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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141364
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】独立システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/00 20140101AFI20241003BHJP
   H02S 10/12 20140101ALI20241003BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241003BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241003BHJP
   F03D 9/11 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
H02S10/00
H02S10/12
H02J7/35 K
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J3/38 160
F03D9/11
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052966
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 友和
【テーマコード(参考)】
3H178
5F251
5G066
5G503
5H127
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB90
3H178CC01
3H178DD22Z
3H178DD70X
5F251DA03
5F251JA28
5F251JA30
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA05
5G503AA06
5G503AA07
5G503BB01
5G503DA04
5H127AB27
5H127AB29
5H127BA05
5H127BA14
5H127BA23
5H127BA33
5H127BB18
5H127EE12
5H127EE13
5H127EE23
(57)【要約】
【課題】本発明は、公共公益設備から独立して水とエネルギーを製造できる独立システムを提供する。
【解決手段】太陽光吸収パネルと、気体流通流路と、裏面側集合体を有し、太陽光吸収パネルと気体流通流路と裏面側集合体は、この順に重なって一体となっており、太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して電力及び/又は水素元素含有ガスを生成するものであり、気体流通流路は、太陽光吸収パネルの傾斜方向の下端側に大気導入部が設けられ、大気導入部から大気が導入され、太陽光吸収パネルの裏面に沿って気体が流通するものであり、裏面側集合体は、電力及び/又は水素元素含有ガスを蓄積するエネルギー蓄積機構と、気体流通流路を通過する気体から水を捕集する集水装置を有し、集水装置は、気体流通流路に配される捕集部と、捕集部で捕集した水を貯蔵する水貯蔵タンクを備えている構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を吸収する太陽光吸収パネルと、大気が流通可能な気体流通流路と、前記太陽光吸収パネルを水平面に対して傾斜するように支持する裏面側集合体を有し、
前記太陽光吸収パネルと前記気体流通流路と前記裏面側集合体は、前記太陽光吸収パネルの受光面に対する直交方向において、この順に重なって一体となっており、
前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して電力及び/又は水素元素含有ガスを生成するものであり、
前記気体流通流路は、前記太陽光吸収パネルの傾斜方向の下端側に大気導入部が設けられ、前記大気導入部から大気が導入され、前記太陽光吸収パネルの裏面に沿って気体が流通するものであり、
前記裏面側集合体は、電力及び/又は水素元素含有ガスを蓄積するエネルギー蓄積機構と、前記気体流通流路を通過する気体から水を捕集する集水装置を有し、
前記集水装置は、前記気体流通流路に配される捕集部と、前記捕集部で捕集した水を貯蔵する水貯蔵タンクを備えている、独立システム。
【請求項2】
風力発電装置を有し、
前記風力発電装置は、風車部と、前記風車部の回転力を電力に変換する電力変換部を有し、
前記風車部は、前記気体流通流路内に配されている、請求項1に記載の独立システム。
【請求項3】
