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特開2024-141380材料吐出装置、及び、三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141380
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】材料吐出装置、及び、三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20241003BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241003BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241003BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241003BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241003BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20241003BHJP
   B29C 45/46 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/386
B29C64/106
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/321
B29C45/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052984
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】轡田 康
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正章
【テーマコード(参考)】
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
4F206AA04
4F206AA11
4F206AA23
4F206AR14
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN03
4F206JN11
4F206JQ11
4F206JQ51
4F213AP05
4F213AR03
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】可塑化を行うための熱によって装置が膨張し、ロッドの動作が阻害されることを抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】材料吐出装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部の少なくとも一部を有する第1部分と、可塑化材料が流れる流路に連通するシリンダーと、シリンダー内をスライドするロッドと、可塑化材料を吐出するノズルと、有する第2部分と、第1部分に固定され、ロッドを動作させるモーターと、を備え、第1部分と第2部分とは第1方向に並び、ロッドは、第1方向に沿った移動が許容されるように、モーターの駆動軸と係合する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部の少なくとも一部を有する第1部分と、
前記可塑化材料が流れる流路に連通するシリンダーと、前記シリンダー内をスライドするロッドと、前記可塑化材料を吐出するノズルと、有する第2部分と、
前記第1部分に固定され、前記ロッドを動作させるモーターと、
を備え、
前記第1部分と前記第2部分とは第1方向に並び、
前記ロッドは、前記第1方向に沿った移動が許容されるように、前記モーターの駆動軸と係合する、
材料吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料吐出装置であって、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記第1方向に分離可能に構成され、
前記可塑化部は、
溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が形成されたバレルと、を備え、
前記第1部分は、前記スクリューを有し、
前記第2部分は、前記バレルを有する、材料吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の材料吐出装置であって、
前記バレル内に配置され、前記溝に供給された材料を加熱する第1加熱部と、
前記バレル内に配置され、前記溝の温度を検出する第1検出部と、を備え、
前記バレルには、前記第1加熱部を収容する第1孔と、前記第1検出部を収容する第2孔とが形成されており、
前記第1孔が延びる方向と、前記第2孔が延びる方向とは一致しており、
前記第1加熱部及び前記第1検出部は、固定部材を介して互いに連結されている、材料吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の材料吐出装置であって、
前記駆動軸は、前記駆動軸の回転軸に対して偏心した接続部を有し、
前記ロッドは、前記第1方向に沿ってくぼみ、前記接続部が係合する凹部が形成された係合部を有し、
前記モーターを制御して、前記回転軸を中心に前記接続部を回転させ、前記ロッドを前記シリンダー内でスライドさせることで、前記シリンダー内に前記可塑化材料を吸引する吸引動作と、吸引した前記可塑化材料を前記流路に送出する送出動作とを実行する制御部を有し、
前記凹部の深さは、前記第1部分及び前記第2部分の熱膨張によって前記ロッドが前記第1方向に変位した場合と変位しない場合との両方の場合において、前記接続部が前記凹部に係合する深さである、
材料吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の材料吐出装置であって、
前記モーターは、前記ロッドが前記シリンダー内で予め定められた位置に保持されるように動作し、
前記モーターのトルク値に基づいて、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を検知する制御部と、
前記ロッドを前記流路から離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備える材料吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の材料吐出装置と、
前記ノズルに対向して配置されたステージと、
を備える三次元造形装置。
【請求項7】
請求項6に記載の三次元造形装置であって、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記第1方向に分離可能に構成され、
前記第1部分は、第1連結部を有し、
