(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141384
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フレキシブルダイパンチおよびマージナル孔付きラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20241003BHJP
B26F 1/38 20060101ALI20241003BHJP
B26F 1/00 20060101ALI20241003BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B26F1/44 H
B26F1/38 A
B26F1/44 E
B26F1/00 G
B26D7/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052988
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】関 圭輔
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021FD05
3C060AA01
3C060AA04
3C060AB01
3C060BA03
3C060BA07
3C060BB06
3C060BB19
3C060BB20
3C060BC08
3C060BC11
3C060BC26
3C060BD03
3C060BG17
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】円形のカスを多数発生させずにマージナル孔を形成できる技術を提供する。
【解決手段】フレキシブルダイパンチ1は、所定の軸線Xを中心に湾曲したシート状であり、凸状の第一面10a上に平面視環状の稜線を有する抜き刃21が軸線Xまわりに複数並んだ抜き部20を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線を中心に湾曲したシート状であり、
凸状の第一面上に平面視環状の稜線を有する抜き刃が前記軸線まわりに複数並んだ抜き部を有する、
フレキシブルダイパンチ。
【請求項2】
前記湾曲の強さを変更できる程度の可撓性を有する、
請求項1に記載のフレキシブルダイパンチ。
【請求項3】
前記抜き部は、少なくとも前記軸線が延びる方向の両側に、1つずつ設けられている、
請求項1に記載のフレキシブルダイパンチ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のフレキシブルダイパンチを用いたマージナル孔付きラベルの製造方法であって、
孔あけ装置のローラの外周面に沿わせて前記フレキシブルダイパンチを取り付けるステップAと、
ラベル層と、粘着層と、セパレータとを有し、前記ラベル層に設けられた切込みにより複数のラベルが形成された原反の前記セパレータに前記抜き刃を押し当てて、複数のマージナル孔を形成するステップBと、
前記ラベル層のうち、前記ラベル以外の部分をカスとして前記セパレータから剥離し、前記マージナル孔内の前記セパレータを、前記カスに貼りついた状態で前記カスとともに除去するステップCと、
を備える、
マージナル孔付きラベルの製造方法。
【請求項5】
前記ローラが磁性を有し、
前記フレキシブルダイパンチが鉄を含有し、
前記ステップAにおいて、前記フレキシブルダイパンチが磁力により前記ローラに保持される、
請求項4に記載のマージナル孔付きラベルの製造方法。
【請求項6】
前記ステップCにおいて、一続きとなった1枚のカスが剥離される、
請求項4に記載のマージナル孔付きラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マージナル孔を形成するためのフレキシブルダイパンチに関する。このフレキシブルダイパンチを用いたマージナル孔付きラベルの製造方法にも言及する。
【背景技術】
【0002】
複数のラベルが連続して設けられたラベルロール等において、左右方向両端にパンチ等で形成したマージナル孔の列を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなラベルロールは、プリンター等のピントラクターをマージナル孔に通すことにより、空回りを抑制しつつラベルを繰り出して印刷することができる。
【0003】
マージナル孔つきラベルは、剥離紙(セパレータ)にラベルが仮着された原反に、パンチを用いて多数のマージナル孔を形成することにより製造される。特許文献2には、この用途に用いる装置が開示されている。
