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特開2024-141472電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141472
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/63 20210101AFI20241003BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241003BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20241003BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20241003BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 1/23 20210101ALN20241003BHJP
【FI】
C25B9/63
H01M4/86 M
H01M4/86 B
C25B9/23
C25B9/77
C25B13/02 302
C25B15/08 302
C25B11/031
C25B1/23
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053149
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西田 徹志
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄太
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA23
4K011BA04
4K011DA11
4K021AA09
4K021BC01
4K021CA02
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB04
4K021DB16
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC15
4K021EA02
4K021EA03
4K021EA07
5H018AA06
5H018DD08
5H018EE17
(57)【要約】
【課題】電気化学セルの積層方向の薄型化と、電気化学装置の組付けの容易化を図ることができる電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置を提供する。
【解決手段】電極構造体は、多孔質素材から成るシート状の電極ベース材20を備える。電極ベース材20には、電極機能部21と、シール機能部22と、が設けられる。電極機能部21は、拡散層及び触媒層を有する。シール機能部22は、電極機能部21の少なくとも外周領域に配置され、かつ電極ベース材20にエラストマーが含浸されて形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質素材から成るシート状の電極ベース材を備え、
前記電極ベース材には、
拡散層及び触媒層を有する電極機能部と、
前記電極機能部の少なくとも外周領域に配置され、かつ当該電極ベース材にエラストマーが含浸されて成るシール機能部と、が設けられていることを特徴とする電気化学セルの電極構造体。
【請求項2】
前記シール機能部は、前記電極ベース材に重ねられて、前記電極機能部との間で電気化学反応流体の流路を形成するセパレータ、若しくは、当該セパレータの保持枠に当接可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セルの電極構造体。
【請求項3】
前記電極ベース材の外縁部の少なくとも一部には、前記電極機能部と電気的に導通し、かつ、前記エラストマーが含浸されていない通電部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セルの電極構造体。
【請求項4】
シート状の一対の電極構造体と、
一対の前記電極構造体の間に配置され、イオンの透過を許容する電解質膜と、
各前記電極構造体の前記電解質膜の存在する側と逆側の面に重ねて配置され、前記電極構造体との間で電気化学反応流体の流路を形成する一対のセパレータと、を備え、
一対の前記電極構造体は、
多孔質素材から成るシート状の電極ベース材を備え、
前記電極ベース材には、
拡散層及び触媒層を有する電極機能部と、
前記電極機能部の少なくとも外周領域に配置され、かつ当該電極ベース材にエラストマーが含浸されて成るシール機能部と、が設けられ、
