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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141449
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】人材評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0639 20230101AFI20241003BHJP
   G06F 40/205 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q10/0639
G06F40/205
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053108
(22)【出願日】2023-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】523112242
【氏名又は名称】株式会社スタンス
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】古田 聡
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】組織の成果に直接的に結び付く評価を定量的に行い得る人材評価システムを提案する。
【解決手段】特定質問に対して研修の参加者により入力された回答文章を文章ベクトル化し、特定の参加者の文章ベクトルと各参加者の文章ベクトルとのコサイン類似度を夫々算出して、各参加者を評価する評価スコアを得るようにしたものである。かかる構成によれば、組織の成果に寄与する特定の参加者を基準として、他の参加者を定量的に評価できるため、該成果に直接的に結び付く評価を行うことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の研修に参加した複数の参加者を評価する人材評価システムであって、
前記研修に関して予め設定された特定質問に対して、前記参加者により夫々入力される回答文章を、各参加者に対応付けて記憶する回答記憶手段と、
前記研修に参加した参加者の中から予め選択された特定の参加者の前記回答文章に対して、各参加者の前記回答文章が関連する割合に基づいて、各参加者を評価する評価スコアを得る評価スコア獲得手段と
を備え、
前記評価スコア獲得手段は、
前記研修に参加した各参加者の前記回答文章を、自然言語処理により分析し、該分析に基づいて文章ベクトル化して、各回答文章の文章ベクトルを得るベクトル化処理手段と、
前記ベクトル化処理手段により得た各参加者の文章ベクトルと前記特定の参加者の文章ベクトルとのコサイン類似度を夫々算出し、各参加者の該コサイン類似度に基づいて前記評価スコアを得る類似度算出手段と
を備えたものであることを特徴とする人材評価システム。
【請求項2】
前記特定質問として、少なくとも二つの特定質問が設定されており、
前記ベクトル化処理手段は、参加者毎に、各特定質問の回答文章から夫々の文章ベクトルを得るものであり、
前記類似度算出手段は、
参加者毎に、各特定質問の回答文書から夫々得た前記文書ベクトルを合成して、合成文書ベクトルを得る処理手段と、
各参加者の前記合成文書ベクトルと前記特定の参加者の前記合成文書ベクトルとのコサイン類似度を算出して、該コサイン類似度により各参加者の前記評価スコアを得る処理手段と
を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の人材評価システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研修に参加した参加者を評価する人材評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業などの組織では、人材の開発と教育とが重要であり、これらを補助する人材評価の必要性が増している。こうした人材評価は、従来は人事の担当者等によって行われていたため、担当者の感覚的な評価になり易く、定量的な評価を行うことが難しかった。
【0003】