【0004】
特許文献2に記載の装置は、対向配置されたピン車および孔車を備える。ピン車および孔車を回転させつつ、ピン車と孔車との間に原反を通すと、ピン車のピンが孔車に取り付けられたダイスの孔に進入することにより、原反にマージナル孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-63254号公報
【特許文献2】実開昭53-61890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の装置では、ピンとダイスとの間に発生する剪断力でラベルおよびセパレータを切り裂くことにより、ピンが原反を貫通してマージナル孔が形成される。マージナル孔の形成により生じた円形のカスは、ピンに押されて一旦ダイス内に進入し、ピンがダイスから抜けた後に下方にあるゴミ箱に落下して回収される。
しかし、カスの寸法はダイスの孔と概ね同じ大きさであるため、ダイスからスムーズに落下しない場合がある。この場合、意図しないタイミングでダイス外に出ることでカスがラベル上に落下することがある。ラベル上に落下したカスは、後工程で行われるラベルへの印刷不良の原因となる。
【0007】
特許文献2に記載の装置では、ダイスに対するピンの挿抜が多数回繰り返されるため、上記のカスが発生しない場合でも、細かな紙粉が発生してラベル上に落下する場合もある。この紙粉も、印刷不良の原因となる。
【0008】
特許文献2に記載の装置では、ピンが原反を貫通する際に比較的大きな抵抗が発生するため、ピンおよびダイスが消耗しやすい。その結果、稼働時間が長くなるにつれて形成されるマージナル孔の形状が不整となりやすく、これを解消するためにピンおよびダイスの交換頻度が高くなるという問題もある。
【0009】
さらに、特許文献2に記載の装置で両側のマージナル孔列を一度に形成する場合、左右のピン車および孔車の距離を適切に調節する必要がある。この作業は原反の寸法が変わるたびに行う必要があり、煩雑である。
【0010】
上記事情を踏まえ、本発明は、円形のカスを多数発生させずにマージナル孔を形成できる技術を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、簡便にマージナル孔付きラベルを製造できるマージナル孔付きラベルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、所定の軸線を中心に湾曲したシート状であり、凸状の第一面上に平面視環状の稜線を有する抜き刃が軸線まわりに複数並んだ抜き部を有するフレキシブルダイパンチである。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るフレキシブルダイパンチを用いたマージナル孔付きラベルの製造方法である。
この製造方法は、孔あけ装置のローラの外周面に沿わせてフレキシブルダイパンチを取り付けるステップAと、ラベル層と、粘着層と、セパレータとを有し、ラベル層に設けられた切込みにより複数のラベルが形成された原反のセパレータに抜き刃を押し当てて、複数のマージナル孔を形成するステップBと、ラベル層のうち、ラベル以外の部分をカスとしてセパレータから剥離し、マージナル孔内のセパレータを、カスに貼りついた状態でカスとともに除去するステップCとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、円形のカスを多数発生させずに原反にマージナル孔を形成でき、簡便にマージナル孔付きラベルを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブルダイパンチを示す斜視図である。
【
図5】同フレキシブルダイパンチを用いたマージナル孔付きラベルの製造方法の一過程を示すである。
【
図6】同フレキシブルダイパンチを用いたマージナル孔付きラベルの製造方法の一過程を示すである。
【
図7】完成したマージナル孔付きラベルの一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の変形例に係るフレキシブルダイパンチを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るフレキシブルダイパンチ1を示す斜視図である。フレキシブルダイパンチ1は、一定の剛性を有して一方向に湾曲したシート状の部材である。本実施形態のフレキシブルダイパンチ1は、平坦にした状態において長方形であり、長辺2が所定の軸線Xを中心に湾曲することにより、円柱あるいは円筒の外周面の一部をなす形状を有する。換言すれば、フレキシブルダイパンチ1は、所定の軸線Xを中心とする、樋状もしくはハーフパイプ状である。
