(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141409
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】超伝導回路装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241003BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20241003BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L25/08 C
H05K1/14 A
H05K3/32 Z
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053031
(22)【出願日】2023-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】山口 彩未
(72)【発明者】
【氏名】難波 兼二
(72)【発明者】
【氏名】宮田 明
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克
【テーマコード(参考)】
5E319
5E344
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319BB20
5E319CC11
5E319GG20
5E344AA02
5E344BB02
5E344CC09
5E344CC23
5E344EE30
5F044KK01
5F044KK16
(57)【要約】
【課題】量子デバイスと第1の回路基板と第2の回路基板を積層した超伝導回路装置において、量子デバイスの非接触結合回路と結合する第1の回路基板と第2の回路基板間の電気的接合を高い品質で実現可能とする。
【解決手段】第2の回路基板と、前記第2の回路基板に実装された第1の回路基板と、前記第1の回路基板に実装された量子デバイスとを備え、前記量子デバイスは、非接触結合回路を備え、前記第1の回路基板は、前記量子デバイスの前記非接触結合回路と離間して対向配置された非接触結合回路用伝送部と、基板を貫通する貫通ビアと、を備え、前記第2の回路基板より前記量子デバイスへの信号の入力及び又は出力用の第1の伝送回路部を構成する、前記第2の回路基板と前記第1の回路基板の接合部と、前記第1の回路基板の前記貫通ビアと、前記量子デバイスの前記非接触結合回路および前記第1の回路基板の前記非接触結合回路用伝送部とは、複数の前記第1の伝送回路部間でレイアウトが統一されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の回路基板と、
前記第2の回路基板に実装された第1の回路基板と、
前記第1の回路基板に実装された量子デバイスと、
を備え、
前記量子デバイスは、非接触結合回路を備え、
前記第1の回路基板は、
前記量子デバイスの前記非接触結合回路と離間して対向配置された非接触結合回路用伝送部と、
基板を貫通する貫通ビアと、
を備え、
前記第2の回路基板より前記量子デバイスへの信号の入力及び/又は出力用の第1の伝送回路部を構成する、
前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との接合部と、
前記第1の回路基板の前記貫通ビアと、
前記量子デバイスの前記非接触結合回路及び前記第1の回路基板の前記非接触結合回路用伝送部と、
は、複数の前記第1の伝送回路部間でレイアウトが統一されている、ことを特徴とする超伝導回路装置。
【請求項2】
前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部の直上に、前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの接合部を備えている、ことを特徴とする請求項1記載の超伝導回路装置。
【請求項3】
前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの接合部を備え、
前記第2の回路基板より前記量子デバイスへの信号の入力及び/又は出力用の第2の伝送回路部を構成する、
前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部と、
前記第1の回路基板の前記貫通ビアと、
前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの前記接合部と、
は、複数の前記第2の伝送回路部間でレイアウトが統一されている、ことを特徴とする請求項1記載の超伝導回路装置。
【請求項4】
前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部の直上に配置された前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの前記接合部は、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板の少なくともいずれかにおいて他の配線や回路から孤立した浮島として配置されているか、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板の少なくともいずれかに配設されたグランド回路に接続されている、ことを特徴とする請求項2記載の超伝導回路装置。
【請求項5】
前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部を構成する第2の接合バンプは、前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの接合部を構成する第1の接合バンプよりも、融点が低く、且つ、展延性が高いか又は同等の材料を含む、ことを特徴とする請求項1記載の超伝導回路装置。
【請求項6】
1つ又は複数の前記第1の回路基板が、前記第2の回路基板上に実装されている、ことを特徴とする請求項1記載の超伝導回路装置。
【請求項7】