前記風力発電装置は、前記風車部を回転させる動力部を有し、前記動力部を駆動することで前記気体流通流路を流通する大気を下流側に引き込む、請求項2に記載の独立システム。
【請求項4】
前記捕集部は、前記風車部よりも上流側に設けられている、請求項3に記載の独立システム。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積機構は、二次電池と、前記二次電池を充電可能な充電端子を有し、
前記二次電池は、前記充電端子に対して着脱可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の独立システム。
【請求項6】
前記エネルギー蓄積機構は、二次電池と、前記二次電池に電気的に接続された給電端子を有し、
前記給電端子は、外部機器に対して給電可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の独立システム。
【請求項7】
前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して前記水素元素含有ガスを生成する光電解部を有し、
前記エネルギー蓄積機構は、前記水素元素含有ガスを貯蔵する水素貯蔵装置と、二次電池を有し、
前記光電解部は、生成した前記水素元素含有ガスを前記水素貯蔵装置に供給可能であり、
燃料電池を有し、
前記燃料電池は、前記水素貯蔵装置と前記気体流通流路のそれぞれに接続され、前記水素貯蔵装置から供給された前記水素元素含有ガスと、前記気体流通流路を通過した気体から、水と電力を生成可能であり、
前記燃料電池は、生成した水を前記水貯蔵タンクに供給し、生成した電力を前記二次電池に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の独立システム。
【請求項8】
前記集水装置は、水処理装置を有し、
前記水処理装置は、前記水貯蔵タンク内の水を浄水する浄水部と、前記浄水部によって浄水処理された浄水を外部に供給可能な浄水供給部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の独立システム。
【請求項9】
前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して電力を生成する太陽電池を有し、
前記太陽電池は、生成した電力を前記エネルギー蓄積機構に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の独立システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大地震や台風等の災害が発生し、ライフラインが停止すると、公共公益設備から電力や水が供給されない状態に陥り、ライフラインの復旧まで時間がかかる場合がある。
このような場合、ライフラインの復旧までの間、学校等の緊急避難所で水等の調達を行うことになるが、緊急避難所までの交通が遮断されている場合、緊急避難所においても水等の調達が難しくなるおそれがある。そのため、緊急避難所では、公共公益設備から独立して水とエネルギーを調達できることが望まれる。
【0003】
そこで、特許文献1では、地震等の災害時において商用電源を必要とせず、自立して電力供給と飲料水の供給が可能となる自立型水素発電及び飲料水供給システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-103198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の自立型水素発電及び飲料水供給システムは、飲料水供給装置と水素生成装置がそれぞれ独立して設けられており、飲料水供給装置はプール水を使用するためプールの近くに配置する必要があり、水素生成装置は屋根に設けられた太陽光パネルの近くに配置する必要がある。
そのため、特許文献1の自立型水素発電及び飲料水供給システムでは、飲料水供給装置と水素生成装置の接続が大掛かりになるとともに公民館等のプールがない緊急避難所では設置できず、設置できる場所が限られる問題があり、更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、公共公益設備から独立して水とエネルギーを製造できる独立システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、太陽光を吸収する太陽光吸収パネルと、大気が流通可能な気体流通流路と、前記太陽光吸収パネルを水平面に対して傾斜するように支持する裏面側集合体を有し、前記太陽光吸収パネルと前記気体流通流路と前記裏面側集合体は、前記太陽光吸収パネルの受光面に対する直交方向において、この順に重なって一体となっており、前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して電力及び/又は水素元素含有ガスを生成するものであり、前記気体流通流路は、前記太陽光吸収パネルの傾斜方向の下端側に大気導入部が設けられ、前記大気導入部から大気が導入され、前記太陽光吸収パネルの裏面に沿って気体が流通するものであり、前記裏面側集合体は、電力及び/又は水素元素含有ガスを蓄積するエネルギー蓄積機構と、前記気体流通流路を通過する気体から水を捕集する集水装置を有し、前記集水装置は、前記気体流通流路に配される捕集部と、前記捕集部で捕集した水を貯蔵する水貯蔵タンクを備えている、独立システムである。
