(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141354
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/80 20060101AFI20241003BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20241003BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20241003BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20241003BHJP
F16J 15/3264 20160101ALI20241003BHJP
B60B 35/16 20060101ALI20241003BHJP
B60B 35/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16C33/80
F16C33/78 Z
F16C19/18
F16J15/447
F16J15/3264
B60B35/16 C
B60B35/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052951
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 しおり
【テーマコード(参考)】
3J042
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J042AA03
3J042AA09
3J042AA12
3J042BA01
3J042CA10
3J042CA21
3J042DA10
3J043AA17
3J043BA02
3J043BA06
3J043CA02
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA06
3J043DA07
3J043DA10
3J043HA01
3J043HA04
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB03
3J216AB38
3J216BA01
3J216BA23
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC15
3J216CC24
3J216CC41
3J216CC42
3J216CC68
3J216DA01
3J216DA11
3J216EA03
3J216EA05
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA73
3J701EA01
3J701EA31
3J701EA49
3J701FA13
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組み付け性および成形性にすぐれた、外部から被シール空間への泥水の浸入量を減らすことのできる密封装置を提供する。
【解決手段】第1部材20は、第1円筒部21を備え、被シール空間6において、第1円筒部21の開放側端部21aが外部13側を向くように配され、第2部材30は、軸受装置1に嵌合、装着される第2円筒部31と、第2円筒部31に連続した円板部32と、円板部32に連続した中間円筒部33とを備え、被シール空間6において、中間円筒部33の開放側端部33aが被シール空間6の内方側を向くように配され、被シール空間6に装着された状態では、第1円筒部21と中間円筒部33との間には、外部13と連通する連続折曲状の連通路40が形成され、連通路40を挟んで対向する一方の面は開放側端部34に向けて段差が連続した下り階段形状であり、他方の面は一方の面に近づくように突出した突出部22aを複数有する形状とされる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第2部材とを備え、該第1部材、該第2部材の一方が軸受装置の固定部材に嵌合し、前記第1部材、前記第2部材の他方が軸受装置の回転部材に嵌合するように、前記固定部材と前記回転部材との間の被シール空間に装着されて該被シール空間を密封する構成とした密封装置において、
前記第1部材は、前記軸受装置に嵌合、装着される第1円筒部を備え、前記被シール空間において、該第1円筒部の開放側端部が外部側を向くように配され、
前記第2部材は、前記軸受装置に嵌合、装着される第2円筒部と、該第2円筒部に連続した円板部と、該円板部に連続した中間円筒部とを備え、前記被シール空間において、該中間円筒部の開放側端部が前記被シール空間の内方側を向くように配され、
前記被シール空間に装着された状態では、前記第1円筒部と前記中間円筒部との間には、前記外部と連通する連続折曲状の連通路が形成され、
前記連通路を挟んで対向する一方の面は前記開放側端部に向けて下り傾斜するように段差が連続した階段形状であり、他方の面は前記一方の面に近づくように突出した突出部を複数有する形状とされることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記連通路には、前記突出部と、前記階段の角部との間が狭まったネック部が形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記連通路における、最外側に位置する前記突出部の前記外部側に形成された通路は、相隣接する前記突出部間に形成された通路よりも小さい幅寸法とされることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記突出部は、前記外部側を向くように傾斜突出したことを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記第1円筒部および前記中間円筒部のそれぞれは、弾性部材よりなる対向面部を備えていることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材とを備え、軸受装置の固定部材と回転部材との間の被シール空間に装着されて被シール空間を密封する構成とした密封装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の密封装置としては、被シール空間への泥水の浸入を抑制するための構造を有するものが種々提案されている。