(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141479
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】配線シート
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20241003BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241003BHJP
【FI】
H05B3/20 344
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053162
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
【テーマコード(参考)】
3K034
4F100
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA06
3K034AA15
3K034AA16
3K034AA23
3K034AA34
3K034BB08
3K034BB13
3K034BC03
3K034CA02
3K034JA01
4F100AB01B
4F100AB24C
4F100AB25B
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
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4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DC24B
4F100EJ67B
4F100GB41
4F100HB31C
4F100JD10
4F100JD15A
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4F100JG01C
4F100JG04B
4F100JJ06
4F100JK07B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】配線シートの変形を防止できる配線シートを提供すること
【解決手段】低吸水率基材層1と、複数の導電性線状体21が間隔をもって配列された配線体2と、配線体2を直接的又は間接的に支持する樹脂層3と、導電性線状体21に直接的に接触する一対の電極4とを備える、配線シート100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低吸水率基材層と、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された配線体と、前記配線体を直接的又は間接的に支持する樹脂層と、前記導電性線状体に直接的に接触する一対の電極とを備える、
配線シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記低吸水率基材層の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率が、0.3%以下である、
配線シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
前記樹脂層の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率が、0.8%以上である、
配線シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
前記樹脂層の23℃における貯蔵弾性率が、5.0×106Pa以上、1.0×1010Pa以下である、
配線シート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
前記低吸水率基材層の厚さが、0.5mm以上である、
配線シート。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
波長1000nmの近赤外光の透過率が、70%以上である、
配線シート。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
センサ用ヒータとして用いる、
配線シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線シートに関する。
【背景技術】
【0002】
面状ヒータの用途に用いることができる配線シートとして、例えば、特許文献1には、透明支持基材上に、凹部を有する透明樹脂層を配置し、樹脂層の凹部に導電部を設けた発熱フィルムが開示されている。この発熱フィルムにおいて、前記透明支持基材はポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発熱フィルムによれば、配線の骨見えを防止したヒータが作製できる。しかしながら、特許文献1に記載の配線シートを、高温高湿下で使用した場合には、配線シートが変形してしまう場合があることが分かった。この面状の発熱フィルムをセンサ用ヒータとして用いた場合には、この変形によりセンサが誤作動を起こす可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、配線シートの変形を防止できる配線シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 低吸水率基材層と、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された配線体と、前記配線体を直接的又は間接的に支持する樹脂層と、前記導電性線状体に直接的に接触する一対の電極とを備える、
配線シート。
【0007】
[2] [1]に記載の配線シートにおいて、
前記低吸水率基材層の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率が、0.3%以下である、
配線シート。
【0008】
[3] [1]又は[2]に記載の配線シートにおいて、
前記樹脂層の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率が、0.8%以上である、
配線シート。
【0009】
[4] [1]から[3]のいずれかに記載の配線シートにおいて、
前記樹脂層の23℃における貯蔵弾性率が、5.0×106Pa以上、1.0×1010Pa以下である、
配線シート。
【0010】
[5] [1]から[4]のいずれかに記載の配線シートにおいて、
前記低吸水率基材層の厚さが、0.5mm以上である、
配線シート。
【0011】
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の配線シートにおいて、
波長1000nmの近赤外光の透過率が、70%以上である、
配線シート。
【0012】
[8] [1]から[7]のいずれかに記載の配線シートにおいて、
センサ用ヒータとして用いる、
