(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141412
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】低温装置用熱交換器制御システムおよびその方法、そのシステムを備える空気分離装置
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20241003BHJP
F28F 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25J3/04 103
F28F27/00 511Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053037
(22)【出願日】2023-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】吉井 博紀
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB02
4D047AB04
4D047CA04
4D047CA17
4D047DA04
4D047DA06
4D047DB03
4D047EA00
(57)【要約】
【課題】低温装置の起動操作、定常運転、停止操作およびスタンバイ時において、機器を保護しながら寒冷を自動的に効率よく管理することができる低温装置用熱交換器制御方法を提供する。
【解決手段】低温装置用熱交換器制御方法は、熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管に設けられる低温機器とを備える低温装置を制御する方法である。この方法は、熱交換器に接続される常温導出配管または熱交換器に少なくとも一つの温度測定装置が配置され、温度測定装置の測定値が設定値未満になった場合に、低温機器または低温放出配管に配置された低温放出弁から低温流体を放出する工程と、低温装置からのガスの圧力が設定値を超えて上昇した場合に、熱交換器に接続される常温放出配管に配置された常温放出弁から常温流体を放出する工程を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御方法であって、
熱交換器に接続される常温導出配管または熱交換器に少なくとも一つの温度測定装置が配置され、温度測定装置の測定値が設定値未満になった場合に、低温機器または低温放出配管に配置された低温放出弁から低温流体を放出する工程と、
低温装置からのガスの圧力が設定値を超えて上昇した場合に、熱交換器に接続される常温放出配管に配置された常温放出弁から常温流体を放出する工程を含む、低温装置用熱交換器制御方法。
【請求項2】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって、
常温配管から分岐する常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の導出ガス配管の内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の導出ガス配管の内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して、低温配管から分岐する低温放出配管に設けられる低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項3】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって、
前記熱交換器の温端より下流側のガスラインから分岐される常温放出配管と、
前記常温放出配管に設けられる常温放出弁と、
前記熱交換器の中間部から出て膨張タービンより上流側の前記ガスラインから分岐される低温放出配管と、
前記低温放出配管に設けられる低温放出弁と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置の測定結果に対応して前記常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項4】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって
前記熱交換器の温端より下流側のガスラインから分岐される常温放出配管と、
前記常温放出配管に設けられる常温放出弁と、
コールドボックス系外の前記系外導出ラインから分岐する低温放出配管と、
前記低温放出配管に設けられる低温放出弁と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の低温装置用熱交換器制御システムを備える液化装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の低温装置用熱交換器制御システムを備える空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温装置用熱交換器制御システムおよびその方法、そのシステムを備える空気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温(-30℃以下)流体を扱う低温装置(例えば、空気分離装置、気体液化装置)は、単原子分子、二原子分子、低級炭化水素、二酸化炭素等の液化や分離に使用され、エネルギー産業および製造業からの大きな需要がある。
上記分子は常温状態から熱交換器によって各液化点まで冷却され、液体として貯留されたり、気液平衡を利用して精留分離した後に、得られた液やガスは製品として装置から導出される。このような低温装置は、断熱のため、真空または非真空のコールドボックス(保冷槽)内に配置される。低温装置に使用する構造材料は、低温部は低温脆性を起こさないオーステナイト系ステンレス鋼等を使用するが、常温部ではこの限りではなく、特に装置が大規模化する場合に鋼材コストの観点から、フェライト系鋼材等を適用することが多い。
低温装置は、配置された機器に液を保持しつつ運用されるが、液はプロセスの物質的及び熱的な緩衝(バッファー)の機能をもつ。特に熱的要素は低温であることから寒冷(あるいは寒冷バッファー)と呼ばれる。
寒冷バッファーは、低温装置の低温を維持し、安定した製品の供給や立ち上げ時間の短縮に貢献するので、可能な限り液を貯留するように操作される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、寒冷バッファーは、環境からの侵入熱や、原料ガスと製品流の不均衡によって蒸発され、系内で低温ガスが過剰となる問題がある。
この場合、低温装置内が過圧状態となり、過剰低温ガスが熱交換器の常温部まで到達すると、常温部が冷却されて低温になり、構造材料が脆化して破損する可能性があるため、低温脆性リスクは技術的に管理しなければならない。低温脆性リスク管理は、装置保護のみならず、破損個所から漏洩し得る気体が窒息等の甚大な人的被害を招く可能性もあることから、労働安全衛生上でも重要である。
その管理手段として、手動操作または圧力コントロール弁にてコールドボックス機器の圧力上昇時や起動、停止操作時の熱交換器の温端温度低下時の対応が求められる。
【0004】
特許文献2では、空気液化分離装置において、熱交換器の導入前の位置から、冷却源経路内の原料空気冷却用流体を系外に放出する圧力調整経路を分岐させ、原料空気冷却用流体の圧力があらかじめ設定された上限圧力を超えないように、圧力調整経路から放出する原料空気冷却用流体の流量を調節するガス放出弁を設けるとともに、高圧塔から導出した流体を低圧塔に導入する流体経路に、高圧塔から低圧塔に流体を流して高圧塔内の圧力上昇を防止するための高圧塔内圧力上昇防止手段として流量設定手段を設けることが記載されている。
しかし、圧力を指標とする操作は機器を安全に管理するのに適している一方で、温度情報を含まないので、寒冷の効率的な管理をすることには適さない。例えば、低温装置の運転停止状態においてコールドボックス内の機器が圧力上昇する時は、侵入熱で温められているにも関わらず寒冷ガスを低温部にて放出するといった寒冷損失を招くことになる。他にも、熱交換器の温端出口流体の温度低下時に、手動操作や圧力コントロールだけで寒冷を放出する対応をした場合、必要以上に寒冷ガスを放出することにならざるを得ない。むろん過剰な寒冷放出は、低温装置の熱効率の低下を意味し、より多くのエネルギーを消費することにつながる。
また、熱交換器制御システムとして、火力プラント向けに温度計を利用して冷却用熱交換器の流量制御するものが知られているが、後述する本開示で考慮するような流量制御が困難な非定常状態の制御に適用することは難しい(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-63610号公報
