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特開2024-141425熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法、およびシリンダ閉鎖用治具、ならびにロール装置
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  • 特開-熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法、およびシリンダ閉鎖用治具、ならびにロール装置 図1
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  • 特開-熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法、およびシリンダ閉鎖用治具、ならびにロール装置 図8E
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141425
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法、およびシリンダ閉鎖用治具、ならびにロール装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 45/60 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053064
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA36
4F206AM15
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL06
4F206JQ06
4F206JQ11
4F206JQ57
4F206JQ90
4F206JT07
(57)【要約】
【課題】熱硬化性射出装置を損傷させずに容易に搬送する搬送方法提供する。
【解決手段】シリンダ(18)とスクリュ(19)とを備えた熱硬化性射出装置(3)の搬送方法を、搬送前工程と、搬送と、搬送後工程とから構成する。搬送前工程は、スクリュ(19)が入れられたシリンダ(18)内に射出材料以外の充填物である非射出材料充填物(57、72)を入れる充填工程を含む。搬送後工程は、シリンダ(18)から非射出材料充填物(57、72)を除去する充填物除去工程を含む。
【選択図】図6E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出装置の搬送に際し、
搬送前に実施する搬送前工程と、
搬送後に実施する搬送後工程と、を備え、
前記搬送前工程は、前記スクリュが入れられた状態の前記シリンダ内に射出材料以外の充填物である非射出材料充填物を入れる充填工程を含み、
前記搬送後工程は、前記シリンダから前記非射出材料充填物を除去するようにする充填物除去工程を含む、熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項2】
前記充填工程は前記スクリュを回転させて前記非射出材料充填物として布を前記シリンダ内に入れるようにする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項3】
前記布は前記シリンダの後端部から前記シリンダの全長の1/4~1/2に達するように入れる、請求項2に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項4】
前記充填物除去工程は、前記スクリュを逆回転させて前記布を前記シリンダから抜き取るようにする、請求項2または3に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項5】
前記充填工程は、前記非射出材料充填物として紙粘土またはパテを前記シリンダに入れるようにし、
前記充填物除去工程は、前記スクリュを前進・後退させて前記紙粘土または前記パテを前記シリンダから排出させるようにする、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項6】
前記充填工程は、前記非射出材料充填物として紙粘土またはパテを前記シリンダの先端部に入れるようにし、
前記充填物除去工程は、前記スクリュを前進・後退させて前記紙粘土または前記パテを前記シリンダから排出させるようにする、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項7】
前記充填工程は、前記非射出材料充填物として紙粘土またはパテを前記シリンダの先端部に入れると共に前記シリンダの先端に前記シリンダの先端部を閉鎖するシリンダ閉鎖用治具を取り付けるようにし、
前記充填物除去工程は、前記シリンダ閉鎖用治具を前記シリンダから取外し、前記スクリュを前進・後退させて前記紙粘土または前記パテを前記シリンダから排出させるようにする、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法。
【請求項8】
シリンダとスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出装置の搬送に際し、ノズルが取り外された状態の前記シリンダの先端に取り付けられ、前記シリンダの先端を閉鎖するようになっているシリンダ閉鎖用治具。
【請求項9】
前記シリンダ閉鎖用治具は、前記スクリュの先端部が収納される円錐状の凹部が形成されている、請求項8に記載のシリンダ閉鎖用治具。
【請求項10】
所定幅の布が巻かれたロールを備え、
シリンダとスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出装置の搬送に先だって、前記布を前記ロールから送り出して前記シリンダに入れるようになっており、
搬送の後に前記布を前記ロールによって巻き取って前記布を前記シリンダから抜き取るようになっている、ロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂用射出装置を搬送する搬送方法、および搬送方法に使用する治具、および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出材料として熱硬化性樹脂を射出する熱硬化性樹脂用射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、型締装置と熱硬化性樹脂用射出装置とから構成されている。熱硬化性樹脂用射出装置はシリンダと、このシリンダ内に入れられているスクリュと、シリンダを支持すると共にスクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、を備えている。シリンダを熱硬化性樹脂がシリンダ内で硬化しない温度に加熱して、スクリュを回転する。そうすると熱硬化性樹脂が溶融して、スクリュの前方に送られてスクリュが後退する。すなわち計量される。スクリュを軸方向に駆動すると、型締装置で型締めされた金型に熱硬化性樹脂が充填される。金型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。樹脂が硬化したら金型を開いて成形品を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-216754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メーカが熱硬化性樹脂用射出成形機を出荷するとき、シリンダとスクリュとを熱硬化性樹脂用射出装置に取り付けた状態で搬送すると搬送中の振動によりスクリュがシリンダのボアに接触してシリンダやスクリュが損傷する虞がある。そこで熱硬化性樹脂用射出成形機を搬送する場合、2通りの方法のいずれかが実施されている。第1の方法は、熱硬化性樹脂用射出装置からシリンダとスクリュとを取り外し、シリンダとスクリュとを熱硬化性樹脂用射出成形機とは別にして搬送する方法である。搬送後、客先の工場においてシリンダとスクリュとを熱硬化性樹脂用射出装置に再び取り付けることになる。
【0005】
第2の方法は、熱硬化性樹脂をシリンダ中に充填しておく方法である。シリンダ内に熱硬化性樹脂が充填されていれば、これがクッションとなって振動によるシリンダやスクリュの損傷が防止できるからである。ただし、シリンダ内に充填する熱硬化性樹脂は、客先で使用する熱硬化性樹脂と同じ種類にする必要がある。客先で使用する熱硬化性樹脂と異なる種類の熱硬化性樹脂をシリンダ内に入れて搬送すると、搬送後に完全にパージしなければならないが、パージは熱可塑性樹脂を射出する射出成形機に比して困難であるからである。そこで、事前に客先から客先が使用する熱硬化性樹脂を入手しておき、これをシリンダ内に充填することになる。
【0006】
しかしながら、第1の方法も第2の方法も解決すべき課題が見受けられる。第1の方法は搬出の前にシリンダとスクリュとを熱硬化性樹脂用射出装置から取り外し、搬送後に再び取り付ける必要があり、搬送に要する作業が煩雑になっている。第2の方法は、事前に客先から客先が使用している熱硬化性樹脂を入手できない場合があるという問題がある。さらには、事前に熱硬化性樹脂を客先から入手することが煩雑であるという問題もある。
【0007】
本開示において、熱硬化性樹脂用射出装置を損傷のおそれなく容易に搬送することができる搬送方法、およびそのような搬送方法に使用する治具、および装置を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、シリンダとスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出装置の搬送方法を、搬送前に実施する搬送前工程と、搬送後に実施する搬送後工程と、を備えるように構成する。搬送前工程は、スクリュが入れられた状態のシリンダ内に射出材料以外の充填物である非射出材料充填物を入れる充填工程を含む。搬送後工程は、シリンダから非射出材料充填物を除去するようにする充填物除去工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、熱硬化性樹脂用射出装置を損傷の虞なく容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出成形機の正面図である。
図2】本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図3】本実施の形態に係るロール装置の斜視図である。
図4】一部を断面で示す、本実施の形態に係るシリンダ閉鎖用治具の斜視図である。
図5】本実施の形態に係る搬送方法における搬送前工程を示すフローチャートである。
図6A】本実施の形態に係る搬送前工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図6B】本実施の形態に係る搬送前工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図6C】本実施の形態に係る搬送前工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図6D】本実施の形態に係る搬送前工程において、紙粘土を充填する様子を示す本実施の形態に係るシリンダ閉鎖用治具の正面断面図である。
