(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141385
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/52 20060101AFI20241003BHJP
G01S 15/74 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01S7/52 E
G01S15/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052992
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】藤島 泰郎
(72)【発明者】
【氏名】長倉 博
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】西野 宏
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA03
5J083AB14
5J083AC28
5J083AD04
5J083AD17
5J083AE03
5J083AF18
5J083BA10
5J083BC01
(57)【要約】
【課題】容易に測位対象機器の分離が可能な水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムを提供する。
【解決手段】水中測位装置50は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、グループ毎に異なる所定の周波数をグループに割り当てるグルーピング部51と、異なる所定の周波数の送信信号を送信する送信部52と、測位対象機器からの応答信号であって、グルーピング部51によって割り当てられた所定の周波数の応答信号を受信する受信部53と、受信した応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離部54と、帯域分離した応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1のグループに含まれる複数の測位対象機器の同時測位および通信を行うアレイ処理部55と、を含み、複数のグループのうち同一グループごとに同一周波数の応答信号が測位対象機器から送信される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング部と、
複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信部と、
前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング部によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信部と、
受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離部と、
帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理部と、
を含み、
複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される、水中測位装置。
【請求項2】
前記アレイ信号処理において、遅延和整相処理を行い、前記測位対象機器の水平方向及び距離を特定する請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項3】
前記アレイ信号処理において、適応整相処理を行い、前記測位対象機器の水平方向及び距離を特定する請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項4】
前記受信部は、受波器を直線状に並べた直線アレイである請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項5】
前記受信部は、受波器を円状に並べ、円形外側を向くように配置される請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項6】
前記受信部は、受波器を直線状に並べた直線アレイを組み合わせた多角形型であり、
前記受波器は、前記多角形型の各辺の垂直方向を向くように配置される請求項1に記載の水中測位装置。
【請求項7】
請求項1に記載の水中測位装置を備える水中航走体。
【請求項8】
請求項7に記載の水中航走体と、
前記測位対象機器を備える複数の測位対象航走体と、を備える水中測位システム。
【請求項9】
複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング工程と、
複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信工程と、
前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング工程によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信工程と、
受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離工程と、
帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理工程と、
をコンピュータに実行させ、
複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される、水中測位方法。
【請求項10】
