(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141378
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20241003BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20241003BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241003BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241003BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241003BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/118
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052982
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 学
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AA11
4F213AA23
4F213AA32
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL62
4F213WL73
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】造形面に形成される造形物とステージとの位置関係を良好に保持可能な技術を提供する。
【解決手段】三次元造形装置は、第1溝と第2溝と第3溝と第4溝とを含む造形面を有するステージと、造形材料を造形面に供給する吐出部と、ステージと吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、吐出部と移動機構とを制御する制御部と、を備える。制御部は、第1溝に第1造形線路を形成する第1制御と、第2溝に第2造形線路を形成する第2制御と、第3溝に第3造形線路を形成する第3制御と、第4溝に第4造形線路を形成する第4制御と、第1造形線路と第2造形線路とを接続する第1床層を形成する第5制御と、第3造形線路と第4造形線路とを接続する第2床層を形成する第6制御と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
第1方向に延在する第1溝と、前記第1方向に延在する第2溝と、前記第1方向に延在する第3溝と、前記第1方向に延在する第4溝とを含む造形面を有するステージと、
造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、
前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記第2溝は、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1溝と前記第3溝との間に配置され、
前記第3溝は、前記第2方向において、前記第2溝と前記第4溝との間に配置され、
前記制御部は、
前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第1溝に前記造形材料を供給して第1造形線路を形成する第1制御と、
前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第2溝に前記造形材料を供給して第2造形線路を形成する第2制御と、
前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第3溝に前記造形材料を供給して第3造形線路を形成する第3制御と、
前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第4溝に前記造形材料を供給して第4造形線路を形成する第4制御と、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第1造形線路と前記第2造形線路とを接続する第1床層を形成する第5制御と、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第3造形線路と前記第4造形線路とを接続する第2床層を形成する第6制御と、
を実行し、
前記三次元造形物は、第1下地層及び第2下地層の上に造形され、
前記第1下地層は、前記第1造形線路と前記第2造形線路と前記第1床層とを備え、
前記第2下地層は、前記第3造形線路と前記第4造形線路と前記第2床層とを備える、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記三次元造形物に接触するラフト層を形成する第7制御を実行する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記ラフト層は、前記第1床層と前記第2床層の上に跨って形成される、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記造形材料は、結晶性樹脂を含む、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第5制御の実行に先立って、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第2方向において前記第1溝と前記第2溝との間に配置される第5溝に前記造形材料を供給して第5造形線路を形成する第8制御を実行し、
前記制御部は、前記第5制御において前記第1造形線路と前記第2造形線路と前記第5造形線路とを接続する前記第1床層を形成する、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記第1床層と前記第2床層とは、同一平面上に形成され、且つ、前記第1床層の少なくとも一部と前記第2床層の少なくとも一部とが接触している、三次元造形装置。
【請求項7】
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
造形面を有するステージと、
造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、