各前記電極構造体の前記シール機能部は、前記セパレータ、若しくは、当該セパレータの保持枠に当接していることを特徴とする電気化学セル。
【請求項5】
請求項4に記載の複数の前記電気化学セルと、
複数の前記電気化学セルを積層方向両側から挟み込む一対の端面板と、
一対の前記端面板を近接方向に締め込んで、複数の前記電気化学セルを相互に固定する締結部材と、を備えていることを特徴とする電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解装置や燃料電池等の電気化学装置として、複数の電気化学セルを積層したスタックを用い、ステック内の各電気化学セルによって物質の電解や発電を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電気化学装置は、二酸化炭素の電解装置であり、以下の構造の電気化学セルが用いられている。
電気化学セルは、アノード電極及びカソード電極と、これらの電極の間に配置される電解質膜と、各電極の電解質膜の存在する側と逆側の面に重ねて配置されるセパレータと、を備えている。両電極と電解質膜は一体化され、その状態で周域を保持枠によって保持されている。一方のセパレータとアノード電極の間にはアノード溶液流路が形成され、他方のセパレータとカソード電極の間にはCOガス流路が形成されている。また、アノード電極とカソード電極は電源に接続されている。アノード溶液流路には水を含むアノード溶液が流され、COガス流路には二酸化炭素ガスが流される。
【0004】
この電気化学セルでは、アノード電極とカソード電極に電源の電圧が印加されると、アノード電極では、アノード溶液中の水が酸化されて酸素ガスと水素イオンを発生する。このとき発生した水素イオンは電解質膜を透過してカソード電極側に進む。カソード電極では、COガス流路中の二酸化炭素の還元反応によって一酸化炭素を生成するとともに、電解質膜を透過した水素イオンと反応して水を生成する。カソード電極で生成された一酸化炭素は外部の排出通路を通して取り出される。
なお、この種の電気化学セルでは、電極と電解質膜の周域を保持する保持枠と、隣接するセパレータとの間に、両者の間を密閉するためのエラストマー製のシール部が設けられている。電気化学セルは、これによって溶液流路やガス流路からの溶液やガスの漏出が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-141239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した電気化学セルは、流路の周域から流体が外部に漏出するのを防止するために、エラストマー製のシール部が設けられている。エラストマー製のシール部は、流体の漏出を規制するために相手当接部材側に向けて膨出して形成され、相手当接部材が押し付けられることによって押し潰され、その状態でシール機能を発揮する。上述した電気化学セルは、シール部がセルの積層方向に膨出するように形成されることから、電気化学セルの積層方向の厚みが厚くなり易い。
【0007】
また、上述した電気化学セルは、エラストマー製のシール部がセルの積層方向に膨出して形成されているため、積層した複数の電気化学セルを積層方向で締結固定する際に各シール部の合計潰れ量が大きくなる。このため、電気化学装置の組付時に、複数の電気化学セルを強固に締結することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、電気化学セルの積層方向の薄型化と、電気化学装置の組付けの容易化を図ることができる電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置を提供しようとするものである。そして、本発明は、延いては気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気化学セルの電極構造体、電気化学セル、及び、電気化学装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明の一態様の電気化学セルの電極構造体は、多孔質素材から成るシート状の電極ベース材(例えば、実施形態の電極ベース材20)を備え、前記電極ベース材には、拡散層及び触媒層を有する電極機能部(例えば、実施形態の電極機能部21)と、前記電極機能部の少なくとも外周領域に配置され、かつ当該電極ベース材にエラストマーが含浸されて成るシール機能部(例えば、実施形態のシール機能部22)と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本態様の電気化学セルは、多孔質素材から成る電極ベース材に、電極機能部と、電極機能部の少なくとも外周領域を取り囲むシール機能部が設けられている。