(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141411
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】地絡検出方法、地絡検出システム、および地絡検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20241003BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053033
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】593058905
【氏名又は名称】一般財団法人 関西電気保安協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】但見 収司
【テーマコード(参考)】
2G014
2G033
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AB33
2G014AC15
2G033AA01
2G033AB01
2G033AC02
2G033AD14
2G033AF00
2G033AF05
(57)【要約】
【課題】非接地系電路のどこで地絡が発生したかを検出することができる地絡検出方法、地絡検出システム、および地絡検出装置を提供する。
【解決手段】複数の地絡検出装置10の各々が、地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流およびノードの零相電圧を検出し、複数の地絡検出装置10の各々が、零相電流および零相電圧をサンプリングし、複数の地絡検出装置10の各々が、サンプリングされた零相電流およびサンプリングされた零相電圧に基づいて、地絡箇所が、ノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定し、複数の地絡検出装置10の各々が、地絡箇所の判定結果を監視サーバ20に送信し、監視サーバ20が、複数の地絡検出装置10の各々からの地絡箇所の判定結果を受信し、監視サーバ20が、地絡箇所の判定結果に基づいて、非接地系電路における地絡箇所を特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地絡検出装置の各々が、前記地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出するステップと、
前記複数の地絡検出装置の各々が、前記ノードの零相電圧を検出するステップと、
前記複数の地絡検出装置の各々が、前記零相電流をサンプリングするステップと、
前記複数の地絡検出装置の各々が、前記零相電圧をサンプリングするステップと、
前記複数の地絡検出装置の各々が、前記サンプリングされた零相電流および前記サンプリングされた零相電圧に基づいて、地絡箇所が、前記ノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定するステップと、
前記複数の地絡検出装置の各々が、前記地絡箇所の判定結果を監視サーバに送信するステップと、
前記監視サーバが、前記複数の地絡検出装置の各々からの前記地絡箇所の判定結果を受信するステップと、
前記監視サーバが、前記複数の地絡検出装置の各々からの前記地絡箇所の判定結果に基づいて、前記非接地系電路における地絡箇所を特定するステップ、とを備えた地絡検出方法。
【請求項2】
前記判定するステップは、
前記サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出するステップと、
前記サンプリングされた零相電流を前記微分値で除算することによって、判定指標を算出するステップと、を備える、請求項1記載の地絡検出方法。
【請求項3】
前記判定するステップは、さらに、
前記判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出するステップを含む、請求項2記載の地絡検出方法。
【請求項4】
前記判定するステップは、さらに、
前記積分値が正の場合に、前記地絡箇所が、前記ノードの下流側であると判定し、前記積分値が正でない場合に、前記地絡箇所が、前記ノードの上流側であると判定するステップを含む、請求項3記載の地絡検出方法。
【請求項5】
前記特定するステップは、各地絡検出装置の判定結果と、前記非接地系電路における地絡箇所との対応関係を定めた情報に基づいて、前記非接地系電路における地絡箇所を特定するステップを含む、請求項1記載の地絡検出方法。
【請求項6】
前記複数の地絡検出装置の各々が、商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を生成するステップをさらに備え、
前記零相電流をサンプリングするステップは、前記複数の地絡検出装置の各々が、前記信号に基づいて、前記零相電流をサンプリングするステップを含み、
前記零相電圧をサンプリングするステップは、前記複数の地絡検出装置の各々が、前記信号に基づいて、前記零相電圧をサンプリングするステップを含む、請求項1記載の地絡検出方法。
【請求項7】
前記所定の倍数は、256倍または512倍である、請求項6記載の地絡検出方法。
【請求項8】
複数の地絡検出装置と、監視サーバとを備えた地絡検出システムであって、
前記複数の地絡検出装置の各々は、