【特許文献2】特許第7105085号
【特許文献3】特開平08-030337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、低温装置の起動操作、定常運転、停止操作およびスタンバイ時において、機器を保護しながら寒冷を自動的に効率よく管理することができる低温装置用熱交換器制御システムおよびその方法、そのシステムを備える空気分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の低温装置用熱交換器制御システムは、熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管に接続される低温機器を備える低温装置を制御する。
低温配管に接続される低温機器は、例えば、寒冷発生源(例えば、膨張弁、膨張タービン、液化ガス導入配管)、精留塔、気液分離器、サブクーラ、凝縮器などが挙げられる。低温装機器は、コールドボックス(保冷槽)内に配置される。
「低温配管」は、熱交換器の冷端側の低温装置から導出される配管である。
「常温配管」は、熱交換器の温端側の熱交換器に導入される前の配管、あるいは、低温装置から導出され熱交換器の冷端から温端へ導出される配管のうち、温端からでた配管である。
「低温配管」に流れるガス(低温放出ガス)は、例えば、廃ガス、製品ガス、リサイクルガスなどが挙げられる。
「廃ガス」は、大気放出されてもよく、原料空気を清浄のための吸着塔の再生利用のために使用されてもよい。
【0008】
(温度制御による低温パージ)
低温装置用熱交換器制御システムおよび方法は、熱交換器(1)に接続される常温導出配管(L31)または熱交換器(1)に少なくとも一つの温度測定装置(T1)が配置され、低温装置が低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中に、温度測定装置(T1)の測定値が設定値を下回った際に、低温機器または低温配管に配置された低温放出弁(V22、V32、V42)から温度制御(TIC1)によって低温流体を放出する構成である。
低温装置の運用上望ましくない主熱交換器(1)や配管の温度低下が検知された場合、それらを流れる冷ガスの流量を低下させることが必要である。例えば、配管上の流量制御弁を閉塞するようにして流量低下をさせることは、原料空気を主熱交換器(1)に導入しながら運転状況を適切な物質収支に近づけつつ装置を起動する場合に適切とは言えない。一方、冷ガスの過大流量の原因となる低温部の過圧は、寒冷の補充を目的とした液化ガスの蒸発に由来するものなので、放出する妥当性がある。そこで、本発明の構成によれば、温度測定装置(T1)の測定値により、低温配管から分岐される配管または精留塔に接続された低温放出弁(V22、V32、V42)を開閉し、過剰となる冷熱を放出することで温度低下を防止できる。
【0009】
(圧力制御)
低温装置用熱交換器制御システムおよび方法は、低温装置からのガス(低温放出ガス)の圧力が設定値を超えて上昇した場合に、熱交換器(1)に接続される常温配管(L21、L311、L431)に配置された常温放出弁(V21、V31、V41)から、圧力制御によって脱圧するように常温流体を放出する構成である。
寒冷の有効活用の観点からは、低温部で流体を放出することは望ましくないので、可能な限り寒冷を回収してから放出することが望ましい。この構成によって、脱圧の必要がある場合でも、常温配管が安全に運用できる範囲で冷ガスを熱交換器(1)を通し、(L21、L311、L431)に配置された常温放出弁(V21、V31、V41)から放出することができる。
【0010】
(タービン入口・出口の配管構成)
精留塔からの廃ガス(低温放出ガス)を通す廃ガスライン(L31)は、熱交換器(1)の一部を介して導出され、膨張タービン(9)を介して、再び、熱交換器(1)へ送られる。膨張タービン(9)の入口側の廃ガスライン(L31)から分岐する配管(L312)に低温放出弁(V32)が設けられる。また、膨張タービン(9)の出口側の廃ガスライン(L31)から分岐する配管(不図示)に低温放出弁(不図示)が設けられてもよい。また、熱交換器(1)の一部に導入される前に、廃ガスライン(L31)から分岐する配管(不図示)に低温放出弁(不図示)が設けられてもよい。
熱交換器(1)の温端側と比べて冷端側の冷却負荷は大きく、特に装置の冷却のために配置される膨張タービン(9)の運転温度より低い温度帯で顕著である。したがって、熱交換器(1)の冷端部から膨張タービン接続配管まで冷ガスを流すことによって相当する熱交換器部位を冷却する。こうすることで、常温配管まで冷ガスを流すことができない場合でも、寒冷を多少なりとも活用して装置の低温を維持することができる。
【0011】
(熱交換器保護のための流体間温度差制御)
熱交換器の流体間温度差は、熱交換器の構造材の高温側と低温側の応力を生じさせて、機器の破損を招く可能性を高めるので、適切な範囲内に制御されることが好ましい。
熱交換器(1)の流体間温度差は、高温(常温)流体または低温流体各々について、熱交換器(1)の流路または常温配管(L1、L2、L31、L43)や低温配管などに配置された、高温(常温)流体の温度を測定する第一温度測定装置(例えば温度測定装置T2の指示値)と、低温流体の温度を測定する第二温度測定装置(例えば温度測定装置T1の指示値)との温度差から求めてもよく、熱交換器に導入される前の常温導入ガス(原料空気)の温度を測定する第一温度測定装置(例えば温度測定装置T2の指示値)と、熱交換器から導出された後の常温導出ガス(廃ガス)の温度を測定する第二温度測定装置(例えば温度測定装置T1の指示値)との温度差から求めてもよい。
流体間温度差は、高温(常温)流体過剰ないし低温流体過剰によって拡大しうるが、高温(常温)流体過剰に対してはその流入を弁等の開閉制御によって減じてもよい。低温流体過剰については、常温配管(L2)の温度低下が予め設定された所定値未満となり、および/または、上記流体間温度差が予め設定された所定値を超えた場合に、冷熱過剰であると判定されて、低温放出弁(V22、V32、V42)から低温流体を放出する。これにより、流体間温度差を緩和して熱交換器を保護することができる。
【0012】
(ヘッダー配管構成)
低温配管(L31)の一部がヘッダー配管(
図3参照)を有して構成されていてもよい。接続された2つ以上の低温機器からの低温放出ガスがヘッダー配管に流れる。放出弁は、ヘッダー配管または連通する常温導出配管に配置される。
低温機器からの放出ガスは製品として導出されるガス、リサイクルされるプロセスガス、排出される廃ガスに大別されるが、各々熱交換器に接続すると、熱交換器の冷端側及び温端側の接続配管数が非常に増え、構造が複雑になる。また配管と熱交換器の接続には高コストのトランジション継手が使用されるのでコスト増になる。したがって、低温機器からの放出ガスは、製品品質上の影響や減圧によるエネルギー損失が限定的な限り、ヘッダー配管で可能な限り合流してから、熱交換器に導入されることが望ましい。こうすることで、機器構成を簡素化して配管本数やトランジション継手を削減し、低コストの装置構成を実現することができる。
【0013】
(低温放出弁のコールドボックス外の配置)
低温放出弁(V42)は、低温機器または低温配管から分岐した放出配管がコールドボックスから常温環境に突出した部分からさらに分岐した配管(L432a)に設置される。
低温装置の機器及び配管は、環境からの侵入熱を制限するためにコールドボックス内に配置され、コールドボックス外装部からの熱橋(侵入熱が入る経路)が最小化されるように構成される。放出弁が配置される配管はコールドボックス内機器または低温配管と通じているので、配管自体が環境との熱橋となるため、侵入熱制限の観点からは最小化することが望ましい。この構成によれば、コールドボックス内機器または配管に接続されかつコールドボックス外に露出する機器(例えば安全弁)の接続配管の、コールドボックス外の範囲から放出用の配管(L432a)を分岐させて、放出弁(V42)を配置する。これによって、熱橋となりうる配管の数を減らして、侵入熱を制限することができる。
【0014】
(液化装置)