配線シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、配線シートの変形を防止できる配線シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0016】
(配線シート)
本実施形態に係る配線シート100は、
図1及び
図2に示すように、低吸水率基材層1と、配線体2と、樹脂層3と、一対の電極4とを備えている。
そして、配線体2は、複数の導電性線状体21が間隔をもって配列されたものである。また、樹脂層3は、配線体2を直接的又は間接的に支持する。電極4は、導電性線状体21に直接的に接触している。
【0017】
本実施形態に係る配線シート100により、配線シートの変形を防止できる理由は、以下の通りであると本発明者らは推察する。
すなわち、配線シート100の変形が発生する理由は、基材の樹脂層3と接している面が水分により膨潤し、樹脂層3と接していない面との寸法差により、基材に反りが発生するためであると、本発明者らは推察する。具体的には、例えば、樹脂層3が比較的に吸水性の高い樹脂からなる場合には、樹脂層3中の水分が基材と長時間にわたり接触し、浸み込むことになり、基材の樹脂層3と接している面が膨潤しやすい。一方で、基材の樹脂層3と接していない面には、水分を含んだ気体が接触するが、水分が浸み込みにくく、ほとんど膨潤しない。そして、各面の寸法差により、基材に反りが発生する。これに対し、本実施形態においては、基材が低吸水率基材層1である。この低吸水率基材層1は、樹脂層3と接している面でも、水分が浸み込みにくく、膨潤しにくい。そのため、配線シート100を高温高湿の環境下で使用した場合でも、配線シート100の変形を防止できる。
【0018】
(低吸水率基材層)
低吸水率基材層1は、配線体2を直接的又は間接的に支持できる。また、低吸水率基材層1により、配線体2の一方の面を保護できる。
また、配線シート100の変形を防止するという観点から、低吸水率基材層の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率は、0.35%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。なお、この吸水率は、0.0001%以上であってもよい。また、この吸水率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
低吸水率基材層1の材質としては、強度、ハンドリング性の観点から、樹脂及びガラス等が好ましい。
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリアセタール等が挙げられる。
低吸水率基材層1は、着色剤を含有していてもよい。この着色剤により、配線シート100における可視光及び近赤外光の透過率を、目的とする範囲内に調整できる。
【0020】
低吸水率基材層1の厚さは、0.05mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であるころがさらに好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましく、1.5mm以上であることが特に好ましい。また、低吸水率基材層1の厚さは、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。低吸水率基材層の厚さがこの範囲にあることで、高温高湿下で使用した場合の変形を防止することができる。
【0021】
配線シート100を高温高湿下で使用した際の平面度は、0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましく、0.07mm以下であることが特に好ましい。平面度がこの範囲にあることで、この配線シートをセンサ用ヒータとして用いた場合にも、誤作動を起こすことなく良好に使用できる。平面度の測定方法については実施例に示す。
【0022】
(配線体)
配線体2は、複数の導電性線状体21が、互いに間隔をもって配列された構造である。また、配線体2は、導電性線状体21の軸方向と交差する方向に、複数配列された構造である。
【0023】
導電性線状体21は、配線シート100の平面視において、直線状であってもよいが、波形状を成していてもよい。波形状としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波、及びのこぎり波等が挙げられる。例えば、配線体2が、このような構造であれば、導電性線状体21の軸方向に、配線シート100を伸張した際に、導電性線状体21の断線を抑制できる。
【0024】
導電性線状体21の体積抵抗率は、1.0×10-9Ω・m以上であることが好ましく、3.0×10-9Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×10-8Ω・m以上であることがさらに好ましい。また、導電性線状体21の体積抵抗率は、1.0×10-3Ω・m以下であることが好ましく、1.0×10-4Ω・m以下であることがより好ましく、1.0×10-5Ω・m以下であることがさらに好ましい。導電性線状体21の体積抵抗率を上記範囲にすると、配線体2の面抵抗が低下しやすくなる。
導電性線状体21の体積抵抗率の測定は、次のとおりである。導電性線状体21の端部及び端部からの長さが40mmの部分に銀ペーストを塗布し、端部及び端部から長さ40mmの部分の抵抗を測定する。そして、導電性線状体21の断面積(単位:m2)を上記の抵抗値に乗じ、得られた値を上記の測定した長さ(0.04m)で除して、導電性線状体21の体積抵抗率を算出する。
【0025】
導電性線状体21の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形、楕円形、又は円形等を取り得る。樹脂層3との馴染み等の観点から、導電性線状体21の断面の形状は、楕円形、又は円形であることが好ましい。
【0026】
導電性線状体21の断面が円形である場合には、導電性線状体21の直径D(
図2参照)は、3μm以上、200μm以下であることが好ましい。シート抵抗の上昇抑制と、配線シート100の発熱効率及び耐絶縁破壊特性の向上との観点から、導電性線状体21の直径Dは、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。導電性線状体21の直径Dは、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましく、20μm以下であることが非常に好ましい。
導電性線状体21の断面が楕円形である場合には、長径が上記の直径Dと同様の範囲にあることが好ましい。
【0027】
導電性線状体21の直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、導電性線状体21を観察し、無作為に選んだ5箇所で、導電性線状体21の直径を測定し、その平均値とする。
【0028】
