(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141430
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20241003BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20241003BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241003BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/14
C08G73/10
H10K50/10
H10K59/122
H10K59/124
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053079
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】立花 康子
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
(72)【発明者】
【氏名】亀本 聡
【テーマコード(参考)】
3K107
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC33
3K107DD89
3K107DD90
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3K107FF14
4J002CD012
4J002CD022
4J002CD041
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4J002CD142
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4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043VA071
4J043VA081
(57)【要約】
【課題】
高感度かつ凹凸面を持った物体表面の高度な平坦化が可能であり、さらに硬化物の吸水性が低い樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂((A)成分)、ならびに、光酸発生剤を含有する樹脂組成物であって、前記(A)成分が、1種以上の酸二無水物残基と、2種以上のジアミン残基とを有し、前記2種以上のジアミン残基の内の2種が、トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(DA1残基)、およびトリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)であり、前記DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基のジアミン化合物としての融点が、110℃以上180℃以下であり、前記(A)成分におけるジアミン残基の総量を100モル%としたとき、DA2残基の比率が15モル%以上40モル%以下である、樹脂組成物とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂(以下、(A)成分)、ならびに、光酸発生剤を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分が、1種以上の酸二無水物残基と、2種以上のジアミン残基とを有し、
前記2種以上のジアミン残基の内の2種が、トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(以下、DA1残基)、およびトリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(以下、DA2残基)であり、
DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基のジアミン化合物としての融点が、110℃以上180℃以下であり、
(A)成分におけるジアミン残基の総量を100モル%としたとき、DA2残基の比率が15モル%以上40モル%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記1種以上の酸二無水物残基の全部または一部が、ジフェニルエーテル構造を有する酸二無水物残基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
DA1残基が、式(1)で表されるジアミン残基である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、-C(CF
3)
2-または-CH(CF
3)-を示す。*はイミド構造、アミド酸構造、またはアミド酸エステル構造に結合する結合点を示す。)
【請求項4】
DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基が、ジフェニルエーテル構造を有するジアミン残基である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、反応性不飽和結合を有する酸無水物残基および反応性不飽和結合を有するモノアミン残基の何れかまたは両方を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに熱架橋剤(以下、(C)成分)を含有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分の全部または一部が、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれを用いた硬化物、ならびに当該硬化物を具備する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)表示装置を用いた製品が多く開発されている。
【0003】
一般に、有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、画素分割層、発光層および第二電極を有し、対向する第一電極と第二電極との間に電圧を印加することで、あるいは、電流を流すことで発光することができる。これらのうち、平坦化層用材料および画素分割層用材料としては、紫外線照射によるパターニング可能な感光性樹脂組成物が一般に用いられている。中でもポリイミド系やポリベンゾオキサゾール系の樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、樹脂の耐熱性が高く、硬化物から発生するガス成分が少ないため、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができる点で好適に用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
一方、有機EL素子は水分に弱いとされ、信頼性の高い有機EL表示装置を得るためには可能な限り周辺部材から発生する水分を低減する必要があり、平坦化層や画素分割層には、低吸水性の材料が求められている。さらに、有機EL表示装置は、画素や配線の高密度化が進んでおり、凹凸面を持った物体表面を高平坦化できる材料が求められている。また、基板の大型化や生産性向上などの理由から、露光時間を短縮するため、樹脂組成物により高い感度が要求されている。
【0005】
こうした課題に対して、高感度化が可能な樹脂組成物として、ポリイミド樹脂またはポリベンゾオキサゾール樹脂にノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレン樹脂を混合することが検討されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-91343号公報