請求項9に記載の水中測位方法をコンピュータに実行させるための水中測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中において音響信号を用いて機器の位置を計測する測位手法として、SSBL(Super Short Base Line、超短基線)方式が挙げられる。SSBL方式では、自身が発信する質問信号に対して測位対象機器が応答信号を返信するときの、発信から受信までの時間差に基づき測距を行うと同時に、複数の受波器を短い間隔で配置しておき、各受波器で受信した測位対象機器からの応答信号の位相差を計測することで到来した応答信号の測角を行い、測位対象機器の位置を算出する。例えば、特許文献1には、受波した応答信号を直交検波、ダウンサンプリング、ローパスフィルタの処理を実施し、測位精度を向上させることが開示されている。特許文献1では、処理後の応答信号に対する相関関数の最大位時刻となる時間差から、測位対象機器の位置を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、SBL(Short Base Line、短基線)方式を用いており、SBL方式やSSBL方式では、同じ周波数で同時に複数の方向から音波が到来すると、正しく計測できないという問題があった。
【0005】
SSBL方式を用いて複数の測位対象機器を同時に測位するためには、機器ごとに異なる周波数を割り当てておき、SSBL受信機では周波数ごとの応答信号を個別に分離および抽出した上で各周波数について位相差を計測する必要がある。しかし、使用可能な周波数帯域の数には上限があり、同時測位可能な機器の数が制限されてしまう。
【0006】
また1台の受信機(親機)が多数の測位対象機器(子機)を測位、および、多数の測位対象機器(子機)と通信しながら群れを形成して行動する群制御に対してSSBL方式の適用を想定する場合、SSBL方式では、受信機(親機)の周波数帯域の数で管制可能な測位対象機器(子機)の数が制限される。受信機(親機)が有する周波数帯域の数以上の測位対象機器(子機)を管制する場合は、測位対象機器(子機)をいくつかのグループに分割し、時分割でグループ毎に順次計測することが考えられる。しかし、時分割方式を用いると、全ての測位対象機器(子機)の測位および通信を一巡させるには、数相応の時間を要することとなる。全ての測位対象機器(子機)の測位および通信を一巡するのに要する時間が長時間となると、測位対象機器(子機)の陣形が密な場合や、障害物回避などの緊急行動を行う場合に即時対応がとりづらく、時分割方式は不利となる。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、容易に複数の測位対象機器を分離可能な水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムは以下の手段を採用する。
本開示の水中測位装置は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング部と、複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信部と、前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング部によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信部と、受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離部と、帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理部と、を含み、複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される。
【0009】
本開示の水中航走体は、前述の水中測位装置を備える。
【0010】
本開示の水中測位システムは、前述の水中航走体と、測位対象機器を備える複数の測位対象航走体と、を備える。
【0011】
本開示の水中測位方法は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング工程と、複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信工程と、前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング工程によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信工程と、受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離工程と、帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理工程と、をコンピュータに実行させ、複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される。
【0012】
本開示の水中測位プログラムは、前述の水中測位方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、水中測位装置が測位対象機器の同時測位や通信を行う場合に、同時に管制できる測位対象機器の数の制限数を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態における水中測位システムを示す図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の機能の一例を示す図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の送受信処理を示す図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態における周波数分離部およびアレイ処理部による処理を示す図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態における受波器の待ち受け状態の一例を示す図である。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態における整相処理を示す図である。