1つ又は複数の前記量子デバイスが、前記第1の回路基板上に実装されている、ことを特徴とする請求項1又は6記載の超伝導回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一に記載の超伝導回路装置の製造方法であって、
前記第2の回路基板上に配置され、前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部を構成する第2の接合バンプと、前記量子デバイスを実装した前記第1の回路基板上に配置された第2の電極とを互いの接合面が対向する向きでチャンバー内に配置して真空引きを行う工程と、
前記第2の回路基板上に配置された前記第2の接合バンプと、前記第1の回路基板上に配置された前記第2の電極の接合表面を活性化させる工程と、
前記第2の回路基板上に配置された前記第2の接合バンプと、前記第1の回路基板上に配置された前記第2の電極の位置合わせを行い、
真空度を維持した状態で、常温又は所定温度以下の低温にて、前記第2の接合バンプと前記第2の電極を当接させ加圧する、又は、
大気下で低温にて、前記第2の接合バンプと前記第2の電極を当接した後、超音波を印加した状態で加圧する、
工程を含む、ことを特徴とする、超伝導回路装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の接合バンプは、前記第1の回路基板と前記量子デバイスとの前記接合部を構成する第1の接合バンプよりも、融点が低く、且つ、展延性が高いか又は同等の材料を含む、ことを特徴とする請求項8記載の超伝導回路装置の製造方法。
【請求項10】
1つ又は複数の前記量子デバイスを前記第1の回路基板上に実装する工程と、
1つ又は複数の前記第1の回路基板を前記第2の回路基板と接合する工程の少なくともいずれかを含む、ことを特徴とする請求項8記載の超伝導回路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導回路装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子回路の高集積化を図るために、量子デバイスを第1の回路基板(インターポーザ)上にフリップチップ実装した構造(ベアチップを反転(フリップ)して実装した構造)を用いることが検討されている。特に、量子特性等の劣化を防ぎ、配線収容率を高めるために、第1の回路基板(インターポーザ)の構成を第2の回路基板(パッケージ基板)に分配する構造が有望視されている。具体的な構造として、例えば、第1の回路基板は、量子回路との中継基板を担い、第2の回路基板は、配線ルーティングとしての基板を担う構造とすることができる。上記の要求に対し、例えば特許文献1には、積層される各基板(cap wafer/circuit wafer等)の裏面に、高さ制御用の接合バンプ(standoff bump)と、容易に塑性変形するインジウム(In)などの材料からなる接合バンプ(In Bump)の2種類が形成されており、各基板の表面の電極と接合する構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、量子デバイスと第1の回路基板と第2の回路基板を積層した超伝導回路装置において、量子デバイスの非接触結合回路と結合する第1の回路基板と第2の回路基板間の電気的接合を高い品質で実現できる超伝導回路装置、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態の超伝導回路装置によれば、第2の回路基板と、前記第2の回路基板に実装された第1の回路基板と、前記第1の回路基板に実装された量子デバイスと、を備え、前記量子デバイスは、非接触結合回路を備え、前記第1の回路基板は、前記量子デバイスの前記非接触結合回路と離間して対向配置された非接触結合回路用伝送部と、基板を貫通する貫通ビアと、を備えている。前記第2の回路基板より前記量子デバイスへの信号の入力及び/又は出力用の第1の伝送回路部を構成する、前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との接合部と、前記第1の回路基板の前記貫通ビアと、前記量子デバイスの前記非接触結合回路及び前記第1の回路基板の前記非接触結合回路用伝送部と、は、複数の前記第1の伝送回路部間でレイアウトが統一されている。
【0006】
本開示の別の一形態によれば、上記一形態の超伝導回路装置を製造する製造方法が、
前記第2の回路基板上に配置され、前記第2の回路基板と前記第1の回路基板との前記接合部を構成する第2の接合バンプと、前記量子デバイスを実装した前記第1の回路基板上に配置された第2の電極とを互いの接合面が対向する向きでチャンバー内に配置して真空引きを行う工程と、
前記第2の回路基板上に配置された前記第2の接合バンプと、前記第1の回路基板上に配置された前記第2の電極の接合表面を活性化させる工程と、
前記第2の回路基板上に配置された前記第2の接合バンプと、前記第1の回路基板上に配置された前記第2の電極の位置合わせを行い、
真空度を維持した状態で、常温又は所定温度以下の低温にて、前記第2の接合バンプと前記第2の電極を当接させ加圧する、又は、
大気下で低温にて、前記第2の接合バンプと前記第2の電極を当接した後、超音波を印加した状態で加圧する、工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、量子デバイスと第1の回路基板と第2の回路基板を積層した超伝導回路装置において、量子デバイスの非接触結合回路と結合する第1の回路基板と第2の回路基板間の電気的接合を高い品質で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態を説明する模式断面図である。
【
図2】本開示の実施形態の量子デバイスを説明する模式平面図である。
【
図3】(A)、(B)は本開示の実施形態の第1の回路基板を説明する模式平面図である。
【
図4】本開示の実施形態の第2の回路基板を説明する模式平面図である。
【
図5】本開示の実施形態を説明する模式断面図である。
