(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141418
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】レーザマーカ装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20241003BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053047
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松下 真弓
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168CB04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA42
4E168DA43
4E168EA15
4E168JA02
4E168JA03
4E168JA04
4E168JA14
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】様々な印字対象物に対して、印字パターンの疎密の度合いにばらつきがあるパターンを印字する場合において、印字品質を一定にすることが可能なレーザマーカ装置を提供する。
【解決手段】レーザマーカ装置は、印字対象物にレーザ光を照射して印字を行うレーザマーカ装置であって、レーザ光を発振するレーザ発振器と、レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、設定された印字パターンの疎密の度合い及び印字対象物の材料特性に基づいて、印字パターンを補正して補正印字パターンを生成し、レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物に補正印字パターンを描画する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字対象物にレーザ光を照射して印字を行うレーザマーカ装置であって、
レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
設定された印字パターンの疎密の度合い及び前記印字対象物の材料特性に基づいて、前記印字パターンを補正して補正印字パターンを生成し、
前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御して、前記印字対象物に前記補正印字パターンを描画する
レーザマーカ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、
設定された前記印字パターンの粗密の度合いを演算し、
前記粗密の度合いに基づいて、設定された前記印字パターンが疎であるか密であるかを判定し、
前記印字パターンが疎であるか密であるかの判定結果に基づいて、前記印字パターンを補正するか否かを決定し、
前記印字パターンを補正しないと決定された場合には、前記補正印字パターンを生成することなく、設定された前記印字パターンに基づいて前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御して、前記印字対象物に前記印字パターンを描画し、
前記印字パターンを補正すると決定された場合には、前記印字対象物の材料特性に基づいて前記補正印字パターンを生成し、前記補正印字パターンに基づいて前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御して、前記印字対象物に前記補正印字パターンを描画する
レーザマーカ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、設定された前記印字パターンを構成する初期座標を補正し、補正後の座標で構成される印字パターンを前記補正印字パターンとする
レーザマーカ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、
設定された前記印字パターンを構成する線分の最外周を結んで形成される四角形で囲まれた面積のうち、前記線分の面積が占める割合である線分密度を前記疎密の度合いとして演算し、
前記線分密度が密度閾値未満である場合には、前記印字パターンが疎であると判定し、
前記線分密度が前記密度閾値以上である場合には、前記印字パターンが密であると判定する
レーザマーカ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、
設定された前記印字パターンを構成する線分の間隔を表す間隔パラメータを前記粗密の度合いとして演算し、
前記間隔パラメータが間隔閾値以上である場合には、前記印字パターンが疎であると判定し、
前記間隔パラメータが前記間隔閾値未満の場合には、前記印字パターンが密であると判定する
レーザマーカ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、
前記印字パターンが密であると判定された場合には、前記印字パターンを補正すると決定し、
前記印字パターンとしての漢字を複数の要素に区分し、
区分された前記複数の要素ごとに、前記要素の疎密の度合いを演算し、
前記要素の疎密の度合いに応じて、前記要素の補正の度合いを決定する
レーザマーカ装置。
【請求項7】
請求項2に記載のレーザマーカ装置において、
前記レーザ発振器から発振されたレーザ光を画素単位でONとOFFを切り替えるビーム変調部を備え、
前記制御装置は、
設定された前記印字パターンを構成する線分を表示する複数の画素の一番外側の画素を結んで形成される四角形で囲まれた画素のうち、前記線分を表示する画素が占める割合である線分密度を前記疎密の度合いとして演算し、
前記線分密度が密度閾値未満である場合には、前記印字パターンが疎であると判定し、
前記線分密度が前記密度閾値より大きい場合には、前記印字パターンが密であると判定し、
前記印字パターンを補正すると決定された場合には、前記印字対象物の材料特性に基づいて前記補正印字パターンを生成し、前記補正印字パターンに基づいて、前記ビーム変調部を制御する
レーザマーカ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、ONの前記画素とOFFの前記画素が千鳥配置となるように前記ビーム変調部を制御することで、前記印字対象物に前記補正印字パターンの線分を描画する
レーザマーカ装置。
【請求項9】
請求項7に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置は、前記印字対象物の材料特性に応じて、前記複数の画素のONの時間比率を調整する
レーザマーカ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザマーカ装置において、
前記制御装置には、複数の前記印字対象物の材料特性が記憶され、
前記複数の印字対象物の材料特性の中から一つを選択する選択装置を備え、
前記制御装置は、前記選択装置により選択された材料特性に基づいて前記補正印字パターンを生成する
レーザマーカ装置。
【請求項11】
請求項1に記載のレーザマーカ装置において、
前記材料特性は、熱伝導率、吸収率、透過率、及び反射率のうちの少なくとも一つである
レーザマーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を集光した高いエネルギーを用いて印字対象物の表面を溶かしたり、焼いたり、剥離して、日付や製造番号などの文字や、2次元コードや図形などの情報を対象物に印字するレーザマーカ装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、マーキング領域に含まれる文字領域、画像領域、及び枠線等の図形領域の各々毎に、個々の矩形領域に区分し、文字領域及び枠線等の図形領域に対してレーザのベクタ走査によるマーキングを実行し、画像領域に対してレーザのラスタ走査によるマーキングを実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の印字パターン(文字、図形、記号等)からなるマーキングパターンの中に疎の印字パターンと密の印字パターンとが混在する場合、印字パラメータを一定にすると、マーキングされた複数の印字パターンの間で太さ、濃度などの印字品質にバラつきが生じるおそれがある。レーザ光を印字対象物に照射すると、印字対象物がそのエネルギーを吸収して印字される。従って、同じ印字パラメータを設定しても、吸収率の高い印字対象物なのか、低い印字対象物なのかによって、印字後の視認性が大きく変わる。例えば、疎の印字パターンに合わせて高い視認性が得られるように印字パラメータ(レーザパワー、レーザの繰返し周波数、スキャン速度、印字解像度等)が最適化されている場合、密の印字パターンではレーザの熱が溜まりやすくなる。その結果、印字対象物の材料によっては印字線幅が太くなったり、滲んだりして視認性が低下する。一方、密の印字パターンに合わせて高い視認性が得られるように印字パラメータが最適化されていると、疎の印字パターンでは、印字線幅が細くなったり、薄くなったりして視認性が低下する。