熱交換器(1)の常温導入配管(L1)から、圧縮ガスが導入され、冷却された後に膨張(膨張弁V1で膨張)されて得られた気体成分が(気液分離器100で分離されて)、熱交換器(1)で加熱された後に熱交換器(1)に導入され常温導出配管(L2)から導出される。常温導出配管(L21)に温度測定装置(T1)と圧力測定装置(P1)とが設けられる。温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)未満になった場合に、熱交換器(1)へ導入される前の低温導出配管(L2)側から分岐する配管(L22)に設けられる低温放出弁(V22)を開けて、低温ガスを放出してもよい。圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が設定値(SV_P1)を超えた場合に、熱交換器(1)からでた常温導出配管(L2)側から分岐する配管(L21)に設けられる常温放出弁(V21)を開けて、常温ガスを放出してもよい。圧縮ガスは、例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム、メタン、二酸化炭素が挙げられる。
【0015】
(空気分離装置)
熱交換器(1)の常温導入配管(L1)から圧縮された原料空気が導入され、熱交換器(1)で冷却された後に精留塔(2)へ導入されて液化分離され、得られた空気分離ガス(酸素、窒素、アルゴン、廃ガス等)が熱交換器(1)で加熱された後に常温導出配管(L31、L43)から導出される。常温導出配管(L31、L43)に温度測定装置(T1)と圧力測定装置(P1)とが設けられる。温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)未満になった場合に、膨張タービン(9)へ導入される前の配管(L31)側から分岐する配管(L312)に設けられる低温放出弁(V32)を開けてガスを放出してもよい。
温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)未満になった場合に、コールドボックス系外から、精留塔(4)の塔頂部(43)から導出される配管(L432)から分岐する配管(L432a)に設けられる放出弁(V42)を開けてガスを放出してもよい。
圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が設定値(SV_P1)を超えた場合に、熱交換器(1)からでた配管(L31、L43)側から分岐する配管(L311、L431)に設けられる常温放出弁(V31、V41)を開けて、常温ガスを放出してもよい。
【0016】
(液化ガス導入ライン)
空気分離装置は、外部から液化ガスを寒冷源として供給することができる。
【0017】
(第一開示)
第一低温装置(A1)は、
常温導入ガスを冷却するための熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)の温端から冷端へ常温導入ガスを送る導入ガス配管(L1)と、
前記熱交換器(1)の冷端側の前記導入ガス配管(L1)に設けられる膨張弁(V1)と、
前記膨張弁(V1)で膨張された後で、気体成分と液体成分を分離するための気液分離器(100)と、
前記気液分離器(100)から導出される気体成分を導出し、前記熱交換器(1)の冷端から温端へ送られる導出ガス配管(L2)と、
前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記導出ガス配管(L2)から分岐される常温放出配管(L21)と、
前記常温放出配管(L21)に設けられる常温放出弁(V21)と、
前記熱交換器(1)の冷端より上流側の前記導出ガス配管(L2)から分岐される低温放出配管(L22)と、
前記低温放出配管(L22)に設けられる低温放出弁(V22)と、を備えていてもよい。
【0018】
前記第一の低温装置用熱交換器制御システムは、
前記常温放出配管(L21)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記導出ガス配管(L2)の内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁(V21)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する常温放出弁制御器(PIC1)と、
前記常温放出配管(L21)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記導出ガス配管(L2)の内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁(V22)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する低温放出弁制御器(TIC1)と、
を備えてもいてよい。
前記温度測定装置(T1)は、前記熱交換器(1)の内部の前記導出ガス配管(L2)の内部のガス温度を測定するように設けられていてもよい。
前記低温放出弁(V22)は、前記気液分離器(100)の気相部と接続されていてもよい。
【0019】
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁(V21)を閉から開に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記常温放出弁(V21)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記常温放出弁(V21)を開から閉に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、前記常温放出弁(V21)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、導出ガス配管(L2)あるいは気液分離器(100)の内部圧が上昇した際に、熱交換器(1)に接続される常温側の導出ガス配管(L2)に配置された常温放出弁(V21)から常温流体(常温ガス)を放出することができ、圧力を低下させることができる。
【0020】
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V22)を閉から開に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記低温放出弁(V22)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記低温放出弁(V22)を開から閉に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、前記低温放出弁(V22)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中に、温度測定装置の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)を下回った際に、熱交換器(1)に導入される前に、低温放出弁(V22)から低温流体(低温ガス)を放出することができる。過剰となる冷熱を放出することで、温度低下を防止できる。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が前記設定値(SV_P1)を超えて前記常温放出弁(V21)を閉から開に制御し、所定期間経過後あるいは前記常温放出弁(V21)を開から閉にした後で、所定設定値に、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が前記設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V22)を閉から開に制御してもよい。
常温放出弁(V21)と低温放出弁(V22)とは、お互いに弁が開いている状態があってもよい。
【0021】
(第二開示)
第二の低温装置(A2)は、
原料空気を冷却するための熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)の温端から冷端へ原料空気を送り冷却させ、窒素精留塔(2)の底部(21)送る導入ガス配管(L1)と、
原料空気を精製する精留部(22)を有する窒素精留塔(2)と、
前記窒素精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを凝縮する窒素凝縮器(3)と、
前記窒素凝縮器(3)の気相部(31)から導出されるガスを、前記熱交換器(1)へ送り、その中間部から出て、膨張タービン(9)を介し、再び前記熱交換器(1)を通過させる廃ガスライン(L31)と、
前記窒素精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを、前記熱交換器(21)を通過させて製品窒素ガスとして取り出す製品窒素ガスライン(L23)と、
前記窒素精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液を前記窒素凝縮器(3)の冷媒として送る酸素富化液ライン(L21)と、
を備えていてもよい。
【0022】
第二の低温装置(A2)を制御する第二の低温装置用熱交換器制御システムは、