前記地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出する零相電流検出器と、
前記ノードの零相電圧を検出する零相電圧検出器と、
前記零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングする第1のA/D変換回路と、
前記零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする第2のA/D変換回路と、
前記サンプリングされた零相電圧および前記サンプリングされた零相電流に基づいて、地絡箇所が、前記ノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定する判定回路と、
前記地絡箇所の判定結果を監視サーバに送信する送信回路と、
前記監視サーバは、
前記複数の地絡検出装置の各々からの前記地絡箇所の判定結果を受信する受信回路と、
前記監視サーバが、前記地絡箇所の判定結果に基づいて、前記非接地系電路における地絡箇所を特定するプロセッサ、とを含む地絡検出システム。
【請求項9】
前記複数の地絡検出装置の各々は、
前記サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出する微分回路と、
前記サンプリングされた零相電流を前記微分値で除算することによって、判定指標を算出する除算回路と、をさらに含む、請求項8記載の地絡検出システム。
【請求項10】
前記複数の地絡検出装置の各々は、
前記判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出する積分回路を、さらに含む、請求項9記載の地絡検出システム。
【請求項11】
前記判定回路は、前記積分値が正の場合に、前記地絡箇所が、前記ノードの下流側であると判定し、前記積分値が正でない場合に、前記地絡箇所が、前記ノードの上流側であると判定する、請求項10記載の地絡検出システム。
【請求項12】
前記複数の地絡検出装置の各々は、さらに、
商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を出力するPLL回路を備え、
前記第1のA/D変換回路は、前記PLL回路から出力される信号に基づいて、前記零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングし、
前記第2のA/D変換回路は、前記PLL回路から出力される信号に基づいて、前記零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする、請求項8記載の地絡検出システム。
【請求項13】
前記所定の倍数は、256倍または512倍である、請求項12記載の地絡検出システム。
【請求項14】
地絡検出装置であって、
前記地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出する零相電流検出器と、
前記ノードの零相電圧を検出する零相電圧検出器と、
商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を出力するPLL回路と、
前記PLL回路から出力される信号に基づいて、前記零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングする第1のA/D変換回路と、
前記PLL回路から出力される信号に基づいて、前記零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする第2のA/D変換回路と、
前記サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出する微分回路と、
前記サンプリングされた零相電流を前記微分値で除算することによって、判定指標を算出する除算回路と、
前記判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出する積分回路と、
前記積分値が正の場合に、地絡箇所が、前記ノードの下流側であると判定し、前記積分値が正でない場合に、前記地絡箇所が、前記ノードの上流側であると判定する判定回路と、
前記判定の結果を監視サーバに送信する送信回路と、を備えた、地絡検出装置。
【請求項15】
前記所定の倍数は、256倍または512倍である、請求項14記載の地絡検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地絡検出方法、地絡検出システム、および地絡検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地絡発生箇所が構内であるか否かを判定する装置が知られている。たとえば、特許文献1の装置は、非接地系電路で発生した地絡事故によりその非接地系電路に現出した零相電圧を検出する零相電圧検出手段と、地絡事故の発生時に非接地系電路に流れる零相電流を検出する零相電流検出手段とが接続される。この装置は、零相電圧検出手段により得られた零相電圧の瞬時値を時間で微分する零相電圧微分手段と、その零相電圧微分手段により算出された微分値を零相電流に対して所定の演算式でもって演算する演算手段と、その演算結果に基づいて地絡事故の発生箇所が構内あるいは構外のいずれであるかを判定する判定手段とを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接地系電路である配電系統の形態は多様である。たとえば、配電系統には、複数のサブ電気設備が渡り配線で接続されている直列連系構成、主回線からサブ電気設備にハブによって分岐接続している分岐回路構成、および直列連系構成と分岐回路構成とが混合した構成などが存在する。
