(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141433
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フィルター用不織布およびそれを有するフィルター用濾材
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20241003BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20241003BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B03C3/28
D04H1/4382
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053084
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 由扶子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 康裕
【テーマコード(参考)】
4D019
4D054
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA04
4D019BA13
4D019BB05
4D019BC01
4D019BC06
4D019BC11
4D019BC13
4D019BC20
4D019BD01
4D019CA02
4D019CB04
4D019CB06
4D019CB07
4D019CB09
4D019DA01
4D019DA02
4D019DA03
4D019DA10
4D054AA12
4D054AA13
4D054BC01
4D054BC16
4L047AA05
4L047AA16
4L047AA21
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4L047AB02
4L047AB06
4L047AB08
4L047BA12
4L047BA21
4L047BA22
4L047BB05
4L047CA05
4L047CB01
4L047CB08
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】
フィルターの使用により、大気中の粉塵がフィルター用不織布または濾材に堆積し通気性が悪化した場合に、簡単に粉塵を除去できるフィルター用不織布の提供。
【解決手段】
本発明のフィルター用不織布は、少なくとも有機繊維と、フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維を含む混合繊維から構成され、通気の上流に配置される面の平均摩擦係数(MIU)が0.12以下であり、前記面が撥油性を有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機繊維と、フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維を含む混合繊維から構成され、通気の上流に配置される面の平均摩擦係数(MIU)が0.12以下であり、前記面が撥油性を有することを特徴とするフィルター用不織布。
【請求項2】
前記撥油性は、AATCC 118法において1級以上である請求項1記載のフィルター用不織布。
【請求項3】
前記混合繊維において7dtex以下の短繊維の割合が、前記混合繊維全体の92質量%以上である請求項1または2記載のフィルター用不織布。
【請求項4】
フッ素樹脂を含有する請求項1~3のいずれかに記載のフィルター用不織布。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のフィルター用不織布からなる補強層および捕集層を有し、前記補強層が通気の上流に配置されているフィルター用濾材。
【請求項6】
前記捕集層がエレクトレット繊維を含有する不織布からなる請求項5に記載のフィルター用濾材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアフィルター用途に好適に用いられるフィルター用不織布およびそれを有するフィルター用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PM2.5等の大気汚染が問題となる中で、よりきれいな空気環境で生活を送りたいというニーズから、空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、住宅給気用フィルター、自動車用キャビンフィルターや車両用フィルターの需要が高まっている。これらの用途に共通して用いられているのが、不織布等で構成される濾材によって空気中の粉塵を除去する技術である。そして、これらの濾材には、高い捕集効率と高い通気性が求められている。
【0003】