前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第1下地層を形成する制御と、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第2下地層を形成する制御と、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記第1下地層及び前記第2下地層に前記造形材料を供給してラフト層を形成する制御と、
前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記ラフト層の上に前記造形材料を供給して前記三次元造形物を造形する制御と、
を実行する、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関し、特許文献1にはステージの造形面に凹凸をつけることにより造形物が造形面上を移動し難くする方法が開示されている。例えば、造形面に凹部が格子状に配置されている場合、格子状に配置された凹部に造形材料が吐出されると、凹部に入った造形材料は凸部となる。すると、凸部と凹部とが噛み合って、造形物が移動し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、収縮率の大きい造形材料を用いる場合、凸部と凹部との間に隙間ができて、凸部が凹部から外れる可能性がある。凸部が凹部から外れると、造形物とステージとの位置関係を保持することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、第1方向に延在する第1溝と、前記第1方向に延在する第2溝と、前記第1方向に延在する第3溝と、前記第1方向に延在する第4溝とを含む造形面を有するステージと、造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備え、前記第2溝は、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1溝と前記第3溝との間に配置され、前記第3溝は、前記第2方向において、前記第2溝と前記第4溝との間に配置され、前記制御部は、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第1溝に前記造形材料を供給して第1造形線路を形成する第1制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第2溝に前記造形材料を供給して第2造形線路を形成する第2制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第3溝に前記造形材料を供給して第3造形線路を形成する第3制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第4溝に前記造形材料を供給して第4造形線路を形成する第4制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第1造形線路と前記第2造形線路とを接続する第1床層を形成する第5制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第3造形線路と前記第4造形線路とを接続する第2床層を形成する第6制御と、を実行し、前記三次元造形物は、第1下地層及び第2下地層の上に造形され、前記第1下地層は、前記第1造形線路と前記第2造形線路と前記第1床層とを備え、前記第2下地層は、前記第3造形線路と前記第4造形線路と前記第2床層とを備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、造形面を有するステージと、造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第1下地層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第2下地層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記第1下地層及び前記第2下地層に前記造形材料を供給してラフト層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記ラフト層の上に前記造形材料を供給して前記三次元造形物を造形する制御と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における三次元造形システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】三次元造形装置が造形物を造形する基本動作を模式的に示す説明図である。
【
図5】ステージ及び三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【
図12】第2実施形態における三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【
図13】第3実施形態における三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【
図14】第3実施形態におけるラフト層を示す図である。
【
図15】第3実施形態における三次元造形物を示す図である。
【
図16】第4実施形態における三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【
図17】第4実施形態における造形線路を示す図である。
【
図18】第4実施形態における床層を示す図である。
【
図19】第4実施形態におけるラフト層を示す図である。
【
図20】第4実施形態における三次元造形物を示す図である。
【
図21】第5実施形態における三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【
図22】第6実施形態における三次元造形物の断面構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム10の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向である。Y方向は、「第1方向」に相当する。X方向は、第1方向と交差する「第2方向」に相当する。Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0009】
三次元造形システム10は、三次元造形装置100と情報処理装置400とを備えている。本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300を備えている。制御部300と情報処理装置400とは、相互に通信可能に接続されている。