そして、シール機能部は、電極ベース材の多孔質素材にエラストマーを含浸させて構成されている。このため、シール機能部のエラストマーは、電極ベース材の多孔質素材によって支持される。したがって、シール機能部は、積層方向で他部材に押し付けられても潰れにくいため、シール部を予め積層方向に大きく膨出させておく必要がない。よって、本態様の電気化学セルを採用した場合には、電気化学セルを積層方向に薄型化できるようになるとともに、電気化学装置の組付時に、複数の電気化学セルを容易に締結固定することが可能になる。
【0011】
前記シール機能部は、前記電極ベース材に重ねられて、前記電極機能部との間で電気化学反応流体の流路を形成するセパレータ(例えば、実施形態の第1セパレータ13、第2セパレータ14)、若しくは、当該セパレータの保持枠(例えば、実施形態の保持枠30)に当接可能とされるようにしても良い。
【0012】
この場合、電極構造体のシール機能部が隣接するセパレータ、若しくは、その保持枠に当接するため、セパレータと電極機能部の間の流路から電気化学反応流体が外部に漏れ出るのを電極構造体のシール機能部によって防止することができる。
【0013】
前記電極ベース材の外縁部の少なくとも一部には、前記電極機能部と電気的に導通し、かつ、前記エラストマーが含浸されていない通電部(例えば、実施形態の通電部40)が配置されるようにしても良い。
【0014】
この場合、複雑な通電構造を追加することなく、電極構造体の外縁部の通電部を通して、電極構造体の電極機能部を電源回路等の外部の電気回路に接続することができる。
【0015】
本発明の一態様の電気化学セルは、シート状の一対の電極構造体(例えば、実施形態の電極構造体11A,11B)と、一対の前記電極構造体の間に配置され、イオンの透過を許容する電解質膜(例えば、実施形態の電解質膜12)と、各前記電極構造体の前記電解質膜の存在する側と逆側の面に重ねて配置され、前記電極構造体との間で電気化学反応流体の流路(例えば、実施形態のアノード側流路15、カソード側流路16)を形成する一対のセパレータ(例えば、実施形態の第1セパレータ13、第2セパレータ14)と、を備え、一対の前記電極構造体は、多孔質素材から成るシート状の電極ベース材(例えば、実施形態の電極ベース材20)を備え、前記電極ベース材には、拡散層及び触媒層を有する電極機能部(例えば、実施形態の電極機能部21)と、前記電極機能部の少なくとも外周領域に配置され、かつ当該電極ベース材にエラストマーが含浸されて成るシール機能部(例えば、実施形態のシール機能部22)と、が設けられ、各前記電極構造体の前記シール機能部は、前記セパレータ、若しくは、当該セパレータの保持枠(例えば、実施形態の保持枠30)に当接していることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様の電気化学装置は、複数の前記電気化学セルと、複数の前記電気化学セルを積層方向両側から挟み込む一対の端面板(例えば、実施形態の端面板2)と、一対の前記端面板を近接方向に締め込んで、複数の前記電気化学セルを相互に固定する締結部材(例えば、実施形態の締結部材3)と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気化学セルの積層方向の薄型化と、電気化学装置の組付けの容易化を図ることができる。そして、本発明を採用することにより、気候変動の緩和または影響軽減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の電気化学装置の斜視図である。
図2】第1実施形態の電気化学セルの分解斜視図である。
図3】第1実施形態の電気化学セルの一部の分解正面図である。
図4図2のIV-IV断面に対応する断面図である。
図5図2のV-V断面に対応する断面図である。
図6】第2実施形態の電気化学セルの一部の分解正面図である。
図7】第2実施形態の電気化学セルの第1実施形態の図4に対応する断面図である。
図8】第2実施形態の電気化学セルの第1実施形態の図5に対応する断面図である。
図9】第3実施形態の電気化学セルの一部の分解正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0020】
図1は、本実施形態の電気化学装置の斜視図である。本実施形態の電気化学装置は、二酸化炭素を一酸化炭素等の炭素化合物に電解する電解装置1である。