導電性線状体21の間隔L(
図2参照)は、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、0.8mm以上であることがさらに好ましく、1.5mm以上であることが特に好ましい。また、導電性線状体21の間隔Lは、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
導電性線状体21同士の間隔が上記範囲であれば、導電性線状体がある程度密集しているため、配線体2の抵抗を低く維持するといった配線シート100の機能の向上を図ることができる。
【0029】
導電性線状体21の間隔Lは、デジタル顕微鏡を用いて、例えば、配線体2の導電性線状体21を観察し、隣り合う2つの導電性線状体21の間隔を測定する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体21の間隔とは、導電性線状体21を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体21の対向する部分間の長さである(
図2参照)。間隔Lは、導電性線状体21の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う導電性線状体21同士の間隔の平均値である。
【0030】
導電性線状体21の態様は、特に制限はなく、エッチング、スクリーン印刷、又はインクジェット等の方式で作製することができるが、金属ワイヤーを含む線状体(以下「金属ワイヤー線状体」とも称する)であることがよい。金属ワイヤーは高い熱伝導性、高い電気伝導性、高いハンドリング性を有する。金属ワイヤー線状体は抵抗を大きく低下させることが可能であり、金属ワイヤー線状体の直径を極めて小さくしても、配線シート100の発熱に必要な電流で通電できる。これにより、導電性線状体21が視認されにくい状態にできる。すなわち、導電性線状体21として金属ワイヤー線状体を適用すると、配線体2の抵抗値を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。また、配線シート100は、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、上述したように直径が細い線状体を得られやすい。
なお、導電性線状体21としては、金属ワイヤー線状体の他に、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体が挙げられる。
【0031】
金属ワイヤー線状体は、1本の金属ワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属ワイヤーを撚った線状体であってもよい。
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、及び金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、金、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料、又はポリマー等により表面が被覆されたものであってもよい。特に、タングステン及びモリブデン、並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むワイヤーが、低い体積抵抗率の観点から好ましい。
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属ワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等の非晶質炭素;グラファイト、フラーレン、グラフェン及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0032】
導電性線状体21は、糸に導電性被覆が施された線状体であってもよい。糸としては、ナイロン、又はポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。また、糸としては、金属繊維、炭素繊維、又はイオン導電性ポリマーの繊維等の糸も挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、又は炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、めっき、蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、配線体2の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0033】
(樹脂層)
樹脂層3は、配線体2を直接的又は間接的に支持する。また、この樹脂層3により、配線体2の抵抗値を安定化できる。すなわち、この樹脂層3により、導電性線状体21を固定でき、導電性線状体21と電極4との接触を安定させ、抵抗値上昇が発生しにくくできる。
配線体2の抵抗値の安定化の観点から、樹脂層3の23℃における貯蔵弾性率は、5.0×106Pa以上、1.0×1010Pa以下であることが好ましい。同様の観点から、樹脂層3の23℃における貯蔵弾性率は、5.0×107Pa以上であることがより好ましく、5.0×108Pa以上であることがさらに好ましい。樹脂層の23℃における貯蔵弾性率は、7.0×109Pa以下であることがより好ましく、4.0×109Pa以下であることがさらに好ましい。
また、同様の観点から、樹脂層3の105℃における貯蔵弾性率は、5.0×107Pa以上であることが好ましく、5.0×108Pa以上であることがより好ましい。樹脂層3の105℃における貯蔵弾性率は、7.0×109Pa以下であることが好ましく、4.0×109Pa以下であることがより好ましい。
なお、貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0034】
樹脂層3の温度85℃、湿度85%RH中で48時間放置した場合の吸水率は、0.8%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましく、1.6%以上であることがさらに好ましい。この吸水率が高いほど、配線シート100の変形が発生しやすくなるが、吸水性の官能基があるため製造時の加工適正に優れ、耐久性、及びハンドリング性に優れた配線シート100を得ることができる。また、本実施形態においては、低吸水率基材層1を使用しているため、樹脂層3の吸水率が上記範囲であっても配線シート100の変形を防止できる。なお、この吸水率は、10%以下であってもよい。また、この吸水率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0035】
