(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141481
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20241003BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G10K15/04 302J
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053165
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小山田 哲也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内燃機関エンジンの出力特性と、電動車両のモータの出力特性との差異を考慮して、より自然な疑似エンジン音を出力する車両用シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】システム1において、車両用シミュレーション装置100は、対象電動車両20のモータに関する性能特性情報の入力を受け付ける受付部である送受信部110と、少なくとも内燃機関エンジンの形状情報134を記憶する記憶部130と、前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、前記形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成するシミュレーション部120と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付ける受付部と、
少なくとも内燃機関エンジンの形状情報を記憶する記憶部と、
前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、前記形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成するシミュレーション部と、を備える、
車両用シミュレーション装置。
【請求項2】
前記シミュレーション部は、縮尺変更された前記エンジン出力マップに含まれるエンジン出力特性およびエンジントルク特性に対応する前記疑似エンジン音情報を生成する、
請求項1に記載の車両用シミュレーション装置。
【請求項3】
前記シミュレーション部は、前記対象電動車両の運転者の運転スキル情報に更に基づいて、前記モータ出力マップを生成する、
請求項1に記載の車両用シミュレーション装置。
【請求項4】
前記シミュレーション部は、前記対象電動車両の走行環境に更に基づいて、前記モータ出力マップを生成する、
請求項1に記載の車両用シミュレーション装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用シミュレーション装置によって生成された前記モータ出力マップと前記疑似エンジン音情報に従って、前記対象電動車両の走行と出力音とを制御する、
車両制御装置。
【請求項6】
コンピュータが、
対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付け、
前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成する、
車両用シミュレーション方法。
【請求項7】
コンピュータに、
対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付けさせ、
前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定させ、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラムに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、BEV(battery electric vehicle)などの電動車両の走行時に、従来のガソリン車等のエンジンの擬似音を発生させることによって運転者の運転感覚を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、モータを駆動源として走行する電気自動車が、運転状態に応じて任意に選択した擬似音、例えばエンジン音を発生させる擬似音発生手段を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に、ガソリン車等の内燃機関エンジンの出力特性と、電動車両のモータの出力特性とは異なるため、ガソリン車等を運転した経験を有する利用者は、電動車両の運転中、従来技術による疑似エンジン音の出力に違和感を持つ場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、内燃機関エンジンの出力特性と、電動車両のモータの出力特性との差異を考慮して、より自然な疑似エンジン音を出力することができる車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両用シミュレーション装置は、対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付ける受付部と、少なくとも内燃機関エンジンの形状情報を記憶する記憶部と、前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、前記形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成するシミュレーション部と、を備えるものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記シミュレーション部は、縮尺変更された前記エンジン出力マップに含まれるエンジン出力特性およびエンジントルク特性に対応する前記疑似エンジン音情報を生成するものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記シミュレーション部は、前記対象電動車両の運転者の運転スキル情報に更に基づいて、前記モータ出力マップを生成するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記対象電動車両の走行環境に更に基づいて、前記モータ出力マップを生成するものである。