【0010】
三次元造形装置100は、造形材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230とを備える。
【0011】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた造形材料をステージ210に向けて吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を造形材料へと転化させる可塑化部30と、造形材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0012】
材料供給部20は、可塑化部30に、原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。
【0013】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。造形材料としては、結晶性樹脂又は非晶性樹脂を含む材料を用いることができる。本実施形態では、造形材料は結晶性樹脂を含む。そのため、原材料MRとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、POM、PEEKなどの樹脂が用いられる。
【0014】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0015】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0016】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。
図2に示したフラットスクリュー40は、
図1に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0017】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図1に示すように、フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から
図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0019】
バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。
【0020】
図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54は省略することも可能である。
【0021】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0022】
図1の吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた造形材料の流路65と、造形材料の吐出を制御する吐出制御部77を備える。
【0023】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0024】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、造形材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0025】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0026】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路65中の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0027】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。ステージ210は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210は、造形物が造形される造形面211を有している。ステージ210の詳細な構成については後述する。
【0028】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0029】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0030】
制御部300は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶装置320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶装置320に記憶されたプログラムを実行することによって、情報処理装置400から取得された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上に造形物の造形を行う。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0031】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する基本動作を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0032】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して層MLを形成する。制御部300は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0033】
制御部300は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの造形材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の造形材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の造形材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0034】
図5は、第1実施形態におけるステージ210及び三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。