第2連結部を有し、前記第1連結部と前記第2連結部とを連結させることで前記第1部分を吊り下げる支持部を備える、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料吐出装置、及び、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された材料送出装置は、可塑化部によって可塑化された材料が流れる流路内の圧力を検出する第1圧力検出部を備えている。流路にはシリンダーが接続されており、シリンダー内にはロッドが挿入される。第1圧力検出部は、ロッドを介して流路内の可塑化材料の圧力を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-3588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、可塑化を行うための熱によって装置が膨張し、ロッドが変位することでシリンダーに対するロッドの動作が阻害される場合があった。このような課題は、圧力を測定するためのロッドに限らず、例えば、流路内の材料を吸引するため、或いは、流路内に材料を送出するためのロッドについても同様に生じ得る課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、材料吐出装置が提供される。この材料吐出装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部の少なくとも一部を有する第1部分と、前記可塑化材料が流れる流路に連通するシリンダーと、前記シリンダー内をスライドするロッドと、前記可塑化材料を吐出するノズルと、有する第2部分と、前記第1部分に固定され、前記ロッドを動作させるモーターと、を備え、前記第1部分と前記第2部分とは第1方向に並び、前記ロッドは、前記第1方向に沿った移動が許容されるように、前記モーターの駆動軸と係合する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、上記材料吐出装置と、前記ノズルに対向して配置されたステージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
図2】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
図3】スクリューの概略構成を示す斜視図である。
図4】バレルの概略平面図である。
図5】バレル及び流路ブロックの側面図である。
図6】ヒーターユニットの斜視図である。
図7】可塑化部にヒーターユニットが接続された状態を示す図である。
図8】第1部分と第2部分が分離された状態の斜視図である。
図9】可動部及び材料吐出装置の斜視図である。
図10】材料吐出装置の側面図である。
図11】吸引機構及び圧力検知機構の構成を示す断面図である。
図12】第1ロッドの動作の説明図である。
図13】第2実施形態における射出成形装置の概略構成を示す説明図である。
図14】第2実施形態における材料吐出装置及び型締装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1及び図2は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。図1及び図2には、互いに直交するX,Y,Z方向を表す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。図1及び図2におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。Z方向は、「第1方向」に相当する。
【0009】
三次元造形装置100は、材料吐出装置10と、ステージ20と、位置変更部30と、ステージヒーター40と、制御部50と、を備える。
【0010】
制御部50は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部50は、1つ、又は、複数のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部50は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。なお、制御部50は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0011】
材料吐出装置10は、制御部50の制御下において、固体状態の材料を可塑化させてペースト状にした可塑化材料を、三次元造形物の基台となるステージ20上に吐出する。材料吐出装置10は、材料供給部11と、可塑化部12と、ノズル13と、を備える。材料吐出装置10をヘッドとも呼ぶ。
【0012】
三次元造形装置100は、材料吐出装置10として、第1材料吐出装置10aと、第2材料吐出装置10bと、を備える。第1材料吐出装置10aは、材料供給部11として第1材料供給部11aを備え、可塑化部12として第1可塑化部12aを備え、ノズル13として第1ノズル13aを備える。第2材料吐出装置10bは、材料供給部11として第2材料供給部11bを備え、可塑化部12として第2可塑化部12bを備え、ノズル13として第2ノズル13bを備える。第1材料吐出装置10aと第2材料吐出装置10bは、Y方向における位置が一致するようにX方向に並んで配置されている。第2材料吐出装置10bは、第1材料吐出装置10aの+X方向の位置に配置されている。第1材料吐出装置10aの構成と第2材料吐出装置10bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単に材料吐出装置10と呼ぶこともある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1材料吐出装置10aの構成部材には、符号「a」を付し、第2材料吐出装置10bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0013】
材料供給部11は、可塑化材料を生成するための材料を可塑化部12に供給する。材料供給部11は、例えば、ホッパーによって構成される。材料供給部11には、ペレット状や粉末状の材料が収容されている。材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)などの熱可塑性樹脂が用いられる。材料供給部11の下方には、材料供給部11と可塑化部12を接続する連通路15が設けられている。材料供給部11は、連通路15を介して、可塑化部12に材料を供給する。なお、図3以降の図では、可塑化部12の図示を適宜省略している。
【0014】
可塑化部12は、材料供給部11から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成し、ノズル13へと導く。ここで、「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0015】
可塑化部12は、スクリュー110と、スクリュー駆動モーター120と、バレル130と、吐出部140と、を備える。
【0016】