【
図6】(A)乃至(C)は本開示の実施形態の製造工程を説明する模式断面図、(D)は表面活性化を説明する模式図である。
【
図7】本開示の実施形態の変形例を説明する模式断面図である。
【
図8】本開示の実施形態の別の変形例を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
量子デバイスが実装される第1の回路基板(インターポーザ)を含む複数の回路基板からなる3次元実装のパッケージにおいて、特許文献1の構造では、基板間を任意の間隔に制御し、バンプと電極を接合できる。しかしながら、この構造では、各基板間の接合状態の均一性を保つことができない。これは、各基板の接合レイアウトに統一性がないことから、接合時に印加される加熱や荷重、及び超音波などのエネルギーが各接合部間で不均一となるためである。従って、基板間の接合品質を確保できず、安定的な信号伝送が困難となる。
【0010】
上記の課題は一つの例であるが、本発明は上記に限らず、量子デバイスと第1の回路基板と第2の回路基板とを積層してなる超伝導回路装置において、量子デバイスの非接触結合回路と結合する第1の回路基板と第2の回路基板間の電気的接合を高い品質で実現することができる。
【0011】
本開示によれば、量子デバイスと第1の回路基板と第2の回路基板とが3次元に積層された超伝導回路装置(例えば
図1の1、
図5の10)において、
量子デバイス(
図1の11、
図5の110)に配置された非接触結合回路(
図1の11b、
図5の110b)と、
第1の回路基板(
図1の12、
図5の120)に配置された、前記量子デバイスの非接触結合回路と離間して対向配置された非接触結合回路用伝送部(
図1の12b、
図5の120)と、
第1の回路基板に設けられた貫通ビア(
図1の12g、
図5の120g)と、
第2の回路基板(
図1の13、
図5の130)と第1の回路基板の接合部(第1の回路基板と第2の回路基板間を接続する接合バンプを含む)(
図1の16、
図5の160)と、
が、第2の回路基板より第1の回路基板を貫通ビアを介して量子デバイスへの信号の入力及び/又は出力を行うための伝送回路部(
図1の14、
図5の140)を構成している。
【0012】
本開示によれば、上記伝送回路部を複数備えた超伝導回路装置において、
第2の回路基板と第1の回路基板との接合部と、
第1の回路基板の貫通ビアと、
第1の回路基板と量子デバイス間の伝送部(第1の回路基板の非接触結合回路用伝送部と量子デバイスの非接触結合回路を含む)と、
は、複数の伝送回路部間でレイアウトが統一されている。
【0013】
かかる構成により、量子デバイスが搭載された第1の回路基板と第2の回路基板との接合時に、加熱や加圧等の伝搬が均一となり、第2の回路基板と第1の回路基板との接合品質が高く、確実な信号伝送が可能となる。
【0014】
また、本開示によれば、第2の回路基板と第1の回路基板との接合部の直上に、第1の回路基板と量子デバイスとの接合部を設けることで、第2の回路基板と第1の回路基板との接合時に、加熱や加圧等の伝搬が好適となり、より接合品質を高めることができる。
【0015】
更に、本開示によれば、第2の回路基板より第1の回路基板の貫通ビアを介して量子デバイスへの信号の入力及び/又は出力を行うための伝送回路部として、量子デバイスの非接触結合回路への伝送回路部以外の伝送回路部(第2の伝送回路部)(
図1の14a、
図5の140a)においても、
第2の回路基板と第1の回路基板との接合部(
図1の16a、
図5の160a)と、
第1の回路基板の貫通ビア(
図1の12g、
図5の120g)と、
第1の回路基板と量子デバイスとの接合部(
図1の17、
図5の170)と、
は、複数の第2の伝送回路部(
図1の14a、
図5の140a)間でレイアウトが統一されている。
【0016】
本開示によれば、上記構成としたことで、第2の回路基板と第1の回路基板の接合部に対して接続品質の向上と安定化を実現可能としている。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態の超伝導回路装置1の断面の一例を模式的に示す模式断面図である。
図1を参照すると、超伝導回路装置1は、量子デバイス11と第1の回路基板12と第2の回路基板13を有している。第1の回路基板12はインターポーザともいう。このため、第1の回路基板(インターポーザ)12と表記する場合もある。第2の回路基板13はパッケージ基板ともいう。このため、第2の回路基板(パッケージ基板)13と表記する場合もある。なお、
図1では、引き出し線等により図面の煩雑さを回避するため、同一の要素の参照符号は説明上必要なものに制限している。
【0018】
量子デバイス11は、チップ母材(基板)11eの表面11cに、量子回路11aと、非接触結合回路11bと、第1の電極11dと、回路11fと、不図示のGND(グランド)回路を有する。不図示のGND回路は、チップ母材11eの表面11cに形成されたGND面(GND plane)であってもよい。特に制限されないが、回路11fは、
図1の左右の量子回路11aを接続する結合器(coupler)であってもよい。量子デバイス11は、半導体プロセスを応用して製造されるチップ(ベアチップ)であってもよい。この場合、量子チップともいう。量子デバイス11は、第1の回路基板12に対してフェイスダウン(量子回路11a等が配置された表面11cを下にした状態)でフリップチップ(flip-chip)実装されている。
【0019】
第1の回路基板12は、量子デバイス11のチップ母材(基板)11eの表面11cと対向する面(第1の面)12aにおいて、量子回路11aの非接触結合回路11bと離間して対向配置された非接触結合回路用伝送部12bと、第1の接合バンプ12cと、ダミーバンプ12dと、を有する。ダミーバンプ12dは、GND回路に接続された接合バンプ(GND回路バンプ)であってもよい。GND回路バンプは、量子デバイス11の表面11cの不図示のGND回路に接続されるか、第1の回路基板12の第1の面12aの不図示のGND回路に接続される構成としてもよい。ダミーバンプ12dがGND回路バンプでない場合、量子デバイス11の表面11cにおいて回路や配線に接続されず、孤立した島状のものであってもよい。なお、ダミーバンプ12dを配置しない構成もあり得る。
