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2024-141423海底観測装置、海底観測システム、制御方法及びプログラム
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  • -海底観測装置、海底観測システム、制御方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141423
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】海底観測装置、海底観測システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/00 20060101AFI20241003BHJP
   G01V 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08C15/00 D
G01V9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053060
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】浅井 翼
【テーマコード(参考)】
2F073
2G105
【Fターム(参考)】
2F073AA00
2F073AA03
2F073AA04
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073CC03
2F073CC14
2F073CD11
2F073DD01
2F073DE13
2F073EE01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG08
2G105AA02
2G105EE02
(57)【要約】
【課題】海底観測装置の敷設場所が異なる場合でも、複数のセンサからのセンサ信号に対し正確なデータ処理を行うこと。
【解決手段】実施形態に係る海底観測装置は、観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサと、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを記憶した記憶部と、陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて前記ソフトウェアを更新可能な制御部と、前記ソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して、観測データを生成する処理部と、前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する通信部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサと、
複数の前記センサからのセンサ信号のデータ処理に用いられるソフトウェアを記憶した記憶部と、
陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて前記ソフトウェアを更新可能な制御部と、
前記ソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号のデータ処理を実行して、観測データを生成する処理部と、
前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する通信部と、
を含む、
海底観測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記陸上局が前記観測データを解析した結果に基づいて生成した更新データに応じて、前記ソフトウェアを更新する、
請求項1に記載の海底観測装置。
【請求項3】
前記更新データは、海底観測装置の敷設環境に合わせた、変換式、係数の少なくともいずれかを変更するデータである、
請求項1に記載の海底観測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記陸上局から前記海底ケーブルを介して送信されるデータにより、前記センサ信号から前記観測データを生成する処理以外の追加処理を追加することができる、
請求項1に記載の海底観測装置。
【請求項5】
海底ケーブルにより接続される、複数の請求項1に記載の海底観測装置と、
前記ソフトウェアを更新する更新データを、海底ケーブルを介して前記海底観測装置に送信する陸上局と、
を備える、
海底観測システム。
【請求項6】
コンピュータが、
観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサによりセンサ信号を生成する処理と、
陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて更新可能な、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して観測データを生成する処理と、
前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する処理と、
を実行する、
制御方法。
【請求項7】
観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサによりセンサ信号を生成する処理と、
陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて更新可能な、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して観測データを生成する処理と、
前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底観測装置、海底観測システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
海底観測システムは、水圧計や速度計、加速度計等のセンサ類を含む海底観測装置を、海底ケーブルで接続し、海底観測装置からの信号を陸上局で受信して海底での物理現象を観測するシステムである。これまでに敷設されている海底観測システムは、数千キロのケーブルと複数の海底観測装置を備える。1つの海底観測装置は複数の種類のセンサを含み、また冗長のために同種のセンサが複数含まれている。
【0003】
特許文献1には、海底に設置される磁気センサが開示されている。この磁気センサは、磁気センサ本体、光通信デバイス、給電分岐部を含む。給電分岐部に接続される給電線、光通信デバイスに接続される光ファイバは、それぞれ陸上に設置される給電部とデータ通信器に接続される。
【0004】
