(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141451
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セレクタブルクラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 41/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053114
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 史哉
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 亮太
(57)【要約】
【課題】動作モードの円滑な切り替えが可能で、使用状況に応じた動作モードの切り替えにより高機能化を実現可能なセレクタブルクラッチを提供すること。
【解決手段】セレクタブルクラッチ100は、周面にカム溝155を形成した円筒カム151の回転により外輪側ケージリング120に接続した第1従動節160及び内輪側ケージリング130に接続した第2従動節170をカム溝155により案内して独立に軸方向に移動させて互いに噛み合い方向の異なる第1カム110a及び第2カム110bの一方または両方を傾倒させることで動作モードを切り替え可能に構成され、カム溝155は、傾斜部を含む第1従動節案内領域L1及び傾斜部を含む第2従動節領域L2を有し、一方の領域は、他方の領域の傾斜部と周方向に位相をずらして形成した傾斜部を含む構成とされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪及び内輪に対する噛み合い方向の異なる第1カム及び第2カムが、前記外輪と前記内輪との間に設けられた外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングにより保持されてなり、前記第1カム及び前記第2カムのいずれか一方または両方を強制的に傾倒させることで動作モードを変更する切替機構を備えたセレクタブルクラッチであって、
前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングは、第1軸方向位置と第2軸方向位置との間で軸方向に移動可能に設けられ、
前記外輪側ケージリングは、前記第1軸方向位置と前記第2軸方向位置との間で移動されることで、前記第1カムを噛み合い待機姿勢と前記内輪または前記外輪から離間するよう傾倒した空転姿勢との間で姿勢変更可能となるように構成され、
前記内輪側ケージリングは、前記第1軸方向位置と前記第2軸方向位置との間で移動されることで、前記第2カムを噛み合い待機姿勢と前記内輪または前記外輪から離間するよう傾倒した空転姿勢との間で姿勢変更可能となるように構成され、
前記切替機構は、周面にカム溝が形成された円筒カムと、前記円筒カムに結合される第1従動節及び第2従動節とを備え、前記第1従動節が前記外輪側ケージリングに接続されると共に前記第2従動節が前記内輪側ケージリングに接続され、
前記カム溝は、前記第1従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第1従動節案内領域と、前記第2従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第2従動節案内領域とを有し、前記第1従動節案内領域及び前記第2従動節案内領域の一方の領域は、他方の領域の傾斜部と周方向の位相をずらして形成した傾斜部を含むことを特徴とするセレクタブルクラッチ。
【請求項2】
前記円筒カムは、円筒状部材の周面に前記カム溝が形成されてなり、
前記第1従動節は環状体であって、前記カム溝に係合される第1従動子が内周面より径方向内方に向かって突出するよう配置され、
前記第2従動節は環状体であって、前記カム溝に係合される第2従動子が外周面より径方向外方に向かって突出するよう配置され、
前記円筒カム、前記第1従動節及び前記第2従動節は、前記外輪及び前記内輪と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセレクタブルクラッチ。
【請求項3】
前記円筒カムは、円柱状部材の周面における軸方向に離間した位置に前記第1従動節案内領域及び前記第2従動節案内領域が形成されてなり、
前記円筒カムは、前記内輪及び前記外輪の回転軸心と平行に延びる軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセレクタブルクラッチ。
【請求項4】
前記切替機構は、前記円筒カム、前記第1従動節及び前記第2従動節を収容するケースを備え、
前記ケースは、前記第1従動節及び前記第2従動節の前記円筒カムとの共回りを禁止する回り止め部を有することを特徴とする請求項2に記載のセレクタブルクラッチ。
【請求項5】
前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリングが、前記外輪側ケージリングと前記内輪側ケージリングとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセレクタブルクラッチ。
【請求項6】
前記外輪側ケージリングは、軸方向に延びる内面溝部を内面に有し、
前記内輪側ケージリングは、軸方向に延びる外面溝部を外面に有し、
前記位置規制用ケージリングは、軸方向一端部に径方向外方に突出するよう設けられ前記外輪側ケージリングの内面溝部に摺動可能に係合される外方突起部を有すると共に、軸方向他端部に径方向内方に突出するよう設けられ前記内輪側ケージリングの外面溝部に摺動可能に係合される内方突起部を有することを特徴とする請求項5に記載のセレクタブルクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作モードを切り替え可能に構成されたセレクタブルクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
セレクタブルクラッチとしては、動作モード切替手段を軸方向に移動させることで動力伝達部材としてのカムを傾倒させて動作モードを切り替え可能に構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のセレクタブルクラッチにおいては、外輪及び内輪に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム及び第2カムのいずれか一方のみを傾倒させることで、もしくは、第1カム及び第2カムの両方を傾倒させることで、正逆両方向に動力伝達可能な両方向ロックモード、正逆いずれか一方向に動力伝達可能な一方向ロックモード、正逆両方向の動力伝達を遮断する両方向フリーモードの3つの動作モードが切り替え可能になっている。
【0003】
一方、例えばクラッチの切替機構として、円筒カムを用いたものが知られている。例えば特許文献2には、エンジンからの動力を自動変速機あるいは手動変速機を介して入力する入力軸が、サンギアを備えた遊星歯車機構からなる副変速機構を介して、同軸に配置された主出力軸としての後輪出力軸に連結された4輪駆動車用駆動力配分装置における切替機構として、副変速機構のシフト機構を制御するアクチュエータの出力軸に固定したシフト用円筒カムを回転させることで、その外周に形成したシフト用カム溝によりシフトピンを軸方向に案内移動し、シフトピンをシフトギアがクラッチギアに噛み合うLポジションと、サンギアを後輪出力軸に直結するHポジションとの間で切り替える構成のものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-190255号公報
【特許文献2】特開2008-128262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、セレクタブルクラッチにおいては、両方向ロックモード、正転方向ロックモード、逆転方向ロックモード及び両方向フリーモードの4つの動作モードを切替可能に構成されることが必要とされる場合も少なくなく、従って、セレクタブルクラッチの動作モードを切り替える切替機構についても、セレクタブルクラッチを4つの動作モードで切り替えることが可能となるよう構成されることが求められる。
しかしながら、上記のセレクタブルクラッチは、第1カムと第2カムの形状を変更して第1カムと第2カムを順番に傾倒させる構成上、一方向ロックモードは、正転方向ロックモード及び逆転方向ロックモードのいずれか一方の動作モードしか実現することはできず、しかも、カムの構成自体が複雑化するといった問題がある。
【0006】
切替機構に関しては、上記特許文献2に記載の切替機構は、円筒カムの回転により2つの軸方向位置間での従動節の単純な直線運動を実現するものであり、上記特許文献1に記載のセレクタブルクラッチにおける動作モード切替手段の駆動源として適用することを考えた場合であっても、セレクタブルクラッチを4つの動作モードの切り替えが可能となるように構成することはできない。
