(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014135
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】植物栽培装置及びイチゴ製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/04 20060101AFI20240125BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20240125BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20240125BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A01G31/04 B
A01G31/00 601C
A01G31/00 612
A01G22/05 A
A01G7/00 601Z
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116749
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 政樹
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AA03
2B022AB15
2B022DA01
2B314MA38
2B314NA24
2B314NA37
2B314ND32
2B314PB17
2B314PD06
2B314PD07
2B314PD09
2B314PD37
2B314PD59
2B314PD62
(57)【要約】
【課題】実がなる植物を栽培することが可能な植物工場を開発する。
【解決手段】太陽光照射エリアと、人工照明エリアと、給水エリアと、トレイ搬送手段を有し、太陽光照射エリアは、栽培トレイに植えられた植物に主として太陽光を照射することができる領域であり、人工照明エリアは、栽培トレイに植えられた植物に主として人工光照明を照射する領域であり、給水エリアは、栽培トレイに散水する散水装置を備えた領域であり、前記栽培トレイは、植物保持部と、保水部材を有し、前記保持手段で植物を保持し、前記散水によって保水部材を湿らせて植物の根から水分及び養分を吸収させるものであり、トレイ搬送手段は、栽培トレイを前記各エリアに順次搬送させるものであり、一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、それ以上の時間、栽培トレイを人工照明エリアに置く。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の栽培トレイを有し、当該栽培トレイに植物を植えて植物を栽培する植物栽培装置において、
太陽光照射エリアと、人工照明エリアと、給水エリアと、トレイ搬送手段を有し、
太陽光照射エリアは、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に主として太陽光を照射することができる領域であり、
人工照明エリアは、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に主として人工光照明を照射する領域であり、
給水エリアは、栽培トレイに散水する散水装置を備えた領域であり、
前記栽培トレイは、植物保持部と、保水部材を有し、
前記保持手段で植物を保持し、前記散水によって保水部材を湿らせて植物の根から水分及び養分を吸収させるものであり、
トレイ搬送手段は、栽培トレイを前記各エリアに順次搬送させるものであり、栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、時を変えて同じ栽培トレイを人工照明エリアにも置くことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
上下にトレイ配置部が配置された棚状部材と、昇降装置を有し、太陽光照射エリアは、棚状部材の最上階にあり、前記人工照明エリアは、太陽光照射エリアよりも下の階にあり、前記昇降装置によって、栽培トレイを各階に移動されることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
太陽光を取り入れることができる構造物内に設置される植物栽培装置であって、複数の栽培トレイを有し、当該栽培トレイに植物を植えて植物を栽培する植物栽培装置において、
複数のトレイ配置部と、給水エリアと、トレイ搬送手段を有し、
トレイ配置部は上下に配置されており、
最上階のトレイ配置部は、前記太陽光照射エリアであって、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、
太陽光照射エリアよりも下の階のトレイ配置部は、人工照明エリアであって複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に人工光照明を照射することが可能な領域であり、
給水エリアは、栽培トレイに散水する散水装置を備えた領域であり、
前記栽培トレイは、植物保持部と、保水部材を有し、
前記保持手段で植物を保持し、前記散水によって保水部材を湿らせて植物の根から水分及び養分を吸収させるものであり、
トレイ搬送手段は、栽培トレイを前記各エリアに順次搬送させるものであり、栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、時を変えて同じ栽培トレイを人工照明エリアにも置くことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項4】
一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、それ以上の時間、栽培トレイを人工照明エリアに置くことを特徴とする請求項1又は3に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
上下にトレイ配置部が配置された棚状部材を有し、太陽光照射エリアは、棚状部材の最上階にあり、太陽光照射エリアには透光性の天井部があり、当該天井部を透過した太陽光が前記栽培トレイに照射されるものであり、
前記天井部に照明が取り付けられており、前記照明が発生する人工光を前記栽培トレイに照射することも可能であることを特徴とする請求項1又は3に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
太陽光照射エリアと人工照明エリアの少なくともいずれかは、少なくとも二列のレールを備え、
前記栽培トレイは、前記レールに対応するコロを備えており、前記コロは自由回転するものであり、
特定の一本のレールと係合するコロは、前記レールを保持する凹部を有していてコロとレールとの接触面は横方向の自由度が少なく、他のレールと係合するコロは、コロ自体或いはコロとレールとの接触面に横方向の自由度があることを特徴とする請求項1又は3に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
