(7)
外観検査装置300は、マーキング装置(図示せず)をさらに備えていてもよい。マーキング装置は、画像処理装置と接続され、画像処理装置(実質的には、欠陥検出部)が欠陥を検出すると、該欠陥の位置情報をマーキング装置に送信する。マーキング装置は、該位置情報に基づいて、欠陥部にマーキングを行う。マーキングされた領域は、裁断後に不良品として容易に排除され得る。マーキングとしては、マーカーペンを用いたマーキング、インクジェットマーキング、レーザーマーキングが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の実施形態による外観検査方法は、例えば、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に備えられる光学積層体(例えば、機能層付偏光板)を製造する際に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
10 反射防止層
20 アンチグレア層
21 アンチグレア部
22 非アンチグレア部
50 撮像装置
80 画像解析装置
81 検査領域判断部
82 欠陥候補部抽出部
84 サイズ判断部
86 周期性判断部
88 欠陥検出部
100 光学積層体
300 検査装置