さらにまた、上記特許文献2に記載の切替機構は、円筒カムと、入力軸及び主出力軸とが互いに異なる回転軸上に位置されることから、セレクタブルクラッチの切替機構として用いる場合には、セレクタブルクラッチの径方向の体格が大きくなってしまうことになる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、動作モードの切り替えを円滑に行うことが可能であり、使用状況に応じた動作モードの切り替えを可能とすることで高機能化を実現可能なセレクタブルクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外輪及び内輪に対する噛み合い方向の異なる第1カム及び第2カムが、前記外輪と前記内輪との間に設けられた外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングにより保持されてなり、前記第1カム及び前記第2カムのいずれか一方または両方を強制的に傾倒させることで動作モードを変更する切替機構を備えたセレクタブルクラッチであって、前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングは、第1軸方向位置と第2軸方向位置との間で軸方向に移動可能に設けられ、前記外輪側ケージリングは、前記第1軸方向位置と前記第2軸方向位置との間で移動されることで、前記第1カムを噛み合い待機姿勢と前記内輪または前記外輪から離間するよう傾倒した空転姿勢との間で姿勢変更可能となるように構成され、前記内輪側ケージリングは、前記第1軸方向位置と前記第2軸方向位置との間で移動されることで、前記第1カムを噛み合い待機姿勢と前記内輪または前記外輪から離間するよう傾倒した空転姿勢との間で姿勢変更可能となるように構成され、前記切替機構は、周面にカム溝が形成された円筒カムと、前記円筒カムに結合される第1従動節及び第2従動節を備え、前記第1従動節が前記外輪側ケージリングに接続されると共に前記第2従動節が前記内輪側ケージリングに接続され、前記カム溝は、前記第1従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第1従動節案内領域と、前記第2従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第2従動節案内領域とを有し、前記第1従動節案内領域及び前記第2従動節案内領域の一方の領域を、他方の領域の傾斜部と周方向の位相をずらして形成した傾斜部を含む構成とすることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、円筒カムに形成されたカム溝が、第1従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第1従動節案内領域と、第2従動節を軸方向に移動させる傾斜部を含む第2従動節案内領域とを有し、第1従動節案内領域及び第2従動節案内領域の一方の領域が、他方の領域の傾斜部と周方向の位相をずらして形成した傾斜部を含むことにより、第1従動節及び第2従動節の各々を独立して軸方向に移動させることが可能となる。このため、第1従動節に接続した外輪側ケージリングに第1カムの姿勢制御機能を持たせると共に第2従動節に接続した内輪側ケージリングに第2カムの姿勢制御機能を持たせることで、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの一方または両方を軸方向に移動させるだけで、カムを傾倒させることができると共に変更されたカムの姿勢を保持することができる。従って、簡単な構成で、動作モードの円滑な切り替えが可能となると共に、使用状況に応じた動作モードの切り替えが可能となり高機能化を実現することができる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、円筒カムを円筒状部材の周面にカム溝を形成することで構成し、カム溝に係合する従動子を内周面から内方に突出するよう設けた環状体により第1従動節を構成すると共にカム溝に係合する従動子を外周面から外方に突出するよう設けた環状体により第2従動節を構成することで、円筒カム、第1従動節及び第2従動節を、外輪及び内輪と同軸上に配置すること可能となる。このため、セレクタブルクラッチの径方向の体格を小型化することができる。また、第1従動節案内領域及び第2従動節案内領域を円筒カムの同一円周上に配置することが可能となるため、セレクタブルクラッチの軸方向の体格についても小型化を図ることができる。さらにまた、同軸で動力を伝達するため、曲げモーメントの発生がほとんどなく変形による性能低下を回避することが可能となると共に、単一軸とすることで部品点数を削減して故障リスクやメンテナンスの機会を低減することが可能となる。
【0011】
本請求項3に係る発明によれば、傾斜部を周方向に位相ずらして形成した第1従動節案内領域及び第2従動節案内領域を軸方向に離間した位置に形成することで、第1従動節及び第2従動節の各々を独立して軸方向に移動させることができ、使用状況に応じた動作モードの切り替えが可能となり高機能化を実現することができる。
【0012】
本請求項4に係る発明によれば、円筒カムの回転に伴って第1従動節及び第2従動節が回転されることが禁止されるので、従動子がカム溝の傾斜部に沿って案内されることで第1従動節及び第2従動節を確実に軸方向に移動させて動作モードを切り替えることが可能となる。
【0013】
本請求項5に係る発明によれば、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制することで、カムの姿勢変更に際して、第1カム及び第2カムが共に外輪及び内輪に噛み合う「噛み込み」が生ずることが回避され、円滑な動作を実現することができて高い応答性を得ることができる。
本請求項6に係る発明によれば、簡単な構成で、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るセレクタブルクラッチの一構成例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すセレクタブルクラッチの側面図である。
【
図5】
図1に示すセレクタブルクラッチの回転軸心を含む平面で切った断面斜視図である。
【
図6A】外輪側ケージリングの構成を示す斜視図である。
【
図6B】
図6Aに示す外輪側ケージリングの一部展開図である。
【
図7A】内輪側ケージリングの構成を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Aに示す内輪側ケージリングの一部展開図である。
【
図8A】位置規制用ケージリングの構成を示す斜視図である。
【
図8B】
図8Aに示す位置規制用ケージリングの一部展開図である。
【
図13】円筒カムの作用を説明するためのタイミングチャートである。
【
図14】
図1に示すセレクタブルクラッチが逆転方向ロックモードとされているときの、第1カム及び第2カムの状態を概略的に示す模式図である。
【
図15A】
図1に示すセレクタブルクラッチが両方向フリーモードとされているときの状態を示す側面図である。
【
図15B】
図1に示すセレクタブルクラッチが両方向フリーモードとされているときの、第1カム及び第2カムの状態を概略的に示す模式図である。
【
図16A】
図1に示すセレクタブルクラッチが両方向ロックモードとされているときの状態を示す側面図である。
【
図16B】
図1に示すセレクタブルクラッチが両方向ロックモードとされているときの、第1カム及び第2カムの状態を概略的に示す模式図である。
【
図17A】
図1に示すセレクタブルクラッチが正転方向ロックモードとされているときの状態を示す側面図である。
【
図17B】
図1に示すセレクタブルクラッチが正転方向ロックモードとされているときの、第1カム及び第2カムの状態を概略的に示す模式図である。
【
図18】円筒カムのさらに他の構成例を示す展開図である。
【
図19】円筒カムの作用を説明するためのタイミングチャートである。
【
図20】本発明の第2実施形態に係るセレクタブルクラッチの一構成例を示す斜視図である。
【
図21】
図20に示すセレクタブルクラッチの分解斜視図である。
【
図22】外輪側ケージリングの構成を示す斜視図である。
【
図23】内輪側ケージリングの構成を示す斜視図である。
【
図26】円筒カムの作用を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1乃至
図5に示すように、本発明の第1実施形態に係るセレクタブルクラッチ100は、同一軸上に相対回転可能に設けられた外輪101及び内輪105と、外輪軌道面102と内輪軌道面106との間の環状空間において周方向に間隔を空けて配列され外輪101と内輪105との間でトルクの伝達及び遮断を行う複数のカム110と、複数のカム110の各々を外輪101及び内輪105に接触するように付勢する付勢手段115と、外輪101と内輪105との間において同一軸上に外輪101または内輪105と共に回転可能に設けられ複数のカム110の各々を保持する外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130と、外輪側ケージリング120と内輪側ケージリング130との間に設けられ外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130の周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリング140と、セレクタブルクラッチ100の動作モードを切り替える切替機構150とを備える。