また、フィルターを使用していくと、大気中の粉塵が濾材に堆積し通気性が悪化するケースがある。通気性が悪化すると、フィルターを通過する風量が落ちるため、効率よく粉塵を除去できず、フィルターを交換する必要がある。そのため、フィルターに堆積した粉塵を除去することで、通気性を改善し、長く使用したいというニーズがある。
【0004】
例えば、特許文献1では、吸引ノズルを用いた粉塵除去が検討され、特許文献2では、異物除去がしやすい不織布が開示されている。しかしながら上記検討では、付着した異物が十分に取れず、通気性の改善はまだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-136475号公報
【特許文献2】特開2019-177349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、フィルターに付着した粉塵を容易に除去でき、長期間使用可能なフィルター用不織布およびそれを有するフィルター用濾材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のフィルター用不織布およびそれを有するフィルター用濾材は以下の特徴を有する。
(1)少なくとも有機繊維と、フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維を含む混合繊維から構成され、通気の上流に配置される面の平均摩擦係数(MIU)が0.12以下であり、前記面が撥油性を有することを特徴とするフィルター用不織布。
(2)前記撥油性は、AATCC 118法において1級以上である(1)記載のフィルター用不織布。
(3)前記混合繊維において7dtex以下の短繊維の割合が、前記混合繊維全体の92質量%以上である(1)または(2)記載のフィルター用不織布。
(4)フッ素樹脂を含有する(1)~(3)のいずれかに記載のフィルター用不織布。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のフィルター用不織布からなる補強層および捕集層を有し、前記補強層が通気の上流に配置されているフィルター用濾材。
(6)前記捕集層がエレクトレット繊維を含有する不織布からなる(5)に記載のフィルター用濾材。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルター用不織布およびそれを有するフィルター用濾材は、通気の上流側に配置する面が、平滑で表面エネルギーが低いため、簡単に粉塵を除去することができ、フィルターの通気性を効率良く改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
[フィルター用不織布]
本発明のフィルター用不織布を構成する混合繊維は、(I)有機繊維、(II)フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維を含む。さらに、(III)バインダー樹脂を含むことが好ましい。これら(I)~(III)の成分を含むことで、不織布の強度を保ちつつ、厚みを低減し、通気度および密度の調整が行いやすくなる。上記繊維に追加し、ガラス繊維を含んでもよいが、含有量は0~50質量%であることが好ましい。ガラス繊維を含むことで、不織布の強度が増し、プリーツ加工性が向上する。一方、多いとフィルターのプリーツ加工を行う際にガラス繊維の飛散の懸念がある。
【0011】
有機繊維については特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ビニロン繊維などを好適に使用することができる。
【0012】
フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維を含むことにより、不織布の目を詰めて孔径を小さくすることができる。孔径が小さいことで、不織布の上流表面に付着した比較的大きな粉塵が不織布の内部や更に下流に積層した層に移動しにくくなる。フィブリル化繊維または1dtex以下の短繊維は不織布において5~20質量%であることが好ましく、少ないと孔径が大きくなり、多いと圧力損失が高くなる傾向がある。フィブリル化繊維としては、パルプを好適に用いることができる。ここで短繊維とは、1~30mmであることが好ましい。1mm以上であると他の繊維との交点が十分あり落脱が少なくなり、30mm以下であると製造工程における供給ラインの詰まりによる生産不具合が起こりにくくなる。また、平均摩擦係数(MIU)が0.12以下であることにより、表面が滑りやすく、不織布に堆積した粉塵の除去が容易となる。
【0013】
バインダー樹脂は繊維間を接着し、シートに強度を持たせる機能を有する。バインダーについては特に限定されるものではなく、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを使用することができる。特に、ポリビニルアルコール樹脂やアクリル樹脂を使用すると異臭が少ないため好ましい。また、バインダーは不織布において10~40質量%であることが好ましい。少ないと不織布の強度が低下する傾向があり、多いとフィルターとしての圧力損失が増える傾向がある。
【0014】