【0008】
ここでいう「水素元素含有ガス」とは、化学式中に水素元素を持ち、分解等により水素源となるガスをいい、水素ガスだけではなく、メタンなどの水素元素を含むC1化合物、エタンなどの水素元素を含むC2化合物などの炭素化合物、次亜塩素酸などの塩素化合物などを含む。
【0009】
本様相によれば、太陽光吸収パネルと気体流通流路と裏面側集合体がこの順に重なって一体となっているので、従来に比べて設置場所の制約を少なくできる。
本様相によれば、太陽光を使用して電力及び/又は水素元素含有ガスを生成し、エネルギー蓄積機構で電力及び/又は水素元素含有ガスをエネルギー源として蓄積でき、集水装置によって大気中の水分から水を捕集し、水の貯蔵が可能である。そのため、災害時等においても、商用電源系統や水道ライン等の公共公益設備から独立して電力と水を調達できる。
【0010】
好ましい様相は、風力発電装置を有し、前記風力発電装置は、風車部と、前記風車部の回転力を電力に変換する電力変換部を有し、前記風車部は、前記気体流通流路内に配されている。
【0011】
本様相によれば、気体流通流路を通過する気体によって風車部を回転させて、その回転力を電力に変換できるので、商用電源系統から独立して電力を生成できる。
【0012】
好ましい様相は、前記風力発電装置は、前記風車部を回転させる動力部を有し、前記動力部を駆動することで前記気体流通流路を流通する大気を下流側に引き込む。
【0013】
本様相によれば、風車部を動力部によって強制的に回転させ、気体流通流路を流通する大気を下流側に引き込むことができるので、捕集部に晒される大気の量を増やすことができ、捕集部での水の捕集量を増加できる。
【0014】
好ましい様相は、前記捕集部は、前記風車部よりも上流側に設けられている。
【0015】
本様相によれば、風車部によって遮られずに捕集部を大気に晒すことができ、捕集部での水の捕集量を向上できる。
【0016】
好ましい様相は、前記エネルギー蓄積機構は、二次電池と、前記二次電池を充電可能な充電端子を有し、前記二次電池は、前記充電端子に対して着脱可能である。
【0017】
本様相によれば、外部から二次電池の充電が可能である。
【0018】
好ましい様相は、前記エネルギー蓄積機構は、二次電池と、前記二次電池に電気的に接続された給電端子を有し、前記給電端子は、外部機器に対して給電可能である。
【0019】
本様相によれば、二次電池から外部機器に給電が可能である。
【0020】
好ましい様相は、前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して前記水素元素含有ガスを生成する光電解部を有し、前記エネルギー蓄積機構は、前記水素元素含有ガスを貯蔵する水素貯蔵装置と、二次電池を有し、前記光電解部は、生成した前記水素元素含有ガスを前記水素貯蔵装置に供給可能であり、燃料電池を有し、前記燃料電池は、前記水素貯蔵装置と前記気体流通流路のそれぞれに接続され、前記水素貯蔵装置から供給された前記水素元素含有ガスと、前記気体流通流路を通過した気体から、水と電力を生成可能であり、前記燃料電池は、生成した水を前記水貯蔵タンクに供給し、生成した電力を前記二次電池に供給する。
【0021】
本様相によれば、光電解部によって太陽光を利用して生成した水素元素含有ガスと、気体流通流路を通過した気体を用いて燃料電池で水と電力を生成し、それぞれ貯蔵できるので、より多くの電力と水を貯蔵することができる。
【0022】
好ましい様相は、前記集水装置は、水処理装置を有し、前記水処理装置は、前記水貯蔵タンク内の水を浄水する浄水部と、前記浄水部によって浄水処理された浄水を外部に供給可能な浄水供給部を備える。
【0023】
本様相によれば、水貯蔵タンクに貯蔵された水を飲料水としても使用できる。
【0024】
好ましい様相は、前記太陽光吸収パネルは、太陽光を利用して電力を生成する太陽電池を有し、前記太陽電池は、生成した電力を前記エネルギー蓄積機構に供給する。
【0025】