図1乃至
図5におけるC1は、回転軸心である。
【0017】
複数のカム110の各々は、外輪101及び内輪105に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム110a及び第2カム110bを含む。
本実施例においては、第1カム110a及び第2カム110bは、例えば互いに同一の外形形状を有するものであって、カム110の一端面を軸方向前方(
図3において紙面に垂直な方向手前側)に向けて配置したものを第1カム110a、カム110の他端面を軸方向前方に向けて配置したものを第2カム110bとして用いている。
【0018】
第1カム110a及び第2カム110bは、例えば、周方向に等間隔で交互に並ぶよう配置されている。
第1カム110a及び第2カム110bの配列は、特に限定されるものではなく、第1カム110a及び第2カム110bは周方向に交互に並ぶよう配置されていなくてもよく、また、第1カム110aの数と第2カム110bの数とが異なっていてもよい。
【0019】
第1カム110aは、外輪101を正転方向(
図3における時計方向)に回転させることで、もしくは、内輪105を逆転方向(
図3における反時計方向)に回転させることで外輪101及び内輪105に対し噛み合うように構成されている。
第2カム110bは、外輪101を逆転方向に回転させることで、もしくは、内輪105を正転方向に回転させることで外輪101及び内輪105に対し噛み合うように構成されている。
【0020】
付勢手段115は、例えばリボンスプリングにより構成されている。
付勢手段115は、第1カム110a及び第2カム110bの各々を外輪101及び内輪105に接触するように付勢可能な弾性体であればよく、例えば複数の板バネ又はねじりバネなどを用いてもよい。
【0021】
外輪側ケージリング120は、
図6Aに示すように、軸方向に延びる円筒状の本体部121と、本体部121の後端部において周方向全周にわたって径方向外方に突出して形成された外方フランジ部122とを有する。本体部121には、第1カム110aの頭部部分を受容して第1カム110aを保持する第1カム保持部123と、第2カム110bの頭部部分を受容して第2カム110bを保持する第2カム保持部125とが、周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0022】
外輪側ケージリング120の第1カム保持部123は、軸方向において開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するように構成されている。
具体的には、
図6Bに示すように、第1カム保持部123は、軸方向において開口幅が一定となるよう構成されたガイド空間部123aと、ガイド空間部123aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部123aの軸方向前方側(
図6Bにおいて右側)に連続する第1姿勢固定用空間部123bと、ガイド空間部123aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部123aの軸方向後方側(
図6Bにおいて左側)に連続する第2姿勢固定用空間部123cとを有する。
第1姿勢固定用空間部123bは、開口幅が軸方向後方に向かうに従って連続的に大きくなるよう形成された第1開口幅変動部124aを介してガイド空間部123aに連続し、第2姿勢固定用空間部123cは、開口幅が軸方向前方に向かうに従って連続的に大きくなるよう形成された第2開口幅変動部124bを介してガイド空間部123aに連続する。
第1開口幅変動部124aは、第1カム110aの噛み合い方向(
図6Bにおいて上方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成され、第2開口幅変動部124bは、第1カム110aの噛み合い解除方向(
図6Bにおいて下方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成される。
【0023】
外輪側ケージリング120の第2カム保持部125は矩形状であって、軸方向において開口幅が一定となるように構成されている。
【0024】
外輪側ケージリング120は、外輪101及び内輪105の回転動作とは独立して第1軸方向位置と第2軸方向位置との間で軸方向に移動可能に設けられ、第1軸方向位置に位置されるときに第1カム110aを噛み合い待機姿勢に保持すると共に第2軸方向位置に位置されるときに第1カム110aを内輪105から離間するよう傾倒した空転姿勢に保持するように構成されている。これにより、第2カム110bの姿勢を保持したまま、第1カム110aを傾倒させて第1カム110aの姿勢を変更することが可能となっている。
また、外輪側ケージリング120の第1カム保持部123が、単純な矩形状の開口部ではなく、軸方向両端部において開口幅が狭まる異形状の開口窓により構成されることで、製造誤差などで発生するわずかな噛みこみの解除を小さな推力で実行可能となっていると共に、第1カム保持部123の開口形状を適宜変更することで、より多くの動作モード及びその切り替えを実現することが可能となっている。
【0025】
外輪側ケージリング120における本体部121の内面には、第1カム保持部123と、該第1カム保持部123と第1カム110aの噛み合い方向に隣接する第2カム保持部125との間において、軸方向に延びる内面溝部126が形成されている。
内面溝部126は、本体部121の軸方向後端縁から軸方向前端縁まで直線状に延びるガイド溝部127と、ガイド溝部127の軸方向後端部に連続するスライド溝部128とを有する。スライド溝部128は、周方向において第1カム110aの噛み合い方向に延びるように形成されており、外輪側ケージリング120が第1カム110aを噛み合い待機姿勢とする位置にあるときに、後述する位置規制用ケージリング140の外方突起部145の周方向移動が許容されるように構成されている。
【0026】
内輪側ケージリング130は、
図7Aに示すように、軸方向に延びる円筒状の本体部131と、本体部131の軸方向後端部において周方向全周にわたって径方向内方に向かって突出するよう形成された内方フランジ部132とを有する。
本体部131には、第1カム110aの脚部部分を受容して第1カム110aを保持する第1カム保持部133と、第2カム110bの脚部部分を受容して第2カム110bを保持する第2カム保持部134とが、周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0027】
内輪側ケージリング130の第1カム保持部133は、
図7Bに示すように、矩形状であって、軸方向において開口幅が一定となるように構成されている。
【0028】
内輪側ケージリング130の第2カム保持部134は、軸方向において開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するように構成されている。
具体的には、第2カム保持部134は、軸方向において開口幅が一定となるよう構成されたガイド空間部134aと、ガイド空間部134aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部134aの軸方向前方側(
図7Bにおいて右側)に連続する第1姿勢固定用空間部134bと、ガイド空間部134aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部134aの軸方向後方側(
図7Bにおいて左側)に連続する第2姿勢固定用空間部134cとを有する。
第1姿勢固定用空間部134bは、開口幅が軸方向後方に向かうに従って連続的に大きくなるよう形成された第1開口幅変動部135aを介してガイド空間部134aに連続し、第2姿勢固定用空間部134cは、開口幅が軸方向前方に向かうに従って連続的に大きくなるよう形成された第2開口幅変動部135bを介してガイド空間部134aに連続する。
第1開口幅変動部135aは、第2カム110bの噛み合い方向(
図7Bにおいて下方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成され、第2開口幅変動部135bは、第2カム110bの噛み合い解除方向(
図7Bにおいて上方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成されている。
【0029】
内輪側ケージリング130は、外輪101及び内輪105の回転動作とは独立して第1軸方向位置と第2軸方向位置との間で軸方向に移動可能に設けられ、第1軸方向位置に位置されるときに第2カム110bを噛み合い待機姿勢に保持すると共に第2軸方向位置に位置されるときに第2カム110bを内輪105から離間するよう傾倒した空転姿勢に保持するように構成されている。これにより、第1カム110aの姿勢を保持したまま、第2カム110bを傾倒させて第2カム110bの姿勢を変更することが可能となっている。