前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L31)から分岐される常温放出配管(L311)と、
前記常温放出配管(L311)に設けられる常温放出弁(V31)と、
前記熱交換器(1)の中間部から出て前記膨張タービン(9)より上流側の前記廃ガスライン(L31)から分岐される低温放出配管(L312)と、
前記低温放出配管(L312)に設けられる低温放出弁(V32)と、を備えていてもよい。
前記第二の低温装置用熱交換器制御システムは、
前記常温放出配管(L311)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L31)の内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁(V31)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する常温放出弁制御器(PIC1)と、
前記常温放出配管(L311)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L31)の内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁(V32)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する低温放出弁制御器(TIC1)と、
を備えてもよい。
前記温度測定装置(T1)は、前記熱交換器(1)の内部の前記廃ガスライン(L31)の内部のガス温度を測定するように設けられていてもよい。
【0023】
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁(V31)を閉から開に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記常温放出弁(V31)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記常温放出弁(V31)を開から閉に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、前記常温放出弁(V31)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、廃ガスライン(L31)あるいは窒素凝縮器(3)の気相部(31)の内部圧が上昇した際に、熱交換器(1)に接続される常温側の前記常温放出配管(L311)に配置された常温放出弁(V31)から常温流体(常温ガス)を放出することができ、圧力を低下させることができる。
【0024】
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V32)を閉から開に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記低温放出弁(V32)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記低温放出弁(V32)を開から閉に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、前記低温放出弁(V32)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中に、温度測定装置の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)を下回った際に、熱交換器(1)に導入される前に、低温放出弁(V32)から低温流体(低温ガス)を放出することができる。過剰となる冷熱を放出することで、温度低下を防止できる。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が前記設定値(SV_P1)を超えて前記常温放出弁(V31)を閉から開に制御し、所定期間経過後あるいは前記常温放出弁(V31)を開から閉にした後で、所定設定値に、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が前記設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V32)を閉から開に制御してもよい。
常温放出弁(V31)と低温放出弁(V32)とは、お互いに弁が開いている状態があってもよい。
【0025】
(第三開示)
第三の低温装置(A3)は、
原料空気を冷却するための熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)の温端から冷端へ原料空気を送り冷却させ、第一精留塔(中圧精留塔2)の底部(21)送る導入ガス配管(L1)と、
前記中圧精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを凝縮する窒素凝縮器(3)と、
前記窒素凝縮器(3)の気相部(31)から導出されるガスを、前記熱交換器(1)へ送り、その中間部から出て、膨張タービン(9)を介し、再び前記熱交換器(1)を通過させる廃ガスライン(L31)と、
前記中圧精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを、サブクーラ(8)を通過させて第二精留塔(低圧精留塔4)の塔頂部(43)へ送る窒素富化ガスライン(L23)と、
前記窒素精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液を、前記サブクーラ(8)を通過させて、前記第二精留塔(4)の精留部の中間段へ導入する酸素富化液ライン(L21)と、
前記塔頂部(43)と、前記精留部(421、422、423)とを有する第二精留部(4)と、
前記第二精留部(4)の塔頂部(43)から導出されるガスを、前記サブクーラ(8)を通過させて、前記熱交換器(1)を通過させて製品窒素ガスとして取り出す製品窒素ガスライン(L43)と、
前記第二精留塔(4)の精留部(421、422)の中間段から導出される中間段酸素富化ガス(気体、液体、気液混合分)を、アルゴン精留塔(5)の底部(51)へ導入する中間段酸素富化ガス導出ライン(L421)と、
前記底部(51)と、精留部(52)と、塔頂部(53)とを有するアルゴン精留塔(5)と、
前記底部(51)から導出される酸素富化液を、前記第二精留塔(4)の精留部(421、422)の中間段へ導入する酸素富化液導入ライン(L51)と、
前記アルゴン精留塔(5)の前記塔頂部(53)からアルゴン富化ガスを取り出すアルゴン導出ライン(L53)と、
前記アルゴン精留塔(5)の前記塔頂部(53)から導出されるアルゴン富化ガスを、凝縮する凝縮部(6)と、
前記凝縮部(6)の気相部(61)からのガスを導出し、廃ガスライン(L31)へ合流する第二廃ガスライン(L61)と、
前記サブクーラ(8)を通過した前記酸素富化液ライン(L21)から分離し、前記凝縮部(6)の気相部(61)へ導入する酸素富化液分割ライン(L211)と、
を備えていてもよい。
前記第二精留部(4)の塔頂部(43)には、液体窒素(LN2)が供給されてもよい。
【0026】
第三の低温装置(A3)を制御する第三の低温装置用熱交換器制御システムは、第二の低温装置用熱交換器制御システムと同じ構成であってもよい。
【0027】
(第四開示)
第四の低温装置(A4)は、
原料空気を冷却するための熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)の温端から冷端へ原料空気を送り冷却させ、第一精留塔(中圧精留塔2)の底部(21)送る導入ガス配管(L1)と、
前記中圧精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを凝縮する窒素凝縮器(3)と、
前記窒素凝縮器(3)の気相部(31)から導出されるガスを、前記熱交換器(1)を通過させて製品窒素ガスとして取り出す製品窒素ガスライン(L31a)と、
前記中圧精留塔(2)の塔頂部(23)から導出されるガスを、サブクーラ(8)を通過させて第二精留塔(低圧精留塔4)の塔頂部(43)へ送る窒素富化ガスライン(L23)と、
前記窒素精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液を、前記サブクーラ(8)を通過させて、前記第二精留塔(4)の精留部の中間段へ導入する酸素富化液ライン(L21)と、
前記塔頂部(43)と、前記精留部(421、422、423)とを有する第二精留部(4)と、
前記第二精留部(4)の塔頂部(43)から導出されるガスを、前記サブクーラ(8)を通過させて、前記熱交換器(1)を通過させて廃ガスとして取り出す廃ガスライン(L43a)と、