【0005】
印字品質を一定にするためには、手動で印字パターンの疎密に応じて印字パラメータを調整することが考えられる。しかしながら、この場合、レーザマーカ装置の使用者の経験と工数が必要となる。このため、使用者によらず、一定の印字品質でマーキングが可能なレーザマーカ装置が要望されている。
【0006】
本発明は、様々な印字対象物に対して、印字パターンの疎密の度合いにばらつきがあるパターンを印字する場合において、印字品質を一定にすることが可能なレーザマーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるレーザマーカ装置は、印字対象物にレーザ光を照射して印字を行うレーザマーカ装置であって、レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、設定された印字パターンの疎密の度合い及び前記印字対象物の材料特性に基づいて、前記印字パターンを補正して補正印字パターンを生成し、前記レーザ発振器から発振されるレーザ光を制御して、前記印字対象物に前記補正印字パターンを描画する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な印字対象物に対して、印字パターンの疎密の度合いにばらつきがあるパターンを印字する場合において、印字品質を一定にすることが可能なレーザマーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るレーザマーカ装置の構成図である。
【
図2A】
図2Aは、印字対象物に形成されたマーキングパターンの一例について示す図である。
【
図2B】
図2Bは、印字対象物に形成されたマーキングパターンの別の例について示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、印字対象物の材料テーブルを示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る制御装置により実行される印字制御処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、印字対象物の材料の選択画面を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、印字パターン領域と印字パターンの一例について示す図である。
【
図8B】
図8Bは、印字パターン領域と印字パターンの別の例について示す図である。
【
図9A】
図9Aは、印字パターンの線分の間隔の一例を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、印字パターンの線分の間隔の別の例を示す図である。
【
図11】
図11は、表示装置のプレビュー画面の変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るレーザマーカ装置の構成図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る制御装置により実行される印字制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14A】
図14Aは、ビーム変調部における印字パターン領域と印字パターンの一例について示す図である。
【
図14B】
図14Bは、ビーム変調部における印字パターン領域と印字パターンの別の例について示す図である。
【
図15A】
図15Aは、ビーム変調部における印字パターンの線分の間隔の一例を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、ビーム変調部における印字パターンの線分の間隔の別の例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の変形例1に係る制御装置により実行される補正処理を説明する図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の変形例2に係る制御装置により実行される補正処理を説明する図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態の変形例3に係る制御装置により実行される補正処理を説明する図である。
【
図19】
図19は、変形例1-1に係る制御装置の制御信号に基づいて表示装置に表示される印字対象物の材料の選択画面を示す図である。
【
図20】
図20は、変形例1-2に係る制御装置の制御信号に基づいて表示装置に表示される印字対象物の材料の選択画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1~
図10Bを参照して、本発明の第1実施形態に係るレーザマーカ装置100について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るレーザマーカ装置100の構成図である。
図1に示すように、レーザマーカ装置100は、印字対象物6に対してレーザ光(レーザビーム)を照射して文字列などのマーキングパターンの印字を行う装置である。レーザマーカ装置100は、レーザ光を出力するレーザ装置110と、レーザ装置110を制御する制御装置120と、レーザの出力条件などを設定する設定装置130と、を備える。
【0012】
レーザ装置110は、レーザ発振器(レーザ光源)1と、ビーム径調整部2と、ガルバノスキャナ111と、ビーム照射部5と、を備える。レーザ発振器1は、制御装置120からの制御信号に基づいてレーザ光を発振する。レーザ発振器1の種類は特に限定されない。レーザ発振器1は、例えば、YAGレーザなどの固体レーザ、CO2レーザなどのガスレーザである。レーザ発振器1からのレーザ光は、パルス光でもよいし、連続光でもよい。
【0013】
ビーム径調整部2は、レーザ発振器1から発振されたレーザ光の径(以下、ビーム径とも記す)を調整する。
【0014】
ガルバノスキャナ111は、レーザ発振器1から発振されるレーザ光をX軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向に2次元走査する。ガルバノスキャナ111は、レーザ光をX軸方向に走査する第1レーザ光走査部3と、レーザ光をY軸方向に走査する第2レーザ光走査部4と、を有する。第1レーザ光走査部3は、第1走査ミラーと第1ガルバノモータを有し、第1ガルバノモータを駆動することにより、第1走査ミラーを回転させる。第1走査ミラーが回転することにより、レーザ光がX軸方向に走査される。第2レーザ光走査部4は、第2走査ミラーと第2ガルバノモータを有し、第2ガルバノモータを駆動することにより、第2走査ミラーを回転させる。第2走査ミラーが回転することにより、レーザ光がY軸方向に走査される。
【0015】
ビーム照射部5は、集光レンズ(fθレンズ)を有し、ガルバノスキャナ111によって2次元走査されたレーザ光を集光し、印字対象物6のスキャンエリアに照射する。したがって、本実施形態に係るレーザ装置110では、ビーム照射部5によって印字対象物6に照射されるレーザ光(レーザビーム)が、ガルバノスキャナ111によってX軸方向とY軸方向に2次元走査される。
【0016】
