(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141488
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/66 20170101AFI20241003BHJP
【FI】
A61C5/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053175
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】柏原 和久
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA17
4C052HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペースト状材料をより円滑に排出することができるディスペンサを提供する。
【解決手段】シリンダ11、シリンダの一端に設けられたノズル12、及び、シリンダ及びノズルの内側に配置されたペースト状材料13を備えるディスペンサ10であって、ノズルに被せるフタ15を有し、フタはノズルの内側に挿入される凸部18を備えており、凸部の先端がペースト状材料に接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ、前記シリンダの一端に設けられたノズル、及び、前記シリンダ及び前記ノズルの内側に配置されたペースト状材料を備えるディスペンサであって、
前記ノズルに被せるフタを有し、
前記フタは前記ノズルの内側に挿入される凸部を備えており、前記凸部の先端が前記ペースト状材料に接触している、
ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科において充填剤等のペースト状材料を排出するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科の診療等において、充填材や接着剤等の粘性の高いペースト状の材料を必要な場所に供給することがある。このようなペースト状材料を供給するためにディスペンサが用いられる。ディスペンサはノズルを備えるシリンダを有し、シリンダ内にはペースト状材料が配置されている。ペースト状材料の排出時には、シリンダ内にピストンを挿入して押圧することでノズルからペースト状材料を押し出すことでペースト状材料の供給を行う。
【0003】
特許文献1にはピストンの抜け落ちがないとともにピストンのスムーズな作動によりペースト状材料を排出することができるディスペンサについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のディスペンサにおいて、ノズル内の特に先端部分のペースト状材料が硬くなってしまい、ペースト状材料の排出を円滑に行うことができないことがあった。
【0006】
そこで本開示は、ペースト状材料を円滑に排出することができるディスペンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は鋭意検討の結果、シリンダ内にペースト状材料が配置されている状態で、ペースト状材料の先端部分では自由表面の部分で力が負荷されておらず、このように力が負荷されていないことに起因して当該部分で硬くなる知見を得た。そしてこの知見に基づいて具体的手段により課題を解決した。
【0008】
本願は、シリンダ、シリンダの一端に設けられたノズル、及び、シリンダ及びノズルの内側に配置されたペースト状材料を備えるディスペンサであって、ノズルに被せるフタを有し、フタはノズルの内側に挿入される凸部を備えており、凸部の先端がペースト状材料に接触している、ディスペンサを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、フタの凸部がノズル内に配置されたペースト状材料の先端部分に対して押圧力を付与するため、当該部位でペースト状材料が硬くなることを抑制することができ、ペースト状材料のより円滑な排出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)はディスペンサ10の外観図、
図1(b)はディスペンサ10の分解図、
図1(c)はディスペンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ディスペンサの構成
図1には1つの形態にかかるディスペンサ10を示した。
図1(a)は外観図、
図1(b)は分解図、
図1(c)は軸線L1に沿ったディスペンサ10の断面図でありシリンダ11、ノズル12、及び、フタ15の断面が表れた断面である。本形態にかかるディスペンサ10は、シリンダ11、ノズル12、ペースト状材料13、栓14、及び、フタ15を有している。以下、それぞれについて説明する。
【0012】
1.1.シリンダ
シリンダ11は筒状の部材であり、その内側11aにペースト状材料13が保持されている。シリンダ11の筒の軸線L1の方向一端側にはノズル12が配置されており、他端は開口している。シリンダ11の態様は特に限定されることはなく公知のディスペンサと同様に考えることができる。
【0013】
1.2.ノズル
ノズル12はシリンダ11の軸線L1の一端側に配置されたノズルであり、その内側12aにペースト状材料13が配置されている。ノズル12はシリンダ11に一体に形成されており、ノズル12の内側12aはシリンダ11の内側11aに連通している。ノズル12の態様は特に限定されることはなく公知のディスペンサと同様に考えることができる。
本形態でノズル12の内側12aはシリンダ11の内側11aよりも細くなるように形成されており、その延びる方向L2はシリンダの軸線L1に対して0°より大きく90°より小さい範囲の角度で傾斜している。傾斜角度は特に限定されることはないが、20°~70°の範囲であることが好ましい。これによりペースト状材料13を目的の部位に供給する際にノズル12の先端を当該目的の部位に位置付けし易くなる。
【0014】
1.3.ペースト状材料
ペースト状材料13は供給の目的となる材料であり、シリンダ11の内側11a及びノズル12の内側12aに配置されている。
配置されるペースト状材料13は特に限定されることはないが、その中でも歯科用組成物の1つであるコンポジットレジンにおいて、高い充填剤含有率のペースト状材料が好ましく、高い効果を奏する。コンポジットレジン中の充填剤の含有比率は、40質量%~95質量%であることが好ましく、より好ましくは65質量%~85質量%、さらに好ましくは75質量%~85質量%、最も好ましくは80質量%~85質量%である。
高い強度を実現するために充填剤含有率を高めると上記したようにノズルに配置された部位の先端部分が硬化してしまう問題がより顕著に表れる。これに対して本開示のディスペンサの構成とすることで当該問題を解決することができる。
【0015】
このようなコンポジットレジンの1つの例として、(メタ)アクリレート、紫外線吸収剤、蛍光剤及び充填剤を含有するものを挙げることができる。
【0016】
1.3.1.(メタ)アクリレート
ここで、(メタ)アクリレートとは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基という)を有する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)を意味する。
【0017】
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有することが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有することが特に好ましい。
【0018】
(メタ)アクリレートは、酸性基を有さないことが好ましい。
【0019】
酸性基を有さない(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