図6E】本実施の形態に係る搬送前工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図7】本実施の形態に係る搬送方法における搬送後工程を示すフローチャートである。
図8A】本実施の形態に係る搬送後工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図8B】本実施の形態に係る搬送後工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図8C】本実施の形態に係る搬送後工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図8D】本実施の形態に係る搬送後工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
図8E】本実施の形態に係る搬送後工程を実施している、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
[本実施の形態]
<熱硬化性樹脂用射出成形機>
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出成形機1は、図1に示されているように、型締装置2、熱硬化性樹脂用射出装置3、等を備えている。型締装置2は次に詳しく説明するように、型盤が上下に駆動されて型開閉する竪型になっている。これに対して熱硬化性樹脂用射出装置3は後で説明するように横置き型になっている。熱硬化性樹脂用射出成形機1には、これら装置を制御する制御装置4が設けられている。
【0014】
<型締装置>
本実施の形態において型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は複数本の、例えば4本のタイバー12、12、…で連結されている。下可動盤11と固定盤9の間には型締機構が設けられ、本実施の形態において型締機構はトグル機構14からなる。上可動盤10には上側金型15が、そして下可動盤11には下側金型16が設けられている。トグル機構14を駆動すると上側金型15と下側金型16とが型開閉されるようになっている。図に示されていないが上側金型15、下側金型16には温調装置が設けられ、高温にして熱硬化性樹脂を硬化させるようになっている。
【0015】
<熱硬化性樹脂用射出装置>
熱硬化性樹脂用射出装置3は、横置き型からなり、ベッド7に対して設けられている。熱硬化性樹脂用射出装置3は、水平に設けられているシリンダ18と、このシリンダ18に入れられているスクリュ19と、シリンダ18を支持すると共にスクリュ19を駆動するスクリュ駆動装置21と、を備えている。スクリュ駆動装置21は次に詳しく説明する。シリンダ18の先端には射出口25が空けられたノズル23が、そして後方にはホッパ24がそれぞれ設けられている。ノズル23を金型15、16にタッチすると、熱硬化性樹脂からなる射出材料を金型15、16に射出することができる。
【0016】
<スクリュ駆動装置>
スクリュ駆動装置21は、図2に示されているように、フレーム28を備えている。フレーム28は、前プレート30と、後プレート31と、射出プレート32とを備えている。前プレート30と後プレート31とは複数本たとえば4本のガイドロッド34、34、…によって連結されており、射出プレート32は、これらのガイドロッド34、34、…に貫通されている。つまり射出プレート32はガイドロッド34、34、…にガイドされて前後進するようになっている。このようなフレーム28の前プレート30に中空のノーズ部36が設けられている。シリンダ18は、このノーズ部36に対しボルト等により固定されている。なお、図2においてシリンダ18はホッパ24(図1参照)が取り外された状態で示されており、シリンダ18に形成されている材料供給穴26が開口している。
【0017】
射出プレート32には回転軸38が設けられている。回転軸38はその一方の端部において射出プレート32に回転可能に支持され、前プレート30を貫通して前方に伸びている。スクリュ19は、この回転軸38の他方の端部にカップリング40を介して接続されている。射出プレート32には可塑化モータ42が設けられ、回転伝達機構43を介して回転軸38を回転するようになっている。つまり、可塑化モータ42を回転すると回転軸38とスクリュ19とが回転することになる。
【0018】
射出プレート32と後プレート31の間にはボールねじ機構45が設けられている。具体的には射出プレート32にボールナット46が固定され、後プレート31にボールねじ47が回転可能に設けられている。後プレート31には射出モータ49が設けられ、回転伝達機構50を介してボールねじ47を回転するようになっている。したがって、射出モータ49を回転するとボールねじ47が回転してボールねじ機構45が伸縮する。すなわち射出プレート32が前後進してスクリュ19が前後進することになる。
【0019】
<ロール装置>
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置3の搬送方法ではシリンダ18(図2参照)内に射出材料とは異なる充填物つまり非射出材料充填物が入れられる。本実施の形態において、非射出材料充填物として布が利用される。布を供給するためのロール装置55を図3によって説明する。ロール装置55は、所定幅の布57が巻かれたロール56と、このロール56を回転可能に支持する支持部材58、58とから構成されている。支持部材58、58にはボルト穴60、60、…が空けられており、後で説明するようにロール装置55を熱硬化性樹脂用射出装置3(図2参照)のシリンダ18、またはスクリュ駆動装置21に取り付けることができるようになっている。