図2に示すように、スクリュー110は、下部ケース152内に収納されている。スクリュー110の上面側は、駆動軸121を介してスクリュー駆動モーター120に接続されている。スクリュー110は、スクリュー駆動モーター120が駆動軸121に駆動力を与えることによって、駆動軸121と一体として回転する。スクリュー110の回転軸RXは、駆動軸121の軸線と一致する。スクリュー110の回転軸RXの軸線方向は、Z方向に沿う方向である。スクリュー110の回転速度は、制御部50がスクリュー駆動モーター120の回転速度を制御することによって制御される。なお、スクリュー110は、減速機を介してスクリュー駆動モーター120によって駆動されてもよい。スクリュー110は、ローター、あるいは、フラットスクリューとも呼ばれる。駆動軸121は、下部ケース152の上方に位置する上部ケース151内に設けられている。
【0017】
バレル130は、スクリュー110の-Z方向側に設置されている。バレル130の上面である対向面131は、スクリュー110の下面である溝形成面111に対向している。バレル130の中心には、吐出部140の流路142に連通する連通孔132が形成されている。バレル130の内部には、後述するスクリュー110の溝113に供給された材料を加熱する第1加熱部201と、スクリュー110の溝113の温度を検出する第1検出部202が収容されている。バレル130の詳細については後述する。
【0018】
図3は、スクリュー110の概略構成を示す斜視図である。スクリュー110は、回転軸RXに沿った方向における長さが回転軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。溝形成面111には、中央部112を中心に、渦状の溝113が形成されている。溝113は、スクリュー110の側面に形成された材料投入口114に連通している。材料供給部11から供給される材料は、材料投入口114を通じて溝113に供給される。溝113は、凸条部115によって隔てられることにより形成されている。図3には、溝113が3本形成されている例を示しているが、溝113の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝113は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部112から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0019】
図4は、バレル130の概略平面図である。対向面131における連通孔132の回りには、複数の案内溝133が形成されている。それぞれの案内溝133は、その一端が連通孔132に接続され、連通孔132から対向面131の外周に向かって渦状に延びている。なお、案内溝133の一端は連通孔132に接続されていなくてもよい。また、バレル130には案内溝133が形成されていなくてもよい。
【0020】
スクリュー110の溝113に供給された材料は、スクリュー110の回転と第1加熱部201の加熱によって、溝113内において可塑化されながら、溝113に沿って流動し、可塑化材料としてスクリュー110の中央部112へ導かれる。中央部112に流入した流動性を発現しているペースト状の可塑化材料は、連通孔132を介して吐出部140に供給される。なお、可塑化部では、可塑化材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。可塑化材料は、可塑化材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0021】
図2に示す吐出部140は、流路ブロック141と、流路142と、流量調整部143と、吸引機構160と、圧力検知機構170とを備える。
【0022】
流路ブロック141は、バレル130の-Z方向側に設置されている。流路ブロック141には、流路142が形成されている。流路ブロック141の内部には、流路ブロック141を加熱する第2加熱部203と、流路ブロック141の温度を検出する第2検出部204と、が収容されている。流路ブロック141の詳細については後述する。
【0023】
ノズル13は、流路ブロック141の下端に設けられている。ノズル13は、流路142を通じてバレル130の連通孔132に接続されている。ノズル13は、可塑化部12において生成された可塑化材料を、ノズル13の先端の吐出口145からステージ20に向かって吐出する。
【0024】
流量調整部143は、流路142内で回転することにより流路142の開度を変化させる。流量調整部143は、バタフライバルブによって構成されている。流量調整部143は、制御部50によって制御される。制御部50は、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部12からノズル13に流れる可塑化材料の流量、つまり、ノズル13から吐出される可塑化材料の流量を調整する。流量調整部143は、可塑化材料の流量を調整するとともに、可塑化材料の流出のオン/オフを制御する。なお、流量調整部143は、シャッター機構を有し、シャッター機構によって流路142の開度を変化させることで、可塑化材料の流量を調整する構成であってもよい。
【0025】
吸引機構160は、流路142から可塑化材料を吸引する吸引動作と、吸引した可塑化材料を流路142に送出する送出動作と、を実行するための機構である。吸引動作が実行されることにより、可塑化材料がノズル13から糸を引くように垂れる尾引現象を抑制できる。また、送出動作が実行されることにより、ノズル13からの可塑化材料の送出の応答性を高めることができる。吸引機構160は、制御部50によって制御される。吸引機構160の具体的な構成については後述する。
【0026】
制御部50は、ノズル13からの可塑化材料の吐出を停止させる場合は、まず、流量調整部143を制御して可塑化材料の流出をオフにし、その後、吸引機構160を制御して可塑化材料を吸引する。ノズル13からの可塑化材料の吐出を再開させる場合は、吸引機構160によって吸引した可塑化材料を、吸引機構160を制御して送出した後に、流量調整部143を制御して可塑化材料の流出をオンにする。
【0027】
圧力検知機構170は、流路142内の可塑化材料の圧力を検知するために用いられる。制御部50は、圧力検知機構170を用いて流路142内の可塑化材料の圧力を検知する。圧力検知機構170の具体的な構成については後述する。
【0028】
ステージ20は、ノズル13の吐出口145に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル13からステージ20の造形面21に向けて可塑化材料を吐出させて造形層を積層することによって三次元造形物を造形する。
【0029】
位置変更部30は、ノズル13とステージ20との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、位置変更部30は、材料吐出装置10を積層方向であるZ方向に沿って移動させ、ステージ20を積層方向と交差する方向に移動させることによって、ノズル13とステージ20との相対的な位置を変化させる。より具体的には、本実施形態の位置変更部30は、材料吐出装置10をZ方向に沿って移動させることによって、Z方向におけるノズル13とステージ20との相対的な位置を変化させ、ステージ20をX方向及びY方向に移動させることによって、X方向及びY方向におけるノズル13とステージ20との相対的な位置を変化させる。図1に示すように、位置変更部30は、ステージ20をX方向に沿って移動させる第1電動アクチュエーター31と、ステージ20と第1電動アクチュエーター31とをY方向に沿って移動させる第2電動アクチュエーター32と、材料吐出装置10をZ方向に沿って移動させる第3電動アクチュエーター33とによって構成されている。第3電動アクチュエーター33は、第1材料吐出装置10a及び第2材料吐出装置10bが固定された可動部41をZ方向に沿って移動させることによって、第1材料吐出装置10a及び第2材料吐出装置10bをZ方向に沿って移動させる。なお、図2では、第3電動アクチュエーター33及び可動部41は省略されている。
