(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141455
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】誘電体導波路コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01P5/02 607
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053124
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】山本 大斗
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦史
(57)【要約】
【課題】軽量でフレキシブル、かつ低損失な誘電体導波路コネクタを提供する。
【解決手段】コアとクラッドを含む誘電体導波路コネクタであって、クラッドは、前記コアを取り囲み相手方の誘電体導波路コネクタとの接続面を含む本体部と、本体部から前記接続面から遠ざかる方向に延伸され、前記接続面から遠くなるほど細く形成され、前記コアを取り囲むテーパ部を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドを含む誘電体導波路コネクタであって、
前記クラッドは、
前記コアを取り囲み相手方の誘電体導波路コネクタとの接続面を含む本体部と、
前記本体部から前記接続面から遠ざかる方向に延伸され、前記接続面から遠くなるほど細く形成され、前記コアを取り囲むテーパ部を含む
誘電体導波路コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電体導波路コネクタであって、
前記テーパ部の先端の厚さが導波路を伝搬する電磁波の波長よりも小さい
誘電体導波路コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の誘電体導波路コネクタであって、
前記テーパ部の全長が導波路を伝搬する電磁波の波長よりも大きい
誘電体導波路コネクタ。
【請求項4】
請求項1に記載の誘電体導波路コネクタであって、
前記テーパ部は、
前記コアの側面のうち、誘電体導波路を伝搬する電磁波の偏波の電界分布方向と直交する側面の一部または全部を遮蔽する形状である
誘電体導波路コネクタ。
【請求項5】
コアと前記コアを取り囲むクラッドを含む誘電体導波路コネクタであって、
前記コアの誘電率は、
前記コアおよび前記クラッドを伝搬する電磁波の伝搬モードのスポットサイズが、誘電体導波路におけるスポットサイズと一致するように決められた誘電率である
誘電体導波路コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の誘電体導波路コネクタであって、
前記コアの誘電率は、
前記接続面に近づくにつれて大きくなり、
前記クラッドの誘電率は、
前記接続面に近づくにつれて、前記コアと前記クラッドの誘電率の比率を一定に保つように変化する
誘電体導波路コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載の誘電体導波路コネクタであって、
前記コアおよび前記クラッドは、
発泡材料である
誘電体導波路コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電体導波路同士を接続する誘電体導波路コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
第五世代移動通信システム(5G)においては、10Gb/sを超える高速無線通信を実現するために、広い帯域幅が確保できるミリ波帯が使用されている。第六世代移動通信システム(6G)においても、同様の理由で、ひきつづきミリ波帯の使用や、さらなる大容量通信を目指したサブテラヘルツ帯(100-300GHz)の活用も検討されている。このような周波数帯において、無線システムを実現するために必要となる送信機や受信機などのハードウェアを実現するためには、高周波化に伴う伝送線路の損失増大が大きな問題となる。例えば、ミリ波帯以下で通常用いられる同軸線路は、その損失が周波数の平方根に比例して増大するという特性を持つ。金属導波管は、同軸線路よりも高周波領域での損失は小さいものの、重く、曲げることが難しいことから、ハードウェア内部やハードウェア間の配線として使用するには不向きである。これらは、高周波帯になるほどアクティブデバイス(増幅器など)の特性も低下するという事実とあいまって、ミリ波帯以上におけるハードウェアの実現を困難にしている。
