(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141379
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】振動素子の製造方法、振動素子、及び振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20241003BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/19 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052983
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA04
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE09
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG08
5J108GG09
5J108GG16
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM08
5J108MM11
5J108MM14
(57)【要約】
【課題】電気的接続に優れた振動素子の製造方法、振動素子、及び振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動素子1の製造方法は、薄肉部11及び厚肉部12を有する基板10と、薄肉部11の励振電極配置領域13に配置されている励振電極31,32、厚肉部12のパッド電極配置領域14に配置されているパッド電極33,34、及び励振電極31,32とパッド電極33,34とを接続し、基板10の引出電極配置領域15に配置されている引出電極35,36を含む電極部30と、を含む振動素子1の製造方法であって、基板10上に、金属層40を形成する金属層形成工程と、金属層40上において、平面視で、引出電極配置領域15の少なくとも一部に重なる領域に、保護膜75を形成する保護膜形成工程と、保護膜75を介してエッチングすることにより、励振電極配置領域13に配置された金属層40を薄肉化する金属層エッチング工程と、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を有する基板と、
前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極、及び前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極と、を有する電極部と、
を含む振動素子の製造方法であって、
前記基板上に、金属層を形成する金属層形成工程と、
前記金属層上において、平面視で、前記引出電極配置領域の少なくとも一部に重なる領域に、保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記保護膜を介してエッチングすることにより、前記励振電極配置領域に配置された前記金属層を薄肉化する金属層エッチング工程と、
を含む、
振動素子の製造方法。
【請求項2】
前記金属層形成工程は、厚さT1の前記金属層を形成することを含み、
前記金属層エッチング工程は、前記励振電極配置領域に配置された前記金属層を薄肉化し、厚さT2の前記金属層を形成することを含み、
0.05≦T2/T1≦0.7を満たす、
請求項1に記載の振動素子の製造方法。
【請求項3】
前記引出電極配置領域は、前記厚肉部に位置する部分を含む第1領域と、前記薄肉部に位置する部分を含む第2領域と、を含み、
前記保護膜形成工程は、
前記金属層上において、平面視で、前記第1領域に重なる領域に、前記保護膜を形成することを含み、
前記金属層エッチング工程は、
前記保護膜を介してエッチングすることにより、前記第2領域及び前記励振電極配置領域に配置された前記金属層を薄肉化すること、を含む
請求項1又は請求項2に記載の振動素子の製造方法。
【請求項4】
前記保護膜形成工程は、
前記金属層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域と、前記薄肉部に位置する前記第1領域と重なる領域と、に前記保護膜を形成することを含む、
請求項3に記載の振動素子の製造方法。
【請求項5】
前記基板は、前記厚肉部と前記薄肉部との間を接続し、傾斜部を有する接続部を含み、
前記保護膜形成工程は、
前記金属層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域と、前記薄肉部及び前記接続部に位置する前記第1領域と重なる領域と、に前記保護膜を形成することを含む、
請求項3に記載の振動素子製造方法。
【請求項6】
前記金属層エッチング工程は、
前記保護膜を介してドライエッチングすることにより、前記第2領域及び前記励振電極配置領域に配置された前記金属層を薄肉化することを含む、
請求項3に記載の振動素子の製造方法。
【請求項7】
薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を有する基板と、
前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極、及び前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極を有する電極部と、