【0010】
(5):この発明の別の態様に係る車両用シミュレーション方法は、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の車両用シミュレーション装置によって生成された前記モータ出力マップと前記疑似エンジン音情報に従って、前記対象電動車両の走行と出力音とを制御するものである。
【0011】
(6):この発明の別の態様に係る車両制御装置は、コンピュータが、対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付け、前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成するものである。
【0012】
(7):この発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付けさせ、前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定させ、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成させるものである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)によれば、内燃機関エンジンの出力特性と、電動車両のモータの出力特性との差異を考慮して、より自然な疑似エンジン音を出力することができる車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る車両用シミュレーション装置100を含むシステム1の全体構成を示す図である。
【
図2】利用者端末装置10上で利用者が入力するモータに関する性能特性情報の一例を示す図である。
【
図3】エンジン形状情報134の内容の一例を示す図である。
【
図4】シミュレーション部120によって生成されるエンジン出力マップおよびモータ出力マップの一例を示す図である。
【
図5】シミュレーション部120によって実行されるエンジン出力マップの縮尺変更と、縮尺変更に応じた疑似エンジン音の生成を説明するための図である。
【
図6】シミュレーション部120によって実行されるエンジン出力マップの加工の一例を示す図である。
【
図7】車両用シミュレーション装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の車両用シミュレーション装置、車両制御装置、車両用シミュレーション方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る車両用シミュレーション装置100を含むシステム1の全体構成を示す図である。システム1は、例えば、利用者端末装置10と、車両用シミュレーション装置100と、電動車両20とを含む。
【0017】
利用者端末装置10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の可搬型端末装置である。利用者端末装置10は、シミュレーションアプリ10Aを事前に搭載し、CPU等のプロセッサによりシミュレーションアプリ10Aを実行することで、車両用シミュレーション装置100とネットワークNWを介して通信を行い、後述するシミュレーションを実行する。代替的に、利用者端末装置10は、シミュレーションアプリ10Aを搭載することなく、Webブラウザを介して車両用シミュレーション装置100と通信を行い、後述するシミュレーションを実行してもよい。
【0018】
電動車両20は、走行用のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって駆動される電動機(電動モータ)によって走行するBEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)である。電動車両20は、四輪の車両のみならず、鞍乗り型の二輪の車両や、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両等が含まれる。
【0019】
車両用シミュレーション装置100は、例えば、送受信部110と、シミュレーション部120と、記憶部130と、を備える、送受信部110と、シミュレーション部120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。記憶部130は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等である。記憶部130は、例えば、モータ性能特性情報132と、エンジン形状情報134と、シミュレーション結果136とを記憶する。
【0020】
送受信部110は、ネットワークNWを介して、利用者端末装置10から電動車両20のモータに関する性能特性情報の入力を受け付ける。
図2は、利用者端末装置10上で利用者が入力するモータに関する性能特性情報の一例を示す図である。
図2に示す通り、利用者端末装置10は、例えば、電動車両20のモータの型式、最高出力、最大トルクなど、モータに関する性能特性情報の入力を受け付ける領域A1を表示するとともに、シミュレーション対象とするエンジン車(換言すると、エンジン特性を電動車両20のモータで再現する目標となるエンジン車)の車種の指定を受け付けるための領域A2を表示する。
【0021】
利用者は、表示された領域A1上で、自身が利用する電動車両20のモータに関する性能特性情報を入力するとともに、シミュレーション対象とするエンジン車の車種を指定する。その後、利用者が送信ボタンB1を押下すると、利用者端末装置10は、入力された情報を、ネットワークNWを介して車両用シミュレーション装置100に送信する。送受信部110は、受信したモータに関する性能特性情報をモータ性能特性情報132として記憶部130に記憶する。
【0022】
シミュレーション部120は、指定されたエンジン車の車種と同一のエンジン特性(例えば、加減速など)およびエンジン音を電動車両20上で再現するためのシミュレーションを実行する。より具体的には、まず、シミュレーション部120は、指定されたエンジン車の車種をキーとしてエンジン形状情報134を参照し、当該車種のエンジンの形状に関する情報を取得する。