【0003】
そこで、近年、低損失な高周波信号の伝送媒体として、誘電体導波路(DWG)に注目が集まっている。DWGは、
図1に示すように、四角柱形状であってその長手方向に電磁波が伝搬するコア91と、コア91を取り囲む四角筒形状のクラッド92とからなる高周波媒体である。なお、コア91の形状は四角柱形状でなくてもよく、他の角柱形状、円柱形状であってもよい。クラッド92の形状は四角筒形状でなくてもよく、例えば角筒形状、円筒形状などであってもよい。また、DWGでは多くの場合クラッド92は空気であり、この場合クラッド92は決まった形状を持たない。
【0004】
コア91はクラッド92よりも誘電率(または比誘電率。以下では誘電率を代表として記載する)が大きい。これにより、コア91近傍に高周波を閉じこめて長手方向に伝搬させる、すなわち、伝搬モードを形成する、という特性を持つ。DWGは、金属を用いないため導体損失が無く、本質的に同軸線路や導波管よりも低損失となる。また、金属導波管よりも軽量であり、曲げることも可能である。実際、DWGを用いたミリ波帯以上の周波数帯の無線用ハードウェアが報告され始めている(たとえば、非特許文献1)。
【0005】
DWGを、従来の同軸線路同様に広く用いられるようにするためには、接続部品、すなわちコネクタの開発が必須である。従来のDWG同士を接続するコネクタとして、非特許文献2が開示されている。非特許文献2においては、DWGをいったん金属導波管に変換し、金属導波管同士を、金属導波管のコネクタ(これは同軸線路のコネクタ同様に、すでに広く普及している)を用いて接続する。DWGと金属導波管との間の電磁波のモード変換に伴う損失は、変換部の形状を工夫することにより小さくすることができるため、この方法により、低損失なコネクタが実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T W Brown et al., “A 50-Gb/s 134-GHz 16-QAM 3-m Dielectric Waveguide Transceiver System Implemented in 22-nm FinFET CMOS,” IEEE Solid-State Circuits Letters (SSC-L), vol. 4, pp. 206-209, Oct. 2021.
【非特許文献2】G E. Ponchak et al., “Design and Analysis of Transitions from Rectangular Waveguide to Layered Ridge Dielectric Waveguide,” IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques (T-MTT), vol. 44, no. 7, pp. 1032-1040, Jul. 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2のコネクタでは、金属部品である金属導波管を用いるため、重量は大きくなり、また、曲げるのも難しいという金属導波管の課題を引き継いでしまう。
【0008】
そこで本開示では、軽量でフレキシブル、かつ低損失な誘電体導波路コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の誘電体導波路コネクタは、コアとクラッドを備える。
【0010】
クラッドは、コアを取り囲み相手方の誘電体導波路コネクタとの接続面を含む本体部と、本体部から接続面から遠ざかる方向に延伸され、接続面から遠くなるほど細く形成され、コアを取り囲むテーパ部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の誘電体導波路コネクタ9によれば、軽量でフレキシブル、かつ低損失な誘電体導波路コネクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】新たに開発された誘電体導波路コネクタの概形を示す断面図。
【
図3】新たに開発された誘電体導波路とコネクタにおける電界分布の例を示す図。
【
図4】実施例1の誘電体導波路コネクタの概形を示す断面図。
【
図5】実施例1の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図6】