【0020】
第1の回路基板12は、第2の回路基板13と対向する面(第2の面)12eに第2の電極12fを有する。また、第1の回路基板12には、第1の回路基板12の母材(基板)12hを貫通し第1の面12aの配線(電極)と第2の面12eの配線(電極)を電気的に接続する貫通ビア12gが設けられている。
【0021】
なお、
図1において、ダミーバンプ12dは、第1の接合バンプ12cと異なる図柄(パタン)で図示されているが、これは図面上ダミーバンプ12dを明示させるためであり、第1の接合バンプ12cと同一の構造(同一の導電材料、同一の寸法)で構成されてもよい。また、ダミーバンプ12dに接合される第1の電極11dは、第1の接合バンプ12cに接合される第1の電極11dと異なる図柄(パタン)で図示されているが、これは、ダミーバンプ12dに接合される電極を明示するためのものであり、これらは同一の導電材料で同一の膜厚等で構成されてもよい。
【0022】
第2の回路基板13は、第1の回路基板12の第2の面12eと対向する第1の面13bに、第2の接合バンプ13aを有する。第2の回路基板13には、母材(基板)13gを貫通し、第1の面13bの配線(電極13c)と、第1の面13bと反対側の第2の面13eの配線(電極13f)を接続する貫通ビア13dが設けられている。
【0023】
第1の回路基板12の第1の面12aの非接触結合回路用伝送部12bと、量子デバイス11の非接触結合回路11bとが対向配置した状態で、第1の回路基板12の第1の面12aの第1の接合バンプ12cと、量子デバイス11の第1の電極11dとが物理的に接合している。
【0024】
第2の回路基板13と、量子デバイス11が搭載された第1の回路基板12において、第2の接合バンプ13aが第1の回路基板12の第2の面12eの第2の電極12fと直接に接合していることによって、量子デバイス11の非接触結合回路11bは、第1の回路基板12の非接触結合回路用伝送部12b、貫通ビア12gを介して第2の回路基板13に電気的に接続されている。
【0025】
(a)第2の接合バンプ13aを含む第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16と、
(b)第1の回路基板12の貫通ビア12g、及び、
(c)第1の回路基板12の非接触結合回路用伝送部12bと、量子回路11aの非接触結合回路11bからなる第1の回路基板12と量子デバイス11間の伝送部15と、
が、各伝送回路部14で統一したレイアウトとされている。すなわち、第2の回路基板13と第1の回路基板12と量子デバイス11のそれぞれの配置・配線のレイアウトにおいて、例えば第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16の2次元平面上での位置を基準として、第1の回路基板12の貫通ビア12gの位置(相対位置)と、第1の回路基板12と量子デバイス11間の伝送部15の位置(相対位置)とが、
図1の左右の伝送回路部14で、同一又は略同一とされる。あるいは、第1の回路基板12と量子デバイス11間の伝送部15の位置を基準として、第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16の位置と、第1の回路基板12の貫通ビア12gの位置を、
図1の左右の伝送回路部14で同一又は略同一としてもよい。あるいは、第1の回路基板12の貫通ビア12gの位置を基準として、第2の回路基板13と第1の回路基板12との接合部16と、第1の回路基板12と量子デバイス11間の伝送部15の位置を、
図1の左右の伝送回路部14で同一又は略同一としてもよい。
【0026】
また、第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16の直上は、第1の回路基板12と量子デバイス11間に接合部(ダミーバンプ12dであってもよい)が配置されている。
【0027】
更に、第2の回路基板13より第1の回路基板12の貫通ビア12gを介して量子デバイス11への信号の入力及び/又は出力用の伝送回路部として、量子デバイス11の非接触結合回路11bへの伝送回路部14以外においても、量子デバイス11の非接触結合回路11bへの伝送回路部14と同様に、
(a)第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16aと、
(b)第1の回路基板12の貫通ビア12gと、
(d)第1の接合バンプ12cを含む第1の回路基板12と量子デバイス11の接合部17と、
が、複数の伝送回路部14a間で統一したレイアウトとされている。すなわち、第2の回路基板13と第1の回路基板12と量子デバイス11のそれぞれの配置・配線のレイアウトにおいて、例えば第2の回路基板13と第1の回路基板12の接合部16aの2次元平面上での位置を基準として、第1の回路基板12の貫通ビア12gの位置(相対位置)、第1の回路基板12と量子デバイス11の接合部17の位置(相対位置)が、
図1の左右の伝送回路部14aで同一又は略同一とされる。
【0028】
以下の実施形態では、前記一実施形態よりも取り扱いの容易な超伝導回路装置10の例について説明する。
【0029】
図2は、超伝導回路装置10に用いる量子デバイス110の表面110c(
図1の11cに対応)を例示した模式的平面図である。量子デバイス110は、チップ母材を有し、その表面110cには超伝導材料からなる第1の電極110dと、量子回路110aと、非接触結合回路110bと、回路110fと、不図示のGND回路が形成されている。
図2の第1の電極110dと、量子回路110aと、非接触結合回路110bと、回路110fは、
図1の第1の電極11dと、量子回路11aと、非接触結合回路11bと、回路11fにそれぞれ対応させることができる。
【0030】
