(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141448
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】発電所レイティングシステム、発電所レイティング方法及び発電所レイティングプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241003BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/0601 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053106
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】312002347
【氏名又は名称】株式会社エナリス
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝夫
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L030BB53
5L049BB53
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】発電設備のレイティングを行うとともに、そのレイティングにより、最終需要家のレピュテーションリスクおよびパフォーマンスリスクの可視化を行う。
【解決手段】発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備レイティングシステムであって、発電設備について所定の項目に関する評価を入力する評価入力部と、評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析部と、 前記発電設備において発電した電力量を測定し、その測定結果にその発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成部と、 前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、各発電所のレイティング情報として出力する出力部とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備レイティングシステムであって、
発電設備について所定の項目に関する評価を入力する評価入力部と、
評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析部と、
前記発電設備において発電した電力量を測定し、その測定結果にその発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成部と、
前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、各発電所のレイティング情報として出力する出力部と、
を備えることを特徴とする発電設備レイティングシステム。
【請求項2】
前記レイティング情報を可視化して出力する可視化処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発電設備レイティングシステム。
【請求項3】
保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる保証システム連携部をさらに備え、
前記保証システムは、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項1に記載の発電設備レイティングシステム。
【請求項4】
発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備のレイティング方法であって、
評価入力部が、発電設備について所定の項目に関する評価の入力を受け付けるとともに、解析部が、前記評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析ステップと、
実績データ生成部が、前記発電設備において発電した電力量の測定結果に、その発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成ステップと、
前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、出力部が、各発電所のレイティング情報として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする発電設備レイティング方法。
【請求項5】
前記出力ステップでは、前記レイティング情報を可視化して出力することを特徴とする請求項4に記載の発電設備レイティング方法。
【請求項6】
前記出力ステップでは、
保証システム連携部が、保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させ、
前記保証システムは、複数のノードに、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させ、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項4に記載の発電設備レイティング方法。
【請求項7】
発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備レイティングプログラムであって、コンピューターを、
発電設備について所定の項目に関する評価を入力する評価入力部と、
評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析部と、
前記発電設備において発電した電力量を測定し、その測定結果にその発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成部と、
前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、各発電所のレイティング情報として出力する出力部として、
機能させることを特徴とする発電設備レイティングプログラム。
【請求項8】
前記コンピューターを、前記レイティング情報を可視化して出力する可視化処理部としてさらに機能させることを特徴とする請求項7に記載の発電設備レイティングプログラム。
【請求項9】
前記コンピューターを、
保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる保証システム連携部としてさらに機能させ、
前記保証システムは、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項7に記載の発電設備レイティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所レイティングシステム、発電所レイティング方法及び発電所レイティングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力事業においては、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年法律第108号)に基づく固定価格買取制度が施行されて以来、再生可能エネルギーの導入が促進されている。その一方で、特に導入が進んでいる太陽光発電事業において、土砂流出や濁水の発生、景観への影響、反射光による生活環境への影響などの問題が生じる事例が急増している。また、再生可能エネルギー施設の開発により、周辺環境における重要な動植物の生息・生育環境の改変等による自然環境への影響等も懸念されている。
【0003】