また、内輪側ケージリング130の第2カム保持部134が、単純な矩形状の開口部ではなく、軸方向両端部において開口幅が狭まる異形状の開口窓により構成されることで、製造誤差などで発生するわずかな噛みこみの解除を小さな推力で実行可能となっていると共に、第2カム保持部134の開口形状を適宜変更することで、より多くの動作モード及びその切り替えを実現することが可能となっている。
【0030】
内輪側ケージリング130における本体部131の外面には、第2カム保持部134と、該第2カム保持部134と第2カム110bの噛み合い解除方向に隣接する第1カム保持部133との間において、軸方向に延びる外面溝部136が形成されている。
外面溝部136は、本体部131の軸方向前端縁から軸方向後端縁まで直線状に延びるガイド溝部137と、ガイド溝部137の軸方向前端部に連続するスライド溝部138とを有する。スライド溝部138は、周方向において第2カム110bの噛み合い方向に延びるように形成されており、内輪側ケージリング130が第2カム110bを噛み合い待機姿勢とする位置にあるときに、後述する位置規制用ケージリング140の内方突起部146の周方向移動が許容されるように構成されている。
【0031】
而して、本実施例におけるセレクタブルクラッチ100は、上述のように、外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130の周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリング140を備えた構成とされる。これにより、外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130の、位置規制用ケージリング140に対する周方向の移動の自由度が各動作モードに応じた適正な自由度に調整可能となり、第1カム110a及び第2カム110bを適正な姿勢に保持することが可能となっている。
【0032】
位置規制用ケージリング140は、
図8Aに示すように、軸方向に並設された一対の円環部141と、円環部141を所定間隔で軸方向に連結する複数の連結部142とからなり、隣接する連結部142間の空間により第1カム110a及び第2カム110bをそれぞれ一つずつ収容可能なポケット部143が構成されている。ポケット部143は、周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0033】
位置規制用ケージリング140は、軸方向前端部に径方向外方に突出するよう設けられ外輪側ケージリング120の内面溝部126に摺動可能に係合される外方突起部145を有すると共に、軸方向後端部に径方向内方に突出するよう設けられ内輪側ケージリング130の外面溝部136に摺動可能に係合される内方突起部146を有する。
【0034】
切替機構150は、円筒カム151と、円筒カム151に結合される第1従動節160及び第2従動節170と、第1従動節160及び第2従動節170を収容するケース180とを備える。
【0035】
本実施形態における円筒カム151は、
図9にも示すように、円筒状部材の周面にカム溝155が形成されてなり、円筒状の軸部152と、軸部152の軸方向後端部に周方向全周にわたって径方向外方に延びるよう形成され適宜駆動源からの動力を伝達するための外方フランジ部153とを有する。
【0036】
円筒カム151は、
図5に示すように、軸部152が外輪側ケージリング120と内輪側ケージリング130との間に挿入された状態で、回転軸心C1上に位置されており、これにより、セレクタブルクラッチ100の径方向の体格の小型化が図られている。さらにまた、同軸で動力を伝達するため、曲げモーメントの発生がほとんどなく変形による性能低下を回避することが可能となると共に、単一軸とすることで部品点数を削減して故障リスクやメンテナンスの機会を低減することが可能となっている。
【0037】
カム溝155は、第1従動節160の第1従動子165が係合され第1従動節160を軸方向に移動させる傾斜部を含む第1従動節案内領域L1と、第2従動節170の第2従動子175が係合され第2従動節170を軸方向に移動させる傾斜部を含む第2従動節案内領域L2とを有する。
第1従動節案内領域L1及び第2従動節案内領域L2は、円筒カム151の同一円周上において、回転軸心C1を挟んで互いに対向する位置に配置されており、これにより、セレクタブルクラッチ100の軸方向の体格についても小型化が図られている。
【0038】
第1従動節案内領域L1は、軸方向前方側部分において周方向に延びるよう形成された第1直線部156aと、軸方向後方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部156aと連続する第1傾斜部156bと、軸方向後方側部分において周方向に延びるよう形成され第1傾斜部156bと連続する第2直線部156cとを有する。
【0039】
第2従動節案内領域L2は、軸方向前方側部分において周方向に延びるよう形成された第1直線部157aと、軸方向後方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部157aと連続する第1傾斜部157bと、軸方向後方側部分において周方向に延びるよう形成され第1傾斜部157bと連続する第2直線部157cと、軸方向前方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第2直線部157cと連続する第2傾斜部157dと、軸方向前方側部分において周方向に延びるよう形成され第2傾斜部157dと連続する第3直線部157eとを有する。
【0040】
第1従動節160は、
図10に示すように、環状体であって、円環状の基体部161と、円筒カム151のカム溝155に係合される第1従動子165とを備える。
基体部161の前端面には、外輪側ケージリング120の外方フランジ部122が配置可能に構成された凹所162が形成されており、外方フランジ部122の後面が凹所162の底面に当接された状態において、円環板の一部を切り欠いたC字状の止め輪190が凹所162を画成する周壁部163の内周面に内嵌されることで外輪側ケージリング120と第1従動節160とが接続されている。
また、基体部161の外周面には、複数の外歯164が周方向に所定間隔で並ぶよう形成されている共に基体部161の厚み方向に貫通して延びる従動子挿入孔が形成されている。
第1従動子165は、先端部が基体部161の内周面より径方向内方に向かって突出するように従動子挿入孔に挿入配置されている。
【0041】
第2従動節170は、
図11に示すように、環状体であって、円環状の基体部171と、円筒カム151のカム溝155に係合される第2従動子175とを備える。
基体部171の前端面には、薄肉円筒状の延出部172がその内周面が基体部171の内周面と連続するように形成されており、内輪側ケージリング130における内方フランジ部132の後面が基体部171の前端面に当接された状態において、円環板の一部を切り欠いたC字状の止め輪191が延出部172の外周面に外嵌されることで内輪側ケージリング130と第2従動節170とが接続されている。
また、基体部171の内周面には、複数の内歯173が周方向に所定間隔で並ぶよう形成されていると共に基体部171の厚み方向に貫通して延びる従動子挿入孔が形成されている。
第2従動子175は、先端部が基体部171の外周面より径方向外方に向かって突出するように従動子挿入孔に挿入配置されている。
【0042】
ケース180は、
図12に示すように、後端が閉塞された2重円筒状に形成され、第1従動節160及び第2従動節170の円筒カム151との共回りを禁止する回り止め部を有する。
回り止め部は、ケース180の外筒部181の内周面に形成された内歯182と、内筒部185の外周面に形成された外歯186とにより構成され、内歯182が第1従動節160の外歯164とスプライン結合されると共に外歯186が第2従動節170の内歯173とスプライン結合されることで、円筒カム151の回転に伴って第1従動節160及び第2従動節170が回転されることが禁止されるようになっている。このため、第1従動子165及び第2従動子175がカム溝155の傾斜部に沿って案内されることで第1従動節160及び第2従動節170を確実に軸方向に移動させてセレクタブルクラッチ100の動作モードを切り替えることが可能となる。本実施形態における回り止め部は、第1従動節160及び第2従動節170をケース180に対しスプライン結合させる構成とされているが、第1従動節160及び第2従動節170をケース180に対しキー結合やその他の方法により結合させる構成とされていてもよい。
外筒部181には、円筒カム151の外方フランジ部153の一部を外部に露出させる切欠部187が形成されており、適宜駆動源からの動力を円筒カム151に伝達可能となっている。
【0043】
この切替機構150においては、
図13に示すように、外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130が共に第1軸方向位置P1に位置されているときには(