樹脂層3の厚さは、特に制限されない。樹脂層3の厚さは、導電性線状体21の直径D以上であってもよく、導電性線状体21の直径D未満であってもよい。樹脂層3の厚さが導電性線状体21の直径D以上であれば、樹脂層3の中に、配線体2を含むことができる。樹脂層3の厚さが導電性線状体21の直径D未満である場合には、樹脂層3から配線体2が露出する。また、樹脂層3から配線体2が露出する場合、配線体2は、低吸水率基材層1の側に露出してもよく、低吸水率基材層1の反対側に露出してもよい。樹脂層3の厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。樹脂層3の厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
樹脂層3は、貯蔵弾性率を前記範囲内とするという観点から、硬化性の接着剤の硬化物からなる層であることが好ましい。
硬化性の接着剤としては、熱により硬化する熱硬化性の接着剤、及びエネルギー線硬化性の接着剤等が挙げられる。エネルギー線としては、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、及び電子線等が挙げられる。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
【0037】
熱硬化性の接着剤は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノキシ樹脂、アミン系化合物、及び酸無水物系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール系硬化触媒を使用した硬化に適するという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物を使用することが好ましく、特に、優れた硬化性を示すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの混合物、又はエポキシ樹脂と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物からなる群から選択される少なくとも1種との混合物を使用することが好ましく、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂、又は脂環式エポキシ樹脂のように、環式のものが、樹脂層3の貯蔵弾性率を高くする観点で好ましい。オキシアルキレン鎖のような柔軟性のセグメントを有するエポキシ樹脂は、樹脂層3の貯蔵弾性率を低下させる傾向がある。
【0039】
エネルギー線硬化性の接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0040】
アクリレート系化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート、及びイタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0041】
エネルギー線硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましい。また、この重量平均分子量は、30000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0042】
接着剤が含有するエネルギー線硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。エネルギー線硬化性樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0043】
エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いる場合、光重合開始剤、及び熱重合開始剤等を用いることが好ましい。光重合開始剤及び熱重合開始剤等を用いることで、硬化性樹脂の重合反応を容易に開始させることができ、硬化反応の制御が容易になる。
【0044】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、2-クロールアンスラキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイド等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0045】
また、光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤以外に、光カチオン重合開始剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤は、エネルギー線が照射されることによってカチオン種を発生して、カチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、エネルギー線を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0046】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、アンチモン酸塩系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。これらの中でも、相溶性に優れ、得られる接着剤の保存安定性に優れるという観点から、スルホニウム塩系化合物が好ましく、芳香族基を有する芳香族スルホニウム塩系化合物がより好ましい。
【0047】
スルホニウム塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びトリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0048】
ヨードニウム塩系化合物としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及び(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0049】
ホスホニウム塩系化合物としては、トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、及びヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等が挙げられる。
【0050】
アンモニウム塩系化合物としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド、及びベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0051】
アンチモン酸塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0052】