特許文献1のものは、第1部材と第2部材の円筒部同士の対向面部が相互に噛み合わせ可能な凹凸形状となっており、両部材を固定部材、回転部材間に組み付けた際には、わずかな幅寸法のジグザグ形状の隙間が形成される。このような形状の隙間を有するため、被シール空間への泥水の浸入を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記文献技術を改良すべく提案されたもので、その目的は、組み付け性および成形性にすぐれた、外部から被シール空間への泥水の浸入量を減らすことのできる密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の密封装置は、第1部材と、第2部材とを備え、該第1部材、該第2部材の一方が固定部材に嵌合し、前記第1部材、前記第2部材の他方が回転部材に嵌合するように、前記固定部材と前記回転部材との間の被シール空間に装着されて該被シール空間を密封する構成とした密封装置において、前記第1部材は、前記軸受装置に嵌合、装着される第1円筒部を備え、前記被シール空間において、該第1円筒部の開放側端部が外部側を向くように配され、前記第2部材は、前記軸受装置に嵌合、装着される第2円筒部と、該第2円筒部に連続した円板部と、該円板部に連続した中間円筒部とを備え、前記被シール空間において、該中間円筒部の開放側端部が前記被シール空間の内方側を向くように配され、前記被シール空間に装着された状態では、前記第1円筒部と前記中間円筒部との間には、前記外部と連通する連続折曲状の連通路が形成され、前記連通路を挟んで対向する一方の面は前記開放側端部に向けて段差が連続した下り階段形状であり、他方の面は前記一方の面に近づくように突出した突出部を複数有する形状とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の密封装置は前述した構成とされているため、組み付け性および成形性にすぐれており、外部から被シール空間への泥水の浸入量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る密封装置を装着した軸受装置の縦断面図である。
【
図3】(a)、(b)は、同密封装置の他の形態2例を示す縦断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、同密封装置のさらに他の形態2例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る密封装置の縦断面図である。
【
図6】(a)、(b)は、本発明の参考例に係る密封装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面の
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0009】
まず、
図1にもとづいて、密封装置10が装着される軸受装置1の概略構成について説明する。なお本明細書においては、
図1に示すように、回転軸L方向に沿って車輪(不図示)に向く側(
図1において左側を向く側)を車輪側、車体(不図示)に向く側(同右側を向く側)を車体側という。
【0010】
図1の軸受装置1は、車体(不図示)に固定される外輪部材2の内側に配された2列の転動体7を介して、ハブ輪3bおよび内輪3aが軸心回りに回動自在に支持されている。ハブ輪3bは、ハブフランジ3cを有しており、そのハブフランジ3cに、駆動輪(不図示)がボルト3dによって取りつけられる。
【0011】
また、ハブ輪3bにはドライブシャフト4が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト4は等速ジョイント5を介して駆動源(不図示)に連結される。ドライブシャフト4はナット4aによって、ハブ輪3bと一体化され、ハブ輪3bのドライブシャフト4からの抜脱が防止されている。
【0012】
ハブ輪3bと内輪3aとにより内輪部材3が構成されている。この内輪部材3は、外輪部材2に対して、回転軸L回りに相対回転が可能とされる。この内輪部材3と外輪部材2との間に、転動体7がリテーナ7aに保持された状態で介装されている。こうして、外輪部材2と内輪部材3とにより相対的に回転する2部材が構成され、それら2部材間に、転動体7の介装部分を含む空間部分である環状空間が形成される。この環状空間が軸受空間であり被シール空間6とされる。
【0013】
被シール空間6の回転軸L方向における車体側の端部には、密封装置10、10A、10B、10C、10D、11が装着される(
図1のX部参照)。また、被シール空間6の車輪側の端部には、他の密封装置が装着される(
図1のY部参照)。両方の端部に密封装置10、10A、10B、10C、10D、11を装着することで、被シール空間6の回転軸L方向に沿った両端部が密封される。
【0014】
被シール空間6にはグリースなどの潤滑剤(不図示)が充填され、これにより、転動体7の転動が円滑になされる。密封装置10、10A、10B、10C、10D、11は、この潤滑剤の外部漏出を防止するとともに、被シール空間6への外部からの泥水の浸入や塵埃等の入り込みを防止する機能と、浸入してきた泥水等を排出する機能とを有する。
【0015】