電解装置1は、厚み方向に積層された複数の電気化学セル10(110,210)と、複数の電気化学セル10(110,210)を積層方向両側から挟み込む一対の端面板2と、一対の端面板2を近接方向に締め込んで、複数の電気化学セル10(110,210)を相互に固定する締結部材3(例えば、ボルト及びナット)と、を備えている。
【0021】
<第1実施形態>
図2は、本実施形態の電気化学セル10の分解斜視図であり、図3は、電気化学セル10の一部の分解正面図である。また、図4は、図2のIV-IV断面に対応する断面を示す図であり、図5は、図2のV-V断面に対応する断面を示す図である。
電気化学セル10は、シート状の一対の電極構造体11A,11Bと、一対の電極構造体11A,11Bの間に配置される電解質膜12と、一方の電極構造体11Aに積層方向の一側で対向する第1セパレータ13と、他方の電極構造体11Bに積層方向の他側で対向する第2セパレータ14と、を備えている。
本実施形態では、電極構造体11A,11B、電解質膜12、第1セパレータ13、及び、第2セパレータ14は、いずれも正面視形状が横長の長方形状に形成されている。ただし、これらの形状はこの形状に限定されない。
【0022】
一方の電極構造体11Aはアノード電極を構成し、他方の電極構造体11Bはカソード電極を構成している。一方の電極構造体11Aと他方の電極構造体11Bは、図示しない電源のプラス電極とマイナス電極に夫々接続されている。電極構造体11A,11Bの詳細構造については後に詳述する。
【0023】
電解質膜12は、アノード電極(一方の電極構造体11A)とカソード電極(他方の電極構造体11B)の間でイオンの透過を許容する固体高分子膜等の膜材である。
【0024】
第1セパレータ13は、一方の電極構造体11Aの電解質膜12の存在する側と逆側の面に重ねて配置されている。第1セパレータ13は、一方の電極構造体11Aとの間で電気化学反応流体(例えば、水を含むアノード溶液)の流れる流路15を形成する。第1セパレータ13と一方の電極構造体11Aの間に形成されるこの流路15については、以下、「アノード側流路15」と称する。
【0025】
第1セパレータ13の幅方向の一側には、アノード側流路15にアノード溶液等の流体を導入する流体導入口17iが形成されている。第1セパレータ13の幅方向の他側には、アノード側流路15から排出された流体を酸素等の生成物とともに外部に排出する流体排出口17oが形成されている。流体導入口17iと流体排出口17oは、いずれも第1セパレータ13を厚み方向に貫通している。
【0026】
第1セパレータ13に積層される他の部材の流体導入口17iと流体排出口17oに夫々重なる位置には、同様の貫通口T1,T3が形成されている。このため、積層された複数の電気化学セル10の各アノード側流路15には、貫通口T1と流体導入口17iを通して並列に流体が導入される。また、積層された複数の電気化学セル10の各アノード側流路15からは、流体排出口17oと貫通口T3を通して流体と生成物が外部に排出される。
【0027】
第2セパレータ14は、他方の電極構造体11Bの電解質膜12の存在する側と逆側の面に重ねて配置されている。第2セパレータ14は、他方の電極構造体11Bとの間で電気化学反応流体(例えば、二酸化炭素ガス)の流れる流路16を形成する。第2セパレータ14と他方の電極構造体11Bの間に形成されるこの流路16については、以下、「カソード側流路16」と称する。
【0028】
第2セパレータ14の幅方向の一側には、カソード側流路16に二酸化炭素ガス等の流体を導入する流体導入口18iが形成されている。第2セパレータ14の幅方向の他側には、カソード側流路16から排出された流体を一酸化炭素等の生成物とともに外部に排出する流体排出口18oが形成されている。流体導入口18iと流体排出口18oは、いずれも第2セパレータ14を厚み方向に貫通している。
【0029】
第2セパレータ14に積層される他の部材の流体導入口18iと流体排出口18oに夫々重なる位置には、同様の貫通口T2,T4が形成されている。このため、積層された複数の電気化学セル10の各カソード側流路16には、貫通口T2と流体導入口18iを通して並列に流体が導入される。また、積層された複数の電気化学セル10の各カソード側流路16からは、流体排出口18oと貫通口T4を通して流体と生成物が外部に排出される。
【0030】
つづいて、電極構造体11A,11Bの詳細構造について説明する。