【
図9】本開示の幾つかの実施形態における復調処理を示す図である。
【
図10】本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の制御フローを示す図である。
【
図11】本開示の幾つかの実施形態における適応整相処理を示す図である。
【
図12】本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
【
図13】本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本開示の幾つかの実施形態における水中測位システムを示す図である。
図1に示すように、水中測位システム1は、親機となる水中航走体10と、子機となる測位対象航走体21a、21b、21c、21d、21e、21f、22a、22b、22c、22d、22e、22f、23a、23b、23c、23d、23e、23f、24a、24b、24c、24d、24e、24fと、水中測位装置50と、を備えている。
以下の説明において、各測位対象航走体21、22、23、24を区別する場合は、末尾にa、b、c、d、eまたはfのいずれかを付し、各測位対象航走体21、22、23、24を区別しない場合は、a、b、c、d、eまたはfを省略する。
【0016】
水中航走体10は、複数の測位対象航走体21、22、23、24の位置などを測定するための水中測位装置50を備え、航行する。水中航走体10は、
図1に示されるように水中を航行するが、水面を移動してもよい。
【0017】
測位対象航走体21、22、23、24は複数存在し、各測位対象航走体21、22、23、24は群をなして水中を航行する。各測位対象航走体21、22、23、24には、水中航走体10の水中測位装置50との通信を行う測位対象機器(図示せず)が備えられている。水中測位装置50との通信は、測位対象機器(図示せず)が行うが、以下の説明では便宜上、測位対象機器を備える測位対象航走体21、22、23、24が水中測位装置50との通信を行うものとして説明する。
【0018】
測位対象航走体21、22、23、24は、例えばUUV(Unmanned Undersea Vehicle、無人潜水機)である。UUVにおいて、深度を感知して制御するセンサである深度センサの深度センサ値は、水平位置センサ値に比べてドリフトが小さく、複数のUUVに同一深度を航行させることは容易である。そのため、あらかじめ深度ごとに群を構成することができる。
【0019】
水中測位装置50は、水中航走体10に備えられ、測位対象航走体21、22、23、24の位置などを測定するのに用いられる。本実施形態の場合、水中測位装置50は、水中航走体10の下部に設けられ、水中航走体10より深深度側を航行する測位対象航走体21、22、23、24との通信を行う。水中測位装置50は、水中航走体10の上部に設けられてもよいが、水中測位装置50の後述する受波器SRには指向性があるため、この場合は測位対象航走体21、22、23、24が水中航走体10より浅い深度側を航行していることが望ましい。水中測位装置50は、水中航走体10の下部および上部の両方に設けられていてもよい。水中測位装置50は、後述する受波器SRを備え、受波器SRを介して測位対象航走体21、22、23、24と通信する。
【0020】
図2は、本開示の幾つかの実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図2に示すように、水中測位装置(制御装置、Controller)50は、コンピュータシステム(計算機システム)を備えており、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)1100、二次記憶装置(ROM、Secondary storage:メモリ)1200、主記憶装置(RAM、Main Memory)1300、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
【0021】
CPU1100は、例えば、バス1800を介して接続された二次記憶装置1200に格納されたOS(Operating System)により水中測位装置50全体の制御を行うとともに、二次記憶装置1200に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU1100は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0022】
主記憶装置1300は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU1100の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0023】
二次記憶装置1200は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置1200は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置1200の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置1200は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置1200には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置1200は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置1200に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0024】