図6は、ステージ210の平面図である。ステージ210は、例えば、アルミやステンレス鋼、ガラスによって形成されている。ステージ210の造形面211は、複数の溝240を含んでいる。
図5及び
図6には、10本の溝240が造形面211に形成された例を示している。これら複数の溝240は、第1溝241と、第2溝242と、第3溝243と、第4溝244とを含む。第1溝241と、第2溝242と、第3溝243と、第4溝244とは、それぞれ、Y方向に延在している。第2溝242は、X方向において、第1溝241と第3溝243との間に配置されている。第3溝243は、X方向において、第2溝242と第4溝244との間に配置されている。本実施形態では、第1溝241は、全ての溝240の中で最も-X方向に位置している。第4溝244は、全ての溝240の中で最も+X方向に位置している。第2溝242と第3溝243とは隣り合っている。第1溝241と第2溝242との間には複数の溝240が配置されている。第3溝243と第4溝244との間には複数の溝240が配置されている。
【0035】
ステージ210は、造形面211と交差し、-Y方向を向くに第1側面213を有する。各溝240の一端は第1側面213において開口する。ステージ210は、造形面211と交差し、+Y方向を向く第2側面214を有する。各溝240の他端はそれぞれ第2側面214には開口しない。
【0036】
各溝240の断面形状は台形である。造形面211と、各溝240の壁面とがなす角は、例えば、70度以上90度未満である。各溝240の造形面211における溝幅は、ノズル開口62の直径に比べて大きい。そのため、ノズル61から吐出される造形材料を各溝240に注入しやすい。溝幅は、例えば、0.1mm~0.5mmである。
【0037】
図5に示すように、本実施形態では、第1溝241と、第2溝242と、第3溝243と、第4溝244とに、それぞれ吐出部60から造形材料が供給されることにより、造形線路250と呼ばれる線状の層が形成される。造形線路のことを、桁層ともいう。第1溝241内に形成される造形線路250を第1造形線路251という。第2溝242内に形成される造形線路250を第2造形線路252という。第3溝243内に形成される造形線路250を第3造形線路253という。第4溝244内に形成される造形線路250を第4造形線路254という。
【0038】
造形線路250の上には、吐出部60から造形面211に向けて造形材料が供給され、床層260が形成される。床層260は、第1床層261と第2床層262とを含む。第1床層261は、第1造形線路251と第2造形線路252とを接続する。第2床層262は、第3造形線路253と第4造形線路254とを接続する。本実施形態では、第1床層261と第2床層262とは、同一平面上に形成され、且つ、第1床層261と第2床層262とは接触していない。
【0039】
三次元造形物MDは、下地層280の上に造形される。下地層280は、第1下地層281と第2下地層282とを含む。第1下地層281は、第1造形線路251と第2造形線路252と第1床層261とを備える。第2下地層282は、第3造形線路253と第4造形線路254と第2床層262とを備える。
【0040】
本実施形態では、吐出部60から造形面211に向かって造形材料を供給することで、第1床層261と第2床層262との上にそれぞれ、三次元造形物MDが上方に接触するラフト層270が形成される。ラフト層270は、三次元造形物MDと下地層280との密着性を高めるための層である。
【0041】
図7は、三次元造形処理のフローチャートである。この三次元造形処理は、三次元造形装置100の制御部300によって実行される。この三次元造形処理が実行されることにより、三次元造形物の製造方法が実現される。
【0042】
ステップS10において、制御部300は、吐出部60及び移動機構230を制御して、造形線路形成処理を実行する。この造形線路形成処理において、制御部300は、吐出部60に造形材料を吐出させることにより、
図5に示した造形線路250を形成する。
【0043】
図8は、造形線路形成処理の説明図である。制御部300は、造形線路形成処理において、第1制御、第2制御、第3制御、第4制御を実行する。第1制御は、ステージ210に対してY方向に吐出部60を相対移動させながら、第1溝241に造形材料を供給して第1造形線路251を形成する制御である。第2制御は、ステージ210に対してY方向に吐出部60を相対移動させながら、第2溝242に造形材料を供給して第2造形線路252を形成する制御である。第3制御は、ステージ210に対してY方向に吐出部60を相対移動させながら、第3溝243に造形材料を供給して第3造形線路253を形成する制御である。第4制御は、ステージ210に対してY方向に吐出部60を相対移動させながら、第4溝244に造形材料を供給して第4造形線路254を形成する制御である。
【0044】
第1制御~第4制御が実行される間、吐出部60は、ノズル61と造形面211との間を一定の距離に保ち、造形材料が造形面211よりも+Z方向に盛り上がるように造形材料を第1溝241~第4溝244に供給する。こうすることで、ノズル61の先端が造形面211に接触することを抑制できると共に、各溝240に配置された造形線路250が、その上に堆積される床層260に接触しやすくなる。
【0045】
本実施形態において、制御部300は、上述した第1制御~第4制御において、造形材料の供給を、Y方向の中程において一時的に停止する。こうすることで、第1造形線路251、第2造形線路252、第3造形線路253、第4造形線路254は、それぞれ、Y方向において2つに分割された状態となる。
【0046】
図7のステップS20において、制御部300は、吐出部60及び移動機構230を制御して、床層形成処理を実行する。この床層形成処理において、制御部300は、吐出部60に造形材料を吐出させることにより、
図5に示した床層260を形成する。
【0047】
図9は、床層形成処理の説明図である。制御部300は、床層形成処理において、第5制御及び第6制御を実行する。第5制御は、ステージ210に対して吐出部60を相対移動させながら造形面211に向かって造形材料を供給して第1造形線路251と第2造形線路252とを接続する第1床層261を形成する制御である。第6制御は、ステージ210に対して吐出部60を相対移動させながら造形面211に向かって造形材料を供給して第3造形線路253と第4造形線路254とを接続する第2床層262を形成する制御である。
【0048】