【特許文献2】特開2002-116715号公報
【特許文献3】特開2005-352004号公報
【特許文献4】特開2014-59463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記に挙げた特許文献で提案された材料は、低吸水性や高平坦性といった観点で十分な性能を有するとは言い難い。本発明は、上記問題点を鑑み、高感度かつ凹凸面を持った物体表面を高度に平坦化することが可能であり、さらに硬化物の吸水性が低い樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記の構成を有する。
[1]ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂(以下、(A)成分と表記することがある)、ならびに、光酸発生剤(以下、(B)成分と表記することがある)を含有する樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、1種以上の酸二無水物残基と、2種以上のジアミン残基とを有し、
前記2種以上のジアミン残基の内の2種が、トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(以下、DA1残基と表記することがある)、およびトリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(以下、DA2残基と表記することがある)であり、
前記DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基のジアミン化合物としての融点が、110℃以上180℃以下であり、
(A)成分におけるジアミン残基の総量を100モル%としたとき、DA2残基の比率が15モル%以上40モル%以下である、樹脂組成物。
[2]前記1種以上の酸二無水物残基の全部または一部が、ジフェニルエーテル構造を有する酸二無水物残基である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記DA1残基が、式(1)で表されるジアミン残基である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
【0009】
【0010】
(式(1)中、R1は、-C(CF3)2-または-CH(CF3)-を示す。*はイミド構造、アミド酸構造、またはアミド酸エステル構造に結合する結合点を示す。)
[4]前記DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基が、ジフェニルエーテル構造を有するジアミン残基である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記(A)成分が、反応性不飽和結合を有する酸無水物残基および反応性不飽和結合を有するモノアミン残基の何れかまたは両方を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]さらに熱架橋剤(以下、(C)成分と表記することがある)を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記(C)成分の全部または一部が、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤である、[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化した硬化物。
[9][8]に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、高感度で、凹凸面を持った物体表面の平坦化能力に優れ、低吸水な硬化物を得ることが可能であり、有機EL表示装置の平坦化層やバンク層に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について例を挙げつつ詳細に説明する。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂((A)成分)ならびに光酸発生剤((B)成分)を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分が、1種以上の酸二無水物残基と、2種以上のジアミン残基とを有し、
前記2種以上のジアミン残基の内の2種が、トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(DA1残基)、ならびにトリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)を有し、
DA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基のジアミン化合物としての融点が、110℃以上180℃以下であり、
(A)成分におけるジアミン残基の総量を100モル%とする場合、DA2残基の比率が15モル%以上40モル%以下である、樹脂組成物である。
【0015】
そして、本発明の樹脂組成物は、高感度で、凹凸面を持った物体表面の平坦化に優れ、低吸水な硬化物を得ることが可能である。
【0016】
なお、本発明において酸二無水物残基とは、ポリイミドまたはポリイミド前駆体樹脂の原料としての酸二無水物またはその誘導体に由来する構造であって、酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた四価の構造部分である。同じくジアミン残基とは、ポリイミドまたはポリイミド前駆体樹脂の原料としてのジアミンまたはその誘導体に由来する構造であって、ジアミンから2つのアミノ基を除いた二価の構造部分である。
【0017】
以下に、各成分について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
<(A)成分>
本発明の樹脂組成物の構成要素のひとつである(A)成分は、公知の方法で合成できる。ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができる。ポリイミド、ポリイミド前駆体から選択される2種類の樹脂の共重合体は公知の方法で合成できる。
【0019】
(A)成分は、1種以上の酸二無水物残基と、2種以上のジアミン残基とを有し、前記2種以上のジアミン残基の内の2種が、トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(DA1残基)、および、トリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)である。
【0020】
(A)成分に含まれる酸二無水物残基としては特に限定されないが、1種以上の酸二無水物残基のうち、少なくとも1つがジフェニルエーテル構造を有していることが好ましい。ジフェニルエーテル構造を有している酸二無水物残基を与える酸二無水物としては、例えば、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BSAA)、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物(HQDA)があげられる。平坦化性、耐折性の点で特に好ましいのはビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物である。
【0021】
また、酸二無水物残基総量に対するジフェニルエーテル構造を有している酸二無水物残基の割合としては、好ましく51モル%以上である。(A)成分に含まれる酸二無水物残基として用いうる他の酸二無水物残基を与える酸二無水物としては、酸二無水物であれば特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0022】