図2のコネクタと本実施例のコネクタとの実行誘電率を比較する図。
【
図7】
図2のコネクタと本実施例のコネクタとのスポットサイズを比較する図。
【
図8】
図2のコネクタと本実施例のコネクタの界面における反射率を示す図。
【
図9】
図2のコネクタと本実施例のコネクタの界面における透過率を示す図。
【
図10】変形例1の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図11】変形例2の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図12】変形例3の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図13】変形例4の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図14】変形例5の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図15】変形例6の誘電体導波路コネクタの一部を拡大した斜視図。
【
図16】解析モデルとして用いた誘電体導波路コネクタの概形を示す斜視図。
【
図17】解析モデルである誘電体導波路コネクタの反射特性を示す図。
【
図18】解析モデルである誘電体導波路コネクタの透過特性を示す図。
【
図19】実施例2の誘電体導波路コネクタの概形を示す断面図。
【
図20】実施例2の誘電体導波路とコネクタにおける電界分布の例を示す図。
【
図21】変形例7の誘電体導波路コネクタの概形を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来技術とは区別して議論すべき対象として、濱田らによる
図2に示すDWG同士を接続する誘電体導波路コネクタ9がある。誘電体導波路コネクタ9は、誘電体導波路(DWG)と同様にコア91、クラッド92を備える。ただし同図におけるDWGのクラッドは空気であるため、DWG(領域P)においてクラッドは図示されていない。
【0014】
コネクタ部分(領域Q)におけるクラッド92は、コア91を取り囲む。コア91およびクラッド92の端面Aは、相手方の誘電体導波路コネクタ9との接続面となっている(以下、接続面Aとも呼称する)。クラッド92の外周は被覆93でおおわれており、被覆93にネジやテープ、プラスチップ部品等による接続用部品を具備させることにより、二つの誘電体導波路コネクタ9の接続面Aを直接接続させる構成となっている。
【0015】
ここで、クラッド92が薄いと、接続用部品や被覆の誘電率がコア91を伝搬する電磁波に擾乱を与え、誘電体導波路コネクタ9の結合損失が生じる原因となってしまうが、これはクラッド92を十分に厚くすることにより解決可能である。以下、クラッド92は、十分に厚さがあるものとして議論を進める。
【0016】
同図において、誘電体導波路コネクタ9の損失を決めるのは、同図に点線で示した、DWGと誘電体導波路コネクタ9との境界面における、電磁波の反射および放射である。このことを、
図3を用いて説明する。同図の実線のグラフは誘電体導波路(DWG、同図のPの領域)の伝搬モードの電界強度分布、同図の長破線のグラフは誘電体導波路コネクタ9(同図のQの領域)の伝搬モードの電界強度分布である。
【0017】
同図に示すように、DWGでは、コア91近傍に電界分布が局在しているが、誘電体導波路コネクタ9では、電界のクラッド92への染み出しが多くなる。これはDWGの場合と比較して誘電体導波路コネクタ9の場合のほうが、コア91とクラッド92との誘電率の差が小さいためである。すなわち、DWGと誘電体導波路コネクタ9とで、伝搬モードの実行誘電率およびスポットサイズ(モード強度分布最大値に対する1/e幅)が一致しない。これにより、DWGと誘電体導波路コネクタ9との界面で反射および放射が生じ、誘電体導波路コネクタ9の損失が発生してしまう。
【0018】
そこで以下の実施例では、DWGとコネクタとの界面で発生する損失を低減することができる誘電体導波路コネクタを提供することを目的とする。以下、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0019】
以下、前述した課題を解決するコネクタとして二種類のコネクタを開示する。
【0020】
・コネクタの幾何学的な形状に工夫を加えたコネクタ(実施例1およびその変形例)
・コネクタの材質(誘電率)に工夫を加えたコネクタ(実施例2およびその変形例)