上下にトレイ配置部が配置された棚状部材と、昇降装置を有し、前記棚状部材の両端に昇降装置があることを特徴とする請求項1又は3に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
上下にトレイ配置部が配置された棚状部材を有し、前記棚状部材は、複数列、平行に配列されており、前記棚状部材の端部に、受け渡し装置が設けられており、
特定の棚状部材から栽培トレイが排出されて前記受け渡し装置に載置され、当該栽培トレイが当該受け渡し装置によって他の棚部材に送られることを特徴とする請求項1又は3記載の植物栽培装置。
【請求項9】
太陽光照射エリアと人工照明エリアの少なくともいずれかは、少なくとも一端に押し出し装置があり、当該押し出し装置で栽培トレイを押して栽培トレイを移動させることを特徴とする請求項1又は3に記載の植物栽培装置。
【請求項10】
請求項1又は3に記載の植物栽培装置を使用してイチゴを栽培し、イチゴを結実させることを特徴とするイチゴ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等の植物を栽培する植物栽培装置に関するものである。また本発明は、イチゴ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物を屋内で栽培する植物栽培装置が知られている。植物栽培装置は、作物工場と通称される栽培形態に使用されるものである。即ち植物栽培装置は、人工照明を使用して作物に適度の日照を与えると共に、建屋内や室内を生育に適した温度や湿度に保って作物を育成する装置である。
植物栽培装置によると、日照や温度、水分、肥料濃度等が適度に制御された環境で作物を作ることができるので、露地栽培に比べて収穫に要する期間が短い。
また植物栽培装置の多くは水耕栽培によって作物を育成するものであり、露地栽培に比べて清潔である。さらに室内で作物を栽培するので害虫が付かず、無農薬で作物を栽培することもできる。そのため植物栽培装置は、レタス等の皮を剥いたりせずに食する野菜を栽培するのに好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-60529号公報
【特許文献2】特開2001-78577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人らは植物工場を製作し、レタスをはじめ各種の植物を栽培した。その一環として、イチゴの生産に取り組んだ。しかしながら、従来の植物工場では、おいしいイチゴを実らせることができなかった。
即ち従来技術の植物工場でイチゴの苗を育成したところ、葉や根は旺盛に成長したが、花が少なく、且つ結実した実は形が悪いものであった。
本発明は、上記した問題を解決するものであり、イチゴの様な実がなる植物を栽培することが可能な植物工場を開発することを課題とするものである。
また本発明は、新たなイチゴの製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するための態様は、複数の栽培トレイを有し、当該栽培トレイに植物を植えて植物を栽培する植物栽培装置において、太陽光照射エリアと、人工照明エリアと、給水エリアと、トレイ搬送手段を有し、太陽光照射エリアは、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に主として太陽光を照射することができる領域であり、人工照明エリアは、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に主として人工光照明を照射する領域であり、給水エリアは、栽培トレイに散水する散水装置を備えた領域であり、前記栽培トレイは、植物保持部と、保水部材を有し、前記保持手段で植物を保持し、前記散水によって保水部材を湿らせて植物の根から水分及び養分を吸収させるものであり、トレイ搬送手段は、栽培トレイを前記各エリアに順次搬送させるものであり、栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、時を変えて同じ栽培トレイを人工照明エリアにも置くことを特徴とする植物栽培装置である。
【0006】
本態様の植物栽培装置は、太陽光照射エリアと、人工照明エリアを有している。太陽光照射エリアは、主として太陽光を取り入れて栽培トレイに植えられた植物に太陽光を照射することができる領域である。一方、人工照明エリアは、栽培トレイに植えられた植物に主として人工光照明を照射する領域である。
本態様によると、栽培トレイに植えられた植物に人工光照明だけでなく、太陽光も照射することができるので、植物が結実しやすい。
【0007】
上記した態様において、上下にトレイ配置部が配置された棚状部材と、昇降装置を有し、太陽光照射エリアは、棚状部材の最上階にあり、前記人工照明エリアは、太陽光照射エリアよりも下の階にあり、前記昇降装置によって、栽培トレイを各階に移動されることが望ましい。
【0008】
本態様によると、空間を有効利用することができる。
【0009】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、太陽光を取り入れることができる構造物内に設置される植物栽培装置であって、複数の栽培トレイを有し、当該栽培トレイに植物を植えて植物を栽培する植物栽培装置において、複数のトレイ配置部と、給水エリアと、トレイ搬送手段を有し、トレイ配置部は上下に配置されており、最上階のトレイ配置部は、前記太陽光照射エリアであって、複数の栽培トレイを収容することが可能であり、太陽光照射エリアよりも下の階のトレイ配置部は、人工照明エリアであって複数の栽培トレイを収容することが可能であり、栽培トレイに植えられた植物に人工光照明を照射することが可能な領域であり、給水エリアは、栽培トレイに散水する散水装置を備えた領域であり、前記栽培トレイは、植物保持部と、保水部材を有し、前記保持手段で植物を保持し、前記散水によって保水部材を湿らせて植物の根から水分及び養分を吸収させるものであり、トレイ搬送手段は、栽培トレイを前記各エリアに順次搬送させるものであり、栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、時を変えて同じ栽培トレイを人工照明エリアにも置くことを特徴とする植物栽培装置である。
【0010】
上記した態様において、一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、それ以上の時間、栽培トレイを人工照明エリアに置くことが望ましい。
【0011】
本態様の植物栽培装置は、一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、それ以上の時間に渡って栽培トレイを人工照明エリアに置く。本態様の植物栽培装置では、植物が太陽光を受ける時間が確保されている。そのためイチゴ等を結実させることができ、かつ、形の良い実をならすことができる。