本発明のフィルター用不織布を構成する混合繊維においては、7dtex以下の短繊維の割合が、前記混合繊維全体の92質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。7dtex以上の短繊維の割合がを92質量%以上である含むことにより、太い繊維による凹凸が発生しにくく、表面を平滑にすることができる。また、同目付で考えた場合、繊維同士の接点が増えるため不織布の強度が向上する。このような構成とすることで、フィルター用不織布単体でも、JIS15種を粉塵として用いた重量法での測定で50%以上の捕集効率を有することができる。一方、本フィルター用不織布は、後述する捕集層と積層する場合、捕集層と比較して、サイズの大きい粉塵のプレフィルターとしての機能を持たせる点から、フィルター用不織布の繊維径は、捕集層の繊維径よりも大きいことが好ましい。フィルター用不織布の平均繊維径は、捕集層の平均繊維径より大きければ特に限定はされないが、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。
【0015】
本発明のフィルター用不織布の製造方法としては特に限定はされないが、湿式抄紙法やケミカルボンド法が好ましい。
【0016】
本発明のフィルター用不織布の厚みは0.30mm以下が好ましい。厚みを0.30mm以下とすることで、プリーツ構造由来の通気抵抗を十分に減少させることができる。フィルター用不織布の強度を保つため、厚みの下限は0.10mm以上が好ましい。一方で、厚みが小さいとフィルター用不織布から捕集層へとサイズの大きな粉塵が移動しやすくなるため、フィルター用不織布の通気度は280cm3/cm2/秒以下が好ましい。通気度を280cm3/cm2/秒以下とすることで、フィルター用不織布から捕集層へとサイズの大きな粉塵が移動することを抑制できる。より好ましくは250cm3/cm2/秒以下である。また、通気性を確保するため、通気度の下限は150cm3/cm2/秒以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のフィルター用不織布の密度は0.10g/cm3以上0.20g/cm3以下であることが好ましい。密度を0.10g/cm3以上とすることで、フィルター用不織布から捕集層へとサイズの大きな粉塵が移動することを抑制でき、0.20g/cm3以下とすることで、圧力損失の上昇を抑制することができる。また、フィルター加工時のプリーツ形状の保持性を得るため、ガーレ剛軟度が200mg以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のフィルター用不織布は通気の上流に配置される面に撥油性を有することを特徴とする。撥油性を有するとは、ある油滴を不織布表面に滴下した際に液滴をはじく挙動を示す。本願においては、AATCC 118法で測定した撥油性が1級以上であることが好ましく、3級以上であることがより好ましい。撥油性が高いことは、不織布の表面自由エネルギー低いことを表しており、表面自由エネルギーを低くすることで、粉塵の除去性を向上することができる。
【0019】
フィルター用不織布への撥液性の付与方法としては、特に限定されないが、フィルター用不織布を構成する繊維の原料に撥油剤を混ぜておく方法、フィルター用不織布を撥油剤を含む溶液に接触させる方法、フィルター用不織布に撥油剤を含む溶液をスプレー噴霧する方法、蒸着法等の不織布に直接撥油剤を付与する方法などを適宜使用できる。
【0020】
フィルター用不織布への撥油性の付与は、フィルター用不織布を捕集層に積層する前に、フィルター用不織布単体に行ってもよく、捕集層との積層後に行ってもよいが、捕集層に積層する前に撥油性を付与する方法が好ましい。フィルター用不織布の単体に撥油性を付与した後に積層する方法であれば、撥油性を付与する工程において後述する捕集層のエレクトレットの失活を防ぐことができる。捕集層との積層後に撥油性を付与する場合、例えば撥油剤を含む溶液に浸漬させる方法を行うと、捕集層のエレクトレットが失活してしまう可能性があるため、エレクトレット失活を抑制するよう、フィルター用不織布の表層のみに撥油性を付与する方法を選定する必要がある。例えば、グラビアロールを用いて、片面のみに撥油剤を含む溶液を転写するよう方法等である。
【0021】
撥油剤の種類としては特に限定されないが、フッ素樹脂を含有するものが好ましい。フッ素樹脂系撥油剤を用いることで、高い撥油性を得ることができる。ここで、フッ素樹脂とは、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体、ポリイミド系変性フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド系変性フッ素樹脂、エポキシ系変性フッ素樹脂、ポリエーテルサルフォン系変性フッ素樹脂、フェノール系変性フッ素樹脂、パーフルオロアルキルエチレン基を有するアクリレート重合体、及びパーフルオロアルキルエチレン基を有するメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0022】