このような近年の状況を踏まえ、大規模な太陽光発電事業が、令和2年4月より「環境影響評価法」(平成9年法律第81号)の対象事業に追加されるに至った。さらに、環境影響評価条例の対象ともならないような小規模の事業であっても、環境に配慮し地域との共生を図ることが重要であるとして、令和2年3月に「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」が公表された(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、近年の気候変動、環境配慮、脱炭素化に対し積極的な企業を中心に「オフサイトコーポレートPPA」の導入が広がりつつある。この「オフサイトコーポレートPPA」とは、再生可能エネルギー電源の所有者である発電事業者(ディベロッパー、投資家等含む)と電力の購入者(需要家等) が、事前に合意した価格及び期間における再生可能エネルギー電力の売買契約を締結し、需要地ではないオフサイトに導入された再生可能エネルギー電源で発電された再生可能エネルギー電力を、一般の電力系統を介して当該電力の購入者へ供給する契約方式である。この契約方式により、売電側および買電側のCF中長期固定化が見込まれる一方で、中長期にわたる契約固定を行うにあたり、買電側における事前調査・評価を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」,令和2年3月,環境省,https://www.env.go.jp/content/900515354.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、気候変動に対応する等の背景により発電所を選択(直接契約)するニーズが急増している一方で、現状、小売事業者による発電事業者の与信調査等は行われていたが、発電所自体の評価については標準化されていない。そのため、発電事業者の与信等について、各種ガイドライン等を基づいて環境配慮に関する検討項目を評価して発電設備のレイティングを行うとともに、そのレイティングにより、最終需要家のレピュテーションリスクおよびパフォーマンスリスクを可視化するような仕組みが求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、電力事業における各種ガイドライン等を基に環境配慮における検討項目を評価(スコア化)するとともに、発電実績等から発電設備の稼働確実性を合わせて評価(スコア化)し、発電設備のレイティングを行うとともに、そのレイティングにより、最終需要家のレピュテーションリスクおよびパフォーマンスリスクの可視化を行うことのできる発電所レイティングシステム、電力取引マッチング方法及び電力取引マッチングプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備レイティングシステムであって、
発電設備について所定の項目に関する評価を入力する評価入力部と、
評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析部と、
前記発電設備において発電した電力量を測定し、その測定結果にその発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成部と、
前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、各発電所のレイティング情報として出力する出力部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、発電設備について所定の項目に関する評価を行うための発電設備のレイティング方法であって、
(1) 評価入力部が、発電設備について所定の項目に関する評価の入力を受け付けるとともに、解析部が、前記評価入力部を通じて入力された評価を解析し、評価スコアデータを算出する解析ステップと、
(2) 実績データ生成部が、前記発電設備において発電した電力量の測定結果に、その発電に係る発電設備及び発電方法に関する情報を付加して実績データとして生成する実績データ生成ステップと、
(3) 前記実績データ生成部が生成した前記実績データに、前記解析部が算出した評価スコアデータを付加して、出力部が、各発電所のレイティング情報として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
上記発明において、前記レイティング情報を可視化して出力する可視化処理部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる保証システム連携部をさらに備え、
前記保証システムは、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことが好ましい。
【0012】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0013】
また、本発明のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またコンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。具体的にこの記録媒体としては、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力事業における各種ガイドライン等を基に環境配慮における検討項目を評価(スコア化)するとともに、発電実績等から発電設備の稼働確実性を合わせて評価(スコア化)し、発電設備のレイティングを行う。この発電設備のレイティングにより、最終需要家のレピュテーションリスクおよびパフォーマンスリスクを可視化できる。
【0015】
また、本発明では、発電実績等のデータに発電所自体の評価を組み合わせてブロックチェーンに書き込むことにより情報の安全性等を担保し、発電所の性能に加えレピュテーションリスクの数値化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る電力取引システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】実施形態に係る電力取引システムにおける電力取引サービスの概念図である。
【
図3】実施形態に係るユーザーシステムの機器構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る電力制御端末の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る電力制御端末で実行される機能モジュールを示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る仲介サーバーの内部構成を示すブロック図である。
【
図7】実施形態に係る電力取引システムにおけるレイティング処理及び電力取引処理の手順を示すフロー図である。
【
図8】実施形態に係るレイティング処理における動作を示す説明図である。
【
図9】実施形態に係る電力取引システムのトークン移転時における手順を示すフロー図である。
【
図10】実施形態に係る電力取引システムにおける公開鍵と秘密鍵との関係を例示する説明図である。
【
図11】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
【
図12】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
【
図13】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
【
図14】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る発電設備のレイティングシステムを含む電力取引システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。また、この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(電力取引システムの全体構成)
図1は、本実施形態に係る電力取引システムの全体構成を示す概念図であり、
図2は、本実施形態に係る電力取引システムにおける電力取引サービスの概念図である。
【0019】
本実施形態では、通信ネットワーク3上に構築された電力取引システム1を通じて電力取引サービスを提供する。この電力取引システム1は、電力取引プラットフォーム2、各施設(発電所、PPS、需要家、電力プロシューマ等)に設けられた電力制御端末40等が通信ネットワーク3で相互に接続されて構成されている。
【0020】
具体的には、
図1に示すように、本サービスでは、各発電所6や各需要家が備える発電設備(PV43)で発電した電力を、PPS5を通じて売電する。このPPS5は電力制御端末40を通じて、電力取引プラットフォーム2にアクセスして電力取引を行う。なお、PPS5に蓄電設備を設けて売電の信託サービスを行うようにしてもよく、この場合には信託を受けた電力を一旦蓄電装置に蓄電するか、或いは直接買電用の送電設備を通じて売電するかを切り替えて売電のタイミングを調整して、電力の価値を高めて利益を得て、需要家に利益を還元するようにしてもよい。