【0030】
上述した第1電動アクチュエーター31と、第2電動アクチュエーター32と、第3電動アクチュエーター33は、制御部50の制御下で駆動される。なお、位置変更部30は、例えば、ステージ20をZ方向に移動させ、材料吐出装置10をX方向及びY方向に沿って移動させてもよいし、材料吐出装置10を移動させずにステージ20をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよいし、ステージ20を移動させずに材料吐出装置10をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。
【0031】
ステージヒーター40は、ステージ20に積層された可塑化材料を加熱する。ステージヒーター40は、可動部41に固定されている。ステージヒーター40は、材料吐出装置10とともに、第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。ステージヒーター40には、図2に示すように、Z方向に貫く開口42が設けられている。ノズル13は、可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき、開口42内に位置し、ノズル13の先端はZ方向においてステージヒーター40とステージ20との間に配置される。
【0032】
図5は、バレル130及び流路ブロック141の側面図である。バレル130には、第1加熱部201を収容する第1孔146と、第1検出部202を収容する第2孔147が形成されている。第1孔146が延びる方向と、第2孔147が延びる方向は一致している。すなわち、第1孔146に対する第1加熱部201の挿入方向と、第2孔147に対する第1検出部202の挿入方向は一致している。本実施形態では、第1孔146及び第2孔147が延びる方向は、Y方向である。本明細書では、「一致」とは、完全に一致せずに多少傾いている状態も許容するものとする。例えば、第1孔146の径が第1加熱部201の径よりも大きい場合、又は、第2孔147の径が第1検出部202の径よりも大きい場合は、第1孔146が延びる方向と、第2孔147が延びる方向は、多少傾いていてもよい。
【0033】
流路ブロック141には、第2加熱部203を収容する第3孔156と、第2検出部204を収容する第4孔157が形成されている。第3孔156が延びる方向と、第4孔157が延びる方向は一致している。すなわち、第3孔156に対する第2加熱部203の挿入方向と、第4孔157に対する第2検出部204の挿入方向と、は一致している。本実施形態では、第3孔156及び第4孔157が延びる方向は、Y方向である。第3孔156及び第4孔157が延びる方向は、第1孔146及び第2孔147が延びる方向と一致している。なお、図5には、流量調整部143を回転させるためのカップリング144が流路ブロック141の側面に配置されている状態が示されている。
【0034】
図6は、ヒーターユニット210の斜視図である。ヒーターユニット210は、第1加熱部201と、第1検出部202と、第2加熱部203と、第2検出部204と、固定部材205と、を有する。第1加熱部201と、第1検出部202と、第2加熱部203と、第2検出部204は、Y方向に沿う軸線を有する円柱形状であり、固定部材205から-Y方向に突出するように設けられている。第1加熱部201と、第1検出部202と、第2加熱部203と、第2検出部204は、それぞれ固定部材205に固定されており、固定部材205によって連結されている。固定部材205には、第1加熱部201、第1検出部202、第2加熱部203、第2検出部204の配線が収容されている。第1加熱部201と第2加熱部203は、例えば、ヒーターである。第1検出部202と第2検出部204は、例えば、熱電対である。第1加熱部201と、第1検出部202と、第2加熱部203と、第2検出部204は、ヒーターユニット210を可塑化部12に接続した場合に、第1加熱部201が第1孔146に挿入され、第1検出部202が第2孔147に挿入され、第2加熱部203が第3孔156に挿入され、第2検出部204が第4孔157に挿入される位置に設けられている。
【0035】
図7は、可塑化部12にヒーターユニット210が接続された状態を示す図である。ヒーターユニット210を可塑化部12に接続することにより、第1加熱部201が第1孔146に挿入され、第1検出部202が第2孔147に挿入され、第2加熱部203が第3孔156に挿入され、第2検出部204が第4孔157に挿入される。すなわち、ヒーターユニット210を可塑化部12に接続することにより、第1加熱部201及び第1検出部202がバレル130内に配置され、第2加熱部203及び第2検出部204が流路ブロック141内に配置される。
【0036】
図8は、材料吐出装置10に含まれる第1部分191と第2部分192が分離された状態の可塑化部12の斜視図である。材料吐出装置10は、第1部分191と第2部分192とを有する。第1部分191と第2部分192とは、Z方向に並ぶ。第1部分191は、第2部分の+Z方向側に位置する。第1部分191と第2部分192とは、第1方向に分離可能に構成されている。第1部分191は、可塑化部12の少なくとも一部を有する。具体的には、第1部分191は、スクリュー駆動モーター120と、駆動軸121と、上部ケース151と、スクリュー110と、を有する。第2部分192は、下部ケース152と、バレル130と、流路ブロック141と、ノズル13とを有する。ユーザーは、材料吐出装置10を、第1部分191と第2部分192とに分離することで、スクリュー110やバレル130のメンテナンスを行うことができる。
【0037】
第1部分191は、第1連結部214を有する。第1連結部214は、材料吐出装置10の上端に設けられている。第1連結部214は、開口215を有する板状の部材であり、スクリュー駆動モーター120に固定されている。
【0038】
図9は、可動部41及び材料吐出装置10の斜視図である。可動部41には、支持部211が固定されている。支持部211は、材料吐出装置10の+Y方向側かつ+Z方向側に設けられている。支持部211は、材料吐出装置10の第1部分191を吊り下げる。図9には、第1材料吐出装置10aの第1部分191aが支持部211に吊り下げられた状態が示されている。支持部211は、バネ212と、第2連結部213と、を有する。バネ212は、例えば、板ばねである。バネ212は、定荷重ばねであることが好ましい。第2連結部213は、バネ212の下端に固定された、第1部分191を吊り下げる部材である。第2連結部213は、例えば、フックである。
【0039】