本様相によれば、より環境にやさしく電力を蓄電できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の独立システムによれば、公共公益設備から独立して水とエネルギーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態の独立システムを概念的に示した説明図であり、(a)は独立システムの側面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
図2図1の独立システムを概念的に示した説明図であり、(a)は大気導入部側からみた斜視図であり、(b)は気体排出部側からみた斜視図である。
図3図2の独立システムの分解斜視図である。
図4図1の独立システムの構成図である。
図5図1の独立システムにおける気体の流れを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明の第1実施形態の独立システム1は、図1図2のように、太陽光吸収パネル2と、気体流通流路3と、裏面側集合体5を備えており、太陽光吸収パネル2の受光面8に対する直交方向においてこの順に重なって一体となっている。
【0030】
(太陽光吸収パネル2)
太陽光吸収パネル2は、図1(a)のように、受光面8を有する板状パネルであり、太陽電池21と、光電解部22を有している。
太陽電池21は、p型半導体とn型半導体が直接又はi型半導体を挟んで接合されたpn接合を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置であり、受光面8で太陽光を受光することで、太陽光による光エネルギーの一部を電気エネルギーに変換可能となっている。
光電解部22は、正極部と負極部と電解液を有し、正極部と負極部間に電圧を印加し、電解液を電解して水素元素含有ガス又は水素元素含有液と生成するものである。
水素元素含有ガスは、化学式に水素元素を含むガスであり、例えば、水素ガス、メタンなどの水素元素を含むC1化合物、エタンなどの水素元素を含むC2化合物などの炭素化合物、次亜塩素酸などが挙げられる。
水素元素含有液は、化学式に水素元素を含む液体であり、例えば、過酸化水素などが挙げられる。
本実施形態の光電解部22は、正極部又は負極部の少なくとも一方の電極が光触媒電極であり、受光面8で受光した光エネルギーを用いて電解液を電解して水素ガスと酸素ガスを生成可能となっている。
【0031】
(気体流通流路3)
気体流通流路3は、図2図3のように、太陽光吸収パネル2の裏面側に設けられ、大気中の空気を含む気体が流通する流路である。
本実施形態の気体流通流路3は、太陽光吸収パネル2の裏面と裏面側集合体5の筐体部50の各壁部40,42,43,45によって囲まれた囲繞空間である。
気体流通流路3は、図1(b)のように、大気導入部31と、流路本体部32と、気体排出部33(33a,33b)を備えており、大気導入部31側(上流側)から気体排出部33側(下流側)に向かって大気を含む気体(以下、気体流通流路3内を通過する大気及び大気以外の気体を合わせて、単に、気体ともいう)が流通するものである。
大気導入部31は、大気を流路本体部32内に導入する開口部であり、図2のように太陽光吸収パネル2の傾斜方向において下端側に位置している。
流路本体部32は、大気導入部31と気体排出部33を接続する接続流路である。
流路本体部32は、図1(b)のように、第1流路部35と、第2流路部36(36a,36b)を備えている。
第1流路部35は、大気導入部31側に位置する流路であり、大気導入部31から導入された大気が全て通過する流路である。
第2流路部36は、第1流路部35から分岐し、各気体排出部33に向かって延びる分岐流路である。
第2流路部36は、第1流路部35の幅よりも幅が狭く、第1流路部35の流路面積よりも流路面積が小さい。
気体排出部33(33a,33b)は、図2(b)のように、流路本体部32内の気体を外部に排出する開口部であり、太陽光吸収パネル2の傾斜方向において上端側に位置している。
【0032】
(裏面側集合体5)
裏面側集合体5は、図4図5のように、筐体部50と、エネルギー蓄積機構51と、集水装置52と、風力発電装置53と、燃料電池55を備えている。
【0033】
(筐体部50)
筐体部50は、エネルギー蓄積機構51、集水装置52、風力発電装置53、及び燃料電池55の少なくとも一部を収納する部位である。
筐体部50は、図3(b)のように、底壁部40と、支持壁部41と、上流側側壁部42(42a,42b)と、下流側側壁部43と、誘導壁部45を備えている。
底壁部40は、流路本体部32の底部を構成し、地面に対して載置する壁部である。
支持壁部41は、筐体部50の天面を構成し、太陽光吸収パネル2の裏面と面接触して支持する部位である。