【0016】
フレキシブルダイパンチ1の材質は、所望の剛性を有している限り特に制限されない。本実施形態において、フレキシブルダイパンチ1は、ステンレス鋼で形成されており、各種ステンレス鋼を用いることができる。
【0017】
フレキシブルダイパンチ1は、凸状の第一面10aと、凹状の第二面10bとを有し、撓ませることにより湾曲の強さ(曲率半径)を一定範囲で変更することができる。このような可撓性を実現するフレキシブルダイパンチ1の厚さは、例えば後述する抜き刃を除いて0.1から0.15mm程度である。
【0018】
フレキシブルダイパンチ1の第一面10aには、平面視円環状の抜き刃21が長手方向にならんだ抜き部20が設けられている。本実施形態の抜き部20はフレキシブルダイパンチ1の幅方向(軸線Xと平行な方向)両端部に、それぞれ1列ずつ設けられており、各抜き部20は、軸線Xまわりに延びている。
【0019】
図2は、抜き刃21の断面を示す拡大図である。
本実施形態の抜き刃21は、下側の基部22と基部22から立ち上がる刃部23とを有し、抜き刃21の平面視において、刃部23の鋭利な先端が円環状の稜線を形成している。
図2において、刃部23の先端の開き角度は、例えば50°である。刃部23の高さh1は、使用する原反(後述)の寸法等に応じて適宜設定できる。
【0020】
上述した構成を有するフレキシブルダイパンチ1を用いた、マージナル孔付きラベルの製造方法について説明する。
図4は、マージナル孔付きラベルとなる原反100の構成を示す模式図である。原反100は、ラベル層101と、粘着層102と、セパレータ103とを備えている。
ラベル層101には、ラベル層101を貫通し、セパレータ103を貫通しない切込み105が設けられており、切込み105に囲まれた領域が独立したラベルLとなっている。
【0021】
この方法では、
図3に示すような、対向する2つのローラ201、202を備えた孔あけ装置200を用いて原反100にマージナル孔の列を形成する。本実施形態において、ローラ201は磁性を有している。ローラ201、202間の距離は、使用する原反100の総厚よりわずかに大きい程度に設定され、調節も可能である。
【0022】
まず、フレキシブルダイパンチ1をローラ201の外周面に沿わせて取り付ける(ステップA)。フレキシブルダイパンチ1は可撓性を有するため、ローラの外周面の曲率半径に合わせて変形することができ、ローラとの間に隙間等を生じさせずに取り付けることができる。また、ローラ201は磁性を有するため、鉄を含むステンレス製のフレキシブルダイパンチ1は、磁力によりローラに保持される。したがって、フレキシブルダイパンチ1の取り付けにあたりネジ止め等は不要であり、取り外しも容易である。
フレキシブルダイパンチ1を取り付けたローラにおいては、抜き部20がローラの周方向に延びる。
【0023】
図5において、フレキシブルダイパンチ1は上側のローラ201に取り付けられているが、例えばローラ201および202を電磁石として磁性のオンオフが切り替え可能であれば、フレキシブルダイパンチ1は上側のローラ201および下側のローラ202のいずれに取り付けられてもよい。フレキシブルダイパンチ1がローラの全周に取り付けられていると、マージナル孔付きラベルの連続製造が可能となるため、好ましい。このとき、一つのフレキシブルダイパンチ1でローラの全周が覆われてもよいし、複数のフレキシブルダイパンチを組み合わせてローラの全周が覆われてもよい。
【0024】
次に、ローラ201、202間に原反100を進入させる。このとき、
図5に示すように、セパレータ103をフレキシブルダイパンチ1が取り付けられた側のローラ201に向ける。
原反100がローラ201、202間に進入すると、抜き刃21がセパレータ103に接触して押し当てられる。その結果、セパレータ103が抜き刃21の稜線に沿って円形に切り裂かれる。この動作が連続的に行われることにより、原反100の両端部には、複数のマージナル孔からなるマージナル孔列が形成される(ステップB)。
ステップBにおいては、抜き刃21がラベル層101を貫通しないように制御される。この制御は、
図2に示す刃部の高さh1を、使用する原反におけるセパレータの厚さ以上、かつ原反の総厚未満に設定することにより実現できる。
【0025】
続いて、次工程に送られた原反100に対して、カス上げが行われる。具体的には、
図6に示すように、ラベル層101のうち、切込み105の外側の領域が、カスKとしてセパレータ103から剥離される(ステップC)。