磁気センサ本体は、磁界検出部、信号処理部、伝送回路を含む。磁界検出部と信号処理部は、内蔵するソフトウェアにより制御され三次元地磁気などのデータを測定する。磁界検出部と信号処理部で測定されたデータは、陸上に設置されるデータ通信器に入力され、データ解析される。また、ソフトウェアの変更や校正データの書き換え等のデータは、データ通信器より信号処理部に入力され、ソフトウェアの変更や校正データの書き換え等が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3130012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、海底観測装置は、センサ信号に対してデータ処理を行うことで海底の物理現象の観測を行う。海底観測装置は異なる種類の複数のセンサを含むため、種類、個数ともに多数の信号を処理する必要がある。また、各海底観測装置の周囲環境も、敷設水深の違いによる圧力や水流の影響などで異なる。そのため、敷設場所の違う海底観測装置のセンサ同士で同条件の校正を行うと、センサが出力するセンサ信号を実際の物理値(観測データ)に変換する際に、計算結果の誤差が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明の目的の一例は、上述した課題を鑑み、海底観測装置の敷設場所が異なる場合でも、複数のセンサからのセンサ信号に対し正確なデータ処理を行うことが可能な海底観測装置、海底観測システム、制御方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る海底観測装置は、異なる種類を含む複数のセンサ、記憶部、制御部、処理部、通信部を含む。複数のセンサは、観測海域の海中に敷設されている。記憶部は、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを記憶している。制御部は、陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて前記ソフトウェアを更新可能である。処理部は、全記ソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して、観測データを生成する。通信部は、前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する。
【0009】
本開示の一態様に係る海底観測システムは、海底ケーブルにより接続される、複数の上記海底観測装置と陸上局とを含む。陸上局は、前記ソフトウェアを更新する更新データを、海底ケーブルを介して前記海底観測装置に送信する。
【0010】
本開示の一態様に係る制御方法は、コンピュータが以下の処理を実行する。
観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサによりセンサ信号を生成する処理。
陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて更新可能な、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して観測データを生成する処理。
前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する処理。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに以下の処理を実行させる。
観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサによりセンサ信号を生成する処理。
陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて更新可能な、複数の前記センサからのセンサ信号の処理に用いられるソフトウェアを用いて、複数の前記センサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して観測データを生成する処理。
前記観測データを、前記海底ケーブルを介して前記陸上局に送信する処理。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、海底観測装置の敷設場所が異なる場合でも、複数のセンサからのセンサ信号に対し正確なデータ処理を行うことが可能な海底観測装置、海底観測システム、制御方法、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る海底観測装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】実施形態2に係る海底観測システムの構成を示す図である。
図3】実施形態2に係る海底観測システムの制御方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。なお、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略される。実施形態は、海底に敷設され、異なる種類を含む複数のセンサを含む海底観測装置、海底観測システム、制御方法及びプログラムに関する。
【0015】
海底観測装置は、通常、内蔵しているセンサから出力されるセンサ信号をあらかじめ校正して得た係数等を用いて目的の物理値の測定結果(観測データ)を生成する。海底観測装置が敷設される環境は、敷設位置や水深で異なることから、実際の物理値を正確に測定するには、あらかじめ敷設する環境を想定し、それに合わせて最適な変換式や係数を用いることが肝要である。そこで、海底観測装置による観測データの生成に、環境に合ったデータ処理を行うことが求められている。
【0016】
最もシンプルな方法として、センサを海底観測装置の敷設場所で区別し、敷設場所ごとに想定される環境に合わせた校正を行うというものがある。この場合、センサの製品の出荷前に、センサの校正条件を実際に敷設する環境に合わせたものに変更して、センサを備える海底観測装置側で観測データを生成する。しかし、この方法は、校正の手間が増えることや、校正後に故障が発生した際に同条件を設定して校正を行う必要があることから、校正にかかるコストが高くなるという問題がある。
【0017】
また、敷設する海底観測装置とセンサとを個々に紐づける必要があるため、故障が発生した際の部品の交換が効きにくくなる。さらに、水深、温度、傾斜等の敷設環境が敷設前の想定と異なる場合、あらかじめ変更したセンサの校正条件では正確な観測データを得ることができなくなる恐れがある。
【0018】
コスト面の問題を解決するには、センサの校正条件といった海底観測装置のハードウェア面は同一にし、データ処理の段階で補正を行う方針が望ましい。この方針に従った方法として、センサ信号の変換式に周囲環境の状況に合わせた補正のデータ処理を行う方法が存在する。この方法では、前述のハードウェア面のコストの問題題を解決できる一方、データ処理の負担が重くなるという新たな問題が生じる。一例では、陸上局において、複数の海底観測装置からのセンサ信号を受信し、その信号に対してデータ処理が行われる。
【0019】
海底観測システムは、災害観測の目的で用いられることもあり、このような用途の場合には特にデータ処理はリアルタイムで行われる必要がある。このようなデータ処理が陸上局ですべて行われると、陸上局は多数の海底観測装置から複数の種類のセンサ信号を受信し、複雑な処理を行わなければならなくなる。陸上局におけるセンサ信号の処理の際に、海底観測装置の敷設場所の影響を鑑みて観測データをより正確に補正すると、陸上局のデータ処理の負担がさらに大きくなる。
【0020】
そこで、陸上局で複雑なデータ処理を行わずに正確な観測データを得るための方法として、搭載しているセンサのデータ処理を海底観測装置内で行う方法が考えられる。これにより、陸上局での過負荷を解消できることが見込まれる。しかし、センサのデータ処理が海底観測装置内で完結している場合、周囲環境が敷設前の想定と異なるため係数や処理内容を更新したい場合や、後発的により良いデータ処理手法を導入する場合に対応できないという課題がある。このような課題を解決するため、本発明者は、以下の手法を考案した。
【0021】
実施形態1.
