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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141447
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ヌエゼニドを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20241003BHJP
   C07H 17/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 36/63 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241003BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241003BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P37/08
A61P25/20
C07H17/04
A61K36/63
A61K8/60
A61Q19/00
A61K8/9789
A61P17/00
A61K9/48
A61K9/20
A23L33/10
A23L33/105
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053105
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】521362863
【氏名又は名称】有限会社森満工業
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】満▲崎▼ 俊二
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦義
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD04
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD34
4B018MD36
4B018MD52
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF01
4C057BB03
4C057DD03
4C057KK02
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC18
4C076FF01
4C076FF11
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC332
4C083AD242
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD14
4C083DD15
4C083DD17
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE11
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA89
4C086ZB13
4C088AB64
4C088AC04
4C088BA10
4C088BA13
4C088BA32
4C088CA06
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA05
4C088ZA89
4C088ZB13
(57)【要約】
【課題】アレルギー症状の改善及び/又は睡眠改善が可能な組成物を提供すること。
【解決手段】ヌエゼニドを含有する組成物であり、好ましくはヌエゼニドがオリーブ種子由来の組成物である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌエゼニドを含有することを特徴とするアレルギー症状改善用組成物。
【請求項2】
前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする請求項1記載のアレルギー症状改善用組成物。
【請求項3】
ヌエゼニドを含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。
【請求項4】
前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする請求項3記載の睡眠改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌエゼニドを含有するアレルギー症状の改善効果及び/又は睡眠改善効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物には、多様な機能性物質が含まれているが、近年の研究においては、植物由来成分が、例えばアレルギー症状の改善や睡眠改善の効果を有することが明らかになっている。例えば、キンミズヒキ抽出物を含有する経口組成物が、アレルギー症状の改善に有効であることが明らかとされている(例えば、特許文献1参照)。また、サジーの果皮由来成分を含有する経口組成物が、睡眠改善に有効であることが明らかとされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-093893号公報
【特許文献2】特許第7108992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、アレルギー症状の改善及び/又は睡眠改善が可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ヌエゼニドに、優れたアレルギー症状の改善効果及び/又は優れた睡眠改善効果があることを見いだし、本発明を完成するに至った。また、オリーブの種子等に、ヌエゼニドが含まれていることを見いだした。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]ヌエゼニドを含有することを特徴とするアレルギー症状改善用組成物。
[2]前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする上記[1]記載のアレルギー症状改善用組成物。