【0021】
電力制御端末40は、例えば、CPUを備えた情報処理端末で構成されており、発電所や各需要家、PPS、電力プロシューマ、アグリゲーター等の各施設の設備を統括的に制御する装置である。この電力制御端末40が制御若しくは管理する対象設備としては、発電所や需要家、電力プロシューマ等の施設内に配備されたユーザーシステムに含まれる、電力負荷の他、スマートメーター、蓄電池、PV(Photovoltaics:太陽光発電)など、発電や蓄電、電力消費する装置が挙げられる。
【0022】
なお、これらの電力制御端末が制御対象とする各種装置は、必要に応じて省略することができる。例えば、需要家ではその電力消費がスマートメーター41により測定されるが、需要家によっては発電設備及び蓄電設備を有するものもあれば、発電設備又は蓄電設備のいずれかの設備を有するもの、或いは発電・蓄電設備のいずれも備えずスマートメーター41だけが設けられ電力消費のみを行うものもある。また、電力プロシューマも電力消費をする立場にあるが、太陽光発電や蓄電池を備え、電力を供給する側にも位置することができる。
【0023】
電力取引プラットフォーム2は、売電側や買電側が電力制御端末40を介して電力を取引するのを仲介する仲介サーバー20で提供される。この仲介サーバー20は、電力取引プラットフォーム2として電力取引用ウェブサイトをオンライン上に提供しており、電力取引用ウェブサイトを通じて売電側、買電側、その他の市場や企業に対して、電力取引サービスを提供している。
【0024】
そして、この電力取引プラットフォーム2に電力制御端末40からアクセスすることで、各施設や設備における発電・蓄電・電力消費に応じて電力取引サービスを利用することができる。この電力取引サービスでは、発電する側となる売手による売出処理と、電力を消費する側となる買手による買付処理とがマッチングされることで電力の売買が成立する。詳述すると、電力制御端末は、電力取引プラットフォーム2と連携して、各設備における発電・蓄電・電力消費に基づいて発電データ・蓄電データ及び消費データを生成し、当該電力に関する情報を記載した情報を電力取引プラットフォーム2に登録する。
【0025】
また、電力取引プラットフォームにおいて取引可能な電力は、電力取引プラットフォームにおける売買取引の需給バランスによって定められた価額によって、相互に等価交換可能であり、また電力取引を精算することができ、電力量及びその価格に応じて、実際の通貨の他、仮想通貨やポイント、その他の交換価値を有する価値情報に換金することができる。
【0026】
通信ネットワーク3は、通信プロトコルTCP/IPを用いたIP網であって、種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワーク)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークである。このIP網には、10BASE-Tや100BASE-TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。
【0027】
本実施形態において電力取引は、
図2に示すように、需要家(プロシューマ)で発電された電力を、PPS5に送電して信託を依頼することにより、その電力がPPS5側で売電又は蓄電される。この信託された電力の電力量とその売電時点若しくは蓄電時点における電力の市場価格によって電力取引が実行(約定)される。
【0028】
このPPS5側における電力の取引は、需要家側で発電され送電された余剰電力を、市場の予想価格と余剰電力の調達コストに基づく限界利益とを比較して、処理日(受電時)における市場の予想価格が限界利益を上回るようであればそのまま売電し、下回るようであればその日は蓄電し、翌日にまた限界利益と市場の予想価格との比較に応じて売電か蓄電を判断することもできる。
【0029】
そして、受電したPPS5では、市場価格を予測して委託された電力の取引を、電力取引プラットフォーム2を通じて他の市場関係者、例えば買電側の電力会社や需要家、PPSとの間で取引される。なお、この電力取引では、例えば、仮想通貨である電力取引トークンを用いて行うこともできる。この場合、この電力取引トークンは、電力を使用(消費)できる権利として、買電者へ譲渡移転され、その譲渡を受けたPPS5bは、購入した電力取引トークンの代金を支払い、PPS5側での利益が確定する。
【0030】
この電力取引における取引価格は、電力取引プラットフォーム2における売買取引の需給バランスによっても価額が変動される。また、PPS側で受電若しくは蓄電された際に、電力量、蓄電時における電力の取引価格の他、発電方式、発電場所、発電時期等の由来情報が記録され、さらに、付加情報として移転履歴を含む取引履歴なども関連付けられて保持されている。
【0031】
(各装置の構成)
次いで、各装置の構成について説明する。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0032】
(1)ユーザーシステム
各需要家、各PPS5及び各発電所6は電力設備全般としてのユーザーシステム4をそれぞれ有し、このユーザーシステム4は電力を消費する単位でもあり発電設備を備える場合もある。発電設備としては、例えば太陽光発電や風力発電等が挙げられる。なお、本実施形態では、
図3に示すように、需要家に太陽光発電設備(PV43)が設けられているものとする。これらの需要家のユーザーシステム4には、電力制御端末40と、実績データ生成部としてのスマートメーター41とが含まれる。
【0033】
各ユーザーシステム4に設置される電力制御端末40は、通信機能やCPUを備えた情報処理端末であり、OS或いはファームウェア、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、アプリケーションをインストールして実行することによって電力取引アプリケーション7として機能される。この情報処理端末としては、パーソナルコンピューターの他、例えば、スマートフォンや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピューター、携帯電話機が含まれる。
【0034】
具体的に電力制御端末40は、
図4に示すように、CPU402と、メモリ403と、入力インターフェース404と、ストレージ装置401と、出力インターフェース405と、通信インターフェース406とを備えている。また、本実施形態ではこれらの各デバイスはCPUバス400を介して接続されており相互にデータの受渡しが可能となっている。
【0035】
メモリ403及びストレージ装置401は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。なお、ストレージ装置401には、
図8に示すような、環境影響評価スコア401aが蓄積されており、この環境影響評価スコアを通じてユーザーが回答することにより、電力取引アプリケーション7にユーザー評価が入力されることとなる。
【0036】
図4に示す入力インターフェース404は、ユーザーシステム内に設置された各設備から制御信号を受信するモジュールであり、受信された制御信号はCPU402に伝えられ、OSや各アプリケーションによって処理される。他方、出力インターフェース405は、ユーザーシステム内に設置された各設備へ制御信号を出力するモジュールである。かかるユーザーシステム内に設置される各設備は、その需要家やプロシューマなどの形態によって異なり、例えば、需要家では、電力消費についてはスマートメーター41により測定され、発電・蓄電については、太陽光発電及び蓄電設備の両方を有するものもあれば、太陽光発電又は蓄電池のいずれかの設備を有するもの、発電・蓄電設備のいずれも備えないものもある。また、プロシューマでは、電力消費をスマートメーター41により計測し、太陽光発電(PV)42や蓄電池その他の電力設備に対する制御信号が入出力される。
【0037】
ここで、スマートメーター41は、需要単位であるユーザーシステム内における発電・蓄電・電力消費を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要家での電力消費を計測する他、ユーザーシステム内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して、需要家側の実績データD12を生成し、定期的にPPSや、電力会社、及び仲介サーバー20に送出する。また、この需要家側の実績データD12と併せて、電力取引アプリケーション7を通じて入力された評価データD2も仲介サーバー20に送出される。