一方、近年では、コンピュータや解析ソフトなどの急速な発展によって、これらを用いて人材の評価を行う評価システムが提案されている。例えば特許文献1の構成では、社内教育に参加した各社員が作成したレポートを、コンピュータが自然言語処理により解析し、各レポートに含まれる複数項目の文章毎に相対的な関連度を判定する。そして、この関連度に基づいて各社員のパフォーマンスを推定する。ここで、レポートには、複数項目に対して入力された各文章が含まれており、前記自然言語処理によって該文章毎に解析する。この各文章を解析した結果に基づいて、該各文章の相対的な関連度を判定し、該関連度に基づいて複数のパフォーマンスを推定する。かかる構成によれば、社員毎に前記複数のパフォーマンスを推定できることから、人材の開発と教育に役立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-64238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1の従来構成にあっては、社員の作成したレポート(複数項目に対する各文章の前記関連度)に基づいて複数のパフォーマンスを推定することから、それぞれの社員に適したきめ細かなサポートを行い易いという利点があるものの、これら複数のパフォーマンスから、組織で求められる成果に直結できる評価を行うことが難しい。これは、社員毎に、複数項目に対して入力された各文章の関連度に基づいて前記パフォーマンスを推定していることから、該パフォーマンスが社員の個人的な能力(例えば計画力、継続力、積極性など)を示すものなるために、前記成果と直接的に結び付いていると明確に言えないことに因る。このように従来の評価では、組織の成長や発展に直接的に寄与できる人材評価を行うことが難しかった。
【0006】
本発明は、前記成果に直接的に結び付く評価を定量的に行い得る人材評価システムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の研修に参加した複数の参加者を評価する人材評価システムであって、 前記研修に関して予め設定された特定質問に対して、前記参加者により夫々入力される回答文章を、各参加者に対応付けて記憶する回答記憶手段と、前記研修に参加した参加者の中から予め選択された特定の参加者の前記回答文章に対して、各参加者の前記回答文章が関連する割合に基づいて、各参加者を評価する評価スコアを得る評価スコア獲得手段とを備え、前記評価スコア獲得手段は、前記研修に参加した各参加者の前記回答文章を、自然言語処理により分析し、該分析に基づいて文章ベクトル化して、各回答文章の文章ベクトルを得るベクトル化処理手段と、前記ベクトル化処理手段により得た各参加者の文章ベクトルと前記特定の参加者の文章ベクトルとのコサイン類似度を夫々算出し、各参加者の該コサイン類似度に基づいて前記評価スコアを得る類似度算出手段とを備えたものであることを特徴とする人材評価システムである。
【0008】
かかる構成にあっては、参加者の文章ベクトルと特定の参加者の文章ベクトルとのコサイン類似度を算出して評価スコアを得るようにしたものであり、特定の参加者を基準として、各参加者を評価する。これにより、特定質問を適宜設定することで、特定の参加者と各参加者との行動特性(行動パターンや思考の傾向など)の差を定量的に知得できる。そして、特定の参加者を組織の成果に寄与する者(営業成績の優秀者や、優れた商品の開発者など)とすれば、評価スコアによって、該成果に直接的に結び付く評価を定量的に行うことができる。特に、本発明は、同じ研修に参加した特定の参加者を基準としていることから、正確な評価を行うことができる。ここで、研修は、少なくとも研修内容が同一であればよい。
【0009】
さらに、本発明の構成によれば、複数回の研修における夫々の評価スコアを得て、時系列的な推移をみることによって、各参加者の行動変容(行動特性の変化)を評価するともできる。また、複数の研修における評価スコアを比較することによって、各研修の有用性や講師を評価することもできる。
【0010】
前述した本発明の人材評価システムにあって、前記特定質問として、少なくとも二つの特定質問が設定されており、前記ベクトル化処理手段は、参加者毎に、各特定質問の回答文章をそれぞれ文章ベクトル化して、これら文章ベクトルを合成することにより、各参加者の合成文章ベクトルを得る処理手段を備えており、前記類似度算出手段は、各参加者の前記合成文書ベクトルと前記特定の参加者の前記合成文書ベクトルとのコサイン類似度を算出して、該コサイン類似度により各参加者の前記評価スコアを得る処理手段を備えている構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあっては、複数の回答文章を夫々変換した文章ベクトルを合成した合成文章ベクトルによって、各参加者と特定の参加者とのコサイン類似度を算出することから、複数の特定質問から一の評価スコアが得られる。そして、この一の評価スコアにより、評価を行うことができるため、一層明確かつ容易に評価できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の人材評価システムは、前述したように、特定の参加者を基準として各参加者を評価することから、各参加者と特定の参加者との行動特性の差を定量的に得ることができる。これにより、組織の成果に寄与する特定の参加者と同じ行動特性を有する参加者を判定できるため、該成果に直接的に結び付く評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例の人材評価システム1の構成を示す概略図である。