また、(A)成分に含まれるトリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(DA1残基)は感光性樹脂組成物としたときの感度の観点から全ジアミン残基100モル%に対して60モル%以上85モル%以下であることが好ましい。また、(A)成分に含まれるトリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)は全ジアミン残基100モル%に対して15モル%以上40モル%以下である。なお、(A)成分には、DA1残基およびDA2残基以外のジアミン残基が含有されていてもよい。
【0023】
そして、本発明の樹脂組成物にあっては、(A)成分に含まれるDA2残基のうち少なくとも1つのジアミン残基に対応するジアミン化合物の融点が110℃以上180℃以下であるものを用いることが重要である。なお、ジアミン残基に対応するジアミン化合物とはジアミン残基の結合点部分にアミノ基が結合した構造のジアミン化合物である。DA2残基に対応するジアミン化合物の融点が、110℃以上180℃以下であるものを用いることで、凹凸面を持った物体表面に対して優れた平坦化性を奏する。
【0024】
また、本発明の樹脂組成物にあっては、(A)成分に含まれるジアミン残基の総量を100モル%としたとき、DA2残基の比率が15モル%以上40モル%以下であるが、かかる範囲であることによって感光性樹脂組成物としての感度と硬化物の低吸水性、平坦化性の両立を可能とできる。低吸水性と平坦化性の観点から、ジアミン残基の総量を100モル%としたとき、DA2残基の比率は、30モル%以上40モル%以下であることが特に好ましい。
【0025】
トリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミン残基(DA1)が由来するジアミンとしては例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタン(Bis-AP-EF)、下記式(2)で表されるジアミン化合物があげられるがこれらに限定されるものではない。また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
【0027】
式(2)で表されるジアミン化合物はフェノール性水酸基の一部、または全部が熱硬化の際に隣接するアミド基と脱水縮合し、ベンゾオキサゾール環となり、硬化後の樹脂組成物のフェノール性水酸基の数が減らすことができる。このため、式(2)で表されるジアミン化合物を用いることは低吸水性の観点から特に好ましい。DA1残基を与えるジアミンとして、式(2)で表されるジアミン化合物のみを使用してもよいし、他のトリフルオロメチル基およびフェノール性水酸基を有するジアミンを併用してもよい。トリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)のうち、ジアミン化合物としての融点が、110℃以上180℃以下であるジアミンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)(融点:126℃)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)(融点:160℃)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(p-6FAPB)(融点:134℃)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン(Bis-A-EF)(融点:138℃)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタン(Bis-3-AT-EF)(融点:142℃)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン(Bis-3,5-AX-EF)(融点:146℃)、4,4‘-{[ビス(トリフルオロメチル)メチレン]ビス(4,1-フェニレンオキシ)}ビス[3-(トリフルオロメチル)アニリン](HFHAPP)(融点155℃)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン(Bis-2,5-AX-EF)(融点:164℃)があげられる。これらのジアミン化合物を1種のみでも2種以上を組み合わせて使用してもよい。DA2残基に対応するジアミン化合物の融点が110℃以上180℃以下であるものを用いることで、凹凸面を持った物体表面上に樹脂組成物を塗布した樹脂膜を加熱硬化する際、凹凸面を持った物体表面の凹部に流れ込む程度の流動性を持ち、光照射によってパターン加工されたコンタクトホールなどの孔部を埋めてしまわない程度の流動性となり、平坦化性と解像性の両立が可能となる。耐折性の点でジフェニルエーテル構造を有するジアミン残基が特に好ましく、ジフェニルエーテル構造を有しているジアミン残基が由来するジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパンである。
【0028】
トリフルオロメチル基を有し、フェノール性水酸基を有さないジアミン残基(DA2残基)のうち、ジアミン化合物としての融点が、110℃未満または180℃超であるジアミンとしては、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Bis-AT-AF)(融点:105℃)、3-(トリフルオロメチル)-4-(4-アミノフェノキシ)アニリン(TFDPE)(融点109℃)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(融点:183℃)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Bis-A-AF)(融点:195℃)、5-トリフルオロメチル-1,3-ジアミノベンゼン(DATF)(融点:89℃)等があげられる。ポリイミド、またはポリイミド前駆体の流動性を調節するため、適宜これらの、ジアミン化合物としての融点が110℃未満または180℃超のジアミンを併用してもよい。
【0029】
融点が110℃以上180℃以下であるジアミン化合物が与えるDA2残基と、融点が110℃未満もしくは180℃を超えるジアミン化合物が与えるDA2残基の比率は、好ましくは、DA2残基総量を100モル%としたとき、融点が110℃以上180℃以下であるジアミン化合物が与えるDA2残基が80モル%以上である。
【0030】
また、(A)成分は、本発明の趣旨を損なわない限りにおいて、DA1残基およびDA2残基以外のジアミン残基が含まれていても良い。そのようなジアミン残基を与えるジアミン化合物としては、例えば、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジメルカプトフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン残基、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
【0031】
また、本発明の樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(A)成分は、主鎖の末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの公知の末端封止剤で封止されたものであってもよい。加熱硬化して得られる樹脂硬化膜の耐折性、耐薬品性を向上させる目的で、これらの末端封止剤としてアルケニル基またはアルキニル基など反応性不飽和結合を少なくとも1個有するモノアミン、酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0032】