図2参照)、第1従動節160の第1従動子165及び第2従動節170の第2従動子175は、それぞれ第1従動節案内領域L1の第2直線部156c及び第2従動節案内領域L2の第2直線部157cに位置されている(
図13中の領域A)。
図13における実線で示す折れ線は、カム溝155に対する第1従動子165の周方向位相と外輪側ケージリング120の軸方向位置との関係を示し、破線で示す折れ線は、カム溝155に対する第2従動子175の周方向位相と、内輪側ケージリング130の軸方向位置との関係を示している。
このとき、
図14に示すように、第1カム110aは、内輪側係合面が内輪軌道面106から離間するよう傾斜した空転姿勢を維持しており、第2カム110bは、外輪101または内輪105にトルクが働くことで第2カム110bが外輪101及び内輪105に対する噛み合いが直ちに開始されるように外輪101及び内輪105に接触した噛み合い待機姿勢を維持している。従って、セレクタブルクラッチ100は、内輪105の外輪101に対する逆転方向の相対回転を禁止する逆転方向ロックモード(ModeA1)とされている。
【0044】
円筒カム151を正転方向に回転させたときには、第1従動子165は第1従動節案内領域L1の第2直線部156cに沿って案内され、外輪側ケージリング120は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図13中の領域B、領域C)。一方で、第2従動子175は、第2従動節案内領域L2の第1傾斜部157bに沿って案内され、第2従動節170及びこれに接続された内輪側ケージリング130が軸方向前方に向かって移動し(
図13中の領域B)、その後、第2従動子175が第1直線部157aに沿って案内されることで、
図15Aに示すように、内輪側ケージリング130が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域C)。
このとき、
図15Bに示すように、内輪側ケージリング130の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い解除方向に傾倒される。内輪側ケージリング130の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は空転姿勢を保持する。
これにより、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモード(ModeA2)に切り替えられる。
【0045】
また、円筒カム151を逆転方向に回転させたときには、第1従動子165が第1従動節案内領域L2の第1傾斜部156bに沿って案内され、第1従動節160及びこれに接続された外輪側ケージリング120が軸方向前方に向かって移動し(
図13中の領域D)、その後、第1従動子165が第1直線部156aに沿って案内されることで、
図16Aに示すように、外輪側ケージリング120が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域E)。一方で、第2従動子175は第2従動節案内領域L2の第2直線部157cに沿って案内され、内輪側ケージリング130が第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図13中の領域D、領域E)。
このとき、
図16Bに示すように、外輪側ケージリング120の第1カム保持部123における第2開口幅変動部124bの作用によって第1カム110aの頭部部分が押圧され、これにより、第1カム110aが噛み合い方向に傾倒される。外輪側ケージリング120における第2カム保持部125は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第2カム110bの姿勢は噛み合い待機姿勢を保持する。
これにより、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモード(ModeA3)に切り替えられる。
【0046】
円筒カム151を逆転方向にさらに回転させると、第1従動子165は第1従動節案内領域L1の第1直線部156aに沿って案内され、外輪側ケージリング120は第2軸方向位置P2に位置された状態を維持する(
図13中の領域F、領域G)。一方で、第2従動子175は、第2従動節案内領域L2の第2傾斜部157dに沿って案内され、第2従動節170及びこれに接続された内輪側ケージリング130が軸方向前方に向かって移動し(
図13中の領域F)、その後、第2従動子175が第3直線部157eに沿って案内されることで、
図17Aに示すように、内輪側ケージリング130が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域G)。
このとき、
図17Bに示すように、内輪側ケージリング130の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い解除方向に傾倒される。内輪側ケージリング130の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は噛み合い待機姿勢に保持される。
これにより、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、両方向ロックモード(ModeA3)から内輪105の外輪101に対する正転方向の相対回転を禁止する正転方向ロックモード(ModeA4)に切り替えられる。
【0047】
而して、上記のセレクタブルクラッチ100によれば、円筒カム151に形成されたカム溝155が、第1従動節160を軸方向に移動させる第1傾斜部156bを含む第1従動節案内領域L1と、第2従動節170を軸方向に移動させる第1傾斜部157b及び第2傾斜部157dを含む第2従動節案内領域L2とを有し、第1従動節案内領域L1及び第2従動節案内領域L2の一方の領域が、他方の領域の傾斜部と周方向の位相をずらして形成した傾斜部を含むことにより、第1従動節160及び第2従動節170の各々を独立して軸方向に移動させることが可能となる。このため、第1従動節160に接続した外輪側ケージリング120に第1カム110aの姿勢制御機能を持たせると共に第2従動節170に接続した内輪側ケージリング130に第2カム110bの姿勢制御機能を持たせることで、外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130の一方または両方を軸方向に移動させるだけで、カム110を傾倒させることができると共に変更されたカム110の姿勢を保持することができる。従って、簡単な構成で、動作モードの円滑な切り替えが可能となると共に、使用状況に応じた動作モードの切り替えが可能となり高機能化を実現することができる。
【0048】
以上においては、4つの動作モードを切替可能に構成されたセレクタブルクラッチについて説明したが、例えば両方向ロックモード、両方向フリーモード、及び、正転方向ロックモードまたは逆転方向ロックモードの3つの動作モードが切替可能に構成されたものであってもよい。
【0049】
このような構成のセレクタブルクラッチにおける切替機構を構成する円筒カム151は、例えば
図18に示すように、カム溝155における第1従動節案内領域L1が、軸方向前方側部分において周方向に延びるよう形成された第1直線部156aと、軸方向後方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部156aと連続する第1傾斜部156bと、軸方向後方側部分において周方向に延びるよう形成され第1傾斜部156bと連続する第2直線部156cとを有する構成とされる。
また、カム溝155における第2従動節案内領域L2は、軸方向前方側部分において周方向に延びるよう形成された第1直線部157aと、軸方向後方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部157aと連続する第1傾斜部157bと、軸方向後方側部分において周方向に延びるよう形成され第1傾斜部157bと連続する第2直線部157cとを有する構成とされる。
第1従動節案内領域L1における第1傾斜部156b及び第2従動節案内領域L2における第1傾斜部157bは、互いに周方向の位相をずらして形成されている。
【0050】
このような円筒カム151を備えた切替機構においては、
図19に示すように、外輪側ケージリング120及び内輪側ケージリング130が共に第1軸方向位置P1に位置されているときには、第1従動節160の第1従動子165及び第2従動節170の第2従動子175は、それぞれ第1従動節案内領域L1の第2直線部156c及び第2従動節案内領域L2の第2直線部157cに位置されている(
図19中の領域A)。このとき、第1カム110aは空転姿勢に保持され、第2カム110bは噛み合い待機姿勢に保持され、従って、セレクタブルクラッチ100の動作モードは、内輪120の外輪110に対する逆転方向の相対回転を禁止する逆転方向ロックモード(ModeA1)とされている。
【0051】