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置は、地絡発生箇所が構内であるか否かしか判定することができない。
【0006】
それゆえに、本開示の目的は、非接地系電路のどこで地絡が発生したかを検出することができる地絡検出方法、地絡検出システム、および地絡検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の地絡検出方法は、複数の地絡検出装置の各々が、地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出するステップと、複数の地絡検出装置の各々が、ノードの零相電圧を検出するステップと、複数の地絡検出装置の各々が、零相電流をサンプリングするステップと、複数の地絡検出装置の各々が、零相電圧をサンプリングするステップと、複数の地絡検出装置の各々が、サンプリングされた零相電流およびサンプリングされた零相電圧に基づいて、地絡箇所が、ノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定するステップと、複数の地絡検出装置の各々が、地絡箇所の判定結果を監視サーバに送信するステップと、監視サーバが、複数の地絡検出装置の各々からの地絡箇所の判定結果を受信するステップと、監視サーバが、複数の地絡検出装置の各々からの地絡箇所の判定結果に基づいて、非接地系電路における地絡箇所を特定するステップ、とを備える。
【0008】
好ましくは、判定するステップは、サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出するステップと、サンプリングされた零相電流を微分値で除算することによって、判定指標を算出するステップと、を備える。
【0009】
好ましくは、判定するステップは、さらに、判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出するステップを含む。
【0010】
好ましくは、判定するステップは、さらに、積分値が正の場合に、地絡箇所が、ノードの下流側であると判定し、積分値が正でない場合に、地絡箇所が、ノードの上流側であると判定するステップを含む。
【0011】
好ましくは、特定するステップは、各地絡検出装置の判定結果と、非接地系電路における地絡箇所との対応関係を定めた情報に基づいて、非接地系電路における地絡箇所を特定するステップを含む。
【0012】
好ましくは、複数の地絡検出装置の各々が、商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を生成するステップをさらに備え、零相電流をサンプリングするステップは、複数の地絡検出装置の各々が、信号に基づいて、零相電流をサンプリングするステップを含み、零相電圧をサンプリングするステップは、複数の地絡検出装置の各々が、信号に基づいて、零相電圧をサンプリングするステップを含む。
【0013】
好ましくは、所定の倍数は、256倍または512倍である。
本開示の地絡検出システムは、複数の地絡検出装置と、監視サーバとを備え、複数の地絡検出装置の各々は、地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出する零相電流検出器と、ノードの零相電圧を検出する零相電圧検出器と、零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングする第1のA/D変換回路と、零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする第2のA/D変換回路と、サンプリングされた零相電圧およびサンプリングされた零相電流に基づいて、地絡箇所が、ノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定する判定回路と、地絡箇所の判定結果を監視サーバに送信する送信回路と、監視サーバは、複数の地絡検出装置の各々からの地絡箇所の判定結果を受信する受信回路と、監視サーバが、地絡箇所の判定結果に基づいて、非接地系電路における地絡箇所を特定するプロセッサ、とを含む。
【0014】
好ましくは、複数の地絡検出装置の各々は、サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出する微分回路と、サンプリングされた零相電流を微分値で除算することによって、判定指標を算出する除算回路と、を含む。
【0015】
好ましくは、複数の地絡検出装置の各々は、さらに、判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出する積分回路を含む。
【0016】
好ましくは、判定回路は、積分値が正の場合に、地絡箇所が、ノードの下流側であると判定し、積分値が正でない場合に、地絡箇所が、ノードの上流側であると判定する。
【0017】