【実施例0021】
以下、
図4を参照して実施例1の誘電体導波路コネクタの構造を説明する。
図4は、本実施例の誘電体導波路コネクタ1を相手方の誘電体導波路コネクタ1と接続した状態における長手方向断面図である。同図に示すように、本実施例の誘電体導波路コネクタ1はコア91と、クラッド12と、被覆93を含む。コア91は、四角柱形状であってその長手方向に電磁波が伝搬する。クラッド12は、コア91を取り囲む四角筒形状であって相手方の誘電体導波路コネクタ1との接続面Aを含む本体部122と、本体部122から接続面Aから遠ざかる方向に延伸され、接続面Aから遠くなるほど細く形成され、コア91を取り囲むテーパ部121を含む。なお、コア91は、四角柱形状でなくてもよく、他の角柱形状、円柱形状であってもよい。本体部122は、四角筒形状でなくてもよく、コア91と嵌合するような角筒形状、円筒形状であってもよい。クラッド12の本体部122の外周は
図2で説明した誘電体導波路コネクタと同様に被覆93でおおわれており、被覆93にネジやテープ、プラスチップ部品等による接続用部品を具備させることにより、二つの誘電体導波路コネクタ9の接続面Aを直接接続させる構成となっている。
【0022】
なお、テーパ部121の先端の厚さが導波路を伝搬する電磁波の波長よりも小さくなるように設計すればクラッド12が出現することに伴う電磁波への攪乱が小さくなるため好適である。また、テーパ部121の全長が導波路を伝搬する電磁波の波長よりも大きくなるように設計すればクラッド12が出現することに伴う電磁波への攪乱が小さくなるため好適である。
【0023】
図5は、テーパ部121を拡大し、被覆93を省略して示す斜視図である。同図において、コア91のテーパ部121に覆われた部分の概形など隠れた輪郭の一部を破線で示した。同図に示すようにテーパ部121は、誘電体導波路コネクタ1の断面構造が連続的に滑らかに変化するように設計される。より詳細には、テーパ部121は、コア91の全ての側面を取り囲む錘台かつ筒形状であり、接続面Aに近づくにつれてクラッド12全体が太くなるようにテーパ部121の全ての側面が傾斜する構造となっている。
【0024】
テーパ構造の効果について、
図6、
図7を用いて説明する。
図6、
図7に
図2のコネクタと本実施例のコネクタとの実行誘電率及びスポットサイズの位置による変化を示す。横軸はDWGの長手方向の位置を示し、t
bはテーパ部121の先端の座標、t
eはテーパ部121の末端(
図2のコネクタの場合DWGとコネクタの境界位置)の座標をそれぞれ示す。
図2のコネクタ(テーパ構造なし)の場合は、DWGとコネクタの界面で、実効誘電率とスポットサイズが不連続に変化していることがわかる。具体的には、DWGとコネクタの境界位置(
図6、
図7のt
e参照)において、実効誘電率、スポットサイズともに不連続な増加がみられる(
図6のK
DWG、K
CNCT、
図7のS
DWG、S
CNCT、実線で示したグラフを参照)。典型的には、一般によく用いられる空気をクラッドとするDWGに対して、空気よりも誘電率の高いクラッドを具備するコネクタ側のほうが実効誘電率、スポットサイズともに大きくなっている。一方、本実施例のコネクタのようにテーパ部121を形成した場合、実効誘電率、スポットサイズは連続的に滑らかに変化するようになる(
図6、
図7、t
b-t
e間の長破線で示したグラフ参照)。
【0025】
実効誘電率、スポットサイズは連続的に滑らかに変化するようにコネクタを構成したことに伴い、界面で生じる電磁波の反射が低減される。
図8に
図2のコネクタと本実施例のコネクタの界面における反射率を示す。
図2のコネクタの反射率(実線のグラフ)に比べ、本実施例のコネクタでは反射率が大きく低減される(長破線のグラフ)。また、
図9に、コネクタの透過率(通過損失の逆数)を示す。本実施例のコネクタは、反射による損失が低減されるため、透過率が大きくなる。
【0026】
以下、実施例1の変形例として、テーパ部121のバリエーションについて説明する。
図5に示したようにテーパ部121がコア91の全ての側面を取り囲む錘台形状であって、接続面Aに近づくにつれてクラッド12全体が太くなるようにテーパ部121の全ての側面が傾斜する構造は、低損失化のためには極めて有効ではある。しかし、クラッド12の加工にコストがかかる場合が多い。そこで、より簡易なテーパ構造を用いた変形例について説明する。
【0027】
[変形例1]