円筒カム151を正転方向に回転させたときには、第1従動子165は、第1従動節案内領域L1の第2直線部156cに沿って案内され、外輪側ケージリング130は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図19中の領域B、領域C)。一方で、第2従動子175は、第2従動節案内領域L2の第1傾斜部157bに沿って案内され、第2従動節175及びこれに接続された内輪側ケージリング130が軸方向前方に向かって移動し(
図19中の領域B)、その後、第2従動子175が第1直線部157aに沿って案内されることで、内輪側ケージリング130が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域C)。これにより、第1カム110aは空転姿勢に保持され、第2カム110bは噛み合い待機姿勢から空転姿勢に傾倒され、従って、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモード(ModeA2)に切り替えられる。
【0052】
また、円筒カム151を逆転方向に回転させたときには、第1従動子165は、第1従動節案内領域L1の第1傾斜部156bに沿って案内され、第1従動節160及びこれに接続された外輪側ケージリング120が軸方向前方に向かって移動し(
図19中の領域D)、その後、第1従動子165が第1直線部156aに沿って案内されることで、外輪側ケージリング120が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図19中の領域E)。一方で、第2従動子175は第2従動節案内領域L2の第2直線部157cに沿って案内され、内輪側ケージリング130は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図19中の領域D、領域E)。これにより、第1カム110aは空転姿勢から噛み合い待機姿勢に傾倒され、第2カム110bは噛み合い待機姿勢が保持され、従って、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモード(ModeA3)に切り替えられる。
【0053】
<第2実施形態>
図20は、本発明の第2実施形態に係るセレクタブルクラッチの一構成例を示す斜視図、
図21は、
図20に示すセレクタブルクラッチの分解斜視図である。
第2実施形態に係るセレクタブルクラッチ200は、切替機構の構成が異なる他は、第1実施形態に係るセレクタブルクラッチ100と実質的に同様の構成を有するものであり、便宜上、第1実施形態に係るセレクタブルクラッチ100と同一の構成部材には、同一の符号を付してあり、説明を省略する。
【0054】
本実施形態における外輪側ケージリング220は、
図22にも示すように、本体部221の軸方向寸法が第1実施形態に係るセレクタブルクラッチ100における外輪側ケージリング120の本体部121より大きく形成されている。第1カム保持部123、第2カム保持部125及び内面溝部126は、本体部221の軸方向前方側部分に形成されており、本体部221の軸方向後端部に第1従動節装着部が形成されている。
第1従動節装着部は、本体部221の後端部に設けられた外方フランジ部222の外周面に、周方向の全周にわたって延びる凹溝222aが形成されることで構成されている。
【0055】
本実施形態における内輪側ケージリング230は、
図23にも示すように、本体部231の軸方向前方側部分に、第1カム保持部133、第2カム保持部134及び外面溝部136が形成されていると共に、軸方向後端部に第2従動節装着部が形成されている。
第2従動節装着部は、本体部231の後端部に設けられた外方フランジ部239の外周面に、周方向の全周にわたって延びる凹溝239aが形成されることで構成されている。
本体部231は、組立状態において後端側部分が外輪側ケージリング220の後端面より後方に突出するよう、軸方向寸法が外輪側ケージリング220の本体部221より大きく形成されており、従って、内輪側ケージリング230における第2従動節装着部は、外輪側ケージリング220における第1従動節装着部に対し軸方向後方側に離間して位置される。
【0056】
本実施形態の切替機構250における第1従動節260及び第2従動節270は、互いに同一の構成を有し、第2従動節270の構成については説明を省略する。
第1従動節260は、
図24にも示すように、係合部266と、軸受部268とを有する。
係合部266は、円環の一部を切り欠いたC字状をなすよう形成され、一対のアーム部267を有し、アーム部267が拡開するよう弾性的に変形されることで、外輪側ケージリング220の従動節装着部に係合されるようになっている。第2従動節270の係合部は、内輪側ケージリング230の従動節装着部に係合可能に構成される。
軸受部268は、係合部266の形状中心に対し径方向外方に延びるよう係合部266に連続して形成されており、円筒カム251が回転可能に挿通されるよう構成された円筒カム挿通孔269を有する。軸受部268には、従動子挿入孔が円筒カム挿通孔269の内周面に開口するよう形成されており、従動子挿入孔には、ロッド状の第1従動子265がその先端部が円筒カム挿通孔269の内周面より内方に突出するように配置される。第2従動節270には、ロッド状の第2従動子275がその先端部が円筒カム挿通孔の内周面より内方に突出するように配置される。
【0057】
本実施形態の切替機構250における円筒カム251は、円柱状部材の周面にカム溝255が形成されてなる。円筒カム251は、
図20に示すように、外輪側ケージリング220に接続された第1従動節260の円筒カム挿通孔269及び内輪側ケージリング230に接続された第2従動節270の円筒カム挿通孔の各々に挿通されると共に第1従動節260の第1従動子265及び第2従動節270の第2従動子275がカム溝255に係合されることで第1従動節260及び第2従動節270に結合されて、回転軸心C1と平行に延びる回転駆動軸C2を中心に正逆回転可能に配置されている。
【0058】
カム溝255は、
図25にも示すように、第1従動節260の第1従動子265が係合され第1従動節260を軸方向に移動させる傾斜部を含む第1従動節案内領域L1と、第2従動節270の第2従動子275が係合され第2従動節270を軸方向に移動させる傾斜部を含む第2従動節案内領域L2とを有する。本実施形態においては、第1従動節案内領域L1に対し軸方向後方側に離間した位置に第2従動節案内領域L2が形成されている。
【0059】
第1従動節案内領域L1は、周方向に延びるよう形成された第1直線部256aと、軸方向前方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部256aと連続する第1傾斜部256bと、周方向に延びるよう形成され第1傾斜部256bと連続する第2直線部256cとを有する。
【0060】
第2従動節案内領域L2は、周方向に延びるよう形成された第1直線部257aと、軸方向前方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第1直線部257aと連続する第1傾斜部257bと、周方向に延びるよう形成され第1傾斜部257bと連続する第2直線部257cと、軸方向後方側に向かって傾斜して延びるよう形成され第2直線部257cと連続する第2傾斜部257dと、軸方向後方側部分において周方向に延びるよう形成され第2傾斜部257dと連続する第3直線部257eとを有する。
【0061】
カム溝255においては、第1従動節案内領域L1における第1傾斜部156bと、第2従動節案内領域L2における第1傾斜部157b及び第2傾斜部157dとは、互いに周方向の位相をずらして形成されており、これにより、第1従動節260及び第2従動節270の各々を独立して軸方向に移動させることができるようになっている。
【0062】
この切替機構250においては、
図26に示すように、外輪側ケージリング220及び内輪側ケージリング230が共に第1軸方向位置P1に位置されているときには(
図20参照)、第1従動節260の第1従動子265及び第2従動節270の第2従動子275は、それぞれ第1従動節案内領域L1の第1直線部256a及び第2従動節案内領域L2の第1直線部257aに位置されている(
図26中の領域A)。
図26における実線で示す折れ線は、カム溝255に対する第1従動子265の周方向位相と外輪側ケージリング220の軸方向位置との関係を示し、破線で示す折れ線は、カム溝255に対する第2従動子275の周方向位相と、内輪側ケージリング230の軸方向位置との関係を示している。
このとき、第1カム110aは、内輪側係合面が内輪軌道面106から離間するよう傾斜した空転姿勢を維持しており、第2カム110bは、外輪101または内輪105にトルクが働くことで第2カム110bが外輪101及び内輪105に対する噛み合いが直ちに開始されるように外輪101及び内輪105に接触した噛み合い待機状態を維持している。従って、セレクタブルクラッチ200は、内輪105の外輪101に対する逆転方向の相対回転を禁止する逆転方向ロックモード(ModeB1)とされている。
【0063】