【0038】
通信インターフェース406は、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。
【0039】
CPU402は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置であり、各種プログラムを実行することにより、CPU402上に仮想的に各種モジュールを構築する。このCPU402上では、OS(Operating System)が起動・実行されており、このOSによって各電力制御端末40の基本的な機能が管理・制御されている。また、このOS上では種々のアプリケーションが実行可能になっており、CPU402でOSプログラムが実行されることによって、需要家における電力取引に関する種々の機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。
【0040】
本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行することによって、このブラウザソフトを通じて、電力取引プラットフォーム2にアクセスし、システム上の情報を閲覧したり、情報を入力したりする。詳述すると、このブラウザソフトは、Webページを閲覧するためのモジュールであり、通信ネットワーク3を通じて配信サーバーからHTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどをダウンロードし、レイアウトを解析して表示・再生する。このブラウザソフトにより、フォームを使用してユーザーがデータをWebサーバーに送信したり、JavaScript(登録商標)やFlash、及びJava(登録商標)などで記述されたアプリケーションソフトを動作させたりすることも可能であり、このブラウザソフトを通じて、各ユーザーは、仲介サーバー20が提供する電力取引プラットフォーム2を通じて電力取引サービスを利用することができる。
【0041】
すなわち、本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行し、ブラウザソフトを通じてPPS5が提供する電力取引サービスにアクセスすることによって、CPU402上で電力取引アプリケーション402aが実行され、この電力取引アプリケーション7により電力取引インターフェースがCPU402条に仮想的に構築される。この電力取引インターフェースとしての電力取引アプリケーション7は、電力取引サービスの提供を受けるための所定の操作を行うインターフェースモジュールである。具体的に、この電力取引アプリケーション7は、
図5に示すように、実績データ管理部72と、評価入力部73と、評価スコア解析部74と、送信部71と、評価スコア可視化処理部75と、出力部76とを備えている。
【0042】
送信部71は、例えば、通信インターフェース406を通じて電力取引プラットフォーム2との通信を確立し、データの送受信を実行するモジュールである。実績データ管理部72は、各ユーザーシステムに備えられたスマートメーター41から、需要家側の実績データを取得して解析することにより、需要家内で消費された電力量を算定し、この実績データ管理部72による解析結果は、評価スコア解析部74に入力される。
【0043】
評価入力部73は、需要家側から電力取引プラットフォーム2(仲介サーバ20)側へ、ユーザー操作に基づいて、当該需要家のユーザーによる各発電所の環境影響評価の入力を受け付け、評価スコア解析部74へ受け渡すモジュールである。この環境影響評価は、例えば、「環境影響評価法、地方公共団体の定める環境影響評価条例、太陽光発電の環境配慮ガイドライン」に掲げられている各項目についての回答を入力するチェックシート形式となっている。例えば、「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」としては、土地の安定性、濁水、騒音、反射光、工事に関する粉塵等、騒音・振動、景観、動物・植物・生態系、自然とのふれあいの活動の場などに関する評価が挙げられる。この評価データは、送信部71を通じて送信される。
【0044】
評価スコア解析部74は、ユーザーが入力したチェックシートを解析して、評価データを生成するモジュールである。ここで生成された評価データは送信部71を通じて電力取引プラットフォーム2に送信され、電力取引プラットフォーム2を介して仲介サーバー20のレイティング管理部24により取得される。評価スコア解析部74は、具体的には、以下の手順で発電所のレイティング処理を実行する。
【0045】
まず、「発電所の環境影響評価」のチェックシートを解析する。このチェックシートには、環境負荷に関する多数の要素が含まれており、それぞれの要素に対して、環境に与える影響の程度を評価し、スコアが割り当てられる。スコアは、環境に対する負荷が低いほど高くなる。次に、発電実績、需要実績、電力予測などとの相関を演算しながら、総合的な評価を行う。例えば、「土地の安定性」のスコアが低くても、発電量が高い場合は、発電実績や需要実績、電力予測などとの相関を考慮して、総合的に評価される。評価項目ごとにウェイトを設定し、評価項目の重要度に応じて割り当てる。例えば、大気汚染物質排出量のウェイトが高い場合は、その項目の評価が環境影響評価の総合評価に大きな影響を与える。
【0046】
そして、環境影響評価の評価結果を発電所の運営者だけでなく、関係者にも開示する。これにより、発電所の環境負荷に対する取り組みが透明になり、企業の社会的責任を果たすことができる。ここで、発電所の環境影響評価は、多数の要素を総合的に評価し、評価結果はチェックシートによって異なる。また、評価結果は可視化され、環境に対する取り組みが明確化され、企業の社会的責任を間接的に評価するすことができる。具体的に、環境影響評価は、環境に対する負荷を減らし、持続可能な社会を実現するための重要な評価指標である。
【0047】
電力の供給源である発電所の評価手法としては、以下のロジックが考えられる。各種発電所の評価には、発電効率、安定性、維持管理、故障検知など多岐にわたる要素が挙げられる。
【0048】
(a) 発電所の発電効率について
発電所で消費された燃料のエネルギーを電力に変換する際にどれだけの効率を発揮するかの指標を算定する。この指標は、燃料のコストやエネルギー生産における環境への影響に直接影響を与えるため、レイティングにおいて重要視される。
【0049】
(b) 発電所の維持管理について
発電機器は稼働によって劣化し、発電量が低下することがあり、定期的なメンテナンスを行うことで、発電機器の寿命を延ばし、発電量を維持することができる。そのための、環境保全、発電所の保守計画やメンテナンス履歴のチェック、定期的な点検や保守作業の内容や頻度等を定量的に算定する。
【0050】
(c) 故障検知について
発電実績をもとに故障の要因を特定して故障検知を行う、正常に戻るまでの期間(MTTR)を測定することによりその適性度を定量的に算定することで評価可能である。
【0051】
(d) 環境負荷について
発電所が排出する二酸化炭素や窒素酸化物などの排出物質は、大気汚染の原因となるため、このような発電所による環境負荷、例えば発電所が大気や水質に与える影響を評価する。環境負荷が低いほど、環境に配慮した発電所であると言え、CO2排出量が低いほど、環境に優しい発電所と言える。
【0052】
(e) 経済評価について
投資収益率が高いほど、投資家にとって魅力的な発電所であると言え、また、運営コストが低いほど、効率的に運営されていると言える。この収益性の評価手法としては、減価償却や資本的支出と収益的支出、固定資産仮勘定、売電価格や稼働率などに基づくものが挙げられる。
【0053】
評価スコア可視化処理部75は、評価スコア解析部74が算出した評価スコア等を含む評価データを、ユーザーが閲覧できるような表示情報を生成するモジュールである。この表示情報は出力部76に入力される。出力部76は、評価スコア可視化処理部75が生成した可視化情報を表示デバイスなどの出力インターフェースを通じてユーザーが閲覧可能に出力する。
【0054】