制御装置120は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置121、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ122、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ123、入力インタフェース、出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、制御装置120は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0017】
不揮発性メモリ122には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ122は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ123は、処理装置121による演算結果及び入力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置121は、不揮発性メモリ122に記憶されたプログラムを揮発性メモリ123に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インタフェース、不揮発性メモリ122及び揮発性メモリ123から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0018】
入力インタフェースは、設定装置130等から入力された信号を処理装置121で演算可能なデータに変換する。出力インタフェースは、処理装置121での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号をレーザ装置110の各種駆動部(レーザ発振器1、第1、第2ガルバノモータ等)、及び設定装置130等に出力する。
【0019】
設定装置130は、使用者によって操作される入力装置131と、表示画面に画像を表示する表示装置132と、を有する。表示装置132は、液晶ディスプレイ等のモニタである。入力装置131は、キーボード、マウス等の操作装置である。なお、入力装置131は、表示装置132の表示画面上に設けられるタッチセンサであってもよい。
【0020】
レーザマーカ装置100は、設定装置130により設定されたマーキングパターンに基づき、印字対象物6にマーキングパターンを印字する。ここで、「印字する」とは、レーザ光を印字対象物6に照射してマーキングパターンを形成すること、すなわちレーザ加工することを指す。マーキングパターンは、1以上の印字パターンによって構成される。印字パターンは、文字、マークなどの記号、及び模様などである。
【0021】
図2Aは、印字対象物6に形成されたマーキングパターンの一例について示す図であり、
図2Bは、印字対象物6に形成されたマーキングパターンの別の例について示す図である。印字対象物6の熱伝導率が想定したものである場合、
図2Aに示すように、視認性の高いマーキングパターン61a,61bが形成される。上段のマーキングパターン61aは、4つの印字パターン62により構成され、下段のマーキングパターン61bは、8つの印字パターン62により構成される。
【0022】
これに対して、印字対象物6の熱伝導率が想定したものよりも大きい場合、
図2Bに示すように、視認性の低いマーキングパターン63aが形成されるおそれがある。上段のマーキングパターン63aは、4つの印字パターン64により構成され、下段のマーキングパターン63bは、8つの印字パターン64により構成される。
図2Bに示す例では、上段のマーキングパターン63aを構成する線分だけでなく、線分同士の隙間にもレーザの熱が伝わり、印字された線分の幅(印字線幅)が設定値よりも大きくなっている。その結果、上段のマーキングパターン63aでは、本来、独立すべき複数の線分が分離せずに一体化されてしまい、視認性が低下している。なお、下段のマーキングパターン63bは、線分の間隔が広いため線分同士が一体化することがなく、視認性が高い。
【0023】
このように、線分の間隔が小さい場合、すなわち、線分の密度が高い場合には、印字されるマーキングパターンの視認性が悪化するおそれがある。従来、使用者は、印字パラメータ(レーザパワー、レーザの繰返し周波数、スキャン速度、印字解像度等)を調整することにより、視認性を向上させていた。しかしながら、印字対象物6に応じて適切な印字パラメータに調整するためには、使用者の経験と工数が必要となる。
【0024】
そこで、本実施形態では、制御装置120が、設定された印字パターンの疎密の度合い及び印字対象物6の材料特性(熱伝導率)に基づいて、印字パターンを補正して補正印字パターンを生成し、レーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物6に補正印字パターンを描画する。以下、本実施形態に係る制御装置120の機能を詳しく説明する。
【0025】
図3は、制御装置120の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置120は、印字座標生成部140、座標記憶部144、印字制御部145、パラメータ設定部146、パラメータ記憶部147、及び表示制御部148としての機能を有する。印字座標生成部140は、初期座標設定部141、座標補正部142、特性記憶部143、及びパターンデータベース149を有する。
【0026】
パラメータ記憶部147には、印字パラメータ、印字対象物6の材料テーブル71(
図4参照)、密度閾値De0、及び間隔閾値d0が記憶されている。パラメータ設定部146は、入力装置131からの入力信号に基づき、印字パラメータ、印字対象物6の材料テーブル、密度閾値De0、及び間隔閾値d0などの各種パラメータを設定する。
【0027】
印字パラメータには、レーザパワー[W]、レーザの繰返し周波数[kHz]、スキャン速度[mm/s]、及び印字解像度[dots/mm]等が含まれる。繰返し周波数とは、一定の周期で生成するパルスレーザの1秒間あたりのパルスレーザ生成数のことを指す。これらの印字パラメータは、使用者が入力装置131を操作することによって変更可能である。パラメータ設定部146は、入力装置131から印字パラメータの情報が入力されると、入力された情報に基づいてパラメータ記憶部147に記憶されている印字パラメータの設定値を更新する。
【0028】
図4は、印字対象物6の材料テーブル71を示す図である。印字対象物6の材料テーブル71は、印字対象物6の材料の種類と、材料特性である熱伝導率[W/m・K]とが対応付けられたデータテーブルである。印字対象物6の材料の種類には、樹脂材料として、塩化ビニル樹脂(PVC)、酢酸ビニル樹脂(PVAC)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、及びポリウレタン(PUR)等がある。また、印字対象物6の材料の種類には、金属材料として、アルミニウム、ステンレス、鉄、及び銅等が含まれる。さらに、印字対象物6の材料の種類には、ガラス材料として、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、及びアルミノケイ酸ガラス等が含まれる。
【0029】
材料テーブル71は、使用者が入力装置131を操作することによって変更可能である。例えば、パラメータ設定部146は、入力装置131から新たな材料の種類とその熱伝導率が入力された場合には、入力された新たな情報を材料テーブル71に追加する。また、パラメータ設定部146は、既に記憶されている材料の種類に対して、熱伝導率の変更情報が入力されると、パラメータ記憶部147に記憶されている材料の熱伝導率を更新する。なお、パラメータ設定部146は、インターネットを介して、新たな材料の種類と、その熱伝導率を取得し、材料テーブル71を更新してもよい。
【0030】
図3に示す特性記憶部143には、材料特性テーブル143aが記憶されている。
図5は、材料特性テーブル143aを示す図である。
図5において、横軸は熱伝導率[W/m・K]を表し、縦軸は印字線幅[μm]を表す。材料特性テーブル143aは、印字対象物6の熱伝導率と印字線幅との関係を規定するデータテーブルである。材料特性テーブル143aは、所定の線幅(基準幅)を設定値として様々な材質の印字対象物6に対して印字処理を実行し、そのときに測定された印字線幅(実測幅)と、印字対象物6の熱伝導率との関係から定められる。所定の熱伝導率(基準熱伝導率)では、実測幅が基準幅と一致する。熱伝導率が基準熱伝導率よりも大きい材質では、実測幅は基準幅よりも大きくなる。また、熱伝導率が基準熱伝導率よりも小さい材質では、実測幅は基準幅よりも小さくなる。材料特性テーブル143aにより規定される印字線幅は、後述する補正処理に用いられる補正パラメータである。