好ましくは、複数の地絡検出装置の各々は、さらに、商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を出力するPLL回路を備え、第1のA/D変換回路は、PLL回路から出力される信号に基づいて、零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングし、第2のA/D変換回路は、PLL回路から出力される信号に基づいて、零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする。
【0018】
好ましくは、所定の倍数は、256倍または512倍である。
本開示の地絡検出装置は、地絡検出装置が接続されている非接地系電路のノードを流れる零相電流を検出する零相電流検出器と、ノードの零相電圧を検出する零相電圧検出器と、商用交流電源の周波数の所定の倍数の周波数の信号を出力するPLL回路と、PLL回路から出力される信号に基づいて、零相電流検出器で検出された零相電流をサンプリングする第1のA/D変換回路と、PLL回路から出力される信号に基づいて、零相電圧検出器で検出された零相電圧をサンプリングする第2のA/D変換回路と、サンプリングされた零相電圧の瞬時値を時間微分することによって、微分値を算出する微分回路と、サンプリングされた零相電流を微分値で除算することによって、判定指標を算出する除算回路と、判定指標を所定時間内で積分することによって、積分値を算出する積分回路と、積分値が正の場合に、地絡箇所が、ノードの下流側であると判定し、積分値が正でない場合に、地絡箇所が、ノードの上流側であると判定する判定回路と、判定の結果を監視サーバに送信する送信回路と、を備える。
【0019】
好ましくは、所定の倍数は、256倍または512倍である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、非接地系電路のどこで地絡が発生したかを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態の地絡検出システムの構成を表わす図である。
【
図4】地絡検出装置が接続されるノードの上流側で地絡事故が発生した場合の零相電流I0、零相電圧V0、および判定結果を表わす図である。
【
図5】地絡検出装置が接続されるノードの下流側で地絡事故が発生した場合の零相電流I0、零相電圧V0、および判定結果を表わす図である。
【
図7】地絡区間特定テーブルの例を表わす図である。
【
図8】地絡検出装置10の処理手順を表わすフローチャートである。
【
図9】監視サーバ20による地絡箇所特定手順を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[実施の形態]
図1は、実施の形態の地絡検出システムの構成を表わす図である。
【0023】
地絡検出システムは、複数の地絡検出装置10-1~10-9と、監視サーバ20とを備える。
【0024】
非接地系電路1の複数のノードN1~N9に複数の地絡検出装置10~10-9が配置される。受電点と受電所3との間のノードND1に地絡検出装置10-1が配置されている。受電所3とサブ変電所2Aとの間のノードND2に地絡検出装置10-2が配置されている。サブ変電所2Aとサブ変電所2Bとの間のノードND3に地絡検出装置10-3が配置されている。サブ変電所2Bとサブ変電所2Cとの間のノードND4に地絡検出装置10-4が配置されている。非接地系電路1の分岐点D1とD2との間のノードND5に地絡検出装置10-5が配置されている。分岐点D2と負荷31との間のノードND6に地絡検出装置10-6が配置されている。分岐点D2と負荷32との間のノードND6に地絡検出装置10-7が配置されている。分岐点D2と負荷33との間のノードND6に地絡検出装置10-8が配置されている。分岐点D2と負荷34との間のノードND6に地絡検出装置10-9が配置されている。
【0025】
以下の説明では、地絡検出装置10-1~10-9を総称して、地絡検出装置10と記載することもある。
【0026】
図2は、地絡検出装置10の構成を表わす図である。
地絡検出装置10は、零相電圧検出器11と、零相電流検出器12と、A/D変換器37,38と、PLL(Phase Locked Loop)回路35と、電源回路36と、微分回路13と、除算回路14と、判定回路15と、送信回路16とを備える。
【0027】
電源回路36は、商用交流電源と接続される。
PLL回路35は、商用交流電源の周波数(50または60Hz)の所定の倍数の周波数の信号を出力する。たとえば、PLL回路35は、商用交流電源の周波数(50または60Hz)の256倍の周波数(12.8kHzまたは15.36kHz)、または512倍の周波数(25.6kHzまたは30.72kHz)の信号を出力する。
【0028】
零相電圧検出器11は、地絡事故の発生により、地絡検出装置10が接続されている非接地系電路1のノードNDXに現出した零相電圧V0を検出する。
【0029】
A/D変換器38は、PLL回路35から出力される信号に基づいて、零相電圧検出器11で検出された零相電圧V0をサンプリングする。零相電圧V0は、12.8kHzまたは15.36kHz(256倍の場合)、25.6kHzまたは30.72kHz(512倍の場合)でサンプリングされる。
【0030】
零相電流検出器12は、地絡事故の発生により、地絡検出装置10が接続されている非接地系電路1のノードNDXに流れる零相電流I0を検出する。