また、水中測位装置50は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。また、表示部を含み、ランプ、音、特にアラーム音を出力するスピーカーなどの通知部を備えていてもよい。
【0025】
図3は、本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の機能の一例を示した図である。
図3に示すように、水中測位装置50は、グルーピング部51と、送信部52と、受信部53と、周波数分離部54と、アレイ処理部55と、を備えている。
【0026】
水中測位装置50が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置1200(
図2参照)などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)1100(
図2参照)が主記憶装置1300(
図2参照)に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置1200に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0027】
図3に示されるグルーピング部51は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、グループ毎に異なる所定の周波数をグループに割り当てる。
複数の測位対象航走体21、22、23、24は、グルーピング部51によってそれぞれ深度ごとにグルーピングされる。
図1に示されるように、測位対象航走体21a、21b、21c、21d、21e、21fは、前述したように1つの群としてほぼ同じ深度で航行するとし、グループ31とされる。同様に、測位対象航走体22a、22b、22c、22d、22e、22fは、ほぼ同じ深度で航行するとしてグループ32とされ、測位対象航走体23a、23b、23c、23d、23e、23fは、ほぼ同じ深度で航行するとしてグループ33とされ、測位対象航走体24a、24b、24c、24d、24e、24fは、ほぼ同じ深度で航行するとしてグループ34とされる。
【0028】
グルーピング部51は、グループ31、32、33、34毎にそれぞれ異なる所定の周波数を割り当てる。すなわち、例えばグループ31の測位対象航走体21a、21b、21c、21d、21e、21fには、同一の所定の周波数が割り当てられる。測位対象航走体21a、21b、21c、21d、21e、21fは、同一の所定の周波数を用いて水中測位装置50との通信を行う。
【0029】
各グループ31、32、33、34に割り当てられる所定の周波数はそれぞれ任意の周波数を用いればよい。周波数が低い方が遠距離に届くため、本実施形態の場合、水中測位装置50からの距離が長いグループ34に対し、割り当てを行う予定の複数の周波数のうち、最も低い周波数を割り当ててもよい。さらに水中測位装置50からの距離に応じて他のグループ31、32、33にそれぞれ他の所定の周波数を割り当てるとしてもよい。また、割り当てを行う複数の周波数の各帯域を広く取り、各帯域を大きく分けるとしてもよい。各帯域を広く取り、大きく分けることにより、それぞれの帯域における情報量を大きくすることができる。
【0030】
このように、あらかじめ測位対象航走体21、22、23、24がそれぞれ航行する深度ごとに周波数を割り当てておくことにより、後述する周波数分離部54において周波数帯域分離した時点で自動的に深度が特定できる。よって、水中測位装置50は、測位対象航走体21、22、23、24の測位を3次元で行う必要が無い。水中測位装置50は、水平面内の2次元処理を行えばよいため、俯仰方向に後述する受波器をアレイ化する必要が無く、装置構成を簡素化することができる。
【0031】
送信部52は、複数の異なる所定の周波数の送信信号を送信する。本実施形態の場合、送信部52は、例えば複数の測位対象航走体21、22、23、24に対する質問および配信する情報を含む信号である送信信号を送信する。送信信号は、質問信号であるともされる。送信部52は、後述する受信部53による応答信号の受信、および後述する周波数分離部54およびアレイ処理部55による処理にかかる時間を見込み、適切なインターバルをおいて次の送信信号を送信する。
【0032】
受信部53は、送信信号に対する測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号であって、グルーピング部51によって割り当てられた所定の周波数の応答信号を受信する。測位対象航走体21、22、23、24は、水中測位装置50からの送信信号に対し、応答信号により応答する。応答信号には、質問に対する回答が含まれ、例えば測位対象航走体21、22、23、24のステータス(識別子など)が含まれてもよい。測位対象航走体21、22、23、24は、変調をかけることにより、応答信号に情報を付加することができる。
【0033】
図4は、本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の送受信処理を示す図である。
図4において、水中測位装置50の送信する信号およびタイミングを太線、グループ31の各測位対象航走体21の送信する信号およびタイミングを破線、グループ32の各測位対象航走体22の送信する信号およびタイミングを実線、グループ33の各測位対象航走体23の送信する信号およびタイミングを一点鎖線で示す。
【0034】