熱重合開始剤としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、及びペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;並びに、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、及びクメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等の熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0053】
また、熱重合開始剤としては、上記の熱ラジカル重合開始剤以外に、熱カチオン重合開始剤が挙げられる。熱カチオン重合開始剤は、加熱によって、重合を開始させるカチオン種を発生しうる化合物である。熱カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易であること、接着性と透明性により優れるものが得られ易いこと等の観点から、スルホニウム塩が好ましい。
【0054】
スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。
【0055】
第四級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、及びテトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート等が挙げられる。また、前記ホスホニウム塩としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びテトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0056】
ジアゾニウム塩としては、塩化ベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4-クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4-ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、フェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。
【0057】
これらの重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上、20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0058】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合、イミダゾール系硬化触媒等の硬化触媒を用いてもよい。
【0059】
本実施形態において、硬化性の接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂とともに、硬化前のシート形状の維持を容易にするため、柔軟性調整成分を含有していてもよい。柔軟性調整成分として用いられるポリマーとしては、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂又はその変性物、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム系樹脂、及びアクリル樹脂等が挙げられる。
【0060】
これらの柔軟性調整成分は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本実施形態に用いる硬化性の接着剤が柔軟性調整成分を含む場合、接着剤が含むエネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の合計量は、樹脂層3の貯蔵弾性率を上述した範囲に調整する観点から、柔軟性調整成分100質量部に対して、15質量部以上、300質量部以下であることが好ましく、30質量部以上、250質量部以下であることがより好ましく、60質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。また、接着剤がエネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を含み、柔軟性調整成分を含まない場合、樹脂層3の貯蔵弾性率が高くなり過ぎてしまう傾向がある。
【0062】
本実施形態において、硬化性の接着剤は、充填材を含有しないことが好ましい。接着剤が充填材を含有しない場合には、樹脂層3の23℃における貯蔵弾性率が高くなり過ぎることを防止できる。
ただし、硬化性の接着剤は、樹脂層3の23℃における貯蔵弾性率を前記範囲内に調整できる範囲において、充填材を含有していてもよい。
【0063】
充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、及び窒化ホウ素等の無機粉末;無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本実施形態において、硬化性の接着剤は、着色剤を含有していてもよい。この着色剤により、配線シート100における可視光及び近赤外光の透過率を、目的とする範囲内に調整できる。
本実施形態において、低吸水率基材層1、配線体2、樹脂層3の他に着色層を有していてもよい。着色層を有することによって配線シート100における可視光及び近赤外光の透過率を、目的とする範囲内に調整できる。
着色層の組成は特に限定されないが、赤外線透過インキを用いることで配線シート100における可視光及び近赤外光の透過率を、目的とする範囲内に調整できる。
【0065】
硬化性の接着剤には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、カップリング剤、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0066】
(電極)
電極4は、導電性線状体21に電流を供給するために用いられる。電極4は、一対になっている。電極4は、導電性線状体21に直接的に接触する。そして、電極4は、導電性線状体21の両端部に電気的に接続されて配置される。
電極4は、公知の電極材料を用いて形成できる。電極材料としては、銀ペースト等の導電性ペースト;銅箔等の金属箔;及び金属ワイヤー等が挙げられる。電極材料が金属ワイヤーである場合、金属ワイヤーは、1本であってもよいが、2本以上であることが好ましい。
【0067】
電極材料が、金属箔又は金属ワイヤーである場合、金属箔又は金属ワイヤーの金属としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、及び金等の金属;又は、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等の金属を2種以上含む合金が挙げられる。また、金属箔又は金属ワイヤーは、金、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよい。
【0068】