以下、その理由について説明する。
太陽光スペクトルは人工光には無い波長帯域にエネルギーの厚みがあり、それが植物の育成にプラスに働いていると考えられる。
現在、各種の太陽光ライクのLEDの開発が進められている。しかしながら、人工光を太陽光に近づけるのは技術に限界があり、完全に太陽光と同じスペクトル分布の人工光照明は現在のところ存在しない。
そこで本態様の植物栽培装置では、自然の光をそのまま利用することによって、人工光照明では不足するスペクトル部分を補っている。
本態様の植物栽培装置は、栽培トレイを一定時間の間、太陽光照射エリアに置くことによって、人工光照明だけでは不足する光の成分を補うものである。そのため本態様の植物栽培装置は、一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリアに置き、それ以上の時間、栽培トレイを人工照明エリアに置く構成となっている。
【0012】
上記した各態様において、上下にトレイ配置部が配置された棚状部材を有し、太陽光照射エリアは、棚状部材の最上階にあり、太陽光照射エリアには透光性の天井部があり、当該天井部を透過した太陽光が前記栽培トレイに照射されるものであり、前記天井部に照明が取り付けられており、前記照明が発生する人工光を前記栽培トレイに照射することも可能であることが望ましい。
【0013】
本態様の植物栽培装置では、太陽光照射エリアに設けられた天井部は、透光性があるから、晴天時には、天井部を透過した太陽光を植物に照射することができる。
一方、曇天や雨降りの場合は、天井部設けられた照明を植物に照射し成長を促すことができる。
【0014】
上記した各態様において、太陽光照射エリアと人工照明エリアの少なくともいずれかは、少なくとも二列のレールを備え、前記栽培トレイは、前記レールに対応するコロを備えており、前記コロは自由回転するものであり、特定の一本のレールと係合するコロは、前記レールを保持する凹部を有していてコロとレールとの接触面は横方向の自由度が少なく、他のレールと係合するコロは、コロ自体或いはコロとレールとの接触面に横方向の自由度があることが望ましい。
【0015】
本態様の植物栽培装置は、特定の一本のレールと係合するコロにレールを保持する凹部があって、コロとレールとの接触面は横方向の自由度が少なく、他のレールと係合するコロは、コロ自体或いはコロとレールとの接触面に横方向の自由度があるので、レールの平行度に狂いがあっても円滑に栽培トレイを移動させることができる。
即ち、本態様の植物栽培装置では、太陽光照射エリアと人工照明エリアの少なくともいずれかに、少なくとも二列のレールが設けられている。一方、栽培トレイは、レールに対応するコロを備えている。
本態様の植物栽培装置では、レールにコロを係合させた状態で栽培トレイが設置される。前記したコロは、自由回転するものであるから、栽培トレイに外力をかけると、コロが回転して進む。
ここで本態様では、特定の一本のレールと係合するコロは、レールを保持する凹部を有していてコロとレールとの接触面は横方向の自由度が少ない。そのため、栽培トレイは、前記下特定の一本のレールに沿って移動することとなる。
これに対して、他のレールと係合するコロは、横方向の自由度があるから、レール間の幅が多少変化しても、その変化を吸収することができる。
そのため本態様の植物栽培装置によると、レールの平行度に狂いがあっても円滑に栽培トレイを移動させることができるので、レールの平行度を厳密に調整する必要がない。
【0016】
上記した各態様において、上下にトレイ配置部が配置された棚状部材と、昇降装置を有し、前記棚状部材の両端に昇降装置があることが望ましい。
【0017】
本態様によると、空間を有効利用することができる。
【0018】
上記した各態様において、上下にトレイ配置部が配置された棚状部材を有し、前記棚状部材は、複数列、平行に配列されており、前記棚状部材の端部に、栽培トレイを隣接する棚状部材に受け渡す、受け渡し装置が設けられており、特定の棚状部材から栽培トレイが排出されて前記受け渡し装置に載置され、当該栽培トレイが当該受け渡し装置によって他の棚部材に送られることが望ましい。
【0019】
本態様の植物栽培装置では、受け渡し装置によって棚状部材の間で栽培トレイを行き来させることができる。
【0020】
上記した各態様において太陽光照射エリアと人工照明エリアの少なくともいずれかは、少なくとも一端に押し出し装置があり、当該押し出し装置で栽培トレイを押して栽培トレイを移動させることが望ましい。
【0021】
本態様によると、簡単な構造の装置で、栽培トレイを移動させることができる。
【0022】
上記した植物栽培装置を使用してイチゴを栽培し、イチゴを結実させることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、イチゴの様な、実がなる植物を栽培することができる。また本発明のイチゴの製造方法によると、形のよいイチゴを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)は本発明の実施形態の植物栽培装置の正面図であり、(b)はその平面図である。
【
図3】
図1の建屋を含むA-A断面の拡大図であり、棚状部材の断面図である。
【
図6】
図5の昇降台の押し出し装置と引き込み装置を分離して示した分解斜視図である。
【
図8】
図7の受け渡し装置の傾斜部の機構図であり、(a)は水平姿勢となっている状態を示し、(b)は傾斜姿勢となっている状態を示す。
【
図9】
図7の受け渡し装置の傾斜部近傍の詳細図である。
【
図10】レールに載置された状態における栽培トレイの斜視図である。
【
図12】
図10の栽培トレイの断面図であってイチゴの苗が植え付けられた状態を示す。
【
図13】(a)乃至(d)は、昇降装置の昇降台の機能を説明する説明図であり、栽培トレイを外部から昇降台側に引き入れて、当該栽培トレイを昇降台から棚状部材側に押し出す一連の動きを示す。
【
図14】(a)乃至(g)は、一端側の昇降台によって栽培トレイを棚状部材側に押し入れて棚状部材に栽培トレイを敷き詰め、さらに棚状部材の他方から栽培トレイを排出する一連の動きを示す説明図である。
【
図15】(a)、(b)は、
図1の植物栽培装置の棚状部材と、昇降装置と、受け渡し装置の連係動作を示す説明図である。
【
図16】(c)、(d)は、
図1の植物栽培装置の棚状部材と、昇降装置と、受け渡し装置の
図15に続く連係動作を示す説明図である。
【
図17】(a)、(b)は、受け渡し装置の一連の動作を示す斜視図である。
【
図18】(a)乃至(h)は、受け渡し装置の一連の動作を示す説明図であり、受け渡し装置を
図7のA方向から観察したものである。
【
図19】
図1の植物栽培装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【
図20】
図1の植物栽培装置の一連の動作を示す
図19に続くフローチャートである。
【