上流側側壁部42は、第1流路部35の側壁を構成する部位であり、大気導入部31側から下流側側壁部43に向かって曲面状に傾斜して延びた傾斜壁部を含む壁部である。
上流側側壁部42a,42bは、気体の流れ方向の上流側(大気導入部31側)から下流側(第2流路部36側)に向かうにつれて互いに近づいている。
下流側側壁部43は、第2流路部36の側壁を構成する部位である。
誘導壁部45は、上流側側壁部42a,42bとともに第1流路部35を通過する大気を第2流路部36に導く壁部である。
誘導壁部45は、大気導入部31側から下流側側壁部43側に向かって曲面状に傾斜して延びた傾斜壁部を有する壁部である。
【0034】
(エネルギー蓄積機構51)
エネルギー蓄積機構51は、エネルギーを電気及び水素として蓄積する部位である。
エネルギー蓄積機構51は、図4のように、電気として蓄電する二次電池61と、水素として貯蔵する水素貯蔵装置62と、外部充電端子(図示せず)と、外部給電端子(図示せず)を備えている。
二次電池61は、太陽電池21、風力発電装置53の電力変換部82、及び燃料電池55から供給された電力を蓄電する蓄電装置であり、太陽光吸収パネル2の光電解部22や風力発電装置53の動力部83に向かって給電可能な給電装置でもある。
二次電池61は、充放電可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば、リチウムイオン二次電池や鉛蓄電池等が使用できる。
外部充電端子は、二次電池61に対して着脱可能であって、二次電池61に対して充電可能な端子である。
外部給電端子は、二次電池61に電気的に接続され、外部機器を接続することで二次電池61から外部機器に対して給電可能にする端子である。
【0035】
水素貯蔵装置62は、図4のように、光電解部22で生成された水素を貯蔵する貯蔵装置であり、貯蔵した水素を燃料電池55に供給する水素供給装置でもある。
水素貯蔵装置62は、水素を貯蔵できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵タンクなどが使用できる。
【0036】
(集水装置52)
集水装置52は、気体流通流路3を通過する大気を含む気体から集水するものであり、図4のように、捕集部71と、水貯蔵タンク72と、水処理装置73を備えている。
捕集部71は、気体流通流路3内に配され、気体流通流路3を通過する気体から水分(水)捕集する部位である。
捕集部71は、気体中に含まれる水分を捕集できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維やレーヨン、キュプラなどの化学繊維などで構成された不織布が使用可能である。
本実施形態の捕集部71は、保持許容量を超えた水分が捕集されると、図示しない回収皿から水貯蔵タンク72に流れ、水貯蔵タンク72で回収される。
【0037】
水貯蔵タンク72は、捕集部71で捕集された水や燃料電池55で発電時に生成された水を貯蔵する水貯蔵部であり、貯蔵された水を水処理装置73に供給する水供給部でもある。
水処理装置73は、水貯蔵タンク72から供給された水を浄水フィルターによって浄水する浄水部を備えており、浄水部によって浄水処理された浄水を光電解部22に電解液として供給可能となっている。
本実施形態の水処理装置73は、外部に浄水部で浄水された浄水を供給する浄水供給部を備えており、光電解部22とは別に外部にも飲料水等として浄水を供給することが可能となっている。
【0038】
(風力発電装置53)
風力発電装置53は、風力によって発電する発電装置であり、図4のように、風車部81と、電力変換部82と、動力部83を備えている。
風車部81は、図1(b)のように、気体流通流路3内に設けられ、回転することで、大気導入部31側から吸い込み、気体排出部33側に向かって吹き込む部位である。
風車部81は、軸方向の一方側から気体を吸い込み、軸方向の他方側に気体を吹き出す軸流ファンであってもよいし、軸方向に気体を吸引し回転方向に気体を吹き出す遠心ファンであってもよいし、軸方向に気体を吸引し特定の排出口から吹き出すシロッコファンであってもよい。
【0039】
電力変換部82は、風車部81の回転力を電力に変換する部位であり、図4のように、変換した電力を二次電池61に供給する電力供給部である。
動力部83は、二次電池61から供給される電力によって風車部81を回転させ、気体流通流路3内の大気の流通を促す部位である。
すなわち、風力発電装置53は、風車部81が気体流通流路3を通過する気体の流れによって受動的に回転する動作と、風車部81が動力部83によって強制的に回転する動作がある。
【0040】
(燃料電池55)