【0031】
A/D変換器37は、PLL回路35から出力される信号に基づいて、零相電流検出器12で検出された零相電流I0をサンプリングする。零相電流I0は、12.8kHzまたは15.36kHz(256倍の場合)、25.6kHzまたは30.72kHz(512倍の場合)でサンプリングされる。
【0032】
零相電圧V0および零相電流I0が、このようなサンプリング周波数でサンプリングされることによって、誘導雷および開閉時のサージ電圧の影響をなくすために、アナログ側のカットオフ周波数を10kHzに設定していた場合にでも、非接地系電路の地絡検出に影響しないようにすることができる。
【0033】
微分回路13は、零相電圧検出器11により得られた零相電圧V0の瞬時値を時間で微分して、微分値DV(=dV0/dt)を得る。
【0034】
除算回路14は、零相電流検出器12により検出された零相電流I0を、微分回路13により算出された零相電圧V0の微分値DVで除算して、判定指標R(=I0/DV)を得る。
【0035】
判定回路15は、除算回路14により算出された判定指標Rに基づいて地絡事故の発生箇所が、ノードNDXの上流側と下流側のうちのいずれであるかを判定する。
【0036】
送信回路16は、判定結果を監視サーバ20に送信する。
図3は、判定回路15の構成を表わす図である。
【0037】
判定回路15は、積分回路18と、プロセッサ17とを備える。
積分回路18は、判定指標Rを所定時間内で積分して、積分値Sを得る。
【0038】
プロセッサ17は、積分値Sに基づいて地絡事故の発生箇所が、接続されるノードNDXの上流側と下流側のうちのいずれであるかを判定する。
【0039】
地絡事故の発生箇所が下流側である場合、零相電圧V0の位相に対して、零相電流I0の位相は、90°進む。零相電圧検出器11により検出される零相電圧V0をVsinωtとすると、零相電流検出器12により検出される零相電流I0は、Isin(ωt+90°)=Icosωtとなる。一方、微分回路13により得られる微分値dV0/dtは、d(Vsinωt)/dt=ωVcosωtとなる。従って、判定指標R(=I0/(dV0/dt))は、I/ωVとなり、常に正の値となる。
【0040】
よって、判定回路15は、判定指標Rの積分値Sが正の値となれば、地絡事故の発生箇所が下流であると判定する。
【0041】
地絡事故の発生箇所が上流側である場合、零相電圧V0の位相に対して零相電流I0の位相は、90°遅れる。零相電圧検出器11により検出される零相電圧V0をVsinωtとすると、零相電流検出器12により検出される零相電流I0は、Isin(ωt-90°)=-Icosωtとなる。一方、微分回路13により得られる微分値dV0/dtは、d(Vsinωt)/dt=ωVcosωtとなる。従って、判定指標R(=I0/(dV0/dt))は、-I/ωVとなり、常に負の値となる。
【0042】
よって、判定回路15は、判定指標Rの積分値Sが負の値となれば、地絡事故の発生箇所が上流であると判定する。
【0043】
図4は、地絡検出装置が接続されるノードの上流側で地絡事故が発生した場合の零相電流I0、零相電圧V0、および判定結果を表わす図である。
【0044】
図4に示すように、急峻なパルス状の波形を持つ零相電流I0および零相電圧V0が現出した場合であっても、零相電流I0を零相電圧V0の微分値dV0/dtで除算した判定指標Rが正の値となる。その結果、地絡事故の発生箇所が地絡検出装置10の下流側であることを容易かつ確実に判定することができる。
【0045】
図5は、地絡検出装置が接続されるノードの下流側で地絡事故が発生した場合の零相電流I0、零相電圧V0、および判定結果を表わす図である。
【0046】
図4に示すように、急峻なパルス状の波形を持つ零相電流I0および零相電圧V0が現出した場合であっても、零相電流I0を零相電圧V0の微分値dV0/dtで除算した判定指標Rが負の値となる。その結果、地絡事故の発生箇所が地絡検出装置10の上流側であることを容易かつ確実に判定することができる。
【0047】
図6は、監視サーバ20の構成を表わす図である。
監視サーバ20は、受信回路21と、プロセッサ22と、地絡区間特定テーブル記憶装置24と、表示装置23とを備える。
【0048】
受信回路21は、地絡検出装置10からの判定結果を受信する。
地絡区間特定テーブル記憶装置24は、地絡区間特定テーブルを記憶する。
【0049】
図7は、地絡区間特定テーブルの例を表わす図である。
地絡区間特定テーブルは、地絡検出装置10-1~10-9による判定結果に対応する地絡発生区間を定める。地絡検出装置10-iによって、地絡発生箇所がノードNDiよりも上流側であるか、あるいは下流側であるかを判定されている。
【0050】
たとえば、地絡発生箇所が、ノードND1よりも上流側、かつノードND2よりも上流側、かつノードND3よりも上流側、かつノードND4よりも上流側、かつノードND5よりも上流側、かつノードND6よりも上流側、かつノードND7よりも上流側、かつノードND8よりも上流側、かつノードND9よりも上流側の場合に、地絡発生箇所がノードND1よりも上流側であることが示されている。
【0051】
地絡発生箇所が、ノードND1よりも下流側、かつノードND2よりも下流側、かつノードND3よりも上流側、かつノードND4よりも上流側、かつノードND5りも下流側、かつノードND6よりも下流側、かつノードND7よりも上流側、かつノードND8よりも上流側、かつノードND9よりも上流側の場合に、地絡発生箇所がノードND6よりも下流側であることが示されている。