例えば、グループ31の各測位対象航走体21に対しf1帯域の周波数が割り当てられ、グループ32の各測位対象航走体22に対しf2帯域の周波数が割り当てられ、グループ33の各測位対象航走体23に対しf3帯域の周波数が割り当てられ、グループ34の各測位対象航走体24に対しf4帯域の周波数が割り当てられるとする。
【0035】
図4に示されるように、水中測位装置50は、時間t1において、測位対象航走体21、22、23、24に対する質問および配信する情報を含む送信信号を送信する。送信信号を受信した測位対象航走体21、22、23、24は、それぞれグルーピング部51によって割り当てられた所定の周波数を用いて、水中測位装置50に対し自身のステータスなどを含む質問に対する回答を付与した応答信号を送信する。
【0036】
グループ31の各測位対象航走体21は、水中測位装置50の送信信号に対し、破線で示されるようにf1帯域の周波数を用いて応答信号を送信する。同様に、グループ32の各測位対象航走体22は、水中測位装置50の送信信号に対し、実線で示されるようにf2帯域の周波数を用いて応答信号を送信する。グループ33の各測位対象航走体23は、水中測位装置50の送信信号に対し、一点鎖線で示されるようにf3帯域の周波数を用いて応答信号を送信する。各測位対象航走体21、22、23から送信される各応答信号は、音波、超音波、電波のいずれであってもよい。
【0037】
各測位対象航走体21、22、23から送信される各応答信号は、特定の方向に向けて送信され、水中測位装置50にほぼ同時期に到達し、受信部53が受信する。時間t1から適切なインターバルをおいた時間t2において、水中測位装置50は次の送信信号を送信し、これに対し各測位対象航走体21、22、23が応答信号を送信する。
【0038】
図3の周波数分離部54は、受信部53が受信した測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う。複数の測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号は、ほぼ同時期に一斉に水中測位装置50で受信される。また複数の測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号は、グループ31、32、33、34ごとに異なる所定の周波数が割り当てられている。周波数分離部54は、グループ31、32、33、34ごとに割り当てられた所定の周波数を用いて、それぞれのグループ31、32、33、34からの応答信号をグループ毎に帯域分離する。
【0039】
アレイ処理部55は、周波数分離部54が帯域分離した複数の測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1のグループに含まれる複数の測位対象航走体21、22、23、24の同時測位および複数の測位対象航走体21、22、23、24との通信を行う。アレイ処理部55は、アレイ信号処理において、整相処理と復調処理とを行う。
【0040】
図5は、本開示の幾つかの実施形態における周波数分離部およびアレイ処理部による処理を示す図である。
図5に示されるように、受信部53で受信した応答信号は、周波数分離部54により帯域分離処理が行われ、アレイ処理部55によりアレイ処理、具体的には整相処理および復調処理が行われ、各測位対象航走体21、22、23、24の情報を取得する。
【0041】
受信部53は、複数の受波器SRを備えている。受信部53は、受波器SR1から受波器SRMまでM個の複数の受波器SR(受波器アレイ)を備えるものとする。本実施形態の複数の受波器SRは、フェーズドアレイとして機能する。
以下の説明において、各受波器SRを区別する場合は、末尾に数字または記号を付し、各受波器SRを区別しない場合は、数字又は記号を省略する。
【0042】
図6は、本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
図6に示されるように、本実施形態では、受波器SRは順に円状に並べられているものとする。各受波器SRは、円形外側を向くように配置され、円形外側方向の様々な方向から向かってくる複数の信号を受信する。前述したように、グループ毎に異なる所定の周波数の応答信号は、ほぼ同時期に一斉に受信される。
【0043】
図5の受信部53の受波器SR1、SR2乃至SRMは、それぞれ応答信号を受信する。受信した各応答信号は、周波数分離部54で帯域分離処理が行われる。周波数分離部54は、グループ毎に異なる所定の周波数ごと、本実施形態の場合、f1帯域、f2帯域、f3帯域、f4帯域の各帯域に分離される。
【0044】
図7は、本開示の幾つかの実施形態における受波器の待ち受け状態の一例を示す図である。
図7に示されるように、本実施形態では、各受波器SRは、θ
1、θ
2、・・・、θ
s1、・・・、θ
s2、・・・、θ
Kの各角度のビーム(待ち受けビーム)を形成し、各測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号を待ち受けている。
【0045】
各受波器SRは、角度θs1のビームにおいて測位対象航走体21aからの応答信号を、角度θs2のビームにおいて測位対象航走体21bからの応答信号を受信したものとする。各受波器SRが受信した測位対象航走体21a及び21bの応答信号は、グループ31であることから周波数分離部54においてf1帯域に分離される。
【0046】
図5の周波数分離部54で帯域ごとに分離された応答信号は、アレイ処理部55でアレイ処理(整相処理)が行われる。水中測位装置50は、受波器アレイを用いて指向性を付与するための処理である整相処理を行う。整相処理を行うことにより、所望する方位からの波を強調し、所望する方位以外の波を低減することができる。
【0047】