第1部分191と第2部分192とが分離された際には、第1部分191は、第2連結部213が第1連結部214の開口215に引っかかることによって、支持部211に吊り下げられる。こうすることで、ユーザーは、スクリュー110やバレル130を容易にメンテナンスできる。
【0040】
図10は、材料吐出装置10の側面図である。上述したように、材料吐出装置10は、吸引機構160と圧力検知機構170とを備えている。第1部分191に含まれる上部ケース151の-Y方向側の側面には、モーター支持部材180が固定されている。モーター支持部材180は、吸引機構160の動作に用いられる第1モーター161と、圧力検知機構170の動作に用いられる第2モーター171とを支持する。このモーター支持部材180により、第1モーター161と第2モーター171とは、第1部分191に固定されている。第1モーター161の回転軸RX1と第2モーター171の回転軸RX2とは、Z方向に沿っている。なお、第1部分191及び第2部分192を挟んで吸引機構160及び圧力検知機構170の反対側には、流量調整部143を回転させるための流量調整モーター181が設けられている。流量調整モーター181の回転力は、カップリング144を介して流路ブロック141内に設けられた流量調整部143に伝達される。
【0041】
図11は、吸引機構160及び圧力検知機構170の構成を示す断面図である。吸引機構160は、第1シリンダー162と第1ロッド163とを有する。第1シリンダー162と第1ロッド163とは、第2部分192のうちの流路ブロック141に備えられている。第1シリンダー162は、可塑化材料が流れる流路142に連通する。本実施形態では、第1シリンダー162は、流量調整部143よりも下流で流路142に連通している。第1シリンダー162は、流路142が延びる方向に直交するY方向に沿って設けられている。第1シリンダー162の先端は、流路142に接続され、第1シリンダー162の後端は、流路ブロック141の外部に露出している。第1ロッド163は、第1シリンダー162内をスライドする。第1ロッド163の先端部は、第1シリンダー162内に配置され、第1ロッド163の後端部は、第1モーター161の下方付近に位置する。第1シリンダー162は第1スリーブとも呼ばれ、第1ロッド163は第1プランジャーとも呼ばれる。
【0042】
第1モーター161の第1駆動軸164は、第1駆動軸164の回転軸RX1に対して偏心した第1接続部165を備える。第1接続部165は、例えば、カムフォロアーやローラーフォロアーによって構成される。第1ロッド163は、その後端付近に係合部166を有する。係合部166には、Z方向に沿ってくぼみ、第1接続部165が係合する凹部167が形成されている。
【0043】
図12は、第1ロッド163の動作の説明図である。図12には、第1ロッド163と係合部166と第1接続部165とを-Z方向に見た状態が示されている。図12に示されているように、係合部166には、X方向に沿って凹部167が形成されている。
【0044】
図12の上部には、第1駆動軸164の回転軸RX1に対して、第1接続部165が、+Y方向に偏心した状態を示している。制御部50が、この状態から、第1駆動軸164を時計回りに90度回転させると、図12の中央部に示すように、回転軸RX1を中心に第1接続部165が回転して凹部167内で移動することで、第1ロッド163は、-Y方向に移動する。更に、制御部50が、第1駆動軸164を時計回りに90度回転させると、図12の下部に示すように、第1接続部165が凹部167内で移動することで、第1ロッド163は、更に、-Y方向に移動する。制御部50は、第1モーター161を制御して、第1駆動軸164に備えられた第1接続部165を、回転軸RX1を中心に回転させることで、第1ロッド163を第1シリンダー162内でスライドさせ、上述した吸引動作と送出動作とを実行する。
【0045】
図11に示すように、本実施形態では、第1ロッド163は、その先端部が第1シリンダー162によって支持されており、第1シリンダー162よりも後端側は支持されていない。第1ロッド163に備えられた係合部166には、+Z方向に開口する凹部167が設けられており、凹部167には、第1駆動軸164から-Z方向に突出する第1接続部165が入り込む。このような構造によれば、第1ロッド163は、Z方向に沿った移動が許容されるように、第1モーター161の第1駆動軸164と係合する。凹部167の深さDは、第1部分191及び第2部分192の熱膨張によって第1ロッド163がZ方向に変位した場合と変位しない場合との両方の場合において、第1接続部165が凹部167に係合する深さに設定されている。第1部分191及び第2部分192の熱膨張による第1ロッド163のZ方向の変位量とは、本実施形態では、室温における第1ロッド163のZ方向の位置を基準として、第1加熱部201、第2加熱部203、ステージヒーター40をそれぞれ定格上の最大温度で動作させたときの第1ロッド163のZ方向の変位量である。変位量は、例えば、300~500μmである。
【0046】
圧力検知機構170は、第2シリンダー172と第2ロッド173とを有する。第2シリンダー172と第2ロッド173とは、第2部分192に備えられている。第2シリンダー172は、可塑化材料が流れる流路142に連通する。本実施形態では、第2シリンダー172は、流量調整部143よりも上流で流路142に連通している。第2シリンダー172は、流路142が延びる方向に直交するY方向に沿って設けられている。第2シリンダー172の先端は、流路142に接続され、第2シリンダー172の後端は、流路ブロック141の外部に露出している。第2ロッド173は、第2シリンダー172内をスライドする。第2ロッド173の先端部は、第2シリンダー172内に配置され、第2ロッド173の後端部は、第2モーター171の下方付近に位置する。第2ロッド173の中央部は、下部ケース152に固定されたステー182の貫通孔183に挿通されている。第2ロッド173は、貫通孔183内において、Y方向にスライド移動可能である。第2シリンダー172は第2スリーブとも呼ばれ、第2ロッド173は第2プランジャーとも呼ばれる。
【0047】
第2モーター171の第2駆動軸174は、第2駆動軸174の回転軸RX2に対して偏心した第2接続部175を備える。第2接続部175は、例えば、カムフォロアーやローラーフォロアーによって構成される。図11では、第2接続部175は、回転軸RX2の中心に対して、+X方向に偏心している。第2接続部175の側面には、+Y方向側から第2ロッド173の後端が接触する。このような構成により、第2ロッド173は、Z方向に沿った移動が許容されるように、第2モーター171の第2駆動軸174と係合する。第2接続部175のZ方向に沿った長さLは、第1部分191及び第2部分192の熱膨張によって第2ロッド173がZ方向に変位した場合と変位しない場合との両方の場合において、第2ロッド173の後端が第2接続部175の側面に接触する長さに設定されている。
【0048】