各電極構造体11A,11Bは、カーボン不織布等の多孔質素材から成るシート状の電極ベース材20を備えている。電極ベース材20は、電解質膜12と同サイズの長方形状に形成されている。電極ベース材20には、拡散層及び触媒層(不図示)を有する電極機能部21と、電極機能部21の外周領域に配置されたシール機能部22と、が設けられている。シール機能部22は、多孔質素材から成る電極ベース材20の外周領域に、ゴム等のエラストマーが含浸されて形成されている。シール機能部22のエラストマーは、電極機能部21の外周部と、貫通口T1,R2,T3,T4の各外周部を覆うように電極ベース材20に含浸されている。
なお、本実施形態の電極構造体11A,11Bと電解質膜12は、電極構造体11A,11Bが電解質膜12に直接接合された膜電極複合体とされている。ただし、電極構造体11A,11Bは電解質膜12と別構造として用いることも可能である。
【0031】
電極ベース材20の外周領域にエラストマーが含浸されたシール機能部22は、積層方向の端面において、隣接する第1セパレータ13や第2セパレータ14に当接可能とされている。各電極構造体11A,11Bのシール機能部22は、後述する電解装置1の組付時に、積層方向で隣接する第1セパレータ13や第2セパレータ14の外周領域に押し付けられる。これにより、アノード側流路15の外周領域やカソード側流路16の外周領域がシール機能部22によってシールされるとともに、各貫通口T1,T2,T3,T4の外周領域もシール機能部22によってシールされる。
【0032】
次に、電解装置1の組付けについて説明する。
予め、複数の電気化学セル10の構成部材(電解質膜12と電極構造体11A,11Bから成る膜電極複合体、第1セパレータ13、及び、第2セパレータ14)を用意しておく。この状態において、第1セパレータ13、膜電極複合体、第2セパレータ14の順に積層した電気化学セル10を、同様に構成部材を積層した電気化学セル10に重ね合わせる。この状態において、積層方向の端部に一対の端面板2(図1参照)を配置し、その一対の端面板2を相互に近接する方向に締結部材3によって締め込む。
この結果、電解装置1の各電気化学セル10は、膜電極複合体の各電極構造体11A,11Bのシール機能部22が隣接するセパレータに押し付けられる。この結果、各電気化学セル10の各流路からの流体の漏出は防止されるようになる。
【0033】
以上のように、本実施形態の電極構造体11A,11Bは、多孔質素材から成る電極ベース材20に電極機能部21とシール機能部22が設けられている。そして、シール機能部22は、電極機能部21の外周領域を取り囲む領域に配置され、かつ電極ベース材20の多孔質素材にエラストマーを含浸させて構成されている。本実施形態の電極構造体11A,11Bは、シール機能部22のエラストマーが電極ベース材20の多孔質素材によって支持されるため、シール機能部22が積層方向で他部材に押し付けられても潰れにくく、かつ、相手部材に確実に密接する。このため、電極構造体11A,11Bは、シール機能部22を予め積層方向に大きく膨出させておく必要がない。
したがって、本実施形態の電極構造体11A,11B、電気化学セル10、及び電解装置1を採用した場合には、電気化学セル10を積層方向に薄型化することができ、かつ、電解装置1(電気化学装置)の組付時に、複数の電気化学セル10を容易に締結固定することが可能になる。
【0034】
また、本実施形態の電極構造体11A,11Bは、エラストマーを含浸させたシール機能部が第1セパレータ13や第2セパレータ14に当接するようになっている。このため、本実施形態の電極構造体11A,11Bを採用した電気化学セル10は、電極機能部21と各セパレータ13,14の間のアノード側流路15やカソード側流路16から流体が外部に漏れ出るのを電極構造体11A,11Bのシール機能部22によって確実に防止することができる。
【0035】
さらに、本実施形態の電極構造体11A,11Bは、電極構造体11A,11Bの貫通口T,T2,T3,T4の周域にもエラストマーが含浸されている。このため、貫通口T,T2,T3,T4の周域からの流体の漏出も確実に防止することができる。したがって、本構成を採用した場合には、一の流路内を流れる流体に他の流路内を流れる流体が混入する所謂クロスリークも確実に防止することができる。
【0036】
また、本実施形態の電極構造体11A,11Bは、第1セパレータ13及び第2セパレータ14の外縁部とほぼ同サイズとなるように形成されている。このため、電解装置1の組付け時に、電極構造体11A,11Bの外縁部を隣接するセパレータ13,14の外縁部と整合させることにより、電極構造体11A,11Bを適正位置に容易に位置決めすることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、電解装置1の組付作業がより容易になる。