【0031】
図3に示す初期座標設定部141は、入力装置131からの入力信号に基づいて、文字列などのマーキングパターンを構成する印字パターンを設定する。具体的には、初期座標設定部141は、印字パターンを構成する線分の初期座標を設定する。初期座標設定部141により設定される初期座標は、X軸方向座標とY軸方向座標である。パターンデータベース149には、複数の印字パターンごとに、印字パターンと座標データ群とが対応付けられて記憶されている。初期座標設定部141は、設定された印字パターンに対応付けられた座標データ群をパターンデータベース149から読み出し、初期座標として設定する。
【0032】
座標補正部142は、初期座標設定部141により設定された印字パターンの疎密の度合いを演算する。座標補正部142は、演算した粗密の度合いに基づいて、設定された印字パターンが疎であるか密であるかを判定する。座標補正部142は、設定された印字パターンが疎であるか密であるかの判定結果に基づいて、設定された印字パターンを補正するか否かを決定する。座標補正部142は、設定された印字パターンを補正すると決定した場合には、印字対象物6の材料特性に基づいて、設定された印字パターンを構成する初期座標を補正し、補正印字パターンを生成する。補正印字パターンを構成する補正後の座標は、印字座標として座標記憶部144に記憶される。座標補正部142は、設定された印字パターンを補正しないと決定した場合には、補正印字パターンを生成することなく、初期座標を印字座標として座標記憶部144に記憶する。
【0033】
座標補正部142は、特性記憶部143に記憶されている材料特性テーブル143aを参照し、使用者によって選択された印字対象物6の材料特性に基づいて、補正パラメータとしての印字線幅を演算する。座標補正部142は、演算された印字線幅が基準幅よりも大きい場合には、印字線幅と基準幅との差分が大きくなるほど、印字パターンの線分の幅が狭くなるように、初期座標を補正する。なお、座標補正部142は、印字線幅に影響を与える印字パラメータの設定値が、その基準値から乖離している場合には、その乖離分を考慮して補正を行うことが好ましい。例えば、レーザパワーの設定値が、その基準値よりも大きい場合には、その分、印字線幅を狭めるように初期座標を補正することが好ましい。
【0034】
表示制御部148は、座標記憶部144に記憶されている印字座標と、印字パラメータとに基づいて、レーザ加工後のマーキングパターンの予測画像(以下、プレビュー画像)を表示装置132の表示画面に表示させる。
【0035】
印字制御部145は、座標記憶部144に記憶されている印字座標に基づいて、レーザ装置110のビーム径調整部2及びガルバノスキャナ111の動作を制御することにより、レーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御する。これにより、印字対象物6に複数の印字パターンを含むマーキングパターンが描画される。つまり、印字制御部145は、設定された印字パターンを補正しないと決定された場合には、設定された印字パターン(初期座標)に基づいてレーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物6に設定された印字パターンを描画する。一方、印字制御部145は、設定された印字パターンを補正すると決定された場合には、補正印字パターン(補正後の座標)に基づいてレーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物6に補正印字パターンを描画する。
【0036】
図6は、制御装置120により実行される印字制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、例えば、レーザマーカ装置100の起動スイッチがオンされることにより開始される。
【0037】
ステップS110において、パラメータ設定部146は、入力装置131からの入力信号に基づいて、印字対象物6の材料、密度閾値De0及び間隔閾値d0を設定する。
【0038】
図7は、印字対象物6の材料の選択画面160を示す図である。
図7に示すように、印字対象物6の材料の選択画面160には、パラメータ記憶部147に記憶されている材料テーブル71の材料の種類が表示される。本実施形態の選択画面160の表示態様は、階層的な表示態様とされている。材料の種類は、金属材料、ガラス材料、及び樹脂材料に分類されており、各分類が選択されると、選択された分類の材料の種類が表示される。使用者は、材料の変更を行う場合には、入力装置131によって、材料の種類を選択する。パラメータ設定部146は、材料の種類が選択された場合には、選択された材料の種類をパラメータ記憶部147に記憶する。例えば、パラメータ設定部146は、選択された材料の種類に対応付けた設定フラグをオンにし、その他の材料の種類に対応付けた設定フラグをオフにする。材料の種類に応じて材料特性が定められているため(
図4参照)、設定装置130の入力装置131は、制御装置120に記憶されている複数の印字対象物6の材料特性の中から一つを選択する選択装置として機能する。
【0039】
使用者は、閾値の変更を行う場合には、
図3に示す入力装置131によって、密度閾値De0及び間隔閾値d0を入力する。パラメータ設定部146は、密度閾値De0及び間隔閾値d0が入力された場合には、パラメータ記憶部147に入力された密度閾値De0及び間隔閾値d0を設定する。すなわち、予めパラメータ記憶部147に記憶されている閾値を入力された値に更新する。更新が完了すると、処理が
図6に示すステップS115に進む。なお、使用者は、パラメータ記憶部147に予め記憶されている密度閾値De0及び間隔閾値d0の変更を行わない場合には、入力装置131によって閾値を変更しないスキップ操作を行う。この場合、パラメータ設定部146は、閾値を変更せずに、処理をステップS115に進める。
【0040】
ステップS115において、初期座標設定部141は、入力装置131からの入力信号に基づいて、初期座標を生成する。使用者は、印字したい文字列等のマーキングパターンを入力装置131によって入力する。初期座標設定部141は、入力装置131からの入力信号に基づいてマーキングパターンを設定する。マーキングパターンは、1以上の印字パターンから構成される。初期座標設定部141は、パターンデータベース149から印字パターンごとに定められた座標データ群を取得し、印字パターンの初期座標として設定する。
【0041】
マーキングパターンの初期座標の設定が完了すると、ステップS117とステップS157との間の処理を繰り返し行うループ処理を実行する。このループ処理は、マーキングパターンを構成する全ての印字パターンに対する処理が完了すると終了する。
【0042】
ステップS120において、座標補正部142は、ステップS115で設定されたマーキングパターンの初期座標に基づいて、印字パターン領域の面積Saを算出する。具体的には、座標補正部142は、
図8A及び
図8Bに示すように、設定された印字パターンを構成する線分の最外周の座標を結んで形成される四角形で囲まれた領域を印字パターン領域161A,161Bとしてその面積(以下、領域面積とも記す)Saを算出する。なお、最外周の座標とは、印字パターンのX軸方向の最外周の座標と、Y軸方向の最外周の座標のことを指す。また、印字パターン領域161A,161Bは、Y軸方向の最外周の座標を通るX軸方向に平行な一対の直線と、X軸方向の最外周の座標を通るY軸方向に平行な一対の直線によって形成される。
図6に示すステップS120の処理が完了すると、処理がステップS125に進む。
【0043】
ステップS125において、座標補正部142は、
図8A及び
図8Bに示す印字パターン領域161A,161B内の線分(図示黒塗りの部分)の合計面積(以下、線分面積とも記す)Sを算出する。具体的には、座標補正部142は、印字パターンを構成する座標データ群に基づいて合計面積Sを算出する。
図6に示すステップS125の処理が完了すると、処理がステップS130に進む。