また、車体側に装着される密封装置10、10A、10B、10C、10D、11の車体側の面には、後述する環状の磁気エンコーダ(環状磁石)38(
図2参照)が配されてもよく、環状磁石38に対向する位置の車体には磁気センサ15が設置される。
【0016】
環状磁石38は、後述するスリンガ36、36Aに一体に成形された、ゴム材に磁性粉を混練してなる弾性部材であり、その周方向に沿って多数のN極およびS極を交互に着磁したものである。磁気センサ15は環状磁石38の回転に伴う磁気変化を検出する。つまり、この磁気センサ15と環状磁石38とにより、車輪(内輪部材3)の回転検出機構が構成され、アンチブレーキシステムが構成される。
【0017】
ついで、
図2~
図5に記載の密封装置10、10A、10B、10C、10D、11の共通の基本構成について記述する。
【0018】
密封装置10、10A、10B、10C、10D、11は、第1部材20と、第2部材30とを備え、第1部材20、第2部材30の一方が軸受装置1の固定部材2Aに嵌合し、第1部材20、第2部材30の他方が軸受装置1の回転部材3Aに嵌合するように、固定部材2Aと回転部材3Aとの間の被シール空間6に装着されて被シール空間6を密封する構成とした装置である。
【0019】
第1部材20は、軸受装置1に嵌合、装着される第1円筒部21を備え、被シール空間6において、第1円筒部21の開放側端部21aが外部13側を向くように配され、第2部材30は、軸受装置1に嵌合、装着される第2円筒部31と、第2円筒部31に連続した円板部32と、円板部32に連続した中間円筒部33とを備え、被シール空間6において、中間円筒部33の開放側端部33aが被シール空間6の内方側を向くように配される。
【0020】
密封装置10、10A、10B、10C、10D、11が被シール空間6に装着された状態では、第1円筒部21と中間円筒部33との間には、外部13と連通する連続折曲状の連通路40が形成される。連通路40を挟んで対向する一方の面は開放側端部33aに向けて段差34aが連続した下り階段形状であり、他方の面は一方の面に近づくように突出した突出部22aを複数有する形状とされる。
【0021】
ここで、固定部材2Aは軸受装置1の外輪部材2、内輪部材3のうちの一方で構成され、回転部材3Aは軸受装置1の外輪部材2、内輪部材3のうちの他方で構成される。
図2~
図4に示した軸受装置1は、外輪部材2が固定部材2Aとされ、内輪部材3が回転部材3Aとされる例である。また、
図5に示した軸受装置1は、外輪部材2が回転部材3Aとされ、内輪部材3が固定部材2Aとされる例である。いずれの場合でも、外輪部材2と内輪部材3は相対回転する関係とされる。
【0022】
なお、以下に説明する本実施形態では、第1部材20が固定側部材(固定部材2Aに装着される部材)であり、第2部材30が回転側部材(回転部材3Aに装着される部材)であるが、本発明においては、第1部材20が回転側部材となり、第2部材30が固定側部材となることも許容される。
【0023】
図2~
図4に示す密封装置10、10A、10B、10C、10Dはいずれも、外輪部材2(固定部材2A)に内嵌される円筒体を有する第1部材20と、内輪部材3(回転部材3A)に外嵌される円筒体を有する第2部材30とが組み合わさって構成されている。
【0024】
また、
図5に示す密封装置11は、外輪部材2(回転部材3A)に内嵌される円筒体を有する第2部材30と、内輪部材3(固定部材2A)に外嵌される円筒体を有する第1部材20とが組み合わさって構成されている。
【0025】
このように、
図2~
図5に示す実施形態では、第1部材20は固定部材2A(外輪部材2または内輪部材3)に組み付けられ、第2部材30は回転部材3A(内輪部材3または外輪部材2)に組み付けられる。本実施形態のものでは、その状態で外輪部材2と内輪部材3とが相対回転をすれば、第1部材20と第2部材30とは、後述する第1部材20のリップ部28を介して相互に摺接しながら相対回転をする。なお、リップ部28は非接触タイプのものであってもよい。
ついで、
図2の密封装置10について詳述する。
【0026】
第1部材20は、外輪部材2に内嵌される芯金23と、芯金25に固着された弾性部材よりなるシール部27とを備えている。さらに具体的には、芯金25は、外輪部材2の内周面に内嵌される芯金円筒部25aと、芯金円筒部25aの被シール空間6の奥側の端部から内側に延びる芯金円板部25bとを備えてなり、断面形状がL字形状をなす。
【0027】
またシール部27は、ゴム材や合成樹脂材などの弾性部材からなり、芯金25への加硫成形により固着一体とされたシール基部27aと、シール基部27aから延出されたリップ部28(ラジアルリップ)とを備えている。
図2において、リップ部28の2点鎖線部は、弾性変形前の原形状を示す(
図3~
図5においても同様)。
【0028】
シール基部27aは、芯金円板部25bの被シール空間6の奥側の面の中途から内周縁部25cを回り込み、反対側の面の全面を覆い、さらに芯金円筒部25aの内周面の全面を覆い、さらに車体側の端部25dを回り込んで芯金円筒部25aの外周面にいたるように芯金25に固着一体とされている。
【0029】
以上のように、芯金25とシール部27とは一体とされ、外輪部材2の内側に嵌合する第1部材20を構成する。また、芯金円筒部25aと、シール基部27aの一部であるシール円筒部27b(後述する対向面部22)とにより第1円筒部21が構成される。なお、符号25eの2点鎖線部は、第1円筒部21を外輪部材2の内側に圧接状態とするための突条部の原形状である(
図3~
図5においても同様)。
【0030】
第1部材20の全体は芯金25と同様に略L字形状をなし、そのL字の1片である第1円筒部21の開放側端部21aは外部13側に配置されている。また、シール円筒部27bの表面形状は凹凸形状をなしている。なお、この第1円筒部21(シール円筒部27b)の表面形状については、それに隙間空間を挟んで対向する中間円筒部33の表面形状とともに詳述する。