図2】人材評価システム1の評価管理装置2の機能を示すブロック図である。
図3】評価管理装置2のデータベース12に記憶された回答文書データを示す説明図である。
図4】参加者の評価スコアを得る評価スコア処理を示すフロー図である。
図5】各参加者の評価スコアを示す図表である。
図6】参加者の評価スコアをグラフ化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を具体化した実施例を、添付図面を用いて説明する。
図1に、本実施例の人材評価システム1を示す。本実施例の人材評価システム1は、研修に参加した企業の社員を評価するためのものであり、研修に参加した参加者が使用する参加者端末7と通信ネットワーク(インターネット等)8を介して通信可能な評価管理装置2とを備える。参加者端末7は、通信機能を有するパソコン、タブレット、またはスマートフォン等であり、後述する回答文章を入力できるアプリケーションソフトがインストールされている。
【0015】
評価管理装置2は、管理サーバ11、データベース12、および送受信手段13を備える。管理サーバ11は、中央制御装置(CPU)や記憶装置(ROM、RAM)等を有する1台又は複数のコンピュータにより構成される。データベース12は、管理サーバ11で実行されるプログラム、該プログラムで利用されるデータ、および該プログラムで生成されたデータなどが記憶保持される記憶装置により構成される。送受信手段13は、通信ネットワーク8を介して参加者端末7とデータや信号を送受信できる機能を有するものである。
【0016】
データベース12は、図2に示すように、通信ネットワーク8を介して入力された回答文章のデータを記憶保持する回答記憶部15と、該回答文書をベクトル化した文章ベクトルを記憶保持するベクトルデータ記憶部16と、後述する評価スコアを記憶保持する評価スコア記憶部17とを備える。ここで、各記憶部15~17には、夫々の回答文書のデータが各社員に対応付けられて記憶される。本実施例にあっては、後述するように、二つの特定質問に対する夫々の回答文章が各社員から入力されるようにしていることから、前記回答記憶部15には、図3に示すように、社員毎に二個の回答文章のデータが記憶される。
【0017】
管理サーバ11は、図2の機能ブロック図に示すように、ベクトル化処理手段22と類似度算出手段23とを有する評価スコア獲得手段21を備えると共に、該評価スコア獲得手段により得た評価スコアを表示する評価表示手段24を備える。この評価スコア獲得手段21は、前記した中央制御装置(CPU)がデータベース12から読み込んだプログラムとデータとにより実行される処理機能であり、本実施例にあっては、前記回答記憶部15から読み込んだ回答文書のデータから評価スコアを算出する。
【0018】
ベクトル化処理手段22は、回答文章を自然言語処理により解析し、この解析結果に基づいて文書ベクトル化する。そして、この文書ベクトルを、データベース12のベクトルデータ記憶部16に記憶する。詳述すると、データベース12の回答記憶部15から回答文書のデータを読み込み、自然言語処理により解析する。自然言語処理は、形態素解析や構文解析などの一般的な解析処理を適用できる。そして、この自然言語処理による解析結果を用いて、回答文章を文章ベクトル化する処理を行う。本実施例では、こうした自然言語処理と文章ベクトル化の処理に、Sentence-Bertを用いる。これにより、回答文章を文章ベクトルに変換する。このようにベクトル化処理手段22は、研修に参加した各社員の回答文章を文章ベクトルに夫々変換する。尚、前述しように、本実施例では各社員に夫々二個の回答文章データが記憶されていることから、ベクトル化処理手段22は、社員毎に、二個の回答文章を夫々文章ベクトル化して二個の文章ベクトルを得る。
【0019】
類似度算出手段23は、社員毎に、二個の文章ベクトルを合成して一の合成文章ベクトルを得る。そして、予め定められた特定の社員の前記合成文章ベクトルを基準として、当該特定の社員の合成文章ベクトルと他の各社員の合成文章ベクトルとのコサイン類似度を夫々算出し、この算出値を0~1の範囲内(0が特定の社員と同じで、1が最も異なる)で規格化した評価スコア(以下、総合評価スコアという)を得る。そして、各社員の総合評価スコアをデータベース12の評価スコア記憶部17に記憶する。ここで、本実施例では、前記特定の社員として、研修に参加した社員のなかから、企業における優秀な社員(以下、ハイパフォーマ)が少なくとも一人定められる。このハイパフォーマには、例えば、営業成績の優秀な社員や優れた商品を企画開発した社員等が選ばれる。
【0020】