図8は、本開示の幾つかの実施形態における整相処理を示す図である。
図8に示されるように、受波器SR1、SR2、・・・、SRMがそれぞれ応答信号を受信する。本実施形態では、例えば各受波器SRが受信した応答信号はf1帯域に分離されているとする。
【0048】
受波器SR1、SR2、・・・、SRMの基準位置からの距離をそれぞれd1、d2、・・・、dMとする。また、受波器SR1、SR2、・・・、SRMの観測信号であるアレイ信号をそれぞれx1(t)、x2(t)、・・・、xM(t)とする。ここでtは時間を表す。
【0049】
整相処理では、各受波器SRから入力されたアレイ信号xm(t)(m=1、2、・・・、M)の位相をそれぞれに応じた移相量ejΦs,mで変位させ、位相が変位し整相された各アレイ信号を加算器81に出力する。
【0050】
整相された各アレイ信号が加算器81で加算され、アレイ出力信号bs(t)(s=1、2、・・・、K)が出力される。
【0051】
以上の整相処理(遅延和整相処理)を式(1)に表す。
【0052】
【0053】
図5のアレイ処理部55で整相処理が行われた応答信号はアレイ出力信号として出力され、続いて復調処理が行われる。アレイ出力信号は、同一帯域の測位対象航走体21、22、23、24の数の分のビーム信号として復調処理が行われる。
【0054】
図9は、本開示の幾つかの実施形態における復調処理を示す図である。
図9において、上方向の軸(縦軸)はアレイ出力信号、横方向の軸(横軸)は時間、手前方向の軸は整相方位である。
【0055】
整相処理において、各受波器SRの待ち受けビームの角度(整相方位)θ
s(s=1、2、・・・、K)ごとにアレイ出力信号b
s(t)(s=1、2、・・・、K)が出力される。
図9において、ビーム信号であるアレイ出力信号b
s1(t)及びb
s2(t)は、破線で示される。
【0056】
図9に示されるように、アレイ出力信号b
s1(t)及びb
s2(t)は、各受波器SRに到達する時間が異なる。各アレイ出力信号b
s(t)の到達時間の時間差が、測位対象航走体21、22、23、24と各受波器SR(すなわち水中測位装置50)との距離を表す。アレイ処理部55は、各アレイ出力信号b
s(t)の到達時間の時間差を計測し、時間差を距離に変換して測位対象航走体21、22、23、24までの距離を導出する。
【0057】
図9に示されるように、アレイ出力信号b
s1(t)及びb
s2(t)は、それぞれビーム信号であって振幅を有する。各アレイ出力信号b
s(t)の振幅が、各アレイ出力信号b
s(t)の到来方位を示しており、すなわち測位対象航走体21、22、23、24の方位を表す。アレイ処理部55は、各アレイ出力信号b
s(t)の振幅から測位対象航走体21、22、23、24の方位を導出する。
【0058】
図5のアレイ処理部55は、各アレイ出力信号b
s(t)に対し、復調処理を行い、測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号の復調を行う。アレイ処理部55は、デジタル信号に復調された応答信号から、測位対象航走体21、22、23、24のステータスなどを取得する。復調処理で復調を行う方法としては既存の方法を用いることができる。
【0059】
以上の処理を行うことにより、水中測位装置50は、観測時点で各測位対象航走体21、22、23、24がどの位置にいるか、大量の測位対象航走体21、22、23、24の3次元での位置および情報を同時に把握することができる。
【0060】
図10は、本開示の幾つかの実施形態における水中測位装置の制御フローを示す図である。
ステップS101において、水中測位装置50のグルーピング部51は、複数の測位対象航走体21、22、23、24を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、グループ毎に異なる所定の周波数をグループに割り当てる。
【0061】
ステップS102において、送信部52は、複数の測位対象航走体21、22、23、24に対する質問および配信する情報を含む信号である送信信号(質問信号)を送信する。
【0062】
ステップS103において、受信部53は、送信部52によって送信された送信信号に対する測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号であって、グルーピング部51によって割り当てられた所定の周波数を用いた応答信号を受信する。
【0063】
ステップS104において、周波数分離部54は、受信部53が受信した測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う。
【0064】
ステップS105において、アレイ処理部55は、周波数分離部54が帯域分離した複数の測位対象航走体21、22、23、24からの応答信号に対し整相処理および復調処理を行い、1のグループに含まれる複数の測位対象航走体21、22、23、24の同時測位および複数の測位対象航走体21、22、23、24との通信を行う。
【0065】
〔第2実施形態〕
以下、本開示の第2実施形態について、
図11を用いて説明する。
第1実施形態では、遅延和整相処理による整相処理を行ったが、適応整相処理の場合も、MVDR(Minimum Variance Distortionless Response、最小分散無歪応答)であれば同様の処理を行うことができる。本実施形態では、MVDRである適応整相処理について説明する。
【0066】
一般的に用いられる整相処理である固定ビームフォーミングを用いる場合、ビーム幅が広く所望の分解能を満たさないため、同時に到来する複数の応答信号、特に近接する応答信号を分別できないことがある。この場合、ビット誤り率(BER;Bit Error Rate、受信側が受け取った全データに対する誤ったデータの比率)が劣化することが考えられる。