[捕集層]
捕集層を構成する不織布は特に限定されないが、高い通気性と捕集効率からエレクトレット繊維を含有していることが好ましい。不織布としては、熱可塑性樹脂の繊維を含む不織布や天然繊維を含む不織布等が用いられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂の繊維を含む不織布が好適に用いられる。
【0023】
熱可塑性樹脂の繊維を含む不織布の形態としては、特に限定はされないがメルトブロー不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、エアレイド不織布などが挙げられる。これらの中でも、不織布を構成する繊維の繊維径を小さくすることができ、不織布を構成する繊維の表面に油剤が存在しないか、不織布を構成する繊維の表面に油剤が存在したとしても極めて少量であるといった観点からメルトブロー不織布が好ましい。ここで、油剤とは、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系油や、鉱物油、などを例示できる。なお、濾材の捕集効率をさらに優れたものとすべく、不織布にエレクトレット加工を施すことがあるが、油剤が不織布を構成する繊維の表面に存在すると、不織布に十分にエレクトレットが発現しない傾向にある。そのため、前記フィルター用不織布でも、油剤を用いないことが重要である。油剤を用いて、付着した粉塵を繊維表面から滑りやすくして、粉塵の除去性を向上されることも考えられるが、フィルター用濾材として使用していく中で、油剤が捕集層に移動し、エレクトレットが損なわれる懸念がある。
【0024】
熱可塑性樹脂の繊維としては、ポリエステル繊維、ポリ乳酸繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、及び、これらの繊維から選ばれる2種以上の混合繊維などから選ばれるものが用いられる。そして、これらの中でも、上述したエレクトレット加工を施した後の不織布の帯電能が優れることから、ポリオレフィン繊維が好ましく、ポリプロピレン繊維(以下、PP繊維と称することがある)がより好ましい。ここで、不織布におけるPP繊維の含有量は、不織布の全体質量に対し95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。不織布におけるPP繊維の含有量が大きくなるほど、エレクトレット加工を施した後の不織布の帯電能が優れる傾向がある。
【0025】
捕集層を構成する不織布に含まれる繊維の平均繊維径は5.0μm以下が好ましい。より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。平均繊維径が5.0μm以下であると、不織布の孔径が微細になり、十分な捕集効率が得られる。また、5.0μm以下であると毛細管現象の要領で捕集層に油滴や流動化した微細塵が移動しやすいが、本発明のフィルター用濾材の構成とすることでこれを抑制することができ、発明の効果を十分に得ることができるため好ましい。平均繊維径の下限は特に限定されないが、0.1μm以上であると、圧損の上昇を抑制でき好ましい。なお、繊維径が0.1μm以上5.0μm以下の繊維は、メルトブロー法など、公知の手法を用いることでも得られる。
【0026】
本願における平均繊維径の算出方法は次のとおりである。1000mm×1000mmの不織布の面上から20個のサンプル取得箇所を無作為に選定する。各サンプル取得箇所1箇所あたり1個のタテ×ヨコ=3mm×3mmの測定サンプルを採取する。走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)により不織布の表面写真を各測定サンプル1枚あたり1枚ずつ、計20枚を撮影し、写真の中の全ての繊維について繊維径を測定する。各繊維径は、有効数字0.1μmの測定精度にて行い、相加平均から平均繊維径を算出する。細繊維の本数割合は、写真に写った全ての繊維の本数を(a)とし、写真に写った繊維径が0.1μm以上3.0μm以下の繊維の本数を(b)として、(b)/(a)計算する。
【0027】
捕集層はエレクトレット繊維からなることが好ましい。不織布にエレクトレット加工を施す場合、その方法は特に限定されず、不織布にコロナ放電法、純水帯電法、摩擦帯電法といった公知の帯電を施す方法から任意に選択できる。これらの中でも、不織布に水を付与した後に乾燥させることによる純水帯電法が好ましく用いられる。
【0028】
捕集層に用いる不織布に含まれる繊維は、帯電加工による帯電効果を向上させるための添加剤を含む繊維であってもよい。このような添加剤としては公知のものを適宜使用できるが、なかでもヒンダードアミン系添加剤もしくはトリアジン系添加剤は、水などに対する静電気力の耐久性が向上するためより好ましい。
【0029】
捕集層に用いる不織布には上記添加剤、結晶核剤の他、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤および親水剤等を適宜添加することができる。
【0030】