さらに、本実施例の類似度算出手段23では、二個の文章ベクトルの一方について、社員毎にハイパフォーマとのコサイン類似度を夫々算出すると共に、他方についても同様に、社員毎にハイパフォーマとのコサイン類似度を夫々算出する。そして、社員毎の、一方のコサイン類似度と他方のコサイン類似度とを、それぞれ最大値を1とする規格化をして(以下、標準化という)、二個の評価スコア(後述する第一評価スコアと第二評価スコア)を得る。これらの評価スコアについても、前述と総合評価スコアと同様にデータベース12の評価スコア記憶17に記憶する。
【0021】
尚、こうした類似度算出手段23におけるコサイン類似度の算出は、従来から知られている手法を用いることができるから、詳細を省略する。
【0022】
評価表示手段24は、データベース12の評価スコア記憶部17から読み込んだデータに基づく評価結果を、図示しない表示手段(モニタや管理者用の端末など)で表示する処理機能である。具体的には、評価スコアを表(図5)やグラフ(図6)などで表示する。
【0023】
次に、本実施例の人材評価システム1を用いた人材評価の流れを、以下の具体例で説明する。
例えば、企業の社員向けに所定数回実施される研修で、該研修に参加した社員の人材評価を行う場合に、一回の実施毎に予め定められた二つの特定質問をして、夫々の回答文章を各参加者端末7から入力させる。ここで、二つの特定質問は、一方が他方に関連する関係にあるものが好適であり、さらに、ノン・ファクトイド型式の質問であることが好ましい。そして、全ての実施回で同じ質問内容であっても良いし、実施回毎に異なる質問内容であっても良い。本実施例では、第一の特定質問を「今回で気付いたことは何ですか?」、第二の特定質問を「なぜ、それに気付いたのですか?」とし、全ての実施回毎にこれらの特定質問をして回答文章を入力させる。ここで、第一の特定質問に対する回答文章を第一回答文章とし、第二の特定質問に対する回答文章を第二回答文章とする。
【0024】
また、研修に参加する社員のなかから、前記ハイパフォーマを少なくとも一人選出する。例えば、二人の社員a,bが選出された場合には、該社員a,bをハイパフォーマとして設定し、データベース12に記憶する。
【0025】
研修の実施回毎に、終了後に前記第一,第二回答文章を、該研修に参加した各社員に入力させる。データベース12の回答記憶部15には、図3に示すように、各社員から入力された二つの回答文章が、各社員に対応付けられて記憶保持される。図3では、一の実施回における第一,第二回答文章のデータを記載するのみであるが、研修の終了後には、各実施回で同様の回答文章が記憶される。
【0026】
実施回の終了毎または研修の終了後に各社員から回答文章が入力されると、管理サーバ11で各社員の前記評価スコアを算出する評価スコア処理(図4)を実行する。
【0027】
評価スコア処理では、前記したベクトル化処理手段22により、データベース12の回答記憶部15から、社員毎に第一,第二回答文書のデータを読み込み(S10)、これら第一,第二回答文章データを文章ベクトルに夫々変換する(S20)。そして、第一回答文章を変換した第一文章ベクトルと第二回答文章を変換した第二文章ベクトルとを、各社員に対応付けて、データベース12のベクトルデータ記憶部16に記憶する。これにより、ベクトルデータ記憶部16には、社員毎に第一,第二文章ベクトルが記憶される。ここで、文章ベクトル化の処理は、前記ハイパフォーマを含む全ての社員から入力された回答文章について実行される。
【0028】
その後、前記した類似度算出手段23により、各ハイパフォーマa,bの第一,第二文章ベクトルをベクトルデータ記憶部16から読み込んで、第一文章ベクトルと第二文章ベクトルとを合成した合成文章ベクトルを生成する(S40)。同様に、他の社員毎に、第一,第二文章ベクトルを読み込んで合成文章ベクトルを生成し(S40)、社員毎に、該社員の合成文章ベクトルと前記ハイパフォーマa,bの合成文章ベクトルとのコサイン類似度を算出して、前記した総合評価スコアを得る(S50)。これにより、各社員の、ハイパフォーマa,bを基準とする総合評価スコアが得られる。各社員の総合評価スコアは、データベース12の評価スコア記憶部17に、各社員に対応付けて記憶される。
【0029】
このようにして、研修の実施回毎に、各社員の評価スコアが一個ずつ得られる。この評価スコアは、前記した評価表示手段24により、例えば図5に示す図表で表示される。ここで、評価スコア(数値)は、「0」に近い方がハイパフォーマa,bと同じ行動特性を持っていることを示している。そして、評価スコアの総合は、各実施回の平均値である。こうした評価スコアを見ることにより、各社員について定量的な人材評価を行うことができる。また、実施回毎の評価スコアを見れば、各社員の成長(行動変容)も確認できる。具体的に言えば、社員oは、評価スコアが徐々に低減していることから、研修によって大きな成長を確認できる。尚、本実施例では、研修の第一回はその内容から評価スコアを求めていない(特定質問を実施していない)。
【0030】