電極4のうち、少なくとも一方の電極の幅は、配線シート100の平面視において、10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。また、この電極の幅は、0.1mm以上であることが好ましい。なお、少なくとも一方の電極が金属ワイヤーである場合には、電極の幅は、金属ワイヤーの直径であり、金属ワイヤーを2本以上用いた場合の一方の電極の幅とは、金属ワイヤーを並べた場合には、各金属ワイヤーの直径の和のことをいい、金属ワイヤーが束になっている場合には、この束の平面視における長径のことをいう。
【0069】
電極4の厚さは、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。電極4の厚さは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、25μm以下であることが特に好ましい。電極4の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、配線体2との抵抗値を低く抑えられる。また、電極として十分な強度が得られる。なお、電極が金属ワイヤーである場合には、電極の厚さは、金属ワイヤーの直径である。
【0070】
(配線シート)
本実施形態に係る配線シート100において、波長1000nmの近赤外光の透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。この透過率が前記下限以上である場合には、配線シート100を光学センサ用のヒータとして使用できる。なお、この透過率は、100%未満であってもよい。また、この透過率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
また、波長380nmから780nmの範囲の可視光の透過率は、特に限定されない。例えば、透明な配線シート100の場合は、この透過率が高いことが好ましい。一方で、透明ではない配線シート100とする場合、この透過率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。この透過率が前記上限以下である場合には、配線シート100を黒色の面状ヒータとして用いることができる。なお、この透過率は、0%超であってもよい。また、この透過率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0071】
本実施形態に係る配線シート100は、例えば、面状ヒータとして好適に使用できる。なお、本実施形態に係る配線シート100は、前述のとおり変形を防止できるので、高温高湿等の過酷な環境下で使用されても、平面度が高いことが求められるヒータとして、特に好適に使用できる。このような用途としては、センサ等が挙げられる。
【0072】
(配線シートの製造方法)
本実施形態に係る配線シート100の製造方法は、特に限定されない。配線シート100は、例えば、次の工程により、製造できる。
まず、配線体2を備える配線体フィルムを作製する工程を行う。この工程では、剥離フィルムの上に、樹脂層3を形成するための熱硬化性の接着剤を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、接着剤層を作製する。次に、接着剤層上に、導電性線状体21を配列しながら配置して、配線体2を形成する。例えば、ドラム部材の外周面に剥離フィルム付きの接着剤層を配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、接着剤層上に導電性線状体21を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体21の束をドラム部材の軸方向に沿って切断する。これにより、配線体2を形成すると共に、接着剤層上に配置する。このようにして、剥離フィルム付きの接着剤層上に配線体2が形成されている配線体フィルムが得られる。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、導電性線状体21の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、配線体2における隣り合う導電性線状体21の間隔Lを調整することが容易である。
次に、低吸水率基材層1の上に、一対の電極4を設ける工程を行う。この工程では、低吸水率基材層1の上に、例えば、導電性ペースト等を所定の配置で印刷し、乾燥等することで、一対の電極4を設けることができる。
次に、一対の電極4が設けられた低吸水率基材層1の上に、配線体フィルムを配置し、熱硬化性の接着剤を硬化させる工程を行う。この工程では、配線体フィルムの配線体2における導電性線状体21の両端部に、一対の電極4が接触するように、一対の電極4が設けられた低吸水率基材層1の上に、配線体フィルムを貼り合わせる。そして、剥離フィルムを剥がした後で、熱硬化性の接着剤に、所定の熱処理を施すことで、樹脂層3を形成して、配線シート100を作製する。
【0073】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、高温高湿の環境下で使用した場合にも、配線シート100の変形を防止できる。
(2)本実施形態によれば、樹脂層3により、導電性線状体21を固定でき、配線シート100の内部における厚さ方向の変形を抑制し、導電性線状体21と電極4との接触を安定させ、配線体2の抵抗値を安定化できる。
(3)本実施形態によれば、樹脂層3の23℃における貯蔵弾性率を、5.0×106Pa以上、1.0×1010Pa以下とすることで、配線シート100に変形が加えられた場合に、導電性線状体21と電極4との接続部分が破壊されるのを防止しつつ、導電性線状体21を固定できる。
(4)本実施形態によれば、配線シート100の波長1000nmにおける近赤外線の透過率が70%以上とすることで光学センサ用ヒータとして用いることができる。
【0074】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、又は改良等は本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、配線シート100は、フィルム状の面状ヒータとして使用しているが、これに限定されない。例えば、配線シート100を被着体に貼り付けて使用してもよい。この場合、樹脂層3を形成するための接着剤により、配線体フィルムを被着体に貼り付けた後に、接着剤を硬化させて、配線シート100が貼り付けられた被着体を作製することが好ましい。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
また、実施例で得られた配線シートの評価は、以下のようにして、行った。
【0076】
[吸水率測定]
測定対象となる樹脂層を形成する組成物と同一の組成物から樹脂層シートを作製し、試料とした。また、測定対象となる基材を準備し、試料とした。これらの試料を温度85℃、湿度85RH%の高温高湿下の条件で48時間静置した後、これらの試料の高温高湿下に静置する前の質量と、高温高湿下に静置した後の質量を測定し、以下の式から吸水率を算出した。