燃料電池55は、アノード極と、カソード極と、電解質を有し、図4のように、アノード極で水素貯蔵装置62から供給された水素を酸化し、カソード極で気体排出部33から排出された気体に含まれる酸素を還元することで発電する発電装置である。
燃料電池55は、発電した電力を二次電池61に供給し、アノード極及びカソード極で発生した水を水貯蔵タンク72に供給することが可能となっている。
【0041】
続いて、第1実施形態の独立システム1の各部位の位置関係について説明する。
【0042】
独立システム1は、図1のように太陽光吸収パネル2が裏面側集合体5によって水平面に対して傾斜角度θ1で傾斜するように支持されており、太陽光吸収パネル2と裏面側集合体5の間に気体流通流路3が形成されている。
傾斜角度θ1は、3度以上60度以下であることが好ましく、30度以下であることが好ましい。
気体流通流路3は、図1(b),図3のように、流路本体部32の第2流路部36a,36bの内壁の一部又は全部に捕集部71が設けられており、流路本体部32の中央部分には捕集部71に阻害されずに気体が流通する流通空間が形成されている。
すなわち、捕集部71は、第2流路部36を構成する底壁部40及び下流側側壁部43に沿って設けられている。
気体流通流路3は、図1(b)のように、流路本体部32内であって気体排出部33近傍に風車部81が位置しており、流路本体部32を通過する気体の大部分又は全部が風車部81を通過する。
【0043】
続いて、第1実施形態の独立システム1における風の流れについて説明する。
【0044】
第1実施形態の独立システム1は、上記したように、無風等で風車部81を回転させる風がなく、風車部81を能動的に回転させる場合と、吹上風等によって風があり、風車部81を受動的に回転させる場合とで動作が異なる。
【0045】
独立システム1は、吹上風等の風がない場合には、二次電池61から動力部83に電力を供給し、動力部83によって風車部81を回転させる。そうすると、図5のように、風車部81の吸気力によって大気導入部31から大気が強制的に第1流路部35内に引き込まれ、大気を含む気体は、第1流路部35内から誘導壁部45及び上流側側壁部42a,42bによって第2流路部36内に導かれて第2流路部36を通過し気体排出部33から気体が排出され、必要に応じて気体を燃料電池55に供給して発電する。
【0046】
一方、独立システム1は、吹上風等の風がある場合には、図5のように、大気導入部31から大気が第1流路部35内に導入されると、第1流路部35内の大気を含む気体は、気体の推進力によって第1流路部35内から誘導壁部45及び上流側側壁部42a,42bによって第2流路部36内に導かれ、第2流路部36を通過して気体排出部33から気体が排出され、必要に応じて気体を燃料電池55に供給して発電する。
このとき、第2流路部36を通過する気体の推進力によって風車部81が回転し、風車部81の回転に伴って電力変換部82で回転力が電力に変換され、変換された電力が二次電池61で充電される。
【0047】
なお、風の有無等によって上記の動作を自動的に切り替えるスイッチング機構を設けてもよい。
【0048】
本実施形態の独立システム1によれば、太陽光吸収パネル2と気体流通流路3と裏面側集合体5がこの順に重なって一体となっているので、従来に比べて設置場所の制約を少なくできる。
本実施形態の独立システム1によれば、太陽光を使用して電力及び水素元素含有ガスたる水素ガスを生成し、エネルギー蓄積機構51で電力及び水素元素含有ガスをエネルギー源として蓄積でき、集水装置52によって大気中の水分から水を捕集し、水の貯蔵が可能である。そのため、災害時等においても、商用電源系統や水道ライン等の公共公益設備から独立して電力と水を使用できる。
【0049】
本実施形態の独立システム1によれば、風力発電装置53の風車部81が気体流通流路3内に配されているので、気体流通流路3を通過する気体によって風車部81を回転させて、その回転力を電力変換部82で電力に変換でき、商用電源系統から独立して電力を生成できる。
【0050】
本実施形態の独立システム1によれば、風力発電装置53の動力部83を駆動させて風車部81を回転させることで気体流通流路3を流通する大気を含む気体を気体流通流路3における気体の流れ方向の下流側(気体排出部33側)に引き込む。すなわち、風車部81を動力部83によって強制的に回転させ、気体流通流路3を流通する気体を下流側に引き込むことができるので、捕集部71に晒される大気の量を増やすことができ、捕集部71での水の捕集量を増加できる。
【0051】
本実施形態の独立システム1によれば、捕集部71は、風車部81よりも気体流通流路3における気体の流れ方向の上流側に設けられている。そのため、風車部81によって遮られずに捕集部71を大気に晒すことができ、捕集部71での水の捕集量を向上できる。
【0052】