を備え、
前記電極部は、
前記基板上の、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域に配置されている第1電極層と、
前記第1電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域と重なる領域に配置され、前記第1電極層より厚さが大きい第2電極層と、
を含み、
前記第2電極層は、平面視で、前記励振電極配置領域と重なる電極薄肉部と、前記引出電極配置領域と重なる前記電極薄肉部より厚さが大きい電極厚肉部と、
を備える、
振動素子。
【請求項8】
前記電極厚肉部の厚さをT1とし、
前記電極薄肉部の厚さをT2としたとき、
0.05≦T2/T1≦0.7を満たす、
請求項7に記載の振動素子。
【請求項9】
前記引出電極配置領域は、前記厚肉部に位置する部分を含む第1領域と、前記薄肉部に位置する部分を含む第2領域と、を含み、
前記電極薄肉部は、平面視で、前記第2領域及び前記励振電極配置領域と重なり、
前記電極厚肉部は、平面視で、前記第1領域及び前記引出電極配置領域と重なっている、
請求項7又は請求項8に記載の振動素子。
【請求項10】
前記第2電極層は、金であり、
前記第1電極層は、ニッケル、クロム、及び窒化クロムの少なくとも1つを含む、
請求項7又は請求項8に記載の振動素子。
【請求項11】
前記電極薄肉部の前記基板とは反対側の面は、エッチング面である、
請求項7又は請求項8に記載の振動素子。
【請求項12】
前記電極薄肉部の前記基板とは反対側の面は、ドライエッチング面である、
請求項7又は請求項8に記載の振動素子。
【請求項13】
請求項7又は請求項8に記載の振動素子と、
前記振動素子を収容し、接合材を介して前記振動素子が固定されたパッケージと、
を備える、
振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子の製造方法、振動素子、及び振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った所謂逆メサ構造の圧電振動素子が開示されている。この圧電振動素子は、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧するために圧電振動素子を固定する厚肉部と振動部との間にスリットを設けている。また、高周波化に伴う電極の薄膜化により、特に、励振電極とパッド電極とを電気的に接続する幅の狭い引出電極において、シート抵抗の増大を防ぐために引出電極の厚みを励振電極の厚みより厚くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の圧電振動素子は、引出電極の厚みを励振電極の厚みより厚くするために、引出電極を形成した後に引出電極の一部に重なるように励振電極の厚みと同じ厚みを有する引出電極を積層して形成している。また、先に形成した厚い引出電極の端部である段差を跨ぐように薄い引出電極を積層して形成している。そのため、段差部において後で形成した引出電極が断線し易いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動素子の製造方法は、薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を有する基板と、前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極、及び前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極と、を有する電極部と、を含む振動素子の製造方法であって、前記基板上に、金属層を形成する金属層形成工程と、前記金属層上において、平面視で、前記引出電極配置領域の少なくとも一部に重なる領域に、保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を介してエッチングすることにより、前記励振電極配置領域に配置された前記金属層を薄肉化する金属層エッチング工程と、を含む。
【0006】
振動素子は、薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を有する基板と、前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極、及び前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極を有する電極部と、を備え、前記電極部は、前記基板上の、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域に配置されている第1電極層と、前記第1電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域と重なる領域に配置され、前記第1電極層より厚さが大きい第2電極層と、を含み、前記第2電極層は、平面視で、前記励振電極配置領域と重なる電極薄肉部と、前記引出電極配置領域と重なる前記電極薄肉部より厚さが大きい電極厚肉部と、を備える。
【0007】
振動デバイスは、上記に記載の振動素子と、前記振動素子を収容し、接合材を介して前記振動素子が固定されたパッケージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る振動素子の構成を示す斜視図。