図1は、実施形態1に係る海底観測装置10の機能構成を示すブロック図である。海底観測装置10は、観測海域の海底に複数設置され、海底観測システムに適用される。海底観測システムは、陸上に設けられた陸上局と、海底に設置された複数の海底観測装置を海底ケーブルで接続した構成を有している。
【0022】
図1に示すように、海底観測装置10は、異なる種類を含む複数のセンサ1、記憶部2、制御部3、処理部4、通信部5を備える。複数のセンサ1は、観測海域の海中に敷設されるものであり、例えば、水圧計や速度計、加速度計等を含み得る。なお、1つの海底観測装置は複数の種類のセンサを含むが、冗長のために同種のセンサが含まれていてもよい。異なる種類の複数のセンサ1は、それぞれ異なるセンサ信号を出力する。これらのセンサ信号は、例えば、災害観測の目的で用いられる。
【0023】
記憶部2は、複数のセンサ1からのそれぞれ異なるセンサ信号のデータ処理を行うための命令群及びデータを含む、複数のソフトウェアを記憶している。これらソフトウェアは、複数のセンサ1から出力される各センサ信号に対して所定のデータ処理を行うことで、それぞれ観測データを生成する。センサ信号の所定のデータ処理には、例えば、センサの校正によりあらかじめ得られた係数等を海底観測装置が敷設される環境に合わせて補正する処理、補正後の係数等を用いてセンサ信号から観測データを生成する処理が含まれる。
【0024】
処理部4は、センサ1からセンサ信号が入力されると、記憶部2に記憶されたソフトウェアを読み出して、当該ソフトウェアを用いて複数のセンサそれぞれのセンサ信号の処理を実行して、観測データを生成する。制御部3は、陸上局から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて、記憶部2に記憶されているソフトウェアを適宜更新することができる。海底観測装置10にインストールされているソフトウェアの更新が完了すると、処理部4は、更新されたソフトウェアを用いて、観測データの生成処理を継続して実行する。通信部5は、処理部4が生成した観測データを、海底ケーブルを介して陸上局に送信する。
【0025】
このように、実施形態1では、海底観測装置10内に記憶部2、制御部3が設けられており、陸上局から送信されたセンサ信号のデータ処理のためのソフトウェアがインストールされている。制御部3は、記憶部2と協同して、海底観測装置10に搭載されたセンサ1からのセンサ信号のデータ処理を行って、観測データを生成する処理を実行する。生成された観測データは、陸上局へと送信される。
【0026】
陸上局は、受信した観測データを解析して、圧力、温度等の海底観測装置10が敷設された環境に合わせて、海底観測装置10の敷設後にソフトウェアを更新するための更新データを生成することができる。制御部3は、陸上局から送信される更新データに基づいて、最適なソフトウェアを再インストールすることができ、以後のデータ処理に適用することができる。これにより、陸上局の過負荷を解消することができるとともに、海底観測装置の敷設場所が異なる場合でも、複数のセンサからのセンサ信号に対し正確なデータ処理を行うことが可能となる。
【0027】
実施形態2.