評価スコア可視化処理部75が実行する発電所のレイティング処理の可視化手順を以下のように説明する。評価スコア可視化処理部75は、評価スコア解析部74が算出した評価スコア等を含む評価データを用いて、ユーザーが閲覧できるような表示情報を生成する。ここで、生成された表示情報は、色や形などの視覚的な表現を用いて、各項目のスコアを分かりやすく区別できるようにする。例えば、棒グラフやレーダーチャートで各項目のスコアを表現する場合、各項目に対して異なる色や形、線の種類を割り当てることで、項目の区別を容易にする。また、インタラクティブなグラフを用いて、環境影響評価のスコアと発電実績や予測値をプロットし、マウスオーバーやスライダーを用いて詳細な情報や時系列の変化を表示することができる。
【0055】
そして、評価スコア可視化処理部75で生成された表示情報は出力部76に入力され、出力部76は、評価スコア可視化処理部75が生成した可視化情報を表示デバイスなどの出力インターフェースを通じてユーザーが閲覧可能に出力する。また、評価スコア可視化処理部75によって実行される発電所のレイティング処理の可視化手順は、発電効率、安定性、維持管理、故障検知、環境負荷、経済評価など多岐にわたる要素を総合的に評価し、環境に対する取り組みが透明になり、企業の社会的責任を果たすことができる。
【0056】
(2)管理サーバー
図1に示すように、電力取引プラットフォーム2は、電力取引仲介サービスの提供業者が管理運用する仲介サーバー20上に仮想的に構築される取引市場であり、電力の売買取引を希望するユーザーは、通信ネットワーク3を通じて電力取引プラットフォーム2にアクセスし、この電力取引プラットフォーム2を介して、電力に関する取引を実行する。具体的に仲介サーバー20は、
図6に示すように、通信インターフェース23と、認証部22と、電力取引実行部25と、予測情報管理データベース21aと、ユーザーデータベース21bと、実績管理データベース21cと、電力取引管理データベース21dと、レイティング管理部24、実績データ管理部26と、精算部27とを備えている。
【0057】
通信インターフェース23は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、本サービスを提供するために各電力制御端末40及びスマートメーター41に接続されている。
【0058】
認証部22は、電力取引に係るアクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の端末装置からユーザーID及びパスワードを取得し、ユーザーデータベース21bを照合することによって、アクセス者にその権利があるか否かや、そのアクセス者が本人であるか否かなどを確認する。
【0059】
電力取引実行部25は、通信ネットワーク3を通じて電力取引の仲介を行うモジュールであり、本実施形態では、約定データ生成部25a及びマッチング制御部25bを備えている。
【0060】
マッチング制御部25bは、売出データ及び買付データに基づいて成立した取引の約定データを生成する。詳述すると、マッチング制御部25bは、各買電者における取引条件、及び売電側における供給可能条件である売出データを照合して、対応する組合せをマッチングすることで取引を成立させ、約定データ生成部25aは、成立した取引の条件や、供給元や発電方式、供給可能時期、電力価格などの情報を記述した約定データを生成する。なお、本実施形態においてこのマッチング制御部25bのマッチング処理では、レイティング管理部24が管理するレイティングが参照される。
【0061】
レイティング管理部24は、評価解析部24bが算出した評価スコアデータを付加して、各発電所のレイティング情報を生成するモジュールであり、本実施形態では、保証システム連携部24aと、評価解析部24bと、データ収集部24cとを備えている。このレイティング管理部24で生成されたレイティング情報は、出力部である保証システム連携部24a及びマッチング制御部25bに受け渡されるとともに、評価スコア可視化処理部75に送出される。保証システム連携部24aではレイティング管理部24から受け渡されたレイティング情報をブロックチェーンに記録し、マッチング制御部25bでは電力取引実行部25における電力取引にあたり、売電側と買電側とのマッチングを行う際にレイティング情報を参照する。また、評価スコア可視化処理部75では、レイティング管理部24から受信したレイティング情報に基づいて評価スコアデータを可視化する表示処理を実行する。
【0062】
データ収集部24cは、仲介サーバー20において、各発電所(売電側)、各需要家(買電側)、及びその他外部の情報源(気象予報サービス、交通情報サービス、金融市況情報サービス等)から、レイティング処理に必要な情報を収集するモジュールである。このデータ収集部24cが収集した情報は、情報の種別毎に分類されて各種データベース21a~21dに蓄積されるとともに、電力予測部26aに受け渡されて電力予測に供され、レイティング管理部24に受渡されてレイティング情報の生成に利用される。レイティング管理部24は、データ収集部24cが収集した情報に基づいて、発電所(買電側)のユーザーシステムをレイティングする。
【0063】
保証システム連携部24aは、
図11に示すようなネットワーク上の保証システム6に対して、電力取引に関する与信やレイティング情報を含む評価データD3、セキュリティ管理、取引記録の保管など、電力取引に必要な処理を保証システム6に依頼し、協働して処理を進めるモジュールである。電力取引実行部25は、この保証システム連携部24aを通じて保証システム6と連携をとることによって、各種電力取引の履歴も管理する。
【0064】
ブロックチェーンインターフェースサービス(保証システム)6は、電力取引の履歴及びレイティング情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備える。これらのノードは、環境価値情報、環境価値アート及び所有権に関する情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、ブロックチェーンを複数のノードで共有して分散台帳として記憶する。
【0065】
ユーザーデータベース21bは、各発電所や、各需要家のユーザー、アグリゲーター等の業者に関する情報を蓄積する記憶装置である。実績管理データベース21cは、発電所や需要家、アグリゲーター等の電力の授受に関係する実績データを収集し蓄積して管理する記憶装置である。各スマートメーターから受信した各実績データは、この実績管理データベースに蓄積され、電力取引における価値評価に供される。電力取引管理データベース21dは、トークンの取引実績を記録する記憶装置である。
【0066】
上記実績データ管理部26は、各ユーザーシステムから実績データを収集し、解析することによって、電力取引の数量や価格を算定するモジュールであり、この実績データ管理部26による解析結果は、レイティング管理部24に入力され、電力取引時のマッチング処理に供される。
【0067】
また、実績データ管理部26は、電力予測部26aを備えており、この電力予測部26aは、実績データに含まれた、各発電所や需要家が各電力使用期間中に発電又は消費した電力量の測定値、発電方法などの発電データ及び消費データ、若しくは蓄電量及びその蓄電期間に関する蓄電データに基づいて、将来の発電量及び消費電力量を予測する。電力予測部で予測された発電量及び消費電力量は予測情報管理データベース21aに蓄積される。レイティング管理部24では、実績データ管理部26によって収集された実績データや電力予測部26aによる予測結果を利用して、レイティング情報の生成を行うとともに、電力取引実行部25は、電力の取引価格を決定する。
【0068】
精算部27は、各電力の取引成立時の時価に応じて換金するモジュールであり、各種トークンの時価に関する情報をネットワーク上から取得し、精算することによって、電力の取引価格の他、仮想通貨やポイント、その他の交換価値を有する価値情報に換金することができる。また、精算部27は、各ユーザーが各電力使用期間中に発電又は使用した電力量と当該電力量に係る対価量との確定値を含む確定データを生成又は取得し、その確定データに基づいて各ユーザーが支払い又は受け取る対価を精算する機能も備える。
【0069】
(電力取引システムの動作)
以上説明した電力取引システムを動作させることによって、本発明の電力取引マッチング方法を適用した電力取引サービスを提供することができる。
図7は電力取引システムの動作を示すフロー図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0070】