【
図2】ATカット水晶基板と水晶の結晶軸との関係を説明する図。
【
図7】振動素子の製造方法を示すフローチャート図。
【
図15】第2実施形態に係る振動素子の構成を示す平面図。
【
図17】第3実施形態に係る振動素子の構成を示す斜視図。
【
図18】第4実施形態に係る振動デバイスの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
1.1.振動素子
第1実施形態に係る振動素子1について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0010】
尚、説明の便宜上、
図2及び
図7を除く以降の各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y’軸、及びZ’軸を図示している。また、振動素子1の長手方向をX軸に沿った方向として「X方向」、振動素子1の厚み方向をY’軸に沿った方向として「Y’方向」、X軸及びY’軸に垂直な方向をZ’軸に沿った方向として「Z’方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Y’方向のプラス側を「表」、Y’方向のマイナス側を「裏」とも言う。
【0011】
本実施形態の振動素子1は、
図1に示すように、基板10と、基板10上に形成された電極部30と、を有している。
【0012】
基板10は、板状の水晶基板である。ここで、基板10の材料である水晶は、三方晶系に属しており、
図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有している。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。本実施形態の基板10は、XZ面をX軸の回りに所定の角度θ回転させた平面に沿って切り出された「回転Yカット水晶基板」であり、例えばθ=35°15’だけ回転させた平面に沿って切り出された場合の基板は「ATカット水晶基板」という。このような水晶基板を用いることにより優れた温度特性を有する振動素子1となる。
【0013】
但し、基板10としては、厚みすべり振動を励振することができれば、ATカットの水晶基板に限定されず、例えば、BTカットの水晶基板を用いてもよい。また、基板10としては、水晶基板の他、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の各種圧電基板を用いてもよい。
尚、以下では、角度θに対応してX軸回りに回転したY軸及びZ軸を、Y’軸及びZ’軸とする。即ち、基板10は、Y’方向に厚みを有し、XZ’面方向に広がりを有する。
【0014】
基板10は、平面視にて、X方向を長辺とし、Z’方向を短辺とする長手形状をなしている。また、基板10は、マイナスX方向を先端側とし、プラスX方向を基端側としている。基板10のX方向の最大長さLとし、Z’方向の最大幅Wとしたとき、L/Wとしては、特に限定されないが、例えば、1.1~1.4程度とすることが好ましい。
【0015】
基板10は、
図1及び
図3に示すように、振動エネルギーが閉じ込められる領域である振動領域の薄肉部11と、薄肉部11と一体化され、薄肉部11より厚さが大きい厚肉部12と、を有している。尚、薄肉部11は、基板10をマイナスY’方向にエッチングし、凹陥部74を設けることで形成される。
【0016】
薄肉部11は、基板10の中央に対して、X方向マイナス側及びZ’方向マイナス側に片寄っており、その外縁の一部が厚肉部12から露出している。振動素子1の平面視にて、薄肉部11の面積は、基板10の面積の1/2以下であるのが好ましい。これにより、機械的強度が高い厚肉部12を十分広く形成することができるため、薄肉部11の剛性を十分に確保することができる。
【0017】
薄肉部11は、振動素子1の平面視にて、厚み滑り振動の振動方向であるX方向に離間し、Z’方向に延在する第1外縁21及び第2外縁22と、Z’方向に離間し、X方向に延在する第3外縁23及び第4外縁24とを有している。第1外縁21、第2外縁22のうち、第1外縁21がX方向プラス側に位置し、第2外縁22がX方向マイナス側に位置している。また、第3外縁23、第4外縁24のうち、第3外縁23がZ’方向プラス側に位置し、第4外縁24がZ’方向マイナス側に位置している。また、第3外縁23が第1外縁21及び第2外縁22のZ’方向プラス側の端同士を連結しており、第4外縁24が第1外縁21及び第2外縁22のZ’方向マイナス側の端同士を連結している。
【0018】
また、
図1に示すように、厚肉部12のY’方向プラス側の主面である表面は、薄肉部11のY’方向プラス側の主面である表面よりもY’方向プラス側へ突出して設けられている。一方、厚肉部12のY’方向マイナス側の主面である裏面は、薄肉部11のY’方向マイナス側の主面である裏面と同一平面上に設けられている。
【0019】
厚肉部12は、第1外縁21に沿って配置された厚肉部12と、第3外縁23に沿って配置された厚肉部12とを有している。そのため、厚肉部12は、平面視で、薄肉部11に沿って曲がった構造を備え、略L字状をなしている。一方、薄肉部11の第2外縁22及び第4外縁24には、厚肉部12が形成されておらず、これら第2外縁22、第4外縁24は、厚肉部12から露出している。このように、厚肉部12を薄肉部11の外縁に部分的に設けて略L字とし、第2外縁22及び第4外縁24に沿って設けないことによって、振動素子1の薄肉部11の剛性を保ちつつ、振動素子1の先端側の質量を低減することができる。また、振動素子1の小型化を図ることができる。