第2ロッド173は、小径部177と、小径部177よりも直径の大きい大径部178とを備える。大径部178は、小径部177の-Y方向側に位置する。小径部177は、第2シリンダー172に挿通される。小径部177の長さは、第2シリンダー172の長さよりも大きい。小径部177には、付勢部材176が挿通されている。付勢部材176は、第2シリンダー172と大径部178との間に位置する。付勢部材176は、例えば、コイルバネである。付勢部材176は、第2ロッド173を流路142から離れる方向に付勢する。これにより、第2接続部175の側面には常に第2ロッド173の後端が接触し、第2駆動軸174には、常に一定以上のトルクが第2ロッド173から加えられる。
【0049】
第2モーター171は、第2ロッド173が第2シリンダー172内の予め定められた位置に保持されるように動作する。このような動作を実現する機能のことを、サーボロック機能という。この動作により、第2モーター171は、流路142内の可塑化材料の圧力によって、第2ロッド173が第2シリンダー172内を移動しないように、第2駆動軸174の回転位置を保持する。つまり、第2モーター171は、可塑化材料の圧力によって第2ロッド173が移動しないように第2ロッド173を動作させる。このような動作では、第2ロッド173が流路142及び付勢部材176から受ける力が大きくなるほど、その力を打ち消すように、第2モーター171が第2駆動軸174に付加するトルクが大きくなる。そのため、制御部50は、第2モーター171のトルク値すなわち電流値に応じて、流路142内の圧力を検知できる。
【0050】
以上で説明した第1実施形態によれば、ロッド163,173は、それぞれ、Z方向に沿った移動が許容されるように、モーター161,171の駆動軸164,174と係合している。そのため、材料吐出装置10が備える第1部分191と第2部分192とが、可塑化材料の生成に伴ってZ方向に熱膨張することにより、ロッド163,173がZ方向に変位した場合であっても、ロッド163,173のシリンダー162,172に対する動作が、駆動軸164,174によって阻害されることがない。
【0051】
特に、本実施形態では、第1モーター161の第1駆動軸164が係合する、第1ロッド163に備えられた係合部166の凹部167の深さは、第1部分191及び第2部分192の熱膨張によって第1ロッド163が凹部167の深さ方向に変位した場合と変位しない場合の両方の場合で、凹部167に第1接続部165が係合する深さに設定されている。そのため、第1部分191と第2部分192とが熱膨張した場合でも、吸引機構160によって可塑化材料の吸引動作と送出動作とを確実に実行できる。
【0052】
また、本実施形態では、係合部166の凹部167に、上方から、第1駆動軸164に備えられた第1接続部165が入り込むだけで第1ロッド163と第1駆動軸164とが係合している。そのため、第1モーター161がモーター支持部材180に支持された状態のまま、第1モーター161を取り外すことなく、第1部分191と第2部分192とをZ方向に分離できる。また、第2ロッド173も、第2駆動軸174の第2接続部175に対して側方から接触しているだけであるため、第1部分191と第2部分192とを分離する際に、第2モーター171を取り外す必要がない。そのため、材料吐出装置10を容易にメンテナンスできる。
【0053】
また、本実施形態では、材料吐出装置10に備えられた第1部分191と第2部分192とは、Z方向に分離可能に構成されている。第1部分191は、スクリュー110を有し、第2部分192は、バレル130を有しているので、第1部分191と第2部分192とを分離することで、スクリュー110及びバレル130を容易にメンテナンスできる。
【0054】
また、本実施形態では、バレル130には、第1加熱部201を収容する第1孔146と、第1検出部202を収容する第2孔147とが形成されており、第1孔146が延びる方向と、第2孔147が延びる方向とは一致している。そして、ヒーターユニット210は、第1加熱部201と第1検出部202とを有し、これらは、固定部材205を介して互いに連結されている。そのため、第1加熱部201と第1検出部202とを材料吐出装置10に対して同時に取り外し或いは取り付けできるので、材料吐出装置10を容易にメンテナンスできる。
【0055】
更に、本実施形態では、流路ブロック141に、第2加熱部203を収容する第3孔156と、第2検出部204を収容する第4孔157が形成されており、第3孔156及び第4孔157が延びる方向は、バレル130に形成された第1孔146及び第2孔147と一致している。また、ヒーターユニット210は、第2加熱部203と第2検出部204とを有しており、これらは、固定部材205によって、第1加熱部201及び第2検出部204と互いに連結されている。そのため、第1加熱部201と第1検出部202とに加え、第2加熱部203と第2検出部204とを材料吐出装置10に対して同時に取り外し或いは取り付けできるので、材料吐出装置10を容易にメンテナンスできる。
【0056】
また、本実施形態では、第2モーター171が、第2ロッド173を第2シリンダー172内の所定の位置に保持し、制御部50は、第2モーター171のトルク値に基づいて、流路142内の可塑化材料の圧力を検知する。そして、材料吐出装置10には、第2ロッド173を流路142から離れる方向に付勢する付勢部材176が備えられている。このような構成によれば、第2モーター171の第2駆動軸174には第2ロッド173が常に接触した状態になるため、流路142内の圧力を精度よく検知できる。特に、小さな圧力を測定する場合には、付勢部材176がないと、第2ロッド173の第2駆動軸174への接触状態が不安定になる。そのため、付勢部材176が設けられることで、特に、小さな圧力を精度よく検知できるようになる。
【0057】
また、例えば、第2ロッド173と第2シリンダー172との間に可塑化材料が入り込むと、第2ロッド173と第2シリンダー172との間の摩擦力が大きくなり、制御部50は、流路142内の圧力を正確に検知できなくなる。しかし、本実施形態では、付勢部材176によって、第2モーター171に常に一定のトルクが付加されているので、圧力の検知不良が、第2ロッド173と第2シリンダー172との間の摩擦力増加によるものであるのか否かを容易に判断できる。このような効果は、以下の原理によって説明することができる。
【0058】
流路142内の圧力をP(N/mm2)、第2ロッド173の先端面の面積をA(mm2)、付勢部材176の付勢力をK(N)、第2駆動軸174の角度をθ(°)=0°、摩擦係数をμ、第2モーター171のトルク値をT(N/mm)、第2接続部175の偏心量をr(mm)とすると、第2モーター171が第2ロッド173の位置を所定の位置に保持する場合、以下の式(1)が成り立つ。
【0059】
[Fcos(90-θ)+K](1-μ)=T/r ・・・(1)
【0060】
ここで、付勢部材176を設けない場合における以下の4つの条件を検討する。付勢部材176が存在しないため、K=0となり、
1-a)P=0、μ=0のとき、T=0%
1-b)P=0、μ=0.5のとき、T=0%
1-c)P=10、μ=0のとき、T=50%
1-d)P=10、μ=0.5のとき、T=25%
となる。なお、P、μの値は一例である。
【0061】