【0044】
ステップS130において、座標補正部142は、ステップS125で算出された線分面積SをステップS120で算出された領域面積Saで除算することで、線分密度Deを算出する(De=S/Sa)。線分密度Deは、領域面積Saのうち、線分面積Sが占める割合に相当する。線分密度Deは、印字パターンの疎密の度合いを表す第1のパラメータである。ステップS130の処理が完了すると、処理がステップS135に進む。
【0045】
ステップS135において、座標補正部142は、設定された印字パターンが疎であるか密であるかを判定する第1の疎密判定処理を実行する。第1の疎密判定処理において、座標補正部142は、ステップS130で算出された線分密度DeがステップS110で設定された密度閾値De0未満であるか否かを判定する。座標補正部142は、線分密度Deが密度閾値De0未満である場合、その印字パターンは疎であると判定し、処理をステップS140に進める。座標補正部142は、線分密度Deが密度閾値De0以上である場合、その印字パターンは密であると判定し、処理をステップS150に進める。
【0046】
ステップS140において、座標補正部142は、
図9A及び
図9Bに示すように、印字パターンを構成する線分同士の間隔を算出する。線分同士の間隔には、X軸方向の線分と線分との間の距離と、Y軸方向の線分と線分との間の距離とが含まれる。座標補正部142は、算出した間隔のうちの最小値を、設定された印字パターンを構成する線分の間隔を表す間隔パラメータdとする。間隔パラメータdは、印字パターンの疎密の度合いを表す第2のパラメータである。
図6に示すステップS140の処理が完了すると、処理がステップS145に進む。
【0047】
ステップS145において、座標補正部142は、設定された印字パターンが疎であるか密であるかを判定する第2の疎密判定処理を実行する。第2の疎密判定処理において、座標補正部142は、ステップS140で算出された間隔パラメータdがステップS110で設定された間隔閾値d0以上であるか否かを判定する。座標補正部142は、間隔パラメータdが間隔閾値d0以上である場合、その印字パターンは疎であると判定し、処理をステップS157に進める。座標補正部142は、間隔パラメータdが間隔閾値d0未満である場合、その印字パターンは密であると判定し、処理をステップS150に進める。
【0048】
ステップS150において、座標補正部142は、印字対象物6の材料特性に基づいて、印字対象物6に描画される印字パターンを構成する線分の隙間が視認できるように、印字パターンを補正する。これにより、補正印字パターンが生成され、処理がステップS157に進む。
【0049】
座標補正部142は、設定された印字パターンを構成する初期座標を補正し、補正後の座標で構成される印字パターンを補正印字パターンとする。座標補正部142は、材料特性テーブル143aを参照し、ステップS110で設定された印字対象物6の熱伝導率に対応する印字線幅Lwを演算する。座標補正部142は、印字線幅Lwが予め定められた基準幅Lw0よりも大きい場合には、初期座標で規定される現在の線幅(設定線幅)を狭めるように、初期座標を補正する。つまり、座標補正部142は、線分を細くする補正を行う。
【0050】
ステップS157において、座標補正部142は、マーキングパターンを構成する全ての印字パターンに対する処理が完了したか否かを判定する。マーキングパターンを構成する全ての印字パターンに対する処理が完了したと判定された場合には、処理がステップS160に進む。マーキングパターンを構成する全ての印字パターンに対する処理が完了していないと判定された場合には、処理がステップS117に戻る。
【0051】
ステップS160において、表示制御部148はマーキングパターンのプレビュー画面170を表示装置132の表示画面に表示させる。
図10Aは、表示装置132のプレビュー画面170の一例を示す図であり、
図10Bは、表示装置132のプレビュー画面170の別の例を示す図である。
図10A及び
図10Bに示すように、プレビュー画面170には、マーキングパターンのプレビュー画像171A,171Bと、マーキングパターンの設定画像172と、印字パラメータの設定画像173と、印字実行ボタン174と、再設定ボタン175と、が含まれる。
【0052】
プレビュー画面170が表示されている状態において、制御装置120は、印字実行操作と、再設定操作を受け付ける。例えば、使用者は、
図10Aに示すプレビュー画面170のプレビュー画像171Aの視認性が悪いと判断した場合、入力装置131を用いて再設定操作を行う。
図6に示すステップS165において、入力装置131に対して再設定操作が行われた場合、処理がステップS110に戻る。この場合、使用者は、密度閾値De0及び間隔閾値d0の変更操作を行うことにより、マーキングパターンの視認性の向上を図ることができる。また、例えば、使用者は、
図10Bに示すプレビュー画面170のプレビュー画像171Bの視認性が良いと判断した場合、入力装置131を用いて印字実行操作を行う。
図6に示すステップS165において、入力装置131に対して印字実行操作が行われた場合、処理がステップS170に進む。
【0053】
ステップS170において、印字制御部145は、レーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、座標記憶部144に記憶されている印字座標(初期座標または補正後の座標)に基づき、マーキングパターンを描画する。マーキングパターンを描画する処理は、印字処理とも呼ばれる。印字処理(ステップS170が完了すると、
図6のフローチャートに示す処理が終了する。
【0054】
以上のとおり、本実施形態に係る制御装置120は、線分密度Deが密度閾値De0以上であることにより印字パターンが密であると判定された場合、あるいは、線分の間隔パラメータdが間隔閾値d0未満であることにより印字パターンが密であると判定された場合には、印字パターンを補正すると決定する。一方、制御装置120は、線分密度Deが密度閾値De0未満であり、かつ、線分の間隔パラメータdが間隔閾値d0以上であることにより、印字パターンが疎であると判定された場合には、印字パターンを補正しないと決定する。制御装置120は、線分密度Deが密度閾値De0以上であること(第1条件)、及び、間隔パラメータdが間隔閾値d0未満であること(第2条件)の少なくとも一方が満たされた場合に、線分が細くなるように初期座標を補正する。したがって、印字対象物6に印字される印字パターンが潰れてしまったり、線分同士が繋がってしまったりすることを防止できる。つまり、印字パターンが密である場合において、印字対象物6に印字される印字パターンの視認性が悪化してしまうことを防止できる。
【0055】
第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0056】
(1)制御装置120は、設定された印字パターンの疎密の度合い及び印字対象物6の材料特性に基づいて、印字パターンを補正して補正印字パターンを生成する。具体的には、制御装置120は、設定された印字パターンの粗密の度合いを演算する。制御装置120は、粗密の度合いに基づいて、設定された印字パターンが疎であるか密であるかを判定する。制御装置120は、印字パターンが疎であるか密であるかの判定結果に基づいて、印字パターンを補正するか否かを決定する。制御装置120は、印字パターンを補正しないと決定された場合には、補正印字パターンを生成することなく、設定された印字パターンに基づいてレーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物6に印字パターンを描画する。制御装置120は、印字パターンを補正すると決定された場合には、印字対象物6の材料特性に基づいて補正印字パターンを生成し、補正印字パターンに基づいてレーザ発振器1から発振されるレーザ光を制御して、印字対象物6に補正印字パターンを描画する。
【0057】
この構成によれば、例えば、印字パターンが密であり、かつ、印字対象物6の材料特性がレーザ光の影響度が高い特性である場合(熱伝導率が基準熱伝導率よりも大きい場合)には、印字箇所が低減するように印字パターンを補正することにより、印字対象物6に印字される線分の幅が太くなりすぎることを抑制できる。つまり、本実施形態に係るレーザマーカ装置100は、様々な印字対象物6に対して、印字パターンの疎密の度合いにばらつきがあるパターンを印字する場合において、印字品質を一定にすることができる。