本実施形態において、制御部300は、第5制御において、第1造形線路251の上の位置から第2造形線路252の上の位置まで、吐出部60をX方向に沿って往復移動させつつ造形材料を吐出させる。このとき、制御部300は、1回の往動又は復動が終了する毎に、吐出部60を-Y方向に移動させる。こうすることで、ステージ210上には、第1床層261が形成される。第1造形線路251及び第2造形線路252は、Y方向において2つに分割されている。そのため、制御部300は、第5制御において、第1床層261についても、Y方向において2つに分離するように形成する。
【0049】
制御部300は、第6制御において、第3造形線路253の上の位置から第4造形線路254の上の位置まで、吐出部60をX方向に沿って往復移動させつつ造形材料を吐出させる。このとき、制御部300は、1回の往動又は復動が終了する毎に、吐出部60を-Y方向に移動させる。こうすることで、ステージ210上には、第2床層262が形成される。第3造形線路253及び第4造形線路254は、Y方向において2つに分割されている。そのため、制御部300は、第6制御において、第2床層262についても、Y方向において2つに分離するように形成する。
【0050】
図9では、X方向に沿った造形材料同士の間に隙間が存在するが、隙間が生じないように床層260を造形してもよい。また、床層260を形成する際の吐出部60の移動方向は、造形線路250が延在する方向であるY方向に直交するX方向に限らず、Y方向に交差する方向であってもよい。
【0051】
第1床層261及び第2床層262は、それぞれ、1又は複数の層によって形成される。例えば、制御部300は、上述した第5制御及び第6制御によって、第1床層261及び第2床層262の最も下の層を形成し、その後、吐出部60を+Z方向に段階的に移動させて、層を繰り返し形成することで、複数の層からなる第1床層261及び第2床層262を形成する。
【0052】
制御部300は、複数の層によって床層260を形成する場合、吐出部60を+Z方向に移動させる毎に、各層のインフィル率やインフィルパターンを変化させてもよい。インフィル率とは、層全体の面積に対して造形材料が吐出させる部位の面積をいう。インフィルパターンとは、層の内側を埋める経路のパターンのことをいう。
【0053】
上述したステップS10及びステップS20が実行されることにより、第1造形線路251と第2造形線路252と第1床層261とを含む第1下地層281が形成され、また、第2造形線路252と第2床層262とを含む第2下地層282が形成される。
【0054】
図7のステップS30において、制御部300は、吐出部60及び移動機構230を制御して、ラフト層形成処理を実行する。このラフト層形成処理において、制御部300は、吐出部60に造形材料を吐出させることにより、
図5に示したラフト層270を形成する。
【0055】
図10は、ラフト層形成処理の説明図である。制御部300は、ラフト層形成処理において、第7制御を実行する。第7制御は、ステージ210に対して吐出部60を相対移動させながら造形面211に向かって造形材料を供給して三次元造形物MDに接触するラフト層270を形成する処理である。本実施形態では、第1床層261及び第2床層262に対応する位置にラフト層270を形成する。そのため、
図10では、2つの第1床層261及び2つの第2床層262に対応するように、計4つのラフト層270が形成されている。ラフト層270は、床層260と同様に、1又は複数の層によって形成される。
【0056】
図7のステップS40において、制御部300は、吐出部60及び移動機構230を制御して、造形処理を実行する。
【0057】
図11は、造形処理の説明図である。この造形処理において、制御部300は、情報処理装置400から取得された造形データに従って、ステージ210に対して吐出部60を相対移動させながら、ラフト層270の上に造形材料を供給して層を積層していくことで、三次元造形物MDを造形する制御を行う。
【0058】
三次元造形物MDが造形された後、ステップS50において、下地層280から三次元造形物MD及びラフト層270が分離される。三次元造形物MD及びラフト層270の分離は、例えば、ミーリング加工等によって行われる。三次元造形物MD及びラフト層270が分離された下地層280は、次回以降の三次元造形処理において繰り返し用いることができる。そのため、一旦、下地層280を形成した後では、
図7に示した三次元造形処理は、ステップS10及びステップS20の処理を省略することが可能である。
【0059】
以上で説明した第1実施形態によれば、三次元造形物MDが造形される下地層280が、第1下地層281と第2下地層282と分かれているため、下地層280ごとの反り量を低減できる。そのため、造形材料の収縮率が大きい場合であっても、下地層280の反りに起因して下地層280の一部である造形線路250がステージ210の溝240から外れることが抑制され、造形物とステージ210との位置関係を保持しやすくなる。この結果、三次元造形物MDを精度よく造形できる。また、下地層280がステージ210から外れにくくなるので、下地層280を再利用することが容易になる。
【0060】
また、本実施形態では、下地層280が、X方向の両端に、溝240に嵌まり込む造形線路250を有しているため、下地層280が冷却に伴って収縮した場合でも、床層260が造形面211から剥がれにくい。特に本実施形態では、溝240の断面形状が台形であり、造形面211と溝240の壁面とのなす角が90度未満であるため、造形線路250が溝240から外れにくく、床層260が反ることを効果的に抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、下地層280と三次元造形物MDとの間にラフト層270が形成されるので、三次元造形物MDと下地層280との密着性を高めることができる。例えば、三次元造形物MDの底面の角部に対応する位置にラフト層270が形成されることで、三次元造形物MDの底面の角部が下地層280から剥がれることを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、第1床層261と第2床層262とは、同一平面上に形成されるものの、第1床層261と第2床層262とは接触していない。そのため、床層260同士が接触している場合に比べて、床層260が反る可能性を低減できる。
【0063】
また、本実施形態では、下地層280と三次元造形物MDとが、共に、結晶性樹脂を含む造形材料により造形される。そのため、三次元造形物MDと下地層280との層間密着性を高めることができる。