[3]ヌエゼニドを含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。
[4]前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする上記[3]記載の睡眠改善用組成物。
【0007】
[5]オリーブ種子又はその抽出物を含有することを特徴とするアレルギー症状改善用組成物。
[6]オリーブ種子が、オリーブ搾油残渣であることを特徴とする上記[5]記載のアレルギー症状改善用組成物。
[7]オリーブ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。
[8]オリーブ種子が、オリーブ搾油残渣であることを特徴とする上記[7]記載の睡眠改善用組成物。
【0008】
[9]ヌエゼニドを含有することを特徴とするβ-ヘキソサミニダーゼ放出抑制用組成物。
[10]前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする上記[9]記載のβ-ヘキソサミニダーゼ放出抑制用組成物。
改善用組成物。
[11]ヌエゼニドを含有することを特徴とするメラトニン産生促進用組成物。
[12]前記ヌエゼニドがオリーブ種子由来であることを特徴とする上記[11]記載のメラトニン産生促進用組成物。
【0009】
[13]オリーブ種子又はその抽出物を含有することを特徴とするβ-ヘキソサミニダーゼ放出抑制用組成物。
[14]オリーブ種子が、オリーブ搾油残渣であることを特徴とする上記[13]記載のβ-ヘキソサミニダーゼ放出抑制用組成物。
[15]オリーブ種子又はその抽出物を含有することを特徴とするメラトニン産生促進用組成物。
[16]オリーブ種子が、オリーブ搾油残渣であることを特徴とする上記[15]記載のメラトニン産生促進用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、優れたアレルギー症状の改善効果及び/又は優れた睡眠改善効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】オリーブ抽出物に含まれる成分(ヌエゼニド)の核磁気共鳴分析(NMR)の結果を示す図である(下が標品)。
図2】オリーブ抽出物に含まれる成分(ヌエゼニド)の高速液体クロマトフラフィー分析(HPLC)の結果を示す図である(上が標品)。
図3】アレルギー症状が起こるメカニズムの概要を示す図である。
図4】ヌエゼニド添加によるRBL-2H3細胞の細胞生存率を示すグラフである(n=3,平均±SD.,**p<0.01)。
図5】ヌエゼニド添加によるRBL-2H3細胞1細胞あたりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性を示すグラフである(n=3,平均±SD.,*p<0.05,**p<0.01)。
図6】ヒトの体内におけるメラトニン生成機序の概要を示す図である。
図7】ヌエゼニド添加後のSH-SY5Y細胞におけるAANAT遺伝子の発現変動を示すグラフである(n=3,平均±SD.,*p<0.05)。
図8】オリーブ抽出物添加によるRBL-2H3細胞1細胞あたりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性を示すグラフである(n=3,平均±SD.,*p<0.05,**p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、ヌエゼニドを含有することを特徴とする。
本発明の組成物は、優れたアレルギー症状の改善効果及び/又は優れた睡眠改善効果を奏する。したがって、本発明の組成物は、アレルギー症状の改善用組成物及び/又は睡眠改善用組成物として用いることができる。
【0013】
ここで、本発明におけるアレルギー症状の改善とは、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)などのアレルギー症状の発症抑制(予防)、緩和、及び治癒を含む概念である。また、本発明における睡眠改善とは、寝つき(睡眠導入)の改善、浅い眠りの改善、目覚めの改善等を含み、好適には寝つきの改善である。
【0014】
以下、本発明の組成物に含まれる各成分について説明する。
ヌエゼニド(Nuezhenide/Nuzhenide/Specnuezhenide)は、イリドイド配糖体の一種であり、例えば、以下の化学式からなる化合物である。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。
【0015】
【化1】
【0016】
本発明の組成物に含有されるヌエゼニドとしては、植物由来のものや、化学合成して得たものや、市販されている試薬を用いることができ、経口摂取における安全性の観点から、植物由来のものが好ましい。ヌエゼニドを含有する植物としては、例えば、オリーブ等のモクセイ科オリーブ属植物、トウネズミモチ等のモクセイ科イボタノキ属植物などが挙げられ、より高い効果を得ることができる点から、モクセイ科オリーブ属に属する植物が好ましく、オリーブ(Olea europaea)がより好ましい。
【0017】
オリーブの品種としては、特に制限はなく、例えば、ミッション、マンザニロ、ルッカ、ネバディロ・ブランコ、ピクアル、アルベキナ、コルニカブラ、ゴルダル、フラントイオ、レッチーノ、コラティーナ、アスコラーナテレナ、パラゴン、ワシントン、アザパ、バルネア、ヘレナ、ロシオーラ、ワンセブンセブン、オヒブランカ、モロイオロ等を挙げることができる。これらの中でも、より高い効果を得ることができる点から、ミッション、マンザニロ、ルッカが好ましい。また、オリーブは、未熟なグリーンオリーブでもあってもよいし、熟したブラックオリーブであってもよい。
【0018】
本発明においては、植物由来のヌエゼニドとして、ヌエゼニドを含有する植物の加工物を用いることができ、かかる加工物としては、例えば、チップ状物、粉砕物(顆粒、粉末)、搾汁物、抽出物を挙げることができる。搾汁物や抽出物は、液状やスラリー状であってもよいが、乾燥粉末(搾汁末、エキス末)が好ましい。本発明において用いられる植物の加工物は、製剤性を考慮すると、適用が容易であることから、粉砕物、搾汁物又は抽出物が好ましく、より高い効果を得ることができる点から、抽出物が特に好ましい。