前記第二精留部(4)の塔頂部(43)から導出されるガスを、コールドボックス系外へ導出する系外導出ライン(L432)と、
前記第二精留塔(4)の精留部(421、422)の中間段から導出される中間段酸素富化ガス(気体、液体、気液混合分)を、アルゴン精留塔(5)の底部(51)へ導入する中間段酸素富化ガス導出ライン(L421)と、
前記底部(51)と、精留部(52)と、塔頂部(53)とを有するアルゴン精留塔(5)と、
前記底部(51)から導出される酸素富化液を、前記第二精留塔(4)の精留部(421、422)の中間段へ導入する酸素富化液導入ライン(L51)と、
前記アルゴン精留塔(5)の前記塔頂部(53)からアルゴン富化ガスを取り出すアルゴン導出ライン(L53)と、
前記アルゴン精留塔(5)の前記塔頂部(53)から導出されるアルゴン富化ガスを、凝縮する凝縮部(6)と、
前記凝縮部(6)の気相部(61)からのガスを導出し、前記第二精留塔(4)の精留部(422、423)の中間段に導入する還流ライン(L611)と、
前記サブクーラ(8)を通過した前記酸素富化液ライン(L21)から分離し、前記凝縮部(6)の気相部(61)へ導入する酸素富化液分割ライン(L211)と、
を備えていてもよい。
前記第二精留部(4)の塔頂部(43)には、液体窒素(LN2)が供給されてもよい。
【0028】
第四の低温装置(A4)を制御する第四の低温装置用熱交換器制御システムは、
前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L43a)から分岐される常温放出配管(L431)と、
前記常温放出配管(L431)に設けられる常温放出弁(V41)と、
コールドボックス系外の前記系外導出ライン(L432)から分岐する低温放出配管(L432a)と、
前記低温放出配管(L312)に設けられる低温放出弁(V42)と、を備えていてもよい。
前記第四の低温装置用熱交換器制御システムは、
前記常温放出配管(L431)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L43a)の内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁(V41)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する常温放出弁制御器(PIC1)と、
前記常温放出配管(L432a)よりも上流側あるいは前記熱交換器(1)の温端より下流側の前記廃ガスライン(L43a)の内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁(V42)の開閉(仕切弁、流量制御部弁)を制御する低温放出弁制御器(TIC1)と、
を備えてもよい。
前記温度測定装置(T1)は、前記熱交換器(1)の内部の前記廃ガスライン(L43a)の内部のガス温度を測定するように設けられていてもよい。
【0029】
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁(V41)を閉から開に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記常温放出弁(V41)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記常温放出弁(V41)を開から閉に制御してもよい。
前記常温放出弁制御器(PIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、前記常温放出弁(V41)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、廃ガスライン(L43a)あるいは低圧精留塔(4)の塔頂部(43)の内部圧が上昇した際に、熱交換器(1)に接続される常温側の前記常温放出配管(L431)に配置された常温放出弁(V41)から常温流体(常温ガス)を放出することができ、圧力を低下させることができる。
【0030】
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V42)を閉から開に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記低温放出弁(V42)を閉から開にした後所定期間経過後に、前記低温放出弁(V42)を開から閉に制御してもよい。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、前記低温放出弁(V42)を開から閉に制御してもよい。
この構成によれば、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中に、温度測定装置の測定値(PV_T1)が設定値(SV_T1)を下回った際に、熱交換器(1)に導入される前に、低温放出弁(V42)から低温流体(低温ガス)を放出することができる。過剰となる冷熱を放出することで、温度低下を防止できる。
前記低温放出弁制御器(TIC1)は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が前記設定値(SV_P1)を超えて前記常温放出弁(V31)を閉から開に制御し、所定期間経過後あるいは前記常温放出弁(V41)を開から閉にした後で、所定設定値に、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が前記設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁(V342)を閉から開に制御してもよい。
常温放出弁(V41)と低温放出弁(V42)とは、お互いに弁が開いている状態があってもよい。
【0031】
前記低温装置(A1、A2、A3、A4)は、
流量測量器、圧力測定器、温度測定器、液レベル測定器などの各種計測器と、
制御弁、仕切弁などの各種弁と、
各要素間を連結する配管と、
を有していてもよい。
【0032】
前記低温装置(A1、A2、A3、A4)は、
窒素凝縮器は1つに限定されず、2つ以上でもよく、
アルゴン精留塔は、粗アルゴン精留塔に限定されず、さらに高純度アルゴン精留塔を備えていてもよく、高純度酸素ガスあるいは高純度酸素液を製造する装置構成を含んでいてもよい。
【0033】
(作用効果)
(1)従来は手動操作にて低温脆性のリスクに対応してきたが、適当な低温ガスの放出手段がない場合は保有している液化ガスをドレンし、経路を確保しなければならなかったため、大きな寒冷損失があった。本発明では、低温脆性対策のみならず、効率的な寒冷利用を目的として、温度制御を基本として熱交換器制御システムを構成することで、既知の常温部の圧力調整システムと併用する事で、定常状態のみならず起動や停止を含む装置の運用について、自動的に安全に寒冷を管理することができる。
(2)自動化によって、寒冷にかかるエネルギー消費を削減することのみならず、労働コストも削減することができるので、本発明による産業上利益は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】実施形態1の低温装置用熱交換器制御システムを示す図である。
【
図1B】実施形態1の別の低温装置用熱交換器制御システムを示す図である。
【
図2】実施形態2の低温装置用熱交換器制御システムを示す図である。
【
図3】実施形態3の低温装置用熱交換器制御システムを示す図である。
【
図4】実施形態4の低温装置用熱交換器制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本開示のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本開示の必須の構成であるとは限らない。上流や下流はガス流の流れ方向を基準にしている。
【0036】
(実施形態1)
実施形態1の液化装置A1を
図1Aを用いて説明する。
液化装置A1は、熱交換器1と、膨張弁V1と、気液分離器100と、導入ガス配管L1と、常温放出配管L21と、導出ガス配管L2と、低温放出配管L22と、低温装置用熱交換器制御システムを備える。
【0037】
熱交換器1は、常温導入ガスを冷却する。