【0020】
厚肉部12は、厚肉部12と薄肉部11との間を接続する、第1外縁21に連設され、プラスX方向に向けて厚みが漸増する傾斜部を有する接続部26と、第3外縁23に連設され、プラスZ’方向に向けて厚みが漸増する傾斜部を有する接続部25と、を備えている。また、接続部26側の厚肉部12がマウント部となり、導電性接着剤等を用いてパッケージ等に固定される。
【0021】
電極部30は、一対の励振電極31,32と、一対のパッド電極33,34と、一対の引出電極35,36とを有している。
【0022】
励振電極31,32は、薄肉部11の励振電極配置領域13に配置されている。励振電極31は、薄肉部11の表面に形成されている。一方、励振電極32は、薄肉部11の裏面に、励振電極31と対向して配置されている。励振電極31、32は、それぞれ、X方向を長手とし、Z’方向を短手とする略矩形である。
【0023】
パッド電極33,34は、厚肉部12のパッド電極配置領域14に配置されている。パッド電極33は、接続部26側の厚肉部12の表面に形成されている。一方、パッド電極34は、接続部26側の厚肉部12の裏面に、パッド電極33と対向して形成されている。
【0024】
引出電極35,36は、基板10の引出電極配置領域15に配置されている。尚、引出電極配置領域15は、接続部25,26を含む厚肉部12に位置する部分を含む第1領域16と、薄肉部11に位置する部分を含む第2領域17と、で構成されている。引出電極35は、励振電極31とパッド電極33とを電気的に接続している。一方、引出電極36は、励振電極32とパッド電極34とを電気的に接続している。引出電極35,36は、基板10を介して重ならないように設けられている。これにより、引出電極35,36間の静電容量を抑えることができる。
【0025】
また、電極部30は、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示すように、基板10上の、パッド電極配置領域14、引出電極配置領域15、及び励振電極配置領域13に配置されている第1電極層41と、第1電極層41上において、平面視で、パッド電極配置領域14、引出電極配置領域15、及び励振電極配置領域13と重なる領域に配置され、第1電極層41より厚さが大きい第2電極層42と、で構成されている。
【0026】
第2電極層42は、平面視で、励振電極配置領域13と重なる電極薄肉部38と、引出電極配置領域15と重なる電極薄肉部38より厚さが大きい電極厚肉部37と、を備え、電極薄肉部38は、薄肉部11上の励振電極配置領域13及び引出電極配置領域15の第2領域17に配置され、電極厚肉部37は、接続部25,26を含む厚肉部12上のパッド電極配置領域14及び引出電極配置領域15の第1領域16に配置されている。
【0027】
具体的には、電極薄肉部38は、薄肉部11上の励振電極31,32及び引出電極35,36であり、電極厚肉部37は、接続部25,26を含む厚肉部12上のパッド電極33,34及び引出電極35,36である。
【0028】
尚、電極薄肉部38は、電極厚肉部37の厚さT1と同じ厚みを有する金属層40を厚さT2となるまでエッチングすることで形成されている。そのため、電極薄肉部38の基板10とは反対側の面は、エッチング面である。また、エッチングがドライエッチングで行われた場合は、電極薄肉部38の基板10とは反対側の面は、ドライエッチング面である。
【0029】
また、引出電極35,36の電極薄肉部38と電極厚肉部37とは、一体化して形成されているため、断線の虞がなく、幅の狭い引出電極35,36の大半が電極厚肉部37で構成されているため、シート抵抗の増大を制御することができる。
【0030】
尚、電極厚肉部37の厚さT1と電極薄肉部38の厚さT2とは、0.05≦T2/T1≦0.7を満たすことが好ましい。T2/T1が0.05より小さい場合は、引出電極35,36の厚みが薄くシート抵抗の増大を十分抑制することができない。また、T2/T1が0.7より大きい場合は、電極薄肉部38を形成するためのエッチング時間が長くなり製造コストが増大する。
【0031】
電極部30の構成材料は、第2電極層42は、金(Au)であり、第1電極層41は、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、及び窒化クロム(CrN)の少なくとも1つである。
【0032】
以上で述べたように本実施形態の振動素子1は、基板10の接続部25,26を含む厚肉部12上のパッド電極33,34及び引出電極35,36が電極厚肉部37で構成され、薄肉部11上の励振電極31,32及び引出電極35,36が電極薄肉部38で構成されている。従って、励振電極31,32の厚みを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚みをシート抵抗が増大し難い厚みとすることができる。そのため、振動特性に優れ、電気的信頼性に優れた振動素子1を得ることができる。
【0033】
1.2.振動素子の製造方法
次に、振動素子1の製造方法について、
図7~
図14を参照して説明する。
尚、
図8~
図14は、
図3のA2-A2線断面図の位置に相当する断面図である。
本実施形態の振動素子1の製造方法は、