【0019】
植物の適用可能な部位としては、ヌエゼニドを含有する部位であれば特に制限されるものではなく、種子、葉、実(果肉、果皮)、茎、花、根などを使用することができる。
【0020】
オリーブの場合、ヌエゼニドをより多く含有する点から、種子、実が好ましく、種子が特に好ましい。また、資源の有効活用の点から、オリーブ油を搾油した後の残渣(搾油残渣)の種子や実を用いることが好ましい。通常、搾油の際には、種子と実は分けられることなくそのまま搾油されることから、製造効率の点からは、種子及び実からなる残渣を用いることが好ましく、化粧品等、抽出対象(植物の部位)を明確にする必要がある場合などには、種子と実を分離して各々活用する必要があり、種子を用いることが好ましい。
【0021】
植物抽出物としては、有機溶媒抽出物、含水有機溶媒抽出物を挙げることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン等を挙げることができる。これらの中でも、安全性や、優れたアレルギー症状の改善効果及び/又は優れた睡眠改善効果が得られることから、エタノール抽出物、含水エタノール抽出物が好ましい。
【0022】
抽出物を得る方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法(例えば、浸漬抽出、還流抽出、超臨界流体抽出など)によって抽出することができる。また、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の抽出物を得ることが可能となる。
【0023】
また、抽出物は、液状のままや、濃縮物として用いてもよいが、乾燥粉末(エキス末)として用いることが好ましい。乾燥方法としては特に制限されるものではなく、常温乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等を用いることができる。
【0024】
また、抽出物は、数十マイクロ程度に超微粉砕化したものを用いることが好ましい。抽出物を超微粉砕化する方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができ、例えば、アトライター、ビーズミル、NGU(ナノグラインディングーユニット)等の超微粉砕機を用いることができる。
【0025】
本発明の組成物は、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品などの所定機関より効能の表示が認められた機能性食品等のいわゆる健康食品や、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等として用いることができる。
【0026】
本発明の組成物は、経口用剤又は外用剤として使用することができる。外用剤としては、皮膚、頭皮等に塗布して用いるものであれば、特に制限はなく、その形態としては、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、ローション剤、乳液剤、パック剤、湿布剤等の皮膚外用剤や、注射剤等を挙げることができる。
【0027】
経口用剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、粒状剤、棒剤、板剤、ブロック剤、丸剤、ペースト剤、クリーム剤、カプレット剤、ゲル剤、チュアブル剤、スティック剤等を挙げることができる。これらの中でも、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤が特に好ましい。
【0028】
本発明の組成物をアレルギー症状改善用組成物として用いる場合、かかるアレルギー症状改善用組成物としては、ヌエゼニドを含有し、アレルギー症状改善の機能が発揮される点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(広告媒体)のいずれかに、アレルギー症状の改善の機能を表示したものが本発明の範囲に含まれる。また、アレルギー症状改善に寄与するβ-ヘキソサミニダーゼ放出抑制等の機能がある旨を表示したものも本発明の範囲に含まれる。
【0029】
具体的には、「鼻目のアレルギー症状を軽減」、「ハウスダストによる不快感を軽減」、「ほこりによる不快感を軽減」、「花粉による不快感を軽減」等を表示した商品や、これらの機能が報告されている旨を表示したものを例示することができる。
【0030】
本発明の組成物を睡眠改善用組成物として用いる場合、かかる睡眠改善用組成物としては、ヌエゼニドを含有し、睡眠改善の機能が発揮される点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(広告媒体)のいずれかに、睡眠改善の機能を表示したものが本発明の範囲に含まれる。また、睡眠改善に寄与するメラトニン産生促進等の機能がある旨を表示したものも本発明の範囲に含まれる。
【0031】
具体的には、「睡眠をサポート」、「快眠をサポート」、「眠りを良くする」、「安眠ヘルプ」、「寝つきが悪い方に」、「睡眠の質の向上」、「起床時の疲労感を軽減」等を表示した商品や、これら機能が報告されている旨を表示したものを例示することができる。
【0032】
本発明の組成物に含有されるヌエゼニドの含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有されればよい。例えば本発明の組成物中に、乾燥質量換算で0.001質量%以上含有させることが好ましく、0.01~30質量%含有させることがより好ましく、0.05~10質量%含有させることがさらに好ましい。
【0033】
本発明の経口組成物の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、ヌエゼニドの摂取量が、成人の1日当たり、乾燥質量換算で、1μg/日以上となるように摂取することが好ましく、10μg/日以上となるように摂取することがより好ましく、100μg/日以上となるように摂取することがさらに好ましい。その上限は、例えば、1000mg/日であり、好ましくは100mg/日である。
【0034】