1-d)の条件では、1-c)の条件に対して、トルクTが減少している。しかし、その原因が、摩擦力によるものなのか、その他の要因によるものなのかは、トルクTの値だけでは判断できない。これは、圧力Pが0のとき、摩擦係数μがどのような値でも、トルクTが0であるためである。
【0062】
これに対して、付勢部材176を設けた場合、K=x(x>0)となり、上記の4つの条件は、例えば、
2-a)P=0、μ=0のとき、T=5%
2-b)P=0、μ=0.5のとき、T=2.5%
2-c)P=10、μ=0のとき、T=55%
2-d)P=10、μ=0.5のとき、T=27.5%
となる。
【0063】
2-a)及び2-b)の条件によれば、圧力Pが0の場合でもトルクTが発生し、摩擦が生じていれば、トルクTが減少することがわかる。そのため、2-d)の条件においてトルクTが減少した場合、2-b)の結果から、それが摩擦によるものであると判断できる。
【0064】
以上より、材料吐出装置10に付勢部材176が備えられることで、制御部50は、圧力の検知不良が、第2ロッド173と第2シリンダー172との間の摩擦力によるものであるのか否かを容易に判断できる。
【0065】
B.第2実施形態:
図13は、第2実施形態における射出成形装置400の概略構成を示す説明図である。射出成形装置400は、材料供給部11と、材料吐出装置10bと、ノズル13と、型締装置410と、プランジャー機構420と、制御部50bと、ヒーターユニット210と、支持部211と、を備える。本実施形態において、第1実施形態と同一の符号が付された要素は、第1実施形態と同一のものである。
【0066】
図14は、第2実施形態における材料吐出装置10b及び型締装置410の断面図である。材料吐出装置10bは、スクリュー110と、スクリュー駆動モーター120と、バレル130と、第1連結部214と、を備える。
【0067】
材料吐出装置10bは、更に、流路ブロック141と、流路142と、逆止弁406と、プランジャー機構420と、を備える。逆止弁406は、流路ブロック141の流路142中に設けられており、ノズル13側からスクリュー110側への可塑化材料の逆流を防止する。
【0068】
プランジャー機構420は、第3シリンダー421と、第3ロッド422と、第3モーター423と、を有する。第3モーター423は、モーター支持部材180によって材料吐出装置10bの第1部分191に固定されている。第3シリンダー421と第3ロッド422とは、第2部分192に備えられている。第3シリンダー421は、可塑化材料が流れる流路142に連通する。第3シリンダー421は、流路142が延びる方向に直交するY方向に沿って設けられている。第3シリンダー421の先端は、流路142に接続される。第3ロッド422は、第3シリンダー421内をスライドする。第3ロッド422の先端部は、第3シリンダー421内に配置され、第3ロッド422の後端部は、第3モーター423の下方付近に位置する。
【0069】
第3モーター423の第3駆動軸424は、第3駆動軸424の回転軸RX3に対して偏心した第3接続部425を備える。第3接続部425は、例えば、カムフォロアーやローラーフォロアーによって構成される。第3ロッド422の後端付近には、係合部426が備えられている。係合部426は、第3接続部425が係合する凹部427を有している。
【0070】
プランジャー機構420は、第3シリンダー421内の可塑化材料を、成形型411に射出注入する機能を有する。第3ロッド422は、第3モーター423によって駆動され、第3シリンダー421の内部を流路142から離れる方向に移動して、第3シリンダー421内に可塑化材料を吸引して計量する。その後、第3ロッド422は、第3シリンダー421の内部を流路142に近づく方向に移動して、流路142に可塑化材料を送出する。流路142に送出された可塑化材料は、ノズル13に圧送され、ノズル13から成形型411に射出される。
【0071】
バレル130には、第1実施形態と同様に、第1孔146と第2孔147が形成されている。流路ブロック141には、第1実施形態と同様に、第3孔156と第4孔157が形成されている。図6に示されたヒーターユニット210を材料吐出装置10bに接続することにより、第1加熱部201が第1孔146に挿入され、第1検出部202が第2孔147に挿入され、第2加熱部203が第3孔156に挿入され、第2検出部204が第4孔157に挿入される。
【0072】
材料吐出装置10bは、第1実施形態と同様に、第1部分191と第2部分192に分離可能に構成されている。第1連結部214は、第1実施形態と同様に、材料吐出装置10bの上端に設けられている。材料吐出装置10bのその他の構成は第1実施形態における材料吐出装置10bと同様である。
【0073】
成形型411は、固定型412と可動型413から構成される。固定型412は、材料吐出装置10bに固定されている。可動型413は、型締装置410により固定型412に対して型締め方向に進退可能に設けられている。材料吐出装置10bによって生成された可塑化材料は、ノズル13から固定型412と可動型413によって区画されるキャビティーに射出される。成形型411は、金属製でもよいし、樹脂製でもよいし、セラミック製でもよい。
【0074】
型締装置410は、型駆動部414を備える。型駆動部414は、モーターやギア等によって構成され、ボールネジ415を介して可動型413に接続されている。型締装置410は、制御部50bの制御下で型駆動部414を駆動することによって、ボールネジ415を回転させ、可動型413を固定型412に対して移動させて成形型411を開閉させる。
【0075】
図13に示すように、支持部211は、射出成形装置400の基台401上に固定されている。支持部211は、第1実施形態と同様に、バネ212の下端に固定された第2連結部213が材料吐出装置10bの第1連結部214の開口215に引っかけられることによって、材料吐出装置10bの第1部分191を吊り下げる。
【0076】
以上で説明した第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、可塑化に伴う装置の熱膨張が、第3ロッド422の動作を阻害することを抑制できる。なお、第2実施形態の射出成形装置400は、第1実施形態の三次元造形装置100と同様に、圧力検知機構170を備えてもよい。
【0077】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態では、第1部分191と第2部分192とが分離可能に構成されている。これに対して、第1部分191と第2部分192とは分離不能であってもよい。
【0078】
(C2)上記実施形態の三次元造形装置100及び射出成形装置400は、分離された第1部分191を吊り下げるための第1連結部214、第2連結部213及び支持部211を備えている。これに対して、三次元造形装置100及び射出成形装置400は、第1連結部214、第2連結部213及び支持部211を備えていなくてもよい。
【0079】
(C3)上記実施形態では、第1部分191にスクリュー110が備えられ、第2部分192にバレル130が備えられている。第1部分191と第2部分192とはこのような構成に限らず、例えば、第1部分191にスクリュー110とバレル130とが備えられ、第2部分192にはバレル130が備えられていなくてもよい。