図7に示すように、凹陥部形成工程、金属層形成工程、電極パターン形成工程、保護膜形成工程、及び金属層エッチング工程を含む。
【0034】
1.2.1.凹陥部形成工程
ステップS1において、基板10の全面にスパッタ装置又は蒸着装置等で、クロム(Cr)等の下地膜71と金(Au)等の金属膜72を、下地膜71、金属膜72の順に成膜する。次に、金属膜72上にレジスト等の保護膜73を塗布し、フォトリソグラフィー技術により、
図8に示すように、凹陥部パターンを形成する。
凹陥部パターンが形成された基板10をエッチング液、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液を用いてウエットエッチングし、
図9に示すように、基板10に凹陥部74を形成する。この工程により、基板10に薄肉部11と厚肉部12とが形成される。
【0035】
1.2.2.金属層形成工程
ステップS2において、下地膜71、金属膜72、及び保護膜73を除去した後に、凹陥部74が形成された基板10の全面にスパッタ装置又は蒸着装置等で、クロム(Cr)等の第1電極層41と金(Au)等の第2電極層42を、第1電極層41、第2電極層42の順に成膜し、
図10に示すように、基板10上に金属層40を形成する。尚、金属層40の厚みは、T1である。
【0036】
1.2.3.電極パターン形成工程
ステップS3において、基板10上の金属層40をフォトリソグラフィー技法及びエッチング技法を用いて、
図11に示すように、電極パターンを形成する。より具体的には、励振電極配置領域13に励振電極31,32を、パッド電極配置領域14にパッド電極33,34を、引出電極配置領域15に引出電極35,36を形成する。
【0037】
1.2.4.保護膜形成工程
ステップS4において、金属層40の電極パターンが形成された基板10上にレジスト等の保護膜75を塗布し、フォトリソグラフィー技術により、
図12に示すように、金属層40上において、引出電極配置領域15の少なくとも一部に重なる領域に、保護膜75を形成する。より具体的には、パッド電極配置領域14及び接続部25,26を含む厚肉部12の引出電極配置領域15の第1領域16に重なる領域に保護膜75を形成する。
【0038】
1.2.5.金属層エッチング工程
ステップS5において、
図13に示すように、保護膜75を介してエッチングし、引出電極配置領域15の第2領域17及び励振電極配置領域13に配置された金属層40を薄肉化する。金属層40の厚さT2が0.05≦T2/T1≦0.7を満たす厚みとなった時点でエッチングを終了することで、
図14に示すように、完成した振動素子1が得られる。尚、金属層40をエッチングし薄肉化する方法は、ドライエッチング装置を用いたドライエッチングやエッチング液を用いたウエットエッチングのどちらでも構わない。ドライエッチングは、ウエットエッチングに比べ、金属層40の厚さT2を制御し易いという利点がある。
【0039】
以上の製造方法により、基板10の接続部25,26を含む厚肉部12に電極厚肉部37で構成されるパッド電極33,34と引出電極35,36が設けられ、薄肉部11に電極薄肉部38で構成される励振電極31,32と引出電極35,36が設けられた振動素子1を製造することができる。従って、励振電極31,32の厚みを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚みをシート抵抗が増大し難い厚みとすることができる。そのため、振動特性に優れ、電気的信頼性に優れた振動素子1を得ることができる。
【0040】
2.第2実施形態
2.1.振動素子
次に、第2実施形態に係る振動素子1aについて、
図15及び
図16を参照して説明する。
【0041】
本実施形態の振動素子1aは、第1実施形態の振動素子1に比べ、電極部30aの配置位置構成が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0042】
振動素子1aは、
図15に示すように、基板10と、基板10上に形成された電極部30aと、を有している。
【0043】
振動素子1aの電極部30aは、電極厚肉部37で構成されたパッド電極33,34と、電極厚肉部37と電極薄肉部38から構成された引出電極35a,36aと、電極薄肉部38で構成された励振電極31,32と、で構成されている。電極厚肉部37で構成された引出電極35a,36aが形成される引出電極配置領域15aの第1領域16aは、薄肉部11に位置する部分も含んでいる。つまり、
図16に示すように、電極厚肉部37で構成された引出電極35aは、接続部25を含む厚肉部12と薄肉部11の一部に形成されている。
【0044】
本実施形態の振動素子1aの製造方法は、第1実施形態に係る振動素子1の製造方法と同じであり、ステップS4の保護膜形成工程は、金属層40上において、平面視で、パッド電極配置領域14と、薄肉部11及び接続部25,26に位置する第1領域16aと重なる領域とに、保護膜75を形成している。この工程により、電極厚肉部37で構成された引出電極35aを、接続部25,26を含む厚肉部12と薄肉部11の第1領域16aに形成することができる。
【0045】
このような構成とすることで振動素子1aは、電極薄肉部38で構成される引出電極35a,36aを短くすることができ、シート抵抗の増大を更に抑制することができる。従って、断線の虞がなく電気的接続信頼性に優れ、低CI値の振動素子1aを得ることができる。
【0046】
3.第3実施形態
3.1.振動素子