本発明の経口組成物は、1日の摂取量が前記摂取量となるように、1つの容器に、又は例えば2~3の複数の容器に分けて、1日分として収容することができる。
【0035】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の成分以外の他の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。本発明の成分以外の他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル等の栄養成分や、賦形剤等を挙げることができる。
【実施例0036】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
[オリーブ中に含まれるヌエゼニドの確認]
サンプルとして、オリーブの種子を、粉砕機で1mm程度に粉砕後、NGU超微粉砕機で40μm程度にさらに細かくし、乾燥機によりフリーズドライ化したものを用いた。
【0038】
凍結粉末化したサンプルを70%メタノールに60分間浸漬し、その後、3000rpmで15分間遠心分離して、上清を取り出した。これを3回繰り返してオリーブ濃縮エキスを得た。得られたオリーブ濃縮エキスを中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)分取により分画を行った。得られた画分の1つを単離してヌエゼニドを得た。ヌエゼニドの同定は、核磁気共鳴分析(NMR)及び高速液体クロマトフラフィー分析(HPLC)により行った(図1及び図2)。
【0039】
[実施例2]
[ヌエゼニドの機能性評価]
<サンプルの調製>
ヌエゼニドは、実施例1の方法でオリーブの種子から抽出・単離したものを用いた。
【0040】
<抗アレルギー活性評価試験>
花粉症やアトピー性皮膚炎はアレルギーの一種であり、過剰な免疫反応が原因で引き起こされる。抗原(花粉や食物タンパク質など)が侵入すると、異物として認識し、抗原に特異的に反応する抗体が体内で産生される。そして、再び同じ抗原が体内に侵入した際、抗原と抗体が結合し抗体の架橋が起こり、体内から抗原を排除するための免疫反応としてヒスタミンやβ-ヘキソサミニダーゼなどが放出され、アレルギー症状が起こる。このように、細胞から抗原抗体反応により化学物質が放出される現象を脱顆粒という。脱顆粒の際に放出されるヒスタミンやβ-ヘキソサミニダーゼを測定することにより各サンプルの抗アレルギー活性を評価することができる。
【0041】
本試験では、好塩基球のモデル細胞としてラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を用い、脱顆粒の際に放出されるβ-ヘキソサミニダーゼを指標として、抗アレルギー活性を評価した(図3参照)。
【0042】
(細胞培養)
ラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)は、Eagle’s minimal essential Medium (EMEM)(含1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、96穴プレートに0.5×10cells/wellの濃度で播種し(β-ヘキソサミニダーゼ測定用及び細胞生存率測定用)、COインキュベーター(37℃,5%CO)でオーバーナイト培養した。
【0043】
(MTT法による細胞生存率の測定)
オーバーナイト培養後、サンプル(ヌエゼニドの終濃度10、100、200、400、500又は1000μg/mL)を含むEMEM無血清培地(含1%ペニシリン-ストレプトマイシン)を100μL添加し、COインキュベーターにて1時間培養した。サンプル添加1時間後、サンプル含有培地を除去し、96穴プレートの各ウェルにサンプルを含まない無血清培地(含1%ペニシリン-ストレプトマイシン)を100μL加えた。次いで、各ウェルにMTT染色液(5mg/mLinPBS)を20μL添加し、COインキュベーターにて4時間静置培養した。培地を除去し、各ウェルに塩酸-イソプロパノール溶液を100μLずつ加え、ピペッティングにてホルマザンを完全に溶解させた。マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。
【0044】
(β-ヘキソサミニダーゼ活性の測定)
オーバーナイト培養後、サンプル(ヌエゼニドの終濃度10、100、200、400、500又は1000μg/mL)を含むタイロード液100μLに交換し、COインキュベーターにて1時間培養した。培養後、アレルギー刺激物質であるA23187を含むタイロード液100μLをブランク以外のウェルに添加した。ブランクには、タイロード液100μLを添加した。COインキュベーター内で3時間培養後、新しい96穴プレートに細胞上清50μLを移した。β-ヘキソサミニダーゼを含む細胞上清に、基質(p-nitrophenyl-N-acethyl-β-glucosaminide)溶液50μLを添加し、アルミ箔で遮光し、室温で3時間反応させた。反応後、反応停止液を添加し、酵素反応を停止させ、プレートリーダーにて405nmの吸光度を測定し、β-ヘキソサミニダーゼ活性を測定した。ポジティブコントロールとして、ケルセチン(終濃度100μg/mL)を使用した。コントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。
【0045】
図4に、ヌエゼニド添加後のRBL-2H3細胞の細胞生存率を示した。その結果、ヌエゼニド添加では、コントロール(DMSO)と比較して濃度依存的にRBL-2H3細胞の細胞生存率の有意な上昇が認められた。
【0046】
図5に、ヌエゼニド添加後の1細胞当たりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性を示した。ヌエゼニド添加の場合、コントロール(DMSO)と比較して、濃度依存的にβ-ヘキソサミニダーゼ活性が有意に抑制されることが確認できた。
【0047】
以上の結果から、ヌエゼニドは、抗アレルギー活性を有し、ヌエゼニド含有組成物は、アレルギー症状の改善を図ることができると考えられる。
【0048】
<睡眠評価試験>