図7に示すように、先ず、仲介サーバー0において気象情報や交通情報、為替や株価等の金融市況情報など発電及び電力消費の予測に利用できる外部情報をインターネットを巡回して監視・収集する。(S201)これと併せて、各発電所や需要家において発電、電力消費、若しくは蓄電を行うとともに、余剰電力については電力網かPPS5に送電される。これらの電力の授受は各設備で計測され(S101,S301)、発電データ・消費電力データが生成され、これらのデータはスマートメーター41で実績データとして集計されるとともに、実績データ管理部72に入力される。この実績データ管理部72の解析結果はデータベースに蓄積されるとともに、その解析結果に基づいて実績データとともに、仲介サーバー20やPPS5側に送信され(S102及びS302)、仲介サーバー20で収集され、解析される(S202)。
【0071】
仲介サーバー20において、上記ステップS201及びS202では、需要家において受電が開始されると、各需要家の制御装置側で受電時情報が記録される。この受電時情報は調達電力情報としてストレージに保存される。また、仲介サーバー20側では受電の開始時において外部情報の収集も行われ、電力の需給と外部情報との相関を分析して、将来発生する電力需給を予測するとともに、調達電力情報に含まれる受電時情報に基づいて所定の利益を加算した限界利益が算出される。具体的には、受電時における市場の電力価格と、及び需要家から電力を調達するのに要した費用と、蓄電時に消失する損失電力に係る費用、さらには蓄電時の残容量を勘案し、そこにPPS5等が取得する必要最低限の手数料を加算して限界利益を算出する。
【0072】
ここでの発電予測及び需要予測は、本実施形態では、仲介サーバー20の電力予測部26aにより実行され、気象情報や交通情報、為替・株価等の金融市況情報等の外部情報と、過去の各発電所における発電量、電力需要の変化をビッグデータとして解析対象とし、ディープラーニング等のAI(人工知能)の機械学習機能を用いて、解析対象中の特徴点を集積し、特徴点の共通性に基づいて各情報間の相関(傾向)を抽出して、現在の気象情報や市況情報等と合致する特徴点の共通性から将来の電力需要の予測をするようにしてもよい。
【0073】
なお、蓄電機能を有するPPSでは、利益の有無に基づいて算出した限界利益と、予測された市場価格とを比較し、受電した時点における市場の予想価格が限界利益を上回るようであればそのまま売電し、下回るようであれば、他の売電のタイミングを待ってその日は蓄電し、翌日に繰り越して、売電を実行するなど、売買取引のタイミングを調整するようにしてもよい。
【0074】
次いで、収集された評価データや実績データ、電力予測情報等に基づいて、発電所のレイティング処理が行われる(S203)。このレイティング処理では、評価解析部24bが算出した評価スコアデータを参照してレイティング管理部24によりレイティング情報として生成される。このレイティング管理部24で生成されたレイティング情報は、出力部である保証システム連携部24a及びマッチング制御部25bに受け渡されるとともに、評価スコア可視化処理部75に送出され、レイティング情報の記録及び可視化処理が実行される(S204)。
【0075】
具体的には、評価スコア解析部74が、ユーザーが入力したチェックシートを解析して、評価データを生成するモジュールである。ここで生成された評価データは送信部71を通じて電力取引プラットフォーム2に送信され、電力取引プラットフォーム2を介して仲介サーバー20のレイティング管理部24により取得される。評価スコア解析部74は、具体的には、以下の手順で発電所のレイティング処理を実行する。
【0076】
まず、「発電所の環境影響評価」のチェックシートを解析する。このチェックシートには、環境負荷に関する多数の要素が含まれており、それぞれの要素に対して、環境に与える影響の程度を評価し、スコアが割り当てられる。スコアは、環境に対する負荷が低いほど高くなる。次に、発電実績、需要実績、電力予測などとの相関を演算しながら、総合的な評価を行う。例えば、「土地の安定性」のスコアが低くても、発電量が高い場合は、発電実績や需要実績、電力予測などとの相関を考慮して、総合的に評価される。評価項目ごとにウェイトを設定し、評価項目の重要度に応じて割り当てる。例えば、大気汚染物質排出量のウェイトが高い場合は、その項目の評価が環境影響評価の総合評価に大きな影響を与える。
【0077】
そしてに、環境影響評価の評価結果を発電所の運営者だけでなく、関係者にも開示する。これにより、発電所の環境負荷に対する取り組みが透明になり、企業の社会的責任を果たすことができる。ここで、発電所の環境影響評価は、多数の要素を総合的に評価し、評価結果はチェックシートによって異なる。また、評価結果は可視化され、環境に対する取り組みが明確化され、企業の社会的責任を間接的に評価するすことができる。具体的に、環境影響評価は、環境に対する負荷を減らし、持続可能な社会を実現するための重要な評価指標である。
【0078】
電力の供給源である発電所の評価手法としては、以下のロジックが考えられる。各種発電所の評価には、発電効率、安定性、維持管理、故障検知など多岐にわたる要素が挙げられる。
【0079】
(a) 発電所の発電効率について
発電所で消費された燃料のエネルギーを電力に変換する際にどれだけの効率を発揮するかの指標を算定する。この指標は、燃料のコストやエネルギー生産における環境への影響に直接影響を与えるため、レイティングにおいて重要視される。
【0080】
(b) 発電所の維持管理について
発電機器は稼働によって劣化し、発電量が低下することがあり、定期的なメンテナンスを行うことで、発電機器の寿命を延ばし、発電量を維持することができる。そのための、環境保全、発電所の保守計画やメンテナンス履歴のチェック、定期的な点検や保守作業の内容や頻度等を定量的に算定する。
【0081】
(c) 故障検知について
発電実績をもとに故障の要因を特定して故障検知を行う、正常に戻るまでの期間(MTTR)を測定することによりその適性度を定量的に算定することで評価可能である。
【0082】
(d) 環境負荷について
発電所が排出する二酸化炭素や窒素酸化物などの排出物質は、大気汚染の原因となるため、このような発電所による環境負荷、例えば発電所が大気や水質に与える影響を評価する。環境負荷が低いほど、環境に配慮した発電所であると言え、CO2排出量が低いほど、環境に優しい発電所と言える。
【0083】
(e) 経済評価について
投資収益率が高いほど、投資家にとって魅力的な発電所であると言え、また、運営コストが低いほど、効率的に運営されていると言える。この収益性の評価手法としては、減価償却や資本的支出と収益的支出、固定資産仮勘定、売電価格や稼働率などに基づくものが挙げられる。
【0084】
そして、評価スコア可視化処理部75によりは、評価スコア解析部74が算出した評価スコア等を含む評価データを、ユーザーが閲覧できるような表示情報を生成する。この表示情報は出力部76に入力される。出力部76は、評価スコア可視化処理部75が生成した可視化情報を表示デバイスなどの出力インターフェースを通じてユーザーが閲覧可能に出力する。評価スコア可視化処理部75が実行する発電所のレイティング処理の可視化はい以下の手順で実行される。
【0085】
このとき、評価スコア可視化処理部75は、評価スコア解析部74が算出した評価スコア等を含む評価データを用いて、ユーザーが閲覧できるような表示情報を生成する。ここで、生成された表示情報は、色や形などの視覚的な表現を用いて、各項目のスコアを分かりやすく区別できるようにする。例えば、棒グラフやレーダーチャートで各項目のスコアを表現する場合、各項目に対して異なる色や形、線の種類を割り当てることで、項目の区別を容易にする。また、インタラクティブなグラフを用いて、環境影響評価のスコアと発電実績や予測値をプロットし、マウスオーバーやスライダーを用いて詳細な情報や時系列の変化を表示するようにしてもよい。そして、評価スコア可視化処理部75で生成された表示情報は出力部76に入力され、出力部76は、評価スコア可視化処理部75が生成した可視化情報を表示デバイスなどの出力インターフェースを通じてユーザーが閲覧可能に出力する。また、評価スコア可視化処理部75によって実行される発電所のレイティング処理の可視化手順は、発電効率、安定性、維持管理、故障検知、環境負荷、経済評価など多岐にわたる要素を総合的に評価し、環境に対する取り組みを報知することができる。
【0086】