【0067】
同時に到来する複数の応答信号、特に近接する応答信号を分離する能力である分離能は、ビームの幅に依存する。幅の狭いビームは指向性が強く、また強度が強い傾向にあり、識別能力が高くなる。
【0068】
そこで、本実施形態では適応整相処理を用いるものとする。適応整相処理では、ビーム幅が狭くなるため、複数の応答信号の方位の分離率、分解能を向上させ、応答信号の到来する方位に対する精度を上げることができる。
【0069】
図11は、本開示の幾つかの実施形態における適応整相処理を示す図である。
図11に示されるように、各受波器SRが受信した応答信号をそれぞれs
1(t)、s
2(t)、・・・、s
M(t)とする。ここでtは時間を表す。
【0070】
各応答信号s1(t)、s2(t)、・・・、sM(t)に対し、位相器においてウェイトw1*、w2*、・・・、wM*が設定さえる。ウェイトw1*、w2*、・・・、wM*を設定することで、複数の受波器SRの指向性を任意に設定することができる。ウェイトw1*、w2*、・・・、wM*は、受波器SRによる受信信号の振幅及び位相を調節するため、アレイ出力信号について応答信号の角度に応じてウェイト生成アルゴリズム92を適用して設定される。受信信号に対してウェイトw1*、w2*、・・・、wM*を適用すると、これに対応した角度に対する信号の重み付けが得られる。このようにウェイトw1*、w2*、・・・、wM*は、受波器SRによる信号の受信角度の調節要素として機能し、該当の角度における精度を上げることができる。重み付けされた各応答信号は、加算器91に出力される。
【0071】
重み付けされた各応答信号が加算器91で加算され、アレイ出力信号b(t)が出力される。
【0072】
[第3実施形態]
以下、本開示の第3実施形態について、
図12を用いて説明する。
第1実施形態および第2実施形態では、受波器SRは順に円状に並べられ、円形外側を向くように配置されているとしたが、本実施形態では、円形以外の形状に並べられるものとする。
【0073】
図12は、本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
図12に示されるように、本実施形態では、受波器SRは直線状に順に並べられた直線アレイとされる。各受波器SRは、直線アレイの直線が延びる方向に対し直交する方向(垂直方向)を向くように配置される。
【0074】
各受波器SRは、直線アレイの辺において、正面方向±45度の範囲から到来する波を検出対象とする。受波器SR1の正面方向を受波器SR1から延びる図の破線方向であるとすると、受波器SR1は、破線方向から図面右方向に45度、及び破線方向から図面左方向に45度の実線で表される範囲を波の検出対象範囲とする。このように設定することにより、受波器SR1が配置される辺について、直線アレイの各端部を通る2つの仮想の延長線(
図12において直線アレイの各端部を通る一点鎖線を示す)が垂直に交わる点を頂点とし、頂点から受波器SR1が配置される辺に直交する方向(辺の垂直方向)を辺の正面として、左右各45度の範囲、計90度の範囲から到来する波を検出対象とすることができる。水中測位装置50に対し、測位対象航走体21、22、23、24が特定の方向のみに集中する場合は、受波器SRが正面方向の感度が高く正面方向の波を拾いやすいことから、該当の方向をカバーするように各受波器SRを配置すればよい。
【0075】
受波器SRの数は任意の数であってよいが、精度を上げるためには数が多い方がよい。受波器SRの数は、1のグループに含まれる測位対象航走体21、22、23、24の数+1以上の数であることが好ましい。
【0076】
受波器SRの配置は、多角形、例えば四辺形であってもよい。
図13は、本開示の幾つかの実施形態における受波器の設置形態の一例を示す図である。
図13に示されるように、本実施形態では、受波器SRは直線状に順に並べられた直線アレイとされ、これを組み合わせた多角形である四辺形の各辺上で並べられているものとする。各受波器SRは、多角形外側を向くように配置される。
【0077】
各受波器SRは、各辺において、正面方向±45度の範囲から到来する波を検出対象とする。受波器SR1の正面方向を受波器SR1から延びる図の破線方向であるとすると、受波器SR1は、破線方向から図面右方向に45度、及び破線方向から図面左方向に45度の実線で表される範囲を波の検出対象範囲とする。このように設定することにより、受波器SR1が配置される一辺について、四辺形の中心から受波器SR1が配置される辺に直交する方向(辺の垂直方向)を辺の正面として、左右各45度の範囲、計90度の範囲から到来する波を検出対象とすることができる。さらに、他の各辺についても同様の配置および設定とする。これにより、四辺形の中心を円の中心とする360度の範囲を検出対象範囲とすることができる。
【0078】
受波器SRは、正面方向の感度が高く正面方向の波を拾いやすい反面、背面方向の波を拾いにくいことがわかっている。よって、受波器SRの配置を四辺形とすることで、受波器SRは正面方向のみの処理を行えばよいことから、受波器SRの処理負荷を軽減することができる。
【0079】
受波器SRの数は任意の数であってよいが、精度を上げるためには数が多い方がよい。受波器SRの数は、1のグループに含まれる測位対象航走体21、22、23、24の数+1以上の数であることが好ましい。
【0080】
受波器SRの配置は、四辺形以外の多角形であってもよい。この場合、多角形の中心を円の中心とする360度の範囲を検出対象範囲とするように、多角形の形状に応じて受波器SRの検出対象とする波の到来する範囲を設定してもよい。
【0081】