【0031】
第2部材30は、内輪部材3に外嵌される、断面倒U字形状をなす2重円筒形のスリンガ36と、スリンガ36に固着された環状磁石38とを備えている。
【0032】
スリンガ36は、内輪部材3の内輪3aの外周面に外嵌される、第2円筒部31をなすスリンガ内周円筒部36cと、スリンガ内周円筒部36cの車体側の端部から外側に延びるスリンガ円板部36aと、スリンガ円板部36aの外周縁部から回転軸L方向に略平行に被シール空間6の奥側に延びるスリンガ外周円筒部36bとを備えている。このスリンガ外周円筒部36bは、被シール空間6の奥側の端面が、第1部材20の芯金円板部25bと対向するように配される。
【0033】
環状磁石38は、スリンガ円板部36aの車体側の面を覆うエンコーダ本体38aと、スリンガ36のスリンガ外周円筒部36bの外周面を覆うように形成された被覆部38b(後述する対向面部34)とを有している。スリンガ円板部36aとエンコーダ本体38aとにより円板部32が構成される。
【0034】
以上のように、スリンガ36と環状磁石38とは一体とされ、内輪部材3の外側に嵌合する第2部材30が構成される。また、スリンガ外周円筒部36bと被覆部38bとにより中間円筒部33が構成される。この中間円筒部33の開放側端部33aは被シール空間6の内方側を向いている。
【0035】
つぎに、第1部材20および第2部材30の被シール空間6への装着状態における位置関係について、特に第1円筒部21と中間円筒部33との相対する両対向面部22、34の形状および両面間にできる隙間空間について説明する。この隙間空間は前述の連通路40とされる。
【0036】
第1円筒部21のシール円筒部27b(対向面部22)の表面は凹凸形状とされる。具体的には、面上にはたがいに略同形状の突出部22aが複数(図例では2つ)、並ぶように形成され、それらは外部13側を向くように傾斜突出している。
【0037】
また、対向面部22の凹凸面は外部13側(第1円筒部21の開放側端部21a側)に向かうにつれ、回転軸Lから遠ざかるようになっており、つまり突出部22aの天面22bも、突出部22aで仕切られた凹底面22cも、外部13側のほうが回転軸Lからの距離が大きくなっている。ようするに、芯金円筒部25aが回転軸Lに平行に形成されているから、芯金円筒部25aとシール円筒部27bとよりなる第1円筒部21は外部13側に向けて窄まった形状とされている。
【0038】
一方、中間円筒部33の被覆部38b(対向面部34)の表面は階段形状とされ、具体的には段差34aが複数(図例では2つ)連続した形状とされている。この段差34a面は被シール空間6の内方側(中間円筒部33の開放側端部33a側)に向かうにつれ回転軸Lに近づくように、つまり開放側端部33a側に向けて下り階段形状に形成されている。したがって中間円筒部33は、スリンガ外周円筒部36bが回転軸Lに平行に形成されているから、開放側端部33aに向けて窄まった形状とされている。
【0039】
第1円筒部21と中間円筒部33との間の連通路40は、その両側の対向面部22、34の形状にしたがった連続折曲状とされる。さらに、連通路40の路幅寸法は一定ではなく、第1円筒部21の突出部22aと中間円筒部33の階段の角部34bとは近接してネック部41となっている一方、第1円筒部21の凹底面22cと中間円筒部33の段差34a面とはネック部41の路幅寸法よりも大きく離間している。ようするに、連通路40はジグザグ形状であるとともに、広狭が繰り返される変則的な通路とされる。なお、2つのネック部41のうちの少なくとも一方が連通路40の全長において最も狭い。
【0040】
また、連通路40における、最外側に位置する突出部22aの外部13側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部22a間に形成された通路よりも小さい幅寸法とされることが望ましい(図中、幅寸法W1<W2の関係参照)。また
図2の例では、被シール空間6の内方側に位置する突出部22aのさらに内方側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部22a間に形成された通路よりも大きな幅寸法とされる(図中、幅寸法W3>W2の関係参照)。ようするに、連通路40はネック部41により幅の広狭が連続した通路であるが、ネック部41を除く通路としては、外部13側が狭く、内方側が広い。ただし、連通路40のネック部41により仕切られた通路の幅寸法の大小関係は、図例のものには限られない。
【0041】
本実施形態の変形例としては、例えば
図3(a)(b)、
図4(a)(b)の密封装置10A、10B、10C、10Dが挙げられる。
【0042】
図3(a)(b)の2例の密封装置10A、10Bは、
図2と同様にU字形状のスリンガ36が用いられている。これらの密封装置10A、10Bは、連通路40の形状(段差34a、突出部22aの数および連通路40の幅寸法)、連通路40の形成位置および開口から中間円筒部33の開放側端部33aまでの傾斜度合いが
図2のものと略同一である。
【0043】
図3(a)の密封装置10Aは、中間円筒部33の開放側端部33a側の一部が被覆部38bで覆われておらず、つまり、対向面部34の開放側端部33a側の段差34a面の一部が、外観露出したスリンガ外周円筒部36bの一部の面で形成されている点で
図2のものと相違する。さらに、リップ部28はラジアルリップ28aとサイドリップ28bを備えている点でも
図2のものと相違する。
【0044】
図3(b)の密封装置10Bは、環状磁石38を用いない構成であり、スリンガ円板部36aの中間円筒部33側の一部のみが環状磁石38に代えて弾性部材よりなる弾性体38Aで覆われ、スリンガ円板部36aの大部分が露出している点で