DWGを伝搬する電磁波のモードには、偏波(TM、TEモード)がある。具体的には水平方向に電界が広がるTEモード、鉛直方向に電界が広がるTMモードとがある。DWGを用いた通信においては、片方の偏波のみを通信に用いることが多い。片方の偏波のみを対象とする場合には、テーパ部は、コアの側面のうち、誘電体導波路を伝搬する電磁波の偏波の電界分布方向と直交する側面の一部または全部を遮蔽する形状とすればよい。
【0028】
図10に変形例1の誘電体導波路コネクタ1aの一部を拡大した斜視図を示す。本変形例の誘電体導波路コネクタ1aは、DWGの鉛直方向に電界が広がるTMモードに適した構造であり、同図に示したようにテーパ部121aをコア91の上下に設けている。
【0029】
具体的には、コア91は四角柱形状であり、コア91は四角筒形状の本体部122内に挿通されて延伸し、その一方の端面は接続面Aの一部を形成する。また本体部122の一方の端面は接続面Aの一部を形成する。コア91は本体部122外部に、接続面Aから遠ざかる方向に延伸されてDWGを構成する。
【0030】
テーパ部121aは接続面Aから遠ざかる方向に本体部122から延伸される四角錘形状である。テーパ部121aはコア91の上面側と下面側にそれぞれ設けられており、コア91上面側のテーパ部121aのコア91の上面と対向する側面はコア91の上面と平行かつコア91の上面に接触している。コア91下面側のテーパ部121aのコア91の下面と対向する側面はコア91の下面と平行かつコア91の下面に接触しており、2つのテーパ部121aによって、コア91を挟持するように形成されている。
【0031】
上述したようにDWGの上下にテーパ部121aを設けることで、TMモードがDWGからコネクタに伝搬する間に段階的にクラッドの影響が生じることにより、反射および放射損失が抑制される。テーパ部121aの先端部の縦方向および横方向の幅は理論上0であり、本体部122に近づくにつれ徐々に大きくなっていくため、DWGを伝搬するモードは、非常に滑らかにコネクタを伝搬するモードに変換される。
【0032】
変形例1の誘電体導波路コネクタ1aによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0033】
[変形例2]
変形例1のようにとがった先端部の加工にはコストがかかるため、より製作が簡単な形状としてもよい。変形例2の誘電体導波路コネクタは、テーパ部の形状の他のバリエーションであり、変形例1の誘電体導波路コネクタ1aよりも製作コストを低減したものである。
【0034】
図11に変形例2の誘電体導波路コネクタ1bの一部を拡大した斜視図を示す。同図に示すように、変形例2の誘電体導波路コネクタ1bのテーパ部121bの先端は鉛直方向に所定の幅(厚さ)を有する。その他の形状については、変形例1と同様である。
【0035】
変形例2の誘電体導波路コネクタ1bによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0036】
[変形例3]
変形例3の誘電体導波路コネクタは、テーパ部の形状の他のバリエーションであり、変形例1の誘電体導波路コネクタ1aよりも製作コストを低減したものである。
【0037】
図12に変形例3の誘電体導波路コネクタ1cの一部を拡大した斜視図を示す。同図に示すように、変形例3の誘電体導波路コネクタ1cのテーパ部121cの先端は水平、鉛直方向に所定の幅(厚さ)を有し、錘台として形成される。その他の形状については、変形例1と同様である。
【0038】
テーパ部121b、121c先端の幅、厚さについては、導波路を伝搬する電磁波の波長よりも十分小さくなるように設計すれば、電磁波から見ればほとんど意味を持たないため、変形例2、変形例3のテーパ部の形状であっても、テーパ部先端の幅、厚さについての条件を満たすのであれば、変形例1と同じ効果が得られる。
【0039】
変形例3の誘電体導波路コネクタ1cによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0040】
[変形例4]
変形例4の誘電体導波路コネクタは、テーパ部の形状の他のバリエーションであり、変形例1の誘電体導波路コネクタ1aよりも製作コストを低減したものである。
【0041】
図13に変形例4の誘電体導波路コネクタ1dの一部を拡大した斜視図を示す。同図に示すように、変形例4の誘電体導波路コネクタ1dのテーパ部121dの鉛直方向の幅(厚さ)は、先端から末端まで等しい幅で形成され、コア91の上面と対向する面を底面とた三角柱として形成される。その他の形状については、変形例1と同様である。