【0058】
(2)制御装置120は、設定された印字パターンを構成する初期座標を補正し、補正後の座標で構成される印字パターンを補正印字パターンとする。本実施形態では、印字パターンが密である場合には、印字パターンの線分の幅が細くなるように初期座標を補正する。この構成によれば、座標の補正により視認性の高いマーキングパターンを印字対象物6に形成することができる。
【0059】
(3)制御装置120は、設定された印字パターンを構成する線分の最外周を結んで形成される四角形で囲まれた面積(領域面積)Saのうち、線分の面積(線分面積)Sが占める割合である線分密度Deを疎密の度合いとして演算する。制御装置120は、線分密度Deが密度閾値De0未満である場合には、印字パターンが疎であると判定する。制御装置120は、線分密度Deが密度閾値De0以上である場合には、印字パターンが密であると判定する。この構成では、線分密度Deが高い場合に、印字パターンの線分を細くするように印字パターンを補正することで、印字パターン領域161A,161Bに照射されるレーザ光により発生する熱の影響を低減し、印字パターン領域161A,161Bの文字などの記号が潰れてしまうことを防止できる。
【0060】
(4)制御装置120は、設定された印字パターンを構成する線分の間隔を表す間隔パラメータdを粗密の度合いとして演算する。制御装置120は、間隔パラメータdが間隔閾値d0以上である場合には、印字パターンが疎であると判定する。制御装置120は、間隔パラメータdが間隔閾値d0未満の場合には、印字パターンが密であると判定する。本実施形態では、間隔パラメータdは、線分の間隔の最小値である。このため、印字パターン領域161A,161B内において、局所的に線分同士の間隔が狭い部分において、線分同士が繋がってしまうことにより、印字対象物6に形成される印字パターンの視認性が悪化することを防止できる。
【0061】
(5)制御装置120には、複数の印字対象物6の材料特性が記憶されている。レーザマーカ装置100は、複数の印字対象物6の材料特性の中から一つを選択する選択装置(設定装置130)を備える。制御装置120は、選択装置(設定装置130)により選択された材料特性(熱伝導率)に基づいて補正印字パターンを生成する。この構成によれば、使用者は、設定装置130の入力装置131によって印字対象物6の材料特性を容易に選択することができる。
【0062】
<第1実施形態の変形例1>
印字パターンが疎であるか密であるかの判定処理として、
図6に示すステップS135及びステップS145を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ステップS135及びステップS145のうちの一方は省略してもよい。ステップS135の処理が省略される場合には、ステップS120,S125,S130の処理も省略される。ステップS145の処理が省略される場合、ステップS140の処理も省略される。
【0063】
<第1実施形態の変形例2>
上記実施形態では、印字パターンが密であると判定された場合に、印字パターンの補正を行う例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。印字パターンが疎であると判定された場合に、印字パターンの補正を行ってもよい。この場合、制御装置120は、線分が太くなるように初期座標を補正する。つまり、制御装置120は、印字パターンが疎であり、かつ、印字対象物6の材料特性がレーザ光の影響度が低い特性である場合(熱伝導率が基準熱伝導率よりも小さい場合)には、印字箇所が増加するように印字パターンを補正する。これにより、印字対象物6に印字される線分の幅が細くなりすぎることを抑制できる。
【0064】
また、線分密度Deが第1密度閾値De1以上である場合、あるいは、間隔パラメータdが第1間隔閾値d1未満である場合には、線分が細くなるように初期座標を補正し、線分密度Deが第2密度閾値De2未満である場合、あるいは、間隔パラメータdが第2間隔閾値d2以上である場合には、線分が太くなるように初期座標を補正してもよい。なお、第1密度閾値De1は第2密度閾値De2よりも大きく、第1間隔閾値d1は第2間隔閾値d2よりも小さい。
【0065】
<第1実施形態の変形例3>
図11に示すように、プレビュー画面170Cにおいて、印字パラメータの変更操作を受け付けるようにしてもよい。プレビュー画面170Cにおける印字パラメータの設定画像173Cには、印字パラメータの現在の設定値を示す設定値バーが含まれる。設定値バーは、印字パラメータの下限値と上限値も示している。なお、入力装置131がタッチセンサである場合、この設定値バーを直接タッチ操作することにより、設定値が変更されるようにしてもよい。これにより、印字パラメータの調整によって、印字対象物6に形成されるマーキングパターンの視認性を容易に調整するこことができる。
【0066】
<第2実施形態>
図12~
図15Bを参照して、本発明の第2実施形態に係るレーザマーカ装置200について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
【0067】
図12は、第2実施形態に係るレーザマーカ装置200の構成図である。
図12に示すように、第2実施形態に係るレーザマーカ装置200のレーザ装置210は、レーザ発振器1と、ビーム径調整部203と、ビーム変調部204と、ビーム照射部5と、を備える。ビーム径調整部203は、レーザ光(レーザビーム)をX軸方向及びY軸方向に広げる。
【0068】
ビーム変調部204は、整形後のレーザ光のX軸方向及びY軸方向における強度分布を変調する。ビーム変調部204は、例えば、X軸方向及びY軸方向に配列された複数の微小なミラー(マイクロミラー)から構成されるDMD(Digital Micromirror Device)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの素子を用いて構成することができる。DMDのマイクロミラーは、ミラー下部に設けられている電極を駆動することによりONまたはOFFの2つの状態を取ることができる。つまり、ビーム変調部204の制御方式は、ON-OFFの2値制御方式である。マイクロミラーがONのときには、当該マイクロミラーによって反射されたレーザ光が印字対象物6に照射されるようにマイクロミラーの角度が制御される。一方、マイクロミラーがOFFのときには、当該マイクロミラーによって反射されたレーザ光が、印字対象物6に照射されないようにマイクロミラーの角度が制御される。このように、レーザスポットをDMDに一括で照射して、画素ごとにON-OFFを切り替え制御することで、画素単位で被印字物にレーザ光を照射することができる。
【0069】
印字対象物6は、ベルトコンベアなどの搬送機構によって移動可能である。印字対象物6が所定の位置に配置された状態で、ビーム照射部5から印字対象物6に所定時間だけレーザ光が照射されることにより、印字対象物6にマーキングパターンが形成される。
【0070】
図13は、
図6と同様の図であり、第2実施形態に係る制御装置220により実行される印字制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートでは、
図6のフローチャートのステップS115,S120~S130,S140の処理に代えて、ステップS215,S220~S230,S240の処理が実行される。以下、第1実施形態と相違する処理を詳しく説明し、第1実施形態と同様の処理の説明は省略する。
【0071】
ステップS215において、初期座標設定部141は、入力装置131からの入力信号に基づいて、文字列などのマーキングパターンの初期座標を設定する。初期座標設定部141により設定される初期座標は、X軸方向及びY軸方向に配列されたマイクロミラーを特定する情報(例えば、各マイクロミラーに割り当てられた識別番号等)に相当する。なお、初期座標は、X軸方向における素子の配列番号と、Y軸方向における素子の配列番号の組み合わせであってもよい。
【0072】
ステップS220において、座標補正部142は、マーキングパターンの初期座標に基づいて、印字パターン領域内の画素の総数Naを算出する。具体的には、座標補正部142は、