アルケニル基またはアルキニル基などの反応性不飽和結合を少なくとも1個有するモノアミンとしては特に限定されないが、4-エチニルアニリン、4-ビニルアニリンなどがあげられる。
【0033】
アルケニル基またはアルキニル基など反応性不飽和結合を少なくとも1個有する酸無水物としては特に限定されないが、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、無水メタクリル酸などがあげられる。
【0034】
反応性不飽和結合とは、反応性不飽和結合同士や、後述する熱架橋剤(C)成分との反応点となるなど、他の化合物との反応点となる化学的に活性な不飽和結合をいう。
【0035】
(A)成分において、全てのイミド構造単位およびイミド前駆体構造単位に対するイミド閉環した構造単位のモル比をイミド環閉環率(RIM(%))と定義すると、本発明においては、RIMは0%以上100%以下の全範囲を採用できるが、アルカリ溶解性制御の観点で、RIMは3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましく、感度の観点で、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましい。本発明においては、ポリイミドまたはポリイミド前駆体であって、RIMが0%以上80%未満のものをポリイミド前駆体、RIMが80%以上100%以下のものをポリイミドと称することとする。
【0036】
上記のイミド環閉環率(RIM(%))は、例えば、以下の方法で求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1,780cm-1付近、1,377cm-1付近)の存在を確認し、芳香環に起因する吸収ピーク(1,470cm-1付近)のピーク強度を1とした場合の、1,377cm-1付近のピーク強度(Y)を求める。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理し、赤外吸収スペクトルを測定し、芳香環に起因する吸収ピーク(1,470cm-1付近)のピーク強度を1とした場合の、1,377cm-1付近のピーク強度(Z)を求める。これらのピーク強度比が熱処理前ポリマー中のイミド基の含量、すなわちイミド環閉環率に相当する(RIM=Y/Z×100(%))。
【0037】
(A)成分においては、本発明の趣旨を損なわない限りにおいて、イミド構造単位およびイミド前駆体構造単位以外の他の構造単位が含まれていてもよい。そのような構造単位としては、ベンゾオキサゾールおよびベンゾオキサゾール前駆体、アミド、アミドイミドなどの各構造単位があげられるが、耐熱性、低吸水性の点からベンゾオキサゾール構造単位およびベンゾオキサゾール前駆体構造単位が好ましい。なお、ここでいう構造単位は、繰り返し単位とも称される。
【0038】
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めることができ、硬化膜の耐折性の観点で、好ましくは20,000を超え、より好ましくは22,000を超え、さらに好ましくは23,000を超え、特には25,000を超えることが好ましい。一方で、アルカリ溶解性の観点で、(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは40,000以下、より好ましくは38,000以下、さらに好ましくは35,000以下、特に好ましくは30,000以下である。
【0039】
(A)成分は重合反応の終了後にメタノールや水などポリマーに対する貧溶媒中にて沈殿化した後、洗浄、乾燥して得られるものであることがより好ましい。こうすることで、ポリマーの低分子量成分などが除去できるため、樹脂組成物の加熱硬化後の耐折性が大幅に向上する。
【0040】
(A)成分の積分分子量分布曲線はGPCの解析ソフトで解析することができ、積分分子量分布曲線から求めた分子量1,000以下の含有量は硬化膜の耐折性の観点で、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.7%以下であり、樹脂組成物の保存安定性の観点で、好ましくは0.1%以上である。
【0041】
<光酸発生剤(B成分)>
本発明の樹脂組成物は、光酸発生剤を含有する。
【0042】
光酸発生剤を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。ポジ型感光性樹脂組成物は、露光・現像工程により微細パターンを得た後、加熱硬化することにより、順テーパー形状のパターンを容易に得ることができる。この順テーパー形状パターンは、有機EL表示装置の絶縁膜として用いる際に上部電極の被覆性に優れ、断線を防止し装置の信頼性を高めることができる。
【0043】
また、光酸発生剤とエポキシ化合物または後述する熱架橋剤を含有することで、光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤の架橋反応を促進し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0044】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物またはオニウム塩化合物が好ましく用いられる。
【0045】
キノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸のスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP,DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株))、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業(株))、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(以上、商品名、本州化学工業(株))などの化合物が挙げられる。本発明に用いられるキノンジアジド化合物の好適な例として、これらのフェノール性水酸基を有する化合物に4-ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものを挙げることができるが、これら以外の化合物を使用することもできる。
【0046】
4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を有しており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明は、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物のどちらも好ましく使用することが出来るが、露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、または5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を得ることもできるし、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を混合して使用することもできる。
【0047】
上記ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、合成することが可能であって、公知の方法により合成することができる。
【0048】
オニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。中でもスルホニウム塩が好ましい。これらを単独、または混合して使用することができる。さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
【0049】
本発明において、樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~50質量部が好ましい。また、キノンジアジド化合物の含有量は、パターン形成の観点で、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上で、耐熱性維持の観点で、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下である。また、オニウム塩化合物の含有量は、パターン形成の観点で、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上で、耐熱性維持の観点で、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0050】
<熱架橋剤(C成分)>
本発明の樹脂組成物は、熱架橋剤を含有することができる。熱架橋剤は、熱によって他の分子と反応して化学結合を生成する化合物であり、樹脂組成物の硬化物の耐折性を向上することが出来る。
【0051】
熱架橋剤としては、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤を用いることが好ましい。これらのエポキシ熱架橋剤は、分子中に芳香環を有さない構造とすることで、アルカリ現像液に対する溶解性が高まり、高い感度でパターン加工できる。また架橋部が柔軟な構造になることで、熱硬化時の樹脂組成物の流動性が上がることでより平坦化性に優れ、さらに、熱または紫外線を含む光照射による分解を抑制できるので、高い折り曲げ耐性を発現する点でも好ましい。イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤は、化合物構造中にイソシアヌル環構造を含有するエポキシ熱架橋剤である。脂環式エポキシ熱架橋剤は、エチレンオキサイド構造以外の化合物構造に、ヘテロ元素や分岐構造を有してもよい炭素数3~12の脂環構造を1つ以上有するエポキシ熱架橋剤である。脂肪族エポキシ熱架橋剤は、エチレンオキサイド構造以外の化合物構造に、ヘテロ元素や分岐構造を含んでもよい脂環構造ではない炭素数3~24の構造を有するエポキシ熱架橋剤である。また、エポキシ熱架橋剤が、イソシアヌル環、脂環構造、さらに脂肪族構造を有する化合物は、本願においてはイソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤と分類する。エポキシ熱架橋剤が、脂環構造、さらに脂肪族構造を有する化合物は、本願においては脂環式エポキシ熱架橋剤と分類する。
【0052】
イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤は、樹脂の架橋性を高める観点からいえば分子内に二つ以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0053】
イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤の例としては、例えば、“TEPIC”(登録商標)-S、TEPIC-G、TEPIC-L、TEPIC-VL(以上商品名、日産化学工業(株)製)MA-DGIC(商品名、四国化成(株)製)などが挙げられる。脂環式エポキシ熱架橋剤の例としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P、“セロキサイド”2081、“セロキサイド”8000、“セロキサイド”8010(商品名、(株)ダイセル製)、“デナコール”(登録商標)EX-252(商品名、ナガセケムテックス(株)製)、“エポカリック”(登録商標)THI-DE、“エポカリック”DE-102、“エポカリック”DE-103(商品名、ENEOS(株)製)、“ショウフリー”(登録商標)CDMDG(商品名、昭和電工(株)製)が、脂肪族エポキシ熱架橋剤としては、“デナコール”(登録商標)EX-614B、“デナコール”EX-313、“デナコール”EX-512、“デナコール”EX-321L、“デナコール”EX-810、“デナコール”EX-861、“デナコール”EX-211(以上商品名、ナガセケムテックス(株)製)、エポゴーセー”(登録商標)BD、“エポゴーセー”NPG、“エポゴーセー”HD(商品名、四日市合成(株)製)、“ショウフリー”(登録商標)PETG(商品名、昭和電工(株)製)が挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、硬化膜の耐折性の観点で、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。耐熱性維持の観点で、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、特に好ましくは35質量部以下である。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤の好ましい例としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物に溶剤が含まれる場合の含有量としては、(A)成分100質量部に対して、樹脂の溶解性の観点で、好ましくは70質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、適度な膜厚を得る観点で、好ましくは2,500質量部以下、より好ましくは2,000質量部以下である。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じ、(A)成分、(B)成分、および(C)成分や溶剤の他に、他の成分、例えば、密着改良剤、界面活性剤、フェノール性水酸基を有する化合物、無機粒子、熱酸発生剤を含有することができる。
【0058】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、前記(A)成分および(B)成分と、必要により、(C)成分、密着改良剤、界面活性剤、フェノール性水酸基を有する化合物、無機粒子、熱酸発生剤などを有機溶剤に溶解または溶剤に分散させることにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
溶剤中に溶解させたり分散させたりする方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法が挙げられる。
【0060】
得られた樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μm、0.02μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあり、ポリエチレンやナイロンが好ましい。
【0061】
次に、本発明の樹脂組成物から硬化物を製造する方法について説明する。より具体的には、樹脂組成物を基板上に塗布し樹脂膜を形成し、該樹脂膜を乾燥し、該樹脂膜を加熱処理することで硬化物を製造することができる。このとき、(A)成分中、イミド前駆体の構造を持っている部分は、イミド環に閉環することができる。さらに(A)成分のポリイミド前駆体またはポリイミド樹脂が末端に反応性不飽和結合を持つ場合は、相互に架橋して分子鎖を伸ばすこともできる。また(C)成分を含有する場合は、(C)成分同士または(C)成分と(A)成分で熱架橋することができる。
【0062】