【0064】
また、本実施形態では、ステージ210に設けられた溝240の一端が、ステージ210の第1側面213に開口している。そのため、下地層280を再造形する場合に、使用後の下地層280を第1側面213側にスライドさせることで、下地層280を容易にステージ210から取り外すことができる。なお、ステージ210は、下地層280の取り外しを容易にするために、下地層280を加熱するためのヒーターを備えていていてもよい。
【0065】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態において形成される三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。第1実施形態では、第1床層261は、第1造形線路251と第2造形線路との上に形成される。これに対して、第2実施形態では、第1床層261が、第1造形線路251と、第2造形線路252と、第5造形線路255との上に形成される。第2実施形態における三次元造形装置100の構成は第1実施形態と同じである。
【0066】
第2実施形態では、
図7に示した三次元造形処理のステップS10の造形線路形成処理において、造形面211に設けられた第5溝245に造形材料を供給して第5造形線路255を形成する制御が実行される。第5溝245は、第1溝241と第2溝242との間に配置されている。第5造形線路255を形成するための制御を、第8制御という。
【0067】
制御部300は、
図7のステップS20における床層形成処理で実行される第5制御において、第1造形線路251と第2造形線路252と第5造形線路255とを接続する第1床層261を形成する。
図7のステップS30~S50の処理は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0068】
以上で説明した第2実施形態によれば、造形線路250が、床層260の端部だけではなく、床層260の途中にも配置される。そのため、床層260のステージ210に対する密着度をより高くできる。なお、第2実施形態では、第1床層261を3つの造形線路250上に形成した例を示したが、第2床層262についても、3つの造形線路250上に形成してもよい。また、床層260に接触させる造形線路250の数は、2つや3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0069】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態において形成される三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。第1実施形態では、ラフト層270が複数の床層260に対応するように複数形成されている。これに対して、第3実施形態では、ラフト層270は第1床層261と第2床層262との上に跨がって形成される。第3実施形態における三次元造形装置100の構成は第1実施形態と同じである。
【0070】
図14は、第3実施形態におけるラフト層270を示す図である。
図15は、第3実施形態における三次元造形物MDを示す図である。第3実施形態では、
図5に示す三次元造形処理のステップS10及びステップS20では、第1実施形態と同じように、造形線路250及び床層260が形成される。これに対して、ステップS30のラフト層形成処理では、
図14に示すように、第1床層261と第2床層262との上に跨がってラフト層270が形成される。そして、ステップS40の造形処理では、
図15に示すように、第1床層261と第2床層262との上に跨がって形成されたラフト層270の上に、三次元造形物MDが形成される。
【0071】
以上で説明した第3実施形態によれば、複数の床層260の上にラフト層270が跨がって形成されるので、ラフト層270が三次元造形物MDの底面に接触する面積が多くなる。そのため、三次元造形物MDの底面の造形精度が高くなる。
【0072】
D.第4実施形態:
図16は、第4実施形態において形成される三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。第1実施形態では、床層260が第1床層261と第2床層262とに分離されている。これに対して、第4実施形態では、床層260が、第1床層261と第2床層262と第3床層263とに分離されている。第4実施形態における三次元造形装置100の構成は第1実施形態と同じである。第4実施形態では、第1造形線路251、第2造形線路252、第3造形線路253、第4造形線路254に加えて、第6造形線路256と第7造形線路257とが、第6溝246及び第7溝247に形成される。第6溝246と第7造形線路257とは、第2溝242と第3溝243との間に形成されている。
【0073】
図17は、第4実施形態における造形線路250を示す図である。
図18は、第4実施形態における床層260を示す図である。
図19は、第4実施形態におけるラフト層270を示す図である。
図20は、第4実施形態における三次元造形物MDを示す図である。
【0074】
第4実施形態において、
図5に示す三次元造形処理のステップS10における造形線路形成処理では、
図17に示すように、第1溝241、第2溝242、第3溝243、第4溝244、第6溝246、第7溝247に対して、それぞれ造形材料が供給され、第1造形線路251、第2造形線路252、第3造形線路253、第4造形線路254、第6造形線路256、第7造形線路257が形成される。本実施形態における各造形線路250は、第1実施形態の第1造形線路251、第2造形線路252、第3造形線路253、第4造形線路254とは異なり、Y方向に分離されていない。
【0075】
ステップS20における床層形成処理では、
図18に示すように、第1造形線路251及び第2造形線路252を接続する第1床層261と、第3造形線路253と第4造形線路254とを接続する第2床層262と、第6造形線路256と第7造形線路257とを接続する第3床層263とが形成される。第3床層263は、第1床層261と第2床層262との間に形成される。
【0076】
ステップS30におけるラフト層形成処理では、
図19に示すように、第1床層261、第2床層262、第3床層263の全てに跨がるラフト層270が形成される。なお、ラフト層270は、第1層、第2床層262、第3床層263のそれぞれに対応するように、分離した構成とすることも可能である。
【0077】
ステップS40における造形処理では、