第1の電極110dは、例えば、量子回路110aと不図示の配線に接続している。量子回路110aとしては、例えばジョセフソン接合を用いた量子ビットを含む。非接触結合回路110bは、例えば、量子回路110aと不図示の配線に接続している。非接触結合回路110bは、例えば、第1の回路基板120の第1の面の非接触結合回路用伝送部120bと非接触で結合し信号の入力及び/又は出力のための、キャパシティブカップリング回路や、インダクティブカップリング回路である。
【0031】
超伝導材料には、例えば、ニオブ、ニオブ窒化物、アルミニウム、インジウム、鉛、錫、レニウム、パラジウム、チタン、チタン窒化物、タンタル、あるいはこれらを含む合金を用いることができる。チップ母材(基板)には、例えばシリコンを用いることができる。
【0032】
図2の量子デバイス110において、矩形型の回路110fの上辺側に配置された二つの電極についても、接合バンプで第1の回路基板120に接合するようにしてもよい。
【0033】
図3(A)は、第1の回路基板120の第1の面120a(
図1の12aに対応)を例示した模式平面図である。第1の回路基板120はインターポーザともいい、第1の回路基板(インターポーザ)120と表記する場合もある。
図3(A)には、第1の面120aに対向して配置される量子デバイス110の表面110cに配設された量子回路110a(
図2参照)が仮想線で示されている。
【0034】
第1の回路基板120の母材は、線膨張率等を考慮して、好ましくは、量子デバイス110のチップ母材(基板)と同じ材料(例えばシリコン)で構成される。第1の回路基板120の第1の面120a(
図1の12aに対応)には、非接触結合回路用伝送部120bと、第1の接合バンプ120cと、ダミーバンプ120dが形成されている。
図3(A)の非接触結合回路用伝送部120bと、第1の接合バンプ120cと、ダミーバンプ120dは、
図1の非接触結合回路用伝送部12bと、第1の接合バンプ12cと、ダミーバンプ12dに対応させることができる。
【0035】
ダミーバンプ120dは、第1の接合バンプ120cと同様の突起部を有している。第1の回路基板120において、ダミーバンプ120dは、例えば、どこにも接続されていない浮島となっている。さらに、突起部は、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部160の直上に配置され、量子回路特性の劣化の観点から、好ましくは、干渉やクロストークが小さくなるエリアに配置する。
【0036】
図3(B)は、第1の回路基板120の第2の面120e(
図1の12eに対応)を例示した模式平面図である。第1の回路基板120の第2の回路基板130と対向する第2の面120eには、第2の電極120f(
図1の12fに対応)が形成されている。さらに、第1の回路基板120の第1の面120aと第2の面120eの配線を電気的に接続する不図示の貫通ビアが形成されている。
【0037】
第1の接合バンプ120cは、所定の高さを持ち、上面が平坦な突起部を有している。突起部は、例えば銅(Cu)等の常伝導体や絶縁体(SiO2、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜など)の表面を超伝導膜でコーティングした構成としてもよい。突起部の平坦性は、例えば、粗さがRa(arithmetic average roughness) 1nm(nanometer)以下となるように形成することが好ましい。突起部の高さは、第1の回路基板120と量子デバイス110間の非接触結合で設計した信号の入出力特性が得られる高さとする。具体的な数値としては、例えば、2μm(micrometer)から10μmの高さとすることができる。超伝導材料には、例えば、ニオブ、ニオブ窒化物、アルミニウム、インジウム、鉛、錫、レニウム、パラジウム、チタン、チタン窒化物、タンタル、あるいはこれらを含む合金を用いることができる。第1の接合バンプ120cは、第1の面120aにおいて、不図示の配線層に接続している。
【0038】
第2の電極120fは、上面が所定の深さの凹部を有していてもよい。第2の電極120fは、超伝導材料でも常伝導材料であってもよく、例えば、表面に金などで被着した構成としてもよい。第2の電極120fは、例えば、不図示の配線層や貫通ビアに接続している。
【0039】
第1の回路基板120の基板母材120hを貫通する貫通ビア120gは、ウェハを孔開けし、導電部材を埋め込んで貫通電極を形成する。貫通ビア120gのホール内壁に埋め込まれる導電部材は、超伝導材料でも常伝導材料(銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)など)であってもよい。第1の回路基板120において、貫通ビア120gは、例えば、非接触結合回路用伝送部120bや不図示の配線層に接続している。
【0040】
図4は、超伝導回路装置1に用いる第2の回路基板130の第1の面130b(
図1の13bに対応)を例示した模式平面図である。第2の回路基板130はパッケージ基板ともいい、第2の回路基板(パッケージ基板)130と表記する場合もある。
【0041】
第2の回路基板130の母材は、線膨張率等を考慮して、好ましくは、第1の回路基板120の母材と同じ材料で構成される。量子デバイス110をフリップチップ実装した第1の回路基板120と、第1の回路基板120を実装した第2の回路基板130を線膨張率が同じ材料で構成することで、極低温への冷却過程において、母材(基板)の線膨張率の差で生じる反り、変形等を抑制・緩和することができる。第2の回路基板130の第1の回路基板120と対向する第1の面130bには、第2の接合バンプ130aが形成されている。第2の接合バンプ130aは、所定の高さを持つ突起部を有している。突起部は、例えばインジウム(In)等の融点が低く、展延性の高い超伝導材料又は、第1の接合バンプ120cと同等の材料を用いることができる。また、第2の接合バンプ130aの形状は、ドーム状や円柱などであってもよい。第2の接合バンプ130aは、第1の面130bにおいて、例えば、不図示の配線層に接続している。