まず、樹脂組成物を基板上に塗布し樹脂膜を形成する。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などが挙げられる。これらの中でも、少量の塗布液で塗布を行うことができる、コスト低減に有利であることから、スリットコート法が好ましい。スリットコート法に必要とされる塗布液の量は、例えば、スピンコート法と比較すると、1/5~1/10程度である。塗布に用いるスリットコーターとしては、例えば、(株)SCREENファインテックソリューションズ製“リニアコーター”(登録商標)、東京応化工業(株)製“スピンレス”(登録商標)、東レエンジニアリング(株)製「TSコーター」、中外炉工業(株)製“テーブルコータ”(登録商標)、東京エレクトロン(株)製「CSシリーズ」「CLシリーズ」、サーマトロニクス貿易(株)製「インライン型スリットコーター」、平田機工(株)製「ヘッドコーターHCシリーズ」などを選択することができる。スリットコーターを用いる場合の塗布速度は、10mm/秒~400mm/秒の範囲が好ましい。塗布膜の膜厚は、樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~10μm、好ましくは0.3~5μmになるように塗布される。
【0063】
基板としてはガラス、およびシリコン、セラミックス類、ガリウムヒ素などのウエハ、または、その上に金属が電極、配線として形成されているものが用いられるが、これらに限定されない。
【0064】
次に、溶剤が用いられた場合は特に、基板上に設けられた樹脂膜を乾燥、すなわち乾燥温度までの温度で揮発する揮発分を除去、する。乾燥方法はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用する方法など公知の方法を行うことができる。また、塗布膜を形成した基板ごと減圧乾燥してもよい。加熱温度および加熱時間は塗布膜の種類や目的により様々であるが、加熱温度は50℃~180℃、加熱時間は1分間~数時間が好ましい。
【0065】
樹脂膜を加熱硬化することにより、硬化膜を得ることができる。加熱硬化することにより、耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性をより向上させることができる。加熱硬化温度は、硬化膜の耐熱性向上の観点で、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは230℃以上で、硬化膜の膜靭性を向上させる観点で、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは300℃以下、特に好ましくは280℃以下である。この温度範囲において、段階的に昇温してもよいし、連続的に昇温してもよい。加熱硬化時間は、硬化膜の耐熱性向上の観点から、30分間以上が好ましい。また、硬化膜の膜靭性を向上させる観点から3時間以下が好ましい。例えば、150℃、260℃で各60分間ずつ熱処理する方法や、室温から270℃まで2時間かけて直線的に昇温しながら熱処理する方法などが挙げられる。
【0066】
次に、本発明の樹脂組成物からパターン形成された硬化物を製造する方法について説明する。より具体的には、樹脂組成物を基板上に塗布し樹脂膜を形成し、該樹脂膜を乾燥し、該樹脂膜を露光し、露光された樹脂膜を現像し、現像後の樹脂膜を加熱処理することで硬化物を製造することができる。塗布工程、乾燥工程、および加熱処理工程は前記の通りであり、以下では、樹脂膜の露光工程と現像工程について記載する。
【0067】
前記の通り、樹脂組成物を基板上に塗布し樹脂膜を形成し、該樹脂膜を乾燥した後、樹脂膜を露光する。所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射することにより露光し、現像することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0068】
露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。本発明においては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部が現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部が硬化し、現像液に不溶化する。
【0069】
次に露光された樹脂膜を現像する。ポジ型の場合は露光部を、現像液により除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種以上添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が挙げられる。
【0070】
次に、現像によって形成したパターンを、純水によりリンス処理することが好ましい。エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを純水に加えてリンス処理してもよい。続けて、前記の加熱処理をすることでパターン形成された硬化物を製造することができる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、有機EL表示装置のバンク層、有機EL表示装置の駆動用TFT基板の平坦化層、回路基板の配線保護絶縁層、半導体素子の表面保護層や層間絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層に好適に用いられる。
【0072】
本発明の有機EL表示装置は、本発明の樹脂組成物を硬化した硬化物を具備する。有機EL表示装置の構造は、少なくとも、基板上に平坦化層、第1電極、バンク層、発光層および第2電極を有しており、平坦化層およびバンク層のいずれかまたは両方が本発明の硬化物からなることが好ましい。有機EL発光材料は水分による劣化を受けやすく、発光画素の面積に対する発光部の面積率低下など、悪影響を与える場合があるが、本発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は低吸水性であるため、安定した駆動および発光特性が得ることができる。また画素内に段差を有していると色ムラ、混色などを生じ、表示品位が下がることがあるが、平坦化層を備えることで発光層下層の段差を高度に平坦化でき、表示品位を上げることができる。
【実施例0073】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定して解釈されるものではない。まず、評価方法について説明する。
【0074】
[評価方法]
(1)膜厚
支持基板上の樹脂被膜の膜厚は光干渉式膜厚測定装置((株)SCREENホールディングス製ラムダエースVM-1030)を使用して測定した。なお、屈折率は、1.629として測定した。
【0075】
(2)感度
樹脂組成物を、塗布現像装置(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて、8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ベークをして膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。その後、露光機i線ステッパー((株)ニコン製NSR-2005i9C)を用いて、5μmのコンタクトホールのパターンを有するマスクを介して、露光量50~300mJ/cm2の範囲で10mJ/cm2毎に露光した。その後、前記ACT-8を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAH)水溶液を現像液として、未露光部の膜厚が2.5μmになるまで現像液で処理した後、純水でリンスを行い、振り切り乾燥し、パターンを得た。