以上、本開示の幾つかの実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した本開示の幾つかの実施形態においては、測位対象航走体21、22、23、24の応答信号は質問に対する回答が含まれ、例えば測位対象航走体21、22、23、24のステータスが含まれるとしたが、測位対象航走体21、22、23、24の深さに関する情報が含まれるとしてもよい。これにより、水中測位装置50は、各測位対象航走体21、22、23、24の正確な深度を得ることができる。
【0082】
〈付記〉
以上説明した実施形態に記載の水中測位装置、水中航走体、水中測位システム、水中測位方法および水中測位プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0083】
本開示の第1態様の水中測位装置(50)は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング部(51)と、複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信部(52)と、前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング部によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信部(53)と、受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離部(54)と、帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理部(55)と、を含み、複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される。
【0084】
複数の測位対象機器を、深度方向には周波数による多重化でいくつかのグループに分割し、水平方向にはアレイ信号処理による同時測位および通信を行うことから、水中測位装置が測位対象機器の同時測位や通信を行う場合に、同時に管制できる測位対象機器の数の制限数を多くすることができる。
また、深度方向は周波数で特定できることから、水中測位装置は水平方向の処理を行うだけでよいため、3次元で処理を行う場合よりも処理数が減少し、装置構成を簡素化することができる。
【0085】
本開示の第2態様の水中測位装置は、前記第1態様において、前記アレイ信号処理において、遅延和整相処理を行い、前記測位対象機器の水平方向及び距離を特定するとしてもよい。
【0086】
本開示の第3態様の水中測位装置は、前記第1態様において、前記アレイ信号処理において、適応整相処理を行い、前記測位対象機器の水平方向及び距離を特定するとしてもよい。
【0087】
本開示の第4態様の水中測位装置は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記受信部は、受波器を直線状に並べた直線アレイであるとしてもよい。
【0088】
受信部は受波器が直線状に並んだ直線アレイであるため、構成を簡素化することができる。
【0089】
本開示の第5態様の水中測位装置は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記受信部は、受波器を円状に並べ、円形外側を向くように配置されるとしてもよい。
【0090】
受波器が円状に並んでいるため、全方向から来る応答信号を的確に受信できる。
【0091】
本開示の第6態様の水中測位装置は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記受信部は、受波器を直線状に並べた直線アレイを組み合わせた多角形型であり、前記受波器は、前記多角形型の各辺の垂直方向を向くように配置されるとしてもよい。
【0092】
直線アレイは、正面方向の感度が高いところ、各直線アレイは正面方向のみの処理を行えばよいため、各直線アレイの処理負荷を軽減することができる。
【0093】
本開示の第7態様の水中航走体(10)は、前記第1態様から前記第6態様のいずれかの水中測位装置を備える。
【0094】
本開示の第8態様の水中測位システム(1)は、前記第7態様の水中航走体と、前記測位対象機器を備える複数の測位対象航走体(21、22、23、24)と、を備える。
【0095】
本開示の第9態様の水中測位方法は、複数の測位対象機器を深度ごとにグルーピングして複数のグループに分割し、前記グループ毎に異なる所定の周波数を前記グループに割り当てるグルーピング工程と、複数の異なる前記所定の周波数の送信信号を送信する送信工程と、前記送信信号に対する複数の前記測位対象機器からの応答信号であって、前記グルーピング工程によって割り当てられた前記所定の周波数の該応答信号を受信する受信工程と、受信した前記応答信号に対し、周波数による帯域分離を行う周波数分離工程と、帯域分離した前記応答信号に対しアレイ信号処理を行い、1の前記グループに含まれる複数の前記測位対象機器の同時測位および複数の前記測位対象機器との通信を行うアレイ処理工程と、をコンピュータに実行させ、複数の前記グループのうち同一グループごとに同一周波数の前記応答信号が前記測位対象機器から送信される。
【0096】
本開示の第10態様の水中測位プログラムは、前記第9態様の水中測位方法をコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0097】
1 水中測位システム
10 水中航走体
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f、22、22a、22b、22c、22d、22e、22f、23、23a、23b、23c、23d、23e、23f、24、24a、24b、24c、24d、24e、24f 測位対象航走体
50 水中測位装置
51 グルーピング部
52 送信部
53 受信部
54 周波数分離部
55 アレイ処理部