【0042】
図5は、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板120と、第2の回路基板130とを接合して形成した超伝導回路装置10の一例を説明する模式断面図であり、各基板は
図2乃至
図4のA-A’線の断面に対応している。量子デバイス110は、フェイスダウンで第1の回路基板120にフリップチップ実装されていることによって、第1の回路基板120の非接触結合回路用伝送部120bと量子デバイス110の非接触結合回路110bとが対向配置された状態(第1の回路基板120と量子デバイス110間の伝送部150)で第1の接合バンプ120cと第1の電極110dが物理的に接合している。
【0043】
第1の回路基板120の第2の電極120fは、基板母材120h上に形成された配線上に、超伝導材料あるいは常伝導材料の薄膜を積層して形成されている。この配線部は、例えば、アルミニウムや銅、金、白金、これらを含む合金を用いて形成することができる。薄膜は、例えば、表面に金などで被着した構成としてもよい。
【0044】
第2の回路基板130の第2の接合バンプ130aは、基板母材130g上に形成された多層配線上に、例えば、融点が低く、展延性の高い材料からなる突起部で形成されている。突起部は、例えば、超伝導材料であるインジウムや、常伝導材料である金などの金属を用いて形成されている。インジウムなどの融点が低く、展延性の高い材料を突起部に適用することで、低い接合エネルギーで第1の回路基板120と第2の回路基板130とを接合することができる。このため、先に接合されている第1の回路基板120と量子デバイス110の接合部へのダメージを抑制することができる。なお、配線部と第2の接合バンプ130aの密着強度を確保するために、チタン、窒化チタン、インジウム等の下地を追加しても良い。また、突起部の下部に、例えば、銅などで形成されたピラーを配置した構造にすることで、第1の回路基板120と第2の回路基板130の接合の高さを制御し、隣接する接合バンプとの短絡(ショート)等を回避することができる。さらに、第2の接合バンプ130aにおいて、配線部と基板母材130gとの密着性を高めるように、配線部が下地層を持つ構成としてもよい。
【0045】
第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160と、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の回路基板120と量子デバイス110間の伝送部150と、
は、第2の回路基板130より量子デバイス110の非接触結合回路110bへの各伝送回路部140間で統一したレイアウトとされている。
【0046】
さらに、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部160の直上には、第1の回路基板120と量子デバイス110間に接合部(ダミーバンプ120d)が配置される。
【0047】
また、第2の回路基板130より量子デバイス110の非接触結合回路110bへの伝送回路部140以外において、
第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160aと、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の接合バンプ120cを含む第1の回路基板120と量子デバイス110との接合部170と、からなる伝送回路部140aについて、
第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160aと、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の回路基板120と量子デバイス110との接合部170と、
は、各伝送回路部140a間で統一したレイアウトとされている。
【0048】
上記構成により、後述される接合工程において、印加する加熱や加圧等が、複数の接合部間で、均一かつ好適に伝播される。
【0049】
第2の回路基板130の第2の接合バンプ130aと第1の回路基板120の第2の電極120fとは、表面を活性化した後に、表面同士を当接させることにより接合されている。この接合技術は、常温接合として一般的に知られている。
【0050】
上記の接合技術のほかに、例えば超音波や圧着等の工法がある。この接合により、展延性のある第2の接合バンプ130aは、第2の電極120fの表面粗さに追従し、それぞれ構成する材料による非結晶層又は合金層を界面に形成した状態で、強固に結合されている。したがって、安定した接合状態が得ることができるため、高い接合品質を確保することが可能である。
【0051】
なお、上記の説明では、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部160の直上に配置する接合部をダミーバンプ120dと示しているが、不図示のGND回路と接続しているGND回路用の接合バンプであってもよい。
【0052】
また、ダミーバンプ120dは、
第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部160と、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の回路基板120と量子デバイス110間の伝送部150と、
が、各伝送回路部140間で統一されたレイアウトであれば、配置しなくてもよい。
【0053】
なお、本開示は、
図5に例示した接合部(例えば接合バンプ120c、120d)の形状や配置に制限されるものでない。例えば、多角形の柱状等も適用でき、設計した量子回路110aと、非接触結合回路110bと、GND回路の動作特性が得られる任意の位置に配置することができる。
図5に示した貫通ビア120gも、
図5に示した配置に制限されるものではないことは勿論である。例えば、貫通ビア120gは、接合バンプ(例えば120c)の直下等にも配置してもよい。また、各回路の形状が、十字型や方形型の形状で例を示しているが、これらに制限されるものでなく、任意の形状とすることができる。