【0052】
プロセッサ22は、地絡区間特定テーブルに基づいて、各地絡検出装置の判定結果に基づいて、地絡発生箇所を特定する。
【0053】
表示装置23は、プロセッサ22によって特定された地絡発生箇所を表示する。
図8は、地絡検出装置10の処理手順を表わすフローチャートである。
【0054】
ステップS101において、非接地系電路1において地絡事故が発生した場合、零相電圧検出器11が、地絡検出装置10が接続されるノードNDXの零相電圧V0を検出し、零相電流検出器12が、ノードNXに流れる零相電流I0を検出する。A/D変換器38は、PLL回路35から出力される信号に基づいて、零相電圧検出器11で検出された零相電圧V0を12.8kHzまたは15.36kHz(256倍の場合)、25.6kHzまたは30.72kHz(512倍の場合)でサンプリングする。
【0055】
零相電流検出器12は、地絡事故の発生により、地絡検出装置10が接続されている非接地系電路1のノードNDXに流れる零相電流I0を検出する。
【0056】
A/D変換器37は、PLL回路35から出力される信号に基づいて、零相電流検出器12で検出された零相電流I0を12.8kHzまたは15.36kHz(256倍の場合)、25.6kHzまたは30.72kHz(512倍の場合)でサンプリングする。
【0057】
ステップS102において、微分回路13は、零相電圧V0の瞬時値を時間微分する。微分回路13は、時刻tにおける零相電圧V0の瞬時値V0(t)と、所定数のサンプリング時間Δt経過後の時刻t′の零相電圧V0の瞬時値V0(t′)との差をΔtで除算することによって、零相電圧V0の微分値dV0/dtを算出する。
【0058】
ステップS103において、除算回路14は、零相電流I0を零相電圧V0の微分値dV0/dtで除算することによって判定指標R(=I0/(dV0/dt)を算出する。ここで、除算値{I0/(dV0/dt)}の分母となる零相電圧V0の微分値dV0/dtがゼロとなる場合には除算処理が不可能となる。その場合には、判定指標Rが除算値{I0/(dV0/dt)}がゼロとなるような例外的な処理が必要となる。
【0059】
ステップS104において、積分回路18は、所定の時間内の判定指標Rを積分して、積分値S(=Σ〔I0/(dV0/dt)〕)を得る。
【0060】
ステップS105において、積分値Sの絶対値が所定の閾値THAよりも大きい場合には、処理がステップS106に進み、積分値Sの絶対値が所定の閾値THA以下の場合には、ステップS107に進む。
【0061】
ステップS106において、プロセッサ17は、地絡事故が発生したと判別する。その後、処理がステップS108に進む。
【0062】
ステップS107において、プロセッサ17は、判定誤差の許容範囲内のため、地絡事故が発生していないと判別する。その後、処理がステップS101に戻る。
【0063】
ステップS108おいて、積分値Sが正の値であれば、処理がステップS109に進み、積分値Sが負の値であれば、処理がステップS110に進む。
【0064】
ステップS109において、プロセッサ17は、地絡事故の発生箇所が地絡検出装置10が接続されるノードの下流側であると判定する。
【0065】
ステップS110において、プロセッサ17は、地絡事故の発生箇所が地絡検出装置10が接続されるノードの上流側であると判定する。なお、判定誤差を考慮する必要がない場合には、積分回路18を省略することができる。
【0066】
ステップS111において、判定回路15は、判定結果を監視サーバ20に送信する。
図9は、監視サーバ20による地絡箇所特定手順を表わすフローチャートである。
【0067】
ステップS201において、受信回路21は、各地絡検出装置10からの判定結果を受信する。
【0068】
ステップS202において、プロセッサ22は、地絡区間特定テーブルを参照して、各地絡検出装置の判定結果に基づいて、地絡発生箇所を特定する。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、非接地系電路の複数の箇所に設置された地絡検出装置において検出された情報と、地絡区間特定テーブルとを用いることによって、非接地系電路のどの箇所で地絡が発生したのかを検出することができる。なお、本実施の形態では、地絡検出装置は、判定指標R(=I0/(dV0/dt)の積分値Sに基づいて、地絡箇所が、接続されているノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定したが、これに限定するものではない。地絡検出装置は、その他の手法によって、地絡箇所が、接続されているノードの上流側か、あるいは下流側であるかを判定してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 非接地系電路、2A,2B,2C サブ変電所、3 受電所、10 地絡検出装置、11 零相電圧検出器、12 零相電流検出器、13 微分回路、14 除算回路、15 判定回路、16 送信回路、17,22 プロセッサ、18 積分回路、20 監視サーバ、21 受信回路、23 表示装置、24 地絡区間特定テーブル記憶装置、31,32,33,34 負荷、35 PLL回路、36 電源回路、37,38 A/D変換器。