次に、第3実施形態に係る振動素子1bについて、
図17を参照して説明する。
【0047】
本実施形態の振動素子1bは、第1実施形態の振動素子1に比べ、基板10bの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
振動素子1bは、
図17に示すように、基板10bと、基板10b上に形成された電極部30と、を有している。
【0049】
振動素子1bの基板10bは、厚肉部12のY’方向プラス側の主面である表面は、薄肉部11bのY’方向プラス側の主面である表面よりもY’方向プラス側へ突出して設けられている。一方、厚肉部12のY’方向マイナス側の主面である裏面は、薄肉部11bのY’方向マイナス側の主面である裏面よりもY’方向マイナス側へ突出して設けられている。つまり、基板10bの表裏面に凹陥部74bを形成することによって、薄肉部11bが形成されている。そのため、製造方法において、前述した第1実施形態と比較して、凹陥部74bのエッチング深さを浅くでき、低コスト化が図れる。
【0050】
このような構成とすることで振動素子1bは、断線の虞がなく電気的接続信頼性に優れ、低コストの振動素子1bを得ることができる。
【0051】
4.第4実施形態
4.1.振動デバイス
次に、第4実施形態に係る振動デバイス2について、
図18を参照して説明する。尚、本説明では、前述した振動素子1を備えた振動デバイス2を一例として挙げ説明する。
【0052】
振動デバイス2は、
図18に示すように、振動素子1と、振動素子1を収容するパッケージ50と、パッケージ50と収容空間52を形成するリッド60と、を有している。
【0053】
パッケージ50は、第1面55に開放する凹部51を有し、第1面55に凹部51の開口を塞ぐリッド60が接合されている。パッケージ50の凹部51をリッド60で塞ぐことによって、振動素子1を収容する収容空間52が形成される。収容空間52は、減圧又は真空状態となっていてもよいし、窒素(Ni)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスが封入されていてもよい。
【0054】
パッケージ50の構成材料としては、特に限定されないが、酸化アルミニウム等の各種セラミックスを用いることができる。また、リッド60の構成材料としては、特に限定されないが、パッケージ50の構成材料と線膨張係数が近似する部材であると良い。尚、パッケージ50とリッド60の接合は、特に限定されず、例えば、接着剤を介して接合してもよいし、シーム溶接等により接合してもよい。
【0055】
パッケージ50の内底面53には、接続電極56,57が形成されている。また、パッケージ50の第2面54には、外部実装端子58,59が形成されている。接続電極56は、パッケージ50に形成された図示しない貫通電極を介して外部実装端子58と電気的に接続されており、接続電極57は、パッケージ50に形成された図示しない貫通電極を介して外部実装端子59と電気的に接続されている。
【0056】
収容空間52内に収容されている振動素子1は、厚肉部12のY’方向プラス側の主面をパッケージ50側に向けて、厚肉部12のマウント部において、導電性接着剤である接合材61によってパッケージ50に固定されている。接合材61は、接続電極56とパッド電極33とに接触して設けられている。これにより、接合材61を介して接続電極56とパッド電極33とが電気的に接続される。接合材61を用いて振動素子1を一カ所又は一点で支持することによって、例えば、パッケージ50と基板10の熱膨張率の差によって振動素子1に発生する応力を抑えることができる。
【0057】
振動素子1のパッド電極34は、ボンディングワイヤー62を介して接続電極57に電気的に接続されている。前述したように、パッド電極34は、パッド電極33と対向して配置されているため、振動素子1がパッケージ50に固定されている状態では、接合材61の直上に位置している。そのため、ワイヤーボンディング時にパッド電極34に与える超音波振動の漏れを抑制することができ、パッド電極34へのボンディングワイヤー62の接続をより確実に行うことができる。
【0058】
このような構成とすることで振動デバイス2は、励振電極31,32の厚みを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚みをシート抵抗が増大し難い厚みとした振動素子1を備えているので、良好な振動特性を有し、電気的信頼性に優れた振動デバイス2を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b…振動素子、2…振動デバイス、10…基板、11…薄肉部、12…厚肉部、13…励振電極配置領域、14…パッド電極配置領域、15…引出電極配置領域、16…第1領域、17…第2領域、21…第1外縁、22…第2外縁、23…第3外縁、24…第4外縁、25,26…接続部、30…電極部、31,32…励振電極、33,34…パッド電極、35,36…引出電極、37…電極厚肉部、38…電極薄肉部、40…金属層、41…第1電極層、42…第2電極層、50…パッケージ、51…凹部、52…収容空間、53…内底面、54…第2面、55…第1面、56,57…接続電極、58,59…外部実装端子、60…リッド、61…接合材、62…ボンディングワイヤー、71…下地膜、72…金属膜、73…保護膜、74…凹陥部、75…保護膜、T1,T2…厚さ、L…最大長さ、W…最大幅。