図21】昇降台の変形例であって、押し出し装置と引き込み装置を分離して示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の植物栽培装置1について説明する。
実施形態の植物栽培装置1は、イチゴを育てるものである。
植物栽培装置1は、
図1、
図2に示す様に、中央部に棚状部材2があり、その両端に、昇降装置3a、3bと、受け渡し装置5a、5bが設置されたものである。
棚状部材2は、3階構造であり、二つの棚状部材2が並列的に配置されている。棚状部材2の各階には、トレイ配置部6があり、複数の栽培トレイ100を収容することができる。本実施形態では、全てのトレイ配置部6には照明が設けられている。また最上階のトレイ配置部6は、太陽光照射エリア200であり、太陽光を取り入れることができる。他の階のトレイ配置部6は、人工照明エリア201であり、主として人工光照明を照射する領域である。
また植物栽培装置1には、給水エリア202があり、当該給水エリア202には、栽培トレイ100に散水する散水装置48が設けられている。また本実施形態では、給水エリア202で農薬が散布される。
植物栽培装置1は、複数の栽培トレイ100を有し、栽培トレイに100にイチゴの苗300が保持された状態で装置に収容される。
図12に示す様に栽培トレイ100は、本体部101と、保水部材130、131を有している。栽培トレイ100は、本体部101でイチゴの苗300を保持し、散水によって保水部材130、131を湿らせて根から水分及び養分を吸収させるものである。
栽培トレイ100は、植物栽培装置1内を循環し、人工光照明及び太陽光によって生育される。またその間、給水エリア202で散水される。また必要に応じて苗300に農薬が散布される。
本実施形態では、一日の内の一定時間は、栽培トレイ100を太陽光照射エリア200において植物に太陽光を当てる。他の時間は、原則として人工光照明を照射して植物を育てる 以下、説明する。
【0026】
(棚状部材2)
棚状部材2は、
図1(a)、
図3の様に、上下3段にトレイ配置部6が配置されたものである。本実施形態では、
図1乃至
図3の様に棚状部材2L、2Rが二列平行に配置されている。以下、左右の棚状部材2を区別する必要がある場合には、棚状部材2L、2Rと表記し、区別する必要が無い場合には単に棚状部材2と表記する。
【0027】
棚状部材2のトレイ配置部6には、
図3の様に、いずれも長手方向にのびる一対のレール7a、7bが敷設されている。以下、左右のレール7を区別する必要がある場合には、レール7a、7bと表記し、区別する必要が無い場合には単にレール7と表記する。
レール7の断面形状は、円形である。一対のレール7は、平行に設置されている。
【0028】
各トレイ配置部6は、全長が栽培トレイ100に比べて著しく長く、多数の栽培トレイ100を収容することができる。
各トレイ配置部6には、円弧状の天井部8、10があり、各天井部8、10には照明12が設けられている。
最上階の天井部10は、透明であり、太陽光を取り入れることができる。
本実施形態では、最上階のトレイ配置部6が、太陽光照射エリア200であり、2階部分以下が、人工照明エリア201である。
【0029】
(昇降装置3)
次に昇降装置3a、3bの構造について説明する。以下、二つの昇降装置3a、3bを区別する必要がある場合には、昇降装置3a、3bと表記し、両者を区別する必要が無い場合には単に昇降装置3と表記する。
昇降装置3は、トレイ搬送手段の一つである。二つの昇降装置3は、勝手違いではあるが、構造は同じである。
昇降装置3は、
図4の様に枠状フレーム13を有し、当該枠状フレーム13に、昇降台15が2台、設置されたものである。
昇降台15は、
図5の様に昇降本体16に押し出し装置(プッシャー)17と、引き込み装置18が設置されたものである。
【0030】
昇降本体16は、
図5の様に、平面視が四角形であり、一方の端部に取り付け片20が設けられている。また昇降本体16の左右の辺には、ガイド部21が設けられている。ガイド部21は、昇降本体16の側面の両端に支持部材22が立ち上げられており、当該支持部材22にガイド棒23がかけ渡されてなるものである。
【0031】
押し出し装置17は、
図6に示すように、移動部材25と、当該移動部材25を直線移動させる水平移動機構26によって構成されている。
移動部材25は、板状の本体部27を有し、当該本体部27から突出する押圧部材28を有している。
押圧部材28は、一辺側が本体部27に軸支されており、一辺側を中心として揺動する。押圧部材28は、図示しない付勢手段によって、
図5、
図6の様な立ち姿勢となっている。ただし、上方から外力を受けると、寝姿勢となる。
前記した様に、押圧部材28は、一辺側が本体部27に軸支されており、一辺側を中心として揺動するので、軸支側から栽培トレイ100が接近すると、栽培トレイ100に押されて寝姿勢となる。これに対して、栽培トレイ100が押圧部材28の進行方向側にある場合は、押圧部材28が立姿勢となる。
移動部材25は、ガイド57と係合しており、直線方向にのみ移動する。
【0032】
水平移動機構26は、
図6の様に、二組のベルト伝導機構であり、二つの駆動側プーリ30と、二つの従動側プーリ31と、二本の歯付きベルト32によって構成されている。駆動側プーリ30と、従動側プーリ31は、同じ高さの位置に設けられている。歯付きベルト32は、一対の駆動側プーリ30と、従動側プーリ31に懸架されている。駆動側プーリ30は、モータ内蔵ローラ43によって駆動される。
移動部材25は、水平移動機構26の歯付きベルト32に接続されており、モータ内蔵ローラ43を回転して、歯付きベルト32を走行させることによって水平に直線移動する。
【0033】
引き込み装置18は、
図6の様に、2列のコロ列33によって構成されている。コロ列33は、複数のコロ42が一列に配されたものである。各コロ42には、ベルト67が懸架されている。一つのコロ42にモータ66が係合しており、当該モータ66を駆動することによって、全てのコロ42が同期的に回転する。
【0034】
本実施形態の昇降台15では、
図5の様に、中央に押し出し装置17があり、その両脇に、引き込み装置18のコロ列33がある。
コロ列33の最高高さは、押し出し装置17の本体部27よりも上にある。しかし押し出し装置17の押圧部材28が立姿勢になると、押圧部材28の多くの領域が、コロ列33の最高高さよりも上に位置する。
【0035】
昇降装置3aの枠状フレーム13側には、
図4、
図5の様な昇降機構35が設けられている。
昇降機構35は、二組のベルト伝導機構であり、二つの駆動側プーリ37と、二つの従動側プーリ38と、歯付きベルト40によって構成されている。
歯付きベルト40は、一対の駆動側プーリ37と、従動側プーリ38に懸架されている。駆動側プーリ37は、モータ内蔵ローラ41によって駆動される。
昇降台15は、昇降機構35の歯付きベルト40に接続されており、モータ内蔵ローラ41を回転して歯付きベルト40を走行させることによって垂直方向に直線移動する。
【0036】
昇降装置3の機能をまとめると次の通りである。