図20に示すように、ステップS30で形成されたラフト層270の上に、三次元造形物MDが造形される。
【0078】
以上で説明した第4実施形態によれば、床層260がX方向に3つに分割されているため、各床層260のX方向における大きさを小さくできる。そのため、床層260がX方向に反ることを抑制できる。また、第4実施形態では、造形線路250が、Y方向の途中で分離されることなく、溝240の全長に亘って形成されており、床層260も、Y方向の途中で分離されることなく造形線路250上に形成されている。そのため、床層260をX方向に3つに分離させることにより、X方向における床層260の大きさを小さくした場合であっても、床層260のY方向における造形面211への接触面積を確保できるので、床層260が造形面211から剥がれやすくなることを抑制できる。
【0079】
E.第5実施形態:
図21は、第5実施形態において形成される三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。第1実施形態では、ステージ210の造形面211に複数の溝240が形成されている。これに対して、第5実施形態では、ステージ210には溝240が形成されておらず、Y方向に沿って延在する凸部290が、X方向に複数配置されている。そのため、第5実施形態では、下地層280が、床層260のみによって形成されており、下地層280は、造形線路を備えていない。
【0080】
第5実施形態では、
図7に示す三次元造形処理のステップS10における造形線路形成処理は実行されず、ステップS20~S50の処理が実行される。ステップS20の床層形成処理では、制御部300は、第1下地層281として第1床層261を形成し、第2下地層282として第1床層261を形成する制御を実行する。ステップS30のラフト層形成処理において、制御部300は、第1下地層281及び第2下地層282に造形材料を供給してラフト層270を形成する制御を実行する。ラフト層270は、第1下地層281と第2下地層282とに対応するように分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。ステップS40の造形処理において、制御部300は、ラフト層270の上に造形材料を供給して三次元造形物MDを造形する制御を実行する。
【0081】
以上で説明した第5実施形態では、下地層280が、第1下地層281と第2下地層282と分かれているため、各下地層280の反り量を低減できる。そのため、造形材料の収縮率が大きい場合であっても、下地層280の反りに起因して下地層280がステージ210から外れることが抑制され、三次元造形物MDとステージ210との位置関係を保持しやすくなる。また、ラフト層270を境界として三次元造形物MDを下地層280とを分離できるので、下地層280を繰り返し使用することができる。
【0082】
F.第6実施形態:
図22は、第6実施形態において形成される三次元造形物MDの断面構造を模式的に示す図である。第1実施形態では、第1床層261と第2床層262とは、同一平面上に形成されているものの、互いに分離されており接触していない。これに対して、第6実施形態では、第1床層261と第2床層262とは、同一平面上に形成され、且つ、第1床層261と第2床層262との少なくとも一部が接触している。他の点は第1実施形態と同じである。
【0083】
以上で説明した第6実施形態によれば、第1床層261と第2床層262との少なくとも一部が接触しているので、第1床層261と第2床層262の境界において、三次元造形物MDの底面の寸法精度を高めることができる。
【0084】
なお、上述した各実施形態では、下地層280は、1回の造形サイクルでは廃棄されず、複数回の造形サイクルで共通して使用することが可能である。この点で、下地層280は、1回の造形サイクルで除去されるラフト層270とは異なる。上記各実施形態では、下地層280を再利用することができるので、造形サイクル毎に下地層280を造形するよりも、造形材料の消費量を抑制できる。また、下地層280は、三次元造形装置100によって造形されるものであるため、三次元造形において一般的に用いられる造形シートや造形プレートのような備品とは異なる。そのため、これらの備品を用意することなく、三次元造形物を造形できる。また、下地層280の上に造形物を造形するため、ステージ210上に直接的に造形物を造形するよりも、ステージ210が劣化しにくい。
【0085】
G.他の実施形態:
(G1)上記各実施形態において、ステージ210は、造形材料の反りを抑制するためのヒーターを備えていてもよい。ヒーターは、ステージ210において、複数の領域に分割されて配置されてもよい。制御部300は、反りが発生しやすい領域に配置されたヒーターの温度を高くすることで、その領域上の造形材料が収縮することを抑制でき、下地層280に反りが発生することを抑制できる。反りが発生しやすい領域とは例えば、ステージ210の外周に近い領域である。
【0086】
(G2)上記各実施形態では、ステージ210の第1側面213において、溝240の一端が開口している。これに対して、溝240の一端と他端とは両方とも開口していなくてもよい。
【0087】
(G3)上記各実施形態では、三次元造形処理においてラフト層270が形成される。これに対して、ラフト層270の形成は省略することも可能である。つまり、
図7に示した三次元造形処理において、ステップS30におけるラフト層形成処理は省略してもよい。
【0088】
H.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0089】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、第1方向に延在する第1溝と、前記第1方向に延在する第2溝と、前記第1方向に延在する第3溝と、前記第1方向に延在する第4溝とを含む造形面を有するステージと、造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備え、前記第2溝は、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1溝と前記第3溝との間に配置され、前記第3溝は、前記第2方向において、前記第2溝と前記第4溝との間に配置され、前記制御部は、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第1溝に前記造形材料を供給して第1造形線路を形成する第1制