図2は、実施形態2に係る海底観測システム100の構成を示す図である。海底観測システム100は、複数の海底観測装置10と、陸上局20を含む。複数の海底観測装置10は、観測海域の海底のそれぞれ異なる場所に敷設されている。これらの海底観測装置10は、図示しない海底ケーブルで接続されている。海底ケーブルの終端は、陸上に設けられた陸上局20と接続されている。
【0028】
海底観測装置10はセンサ11、変換部12、CPU(Central Processing Unit)13、記憶装置14、通信部15を含む。センサ11は、敷設された環境の物理値を測定し、アナログデータであるセンサ信号を生成する。センサ11は、例えば、水圧計や速度計、加速度計等である。センサ11が加速度計の場合、センサ11は、例えば、横方向(X方向)、進行方向(Y方向)、重力方向(Z方向)に設定された3軸方向の加速度を測定し、加速度のアナログデータを生成する。
【0029】
センサ11により生成されたセンサ信号は、変換部12に入力される。変換部12は、アナログデータのセンサ信号をデジタルデータのセンサ信号に変換して、CPU13に出力する。デジタルデータのセンサ信号には、例えば、水圧データ、速度データ、加速度データ等の異なる種類の信号が含まれる。
【0030】
記憶装置14は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶装置14は、複数のセンサ11からの各センサ信号のデータ処理を行うためのデータ処理用ソフトウェアを記憶している。データ処理用ソフトウェアは、デジタルデータであるセンサ信号を目的の物理値である観測データに変換するための計算式や、計算式に含まれる係数等を含む。
【0031】
なお、図2では、記憶部2に記憶されるソフトウェアとして、センサ信号から観測データを生成するためのデータ処理に関わるものについてのみ記載しており、その他のソフトウェアについては不図示である。例えば、各デバイス上で動作するオペレーティングシステムや各種ミドルウェア、アプリケーションソフトウェア等は図示が省略されている。
【0032】
CPU13は、海底観測装置10の各構成を制御する制御装置である。CPU13は、記憶装置14からプログラムを読み出して実行することで処理部16、制御部17の機能を実現する。処理部16は、記憶装置14に記憶されたデータ処理用ソフトウェア(プログラム)を実行し、各変換部12から受け取ったデジタルデータを目的の観測データへと変換する。具体的には、処理部16は、取得したセンサ信号に対して、海底観測装置10の敷設環境に合わせた補正を行う。例えば、処理部16は、各センサ信号に対して、海底観測装置10の敷設環境の水深や温度等に合わせた係数や変換式等を用いて、目的の物理値の観測データを生成する。
【0033】
また、ノイズ除去に代表されるような追加処理を行う場合は、あらかじめデータ処理用ソフトウェアに処理内容を組み込むことができる。処理部16は、物理値への変換と同時に追加処理を実行することができる。データ処理用ソフトウェアでの処理が完了した後、処理部16は、生成した観測データを通信部15に送信する。通信部15は、電気信号で渡された観測データを光信号へ変換し、海底ケーブルを通じて陸上局20へ送信する。
【0034】
陸上局20は、受信した観測データを解析し、海底観測装置10で行われたデータ処理内容が適切であるか否かを判断する。海底観測装置10で行われたデータ処理内容が適切でない場合、陸上局20は、データ処理用ソフトウェアのデータ処理内容を修正するための更新データを生成し、光信号として海底観測装置10に送信する。なお、後発的に観測データに対し追加処理を行う場合、陸上局20は、追加処理を行うようにデータ処理用ソフトウェアを修正するための更新データを海底観測装置10に送信することができる。データ処理用ソフトウェアを再インストールする場合には、陸上局20は、再インストール用のソフトウエアパッケージを海底観測装置10に送信することができる。
【0035】
通信部15は、フォトディテクターで光信号を受信し、それを電気信号へ変換する。電気信号に変換された更新データは、CPU13の制御部17へ送信される。制御部17は、受信した更新データに応じて、データ処理用ソフトウェアを更新することができる。例えば、制御部17は、受信したアップデートコマンドによって、記憶装置14に記憶されたデータ処理用ソフトウェアに含まれる、センサ信号から観測データを生成する際に用いられる係数等を更新することができる。以後、処理部16は、更新されたデータ処理用ソフトウェアを用いて、センサ信号のデータ処理を実行することで、敷設環境に合わせた、より適切なデータを行うことが可能となる。