図2のものと相違する。
【0045】
また、
図4(a)(b)の2例の密封装置10C、10Dは、連通路40を形成するための段差34a、突出部22aの数が3つずつであり
図2のものとは異なる。しかしながら、これらの密封装置10C、10Dは、連通路40の形状(段差34a、連通路40の幅寸法)、連通路40の形成位置および開口から中間円筒部33の開放側端部33aまでの傾斜度合いも略同一である。
【0046】
図4(a)の密封装置10Cは、L字形状のスリンガ36Aが用いられ、環状磁石38の一部で中間円筒部33の略全体を構成している点で
図2のものとは相違する。さらに、リップ部28はラジアルリップ28aとサイドリップ28bを備えている点でも
図2のものと相違する。
【0047】
図4(b)の密封装置10Dは、L字形状のスリンガ36Aが用いられ、かつ環状磁石38の代わりに弾性体38Aを用いた構成でもあり、弾性体38Aで中間円筒部33の略全体を構成している点で
図2のものと相違する。
【0048】
以上のように、
図3(a)(b)、
図4(a)(b)の4例については、
図2の密封装置10とは部分的に異なるが、連通路40とその両対向面部22、34の形状が
図2のものと略同一であるか、あるいは類似している。
【0049】
図2~
図4に示した密封装置10、10A、10B、10C、10Dの連通路40によれば、連通路40の外部13側の幅寸法が内方側にくらべて小さいため、密封装置10、10A、10B、10C、10Dの外部13側から泥水は浸入しにくい。また連通路40が折曲形状であるため、泥水の浸入速度を低下させることができ、単位時間当たりの浸入量を低減化できる。特に
図4(a)(b)の連通路40は、
図2のものよりも突出部22a、角部34bが多く形成されているため折れ曲がりが多くなり、泥水の浸入速度をさらに低下させることができる。
【0050】
また、ネック部41により連通路40の広狭が連続していることや、内方側ほど広がっていることにより、泥水が密封装置10内の空間に急激な速度で浸入することを抑制することができる。さらに、突出部22aが外部13側に傾斜突出しているため、連通路40を通って浸入してくる泥水を食い止めやすい。
【0051】
以上のような種々の効果が相互にあいまって、密封装置10、10A、10B、10C、10D、特に弾性部材(シール部27、環状磁石38、弾性体38A)の、内部に浸入してくる泥水による劣化が抑制され、長寿命化を図ることができる。
【0052】
また、連通路40のネック部41は微小な路幅となり得るため、外輪部材2と内輪部材3との相対回転により対向面部22、34同士が接触するおそれがあるが、突出部22aの幅寸法が小さいため、接触により変形することで摩擦による応力を小さくでき、回転による悪影響を低減化することができる。
【0053】
また、第1部材20、第2部材30はいずれも、円筒部の開放側端部21a、33aに向けて先細り形状となっているため、型成形による製造の際の脱型性がよく、両部材の相互の組付け性もよい。
【0054】
また、
図2~
図4の例のように、連通路40の両側の対向面部22、34を構成する両部材の一方はシール部27であり基材が合成樹脂材やゴム材などの弾性部材であり、他方は環状磁石38であり基材がゴム材などの弾性部材であるため、スリンガ36や芯金25などの金属部材については従来のものを、設計変更をすることなくそのまま利用できる。そのため、密封装置10を容易に効率よく製造することができる。それぞれの部材を2色成形で製造する場合に、型を変更するだけでよい。
【0055】
特に第2部材30の中間円筒部33については、スリンガ36、36AがU字、L字のいずれの形状であっても環状磁石38や弾性体38Aの型成形により、所望の階段形状に形成することができる(
図2、
図3(a)(b)および
図4(a)(b)参照)。また、スリンガ円板部36aの寸法におうじて対向面部34の厚さ調整をすることができ、それにより適正な路幅寸法の連通路40を形成するための中間円筒部33を形成することができる(
図3(a)(b)参照)。
【0056】
以上に示した種々の例は第1部材20が固定部材2A(外輪部材2)に装着され、第2部材30が回転部材3A(内輪部材3)に装着された例であるが、第1部材20が回転部材3A(内輪部材3)に装着され、第2部材30が固定部材2A(外輪部材2)に装着されるものであってよい。
【0057】
また、以上に示した例は外輪部材2が固定部材2Aとされ、内輪部材3が回転部材3Aとされたものであるが、外輪部材2が回転部材3Aとされ、内輪部材3が固定部材2Aとされたものであってよい。
【0058】
図5は、第1部材20が固定部材2Aである内輪部材3に装着(外嵌)され、第2部材30が回転部材3Aである外輪部材2に装着(内嵌)された密封装置11の一例である。なお、
図5には、
図2と共通する各部については同様の符号を付してその説明については割愛する。
図5の幅寸法の符号W1、W2、W3についても同様である。
【0059】
図5の密封装置11は、第1部材20が固定部材2A(内輪部材3)に嵌合し、第2部材30が回転部材3A(外輪部材2)に嵌合する。このように、第1部材20、第2部材30およびそれらの嵌合関係は
図2や
図3、
図4のものと異なるが、第1部材20と第2部材30とにより形成される連通路40や、連通路40の両側の両対向面部22、34は、
図2や
図3、
図4のものと密封装置11の全体から見た相対位置は略同一である。なんとなれば、
図5に示した密封装置11の断面図は、
図2の密封装置10の断面とは鏡面関係にあり、
図1のZ部における密封装置10の断面(不図示)と略同一であるからである。よって、
図2のものと同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0060】