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第2溝に前記造形材料を供給して第2造形線路を形成する第2制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第3溝に前記造形材料を供給して第3造形線路を形成する第3制御と、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第4溝に前記造形材料を供給して第4造形線路を形成する第4制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第1造形線路と前記第2造形線路とを接続する第1床層を形成する第5制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記第3造形線路と前記第4造形線路とを接続する第2床層を形成する第6制御と、を実行し、前記三次元造形物は、第1下地層及び第2下地層の上に造形され、前記第1下地層は、前記第1造形線路と前記第2造形線路と前記第1床層とを備え、前記第2下地層は、前記第3造形線路と前記第4造形線路と前記第2床層とを備える。
このような形態によれば、三次元造形物が造形される下地層が、第1下地層と第2下地層とに分かれているため、下地層1つ1つの反り量を低減できる。そのため、造形材料の収縮率が大きい場合であっても、下地層の反りに起因して下地層の一部である造形線路がステージの溝から外れることが抑制され、三次元造形物とステージとの位置関係を保持しやすくなる。
【0090】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら前記造形面に向かって前記造形材料を供給して前記三次元造形物に接触するラフト層を形成する第7制御を実行してもよい。このような形態によれば、ラフト層により三次元造形物と下地層との密着性を高めることができる。
【0091】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記ラフト層は、前記第1床層と前記第2床層の上に跨って形成されてもよい。このような形態によれば、複数の床層の上にラフト層が跨がって形成されるので、三次元造形物の底面の造形精度が高くなる。
【0092】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記造形材料は、結晶性樹脂を含んでもよい。このような形態によれば、下地層に結晶性樹脂を用いることで、結晶性樹脂を用いて造形された三次元造形物と下地層との層間密着性を高めることができる。
【0093】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記第5制御の実行に先立って、前記ステージに対して前記第1方向に前記吐出部を相対移動させながら、前記第2方向において前記第1溝と前記第2溝との間に配置される第5溝に前記造形材料を供給して第5造形線路を形成する第8制御を実行し、前記制御部は、前記第5制御において前記第1造形線路と前記第2造形線路と前記第5造形線路とを接続する前記第1床層を形成してもよい。このような形態によれば、床層とステージとの密着性を高めることができる。
【0094】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記第1床層と前記第2床層とは、同一平面上に形成され、且つ、前記第1床層の少なくとも一部と前記第2床層の少なくとも一部とが接触していてもよい。このような形態によれば、第1床層と第2床層との境界において、三次元造形物の底面の寸法精度を高めることができる。
【0095】
上記形態の三次元造形装置において、前記第1床層と前記第2床層とは、同一平面上に形成され、且つ、接触しなくてもよい。このような形態によれば、床層同士が接触しないので、床層が反る可能性を低減できる。
【0096】
(7)本開示の第2の形態によれば、三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、造形面を有するステージと、造形材料を前記造形面に供給する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対的に移動させる移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第1下地層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記造形面に前記造形材料を供給して第2下地層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記第1下地層及び前記第2下地層に前記造形材料を供給してラフト層を形成する制御と、前記ステージに対して前記吐出部を相対移動させながら、前記ラフト層の上に前記造形材料を供給して前記三次元造形物を造形する制御と、を実行する。
このような形態であれば、三次元造形物が造形される下地層が、第1下地層と第2下地層と分かれているため、下地層1つ1つの反り量を低減できる。そのため、造形材料の収縮率が大きい場合であっても、下地層の反りに起因して下地層がステージから外れることが抑制され、三次元造形物とステージとの位置関係を保持しやすくなる。また、ラフト層を境界として三次元造形物を下地層とを分離できるので、下地層を繰り返し使用することができる。
【0097】
本開示は、上述した三次元造形装置に限らず、三次元造形物の製造方法や材料吐出方法など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
10…三次元造形システム、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、213…第1側面、214…第2側面、230…移動機構、240…溝、241…第1溝、242…第2溝、243…第3溝、244…第4溝、245…第5溝、246…第6溝、247…第7溝、250…造形線路、251…第1造形線路、252…第2造形線路、253…第3造形線路、254…第4造形線路、255…第5造形線路、256…第6造形線路、257…第7造形線路、260…床層、261…第1床層、262…第2床層、263…第3床層、270…ラフト層、280…下地層、281…第1下地層、282…第2下地層、290…凸部、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶装置、400…情報処理装置