導入ガス配管L1は、熱交換器1の温端から冷端へ常温導入ガスを送り、膨張弁V1を介して気液分離器100まで延設される。膨張弁V1は、熱交換器1の冷端側であって、気液分離器100よりも上流側の導入ガス配管L1に設けられる。膨張弁V1は、熱交換器1で冷却した導入ガスを、膨張して液体成分と気体成分にする。気液分離器100は、膨張弁V1で生じた気体成分と液体成分とを分離する。導出ガス配管L2は、気液分離器100から導出される気体成分を導出し、熱交換器1の冷端から温端へ送る。常温放出配管L21は、熱交換器1の温端より下流側の導出ガス配管L2から分岐される配管である。常温放出弁V21は、常温放出配管L21に設けられる。低温放出配管L22は、熱交換器1の冷端より上流側の導出ガス配管L2から分岐される配管である。低温放出弁V22は、低温放出配管L22に設けられる。常温放出弁V21と低温放出弁V22は、自動仕切弁、自動流量制御弁などで構成される。配管L3は、気液分離器100の液体成分を系外へ送る配管ラインであり、仕切弁V3が設けられている。
【0038】
低温装置用熱交換器制御システムは、圧力測定装置P1、常温放出弁制御器PIC1、温度測定装置T1、低温放出弁制御器TIC1を備える。圧力測定装置P1は、常温放出配管L21よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の導出ガス配管L2の内部のガス圧力を測定する。温度測定装置T1は、常温放出配管L21よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の導出ガス配管L2の内部のガス温度を測定する。
【0039】
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定結果に対応して常温放出弁V21の開閉を制御する。
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、常温放出弁V21を閉から開に制御する。常温放出弁制御器PIC1は、常温放出弁V21を閉から開にした後所定期間経過後に、常温放出弁V21を開から閉に制御してもよい。または、常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、常温放出弁V21を開から閉に制御してもよい。
【0040】
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定結果に対応して低温放出弁V22の開閉を制御する。
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、低温放出弁V22を閉から開に制御する。低温放出弁制御器TIC1は、低温放出弁V22を閉から開にした後所定期間経過後に、低温放出弁V22を開から閉に制御してもよい。または、低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、低温放出弁V22を開から閉に制御してもよい。
【0041】
低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、低温放出弁制御器TIC1は、上記動作を実行する構成である。
また、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、常温放出弁制御器PIC1と低温放出弁制御器TIC1とが協働で実行する構成である。常温放出弁制御器PIC1が先に機能し、低温放出弁制御器TIC1がその後であるいは重複して機能してもよい。
【0042】
実施形態1において、液体成分は、物質および寒冷のバッファーとして気液分離器100内に貯留される。装置のプロセスバランス変動や環境からの入熱によって液体成分が過剰に蒸発され、大流量の冷ガスが熱交換器1の冷端から温端に向かって流れ、過剰の寒冷によって常温部配管が冷却される。常温部配管が低温脆性の問題を起こさないように、例えば脆化温度に対して十分余裕をもった設定値(例えば-30℃の脆化温度に対して-20℃)を常温配管(L2)に配置された温度測定装置T1で感知された場合に、低温放出弁V22で低温ガスを放出し、温度測定装置T1の測定温度が安定または昇温傾向になった場合に放出弁を閉じる。常温部に配置された常温放出弁V21は、温度測定装置T1の測定温度が設定値を下回らない限り、常温部から熱交換器1を流れた冷ガスを機器の圧力が保持されるように放出する。圧力測定装置P1は、低温機器と熱交換器1を介して連通した常温配管(L2)に配置することもできるし、低温機器または低温配管に配置することもできる。低温放出弁V22は、コールドボックス内に配置されてもよいし、外部に配置されてもよい。
【0043】
(実施形態1の別実施形態)
別実施形態の液化装置A1を
図1Bを用いて説明する。
図1Aとの違いは、常温配管(L1)の熱交換器1の温端側に、温度測定装置T2を設けている。温度測定装置T2は、熱交換器1の温端より上流側の常温配管L1の内部のガス温度を測定する。低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になり、かつ、流体間温度差(温度測定装置T2の測定値(PV_T2)‐温度測定装置T1の測定値(PV_T1))が、予め設定された所定値を超えた場合に、低温放出弁(V22)から低温流体を放出する構成である。
この流体間温度差を監視する実施形態は、実施形態2から4でも同様に設けることができる。
【0044】
(実施形態2)
実施形態2の液化装置A2を
図2を用いて説明する。
空気分離装置A2は、単式の窒素製造装置として機能する。空気分離装置A2は、熱交換器1と、窒素精留塔2と、窒素凝縮器3と、膨張タービン9と、導入ガスラインL1と、廃ガスラインL31と、常温放出配管L311と、低温放出配管L312と、低温装置用熱交換器制御システムを備える。
【0045】
熱交換器1は、原料空気を冷却する。原料空気は、大気中の空気が予め精製され、圧縮された空気であってもよい。導入ガスラインL1は、熱交換器1の温端から冷端へ原料空気を送り、窒素精留塔2の底部21まで延設される。窒素精留塔2は、底部21と精留部22と塔頂部23を有する。窒素凝縮器3は、窒素精留塔2の塔頂部23から導出される窒素ガスを凝縮する。酸素富化液ラインL21は、窒素精留塔2の底部21から導出される酸素富化液を窒素凝縮器3の冷媒として送る配管ラインである。製品窒素ガスラインL23は、窒素精留塔2の塔頂部23から導出される窒素ガスを、熱交換器21を通過させて製品窒素ガスとして取り出す配管ラインである。廃ガスラインL31は、窒素凝縮器3の気相部31から導出されるガスを、熱交換器1へ送り、その中間部から出て、膨張タービン9を介し、再び熱交換器1を通過させる配管ラインである。
【0046】
低温装置用熱交換器制御システムは、常温放出配管L311と、常温放出弁V31と、低温放出配管L312と、低温放出弁V32を備える。常温放出配管L311は、熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL31から分岐される配管である。常温放出弁V31は、常温放出配管L311に設けられる。低温放出配管L312は、熱交換器1の中間部から出て膨張タービン9より上流側の廃ガスラインL31から分岐される配管である。低温放出弁V32は、低温放出配管L312に設けられる。
【0047】
低温装置用熱交換器制御システムは、圧力測定装置P1、常温放出弁制御器PIC1、温度測定装置T1、低温放出弁制御器TIC1を備える。圧力測定装置P1は、常温放出配管L311よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL31の内部のガス圧力を測定する。温度測定装置T1は、常温放出配管L311よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL31の内部のガス温度を測定する。
【0048】
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定結果に対応して常温放出弁V31の開閉を制御する。
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、常温放出弁V31を閉から開に制御する。常温放出弁制御器PIC1は、常温放出弁V31を閉から開にした後所定期間経過後に、常温放出弁V31を開から閉に制御してもよい。または、常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、常温放出弁V31を開から閉に制御してもよい。
【0049】
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定結果に対応して低温放出弁V32の開閉を制御する。
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、低温放出弁V32を閉から開に制御する。低温放出弁制御器TIC1は、低温放出弁V32を閉から開にした後所定期間経過後に、低温放出弁V32を開から閉に制御してもよい。または、低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、低温放出弁V32を開から閉に制御してもよい。