吸水率=(W2-W1)/W1×100(%)
W1:高温高湿下に静置する前の試料の質量
W2:高温高湿下に静置した後の試料の質量
【0077】
[平面度評価]
配線シートを温度85℃、湿度85RH%の条件で48時間静置した後、配線シートの平面度を、配線シートをJIS規格0級(JIS B7513:1992)のグラナイト精密定盤に置き、端部に株式会社テクロック製定圧厚み測定器「PG-02J」を当てた状態で、定盤上を滑らせ、厚み測定器の数値の振れ幅を記録する最大振れ式平面度測定法により、測定した。
【0078】
[貯蔵弾性率測定]
測定対象となる層を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚さ1mmの円柱形の試験サンプルを作製した。粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)にて、測定治具に直径8mmのパラレルプレートを用いて、試験開始温度-20℃、試験終了温度150℃、昇温速度3℃/分、及び周波数1Hzの条件で、試験サンプルの貯蔵弾性率を測定した。
【0079】
[透過率測定]
紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、製品名「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、配線シートの近赤外光(1000nm)の透過率を測定した。
【0080】
[調製例1]
フェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、製品名「YX7200B35」)100質量部に、多官能水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ化合物(三菱ケミカル株式会社製、製品名「YX8000」)170質量部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、製品名「KBM-4803」)0.2質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業株式会社製、製品名「サンエイドSI-B3」)2質量部、及び、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業株式会社製、製品名「サンエイドSI-B7」)2質量部を配合して、硬化性の接着剤を得た。
【0081】
[実施例1]
(配線体フィルムの作製)
厚さ38μmの剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-382150」)上に、調製例1で得られた硬化性の接着剤を、厚さ15μmとなるように塗布し、250mm×320mmの長方形に裁断し、接着シートを作製した。導電性線状体として、金めっきタングステンワイヤー(直径10μm、以下、ワイヤーとも称する)を準備した。次に、外周面がゴム製のドラム部材に、得られた接着シートを、感圧接着剤層の表面が外側を向き、しわのないように巻きつけ、円周方向における接着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けたワイヤーを、ドラム部材の端部付近に位置する接着シートの感圧接着剤層の表面に付着させた上で、ワイヤーを繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、ワイヤーが等間隔3mmでらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。これにより、ワイヤーが接着剤の表面に96本並べられた状態で、配線体を形成した。その後、ワイヤーを切断し、ドラム部材上から、配線体を取り外した。ワイヤー12本分が取り出されるように、40×82mm幅に配線体を裁断し、配線体フィルムを作製した。
【0082】
(電極付き基板の作製)
基材としてホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)に対して、銀ペーストを2mm幅で電極間距離が7.8mmになるようにスクリーン印刷した後、温度150℃で、30分間の条件にて乾燥させて、厚さが17μmの帯状電極を形成した。その後、帯状電極に無電解めっきを施し、電極付き基板を作製した。基材の材質、吸水率、及び厚さを表1に示す。
【0083】
(配線シートの作製)
得られた電極付き基板に、得られた配線体フィルムを、ワイヤーの両端に電極が位置するように貼り合わせた。その後、温度120℃、圧力0.5MPaで、30分間の条件で加熱し、接着剤を硬化させて樹脂層を形成して、配線シートを作製した。
得られた配線シートの平面度及び透過率を表1に示す。
なお、樹脂層の23℃における貯蔵弾性率は2.2×109Paであり、樹脂層の105℃における貯蔵弾性率は1.6×109Paであった。また、樹脂層の吸水率は、1.7%であった。
【0084】
[実施例2]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、フロートガラス(日本板硝子株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0085】
[実施例3]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、ポリスチレン(共栄樹脂株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0086】
[実施例4]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、ポリカーボネート(タキロンシーアイ株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0087】
[比較例1]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、アクリル系樹脂(東亞合成株式会社製、製品名「アロニックスシート」)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0088】
[比較例2]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、ポリ塩化ビニル(タキロン株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0089】
[比較例3]
基材のホウケイ酸ガラス(株式会社河村久蔵商店製)を、ABS(日立化成株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、配線シートを作製した。
【0090】
【0091】
実施例1~4で得られた配線シートは、平面度の評価の結果が良好であった。このことから、本発明によれば、配線シートの変形を防止できることが確認された。