捕集層の目付は、3~100g/m2の範囲であることが好ましい。目付を3~100g/m2、好ましくは5~70g/m2、より好ましくは10~50g/m2とすることにより、通気性と粉塵捕集性に優れる。
[フィルター用濾材]
本発明のフィルター用不織布を通気の上流側に配置し、下流側に前記捕集層を積層することで、プリーツ加工性に適した強度と高い通気性と捕集効率を有し、粉塵の捕集により通気性が低下した際に、粉塵を除去しやすいフィルター用濾材を得ることができる。使用用途に応じ、各層が多層積層されていても良い。また、フィルター用不織布と捕集層の間に、脱臭性能を有する吸着剤や、抗菌性・抗アレルゲン性・防カビ性・抗ウイルス性といった機能薬剤を挟みこんでいても良く、フィルター用不織布や捕集層に、上記吸着剤や機能薬剤を担持していても良い。
【0031】
空気清浄機用フィルターや自動車用キャビンフィルター、車両用フィルターは、各々の装置において、フィルターのサイズが決まっているため、体積あたりの濾材面積を増やすことによりフィルター性能を高めることができる。体積あたりの濾材面積を増やすためには、プリーツ加工が有効である。
【0032】
本発明のフィルター用不織布およびフィルター用濾材をプリーツ加工し、端面を不織布等で封止することで、フィルターユニットを得ることができる。大きな粉塵を捕集したい場合はフィルター用不織布単体でも良く、微細塵を捕集したい場合は必要な捕集効率に応じた捕集層を選定したフィルター用濾材を用いる。本発明のフィルター用不織布およびフィルター用濾材は、大きな粉塵を捕集する通気の上流側に配置する面が、平滑で表面エネルギーが低いため、簡単に粉塵を除去することができる。例えば、フィルターを装置から取り出し、通気の上流側を下に向け、軽く上から叩くことで、粉塵の一部が落ちるため、フィルターの通気性が改善させることができる。また、プリーツの山谷が、地面と垂直になるようにフィルターを装置に設置した場合、フィルターを装置から取り出さなくても、経時的に粉塵が下に落ち、通気性が改善し、使用期間を長くすることもできる。一定周期でフィルターに振動を加えることや、一定の通気量となった時にフィルターに振動を加える機構をとることもできる。この場合、フィルターの下に落ちた粉塵を受け止める、吸引するといった機構があると落ちたフィルターから除去した粉塵を廃棄しやすい。
【実施例0033】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0034】
(1)目付
24℃60%RHの室温に8時間以上放置して、試料の質量を求め、その面積から1m2あたりの質量に直して、試料の目付として求めた。試料の最小面積は0.01m2以上とし、評価する試料の枚数は5枚とし、それらの算術平均値を目付とした。
【0035】
(2)厚み
ダイヤルシックネスゲージ(TECLOCK社 SM-114 測定子形状10mmφ、測定力2.5N以下)を用いて、測定頻度60cm2あたり3箇所、合計15箇所の厚みを求め、その算術平均値を厚みとした。
【0036】
(3)通気度
通気性試験機KES-F8(カトーテック製)を用いて測定した。不織布サイズ100m ×100mmにて2枚重ねて5点測定を行い、その平均値を通気度とした。
【0037】
(4)剛軟度
ガーレ―式柔軟度試験機(安田精機製、型番:No.311)を用いて測定した。JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」6.7「剛軟度(JIS法及びISO法)」の6.7.4「ガーレ法(JIS法)」に準じて、以下のようにして得られた値とした。
(i)試料から長さ38.1mm(有効試料長L=25.4mm)、幅d=25.4mmの試験片を、長さが試料のMD方向となるように試料の任意の5点から採取した。
(ii)採取した試験片をそれぞれチャックに取り付け、可動アームA上の目盛り1-1/2”(1.5インチ=38.1mm)に合わせてチャックを固定した。この場合、試料長の1/2”(0.5インチ=12.7mm)はチャックに1/4”(0.25インチ=6.35mm)、試料の自由端にて振子の先端に1/4”(0.25インチ=6.35mm)がかかるため、測定にかかる有効試料長Lは試験片長さから1/2”(0.5インチ=12.7mm)差し引いたものとなる。
(iii)次に振り子Bの支点から下部のおもり取付孔a、b、c(mm)に適当なおもりWa、Wb、Wc(g)を取り付けて可動アームAを定速回転させ、試験片が振り子Bから離れるときの目盛りRG(mgf)を読んだ。目盛りは小数点以下第一位の桁で読んだ。ここでおもり取付孔に取り付けるおもりは適宜選択できるものであるが、目盛りRGが4~6になるよう設定するのが好ましい。
(iv)測定は試験片5点につき表裏各1回、合計10回実施した。
(v)得られた目盛りRGの値から下記式を用いて剛軟度の値を小数点以下第二位で四捨五入して求めた。試料の剛軟度(mN)は、10回の測定の平均値を、小数点以下第二位を四捨五入して算出するものである。
【0038】
【0039】
(5)平均摩擦係数