【0054】
次に、上記した超伝導回路装置10の製造方法の一例について説明する。
【0055】
まず、
図6(A)に示すように、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板120と、第2の回路基板130とを、互いの接合面が対向する向きで、
図6(D)に模式的に示すように、真空チャンバー5内にこれらを配置し、真空排気口9から不図示の真空ポンプで真空引きを行う。この時、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板120は、第1の固定治具(ステージ)2によって固定されている。固定方法として、クランプ方式や静電チャック方式が適用できる。また、第2の回路基板130も第2の固定治具(ステージ)3によって固定されている。固定方法として、クランプ方式や静電チャック方式が適用できる。真空チャンバー5内の真空度としては、例えば、10
-6Pa(Pascal)程度が好ましい。第1の固定治具(保持部材)2はXY並進移動機構6に接続し、Z方向移動機構7とZ軸回り回転機構8によって下側の第2の固定治具3に対してX方向とY方向への並進移動と、Z方向の移動、Z軸回りの回転による位置決めが可能とされる。
【0056】
次に、
図6(B)に示すように、活性化装置4aを用いて、第1の回路基板120の接合部となる第2の電極120fの表面の吸着物や酸化物を除去して、接合部を活性化させる。同様に、活性化装置4bを用いて、第2の回路基板130の接合部となる第2の接合バンプ130aの、表面の吸着物や酸化物を除去して、接合部を活性化させる。活性化装置4a、4bとしては、例えば、
図6(D)に例示したように、イオンや中性原子ビームなどを照射する装置を用いることができる。
【0057】
次に、
図6(C)に示すように、第2の電極120fと、第2の接合バンプ130aとが対向するように、第1の回路基板120と第2の回路基板130との位置合わせを行う。位置合わせは、
図6(D)の第1の固定治具2の第2の固定治具3に対するX方向とY方向への並進移動とZ軸回りの回転等によって行う。真空度を維持した状態で、第2の電極120fと、第2の接合バンプ130aを当接させ加圧する。第1の回路基板120の第2の電極120fと、第2の回路基板130の第2の接合バンプ130aの接触面同士を接触させて
図6(D)のZ方向移動機構7によって加圧する。その際、不図示のZ軸圧力センサによって加圧下で接触している接触面に垂直な方向の圧力を測定し加圧を制御するようにしてもよい。温度は、例えば、常温でも良いし、例えば100℃以下の低温であってもよい。この時、展延性のある第2の接合バンプ130aは、第2の電極120fの表面粗さに追従する。第2の接合バンプ130aと第2の電極120fの接合界面には非結晶層を形成し、強固に結合する。
【0058】
なお、例えば、第1の回路基板120と第2の回路基板130のそれぞれにアライメントマーク(不図示)を設けて、赤外線カメラ(
図6(D)では不図示)による透過画像を用いて位置を調整することにより、両者の位置合わせを行うことができる。
【0059】
なお、
図6(B)、
図6(D)では、表面活性化接合による超伝導回路装置10の製造方法について説明したが、超音波(例えば大気下で低温にて超音波を印加)、又は、圧着等の接合工法でも接合することができる。
【0060】
本実施形態によれば、
図5に例示したように、第2の回路基板130より貫通ビア120gと、第1の回路基板120の非接触結合回路用伝送部120bを介して量子デバイス110の非接触結合回路110bへの信号を入出力する伝送回路部140を複数備えた超伝導回路装置において、
第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160と、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の回路基板120と量子デバイス110間の伝送部150と、
が、各伝送回路部140間でレイアウトが統一されている構成としたことで、例えば、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合時に加熱や加圧等の伝搬が均一となる。
【0061】
また、第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160の直上において、第1の回路基板120と量子デバイス110間に接合部(ダミーバンプ)120dを設けることで、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合時に、加熱や加圧等の伝搬が好適となる。
【0062】
上述とあわせて、伝送回路部140以外に、第2の回路基板130より貫通ビア120gと、量子デバイス110と第1の回路基板120との接合部170(第1の接合バンプ120c)を介して量子デバイス110への信号を入出力する伝送回路部140aについても、
第2の回路基板130と第1の回路基板120との接合部160aと、
第1の回路基板120の貫通ビア120gと、
第1の回路基板120と量子デバイス110との接合部170と、
が、各伝送回路部140a間でレイアウトが統一されている構成としたことで、少なくとも第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部に対して、接合品質(電気的接続品質)を高めることができる。その結果、第2の回路基板130と第1の回路基板120間の安定的な信号伝送を確保できる。
【0063】
また、本実施形態の製造方法によれば、真空中で接合表面の活性化と接合を行うことによって、第1の回路基板120の第2の電極120fと、第2の回路基板130の第2の接合バンプ130aとが再酸化することなく接合できる。このため、信頼性の高い接合を形成することができる。
【0064】