【0023】
図3は、エンジン形状情報134の内容の一例を示す図である。エンジン形状情報134は、例えば、エンジン車の車種に対して、エンジン種別、最大トルク、最高出力などのエンジンの仕様に関する情報、および疑似エンジン音などの情報が対応付けられたものである。シミュレーション部120は、指定されたエンジン車の車種をキーとして、エンジン形状情報134を参照し、エンジン形状情報134に含まれるエンジン種別、最大トルク、最高出力などの情報を取得する。疑似エンジン音は、例えば、エンジン車のエンジンの回転速度に対して音の周波数が対応付けられた情報である。疑似エンジン音は、エンジン形状情報134に含まれるエンジン種別、最大トルク、最高出力などの情報から、既知の方法を用いてシミュレーションによって生成されてもよいし、既存のエンジン音データが格納されていてもよい。なお、
図3に示すエンジン形状情報134の情報項目は、一例であり、少なくとも以下で説明するエンジン出力マップの生成を可能とする情報項目が含まれていればよい。また、エンジン形状情報134は、エンジンの燃焼特性情報をさらに記憶し、シミュレーション部120は、燃焼特性情報をさらに考慮して、既知の方法を用いてシミュレーションによって疑似エンジン音を生成してもよい。
【0024】
次に、シミュレーション部120は、取得したエンジン種別、最大トルク、最高出力などの情報に基づいて、指定されたエンジン車の車種に関するエンジン出力マップを生成するとともに、電動車両20のモータ性能特性情報132に基づいて、電動車両20のモータ出力マップを生成する。
図4は、シミュレーション部120によって生成されるエンジン出力マップおよびモータ出力マップの一例を示す図である。
図4の左部は、シミュレーション部120によって生成されるエンジン出力マップを表し、
図4の右部は、シミュレーション部120によって生成されるモータ出力マップを表す。エンジン出力マップは、例えば、回転速度(rpm)に対するエンジンの出力の大きさ(kW)を表すエンジン出力特性EOCと、回転速度に対するエンジンのトルクの大きさ(N・m)を表すエンジントルク特性ETCと、を含む。一方、モータ出力マップは、例えば、回転速度に対するモータの出力の大きさ(kW)を表すモータ出力特性MOCと、回転速度(rpm)に対するモータのトルクの大きさ(N・m)を表すモータトルク特性MTCと、を含む。
【0025】
なお、
図4では、一例として、シミュレーション部120は、エンジン又はモータの回転速度に対応する出力特性およびトルク特性をマップとして生成しているが、代替的に、エンジン車又は電動車両20のアクセル開度に対応する出力特性およびトルク特性をマップとして生成してもよい。
【0026】
図4に示す通り、エンジン出力特性EOCの上限値であるO1は、モータ出力特性MOCの上限値であるO2を上回ることがあり、その場合、電動車両20のモータは、エンジン出力特性EOCを忠実に再現することができない。このような事情を考慮して、シミュレーション部120は、モータ出力特性MOCの上限値に基づいて、電動車両20のモータが、エンジン出力特性EOCおよびエンジントルク特性ETCを忠実に再現可能なようにエンジン出力マップの縮尺を変更する。
【0027】
図5は、シミュレーション部120によって実行されるエンジン出力マップの縮尺変更と、縮尺変更に応じた疑似エンジン音の生成を説明するための図である。
図5に示す通り、シミュレーション部120は、例えば、エンジン出力特性EOCの上限値が、モータ出力特性MOCの上限値以下となるように、エンジン出力特性EOCおよびエンジントルク特性ETCの縮尺を変更する。
図5は、一例として、シミュレーション部120が、エンジン出力特性EOCの上限値がモータ出力特性MOCの上限値と一致するようにエンジン出力特性EOCおよびエンジントルク特性ETCの縮尺を変更している場合を表している。これにより、電動車両20のモータは、縮尺変更されたエンジン出力特性EOCおよびエンジントルク特性ETCに従って動作することにより、電動車両20の運転者に、指定されたエンジン車の車種と同様の運転感覚(例えば、加減速など)を与えることができる。
【0028】
次に、シミュレーション部120は、縮尺変更後のエンジン出力特性EOCおよびエンジントルク特性ETC(すなわち、仮想的なエンジン形状)から疑似エンジン音をシミュレーションし、縮尺変更されたエンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、シミュレーションされた疑似エンジン音とを合わせて、指定されたエンジン車の車種に対するシミュレーション結果136として取得する。上述した通り、エンジン形状情報134は、エンジン種別と、最大トルクと、最高出力などの情報に紐づけて、疑似エンジン音を格納しているため、シミュレーション部120は、エンジン出力マップの縮尺変更に合わせて、疑似エンジン音を補正することができる。また、例えば、シミュレーション部120は、エンジン形状情報134のうち、最大トルクおよび最高出力を縮尺変更後の値に修正し、修正されたエンジン形状情報134に基づいて、既知の方法を用いて再度シミュレーションを行うことによって疑似エンジン音を生成してもよい。シミュレーション部120は、このようにして取得されたシミュレーション結果136を記憶部130に記憶する。
【0029】
次に、送受信部110は、指定されたエンジン車の車種に対するシミュレーション結果136を、ネットワークNWを介して、利用者端末装置10又は電動車両20に配信する。シミュレーション結果136が利用者端末装置10に配信された場合、利用者端末装置10は、受信したシミュレーション結果136をシミュレーションアプリ10Aで再生することにより、自身が利用する電動車両20に対応した疑似エンジン音を楽しむことができる。一方、シミュレーション結果136が電動車両20に配信された場合、電動車両20は、縮尺変更されたエンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップにしたがって、利用者のアクセル開度に応じてモータを駆動させつつ、疑似エンジン音を出力する。これにより、電動車両20の利用者は、モータの出力特性に違和感を覚えることなく、疑似エンジン音を楽しむことができる。代替的に、送受信部110は、例えば、シミュレーション結果136をソフトウェアの販売店舗に配信し、利用者は、当該販売店舗にてシミュレーション結果136を購入およびダウンロードすることによって、取得してもよい。