図5に示した密封装置11の連通路40によれば、連通路40の外部13側の幅寸法が内方側にくらべて小さいため、密封装置11の外部13側から泥水は浸入しにくい。また連通路40が折曲形状であるため、泥水の浸入速度を低下させることができ、単位時間当たりの浸入量を低減化できる。
【0061】
また、ネック部41により連通路40の広狭が連続していることや、内方側ほど広がっていることにより、泥水が密封装置10内の空間に急激な速度で浸入することを抑制することができる。さらに、突出部22aが外部13側に傾斜突出しているため、連通路40を通って浸入してくる泥水を食い止めやすい。
【0062】
以上のような種々の効果が相互にあいまって、密封装置11、特に弾性部材(シール部27、環状磁石38)の、内部に浸入してくる泥水による劣化が抑制され、長寿命化を図ることができる。
【0063】
また、連通路40のネック部41は微小な路幅となり得るため、外輪部材2と内輪部材3との相対回転により対向面部22、34同士が接触するおそれがあるが、突出部22aの幅寸法が小さいため、接触により変形することで摩擦による応力を小さくでき、回転による悪影響を低減化することができる。
【0064】
ようするに、これらの効果を高めるためには、連通路40の条件として、開口側が狭いこと、広狭が連続すること、折れ曲がりが多いこと、を種々組み合わせることで、泥水が浸入しにくい連通路40を形成すればよい。
【0065】
また、第1部材20、第2部材30はいずれも、円筒部の開放側端部21a、33aに向けて先細り形状となっているため、型成形による製造の際の脱型性がよく、両部材の相互の組付け性もよい。
【0066】
また、
図5の例のように、連通路40の両側の対向面部22、34を構成する両部材の一方はシール部27であり基材が合成樹脂材やゴム材などの弾性部材であり、他方は環状磁石38であり基材がゴム材などの弾性部材であるため、スリンガ36や芯金25などの金属部材については従来のものを、設計変更をすることなくそのまま利用できる。そのため、密封装置10を容易に効率よく製造することができる。それぞれの部材を2色成形で製造する場合に、型を変更するだけでよい。
【0067】
図2~
図5に示した例は本密封装置10、10A、10B、10C、10D、11の一例にすぎず、種々の形状のものが許容される。突出部22aと段差34a(角部34b)の数も前記以外の数であってもよい。また突出部22aと段差34a(角部34b)は1対1に対応していなくてもよい。また、連通路40の広狭についても、種々のものであってもよい。
【0068】
さらに、前述した種々の例では第1円筒部21に突出部22aが形成され、中間円筒部33に段差34aが形成されているが、第1円筒部21に段差34aが形成され、中間円筒部33に突出部22aが形成されたものであってもよい。
【0069】
以上に説明した複数の実施形態に係る密封装置10、10A、10B、10C、10D、11および軸受装置1の構成、形状は一例にすぎず、各図例以外の構成、形状に適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【0070】
さらに、本発明の参考例としては、
図6(a)(b)に示した密封装置100A、100Bが挙げられる。なお、これらの密封装置100A、100Bは被シール空間6のうちの車輪側の空間に装着される(
図1のY部参照)。
【0071】
これらはいずれも、外輪部材2(固定部材2A)に嵌合、装着される第3部材110と、内輪部材3(回転部材3A)に嵌合、装着される第4部材120とを有してなる。第3部材110は外輪部材2に嵌合する第3円筒部111を備え、第4部材120は内輪部材3に嵌合する第4円筒部121と、外輪部材2の外側に配される第5円筒部123と、第4円筒部121、第5円筒部123間を連結した円板部122とを備えている。
【0072】
なお、これらの密封装置100A、100Bが装着される軸受装置1についても、外輪部材2と内輪部材3とは相対回転する関係にあり、外輪部材2が固定部材2A、回転部材3Aのいずれであってもよく、内輪部材3が回転部材3A、固定部材2Aのいずれであってもよい。
ついで個別に説明する。まず
図6(a)の密封装置100Aについて詳述する。
【0073】
第3部材110は、外輪部材2に内嵌される芯金115と、芯金115に固着された、弾性部材よりなるシール部117とを備えている。さらに具体的には、芯金115は、外輪部材2の内周面に内嵌される芯金円筒部115aと、芯金円筒部115aの被シール空間6の奥側の端部から内側に延びる芯金円板部115bと、芯金円筒部115aの車輪側の端部から折曲され外輪部材2の端面に当接される折曲部115dとを備えてなる。
【0074】
またシール部117は、ゴム材や合成樹脂材などの弾性部材からなり、芯金115への加硫成形により固着一体とされたシール基部117aと、シール基部117aの一端から内側に延出されたリップ部118(ラジアルリップ)と、シール基部117aの他端から芯金円筒部115aと所定の空間を介して対向するように延びた延出部117cとを備えてなる。なお
図6(a)において、リップ部118の2点鎖線部は、弾性変形前の原形状を示す。
【0075】
シール基部117aは、芯金円板部115bの被シール空間6の奥側の面の中途から内周縁部115cを回り込み、反対側の面の全面を覆い、さらに芯金円筒部115aの内周面の全面および折曲部115dを覆い、芯金115に固着一体とされている。
【0076】
また、シール部117はシール円筒部117bを備えている。シール円筒部117bは、シール基部117aの一部である、芯金円筒部115aと折曲部115dとを覆った部位と、折曲部115dの端部側より延びた延出部117cとより構成されている。延出部117cは芯金円筒部115aとの間に所定の空間を介して重なるように略平行に延出され、シール円筒部117b全体としてはU字形状に形成されている。