図14A及び
図14Bに示すように、設定された印字パターンを構成する線分を表示する画素の一番外側の画素を結んで形成される四角形で囲まれた領域を印字パターン領域261A,261Bとしてその領域内の画素の総数(以下、領域画素数とも記す)Naを算出する。なお、一番外側の画素とは、印字パターンのX軸方向の画素と、Y軸方向の一番外側の画素のことを指す。また、印字パターン領域261A,261Bは、Y軸方向の一番上側の画素の上端辺を含むX軸方向に平行な直線と、Y軸方向の一番下側の画素の下端辺を含むX軸方向に平行な直線と、X軸方向の一番左側の画素の左端辺を含むY軸方向に平行な直線と、X軸方向の一番右側の画素の右端辺を含むY軸方向に平行な直線と、によって形成される。
図13に示すステップS220の処理が完了すると、処理がステップS225に進む。
【0073】
ステップS225において、座標補正部142は、
図14A及び
図14Bに示す印字パターン領域261A,261B内の線分(図示黒塗りの部分)を表示する画素の総数(以下、線分画素数とも記す)Nを算出する。
図13に示すステップS225の処理が完了すると、処理がステップS230に進む。
【0074】
ステップS230において、座標補正部142は、ステップS225で算出された線分画素数NをステップS220で算出された領域画素数Naで除算することで、線分密度Deを算出する(De=N/Na)。第2実施形態において、線分密度Deは、印字パターン領域内の画素のうち、線分を表示する画素が占める割合に相当する。線分密度Deは、印字パターンの疎密の度合いを表す第1のパラメータである。ステップS230の処理が完了すると、処理がステップS135に進む。
【0075】
ステップS240において、座標補正部142は、
図15A及び
図15Bに示すように、印字パターンを構成する線分同士の間の画素の数(画素数)を算出する。線分同士の画素数には、X軸方向の線分と線分との間の画素数と、Y軸方向の線分と線分との間の画素数とが含まれる。座標補正部142は、算出した画素数のうちの最小値を、設定された印字パターンを構成する線分の間隔を表す間隔パラメータdとする。間隔パラメータdは、印字パターンの疎密の度合いを表す第2のパラメータである。
図13に示すステップS240の処理が完了すると、処理がステップS145に進む。
【0076】
このように、第2実施形態に係るレーザマーカ装置200は、レーザ発振器1から発振されたレーザ光を画素単位でONとOFFを切り替えるビーム変調部204と、ビーム変調部204を制御する制御装置220と、を備える。制御装置220は、設定された印字パターンを構成する線分を表示する複数の画素の一番外側の画素を結んで形成される四角形で囲まれた画素のうち、線分を表示する画素が占める割合である線分密度Deを疎密の度合いとして演算する。制御装置220は、線分密度Deが密度閾値De0未満である場合には、印字パターンが疎であると判定する。制御装置220は、線分密度Deが密度閾値De0より大きい場合には、印字パターンが密であると判定する。また、制御装置220は、間隔パラメータdが間隔閾値d0以上である場合には、印字パターンは疎であると判定する。制御装置220は、間隔パラメータdが間隔閾値d0未満である場合には、印字パターンは密であると判定する。制御装置220は、印字パターンを補正すると決定された場合には、印字対象物6の材料特性に基づいて補正印字パターンを生成し、補正印字パターンに基づいて、ビーム変調部204を制御する。この構成では、線分密度Deが密度閾値De0よりも高い場合に、印字対象物6の熱伝導率が高くなるほど印字パターンの線分を細くするように印字パターンを補正することで、印字パターン領域161A,161Bに照射されるレーザ光により発生する熱の影響を低減し、印字パターン領域161A,161Bの文字などの記号が潰れてしまうことを防止できる。
【0077】
<第2実施形態の変形例>
印字パターンの補正処理は、上記第2実施形態で説明した例に限定されない。以下、補正処理の変形例について説明する。
【0078】
<第2実施形態の変形例1>
図16は、第2実施形態の変形例1に係る制御装置220により実行される補正処理を説明する図である。
図16に示すように、制御装置220は、ONの画素(黒塗り部分)とOFFの画素(白抜き部分)が千鳥配置となるようにビーム変調部204を制御することで、印字対象物6に補正印字パターンの線分を描画する。
【0079】
ONの画素及びOFFの画素を千鳥配置とする補正処理(以下、配置補正処理)は、上述した線幅を変更する補正処理(以下、線幅補正処理)に代えて実行してもよいし、線幅補正処理を実行した上で実行してもよい。配置補正処理は、印字対象物6の熱伝導率が所定値以上である場合に実行され、印字対象物6の熱伝導率が所定値未満である場合には実行されない。
【0080】
このような配置補正処理を実行することにより、上記実施形態と同様、印字パターンが密である場合に、印字線幅が太くなって視認性が悪化することを防止できる。
【0081】
<第2実施形態の変形例2>
図17は、第2実施形態の変形例2に係る制御装置220により実行される補正処理を説明する図である。本変形例に係る補正処理は、印字パターンが漢字である場合に実行される。制御装置220は、上記第2実施形態と同様、印字パターンが密であると判定された場合には、印字パターンを補正すると決定する。さらに、本変形例に係る制御装置220は、印字パターンとしての漢字を複数の要素に区分する。
【0082】
漢字の要素は、漢字の字体を構成する要素であって、漢字の左右上下内外の部分に分解できる要素のことを指す。漢字の要素としては、左右に分割可能な漢字の左部である偏、左右に分割可能な漢字の右部である旁、上下に分割可能な漢字の上部である冠、上下に分割可能な漢字の下部である脚、内外に分割可能な漢字の外側部分である構、漢字の上部及び左部を構成する要素である垂、並びに漢字の左部及び下部を構成する要素である繞などがある。
【0083】
制御装置220は、区分された複数の要素ごとに、要素の疎密の度合いを演算する。疎密の度合いとしては、上述した例と同様、線分密度De及び間隔パラメータdがある。制御装置220は、要素の疎密の度合いに応じて、要素の補正の度合いを決定する。例えば、制御装置220は、要素の線分密度Deが第1密度閾値De1以上である場合には、補正前の初期印字パターンの線分を構成する画素の全体において、ONの画素を千鳥配置する。また、制御装置220は、要素の線分密度Deが第2密度閾値De2以上、第1密度閾値De1未満である場合には、補正前の初期印字パターンの線分を構成する画素の一部において、ONの画素を千鳥配置する。つまり、要素の線分密度Deが第1密度閾値De1未満では、線分密度Deが第1密度閾値De1以上であるときよりも補正の度合いを小さくする。
【0084】
このような変形例によれば、漢字の要素ごとに適切な補正がなされるため、印字されたマーキングパターンの視認性をさらに高めることができる。
【0085】
<第2実施形態の変形例3>
上記第2実施形態では、ビーム変調部204のON-OFFの2値制御により、印字を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ビーム変調部204は、画素のONとOFFを高速で切り換え、画素のONの時間比率を調整し、印字対象物6に印字される線分の階調表現が可能な構成としてもよい。また、LCOSの場合は2値に限定されない。
【0086】
図18は、第2実施形態の変形例3に係る制御装置220により実行される補正処理を説明する図である。第2実施形態の変形例3では、上記第2実施形態の変形例2との相違点を説明する。本変形例では、印字対象物6の熱伝導率が第1熱伝導率閾値以上である場合には、ビーム変調部204はマイクロミラーのON-OFFの2値制御を行う。つまり、2値制御において、ONされるマイクロミラーは、予め定められた照射時間tiの全期間において、レーザ光を印字対象物6に向けて反射し、OFFされるマイクロミラーは、上記照射時間tiの全期間において、レーザ光を吸収体に向けて反射する。一方、印字対象物6の熱伝導率が第1熱伝導率閾値未満である場合には、線分を構成する複数のマイクロミラーにおいて、