【0030】
なお、シミュレーション部120は、エンジン出力マップを縮尺変更したのち、電動車両20の運転者の運転スキルや、電動車両20の走行環境に更に基づいて、エンジン出力マップを加工し、電動車両20のモータを駆動するためのモータ出力マップとして生成してもよい。
図6は、シミュレーション部120によって実行されるエンジン出力マップの加工の一例を示す図である。シミュレーション部120は、例えば、事前に記憶された運転者の運転スキルが低かったり、電動車両20の走行環境が混雑している場合、縮尺変更後のエンジン出力特性EOCの上限値を減少させてもよい(
図6は、一例として、上限値をO2からO3に減少させる場合を表している)。また、例えば、シミュレーション部120は、縮尺変更後のエンジン出力特性EOCの傾きを小さくすることによって、回転速度(アクセル開度)に対するモータ出力のレスポンスを低下させてもよい。これにより、運転の安全性をさらに考慮して、電動車両20のモータを駆動するためのモータ出力マップを生成することができる。
【0031】
運転者の運転スキルを計測するため、シミュレーション部120は、例えば、電動車両20に搭載されたカメラによって撮像された画像から先行車両との車間距離を計測し、電動車両20の走行中、計測された車間距離が閾値以下となった回数が増加するほど、運転者の運転スキルを低く評価して運転者の運転スキル情報として事前に記憶してもよい。また、例えば、シミュレーション部120は、電動車両20に搭載された地図情報に記憶された法定速度と、電動車両20の速度との間の乖離を計測し、電動車両20の走行中、計測された乖離が閾値以上となった回数が増加するほど、運転者の運転スキルを低く評価して運転者の運転スキル情報として事前に記憶してもよい。
【0032】
また、電動車両20の走行環境を判定するため、シミュレーション部120は、例えば、電動車両20に搭載されたカメラによって撮像された画像から周辺車両の台数や走行車線の横幅を計測し、周辺車両の台数が増加するほど、又は走行車線の横幅が狭くなるほど、電動車両20の走行環境が混雑していると判定してもよい。また、例えば、シミュレーション部120は、電動車両20に搭載されたオンラインの地図情報を参照することによって、混雑度を表す交通情報(例えば、渋滞情報)を取得し、電動車両20の走行環境を判定してもよい。さらに、例えば、シミュレーション部120は、電動車両20の走行環境が混雑している場合に限定されず、電動車両20が高速走行している場合に、縮尺変更後のエンジン出力特性EOCの上限値を減少させたり、傾きを小さくしてもよい。
【0033】
次に、
図7を参照して、車両用シミュレーション装置100によって実行される処理の流れについて説明する。
図7は、車両用シミュレーション装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートの処理は、例えば、利用者が利用者端末装置10でシミュレーションアプリ10Aを起動し、
図2に示す画面で情報を入力して送信ボタンB1を押下したタイミングで実行されるものである。
【0034】
まず、送受信部110は、利用者端末装置10から、モータ性能特性情報とエンジン車の車種の指定を受信する(ステップS100)。次に、シミュレーション部120は、受信したモータ性能特性情報からモータ出力マップを生成するとともに、指定された車種に対応するエンジン形状からエンジン出力マップを生成する(ステップS102)。
【0035】
次に、シミュレーション部120は、生成されたエンジン出力マップの出力上限値がモータ出力マップの出力上限値以下となるようにエンジン出力マップを縮尺変更する(ステップS104)。次に、シミュレーション部120は、縮尺変更したエンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とをシミュレーション結果として取得する(ステップS106)。次に、送受信部110は、取得されたシミュレーション結果を利用者端末装置10又は電動車両20に配信する(ステップS108)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0036】
以上の通り説明した本実施形態によれば、送受信部110は、対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付け、シミュレーション部120は、性能特性情報によって示される対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された縮尺変更情報に基づいて縮尺変更されたエンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成する。これにより、内燃機関エンジンの出力特性と、電動車両のモータの出力特性との差異を考慮して、より自然な疑似エンジン音を出力することができる。
【0037】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
対象電動車両のモータに関する性能特性情報の入力を受け付け、
前記性能特性情報によって示される前記対象電動車両の出力上限値に基づいて、記憶された内燃機関エンジンの形状情報に基づくエンジン出力マップの縮尺変更情報を推定し、推定された前記縮尺変更情報に基づいて縮尺変更された前記エンジン出力マップの情報を含むモータ出力マップと、前記モータ出力マップに対応する疑似エンジン音情報とを生成する、
ように構成されている、車両用シミュレーション装置。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 利用者端末装置
10A シミュレーションアプリ
20 電動車両
100 車両用シミュレーション装置
110 送受信部
120 シミュレーション部
130 記憶部
132 モータ性能特性情報
134 エンジン形状情報
136 シミュレーション結果