【0076】
得られたパターンを顕微鏡MX61(オリンパス(株)製)を用いて倍率50倍で観察し、コンタクトホールの開口径を測定した。コンタクトホールの開口径が5μmに達した最低露光量を求めた。最低露光量が小さいほど高感度といえる。
【0077】
(3)加熱処理前後の開口径変化
(2)で得られた、現像後の樹脂膜付き基板を、クリーンオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて、窒素気流下、250℃で60分間加熱処理した。(2)で求めた最低露光量における開口径を(CDDEV)、加熱処理後の同一箇所の開口径を(CDCURE)とした場合、(CDDEV-CDCURE)を、前記顕微鏡MX61を用いて倍率50倍で観察し、測定した。
【0078】
(4)吸水率
樹脂組成物を、前記ACT-8を用いて、8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ベークをして膜厚6.5μmのプリベーク膜を作製した。その後、前記ACT-8を用いて、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて、膜厚が6.0μmになるまで処理を行った後、純水でリンスを行い、膜上の水滴を振り切り、乾燥した。処理後の樹脂膜付き基板を、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下、250℃で60分間加熱処理して硬化膜とした。硬化膜付き基板を、45質量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、基板から硬化膜を剥離した。得られた膜を純水で十分洗浄した後、80℃の通風オーブンで5時間硬化膜を乾燥し、オーブンから取り出した直後に精密天秤で硬化膜の乾燥重量を測定した。その後、硬化膜を23℃で24時間、純水中に浸漬し、純水から取り出した後、直ちに水分を拭き取り、5分後に精密天秤で硬化膜の吸水重量を測定した。硬化膜の乾燥重量と吸水重量とから、硬化膜中の吸水率(wt%)を算出した。
【0079】
(5)平坦性
図1に平坦性評価サンプルの断面図を示す。樹脂組成物を、前記ACT-8を用いて、厚さ1.0μm、幅5μmの銅製のラインパターンが、基板中央部に5μm間隔で平行に5本パターニングされている直径8インチのシリコンウェハの段差基板上にスピンコート法により塗布し、前記のラインパターンが存在していない平坦部分の膜厚が120℃、2分間のベーク後で2.8μmになる様にプリベーク膜を作製した。その後、前記ACT-8を用いて、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて、段差の影響を受けていない部分での膜厚が2.3μmになるまで処理を行った後、純水でリンスを行い、膜上の水滴を振り切り、乾燥し、樹脂膜を得た。処理後の樹脂膜付き基板を、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下、250℃で60分間加熱処理し、硬化膜を作製した。得られた硬化膜について、前記のラインパターンの存在する部分の最も外側の2本を除く3本のラインパターン上に生じた表面段差を表面プロファイラー(P・15;ケーエルエー・テンコール(株)製)で測定し、段差(
図1中、h1~h3で表された硬化膜の高さ)の平均値を表面段差(μm)とした。なお、各段差のベースラインは、
図1からみて、h1~h3を測定する山脈状の樹脂膜の部分それぞれの左右に存在する凹部の膜厚が最も小さくなる点を結んだ線として定義した。以下に具体例を記載する。
図1において、段差形状の底部a1とa2を結んだ直線をベースラインとし、段差形状の頭頂部b1から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さh1と定した。h2はa2とa3を結んだ線をベースラインとして、段差形状の頭頂部b2から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さと定義し、h3はa3とa4を結んだ線をベースラインとして段差形状の頭頂部b3から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さと定義した。
【0080】
(6)耐折性
まず、タテヨコ10cm×10cm、厚さ0.5mmのガラス基板の片面を覆うように、タテヨコ10cm×10cmに切った厚み25μmの“カプトン”(登録商標)フィルムをカプトンテープで固定した。カプトンフィルム付きガラス基板のカプトンフィルム上に、樹脂組成物をスピンコーター(ミカサ(株)製MS-A100)を用いてスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ベークをして膜厚5μmのプリベーク膜を作製した。その後、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて、膜厚が4.5μmになるまで処理を行った後、純水でリンスを行った。処理後の基板を、クリーンオーブンCLH-21CD-Sを用いて、窒素気流下、250℃で60分間加熱処理した。加熱処理後、硬化膜付き“カプトン”(登録商標)フィルムをガラス基板から取り外し、この硬化膜付き“カプトン”(登録商標)フィルムを幅1cm、長さ5cmサイズに細断して試験片とした。耐折性評価用治具としては縦10センチ×横10センチ×厚さ1センチのステンレス板の片面中央に縦5センチ×横10センチで、溝の深さがそれぞれ0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmの矩形の凹部(以下単に、溝という)が加工されたもの(下側治具)を1枚ずつ用意し、また、溝のない縦10センチ×横10センチ×厚さ1センチのステンレス板(上側治具)を用意した。前記の試験片を、カプトンフィルム面が内側に、硬化膜面が外側になるように、また、試験片の短辺を重ね合わせて、軽く屈曲させ、該重ね合わせた短辺を下側治具の溝の中心から約1cm溝の壁の側に離れた点に、該重ね合わせた試験片の短辺が溝の壁に平行になるよう固定した。次いで、下側治具上に現れている試料のループが溝の中に収まるよう上側治具を下側治具に重ね、1分間静置した。静置後、治具から取り出した試験片を顕微鏡MX61で観察し、折り曲げ位置(すなわち、試験片の長手方向の中点近傍)におけるクラックの有無を観察した。この測定を用意した各下側治具を用いて行い、クラックが生じない最小の溝の深さを記録した。
【0081】
[合成例]
合成例1 ジアミン化合物(HA)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン164.8g(0.45モル)をアセトン900mL、プロピレンオキシド156.8g(2.7モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド183.7g(0.99モル)をアセトン900mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。
【0082】
固体270gを3Lのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ2400mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を5g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるジアミン化合物(以下、HA)を得た。
【0083】
【0084】