図17の例でOFF制御していたマイクロミラーを所定の時間比率でON制御する。この場合、印字パターンの線分を構成する複数のマイクロミラーには、上記照射時間tiの全期間において、レーザ光を印字対象物6に向けて反射するマイクロミラーと、上記照射時間tiの全期間のうち、所定の時間(所定の時間比率×照射時間ti)だけレーザ光を印字対象物6に向けて反射するマイクロミラーとが含まれる。
【0087】
このように、本変形例に係る制御装置220は、印字対象物6の熱伝導率に応じて、印字パターン(初期印字パターンあるいは線幅補正後の印字パターン)の線分を構成する複数のマイクロミラー(画素)のうちの所定のマイクロミラー(画素)のONの時間比率を調整する。これにより、印字されるマーキングパターンの視認性をさらに高めることができる。
【0088】
<第2実施形態の変形例4>
第1実施形態の変形例2と同様、印字パターンが疎であると判定された場合に、線分が太くなるように、ON制御するマイクロミラーを決定してもよい。つまり、制御装置220は、印字パターンが疎であり、かつ、印字対象物6の材料特性がレーザ光の影響度が低い特性である場合(熱伝導率が基準熱伝導率よりも小さい場合)には、印字箇所が増加するように印字パターンを補正する。これにより、印字対象物6に印字される線分の幅が細くなりすぎることを抑制できる。
【0089】
また、線分密度Deが第1密度閾値De1以上である場合、あるいは、間隔パラメータdが第1間隔閾値d1未満である場合には、線分が細くなるように初期座標を補正し、線分密度Deが第2密度閾値De2未満である場合、あるいは、間隔パラメータdが第2間隔閾値d2以上である場合には、線分が太くなるように初期座標を補正してもよい。
【0090】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0091】
<変形例1>
上記実施形態では、印字対象物6の材料の種類を直接的に選択する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0092】
<変形例1-1>
印字対象物6の材料の種類を特定可能な情報が選択されることにより、間接的に材料の種類が選択されるようにしてもよい。
図19は、本変形例1-1に係る制御装置の制御信号に基づいて表示装置132に表示される印字対象物6の材料の選択画面360を示す図である。
図19に示すように、選択画面360には、複数のメーカの情報(図示する例では食品メーカ名)が表示される。選択画面360では、複数のメーカの中から一のメーカの選択が可能である。入力装置131によって、複数のメーカの中から一のメーカが選択されると、選択されたメーカが取り扱っている複数の商品の分類の情報(図示する例では食品分類)が表示される。選択画面360では、複数の商品の分類の中から一の分類の選択が可能である。
【0093】
入力装置131によって、複数の商品の分類の中から一の分類が選択されると、選択された分類に含まれる複数の商品の情報(図示する例では、商品名)が表示される。選択画面360では、複数の商品の中から一の商品の選択が可能である。入力装置131によって、複数の商品の中から一の商品が選択されると、選択された商品の外観を示す画像と、その商品の印字対象物6であるパッケージの材質と、確定ボタン376とが表示される。この状態で、入力装置131によって、確定操作が行われると、選択されている商品に紐付けられて記憶されている印字対象物6の材料と、その材料特性が選択される。
【0094】
このような構成によれば、使用者が、印字対象物6の材料の種類を知らない場合であっても、印字対象物6のメーカと商品カテゴリーを知っていれば、印字対象物6の材料の種類を適切に選択することができる。なお、本変形例では、印字対象物6の商品が選択されることにより、印字対象物6の材料特性が選択される例について説明した。しかしながら、印字対象物6の商品が選択された場合には、印字対象物6の材料の表示のみが行われるようにしてもよい。この場合、使用者は、印字対象物6の材料を確認した上で、
図7に示す選択画面160から材料の種類を選択する。
【0095】
<変形例1-2>
図20に示すように、制御装置120,220は、表示装置132の表示画面に表示される検索窓377に、印字対象物6の材料の名称の一部または全部が入力された場合に、入力情報に基づいて材料テーブル71に存在する材料の種類を選択してもよい。
【0096】
<変形例2>
第2実施形態の変形例2において、制御装置220が、印字パターンとしての漢字を複数の要素に区分し、区分された複数の要素ごとの疎密の度合いに応じて、要素の補正の度合いを決定する例について説明した。要素ごとの疎密の度合いに応じて、補正の度合いを決定する方法は、第1実施形態において適用してもよい。この場合、制御装置120は、要素の疎密の度合いが高い場合(密の場合)には、低い場合(疎の場合)に比べて線分の幅が狭くなるように、初期座標を補正する。
【0097】
<変形例3>
材料特性テーブル143aは、上記実施形態で説明したものに限定されない。材料特性テーブル143aは、熱伝導率と、基準幅からの偏差との関係を規定するデータテーブルであってもよい。
【0098】
<変形例4>
上記実施形態では、補正の度合いを印字対象物6の熱伝導率に応じて変化させる例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。補正の度合いの決定に用いる印字対象物6の材料特性は、熱伝導率、レーザ光の吸収率、レーザ光の透過率、及びレーザ光の反射率のうちの少なくとも一つであればよい。この場合、材料特性テーブル143aは、熱伝導率、吸収率、透過率、及び反射率のうちの少なくとも一つと、補正に用いる補正パラメータ(印字線幅等)との関係を規定するデータテーブルとなる。
【0099】
<変形例5>
第1実施形態では、間隔パラメータdが、印字パターン領域内の印字パターンの線分の間隔の最小値である例について説明した。しかしながら、間隔パラメータdは、線分の間隔を表すパラメータであればよい。例えば、間隔パラメータdは、印字パターン領域内の印字パターンの線分の間隔の平均値であってもよい。同様に、第2実施形態において、間隔パラメータdは、印字パラメータ領域内の線分同士の間の画素数の平均値としてもよい。
【0100】
<変形例6>
上記実施形態では、印字パターンが疎であるか密であるかを、線分密度De及び線分の間隔パラメータdによって判定する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、文字とその文字の書体との組み合わせによって、印字パターンが疎であるか密であるかを判定してもよい。この場合、予め、文字とその文字の書体との組み合わせからなる印字パターンと、その印字パターンが疎であるか密であるかの情報とが対応付けられたデータテーブルが制御装置120,220に記憶されている。本変形例によれば、線分密度Deの演算処理、及び、間隔パラメータdの演算処理の双方を省略することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0102】
1…レーザ発振器、2…ビーム径調整部、3…第1レーザ光走査部、4…第2レーザ光走査部、5…ビーム照射部、6…印字対象物、71…材料テーブル、100…レーザマーカ装置、110…レーザ装置、111…ガルバノスキャナ、120…制御装置、121…処理装置、122…不揮発性メモリ(記憶装置)、123…揮発性メモリ(記憶装置)、130…設定装置(選択装置)、131…入力装置(選択装置)、132…表示装置、140…印字座標生成部、141…初期座標設定部、142…座標補正部、143…特性記憶部、143a…材料特性テーブル、144…座標記憶部、145…印字制御部、146…パラメータ設定部、147…パラメータ記憶部、148…表示制御部、149…パターンデータベース、160…選択画面、161A,161B…印字パターン領域、170,170C…プレビュー画面、171A,171B…プレビュー画像、200…レーザマーカ装置、203…ビーム径調整部、204…ビーム変調部、210…レーザ装置、220…制御装置、261A,261B…印字パターン領域、360…選択画面、d…間隔パラメータ、d0…間隔閾値、d1…第1間隔閾値、d2…第2間隔閾値、De…線分密度、De0…密度閾値、De1…第1密度閾値、De2…第2密度閾値、N…線分画素数、Na…領域画素数、S…線分面積、Sa…領域面積