【0050】
低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、低温放出弁制御器TIC1は、上記動作を実行する構成である。
また、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、常温放出弁制御器PIC1と低温放出弁制御器TIC1とが協働で実行する構成である。常温放出弁制御器PIC1が先に機能し、低温放出弁制御器TIC1がその後であるいは重複して機能してもよい。
【0051】
実施形態2では、熱交換器1と膨張タービン9の接続配管に低温放出弁V32が配置されるが、この位置は熱交換器1の冷端部からすると常温側に、熱交換器1の温単部からは低温側となる位置にある。低温放出弁V32は、常温部低温脆性の問題を解決すると同時に、熱交換器1の低温を少なくとも膨張タービン9の接続配管までの温度帯については維持するように、冷ガスを放出することができる。寒冷はより低温度の方が高価であるので、例えば常温配管(L31)で低温脆性リスクが感知された場合であっても、冷ガスの低温度の寒冷を回収することによって、装置の高効率を維持することができる。
【0052】
(実施形態3)
実施形態3の液化装置A3を
図3を用いて説明する。
空気分離装置A3は、複式の窒素製造装置(中圧精留塔、低圧精留塔)およびアルゴン精留塔を備えて機能する。空気分離装置A3は、熱交換器1と、中圧精留塔2と、窒素凝縮器3、低圧精留塔4と、アルゴン精留塔5、凝縮器6と、サブクーラ8と、膨張タービン9と、導入ガス配管L1と、廃ガスラインL31と、常温放出配管L311と、低温放出配管L312と、窒素富化ガスラインL23と、製品窒素ガスラインL43、低温装置用熱交換器制御システムを備える。
【0053】
熱交換器1は、原料空気を冷却する。原料空気は、大気中の空気が予め精製され、圧縮された空気であってもよい。
導入ガス配管L1は、熱交換器1の温端から冷端へ原料空気を送り、中圧精留塔2の底部21まで延設される。
中圧精留塔2は、底部21と精留部22と塔頂部23を有する。低圧精留部4は、塔頂部43と、精留部421、422、423を有する。窒素凝縮器3は、中圧精留塔2の塔頂部23から導出される窒素ガスを凝縮する。アルゴン精留塔5は、底部51と精留部52と、塔頂部53とを有する。凝縮器6は、アルゴン精留塔5の塔頂部53から導出されるアルゴン富化ガスを凝縮する。
【0054】
酸素富化液ラインL21は、窒素精留塔2の底部21から導出される酸素富化液を、サブクーラ8を通過させて、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段へ導入する配管ラインである。窒素富化ガスラインL23は、中圧精留塔2の塔頂部23から導出されるガスを、サブクーラ8を通過させて低圧精留塔4の塔頂部43へ送る配管ラインである。窒素富化ガスラインL23を分岐した配管を通じて、窒素富化ガスが窒素凝縮器3へ送られて凝縮される。製品窒素ガスラインL43は、低圧精留部4の塔頂部43から導出されるガスを、サブクーラ8を通過させて、熱交換器1を通過させて製品窒素ガスとして取り出す配管ラインである。第二廃ガスラインL61は、凝縮部6の気相部61からのガスを導出し、熱交換器1の冷端に接続されるより上流側の廃ガスラインL31へ合流する配管ラインである。廃ガスラインL31は、窒素凝縮器3の気相部31から導出されるガスを、熱交換器1へ送り、その中間部から出て、膨張タービン9を介し、再び熱交換器1を通過させる配管ラインである。中間段酸素富化ガス導出ラインL421は、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段から導出される中間段酸素富化ガス(気体、液体、気液混合分)を、アルゴン精留塔5の底部51へ導入する配管ラインである。酸素富化液導入ラインL51は、底部51から導出される酸素富化液を、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段へ導入する配管ラインである。アルゴン導出ラインL53は、アルゴン精留塔5の塔頂部53からアルゴン富化ガスを取り出す配管ラインである。アルゴン導出ラインL53から分岐する配管を通じて、アルゴン富化ガスを凝縮部6へ送る、アルゴン富化ガスを凝縮部6で凝縮する。酸素富化液分割ラインL211は、サブクーラ8を通過した酸素富化液ラインL21から分離し、凝縮部6の気相部61へ導入する配管ラインである。液体窒素(LN2)は、供給ラインL4を通じて、低圧精留部4の塔頂部43に供給される。
【0055】
低温装置用熱交換器制御システムは、常温放出配管L311と、常温放出弁V31と、低温放出配管L312と、低温放出弁V32、圧力測定装置P1、常温放出弁制御器PIC1、温度測定装置T1、低温放出弁制御器TIC1を備える。実施形態2と同様の機能であり、説明を省略する。
【0056】
実施形態3では、低圧精留塔4と粗アルゴン塔5から導出された冷ガスが、低温ヘッダー配管に接続された後、温度制御によって低温放出弁V32から冷ガスが放出される。複数の低温機器からの冷ガス放出であっても、簡素な機器構成で本発明の目的を達成することができる。
【0057】
(実施形態4)
実施形態4の液化装置A4を
図4を用いて説明する。
空気分離装置A4は、複式の窒素製造装置(中圧精留塔、低圧精留塔)およびアルゴン精留塔を備えて機能する。空気分離装置A4は、熱交換器1と、中圧精留塔2と、窒素凝縮器3、低圧精留塔4と、アルゴン精留塔5、凝縮器6と、サブクーラ8と、導入ガス配管L1と、廃ガスラインL43aと、常温放出配管L431と、低温放出配管L432aと、窒素富化ガスラインL23と、製品窒素ガスラインL31a、低温装置用熱交換器制御システムを備える。
【0058】
熱交換器1は、原料空気を冷却する。原料空気は、大気中の空気が予め精製され、圧縮された空気であってもよい。
導入ガス配管L1は、熱交換器1の温端から冷端へ原料空気を送り、中圧精留塔2の底部21まで延設される。
中圧精留塔2は、底部21と精留部22と塔頂部23を有する。低圧精留部4は、塔頂部43と、精留部421、422、423を有する。窒素凝縮器3は、中圧精留塔2の塔頂部23から導出される窒素ガスを凝縮する。アルゴン精留塔5は、底部51と精留部52と、塔頂部53とを有する。凝縮器6は、アルゴン精留塔5の塔頂部53から導出されるアルゴン富化ガスを凝縮する。
【0059】
酸素富化液ラインL21は、窒素精留塔2の底部21から導出される酸素富化液を、サブクーラ8を通過させて、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段へ導入する配管ラインである。窒素富化ガスラインL23は、中圧精留塔2の塔頂部23から導出されるガスを、サブクーラ8を通過させて低圧精留塔4の塔頂部43へ送る配管ラインである。窒素富化ガスラインL23を分岐した配管を通じて、窒素富化ガスが窒素凝縮器3へ送られて凝縮される。廃ガスラインL43aは、低圧精留部4の塔頂部43から導出されるガスを、サブクーラ8を通過させ熱交換器1を通過させる配管ラインである。系外導出ラインL432は、低圧精留部4の塔頂部43から導出されるガスを、コールドボックス系外へ導出する配管ラインである。系外導出ラインL432は、安全弁V8に接続される。還流ラインL611は、凝縮部6の気相部61からのガスを導出し、低圧精留塔4の精留部422、423の中間段に導入する配管ラインである。製品窒素ガスラインL31aは、窒素凝縮器3の気相部31から導出されるガスを、熱交換器1を通過させ、製品窒素ガスとして取り出す配管ラインである。中間段酸素富化ガス導出ラインL421は、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段から導出される中間段酸素富化ガス(気体、液体、気液混合分)を、アルゴン精留塔5の底部51へ導入する配管ラインである。酸素富化液導入ラインL51は、底部51から導出される酸素富化液を、低圧精留塔4の精留部421、422の中間段へ導入する配管ラインである。アルゴン導出ラインL53は、アルゴン精留塔5の塔頂部53からアルゴン富化ガスを取り出す配管ラインである。アルゴン導出ラインL53から分岐する配管を通じて、アルゴン富化ガスを凝縮部6へ送る、アルゴン富化ガスを凝縮部6で凝縮する。酸素富化液分割ラインL211は、サブクーラ8を通過した酸素富化液ラインL21から分離し、凝縮部6の気相部61へ導入する配管ラインである。液体窒素(LN2)は、供給ラインL4を通じて、低圧精留部4の塔頂部43に供給される。
【0060】