【0037】
<第2実施形態>
図6は、本実施形態の電気化学セル110の一部の分解正面図であり、図7は、本実施形態の電気化学セル110の第1実施形態の図4に対応する断面図である。また、図8は本実施形態の電気化学セル110の第1実施形態の図5に対応する断面図である。
本実施形態の電気化学セル110は、基本的な構成は第1実施形態のものとほぼ同様とされているが、電解質膜112のサイズが電極構造体11A,11Bよりも一回り小さく形成されている。そして、電解質膜112は、外縁部が電極構造体11A,11Bと同サイズの矩形状の保持枠30によって保持されている。保持枠30は、例えば、非導電性の素材によって形成される。各電極構造体11A,11Bの外周縁部は、シール機能部22において保持枠30の積層方向の端面に当接する。したがって、一方の電極構造体11Aのシール機能部22は、第1セパレータ13と保持枠30の一面とに密接し、他方の電極構造体11Bのシール機能部22は、第2セパレータ14と保持枠30の他面とに密接する。
【0038】
本実施形態の電気化学セル110は、電極構造体11A,11Bの外周縁部のシール機能部22が電解質膜112の外側の保持枠30に密接するものの、上述した第1実施形態のものと同様の効果を得ることができる。
本実施形態の電気化学セル110を採用した場合にも、電気化学セル110を積層方向に薄型化することができ、かつ、電解装置1(電気化学装置)の組付時に、複数の電気化学セル110を容易に締結固定することが可能になる。
【0039】
<第3実施形態>
図9は、本実施形態の電気化学セルの一部の分解正面図である。
本実施形態の電気化学セル210は、基本的な構成は第1実施形態のものとほぼ同様とされている。ただし、各電極構造体211A,211Bは、電極ベース材20の外周縁部の一部に、電源45に電気的に接続される通電部40が設けられている。通電部40は、中央領域の電極機能部21と電気的に導通し、かつ、電極ベース材20の多孔質の素材に対してエラストマーが含浸されていない。
【0040】
本実施形態の電気化学セル210は、第1実施形態と同様の基本構成とされているため、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
本実施形態の電気化学セル210は、これに加え、電極ベース材20の外縁部の一部に電極機能部21と電気的に導通し、かつエラストマーが含浸されていない通電部40が設けられているため、複雑な通電構造を追加することなく、電極構造体211A,211Bの通電部40を通して電極機能部21を電源45に容易に接続することができる。
【0041】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、各電気化学セル10の幅方向の両側部に流体導入口17i,18iや流体排出口17o,18o、貫通口T1,T2,T3,T4等を設けて流体の導入経路と排出経路を形成しているが、流体の導入経路や排出経路はこれに限定されない。アノード側流路15とカソード側流路16に流体を適切に導入でき、反応済みの流体を各流路から適切に排出できるものであれば、他の形態のものであっても良い。
【0042】
また、上記の実施形態では、電極ベース材20のうちの電極機能部21の外周領域にのみエラストマーが含浸されているが、エラストマーの含浸領域(シール機能部22)は電極機能部21の少なくとも外周部にあれば良い。例えば、エラストマーの含浸領域(シール機能部22)は、一部が電極機能部21の方向に入り込んでいても良い。
【0043】
また、上記の実施形態では、電気化学装置の一形態である二酸化炭素電解用の電解装置1について説明しているが、電気化学装置はこれに限定されない。電気化学装置は、二酸化炭素以外の物質を電解する電解装置であっても良い。
さらに、電気化学装置は、燃料ガスと酸化剤ガスを夫々を電極構造体に供給して発電を行う燃料電池であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1…電解装置
2…端面板
3…締結部材
10,110,210…電気化学セル
11A,11B,211A,211B…電極構造体
12,112…電解質膜
13…第1セパレータ(セパレータ)
14…第2セパレータ(セパレータ)
15…アノード側流路(電気化学反応流体の流路)
16…カソード側流路(電気化学反応流体の流路)
20…電極ベース材
21…電極機能部
22…シール機能部
30…保持枠
40…通電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9