昇降装置3は、昇降台15を2基有し、当該昇降台15は、動力によって個別に昇降させることができる。即ち昇降台15に栽培トレイ100を載置して栽培トレイ100を昇降させることができる。
各昇降台15の中央部には、それぞれ押し出し装置17があり、押し出し装置17には、押圧部材28がある。押圧部材28は、立姿勢と寝姿勢をとることができ、押圧部材28が立姿勢である場合は、押圧部材28は引き込み装置18のコロ列33よりも上に突出する。押し出し装置17は、水平方向に直線移動する。
昇降台15に栽培トレイ100を載せ、押圧部材28を立姿勢として押し出し装置17を直線移動することにより、栽培トレイ100を押し動かすことができる。
各昇降台15の両側面側に、引き込み装置18の2列のコロ列33があり、各コロ42は、動力によって回転する。
コロ列33に栽培トレイ100の一部を載せ、コロ列33を回転することによって、栽培トレイ100を昇降台15に引き入れることができる。
【0037】
(受け渡し装置5)
次に受け渡し装置5a、5bについて説明する。以下、二つの受け渡し装置5a、5bを区別する必要がある場合には、受け渡し装置5a、5bと表記し、両者を区別する必要が無い場合には単に受け渡し装置5と表記する。
受け渡し装置5は、トレイ搬送手段の一つである。二つの受け渡し装置5は、勝手違いではあるが、構造は同じである。
受け渡し装置5は、
図7の様に、主搬送装置45と、二つの横搬送装置46a.46bと、一つの散水装置48によって構成されている。散水装置48の下は、給水エリア202であり、栽培トレイ100に散水する領域である。
【0038】
主搬送装置45は、ローラコンベヤであり、複数のローラ50が間隔を空けて配置されたものである。複数のローラ50の内のいくつかは、モータ内蔵ローラであり、内蔵されたモータを駆動することによってローラ本体が回転する。他のローラ50は、自由回転するローラ50である。各ローラには、図示しないベルトが懸架されており、モータ内蔵ローラを駆動することによって、全てのローラ50が回転する。
【0039】
横搬送装置46a.46bは、
図7、
図8の様な幅の狭い二組のベルトコンベヤ部47を有している。以下、二つの横搬送装置46a.46bを区別する必要がある場合には、横搬送装置46a.46bと表記し、両者を区別する必要が無い場合には単に横搬送装置46と表記する。
横搬送装置46のベルトコンベヤ部47は、細長い上板部材51と、複数のプーリ52、53と、幅の狭いベルト55を有している。複数のプーリの一つは、モータによって回転する駆動プーリ53であり、他のプーリは、従動プーリ52である。
上板部材51には、従動プーリ52の一部が突出する開口56が複数個所に設けられている。
ベルト55は、各プーリ52、53に懸架されている。そしてプーリ52の一部は、
図8の様に、開口56から突出しており、ベルト55の一部は、上板部材51の上に露出する。
【0040】
二組のベルトコンベヤ部47は、
図8の様に、一端が受け渡し装置5aのフレームに軸60で揺動可能に支持されており、他端側がカム61と接している。
そのため、横搬送装置46の二組のベルトコンベヤ部47は、カム61を回転することによって、
図7、
図8(a)の様な水平姿勢と、
図8(b)、
図9の様な傾斜姿勢をとることができる。
【0041】
横搬送装置46a.46bは、
図7、
図9の様に、ベルトコンベヤ部47が、主搬送装置45のローラ50の間に挟まる様に配置されている。
ベルトコンベヤ部47が水平姿勢であるときは、ベルトコンベヤ部47の全体が主搬送装置45のローラ50の間に沈んでいる。ベルトコンベヤ部47が傾斜姿勢であるときは、ベルトコンベヤ部47の略全体が主搬送装置45のローラ50の上に突出する。
【0042】
横搬送装置46の搬送方向は、主搬送装置45の搬送方向に対して直行する方向である。
本実施形態では、二つの横搬送装置46a.46bが、主搬送装置45の走行方向に距離を空けて配置されている。
二つの横搬送装置46a.46bは、個別に傾斜させることができる。また二つの横搬送装置46a.46bは、個別に栽培トレイ100を搬送することができる。
【0043】
散水装置48は、
図7の様に、門型のフレーム62を有し、その上辺部にノズル63が複数設けられたものである。ノズル63からは、養分を含んだ水が噴射される。
また散水装置48は、農薬を含んだ水を噴射することもできる。
散水装置48は、
図7の様に、主搬送装置45の走行方向の中央部に設置されている。
【0044】
受け渡し装置5の機能をまとめると次の通りである。
即ち受け渡し装置5は、主搬送装置45によって栽培トレイ100を直線方向に移動させることができる。
横搬送装置46を傾斜姿勢に変化させると、ベルトコンベヤ部47の搬送面が、主搬送装置45の搬送面よりも上に移動する。横搬送装置46を駆動することにより、栽培トレイ100を受け渡し装置5に出し入れすることができる。
散水装置48を使用して、主搬送装置45上の栽培トレイ100に散水することができる。また散水装置48を使用して、栽培トレイ100に農薬を含んだ水を散布することができる。
【0045】
(栽培トレイ100)
次に、栽培トレイ100について説明する。
栽培トレイ100は、
図12の様に、発泡スチロール等の部材で作られた本体部101と、保水部材130、131によって構成されている。
本体部101は複数のパーツが組み合わされたものであるが、組み合わされた状態においては、
図10、
図12の様に、苗300を保持する植物保持部103、106を有している。
本実施形態では、植物保持部103は上部板105に設けられた開口であり、
図12の様に、植物の根本を保持する。もう一つの植物保持部106は、縦壁107に設けられた切り欠きであり、
図12の様に、植物の茎を保持する。
【0046】
栽培トレイ100の本体部101の底には、コロ120、121が4個、設けられている。即ち、コロ120と、コロ121が2個ずつ設けられている。
4個のコロ120、121は、いずれも自由回転するコロである。
一方のコロ120は、鼓型であり、表面に凹部122がある。他方のコロ121は、円筒形であり、表面が直線的であって平らである。
【0047】
栽培トレイ100の本体部101には、
図12の様に水抜き孔110が設けられている。
保水部材130、131は、複数のシートや綿が重ねられたものであり、本体部101の底板111と、上部板105の間に重ねて収容されている。
【0048】
栽培トレイ100は、
図10、
図11の様に、棚状部材2のトレイ配置部6に敷設されているレール7a、7bに載せられる。
即ち、二つの円筒状のコロ121は、いずれも一方のレール7aに載せられる。二つの鼓状のコロ120は、いずれも他方のレール7bに載せられる。
栽培トレイ100の鼓状のコロ120は、凹部122がレール7bの外周と係合する。そのため鼓状のコロ120は、レール7bに対して横方向の自由度が小さい。即ち鼓状のコロ120は、常に凹部122の最奥部が、レール7bの中心と一致する状態で、レール7bに乗る。
【0049】