【0020】
布57は、好ましくはタオル地等の綿布であり、平織りの綿布、ポリエステル織布であってもよい。布57は後で説明するようにシリンダ18の中に入れられてスクリュ19との間でクッションとして利用される。したがって、シリンダ18やスクリュ19を傷つけず、クッションとしての効果が高いものが好ましい。
【0021】
本実施の形態においてロール装置55は、手動でロール56を回転して布57を送り出したり、布57を巻き取ったりするようになっている。しかしながら、例えばロール56を回転する駆動機構や、回転を制動するブレーキ機構等を設けてもよい。そうすると布57の送り出しにおいて布57が過剰に送り出されないようにコントロールしたり、布57の巻き取りにおいて自動で巻き取りをしたりすることができる。
【0022】
<シリンダ閉鎖用治具>
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置3の搬送方法で使用されるシリンダ閉鎖用治具65が、図4に示されている。シリンダ閉鎖用治具65は、シリンダ18に設けられているノズル23(図2参照)と類似した形状に形成されており、後で説明するようにノズル23が取り外された後で、シリンダ18に取り付けられるようになっている。シリンダ閉鎖用治具65には、その外周面に雄ネジ67が形成され、先端に六角ボルト部68が形成されている。この六角ボルト部68によりシリンダ閉鎖用治具65を回転すると、雄ネジ67がシリンダ18側に形成されている雌ネジに螺合して、シリンダ18に取り付けられるようになっている。なお、六角ボルト部68の代わりにスパナを掛けることができるスパナ掛け部が形成されていてもよいし、先端に六角レンチ用の穴が開けられていてもよい。
【0023】
シリンダ閉鎖用治具65には、ノズル23と同様に円錐状の凹部70が形成されている。この凹部70に、スクリュ19(図2参照)の円錐状の先端部が収納されるようになっている。ただし、この凹部70には、ノズル23に形成されているような射出口25は形成されていない。つまり閉鎖された穴になっている。
【0024】
<本実施の形態に係る搬送方法>
以下、本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置3の搬送方法を説明する。本実施の形態に係る搬送方法は、熱硬化性樹脂用射出装置3を搬送する前に搬送前工程を実施する。搬送前工程を実施した後に、熱硬化性樹脂用射出装置3つまり熱硬化性樹脂用射出成形機1を搬送する。そして搬送が完了した後に、熱硬化性樹脂用射出装置3に対して搬送後工程を実施する。
【0025】
<搬送前工程>
搬送前工程は、最初に図5に示されているようにロール装置セット(ステップS01)を実施する。すなわち、図6Aに示されているように、ロール装置55をシリンダ18もしくはスクリュ駆動装置21に取り付ける。そしてロール装置55から布57を引き出してシリンダ18の材料供給穴26に入れておく。次に、図5に示されているように、スクリュ回転(ステップS02)を実施する。すなわち、可塑化モータ42を回転してスクリュ19を正回転、つまり射出材料を送り出す回転方向に回転する。布送り込み(ステップS03)を実施する。すなわち、布57の端部を材料供給穴26に差し込み、回転しているスクリュ19に巻き込ませるようにする。必要に応じて真鍮の棒を使う等して、安全を確保して布57をスクリュ19に巻き込ませる。
【0026】
布57がスクリュ19に巻き込まれたら、図6Bに示されているように、スクリュ19の回転によって布57が前方に送り込まれる。布57の送り込みの長さ71が規定長さに達しているか否かを確認(ステップS04)する。規定長さは、例えばスクリュ19の全長に対して1/4~1/2が好ましく、1/3がより好ましい。布57が規定長さに達しているか否かについて、外部から視認することはできないが、布57を巻き込んでからのスクリュ19の回転数に基づいて予測すればよい。規定長さに達していなければ(NO)、ステップS03を継続して、布57を送り込む。一方、規定長さに達していれば(YES)、ステップS05を実行する。すなわちスクリュ19の回転を停止する。布57が規定長さだけスクリュ19の後端から入れられることによって、スクリュ19は後端部においてシリンダ18内で固定されることになる。
【0027】
次に、図5に示されているように、ノズル取外し(ステップS06)を実施する。つまり図6Cに示されているように、ノズル23をシリンダ18から取り外す。図には示されていないが、シリンダ18には雌ネジが形成され、ノズル23にはその外周面に雄ネジが形成されている。ノズル23を回転することにより雄ネジが雌ネジから外れてノズル23を取り外すことができる。
【0028】
図5に示されているように、紙粘土充填・治具取付(ステップS07)を実施する。まず、図6Dに示されているように、紙粘土72をシリンダ閉鎖用治具65の凹部70に所定量入れる。次に、紙粘土72が入れられたシリンダ閉鎖用治具65をシリンダ18に取り付ける。そうすると図6Eに示されているように、紙粘土72がシリンダ18の先端部からシリンダ18内に入れられて、シリンダ18とスクリュ19の間に充填される。これによってスクリュ19は、その先端部においてシリンダ18内で固定されることになる。なお、本実施の形態では紙粘土27を入れるようにしているが、パテであってもよい。紙粘土27もパテも、非射出材料充填物である。搬送前工程を完了する。この搬送前工程におけるシリンダ18内への布57の充填、紙粘土72の充填は、充填工程ということもできる。