このステップS204では、保証システム連携部24aがレイティング管理部24から受け取ったレイティング情報をブロックチェーンに記録し、マッチング制御部25bでは電力取引実行部25における電力取引にあたり、売電側と買電側とのマッチングを行う際にレイティング情報を参照する。また、評価スコア可視化処理部75では、レイティング管理部24から受信したレイティング情報に基づいて評価スコアデータを可視化して、ユーザーが閲覧可能とする(S303)。ユーザーは、この可視化されたレイティング情報を閲覧することにより、受電を希望する発電所を選択することができる。
【0087】
その後、売電側の需要家及び売電側の需要家から売出データ及び買付データが送信され(S103及びS304)、マッチング処理が実行される(S205)。そして、仲介サーバー20では、仲介サーバー20により組成されたバランシンググループに従ってマッチングを行うとともに、このようにマッチングされた売出データ及び買付データに基づいて電力取引を成立させて約定データを生成する(S205)。
【0088】
この約定を受けて、約定データと実績データとに基づいて、各ユーザーが各電力使用期間中に発電又は使用した電力量と該電力量に係る対価量との確定値を含む確定データを生成し、確定データに基づいて、各ユーザーが支払い又は受け取る対価を精算する決済処理を実行する(S104,S206及びS305)。
【0089】
(電力取引時の動作)
ここで、上記ステップS205における電力取引によりける約定処理について詳述する。
図9は、本実施形態にかかる電力取引システムの移転時における処理手順を例示するフロー図であり、
図10は、本実施形態に係る公開鍵と秘密鍵との関係を例示する。
【0090】
本実施形態では、トークン移転処理及びトークン移転に関するアカウント処理を、本実施形態に係る分散台帳システムの仕組みを利用している。ここでは、トークン取引プラットフォームを通じて、売手Uaが新規の買手Ubに対し、電力取引トークンを販売する場合を例に説明する。この電力売買取引には、
図9に示すように、公開アドレス及び秘密鍵の発行ステップS501と、関連するサービス履歴情報の登録処理ステップS502と、権利移転処理の実行ステップS503とが含まれる。
【0091】
先ず、ステップS501において、仲介サーバー2では、公開アドレス管理部64bがアドレス発行部として機能し、この公開アドレス管理部64bがトークン取引プラットフォームに固有の公開アドレスPA3と、このプール用公開アドレスPA3に対応する秘密鍵SK3とのペアを発行している。具体的には、
図10に例示されるように、仲介サーバー2は、乱数発生器等を用いて、トークン取引プラットフォームに固有の公開アドレスに対応付けられた秘密鍵SK3を公開鍵暗号方式で生成する。乱数発生器は、例えば、プログラムとして公開アドレス管理部64bに内蔵させていてもよい。この秘密鍵SK3は、上述のとおり、ペアとなるプール用公開アドレスPA3を電力移転元とする取引(ここでは、トークン取引プラットフォームから買手Ubへの販売)の電子署名に利用される。
【0092】
次に、仲介サーバー2は、例えば、楕円曲線DSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm, ESDSA)等の電子署名のアルゴリズムに基づいて、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を生成する。生成される公開鍵PK3と秘密鍵SK3とは公開鍵暗号方式における鍵ペアとなり、この公開鍵暗号方式の性質上、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を生成することは可能であるものの、公開鍵PK3から秘密鍵SK3を生成することは計算量の観点から不可能に構成される。すなわち、公開鍵PK3から秘密鍵SK3を特定することはできないが、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を特定することはできる。なお、利用する電子署名のアルゴリズムの種類は楕円曲線DSAに限定される訳ではなく、実施の形態に応じて適宜選択されてもよい。
【0093】
続いて、仲介サーバー2は、SHA-256、RIPEMD-160等の一方向ハッシュ関数を公開鍵PK3に適用することで、公開鍵PK3からプール用公開アドレスPA3を生成する。例えば、仲介サーバー2は、SHA-256を公開鍵PK3に2回適用することによって、プール用公開アドレスPA3を生成することができる。すなわち、このプール用公開アドレスPA3は、上述したトランザクションの署名に利用される公開鍵のハッシュ値であり、トークンの移転先及び移転元を識別するために利用される。なお、プール用公開アドレスPA3の生成には一方向ハッシュ関数を利用するため、
図10に示されるように、公開鍵PK3からプール用公開アドレスPA3を生成することは可能であるものの、プール用公開アドレスPA3から公開鍵PK3を生成することは不可能に構成される。
【0094】
次のステップS502では、売電元である売手Uaが電力トークン取引プラットフォームに提供されたサービスの履歴など、各トークンに関連付けられる取引履歴データを、ステップS501で生成されたプール用公開アドレスPA3に紐付けてノードへの記録を行う。具体的には、
図11に例示されるように、仲介サーバー2で取得された実績データなどがプール用公開アドレスPA3に紐付けられて公開される。この実績データは、プール用公開アドレスPA3に関する公開鍵PK3を入手したものであれば、自由に閲覧ができるようになっている。この結果、その電力が由来する発電方法や発電箇所等の履歴や取引履歴に不正があったり、改ざんされたり等の不正行為に対する検証が誰でも行えるようになる。
【0095】
その後、ステップS503では、仲介サーバー2は、所定の電力移転条件に従って、ステップS501で生成したプール用公開アドレスPA3に対する権利移転の取引を行う。そして、当該移転が完了すると、仲介サーバー2は、本動作例に係る処理を終了する。ここで、本実施形態に係る各種トークンのやり取りには、電力制御端末40等上で実行されるアプリケーションが用いられる。そのため、
図9では、仲介サーバー2の公開アドレス管理部64bにも、トークン取引の仕組みを実行するアプリケーションがインストールされており、このアプリケーションによって、プラットフォームが管理するプール用公開アドレスが制御されている。
【0096】
電力トークンが、売手Uaに属している間は、トークンは、売手Uaの電力制御端末40において、売手Ua固有の公開アドレスPAaはペアとなる秘密鍵SKaと対応付けられており、トークン取引プラットフォームにおいて、移転手続が取られる際に、売手Uaは、電力制御端末40を用いて、公開アドレスPAa(移転元)から、ステップS501で電力取引業者が生成したプール用公開アドレスPA3(移転先)にトークンを一時的に移転させてプールすることができる。
【0097】
これに対して、新たに電力の購入を希望する買手Ubは、
図9に例示されるように、自身の電力制御端末40を用いて、電力取引トークンが紐付けられている公開鍵PK3を入手し、当該買手Ubは、トークン取引プラットフォームのプール用公開アドレスPA3に紐付けられた電力に関する発電データや取引経過情報や、関連する電力別履歴を閲覧することができる。
【0098】
具体的には、買手Ubの電力制御端末40にもアプリケーションがインストールされており、このアプリケーションによって、買手Ubの保有する公開アドレスPAbが管理されている。公開アドレスPAbには自己の秘密鍵SKbが対応付けられており、これによって、自己の公開アドレスPAbからトークンを、さらに他人に移転することができる。つまり、各秘密鍵SKbによって、買手Ubは、公開アドレスPAbに格納されたトークンやその取引履歴を自在に利用することができる。ここでは、買手Ubが、電力制御端末40においてアプリケーションを利用して、電力取引固有のプール用公開アドレスPA3から公開アドレスPAbに移転されたトークンを受け取る。
【0099】
(保証システムの動作)
ここで、上述した保証システムで採用している分散台帳システムの仕組みについて詳述する。本実施形態において保証システム6は、ブロックチェーンインターフェースサービスを提供しており、このサービスでは、各ユーザーシステム4或いは仲介サーバー2が生成したデータの少なくとも一部又は全部を記憶する複数のノードを備え、これらのノードは、記憶したデータを所定のタイミングで集約してブロック化し、該ブロックを用いてブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶する。
【0100】
具体的には、