これに対して、円筒状のコロ121は、表面が直線的であって平らであるから、レール7a載置されるものの、レール7aとは係合しない。そのため、円筒状のコロ121は、任意の位置でレール7aと接する。そのため、円筒状のコロ121は、レール7aに対して横方向の自由度が大きい。
そのため、本実施形態によると、レール7a、7bの平行度に狂いがあっても、栽培トレイ100は、レール7a、7bから外れることは無い。具体的には、鼓状のコロ120とレール7bが嵌合関係にあるので、栽培トレイ100は、レール7bに沿って進む。
円筒形のコロ121は、鼓型のコロ120に従って進み、両者で栽培トレイの100の重量を支持する。
【0050】
本実施形態では、栽培トレイ100でイチゴの苗300が保持されて栽培される。イチゴの苗300は、植物保持部103、106で保持され、根は、保水部材130、131の間に広がり、保持部材保水部材130、131に保持された水や養分を吸収する。
【0051】
次に、植物栽培装置1の機能について説明する。
植物栽培装置1は、前記した様に、中央部の棚状部材2があり、その両端に、昇降装置3a、3bがあり、さらにその両端に受け渡し装置5a、5bが配置されている。
そして栽培トレイ100が、これらの間を巡回する。本実施形態では、昇降装置3の昇降台15が、栽培トレイ100を上下方向に移動させるトレイ搬送手段として機能する。また押し出し装置17が、栽培トレイ100を棚状部材2側に移動させるトレイ搬送手段と、棚状部材2内の栽培トレイ100を直線移動させるトレイ搬送手段として機能する。受け渡し装置5についても、トレイ搬送手段として機能する。
【0052】
次に、栽培トレイ100の流れについて説明する。
栽培トレイ100は、昇降装置3によって棚状部材2のトレイ配置部6に押し入れられる。例えば
図13(b)の様に、
図1の左側の昇降装置3aによって、栽培トレイ100を棚状部材2のトレイ配置部6に押す。
即ち、
図13(a)の様に、昇降装置3aの昇降台15に栽培トレイ100を搬入する。栽培トレイ100は、
図13(a)の様に、押圧部材28の背面側から搬入されるので、押圧部材28は、栽培トレイ100に押されて寝姿勢となる。そのため、押圧部材28は、栽培トレイ100を昇降装置3aに搬入する際に障害とはならない。
栽培トレイ100を昇降装置3aの昇降台15に載せる際には、
図13(a)の様に、昇降台15に栽培トレイ100の一部を載せ、その状態で引き込み装置18のコロ列33を回転して、栽培トレイ100の全体を昇降台15に引き入れる。
【0053】
その結果、栽培トレイ100は、押圧部材28の上を通過し、押圧部材28から離れる。
前記した様に、押圧部材28は、立ち姿勢となる様に付勢されているから、
図13(b)の様に、栽培トレイ100が完全に昇降台15に乗ると、押圧部材28が立姿勢となって突出する。
この状態で、押し出し装置17を
図13(c)の様に、棚状部材2のトレイ配置部6側に移動させる。その結果、栽培トレイ100が棚状部材2のトレイ配置部6に押し入れられる。また
図13(d)の様に、レール7の上に、栽培トレイ100のコロ120、121が乗り、鼓型のコロ120の凹部122がレール7bと係合する。
【0054】
栽培トレイ100は、
図14の様に、次々とトレイ配置部6に押し入れられてゆく。即ち
図14(a)の様に第1栽培トレイ100aが、昇降装置3aの昇降台15に載せられ、
図14(b)の様に第1栽培トレイ100aが、トレイ配置部6に押し入れられる。
続いて
図14(c)の様に、第2栽培トレイ100bが、昇降装置3aの昇降台15に載せられ、第2栽培トレイ100bが、トレイ配置部6に押し入れられる。ここで、先にトレイ配置部6に収容されていた第1栽培トレイ100aは、後から導入された第2栽培トレイ100bに押されて前進する。
以下、
図14(d)の様に、順次、第3栽培トレイ100c、第4栽培トレイ100・・を押し入れて行く。そして
図14(e)の様に、先頭の第1栽培トレイ100aがトレイ配置部6の先端に達し、トレイ配置部6に栽培トレイ100が隙間なく収容される。
そして、一定時間の間、太陽光又は人工光照明を照射する。
【0055】
一定時間が経過すると、トレイ配置部6から栽培トレイ100を排出し、他のトレイ配置部6に栽培トレイ100を移動させる。本実施形態では、一列のトレイ配置部6を全て排出して他のトレイ配置部6に移動させるバッチ方式を採用しているが、常時、少しずつトレイ配置部6から栽培トレイ100を排出し、少しずつ移動させてもよい。
栽培トレイ100は、各段のトレイ配置部6に密に充填されている。そして
図14(f)の様に、密状態のトレイ配置部6にさらに昇降装置3aから他の栽培トレイ100nをトレイ配置部6に押し入れることによって、トレイ配置部6の先頭に位置する栽培トレイ100aを、他方の昇降装置3bに押し出す。この段階では、
図14(f)の様に、栽培トレイ100aの一部を図面右の昇降装置3bに乗せる。
その後、図面右の昇降装置3bの引き込み装置18を駆動して、栽培トレイ100aを昇降装置3bに引き込む。
以上の説明は、左側の昇降装置3aからトレイ配置部6に栽培トレイ100を押し入れ、当該栽培トレイ100を右側の昇降装置3bから排出する場合について説明したが、栽培トレイ100は植物栽培装置1内を循環するものであるから、右側の昇降装置3bからトレイ配置部6に栽培トレイ100を押し入れ、当該栽培トレイ100を左側の昇降装置3aから排出する場合もある。
【0056】
押し出された栽培トレイ100は、昇降装置3a、3bに引き入れられ、上下に移動されて他の階のトレイ配置部6に押し入れられる。あるいは、昇降装置3a、3bに引き入れられた栽培トレイ100は、受け渡し装置5に引き渡される。このとき、一方の横搬送装置46が傾斜姿勢となって栽培トレイ100を受け渡し装置5に引き入れる。
【0057】
トレイ配置部6から栽培トレイ100を排出する場合は、排出側の昇降装置3の昇降台15を上下方向に移動させて、昇降台15を対象のトレイ配置部6の先端に移動させて待機させる。
そして前記した様に、例えば
図1、
図2の左側の昇降装置3aで新たに栽培トレイ100を棚状部材2のトレイ配置部6に押し入れる。
その結果、先頭の第1栽培トレイ100aが、トレイ配置部6から押し出され、
図14(f)の様に、第1栽培トレイ100aが、右側の昇降装置3bの昇降台15に乗る。その状態で引き込み装置18のコロ列33を回転して、
図14(g)の様に、第1栽培トレイ100aの全体を右側の昇降装置3bの昇降台15に引き入れる。
【0058】
そして、図面右側の昇降装置3bの昇降台15を上下方向に移動させて、他の階に昇降台15を移動し、右側の昇降装置3bの昇降台15を使用して当該他の階のトレイ配置部6に、先の栽培トレイ100を押し入れてゆく。この場合には、右側の昇降装置3bからトレイ配置部6に栽培トレイ100を押し入れ、当該栽培トレイ100を左側の昇降装置3aから排出することとなる。
【0059】
次に、一方の棚状部材2にあった栽培トレイ100を他の棚状部材2に移動させる場合の工程について説明する。