さらに、前記の類似度算出手段23では、社員毎に、該社員の第一文章ベクトルとハイパフォーマa,bの第一文章ベクトルとのコサイン類似度を算出すると共に、該社員の、第二文章ベクトルとハイパフォーマa,bの第二文章ベクトルとのコサイン類似度を算出する。そして、第一文章ベクトルのコサイン類似度と第二文章ベクトルとのコサイン類似度とを標準化することにより、第一文章ベクトルのコサイン類似度を標準化した第一評価スコアと第二文章ベクトルのコサイン類似度を標準化した第二評価スコアとを得る(S50)。これにより、各社員の第一,第二評価スコアが得られ、これが前記評価スコア記憶部17に、各社員に対応付けて記憶される。
【0031】
こうした第一,第二評価スコアは、前記した評価表示手段24により、例えば図6に示すグラフで表示できる。ここで、グラフ上の黒点が、ハイパフォーマa,bのデータである。このグラフは、前述したように標準化された第一,第二評価スコアをグラフ化したものであり、第一,第二評価スコアに正の相関が見られる。これにより、ハイパフォーマa,bと他の社員との行動特性の差を視覚的に知得できると共に、縦軸と横軸とで夫々適当な閾値を設定することにより、成長が見込まれる社員を容易に特定することができる。
【0032】
本実施例では、各社員の評価スコアを表示した図表(図5)と第一,第二文章ベクトルを表示したグラフ(図6)とを例示したが、この他にも、評価スコアを複数段階(例えば5段階)で評価したり、実施回毎の評価スコアから成長率を求めて表示したりすることもできる。さらにまた、社員向けの研修が内容や時期を変えて実施される場合には、複数の研修における評価スコアの推移を確認することによって研修内容や講師を評価することも可能である。
【0033】
本実施例の人材評価システム1にあっては、前述したように、研修に参加した社員のなかから選出したハイパフォーマを基準として、各社員の評価スコアを算出するようにしたから、該評価スコアによって各社員と該ハイパフォーマとの行動特性の差を定量的に表すことができる。これにより、ハイパフォーマに近い行動特性を有する社員を判定できる。ここで、ハイパフォーマは、営業成績の優秀な社員や優れた商品を企画開発した社員などのように、企業における優秀な社員であることから、これらに近い行動特性を有する社員は、企業の成長や発展に寄与すると評価できる。加えて、ハイパフォーマが同じ研修に参加した社員から選出されていることから、社員の評価を正確に行うことができると共に、第一,第二の特定質問が前記行動特性の調査に適した質問に設定されていることから、ハイパフォーマとの行動特性の差を適正に得ることができる。したがって、本実施例の構成によれば、企業の求める成果に直接的に結び付く評価を定量的に行うことができる。
【0034】
前述した本実施例にあって、研修に参加した企業の社員が、本発明にかかる参加者に相当し、ハイパフォーマ(特定の社員)が、本発明にかかる特定の参加者に相当する。データベース12の回答記憶部が、本発明にかかる回答記憶手段に相当する。また、第一評価スコア、第二評価スコア、および合成評価スコアが、本発明にかかる評価スコアに相当する。
【0035】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、実施例では、二人のハイパフォーマを選出したが、ハイパフォーマの人数は適宜設定することができる。
また、実施例では、同じ研修に参加した社員のなかからハイパフォーマを選出したが、同じ内容の研修であれば、他の研修会場で参加した社員から選出したハイパフォーマを基準として、人材評価を行っても良い。例えば、東京会場と大阪会場とで同じ内容の研修を実施した場合に、一方の会場で選出したハイパフォーマを基準として、他方の会場に参加した社員の人材評価を行うこともできる。尚、こうした異なる会場で実施される研修は、できる限り同じ時期に実施される研修を対象とすることが好適である。
また、実施例では、自然言語処理とベクトル化の処理とにSentence-Bertを用いたが、これに限らず、他の公知の処理を用いることも可能である。
また、実施例では、企業の社員向け研修について例示したが、これに限らず、組合や団体の構成員向けの研修や学校の生徒向けの研修(講習)などでも同様に実施できる。
【符号の説明】
【0036】
1 人材評価システム
15 回復記憶部(回復記憶手段)
21 評価スコア獲得手段
22 ベクトル化処理手段
23 類似度算出手段

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記特定質問として、少なくとも二つの特定質問が設定されており、
前記ベクトル化処理手段は、参加者毎に、各特定質問の回答文章から夫々の文章ベクトルを得るものであり、
前記類似度算出手段は、
参加者毎に、各特定質問の回答文章から夫々得た前記文章ベクトルを合成して、合成文章ベクトルを得る処理手段と、
各参加者の前記合成文章ベクトルと前記特定の参加者の前記合成文章ベクトルとのコサイン類似度を算出して、該コサイン類似度により各参加者の前記評価スコアを得る処理手段と