合成例2 ポリアミド酸エステル樹脂(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたジアミン化合物HA42.3g(0.07モル)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、6FODA)10.1g(0.03モル)をN-メチルピロリドン(以下、NMP)300gに溶解した。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以下、ODPA)21.7g(0.07モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、NA)9.8g(0.06モル)をNMP10gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール19.1g(0.16モル)を加え、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、5Lの水を加えた上で濾過をして沈殿を集める洗浄操作を3回行った後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリアミド酸エステル樹脂(A-1)の粉体を得た。
【0085】
合成例3 ポリイミド樹脂(A-20)の合成
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたジアミン化合物HA42.3g(0.07モル)、6FODA10.1g(0.03モル)、末端封止剤としてNA9.8g(0.06モル)をNMP300gに溶解した。ここにODPA21.7g(0.07モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、5Lの水を加えた上で濾過をして沈殿を集める洗浄操作を3回行った後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリアミド樹脂(A-20)の粉体を得た。
【0086】
合成例4~21 ポリアミド酸エステル樹脂(A-2~A-19)の合成
合成例2と同様の方法で、使用する酸二無水物、ジアミン、および末端封止剤を表1のように置き換えて、ポリアミド酸エステル樹脂(A-2~A-19)の粉体を得た。
【0087】
合成例22~23 ポリイミド樹脂(A-21、A-22)の合成
合成例3と同様の方法で、使用する酸二無水物、ジアミン、および末端封止剤を表1のように置き換えて、ポリイミド樹脂(A-21、A-22)の粉体を得た。
【0088】
【0089】
ODPA:ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物
BSAA:2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
6FAP:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
6FODA:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(融点:126℃)
HFBAPP:2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン(融点:160℃)
Bis-A-EF:1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン(融点:138℃)
Bis-AT-AF:2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(融点:105℃)
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(融点:183℃)
BAP:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン
4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン
NA:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物
MA:マレイン酸無水物
PA:フタル酸無水物
EA:4-エチニルアニリン
MAP:3-アミノフェノール
合成例24 キノンジアジド化合物(B-1)の合成
乾燥窒素気流下、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール42.4g(0.1モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド53.6g(0.20モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン100gと混合したトリエチルアミン25.0gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後、40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表される光酸発生剤である、キノンジアジド化合物(B-1)を得た。
【0090】
【0091】
[その他の成分]
熱架橋剤:
“ショウフリー”(登録商標)PETG(C-1)
(脂肪族エポキシ熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、昭和電工(株)製)
【0092】
【0093】
“TEPIC”(登録商標)-VL(C-2)
(イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、日産化学工業(株)製)
【0094】
【0095】
“テクモア”(登録商標)VG3101L(C-3)
(芳香環を有しエポキシ基を有する熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、(株)プリンテック製)
【0096】
【0097】
“ニカラック”(登録商標)MX-270(C-4)
(下記化学式に示す化合物、日本カーバイド工業(株)製)
【0098】
【0099】
[樹脂組成物の作製]
容量100mLのバイアルに表2の組成で各成分を入れ、撹拌脱泡装置((株)シンキー製ARE-310)を用いて、撹拌10分、脱泡1分の条件で混合し、溶解した後、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過して、樹脂組成物(V-1~26)を作製した。なお、表2中、「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテル、「EL」は乳酸エチルを表す。
【0100】
【0101】
[実施例1~17、比較例1~9]
作製した樹脂組成物を用い、上記の方法で吸水率および感度を評価した結果を表3に示す。
【0102】
【0103】
実施例1~17に示すものは、感度は140mJ/cm2以下、開口径変化は0.1mm以下、吸水率は1.2%以下、平坦性は0.22μm以下、耐折性は0.3mm以下と、いずれの特性も良好な結果であった。
【0104】
一方、比較例1~9に示すものは、これらの特性のうち少なくとも1つは劣る結果であった。
本発明の樹脂組成物は、有機EL表示装置のバンク層、有機EL表示装置の駆動用TFT基板の平坦化層、回路基板の配線保護絶縁層、半導体素子の表面保護層や層間絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層に好適に用いられる。
本発明の硬化物は、低吸水性、高平坦性、かつ高耐折性を示すことから、有機EL表示装置のバンク層、有機EL表示装置の駆動用TFT基板の平坦化層、回路基板の配線保護絶縁層、半導体素子の表面保護層や層間絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層に好適に用いられる。