円筒カム251を軸方向前方側から見て時計方向(正転方向)に回転させたときには、第1従動子275は第1従動節案内領域L1の第1直線部256aに沿って案内され、外輪側ケージリング220は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図26中の領域B、領域C)。一方で、第2従動子275は、第2従動節案内領域L2の第1傾斜部257bに沿って案内され、第2従動節260及びこれに接続された内輪側ケージリング230が軸方向前方に向かって移動し(
図26中の領域B)、その後、第2従動子265が第2直線部257cに沿って案内されることで、内輪側ケージリング220が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図26中の領域C)。
このとき、内輪側ケージリング230の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い解除方向に傾倒され空転姿勢に変更される。内輪側ケージリング230の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は空転姿勢を保持する。
従って、セレクタブルクラッチ200の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeB1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモード(ModeB2)に切り替えられる。
【0064】
円筒カム151をさらに正転方向に回転させると、第1従動子275が第1従動節案内領域L1の第1傾斜部256bに沿って案内され、第1従動節270及びこれに接続された外輪側ケージリング220が軸方向前方に向かって移動し(
図26中の領域D)、その後、第1従動子275が第2直線部256cに沿って案内されることで、外輪側ケージリング220が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図26中の領域E)。一方で、第2従動子265は第2従動節案内領域L2の第2直線部257cに沿って案内され、内輪側ケージリング230は第2軸方向位置P2に位置された状態を維持する(
図26中の領域D、領域E)。
このとき、外輪側ケージリング220の第1カム保持部123における第2開口幅変動部124bの作用によって第1カム110aの頭部部分が押圧され、これにより、第1カム110aが噛み合い方向に傾倒され噛み合い待機姿勢に変更される。外輪側ケージリング220における第2カム保持部125は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第2カム110bの姿勢は空転姿勢を保持する。
従って、セレクタブルクラッチ200の動作モードが、両方向フリーモード(ModeB2)から内輪105の外輪101に対する正転方向の相対回転を禁止する正転方向ロックモード(ModeB3)に切り替えられる。
【0065】
円筒カム151をさらに正転方向に回転させると、第1従動子265は第1従動節案内領域L1の第2直線部256cに沿って案内され、外輪側ケージリング220は第2軸方向位置P2に位置された状態を維持する(
図26中の領域F、領域G)。一方で、第2従動子275は、第2従動節案内領域L2の第2傾斜部257dに沿って案内され、第2従動節270及びこれに接続された内輪側ケージリング230が軸方向後方に向かって移動し(
図26中の領域F)、その後、第2従動子275が第3直線部257eに沿って案内されることで、内輪側ケージリング230が第1軸方向位置P1に位置された状態となる(
図26中の領域G)。
このとき、内輪側ケージリング230の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い方向に傾倒され噛み合い待機姿勢に変更される。内輪側ケージリング230の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は噛み合い姿勢を保持する。
従って、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、正転方向ロックモード(ModeB3)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモード(ModeB4)に切り替えられる。
【0066】
第2実施形態に係るセレクタブルクラッチについても、4つの動作モードを切替可能に構成されたものに限定されず、例えば両方向ロックモード、両方向フリーモード、及び、正転方向ロックモードまたは逆転方向ロックモードの3つの動作モードが切替可能に構成されたものであってもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
上記実施形態においては、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングが第1軸方向位置に位置されているときに、セレクタブルクラッチの動作モードが逆転方向ロックモードとされる構成について説明したが、セレクタブルクラッチの動作モードと、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの軸方向位置との関係は特に限定されるものではない。例えば、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングが第1軸方向位置に位置されているときに、セレクタブルクラッチの動作モードが正転方向ロックモード、両方向ロックモードあるいは逆転方向ロックモードとされるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100, 200 ・・・ セレクタブルクラッチ
101 ・・・ 外輪
102 ・・・ 外輪軌道面
105 ・・・ 内輪
106 ・・・ 内輪軌道面
110 ・・・ カム
110a ・・・ 第1カム
110b ・・・ 第2カム
115 ・・・ 付勢手段
120 ,220 ・・・ 外輪側ケージリング
121 ,221 ・・・ 本体部
122 ,222 ・・・ 外方フランジ部
222a ・・・ 凹溝
123 ・・・ 第1カム保持部
123a ・・・ ガイド空間部
123b ・・・ 第1姿勢固定用空間部
123c ・・・ 第2姿勢固定用空間部
124a ・・・ 第1開口幅変動部
124b ・・・ 第2開口幅変動部
125 ・・・ 第2カム保持部
126 ・・・ 内面溝部
127 ・・・ ガイド溝部
128 ・・・ スライド溝部
130 ,230 ・・・ 内輪側ケージリング
131 ,231 ・・・ 本体部
132 ・・・ 内方フランジ部
133 ・・・ 第1カム保持部
134 ・・・ 第2カム保持部
134a ・・・ ガイド空間部
134b ・・・ 第1姿勢固定用空間部
134c ・・・ 第2姿勢固定用空間部
135a ・・・ 第1開口幅変動部
135b ・・・ 第2開口幅変動部
136 ・・・ 外面溝部
137 ・・・ ガイド溝部
138 ・・・ スライド溝部
239 ・・・ 外方フランジ部
239a ・・・ 凹溝
140 ・・・ 位置規制用ケージリング
141 ・・・ 円環部
142 ・・・ 連結部
143 ・・・ ポケット部
145 ・・・ 外方突起部
146 ・・・ 内方突起部
150 ,250 ・・・ 切替機構
151 ,251 ・・・ 円筒カム
152 ・・・ 軸部
153 ・・・ 外方フランジ部
155 ,255 ・・・ カム溝
156a,256a ・・・ 第1直線部
156b,256b ・・・ 第1傾斜部
156c,256c ・・・ 第2直線部
157a,257a ・・・ 第1直線部
157b,257b ・・・ 第1傾斜部
157c,257c ・・・ 第2直線部
157d,257d ・・・ 第2傾斜部
157e,257e ・・・ 第3直線部
160 ,260 ・・・ 第1従動節
161 ・・・ 基体部
162 ・・・ 凹所
163 ・・・ 周壁部
164 ・・・ 外歯
165 ,265 ・・・ 第1従動子
266 ・・・ 係合部
267 ・・・ アーム部
268 ・・・ 軸受部
269 ・・・ 円筒カム挿通孔
170 ,270 ・・・ 第2従動節
171 ・・・ 基体部
172 ・・・ 延出部
173 ・・・ 内歯
175 ,275 ・・・ 第2従動子
180 ・・・ ケース
181 ・・・ 外筒部
182 ・・・ 内歯
185 ・・・ 内筒部
186 ・・・ 外歯
187 ・・・ 切欠部
190 ・・・ 止め輪
191 ・・・ 止め輪
C1 ・・・ 回転軸心
C2 ・・・ 回転駆動軸
L1 ・・・ 第1従動節案内領域
L2 ・・・ 第2従動節案内領域
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
位置規制用ケージリング140は、
図8A及び図8Bに示すように、軸方向に並設された一対の円環部141と、円環部141を所定間隔で軸方向に連結する複数の連結部142とからなり、隣接する連結部142間の空間により第1カム110a及び第2カム110bをそれぞれ一つずつ収容可能なポケット部143が構成されている。ポケット部143は、周方向に沿って等間隔に設けられている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