また、第2の接合バンプ130aが展延性を有しており、その表面が第2の電極120fの表面の粗さに追従するため、安定性した接合状態が得ることができる。
【0065】
更に、常温又は100℃以下の低温での接合であることから、加熱による量子回路110aの特性への影響や部材の熱膨張に起因した実装時の位置ズレが小さく、正確な実装を行うことができる。
【0066】
図5及び
図6を参照して説明した実施形態では、第2の回路基板(パッケージ基板)130に、例えば、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板(インターポーザ)120が1つ接合された3次元実装のパッケージの例について説明した。本実施形態では、量子デバイス110と第1の回路基板(インターポーザ)120を含む複数の回路基板からなる3次元実装パッケージの別の変形例について説明する。
【0067】
図7は、超伝導回路装置10の変形例の断面を模式的に例示した模式的断面図である。
図5の例では、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板120は、第2の回路基板130上に1つ実装されているが、
図7の例では、第2の回路基板130上に、量子デバイス110を搭載した第1の回路基板120が複数実装されている。
【0068】
量子デバイス110と、第2の回路基板130、第1の回路基板120の構成、材料については、
図5乃至
図6を参照して説明した実施形態と同様である。すなわち、
図7においても、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部(第2の接合バンプ)と、第1の回路基板120の貫通ビアと、第1の回路基板120と量子デバイス110間の伝送部とのそれぞれのレイアウトが、各伝送回路部140で統一したレイアウトとなっている。さらに、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部の直上には、第1の回路基板120と量子デバイス110間に接合部(例えば
図5のダミーバンプ120d)が配置される。また、量子デバイス110の非接触結合回路への伝送回路部140以外において、
図5を参照して説明したように、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部(第2の接合バンプ)と、第1の回路基板120の貫通ビアと、第1の回路基板120と量子デバイス110間の接合部(第1の接合バンプ)とからなる伝送回路部について、第2の回路基板130と第1の回路基板120の接合部と、第1の回路基板120の貫通ビアと、第1の接合バンプを含む第1の回路基板120と量子デバイス110間の接合部とのそれぞれのレイアウトが各伝送回路部間で、統一したレイアウトとなっている。
【0069】
図7の変形例によれば、一つの量子デバイス110に集約できなかった量子回路110aを複数の量子デバイス110に分配することできる。従って、超伝導回路装置のビット数を増やすことが可能である。
【0070】
上記実施形態では、第2の回路基板130に、例えば、量子デバイス110が搭載された第1の回路基板(インターポーザ)120が1つ接合された3次元実装のパッケージの例について説明した。以下では、量子デバイス110と第1の回路基板(インターポーザ)120を含む複数の回路基板からなる3次元実装パッケージのさらなる変形例について説明する。
【0071】
図8は、超伝導回路装置10のさらなる変形例の断面を模式的に例示した模式的断面図である。
図6や
図7を参照して説明した例では、量子デバイス110は、第1の回路基板120上に1つ実装されている。
図8では、量子デバイス110は、第1の回路基板120上に複数実装されている。第1の回路基板120と第2の回路基板130、及び上述していない量子デバイス110の構成、材料については、
図5乃至
図7を参照して説明した前記実施形態と同様である。
【0072】
上記の構造により、量子デバイス110に集約できなかった量子回路110aを複数の量子デバイス110に分散配置できる。従って、超伝導回路装置10のビット数を増やすことが可能である。
【0073】
量子デバイス110と第1の配線基板(インターポーザ)120を含む複数の回路基板からなる3次元実装のパッケージにおいて、第1の回路基板120と量子デバイス110間における非接触結合回路110bに外部信号を入出力する第2の回路基板130と第1の回路基板120間を電気的に接合する構成の超伝導回路装置に好適である、
【0074】
なお、上記の特許文献1の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1、10 超伝導回路装置
2 第1の固定治具
3 第2の固定治具
4a、4b 活性化装置
5 真空チャンバー
6 XY並進移動機構
7 Z方向移動機構
8 Z軸回り回転機構
9 真空排気口
11、110 量子デバイス
11a、110a 量子回路
11b、110b 非接触結合回路
11c、110c 表面
11d、110d 第1の電極
11e、110e チップ母材(基板)
11f、110f 回路
12、120 第1の回路基板(インターポーザ)
12a、120a 第1の面(量子デバイスとの対向面)
12b、120b 非接触結合回路用伝送部
12c、120c 第1の接合バンプ
12d、120d ダミーバンプ(又はGND回路用の接合バンプ)
12e、120e 第2の面(第2の回路基板との対向面)
12f、120f 第2の電極
12g、120g 貫通ビア
12h、120h 母材(基板)
13、130 第2の回路基板(パッケージ基板)
13a、130a 第2の接合バンプ
13b、130b 第1の面
13c、130c 電極
13d、130d 貫通ビア
13e、130e 第2の面
13f、130f 電極
13g、130g 母材(基板)
14、14a、140、140a 伝送回路部
15、150 第1の回路基板と量子デバイス間の伝送部
16、16a、160、160a 第2の回路基板と第1の回路基板との接合部
17、170 第1の回路基板と量子デバイスとの接合部