例えば、左側の受け渡し装置5aを使用して、左の棚状部材2Lの3階のトレイ配置部6から、右側の棚状部材2Rに栽培トレイ100を移動させる際の手順について、
図15乃至
図18を参照しつつ説明する。
この場合は、
図15(a)の様に、昇降装置3aの昇降台15を昇降して、棚状部材2Lの3階のトレイ配置部6の高さに移動させる。
そして
図15(a)の様に、トレイ配置部6から栽培トレイ100を排出し、昇降装置3aの昇降台15に乗せる。
続いて
図15(b)、
図18(a)の様に、昇降台15を降下して、受け渡し装置5aよりもやや上の位置で停止させる。
【0060】
続いて
図16(c)、
図18(b)の様に、受け渡し装置5aの一方の横搬送装置46aの姿勢を傾斜姿勢に変化させる。
そして、昇降台15の引き込み装置18と、受け渡し装置5aの横搬送装置46aを駆動して、
図16(d)、
図18(c)の様に、栽培トレイ100を受け渡し装置5aの一端側に引き入れる。
このとき、栽培トレイ100は、傾斜姿勢となっている。そのため受け渡し装置5aに置かれた栽培トレイ100に対し、必要に応じて作業者による手入れが行われるが、栽培トレイ100は傾斜姿勢であるから、枯れ葉の取り除きやイチゴの実の収穫を行いやすい。
そして必要に応じて作業者によって栽培トレイ100の手入れが行われる。例えばイチゴの収穫や枯れ葉の除去が行われる。
前記した様に、横搬送装置46a.46bが傾斜姿勢となって栽培トレイ100を受け渡し装置5a、5bに引き入れるので、受け渡し装置5a、5bに引き入れられた栽培トレイ100は、傾斜姿勢となっている。そのため、作業者は楽な姿勢で栽培トレイ100の手入れを行うことができる。
【0061】
必要な手入れが終わると、
図17、
図18(d)の様に、横搬送装置46aの姿勢を水平姿勢に戻し、横搬送装置46aの二組のベルトコンベヤ部47を、主搬送装置45のローラ50の間に没入させ、栽培トレイ100をベルトコンベヤ部47から主搬送装置45のローラ50に載せ替える。
そして主搬送装置45によって栽培トレイ100を右側の棚状部材2Rに移動させる。 その間、
図17、
図18(e)の様に、栽培トレイ100は、散水装置48の門型のフレーム62の下を通過し、ノズル63から散水される。即ち栽培トレイ100は、給水エリア202を通過する際に散水装置48で散水される。散水された水は、保水部材130、131に吸収されるが、多くの水は、栽培トレイ100の中に溜まる。また必要に応じて農薬を含んだ水が散布される。
【0062】
栽培トレイ100は、
図18(f)の様に、水平姿勢を保ったままの状態で、給水エリア202を通過して、
図17(b)の様に、右側の棚状部材2Rの近傍に至る。即ち、他方の横搬送装置46bの上で、栽培トレイ100が停止する。
そして
図18(g)の様に、他方の横搬送装置46bの姿勢を傾斜姿勢に変化させる。その結果、
図18(g)の様に、栽培トレイ100に溜まった水の多くが排水される。
【0063】
この間に、昇降装置3aの昇降台15を昇降して、受け渡し装置5aよりもやや上の位置で停止させる。
そして、受け渡し装置5aの横搬送装置46bと、昇降台15の引き込み装置18とを駆動して、
図18(h)の様に、栽培トレイ100を受け渡し装置5aから、昇降台15に載せ替える。ここで、載せ替えられた昇降台15は、右側の棚状部材2Rの一端にある。そのため、昇降台15を所望の段の高さに移動し、右側の棚状部材2Rに栽培トレイ100を搬入することができる。
【0064】
次に、栽培トレイ100を移動させる際のタイムスケジュールについて説明する。本実施形態の植物栽培装置1では、一日の内の一定時間は、栽培トレイ100を太陽光照射エリア200において植物に太陽光を当てることができるようにタイムスケジュールが組まれている。他の時間は、原則として人工光照明を照射して植物を育てる。タイムスケジュールは、図示しない制御装置にプログラムされており、各装置はプログラムされたタイムスケジュールに従って動作する。
【0065】
説明の便宜上、棚状部材2の各トレイ配置部6を
図3の様に符号をつけて区別する。
即ち、
図3を基準として左側の棚状部材2Lに属するトレイ配置部6は、いずれもLの記号を付し、右側の棚状部材2Rに属するトレイ配置部6は、いずれもRの記号を付している。また、トレイ配置部6の階に応じて、1、2、3の番号が付されている。
従って左列1階のトレイ配置部6は、L1であり、2階はL2であり、3階はL3である。右列1階のトレイ配置部6は、R1であり、2階はR2であり、3階はR3である。
本実施形態の植物栽培装置1は、
図3の様に、ビニールハウスや天窓を有する建屋(構造物)210内に設置されており、少なくとも建屋210の天井から太陽光が差し込む。
また最上階のトレイ配置部たるL3、R3は、天井部10が透明であり、太陽光を取り入れることができる。本実施形態では、トレイ配置部たるL3、R3が太陽光照射エリア200であり、他のトレイ配置部たるL1、L2、R1、R2は、人工照明エリア201である。
【0066】
各トレイ配置部6に栽培トレイ100を入れる時刻、順番、滞留時間は任意であるが、日の出から日の入りまでの間に、いずれの栽培トレイ100についても、少なくとも一回は、太陽光照射エリア200に入る。
即ち栽培トレイ100を太陽光照射エリア200に置き、時を変えて同じ栽培トレイ100を人工照明エリア200にも置く。
本実施形態では、日の出から日の入りまでの間に、すべての栽培トレイ100が二回ずつ太陽光照射エリア200に入る。仮に日の出から日の入りまでの時間を12時間とすると、いずれの栽培トレイ100についても、3時間程度、太陽光照射エリア200に入り、その他の時間は、人工照明エリア201にあるか、作業者による手入れを受けている。
【0067】
例えば、日の出から日の入りまでの間に、
図19に示すフローチャートの様に栽培トレイ100を移動させることによって、いずれの栽培トレイ100の植物についても一定時間の間、太陽光線を浴びることができる。
例えば、昇降装置3aに栽培トレイ100を載せ、昇降装置3aを一階へ降下させて栽培トレイ100を昇降装置3aから棚状部材2Rのトレイ配置部R1に順次搬入する。
トレイ配置部R1に密に栽培トレイ100が収容されると、トレイ配置部R1の照明12を点灯し、その状態で一定時間放置して人工光を栽培トレイ100の植物に照射し続ける。トレイ配置部R1は、人工照明エリア201であり、苗300に人工照明が照射され、苗300は、主として人工光照明で育成される。
【0068】
タイマー等により、一定時間が経過したことが検知されると、トレイ配置部R1に新たに栽培トレイ100が供給されて、トレイ配置部R1内の栽培トレイ100が一つずつ押し出されて昇降装置3bに載置される。そして昇降装置3bは2階へ上昇し、一個の栽培トレイ100を二階のトレイ配置部R2に押し入れる。この作業を順次くり返し、元、1階のトレイ配置部R1に収容されていた栽培トレイ100を全て2階のトレイ配置部R2に移動させる。なお、多くの場合、2階のトレイ配置部R2には他の栽培トレイ100が収容されているが、トレイ配置部R2の栽培トレイ100は、押し出されて他のトレイ配置部6に移動される。