【0036】
ここで、図3を参照して、実施形態2に係る海底観測システムの制御方法について説明する。図3は、実施形態2に係る海底観測システムの制御方法を説明するフロー図である。図3に示すように、まず、観測海域の海中に敷設した、異なる種類を含む複数のセンサ11によりセンサ信号を生成する(S11)。そして、記憶装置14に記憶されたデータ処理用ソフトウェアを用いて、複数のセンサ11それぞれのセンサ信号のデータ処理を実行して観測データを生成する(S12)。このデータ処理用ソフトウェアは、陸上局20から海底ケーブルを介して送信される更新データに応じて更新可能である。更新データによりデータ処理用ソフトウェアが更新された場合、処理部16は、更新後のデータ処理用ソフトウェアを用いて、センサ11からのそれぞれのセンサ信号のデータ処理を行う。
【0037】
そして、通信部15は、海底ケーブルを介して、処理部16で生成された観測データを陸上局20に送信する(S13)。本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図3に示すステップS11~S13を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における海底観測装置と、制御方法を実現することができる。
【0038】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、海底観測装置10に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリを含む。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によって海底観測装置10に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムを海底観測装置10供給できる。
【0039】
以上説明したように、実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
第1の効果は、ハードウェアの設定に関するコストを削減することである。
その理由は、敷設環境に合わせて海底観測装置10のハードウェアの個体差を発生させる必要がなく、組み立て時、敷設時には海底観測装置10観測装置のハードウェアは均一にすることができるからである。
【0040】
上述した本願実施形態と比較される方法では、正確な観測のために、敷設環境に合わせた校正を行うことが考えられてきた。その方法では、すべてのセンサに同様の校正の行う場合よりも校正の手順が複雑化し、コストが上がることが見込まれていた。これに対して、実施形態では、センサ信号のデータ処理時に周囲環境に合わせた補正を行う方法を採用するため、そのコスト増加を防ぎつつ、同様の校正を適用することによる測定精度の低下も防ぐことができる。
【0041】
第2の効果は、より海底観測装置10のおかれている環境に合ったデータ処理をすることができることである。
海底観測装置10が敷設される環境は場所によって大きく異なり、同一のデータ処理では観測装置同士の敷設環境の違いによる誤差が避けられず、測定結果に誤差が生じる。さらに、海底観測装置10の敷設場所は敷設時に計画した地点から若干のずれが生じることが知られており、このことで水圧、温度、傾斜といった環境条件が敷設前の想定と異なるという状況が発生し、データ処理時の誤差になることも想定される。
【0042】
実施形態では、このような誤差に対して、センサ11により取得したセンサ信号のデータ処理結果を解析して、解析結果に基づきデータ処理用の更新を行うことができ、より正確なデータ処理をすることができる。また、個別の環境に合わせた補正を、敷設後に陸上局から送信された更新データによって更新されたデータ処理用ソフトウェアによって行うことができるので、ハードウェアごとに設定を変更するよりも低コストで実現することができる。さらに、ノイズ除去処理等、観測データに対して行う追加処理を敷設後に設定、変更を行うことができるという効果も有する。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 センサ
2 記憶部
3 制御部
4 処理部
5 通信部
10 海底観測装置
11 センサ
12 変換部
13 CPU
14 記憶装置
15 通信部
16 処理部
17 制御部
20 陸上局
100 海底観測システム
図1
図2
図3