【0029】
<搬送>
搬送前工程が完了したら、熱硬化性樹脂用射出成形機1を搬送する。熱硬化性樹脂用射出装置3は、非射出材料充填物によってスクリュ19の後端部と先端部とがシリンダ18内で固定されている。したがって搬送時に振動が発生しても、シリンダ18のボアとスクリュ19とがぶつかることはなく、損傷の危険はない。予定している搬送先に熱硬化性樹脂用射出成形機1を搬送したら搬送を完了する。
【0030】
<搬送後工程>
搬送を完了したら、搬送後工程を実施する。搬送後工程は図7に示されているように、最初に治具取外し(ステップS11)を実施する。図8Aには、シリンダ18からシリンダ閉鎖用治具65が取り外されている様子が示されている。次いで、紙粘土除去(ステップS12)を実施する。すなわち、図8Bに示されているように、射出モータ49を駆動してスクリュ19を前後進させる。そうすると、シリンダ18の先端に充填されていた紙粘土72が除去される。図7に示されているように、ノズル取り付け(ステップS13)を実施する。図8Cにはノズル23がシリンダ18に取り付けられた状態が示されている。
【0031】
次いで、図7に示されているように、スクリュ回転・布巻取(ステップS14)を実施する。すなわち図8Dに示されているように、可塑化モータ42を駆動してスクリュ19を逆回転させる。そうすると、スクリュ19に巻き込まれていた布57が抜き出される。これをロール装置55によって巻き取る。図7におけるステップS15を実施して、布巻取が完了したか否かを判断する。巻取が完了していなければ(NO)、スクリュ回転・布巻取(ステップS14)を継続する。巻取が完了していれば(YES)、ステップS16を実施してスクリュ19の回転を停止する。
【0032】
ロール装置取外し(ステップS17)を実施する。図8Eに示されているように、ロール装置55を熱硬化性樹脂用射出装置3から取り外す。搬送後工程を完了する。この搬送後工程における紙粘土72の除去と、布57の取り出しは、シリンダ18に入れられている非射出材料充填物を除去する充填物除去工程ということもできる。
【0033】
<変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置3の搬送方法では、ロール装置55(図6B参照)を使用して布57を送り込むように説明した。しかしながら、ロール装置55は必須ではない。ロール装置55を使用しない場合には、布57を直接送り込めばよい。同様にシリンダ18(図8D参照)から布57を取り出す場合にも、ロール装置55を使用する必要はなく、ペンチ等で布57を挟んで取り出すようにすることができる。
【0034】
シリンダ閉鎖用治具65も必須ではない。紙粘土72(図6E参照)をシリンダ18の先端から所定量充填することができれば、シリンダ閉鎖用治具65をシリンダ18に取り付ける必要はない。この場合、紙粘土72を充填した後でノズル23をシリンダ18に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
本実施の形態において、シリンダ18(図6E参照)の後端部つまり材料供給穴26近傍には布57を入れ、先端部には紙粘土72を入れるように説明したが、後端部にも先端部にも布57を入れるようにしてもよい。あるいは、後端部にも先端部にも紙粘土72を入れるようにしてもよい。なお、この場合においても紙粘土72の代わりにパテを入れてもよい。
【0036】
シリンダ18に充填する非射出材料充填物として、他の充填物を利用することもできる。例えば、発泡ウレタン、ポリエチレンフォーム等からなる梱包材を利用することができる。このような充填物であっても、シリンダ18とスクリュ19の間でクッションの作用を奏するからである。
【0037】
ロール装置55(図3参照)の説明では、ロール56を回転する駆動機構や、回転を制動するブレーキ機構等を設けてもよい旨説明した。例えば、ロール装置55にエンコーダおよびブレーキが付属したモータを設けてロール56の回転を制御できるようにする場合、次のように実施することができる。搬送前工程において布57(図6B参照)のシリンダ18内への挿入が開始されたら、ロール装置55においてロール56の回転数をカウントして、布57が規定長さ送り込まれたか否かを確認する。送り込みが完了したらブレーキをかけてロール56の回転を停止する。搬送後工程における布57の巻取(図8D参照)のときは、スクリュ19の回転による布57の抜き出しに同期してロール56を回転して布57を巻き取ることができる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 熱硬化性樹脂用射出成形機 2 型締装置
3 熱硬化性樹脂用射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 上側金型 16 下側金型
18 シリンダ 19 スクリュ
21 スクリュ駆動装置 23 ノズル
24 ホッパ 25 射出口
26 材料供給穴 28 フレーム
30 前プレート 31 後プレート
32 射出プレート 34 ガイドロッド
36 ノーズ部 38 回転軸
40 カップリング 42 可塑化モータ
43 回転伝達機構 45 ボールねじ機構
46 ボールナット 47 ボールねじ
49 射出モータ 50 回転伝達機構
55 ロール装置 56 ロール
57 布 58 支持部材
60 ボルト穴
65 シリンダ閉鎖用治具 67 雄ネジ
68 六角ボルト部 70 凹部
72 紙粘土
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E