【0077】
シール円筒部117bは外輪部材2の外周面に密着するように配される。つまり、第3部材110は、芯金円筒部115aが外輪部材2に内嵌されるとともに、シール円筒部117bと芯金円筒部115aとで外輪部材2を挟み込むように装着される。
【0078】
このように第3円筒部111は、芯金円筒部115aおよびこれに連なる折曲部115dと、それらを覆うシール円筒部117bとにより構成され、シール円筒部117bの一部である延出部117c(対向面部112)の外面は凹凸形状をなしている。
【0079】
第4部材120は、内輪部材3に外嵌される、断面倒U字形状をなす2重円筒形のスリンガ126と、スリンガ126に固着された、弾性部材よりなる弾性体128Aとを備えている。
【0080】
スリンガ126は、内輪部材3の外周面に外嵌される、第4円筒部121をなすスリンガ内周円筒部126cと、スリンガ内周円筒部126cの車輪側の端部から外側に延びる、円板部122をなすスリンガ円板部126aと、スリンガ円板部126aの外周縁部から回転軸L方向に沿って平行に外輪部材2の外周側に配されるように延びるスリンガ外周円筒部126bとを備えている。
【0081】
このように、スリンガ126のスリンガ外周円筒部126bと弾性体128Aとは一体とされて、スリンガ内周円筒部126cにより内輪部材3の外側に嵌合する第4円筒部121を構成し、スリンガ外周円筒部126bと弾性体128Aとにより第5円筒部123を構成する。
【0082】
つぎに、第3部材110および第4部材120の被シール空間6への装着状態における位置関係について、特に第3円筒部111と第5円筒部123との相対する対向面部112、124の形状および両面間にできる隙間空間について説明する。この隙間空間は、密封装置100Aの内部空間と外輪部材2の外側空間14とを連通させる連通路130とされる。
【0083】
第3円筒部111のシール円筒部117bの延出部117c(対向面部112)の表面は凹凸形状とされる。具体的には、面上にはたがいに略同形状の突出部112aが複数(図例では2つ)形成され、車輪側を向くように傾斜突出している。また、凹凸面は車輪側(折曲部115d側、第3円筒部111の開放側端部111aの反対側)に向かうにつれ回転軸Lに近づくように、つまり突出部112aの天面112bも、突出部112aで仕切られた凹底面112cも、車輪側のほうが回転軸Lからの距離が小さくなっている。ようするに、芯金円筒部115aが回転軸Lに略平行に形成されているから、芯金円筒部115aとシール円筒部117bとよりなる第3円筒部111は車輪側に向けて窄まった形状とされている。
【0084】
一方、第5円筒部123の弾性体128A(対向面部124)の表面は階段形状とされ、具体的には段差124aが複数(図例では2つ)連続した形状とされている。この段差124a面は第5円筒部123の開放側端部123a側に向かうにつれ回転軸Lから遠ざかるように、つまり開放側端部123a側に向けて下り階段形状に形成されている。したがって、第5円筒部123は、スリンガ外周円筒部126bが回転軸Lに平行に形成されているから、車体側(開放側端部123a側)に向けて窄まった形状とされている。
【0085】
第3円筒部111と第5円筒部123との間の連通路130は、その両側の対向面部112、124の表面形状にしたがった連続折曲状とされる。さらに、連通路130の路幅寸法は一定ではなく、第3円筒部111の突出部112aと第5円筒部123の階段の角部124bとは近接してネック部131となっている一方、第3円筒部111の凹底面112cと第5円筒部123の段差124a面とはネック部131の離間寸法よりも大きく離間している。ようするに、連通路130はジグザグ形状であるとともに、広狭が繰り返される変則的な通路とされる。なお、2つのネック部131のうちの少なくとも一方が連通路130の全長において最も狭い。
【0086】
図6(a)では、連通路130における、連通路130の開口側に位置する突出部112aの外側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部112a間に形成された通路よりも大きい幅寸法とされているが、連通路130のネック部131により仕切られた通路の幅寸法の大小関係は、図例のものには限られない。例えば連通路130における、連通路130の開口側に位置する突出部112aの外側空間14側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部112a間に形成された通路よりも小さい幅寸法とされてもよい。また内方側に位置する突出部112aのさらに内方側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部112a間に形成された通路よりも大きな幅寸法とされてもよい。ようするに、連通路130はネック部131により幅の広狭が連続した通路としてもよく、ネック部131を除く通路としては、外側空間14側が狭く、内方側が広く形成されてもよい。
【0087】
このような連通路130によれば、連通路130が折曲形状であり、ネック部131により広狭が連続しているため、泥水が密封装置100A内の空間に急激な速度で浸入することを防止することができる。その結果、密封装置100Aの劣化を抑制することができる。
つぎに
図6(b)の密封装置100Bについて詳述する。
【0088】
第3部材110は、外輪部材2に外嵌される芯金115と、芯金115に固着された弾性部材よりなるシール部117とを備えている。さらに具体的には、芯金115は、外輪部材2の外周面に外嵌される芯金円筒部115aと、芯金円筒部115aの車輪側の端部から内側に折曲しながら延びる芯金円板部115bとを備えてなる。
【0089】