図11に示すように、本実施形態に係る電力取引システム1は、各種トークン発行・移転・消却にあたり、保証システム6を通じて、公開鍵暗号方式に基づく公開鍵PKaと秘密鍵SKaとの鍵ペアを発行するとともに、発行したトークンに対応する公開鍵PKaから公開アドレスPAaを生成する。この公開アドレスPAaは、電力取引契約における譲受人(買手Ub)及び譲渡人(売手Ua)を示すアドレスとして活用される一方、秘密鍵SKaは、公開アドレスPAaを移転元とする取引の電子署名に利用される。
【0101】
本実施形態に係る電力取引はP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク30上の2つのノード間で行われ(ここでは、売手Ua及び買手Ub間)、その取引情報はP2Pネットワーク30内の各ノード90a~90fにブロードキャストされて共有される。これにより、P2Pネットワーク30上において、分散台帳システムによる取引履歴データベース(いわゆるブロックチェーン)が形成され、各種トークン及び電力取引の取引履歴が保存される。
【0102】
本実施形態では、この分散台帳システムによる取引履歴データベースは、仲介サーバー2を通じて、各種トークンの発行や所有者の書き換えを行う際に、電力取引契約の実行、承認及び管理を実施する。電力取引の仲介人(各電力制御端末40)は、売手Uaと買手Ubの間で取引の仲介をするために、トークン取引プラットフォーム(仲介サーバー2)に固有のプール用公開アドレスPA3を生成して、取引対象となっているトークンが、トークン取引プラットフォームのトークンプールに一時的に預けられているとして、トークンの移転の中継を行う。
【0103】
そして、取引の当事者(売手Ua及び買手Ub)は、電力取引システム100を利用して、現在の売手Uaから、トークン取引プラットフォーム固有のプール用公開アドレスPA3へトークンを移転させることで一旦受領し、さらに公開アドレスPA3を介して、新たな買手Ubに対して移転させることで、売手Uaと買手Ubとの間における電力トークン取引プラットフォームの売買契約を成立させる。
【0104】
これにより、譲受人である買手Ubは、トークンを自分の公開アドレスPAbで受領することができ、この公開アドレスPA3に紐付けられたサービス履歴の閲覧や、サービスの利用が可能になる。なお、この公開アドレスの発行は、仲介サーバー2が行ってもよく、各取引ユーザー端末上のソフトウェアや、独立したサービス管理機関や金融機関のサーバーで行うこともできる。ここで、
図11~
図14を用いて、この電子暗号通貨の取引の詳細な仕組みについて具体的に説明する。
図11は、トークンの発行・移転・消却に関するトランザクション(取引)の定義を例示し、
図12~
図14は、トークン取引履歴(ブロックチェーン)の一部を例示する。
【0105】
各トークンの発行・移転・消却に関する取引履歴が、
図12に例示される一連の電子署名の連鎖として定義される。この各トークンの所有者は、次の所有者にその取引履歴を移転する場合に、直前の取引のハッシュ値と、次の所有者に係る公開鍵のハッシュ値とを自身の秘密鍵で電子署名したものをトークンの取引履歴に追加する。なお、これらのハッシュ値の計算には、例えば、SHA-256、RIPEMD-160等の一方向ハッシュ関数が用いられる。
【0106】
図12では、電力取引の具体例として、各種トークンが、所有者Zから所有者Aに移転され、所有者Aから所有者Bに移転され、さらに所有者Bから所有者Cに移転される場面が例示されている。この場合、所有者Aから所有者Bにトークンを移転するときには、所有者Aは、所有者Zから所有者Aへの移転取引のハッシュ値と次の所有者である所有者Bの公開鍵のハッシュ値とを所有者Aの秘密鍵で電子署名したものをトークンに追加する。
【0107】
所有者Bを含むこの取引以降のトークンの所有者は、所有者Aの公開鍵でこの電子署名を復号した値を所有者Zから所有者Aへの移転取引のハッシュ値及び所有者Bの公開鍵のハッシュ値と照合することで、この取引が改ざんされているか否かを判定することができる。同様に、所有者Bから所有者Cにトークンを移転するときには、所有者Bは、所有者Aから所有者Bへの移転取引のハッシュ値と次の所有者である所有者Cの公開鍵のハッシュ値とを所有者Bの秘密鍵で電子署名したものをトークンに追加する。これにより、所有者Bから所有者Cへの移転取引が改ざんされているか否かを判定することが可能になる。
【0108】
各種トークンは、このような一連の電子署名の連鎖として定義することができる。ここで、公開鍵のハッシュ値は公開アドレスである。すなわち、この公開アドレスに保管されるトークン等を移転できるのは、この公開アドレスを移転元とする電力取引の電子署名を行える者、すなわち、この公開アドレスに対応する秘密鍵を有する者に限られる。そのため、秘密鍵は、一般的には、所有者以外に漏えいしないように秘匿される。なお、トークンやそれに関する取引履歴等のデータは、現在の所有者に紐付けられた公開アドレスに保管される。また、この電子署名だけでは、このトークンの過去における所有者のうちの誰かが当該トークンを多重使用(多重譲渡)していることを検証することはできないことから、本実施形態に係るトークン取引の仕組みでは、
図13及び
図14で例示されるブロックチェーンという仕組みを用いて、この多重使用を防止している。
【0109】
図13及び
図14に例示されるように、トークン等に記録される各ブロックは、複数のトランザクションとNonceと直前のブロックのハッシュ値とを格納している。Nonceは、暗号通信で用いられる使い捨てのランダムな値であり、ノード(マイナー)60a~60fのうち、この値を最初に発見したノード(マイナー)が、承認者として、Nonceを発見したブロックをブロックチェーンの末尾に追加することでブロックチェーンの更新を行う。これにより、ブロックチェーンには一貫した取引履歴が記録されることになり、このブロックチェーンをP2Pネットワーク30に参加するノード90a~90f全体で共有することで、一貫した取引履歴をP2Pネットワーク30全体で共有することができる。すなわち、このブロックチェーンが、上述した保証システム6におけるトークン取引履歴データベース61a及び鍵情報データベース61bの一部又は全部を担うこととなる。本実施形態において、公開鍵暗号方式に基づく電力取引では、このような仕組みによって各種トークンの取引が行われる。
【0110】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、電力事業における各種ガイドライン等を基に環境配慮における検討項目を評価(スコア化)するとともに、発電実績等から発電設備の稼働確実性を合わせて評価(スコア化)し、発電設備のレイティングを行う。この発電設備のレイティングにより、最終需要家のレピュテーションリスクおよびパフォーマンスリスクを可視化できる。
【0111】
また、本発明では、発電実績等のデータに発電所自体の評価を組み合わせてブロックチェーンに書き込むことにより情報の安全性等を担保し、発電所の性能に加えレピュテーションリスクの数値化が可能となる。
【符号の説明】
【0112】
D12…実績データ
D2…評価データ
D3…評価データ
PAa…公開アドレス
PAb…公開アドレス
PKa…公開鍵
SKa…秘密鍵
SKb…秘密鍵
Ua…売手(発電所)
Ub…買手(需要家)
1…電力取引システム
2…電力取引プラットフォーム
3…通信ネットワーク
4…ユーザーシステム
5…PPS
5b…PPS
6…保証システム
7…電力取引アプリケーション
20…仲介サーバー
21a~21d…種データベース
22…認証部
23…通信インターフェース
24…レイティング管理部
24a…保証システム連携部
24b…評価解析部
24c…データ収集部
25…電力取引実行部
25a…約定データ生成部
25b…マッチング制御部
26…実績データ管理部
26a…電力予測部
27…精算部
30…ネットワーク
40…電力制御端末
41…スマートメーター
43…PV
61a…トークン取引履歴データベース
61b…鍵情報データベース
64b…公開アドレス管理部
71…送信部
72…実績データ管理部
73…評価入力部
74…評価スコア解析部
75…評価スコア可視化処理部
76…出力部
90a~90f…ノード
100…電力取引システム
400…CPUバス
401…ストレージ装置
401a…環境影響評価スコア
402…CPU
402a…電力取引アプリケーション
403…メモリ
404…入力インターフェース
405…出力インターフェース
406…通信インターフェース