また、円筒カム151を逆転方向に回転させたときには、第1従動子165が
第1従動節案内領域L1の第1傾斜部156bに沿って案内され、第1従動節160及びこれに接続された外輪側ケージリング120が軸方向前方に向かって移動し(
図13中の領域D)、その後、第1従動子165が第1直線部156aに沿って案内されることで、
図16Aに示すように、外輪側ケージリング120が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域E)。一方で、第2従動子175は第2従動節案内領域L2の第2直線部157cに沿って案内され、内輪側ケージリング130が第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図13中の領域D、領域E)。
このとき、
図16Bに示すように、外輪側ケージリング120の第1カム保持部123における第2開口幅変動部124bの作用によって第1カム110aの頭部部分が押圧され、これにより、第1カム110aが噛み合い方向に傾倒される。外輪側ケージリング120における第2カム保持部125は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第2カム110bの姿勢は噛み合い待機姿勢を保持する。
これにより、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモード(ModeA3)に切り替えられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
円筒カム151を正転方向に回転させたときには、第1従動子165は、第1従動節案内領域L1の第2直線部156cに沿って案内され、外輪側ケージリング130は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図19中の領域B、領域C)。一方で、第2従動子175は、第2従動節案内領域L2の第1傾斜部157bに沿って案内され、
第2従動節170及びこれに接続された内輪側ケージリング130が軸方向前方に向かって移動し(
図19中の領域B)、その後、第2従動子175が第1直線部157aに沿って案内されることで、内輪側ケージリング130が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図13中の領域C)。これにより、第1カム110aは空転姿勢に保持され、第2カム110bは噛み合い待機姿勢から空転姿勢に傾倒され、従って、セレクタブルクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeA1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモード(ModeA2)に切り替えられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本実施形態の切替機構250における第1従動節260及び第2従動節270は、互いに同一の構成を有し、第2従動節270の構成については説明を省略する。
第1従動節260は、
図24にも示すように、係合部266と、軸受部268とを有する。
係合部266は、円環の一部を切り欠いたC字状をなすよう形成され、一対のアーム部267を有し、アーム部267が拡開するよう弾性的に変形されることで、外輪側ケージリング220の
第1従動節装着部に係合されるようになっている。第2従動節270の係合部は、内輪側ケージリング230の
第2従動節装着部に係合可能に構成される。
軸受部268は、係合部266の形状中心に対し径方向外方に延びるよう係合部266に連続して形成されており、円筒カム251が回転可能に挿通されるよう構成された円筒カム挿通孔269を有する。軸受部268には、従動子挿入孔が円筒カム挿通孔269の内周面に開口するよう形成されており、従動子挿入孔には、ロッド状の第1従動子265がその先端部が円筒カム挿通孔269の内周面より内方に突出するように配置される。第2従動節270には、ロッド状の第2従動子275がその先端部が円筒カム挿通孔の内周面より内方に突出するように配置される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
カム溝255においては、第1従動節案内領域L1における第1傾斜部256bと、第2従動節案内領域L2における第1傾斜部257b及び第2傾斜部257dとは、互いに周方向の位相をずらして形成されており、これにより、第1従動節260及び第2従動節270の各々を独立して軸方向に移動させることができるようになっている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
円筒カム251を軸方向前方側から見て時計方向(正転方向)に回転させたときには、
第1従動子265は第1従動節案内領域L1の第1直線部256aに沿って案内され、外輪側ケージリング220は第1軸方向位置P1に位置された状態を維持する(
図26中の領域B、領域C)。一方で、第2従動子275は、第2従動節案内領域L2の第1傾斜部257bに沿って案内され、
第2従動節270及びこれに接続された内輪側ケージリング230が軸方向前方に向かって移動し(
図26中の領域B)、その後、
第2従動子275が第2直線部257cに沿って案内されることで、内輪側ケージリング220が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図26中の領域C)。
このとき、内輪側ケージリング230の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い解除方向に傾倒され空転姿勢に変更される。内輪側ケージリング230の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は空転姿勢を保持する。
従って、セレクタブルクラッチ200の動作モードが、逆転方向ロックモード(ModeB1)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモード(ModeB2)に切り替えられる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
円筒カム251をさらに正転方向に回転させると、
第1従動子265が第1従動節案内領域L1の第1傾斜部256bに沿って案内され、
第1従動節260及びこれに接続された外輪側ケージリング220が軸方向前方に向かって移動し(
図26中の領域D)、その後、
第1従動子265が第2直線部256cに沿って案内されることで、外輪側ケージリング220が第2軸方向位置P2に位置された状態となる(
図26中の領域E)。一方で、
第2従動子275は第2従動節案内領域L2の第2直線部257cに沿って案内され、内輪側ケージリング230は第2軸方向位置P2に位置された状態を維持する(
図26中の領域D、領域E)。
このとき、外輪側ケージリング220の第1カム保持部123における第2開口幅変動部124bの作用によって第1カム110aの頭部部分が押圧され、これにより、第1カム110aが噛み合い方向に傾倒され噛み合い待機姿勢に変更される。外輪側ケージリング220における第2カム保持部125は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第2カム110bの姿勢は空転姿勢を保持する。
従って、セレクタブルクラッチ200の動作モードが、両方向フリーモード(ModeB2)から内輪105の外輪101に対する正転方向の相対回転を禁止する正転方向ロックモード(ModeB3)に切り替えられる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
円筒カム251をさらに正転方向に回転させると、第1従動子265は第1従動節案内領域L1の第2直線部256cに沿って案内され、外輪側ケージリング220は第2軸方向位置P2に位置された状態を維持する(
図26中の領域F、領域G)。一方で、第2従動子275は、第2従動節案内領域L2の第2傾斜部257dに沿って案内され、第2従動節270及びこれに接続された内輪側ケージリング230が軸方向後方に向かって移動し(
図26中の領域F)、その後、第2従動子275が第3直線部257eに沿って案内されることで、内輪側ケージリング230が第1軸方向位置P1に位置された状態となる(
図26中の領域G)。
このとき、内輪側ケージリング230の第2カム保持部134における第2開口幅変動部135bの作用によって第2カム110bの脚部部分が押圧され、これにより、第2カム110bが噛み合い方向に傾倒され噛み合い待機姿勢に変更される。内輪側ケージリング230の第1カム保持部133は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム110aの姿勢は噛み合い姿勢を保持する。
従って、
セレクタブルクラッチ200の動作モードが、正転方向ロックモード(ModeB3)から外輪101及び内輪105の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモード(ModeB4)に切り替えられる。