を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の人材評価システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前述した本発明の人材評価システムにあって、前記特定質問として、少なくとも二つの特定質問が設定されており、前記ベクトル化処理手段は、参加者毎に、各特定質問の回答文章をそれぞれ文章ベクトル化して、これら文章ベクトルを合成することにより、各参加者の合成文章ベクトルを得る処理手段を備えており、前記類似度算出手段は、各参加者の前記合成文章ベクトルと前記特定の参加者の前記合成文章ベクトルとのコサイン類似度を算出して、該コサイン類似度により各参加者の前記評価スコアを得る処理手段を備えている構成が提案される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
図1】本実施例の人材評価システム1の構成を示す概略図である。
図2】人材評価システム1の評価管理装置2の機能を示すブロック図である。
図3】評価管理装置2のデータベース12に記憶された回答文章データを示す説明図である。
図4】参加者の評価スコアを得る評価スコア処理を示すフロー図である。
図5】各参加者の評価スコアを示す図表である。
図6】参加者の評価スコアをグラフ化して示す説明図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
データベース12は、図2に示すように、通信ネットワーク8を介して入力された回答文章のデータを記憶保持する回答記憶部15と、該回答文章をベクトル化した文章ベクトルを記憶保持するベクトルデータ記憶部16と、後述する評価スコアを記憶保持する評価スコア記憶部17とを備える。ここで、各記憶部15~17には、夫々の回答文章のデータが各社員に対応付けられて記憶される。本実施例にあっては、後述するように、二つの特定質問に対する夫々の回答文章が各社員から入力されるようにしていることから、前記回答記憶部15には、図3に示すように、社員毎に二個の回答文章のデータが記憶される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
管理サーバ11は、図2の機能ブロック図に示すように、ベクトル化処理手段22と類似度算出手段23とを有する評価スコア獲得手段21を備えると共に、該評価スコア獲得手段により得た評価スコアを表示する評価表示手段24を備える。この評価スコア獲得手段21は、前記した中央制御装置(CPU)がデータベース12から読み込んだプログラムとデータとにより実行される処理機能であり、本実施例にあっては、前記回答記憶部15から読み込んだ回答文章のデータから評価スコアを算出する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
ベクトル化処理手段22は、回答文章を自然言語処理により解析し、この解析結果に基づいて文章ベクトル化する。そして、この文章ベクトルを、データベース12のベクトルデータ記憶部16に記憶する。詳述すると、データベース12の回答記憶部15から回答文章のデータを読み込み、自然言語処理により解析する。自然言語処理は、形態素解析や構文解析などの一般的な解析処理を適用できる。そして、この自然言語処理による解析結果を用いて、回答文章を文章ベクトル化する処理を行う。本実施例では、こうした自然言語処理と文章ベクトル化の処理に、Sentence-Bertを用いる。これにより、回答文章を文章ベクトルに変換する。このようにベクトル化処理手段22は、研修に参加した各社員の回答文章を文章ベクトルに夫々変換する。尚、前述しように、本実施例では各社員に夫々二個の回答文章データが記憶されていることから、ベクトル化処理手段22は、社員毎に、二個の回答文章を夫々文章ベクトル化して二個の文章ベクトルを得る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
評価スコア処理では、前記したベクトル化処理手段22により、データベース12の回答記憶部15から、社員毎に第一,第二回答文章のデータを読み込み(S10)、これら第一,第二回答文章データを文章ベクトルに夫々変換する(S20)。そして、第一回答文章を変換した第一文章ベクトルと第二回答文章を変換した第二文章ベクトルとを、各社員に対応付けて、データベース12のベクトルデータ記憶部16に記憶する。これにより、ベクトルデータ記憶部16には、社員毎に第一,第二文章ベクトルが記憶される。ここで、文章ベクトル化の処理は、前記ハイパフォーマを含む全ての社員から入力された回答文章について実行される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4