低温装置用熱交換器制御システムは、常温放出配管L431と、常温放出弁V41と、低温放出配管L432aと、低温放出弁V42、圧力測定装置P1、常温放出弁制御器PIC1、温度測定装置T1、低温放出弁制御器TIC1を備える。常温放出配管L431は、熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL43aから分岐される配管ラインである。常温放出弁V41は、常温放出配管L431に設けられる。低温放出配管L432aは、コールドボックス系外の系外導出ラインL432から分岐する配管ラインである。低温放出弁V42は、低温放出配管L312に設けられる。
【0061】
低温装置用熱交換器制御システムは、圧力測定装置P1、常温放出弁制御器PIC1、温度測定装置T1、低温放出弁制御器TIC1を備える。圧力測定装置P1は、常温放出配管L431よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL43aの内部のガス圧力を測定する。温度測定装置T1は、常温放出配管L431よりも上流側で、かつ熱交換器1の温端より下流側の廃ガスラインL43aの内部のガス温度を測定する。
【0062】
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定結果に対応して常温放出弁V41の開閉を制御する。
常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、常温放出弁V41を閉から開に制御する。常温放出弁制御器PIC1は、常温放出弁V41を閉から開にした後所定期間経過後に、常温放出弁V41を開から閉に制御してもよい。または、常温放出弁制御器PIC1は、圧力測定装置P1の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第二設定値(SV_P2<SV_P1)未満になった際に、常温放出弁V31を開から閉に制御してもよい。
【0063】
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定結果に対応して低温放出弁V42の開閉を制御する。
低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、低温放出弁V42を閉から開に制御する。低温放出弁制御器TIC1は、低温放出弁V42を閉から開にした後所定期間経過後に、低温放出弁V42を開から閉に制御してもよい。または、低温放出弁制御器TIC1は、温度測定装置T1の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第二設定値(SV_T2>SV_T1)を超えた際に、低温放出弁V42を開から閉に制御してもよい。
【0064】
低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、低温放出弁制御器TIC1は、上記動作を実行する構成である。
また、低温状態の流体を機器内部に保有する条件下で、定常運転、起動および停止操作、または運転停止中において、常温放出弁制御器PIC1と低温放出弁制御器TIC1とが協働で実行する構成である。常温放出弁制御器PIC1が先に機能し、低温放出弁制御器TIC1がその後であるいは重複して機能してもよい。
【0065】
実施形態4では、低温放出弁V42が低圧精留塔4から導出された配管L432の、コールドボックスから常温環境に突出した部分から分岐した配管L432aに配置されている。これにより、環境から精留塔等の低温機器への熱侵入を少なくでき、装置の熱効率を維持することができる。
【0066】
(別実施形態)
(1)特に明示していないが、各配管ラインに圧力調整装置、流量制御装置などが設置され、圧力調整または流量調整が行われていてもよい。
(2)特に明示していないが、各ラインに制御弁、仕切弁などが設置されていてもよい。
(3)特に明示していないが、各塔に圧力調整装置、温度測定装置などが設置され、圧力調整または温度調整が行われていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 熱交換器
2 窒素精留塔、中圧精留塔
3 窒素凝縮器
4 低圧精留塔
5 アルゴン精留塔
6 凝縮器
8 サブクーラ
9 膨張タービン
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、該熱交換器の温端側に接続される常温導入ガスまたは常温導出ガスが流れるための常温配管および該熱交換器の冷端側に接続される低温配管と、該低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御方法であって、
前記熱交換器の温端側から導出され前記常温導出ガスが流れる前記常温配管または前記熱交換器に少なくとも一つの温度測定装置が配置され、該温度測定装置の測定値が設定値未満になった場合に、前記低温機器または前記低温配管から分岐する低温放出配管に配置された低温放出弁から低温流体を放出する工程と、
前記低温装置からのガスの圧力が設定値を超えて上昇した場合に、前記熱交換器の温端側に接続される前記常温配管から分岐する常温放出配管に配置された常温放出弁から常温流体を放出する工程を含む、低温装置用熱交換器制御方法。
【請求項2】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって、
常温配管から分岐する常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の導出ガス配管の内部のガス圧力、前記低温配管の内部のガス圧力、前記低温機器のガス圧力のうちから選択される1種以上を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して、常温配管から分岐する常温放出配管に設けられる常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の導出ガス配管の内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して、低温配管から分岐する低温放出配管に設けられる低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項3】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって、
前記熱交換器の温端より下流側のガスラインから分岐される常温放出配管と、
前記常温放出配管に設けられる常温放出弁と、
前記熱交換器の中間部から出て膨張タービンより上流側の前記ガスラインから分岐される低温放出配管と、
前記低温放出配管に設けられる低温放出弁と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置の測定結果に対応して前記常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項4】
熱交換器と、熱交換器に接続される常温配管および低温配管と、低温配管と接続される低温機器と、を備える低温装置を制御する低温装置用熱交換器制御システムであって
前記熱交換器の温端より下流側のガスラインから分岐される常温放出配管と、
前記常温放出配管に設けられる常温放出弁と、
コールドボックス系外の系外導出ラインから分岐する低温放出配管と、
前記低温放出配管に設けられる低温放出弁と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス圧力を測定する圧力測定装置(P1)と、
前記圧力測定装置(P1)の測定結果に対応して前記常温放出弁の開閉を制御する常温放出弁制御器と、
前記常温放出配管よりも上流側あるいは前記熱交換器の温端より下流側の前記ガスラインの内部のガス温度を測定する温度測定装置(T1)と、
前記温度測定装置(T1)の測定結果に対応して前記低温放出弁の開閉を制御する低温放出弁制御器と、を備え、
前記常温放出弁制御器は、前記圧力測定装置(P1)の測定値(PV_P1)が、予め設定されている第一設定値(SV_P1)を超えた際に、前記常温放出弁を閉から開に制御し、
前記低温放出弁制御器は、前記温度測定装置(T1)の測定値(PV_T1)が、予め設定されている第一設定値(SV_T1)未満になった際に、前記低温放出弁を閉から開に制御する、
低温装置用熱交換器制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の低温装置用熱交換器制御システムを備える液化装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の低温装置用熱交換器制御システムを備える空気分離装置。