現在の社会では、体内時計が乱れやすく規則正しい睡眠をとることが難しいと言われている。不眠を放置することで、日々のパフォーマンスが低下すると考えられる。メラトニンは、「覚醒」と「睡眠」を切り替えて、自然な眠りを誘導する作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。ヒトの体内では、必須アミノ酸のトリプトファンからセロトニンが生成され、メラトニンに変換される(図6参照)。また、メラトニン量は日中少なく、夜に増加するというリズムがあり、一日の睡眠リズムを制御している。
【0049】
本試験では、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用い、メラトニン生合成の律速酵素であるアリルアルキルアミン-N-アセチルトランスフェラーゼ(AANAT)を指標として、ヌエゼニドがメラトニン生合成に与える影響を評価した。
【0050】
(細胞培養)
SH-SY5Y細胞は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、24穴プレートに1.0×10cells/wellの濃度で播種し、COインキュベーター(37℃,5%CO)でオーバーナイト培養した。
【0051】
(サンプル添加)
オーバーナイト培養後、サンプル(ヌエゼニドの終濃度200又は400μg/mL)を含む無血清DMEM培地(含1%ペニシリン-ストレプトマイシン)に交換し、COインキュベーターにて24時間培養した。
【0052】
(リアルタイムPCRによる遺伝子の発現量の比較)
サンプル添加24時間培養後のHaCaT細胞を回収し、PureLink RNA Mini kit(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出した。ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO)にて、抽出したtotal RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型としてAriaMX リアルタイムPCR装置(アジレント・テクノロジー)でリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCR反応には、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用いた。AANAT遺伝子用プライマーとして5’-TCCTGTGGAGATACCTTCACCA-3’及び5’-CACAGTTCAGAAGGCAAGAGGT-3’を、内部標準GAPDH用プライマーとして5’-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3’ 及び5’-ATGGTGGTGAAGACGCCAGT-3’を使用した。リアルタイムPCR反応条件として、95℃、3分の初期変性後、95℃、3秒での変性、60℃、30秒のアニーリング/伸長という2ステップのPCR反応を40サイクル行った。
その結果を図7に示す。
【0053】
図7に示すように、ヌエゼニドを添加したSH-SY5Y細胞におけるAANAT遺伝子の発現は、コントロールと比較して、濃度依存的に発現量が上昇することが確認できた。特に、ヌエゼニド400μg/mL添加時には、AANAT遺伝子の発現が約1.28倍にコントロール(DMSO)と比較して上昇することが確認できた。
【0054】
以上の結果から、ヌエゼニドは、メラトニン生合成の律速酵素であるAANAT遺伝子の発現を促進させることでメラトニン量を増加させ、睡眠の改善を図ることができると考えられる。
【0055】
[実施例3]
[オリーブ抽出物の機能性評価]
<サンプルの調製>
(原料)
原料としてのオリーブ(品種:ミッション)は、オリーブ全体、オリーブの実、オリーブの種子を用いた。
【0056】
(超微粉砕操作)
原料を粉砕機で1mm程度に粉砕後、NGU超粉砕機により40μm程度にさらに細かくし、乾燥機にてフリーズドライ化し、粉砕オリーブを得た。その後、乾燥により凝固した原料を細かくするために、石うすを用いて再粉砕し、パウダー状の再粉砕オリーブを得た。
【0057】
(抽出操作)
粉砕オリーブ及び再粉砕オリーブを、70%エタノールで24時間振盪抽出(室温、200rpm)した。その後、抽出液を濾過し、ロータリーエバポレーターにて濃縮後、デシケータ内で乾固させてエタノール抽出物(エキス末)を得た。
【0058】
<抗アレルギー活性評価試験>
ヌエゼニドに代えて、オリーブ抽出物を終濃度400μg/mLで添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で、β-ヘキソサミニダーゼ活性評価を行った。
【0059】
図8に、オリーブ抽出物添加後のRBL-2H3細胞1細胞当たりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性を示した。オリーブ抽出物添加の場合、コントロール(DMSO)と比較して、β-ヘキソサミニダーゼ活性が有意に抑制されることが確認できた。また、種子のサンプルでβ-ヘキソサミニダーゼ活性の抑制効果は高いことが認められた。また、フリーズドライ後に再粉砕したサンプルでは、さらに強い抑制効果が認められた。
【0060】
[配合実施例1]
以下に示す成分を配合することにより、化粧品としてのクリーム剤を製造した。
オリーブ種子エキス粉末
グリセリン
エタノール
【0061】
[配合実施例2]
以下に示す成分を配合することにより、化粧品としてのジェル剤を製造した。
オリーブ種子エキス粉末
オリーブオイル
エステル油
【0062】
[配合実施例3]
以下に示す成分を配合することにより、カプセル用粉末剤を製造した。
オリーブ(実・種子)残渣粉末
ステアリン酸カルシウム
【0063】
[配合実施例4]
以下に示す成分を配合することにより、錠剤を製造した。
オリーブ(実・種子)残渣粉末
でんぷん
デキストリン
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の組成物は健康食品等として用いることができることから、産業上有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8