【0042】
変形例4の誘電体導波路コネクタ1dによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0043】
[変形例5]
変形例5の誘電体導波路コネクタは、テーパ部の形状の他のバリエーションであり、変形例1の誘電体導波路コネクタ1aよりも製作コストを低減したものである。
【0044】
図14に変形例5の誘電体導波路コネクタ1eの一部を拡大した斜視図を示す。同図に示すように、変形例5の誘電体導波路コネクタ1eのテーパ部121eの水平方向の幅(厚さ)は、先端から末端まで等しい幅で形成され、コア91の上面と対向する面を側面とた三角柱として形成される。その他の形状については、変形例1と同様である。
【0045】
変形例5の誘電体導波路コネクタ1eによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0046】
[変形例6]
変形例6の誘電体導波路コネクタは、テーパ部の形状の他のバリエーションであり、変形例1の誘電体導波路コネクタ1aよりも製作コストを低減したものである。
【0047】
図15に変形例6の誘電体導波路コネクタ1fの一部を拡大した斜視図を示す。同図に示すように、変形例6の誘電体導波路コネクタ1fのテーパ部121fの末端の水平方向の幅(厚さ)は、コア91よりも幅広に形成され、テーパ部121fは全体として扁平な錘台として形成される。その他の形状については、変形例1と同様である。
【0048】
変形例4、5、6においても、テーパ部先端の幅、厚さについての条件を満たすのであれば、変形例1と同じ効果が得られる。
【0049】
変形例6の誘電体導波路コネクタ1fによれば、より簡易にテーパ部を形成することができ、反射および放射損失を抑制することができる。
【0050】
[電磁界解析を用いた計算結果]
以下、実施例1およびその変形例の誘電体導波路コネクタの有用性を定量的に示すために、電磁界解析を用いた計算結果について述べる。
図16に、変形例4の誘電体導波路コネクタ1dにおけるテーパ部121dと類似の形状のテーパ部121gを備える誘電体導波路コネクタ1gの解析モデルを示す。ただしこの解析モデルでは、テーパ部121gの末端の水平方向の幅(厚さ)は、コア91の幅よりも幅広に形成されている。DWGの断面は26~40GHz(WR28導波管帯域)を伝搬可能なサイズとした。テーパ部121gの電磁波伝搬方向の長さLを設計パラメータとして、誘電体導波路コネクタ1gの反射特性、透過特性を電磁界解析により計算した。
【0051】
計算結果を
図17、
図18に示す。
図17は、解析モデルである誘電体導波路コネクタ1gの反射特性を示すグラフである。
図18は、解析モデルである誘電体導波路コネクタ1gの透過特性を示すグラフである。長破線のグラフは解析モデルの誘電体導波路コネクタ1g(L=40mm)の特性を示すグラフである。長一点鎖線のグラフは解析モデルの誘電体導波路コネクタ1g(L=5.0mm)の特性を示すグラフである。実線のグラフは
図2の誘電体導波路コネクタの特性を示すグラフである。
【0052】
図2のコネクタに比べ、テーパを導入することで大きく反射特性が改善されていることがわかる。30GHzにおいて、テーパ長Lを5.0mmとした場合に8dBの改善、テーパ長Lを40mmとした場合に22dBの改善が得られている。また、透過特性についても、テーパを導入することで、損失低減、平坦性の向上が達成されている。これらのことから、コネクタで生じる反射を抑制し、損失を低減する効果があることが定量的に示された。
一般に、このように誘電率が徐々に変化する物質は、発泡体のように空気を含む物体において、その発泡率を変化させることにより実現することができる。したがって、変形例7の構成を実現するためには、コア21a(特にコネクタ部)、クラッド22aに発泡材料を使用すれば好適である。
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施例、変形例に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
なお、本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
本開示において使用する「AとBが異なる」という記載は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。