【0080】
(C4)上記実施形態では、ヒーターユニット210が可塑化部12に対して取り外し可能に構成されている。これに対して、ヒーターユニット210は可塑化部12から取り外し不能であってもよい。また、ヒーターユニット210を構成する各加熱部及び各検出部は、固定部材205によって連結されていなくてもよい。
【0081】
(C5)上記実施形態では、材料吐出装置10は、第2ロッド173を流路142から離れる方向に付勢する付勢部材176を備えている。これに対して、材料吐出装置10は、付勢部材176を備えない構成とすることも可能である。
【0082】
(C6)上記実施形態では、三次元造形装置100に、2つの材料吐出装置10が備えられている。これに対して、三次元造形装置100には、1つ又は3つ以上の材料吐出装置10を備えてもよい。
【0083】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0084】
(1)本開示の第1の形態によれば、材料吐出装置が提供される。この材料吐出装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部の少なくとも一部を有する第1部分と、前記可塑化材料が流れる流路に連通するシリンダーと、前記シリンダー内をスライドするロッドと、前記可塑化材料を吐出するノズルと、有する第2部分と、前記第1部分に固定され、前記ロッドを動作させるモーターと、を備え、前記第1部分と前記第2部分とは第1方向に並び、前記ロッドは、前記第1方向に沿った移動が許容されるように、前記モーターの駆動軸と係合する。このような形態によれば、可塑化に伴う装置の熱膨張が、ロッドの動作を阻害することを抑制できる。
【0085】
(2)上記形態の材料吐出装置において、前記第1部分と前記第2部分とは、前記第1方向に分離可能に構成され、前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が形成されたバレルと、を備え、前記第1部分は、前記スクリューを有し、前記第2部分は、前記バレルを有してもよい。このような形態によれば、スクリュー又はバレルのメンテナンス作業を容易にできる。
【0086】
(3)上記形態の材料吐出装置において、前記バレル内に配置され、前記溝に供給された材料を加熱する第1加熱部と、前記バレル内に配置され、前記溝の温度を検出する第1検出部と、を備え、前記バレルには、前記第1加熱部を収容する第1孔と、前記第1検出部を収容する第2孔とが形成されており、前記第1孔が延びる方向と、前記第2孔が延びる方向とは一致しており、前記第1加熱部及び前記第1検出部は、固定部材を介して互いに連結されてもよい。このような形態によれば、第1加熱部と第1検出部とを装置に対して同時に取り外し或いは取り付けできるので、装置を容易にメンテナンスできる。
【0087】
(4)上記形態の材料吐出装置において、前記駆動軸は、前記駆動軸の回転軸に対して偏心した接続部を有し、前記ロッドは、前記第1方向に沿ってくぼみ、前記接続部が係合する凹部が形成された係合部を有し、前記モーターを制御して、前記回転軸を中心に前記接続部を回転させ、前記ロッドを前記シリンダー内でスライドさせることで、前記シリンダー内に前記可塑化材料を吸引する吸引動作と、吸引した前記可塑化材料を前記流路に送出する送出動作とを実行する制御部を有し、前記凹部の深さは、前記第1部分及び前記第2部分の熱膨張によって前記ロッドが前記第1方向に変位した場合と変位しない場合との両方の場合において、前記接続部が前記凹部に係合する深さでもよい。このような形態によれば、装置が熱膨張した場合でも、可塑化材料の吸引動作と送出動作とを確実に実行できる。
【0088】
(5)上記形態の材料吐出装置において、前記モーターは、前記ロッドが前記シリンダー内で予め定められた位置に保持されるように動作し、前記モーターのトルク値に基づいて、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を検知する制御部と、前記ロッドを前記流路から離れる方向に付勢する付勢部材と、を備えてもよい。このような形態によれば、流路内の圧力を精度よく検知できる。
【0089】
(6)本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、上記材料吐出装置と、前記ノズルに対向して配置されたステージと、を備える。
【0090】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記第1部分と前記第2部分とは、前記第1方向に分離可能に構成され、前記第1部分は、第1連結部を有し、第2連結部を有し、前記第1連結部と前記第2連結部とを連結させることで前記第1部分を吊り下げる支持部を備えてもよい。このような形態によれば、第1部分を支持部に吊り下げることができるので、三次元造形装置を容易にメンテナンスできる。
【0091】
本開示は、上述した材料吐出装置や三次元造形装置に限らず、材料吐出装置を備える射出成形装置や、材料吐出方法など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…材料吐出装置、11…材料供給部、12…可塑化部、13…ノズル、15…連通路、20…ステージ、21…造形面、30…位置変更部、31…第1電動アクチュエーター、32…第2電動アクチュエーター、33…第3電動アクチュエーター、40…ステージヒーター、41…可動部、42…開口、50…制御部、100…三次元造形装置、110…スクリュー、111…溝形成面、112…中央部、113…溝、114…材料投入口、115…凸条部、120…スクリュー駆動モーター、121…駆動軸、130…バレル、131…対向面、132…連通孔、133…案内溝、140…吐出部、141…流路ブロック、142…流路、143…流量調整部、144…カップリング、145…吐出口、146…第1孔、147…第2孔、151…上部ケース、152…下部ケース、156…第3孔、157…第4孔、160…吸引機構、161…第1モーター、162…第1シリンダー、163…第1ロッド、164…第1駆動軸、165…第1接続部、166…係合部、167…凹部、170…圧力検知機構、171…第2モーター、172…第2シリンダー、173…第2ロッド、174…第2駆動軸、175…第2接続部、176…付勢部材、177…小径部、178…大径部、180…モーター支持部材、181…流量調整モーター、182…ステー、183…貫通孔、191…第1部分、192…第2部分、201…第1加熱部、202…第1検出部、203…第2加熱部、204…第2検出部、205…固定部材、210…ヒーターユニット、211…支持部、212…バネ、213…第2連結部、214…第1連結部、215…開口、400…射出成形装置、401…基台、406…逆止弁、410…型締装置、411…成形型、412…固定型、413…可動型、414…型駆動部、415…ボールネジ、420…プランジャー機構、421…第3シリンダー、422…第3ロッド、423…第3モーター、424…第3駆動軸、425…第3接続部、426…係合部、427…凹部
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