本実施形態の独立システム1によれば、エネルギー蓄積機構51は、二次電池61と、外部の充電装置に電気的に接続され二次電池61に対して充電する外部充電端子を有し、二次電池61は、外部充電端子に対して着脱可能である。そのため、二次電池61を外部充電端子に接続することで、商用電源部等の外部の充電装置からの給電により二次電池61を充電できる。
【0053】
本実施形態の独立システム1によれば、エネルギー蓄積機構51は、二次電池61に電気的に接続された外部給電端子に外部機器を接続することで給電可能であるため、二次電池61から外部給電端子を介して外部機器に給電が可能である。
【0054】
本実施形態の独立システム1によれば、光電解部22は、太陽光を利用して前記水素元素含有ガスを生成し、生成した水素元素含有ガスを水素貯蔵装置62に供給可能であり、燃料電池55は、水素貯蔵装置62と気体流通流路3のそれぞれに接続され、水素貯蔵装置62から供給された水素元素含有ガスたる水素と、気体流通流路3を通過した大気を含む気体から、水と電力を生成可能であり、生成した水を水貯蔵タンク72に供給し、生成した電力を二次電池61に供給する。そのため、光電解部22によって太陽光を利用して生成した水素元素含有ガスと、気体流通流路3を通過した気体を用いて燃料電池55で水と電力を生成し、それぞれ水貯蔵タンク72と二次電池61に貯蔵できるので、より多くの電力と水を貯蔵することができる。
【0055】
本実施形態の独立システム1によれば、水処理装置73は、水貯蔵タンク72内の水を浄水する浄水部と、浄水部によって浄水処理された浄水を外部に供給可能な浄水供給部を備える。そのため、水貯蔵タンク72に貯蔵された水を飲料水としても使用できる。
【0056】
本実施形態の独立システム1によれば、太陽光吸収パネル2は、太陽光を利用して電力を生成し、生成した電力をエネルギー蓄積機構51に供給する太陽電池21を備えているため、より環境にやさしく電力を蓄電できる。
【0057】
本実施形態の独立システム1によれば、大気を含む気体が太陽光吸収パネル2の裏面に接触しながら気体流通流路3を通過するので、大気によって太陽光吸収パネル2を冷却することができる。
【0058】
本実施形態の独立システム1によれば、太陽光吸収パネル2が傾斜しており、太陽光吸収パネル2の下端側からの吹上力を利用して気体流通流路3に大気を導入するので、吹上力が大きい場合には、動力源なしで気体流通流路3に大気を含む気体を通過させることができる。
【0059】
上記した実施形態では、気体の流れ方向の上流側から下流側に向かって第1流路部35から2つの第2流路部36a,36bに分岐していたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1流路部35は、1つの第2流路部36に連続していてもよいし、3つ以上の第2流路部36に分岐してもよい。
【0060】
上記した実施形態では、一つの大気導入部31から大気を気体流通流路3内に導入していたが、本発明はこれに限定されるものではない。複数の大気導入部31を設け、複数の大気導入部31から大気を気体流通流路3内に導入してもよい。
【0061】
上記した実施形態では、流路本体部32の第2流路部36a,36bの内壁の一部又は全部に捕集部71が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2流路部36a,36bの内壁の代わりに又は第2流路部36a,36bの内壁に加えて流路本体部32の第1流路部35の内壁の一部又は全部に捕集部71が設けられていてもよい。
【0062】
上記した実施形態では、上流側側壁部42の傾斜壁部は、大気導入部31側から下流側側壁部43に向かって曲面状に傾斜していたが、本発明はこれに限定されるものではない。上流側側壁部42の傾斜壁部は、大気導入部31側から下流側側壁部43に向かって直線状に傾斜していてもよい。
同様に、上記した実施形態では、誘導壁部45の傾斜壁部は、大気導入部31側から下流側側壁部43側に向かって曲面状に傾斜していたが、本発明はこれに限定されるものではない。誘導壁部45の傾斜壁部は、大気導入部31側から下流側側壁部43側に向かって直線状に傾斜していてもよい。
【0063】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0064】
1 独立システム
2 太陽光吸収パネル
3 気体流通流路
5 裏面側集合体
8 受光面
21 太陽電池
22 光電解部
31 大気導入部
51 エネルギー蓄積機構
52 集水装置
53 風力発電装置
55 燃料電池
61 二次電池
62 水素貯蔵装置
71 捕集部
72 水貯蔵タンク
73 水処理装置
81 風車部
82 電力変換部
83 動力部
図1
図2
図3
図4
図5