またシール部117は、ゴム材や合成樹脂材などの弾性部材からなり、芯金115への加硫成形により固着一体とされたシール基部117aと、シール基部117aから内側に延出されたリップ部118(ラジアルリップ)と、リップ部118とは分離状態に芯金円筒部115aに固着一体とされたシール円筒部117bとを備えてなる。
図6(b)において、リップ部118の2点鎖線部は、弾性変形前の原形状を示す。
【0090】
シール基部117aは、芯金円板部115bの被シール空間6の奥側の面の中途から内周縁部115cを回り込んで芯金115に固着一体とされ、内周縁部115c側よりリップ部118が延出されている。
【0091】
第4部材120は、内輪部材3に外嵌される、断面倒U字形状をなす2重円筒形のスリンガ126と、スリンガ126に固着された弾性体128Aとを備えている。
【0092】
スリンガ126は、内輪部材3の外周面に外嵌される、第4円筒部121をなすスリンガ内周円筒部126cと、スリンガ内周円筒部126cの車輪側の端部から外側に延びる、円板部122をなすスリンガ円板部126aと、スリンガ円板部126aの外周縁部から回転軸L方向に沿って平行に第3円筒部111の外周側に配されるように延びるスリンガ外周円筒部126bとを備えている。
【0093】
このように、スリンガ126と弾性体128Aとは一体とされて、内輪部材3の外側に嵌合する第4円筒部121を構成し、スリンガ外周円筒部126bと弾性体128Aとにより第5円筒部123を構成する。
【0094】
つぎに、第3部材110および第4部材120の被シール空間6への装着状態における位置関係について、特に第3円筒部111と第5円筒部123との相対する対向面部112、124の形状および両面間にできる隙間空間について説明する。この隙間空間は、密封装置100Bの内部空間と外輪部材2の外側空間14とを連通させる連通路130とされる。
【0095】
第3円筒部111のシール円筒部117b(対向面部112)の表面は凹凸形状とされる。具体的には、面上にはたがいに略同形状の突出部112aが複数(図例では2つ)形成され、車体側を向くように傾斜突出している。また、凹凸面は車輪側(第3円筒部111の開放側端部111a側)に向かうにつれ回転軸Lに近づくように、つまり突出部112aの天面112bも、突出部112aで仕切られた凹底面112cも、車体側のほうが回転軸Lからの距離が小さくなっている。ようするに、芯金円筒部115aが回転軸Lに略平行に形成されているから、芯金円筒部115aとシール円筒部117bとよりなる第3円筒部111は車体側(開放側端部111a側)に向けて窄まった形状とされている。
【0096】
一方、第5円筒部123の弾性体128A(対向面部124)の表面は階段形状とされ、具体的には段差124aが複数(図例では2つ)連続した形状とされている。この段差124a面は第5円筒部123の開放側端部123a側に向かうにつれ軸に近づくように、つまり開放側端部123a側から車輪側に向けて下り階段形状に形成されている。したがって、第5円筒部123は、スリンガ外周円筒部126bが回転軸Lに平行に形成されているから、車輪側(開放側端部123aとは反対側)に向けて窄まった形状とされている。
【0097】
第3円筒部111と第5円筒部123との間の連通路130は、その両側の対向面部112、124の表面形状にしたがった連続折曲状とされる。さらに、連通路130の路幅寸法は一定ではなく、第3円筒部111の突出部112aと第5円筒部123の階段の角部124bとは近接してネック部131となっている一方、第3円筒部111の凹底面112cと第5円筒部123の段差124a面とはネック部131の路幅寸法よりも大きく離間している。ようするに、連通路130はジグザグ形状であるとともに、広狭が繰り返される変則的な通路とされる。なお、2つのネック部131のうちの少なくとも一方が連通路130の全長において最も狭い。
【0098】
また、連通路130における、連通路130の開口側に位置する突出部112aの外側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部112a間に形成された通路よりも小さい幅寸法とされてもよい。また内側に位置する突出部112aの内側に形成された通路は、相隣接する2つの突出部112a間に形成された通路よりも大きな幅寸法とされてもよい。ようするに、連通路130はネック部131により幅の広狭が連続した通路であるが、ネック部131を除く通路としては、外側空間14側が狭く、内方側が広く形成されてもよい。
【0099】
このような連通路130によれば、連通路130が折曲形状であり、ネック部131により広狭が連続しているため、泥水が密封装置100B内の空間に急激な速度で浸入することを防止することができる。その結果、密封装置100Bの劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 軸受部材
2A 固定部材
3A 回転部材
2 外輪部材
3 内輪部材
6 被シール空間
10、10A、10B、10C、10D、11 密封装置
13 外部
14 外側空間
20 第1部材
21 第1円筒部
21a 開放側端部
22 対向面部
22a 突出部
22b 天面
22c 凹底面
25 芯金
25a 芯金円筒部
25b 芯金円板部
25c 内周縁部
25d 車体側の端部
25e 突条部
27 シール部(弾性部材)
27a シール基部
27b シール円筒部
28 リップ部
30 第2部材
31 第2円筒部
32 円板部
33 中間円筒部
33a 開放側端部
34 対向面部
34a 段差
34b 角部
36、36A スリンガ
36a スリンガ円板部
36b スリンガ外周円筒部
36c スリンガ内周円筒部
38 磁気エンコーダ(環状磁石、弾性部材)
38a エンコーダ本体
38b 被覆部
38A 弾性体(弾性部材)