【0069】
元、一階のトレイ配置部R1に収容されていた栽培トレイ100の全てが、2階のトレイ配置部R2に移動すると、トレイ配置部R2の照明を点灯し、その状態で一定時間放置して人工光を栽培トレイ100の植物に照射し続ける。即ち、トレイ配置部R2は、人工照明エリア201であり、苗300に人工光照明が照射され、苗300は、主として人工光照明で育成される。
【0070】
タイマー等により、一定時間が経過したことが検知されると、トレイ配置部R2に新たに栽培トレイ100が供給されて、トレイ配置部R2内の栽培トレイ100が一つずつ押し出されて昇降装置3aに載置され、昇降装置3aで3階へ移される。そして先の工程と同様に、トレイ配置部R2内の全ての栽培トレイ100は昇降装置3aから棚状部材2Rのトレイ配置部R3に移動する。
【0071】
棚状部材2Rのトレイ配置部R3は、最上階であって、太陽光が照射する。トレイ配置部R3内の栽培トレイ100は、その状態で一定時間放置され、植物は、太陽光を受けて生育する。即ち、トレイ配置部R3は、太陽光照射エリア200であり、苗300に太陽光線が照射され、苗300は、主として太陽光線で育成される。
【0072】
タイマー等により、一定時間が経過したことが検知されると、トレイ配置部R3に新たに栽培トレイ100が供給されて、トレイ配置部R3内の栽培トレイ100が一つずつ押し出されて昇降装置3bに載置され、昇降装置3bで受け渡し装置5bの高さに降下される。
そして栽培トレイ100は、昇降装置3bから受け渡し装置5bに移動し、作業者の手入れを受ける。さらに栽培トレイ100に散水され、その後に栽培トレイ100が傾斜されて余剰の水が排出される。
【0073】
栽培トレイ100は、受け渡し装置5b内を移動して、棚状部材2L側に移る。
そして栽培トレイ100受け渡し装置5bから昇降装置3bに移動し、昇降装置3bが、1階へ降下する。さらに栽培トレイ100は、昇降装置3bから棚状部材2Lのトレイ配置部L1に押し入れられる。
【0074】
元、棚状部材2Rのトレイ配置部R3に収容されていた栽培トレイ100の全てが、棚状部材2Lのトレイ配置部L1に移動すると、トレイ配置部L1の照明を点灯し、その状態で一定時間放置して人工光を栽培トレイ100の植物に照射し続ける。
【0075】
以下、同様に、トレイ配置部L1に収容されていた栽培トレイ100が昇降装置3aに移動し、昇降装置3aで2階へ運ばれ、昇降装置3aから棚状部材2Lのトレイ配置部L2に収容されて人工光により育成される。
さらにトレイ配置部L2に収容されていた栽培トレイ100が昇降装置3bに移動し、昇降装置3aで3階へ運ばれ、昇降装置3bから棚状部材2Lのトレイ配置部L3に収容されて太陽光により育成される。
【0076】
その後、栽培トレイ100は、トレイ配置部L3から排出され、昇降装置3aで受け渡し装置5aの高さに降下され、手入れ、散水、排水が行われる。
栽培トレイ100は、受け渡し装置5a内を移動して、棚状部材2R側に移る。
そして栽培トレイ100は、受け渡し装置5aから元の昇降装置3aに戻り、前記した一連の動作を繰り返す。
【0077】
夜間は、栽培トレイ100の移動が停止され、いずれかのトレイ配置部6に栽培トレイ100が止まる。そしてトレイ配置部6の照明に照らされて植物が生育する。
なお、いずれかのタイミングで、照明が消灯され、植物を休ませる。
【0078】
太陽光照射エリア200では、原則として照明は消灯されており、太陽光によって植物を育成するが、補助的に照明を使うこともある。例えば、曇天や雨降りであって、太陽光が不足する場合は、照明が併用される。
人工照明エリア201では、原則的に照明によって植物が育成されるが、ビニールハウスに植物栽培装置1が設置された場合の様に、側面から太陽光が差し込む場合は、人工光に加えて、太陽光も利用することが望ましい。
【0079】
本実施形態の植物栽培装置1は、太陽光照射エリア200と、人工照明エリア201の比率が1:2であり、且つ、各エリア内の栽培トレイ100の滞在時間が同じになるから、栽培トレイ100は、一定の時間だけ栽培トレイを太陽光照射エリア200に置かれ、その倍の時間に渡って栽培トレイ100が人工照明エリア201に置かれる。
栽培トレイ100を太陽光照射エリア200に置く時間と、人工照明エリア201に置く時間の比率は任意であるが、栽培トレイ100は、少なくとも太陽光照射エリア200と同じ時間、人工照明エリア201に置かれる。
【0080】
本実施形態の植物栽培装置1では棚状部材2L、2Rが二列平行に配置されているが、が、棚状部材2の列数は任意であり、一列でも良いし、3列以上であってもよい。
本実施形態の植物栽培装置1で採用する受け渡し装置5は、隣接する棚状部材2の間で栽培トレイ100を移動させるものであるが、例えば3列以上、棚状部材2が並べられている場合には、隣以外の棚状部材2に栽培トレイ100を移動させる場合もある。
【0081】
本実施形態の植物栽培装置1では棚状部材2の近くに受け渡し装置5a、5bがあり、当該受け渡し装置5a、5b内に給水エリア202がある。即ち上記した実施形態では、受け渡し装置5a、5bが給水エリア202を兼ねている。
しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではなく、受け渡し装置5a、5bとは別に給水エリア202があってもよい。例えば棚状部材2から離れた位置に独立した散水装置があり、棚状部材2と散水装置の間にコンベヤ装置等の栽培トレイ100を移動させる搬送装置があり、棚状部材2から取り出した栽培トレイ100を搬送装置で散水装置に移動させる。そして当該散水装置で栽培トレイ100に散水する。
【0082】
本実施形態で採用する昇降装置3は、昇降本体16に押し出し装置(プッシャー)17と、引き込み装置18が設置されたものであるが、いずれか一方の機能だけを有するものであってもよい。
【0083】
以上説明した実施形態で採用した押し出し装置17は、二組のベルト伝導機構によって移動部材25を移動させるものであるが、
図22に示す様なラックアンドピニオン機構で移動部材25を移動させるものであってもよい。
図22に示押し出し装置70では、ガイド57にラック71が設置されている。また本体部27の裏面にギャードモータ72で駆動されるピニオンギヤ73があり、ピニオンギヤ73がラック71と係合している。
図22に示す押し出し装置70では、ギャードモータ72を駆動することにより、本体部27が移動する。
【符号の説明】
【0084】
1 植物栽培装置
2L、2R 棚状部材
3a、3b 昇降装置
5a、5b 受け渡し装置
6 トレイ配置部
7a 、7b レール
8 、10 天井部
12 照明12
15 昇降台
17 押し出し装置
100 栽培トレイ
130、131 保水部材
103、106 植物保持部
120 コロ
121 コロ
122 凹部
200 太陽光照射エリア
201 人工照明エリア
202 給水エリア
L1、L2、L3、R1、R2、R3 トレイ配置部