評価はカトーテック製、摩擦感テスター(KES-SE)にて評価を行った。テーブルに固定した試料を1.0mm/sの速度で、25gfの荷重をかけながら、接触し掃引させ、検出された平均摩擦係数(MIU)について、1サンプルあたり3箇所の値の算術平均値を平均摩擦係数とした。
【0040】
(6)撥油性試験
AATCC 118-1992法に準じて測定した。具体的には、表面張力の異なる炭化水素溶媒を評価布に滴下し、浸透性を目視にて判断する。各溶媒のうち、評価布に浸透しない最も高い数字が評価結果となる。具体的には、100mm×100mの不織布の面上に、コクゴ製ポリ万能スポイト1mlを用いて、炭化水素溶媒を1滴化し、滴下直後に浸透性を目視にて確認した。
【0041】
(7)粉塵除去性
平面状のフィルター用不織布またはフィルター用濾材を有効間口面積0.1m2のホルダーにセットし、面風速20.0m/minで垂直方向に空気を通過させ、上流側よりJIS15種ダストを濃度50mg/m3で供給した時のフィルター上下流の圧力差を差圧計で測定し、初期圧力損失から50Pa上昇した時点で供給を停止した。試験前の濾材重量と、試験後の濾材重量の差より、保持した粉塵量とした。そして、濾材を机上に対して垂直に治具に設置し、高さ10cmの位置から5回落とした。その後、濾材の重量を測定し、濾材から落ちた粉塵量が保持した粉塵量の6割以上であれば、◎、5割以上6割未満であれば〇、3割以上5割未満であれば△、3割未満であれば×の判定とした。
【0042】
(実施例1)
傾斜ワイヤー方式の湿式抄紙方法により繊維集積体を作製した後、該繊維集積体をバインダーに含浸させ、乾燥熱処理して目付30g/m2の不織布シートを作製した。構成としてはポリエステル繊維(繊度3dtex、繊維長10mm)6質量%、ビニロン繊維(繊度15dtex、繊維長12mm)7質量% 、ガラス繊維(繊度11dtex、繊維長15mm)40質量%、繊維パルプ17質量%、バインダー樹脂(スチレンアクリル重合体)30質量%となるよう調整した。
【0043】
旭硝子社製のAG-E082を撥油剤として用い、フッ素樹脂濃度が3質量%濃度となるように、水で希釈し加工液を調整した。
【0044】
得られた不織布シートを、加工液に浸漬し、液切りした後150℃で5分間加熱し、フィルター用不織布を得た。
(実施例2)
構成が、ポリエステル繊維(繊度3dtex、繊維長10mm)12質量%、ポリエステル繊維(繊度1.5dtex、繊維長10mm)18質量%、ビニロン繊維(繊度7dtex、繊維長12mm)20質量%、繊維パルプ20質量%、バインダー樹脂(スチレンアクリル重合体)30質量%となるよう調整した以外は実施例1と同様にしてフィルター用不織布を得た。
【0045】
(実施例3)
撥油剤として、旭硝子(社)製のAG-E100、および旭硝子(社)製のAG-E082を、AG-E100/AG-E082=50質量%/50質量%の比で混合したものを用い、撥油剤/水/添加剤=40質量%/54質量%/6質量%の割合で混合し、加工液とした以外は、実施例1と同様にしてフィルター用不織布を得た。添加剤として、明成化学工業製のデレクトールMAPを用いた。
【0046】
(実施例4)
ヒンダードアミン系化合物“キマソーブ”(登録商標)944(BASFジャパン(株)製)を1質量%含む、ポリプロピレン樹脂を用い、メルトブロー法により平均繊維径2.0μm、目付30g/m2の不織布シートを得た。次いで、純水が供給される水槽の水面に沿って得られた不織布シートを走行させながら、その表面にスリット状の吸引ノズルを当接させて水を吸引することにより、繊維シート全面に水を浸透させ、水切り後に自然乾燥させることにより、捕集層を得た。
【0047】
得られた捕集層にポリエチレン製ホットメルト樹脂を6g/m2となるよう散布し、実施例1記載のフィルター用不織布を積層して、加熱によりホットメルト樹脂を溶融させ、フィルター用濾材を得た。
【0048】
粉塵除去性の試験では、フィルター用不織布を通気の上流側とした。
【0049】
(比較例1)
傾斜ワイヤー方式の湿式抄紙方法により繊維集積体を作製した後、該繊維集積体をバインダーに含浸させ、乾燥熱処理して目付3060g/m2の不織布シートを作製した。構成としてはポリエステル繊維(繊度8dtex、繊維長10mm)35質量%、ポリエステル繊維(繊度1.5dtex、繊維長10mm)35質量%、バインダー樹脂(スチレンアクリル重合体)30質量%となるよう調整し、フィルター用不織布とした。
【0050】
(比較例2)
旭硝子社製のAG-E082を撥油剤として用い、フッ素樹脂濃度が3質量%濃度となるように、水で希釈し加工液を調整した。
【0051】
比較例1の不織布シートを、加工液に浸漬し、液切りした後150℃で5分間加熱し、フィルター用不織布を得た。
【0052】
(比較例3)
実施例1記載の不織布シートをフィルター用不織布とした。
【0053】
(比較例4)
実施例4記載のフィルター用濾材について、粉塵除去性の試験では、フィルター用不織布を通気の下流側とした。
【0054】
表1に実施例、比較例で作成したフィルター用不織布、フィルター用濾材の構成および物理特性、粉塵除去性の結果を示す。
【0055】