【0026】
本実施形態においては、原反100の幅方向両端部において、それぞれマージナル孔の列が形成された一定範囲のラベル層101が、幅方向中間部の切込み105の外側部分のラベル層101によりつながっている。
このため、本実施形態のステップCにおいては、
図6に示すように、すべての部位が一続きとなった1枚のカスKがセパレータ103から剥離される。ステップCにおいては、形成されたマージナル孔内に位置する多数のセパレータ103の小片が、カスKに貼りついた状態でカスKとともに除去される。
【0027】
図7に、完成したマージナル孔つきラベル150を示す。マージナル孔つきラベル150においては、原反100に設けられたラベル層101のうち、切込み105に囲まれた領域だけが、それぞれ独立したラベルLとしてセパレータ103上に残留し、ラベルLを挟むようにマージナル孔列151が形成されている。使用者は、ピントラクターをマージナル孔に通しつつ各ラベルLに印刷を行うことができ、印刷後のラベルを任意のタイミングでセパレータから剥がして所望の物品に貼り付けることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係るマージナル孔付きラベルの製造方法によれば、ステップCにおいて、個々のマージナル孔に対応した多数の小片がすべてラベル層のカスに貼りついた状態でカスとともに除去される。このため、意図しないタイミングで小片がラベル上に落下して印刷不良等を起こす事態を著しく抑制できる。
【0029】
フレキシブルダイパンチ1においては、二つの抜き部20の距離が定まっており不変である。そのため、製造するマージナル孔付きラベルの幅等に合わせて複数種類のフレキシブルダイパンチを準備しておけば、使用者は対応するフレキシブルダイパンチをローラに取り付けるだけで準備が完了し、抜き部間の距離調節作業は必要ない。
【0030】
また、抜き部20の抜き刃21により原反100のセパレータを貫通するハーフカットを施す構成のため、特許文献1の技術と異なり、ピンとダイスとの位相合わせをする必要はなく、一方のローラにフレキシブルダイパンチを取り付けるだけでほぼ準備作業は完了する。さらに、抜き刃21はピンとダイスよりも消耗の速度が遅く、時間面およびコスト面の両方からマージナル孔付きラベルの製造効率の向上に大きく寄与する。
さらに、マージナル孔を形成する際にラベル層101の切断は生じないため、印刷不良の原因となる紙粉の発生も抑制できる。
【0031】
本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0032】
例えば、
図8に示す変形例のフレキシブルダイパンチ1Aのように、幅方向両端部に加えて幅方向中間部に抜き部20が形成されてもよい。このようにすると、幅広の原反にマージナル孔列を形成した後、原反を幅方向に分割することで、一つの原反から複数組のマージナル孔付きラベルを効率よく製造できる。
【0033】
本実施形態に係る原反において、切込みに囲まれたラベルの寸法や形状、および配置態様は、ラベルの用途等に応じて適宜決定できる。ここで、ラベルが抜き部の延びる方向に隙間なく連続して配置されていると、両端のカスを接続する部位がなくなる結果、ステップCにおいて各端部に対応した2枚のカスが生じるが、この場合も、個々のマージナル孔に対応した多数の小片は、すべて2枚のカスとともに除去されるため、従来の方法に比べて十分な利点を有する。
【0034】
本発明において、マージナル孔の形状は、円形には限られない。例えば、楕円形や長丸型、正方形、長方形等であってもよいし、これらの形状を基本としつつ、周縁が内方への突出と外方への突出を交互に繰り返すジグザグ状であってもよい。
【0035】
また、切込みのないラベル原反を使用し、個々のラベルを区画する切込み105がステップBとステップCとの間に形成されてもよい。
さらに、ステップBは、ローラを一つしか備えない装置で行うこともできる。例えば、2つのローラの間を通るラベル原反ではなく、コンベア上を進むラベル原反に対して、フレキシブルダイパンチを取り付けたローラが押し当てられることによりステップBが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1、1A フレキシブルダイパンチ
10a 第一面
20 抜き部
21 抜き刃
100 原反
101 ラベル層
102 粘着層
103 セパレータ
105 切込み
150 マージナル孔付きラベル
200 孔あけ装置
201、202 ローラ
K カス
L ラベル