なお、(メタ)アクリレートは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0021】
コンポジットレジン中の(メタ)アクリレートの含有量は、0.5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~35質量%であることがさらに好ましい。本形態の歯科用組成物中の(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であると、歯科用組成物の接着性が向上し、60質量%以下であると、他の成分の含有量を確保することができるため、歯科用組成物の性能が向上する。
【0022】
1.3.2.紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、紫外線領域に極大吸収を有するが、波長が320nmを超え、500nm以下である領域に極大吸収を有さない。これにより、本例のコンポジットレジンの硬化体に紫外線及び近紫外線のいずれを照射しても、蛍光剤の吸収を阻害しにくくなり、コンポジットレジンの硬化体の蛍光性が天然歯の蛍光性と同等になる。
【0023】
紫外線吸収剤は、波長が250nmを超え、320nm以下である領域に極大吸収を有することが好ましい。これにより、コンポジットレジンの硬化体の光安定性がさらに向上する。
【0024】
また、紫外線吸収剤は、波長が500nmを超え、700nm以下である領域にも極大吸収を有さないことが好ましい。これにより、本例のコンポジットレジンの硬化体に紫外線及び近紫外線のいずれを照射しても、蛍光剤の吸収をさらに阻害しにくくなり、蛍光性が天然歯の蛍光性にさらに近くなる。
【0025】
紫外線吸収剤としては例えば、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸メチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシル、4-アミノ安息香酸等が挙げられる。
なお、紫外線吸収剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
コンポジットレジン中の紫外線吸収剤の含有量は、(メタ)アクリレートに対して、0.001質量%~30質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が、(メタ)アクリレートに対して、0.001質量%以上であると、歯科用組成物の硬化体の光安定性がさらに向上し、30質量%以下であると、歯科用組成物の光硬化性が向上する。
【0027】
1.3.3.蛍光剤
蛍光剤としては、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸ジメチル、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル、2,5-ジアミノテレフタル酸ジメチル、2,5-ジアミノテレフタル酸ジエチル、o-フタルアルデヒド等のフタル酸誘導体等が挙げられる。
なお、蛍光剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
コンポジットレジン中の蛍光剤の含有量は、(メタ)アクリレートに対して、0.0001質量%~20質量%であることが好ましく、0.0005質量%~1質量%であることがさらに好ましい。蛍光剤の含有量が、(メタ)アクリレートに対して、0.0001質量%~20質量%であると、歯科用組成物の硬化体の蛍光性が天然歯の蛍光性にさらに近くなる。
【0029】
1.3.4.充填剤
充填剤を構成する材料としては、例えば、シリカ、バリウムガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。
充填剤は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよい。
【0030】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-( メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお、充填剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0031】
充填剤の個数基準のメジアン径は、0.005μm~5μmであることが好ましく、0.05~0.5μmであることがさらに好ましい。
【0032】
本例のコンポジットレジン中の充填剤の含有量は、40質量%~95質量%であることが好ましく、より好ましくは65質量%~85質量%、さらに好ましくは75質量%~85質量%、最も好ましくは80質量%~85質量%である。コンポジットレジン中の歯科用組成物中の充填剤の含有量が40質量%以上であると、歯科用組成物の硬化体の機械的強度が向上し、75質量%以上とすることでより顕著となる。これが95質量%以下であることで歯科用組成物の操作性が向上する。
【0033】
1.3.5.その他
コンポジットレジンは、光重合開始剤、光重合促進剤等をさらに含有してもよい。
【0034】
光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4’-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1- メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
なお、光重合開始剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0035】
コンポジットレジン中の光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリレートに対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。この含有量が、(メタ)アクリレートに対して、0.01質量%以上であると、歯科用組成物の光硬化性が向上し、10質量%以下であると、コンポジットレジンの硬化体の光安定性がさらに向上する。
【0036】
光重合促進剤としては、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、N,N-ジメチル-p-トルイジン、トリエタノールアミン、トリルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の3級アミン、バルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸等のバルビツール酸誘導体等が挙げられる。
なお、光重合促進剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0037】
コンポジットレジン組成物中の光重合促進剤の含有量は、(メタ)アクリレートに対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。この含有量が、(メタ)アクリレートに対して、0.01質量%以上であると、歯科用組成物の光硬化性が向上し、10質量%以下であると、歯科用組成物の硬化体の光安定性がさらに向上する。
【0038】
1.4.栓
栓14はシリンダ11の軸線L1方向端部のうちノズル12が配置された側とは反対に配置される部材で、シリンダ11の内側11aに挿入されシリンダ11の開口を塞ぐ部材である。これにより、ペースト状材料13がシリンダ11の開口から流出しないように保持する。栓の態様は特に限定されることはなく公知のディスペンサと同様に考えることができる。
【0039】
1.5.フタ
フタ15はノズル12に覆いかぶさるように配置されノズル12の先端(ペースト状材料13が排出される側端部)の開口を塞ぐことができ、ノズル12に対して着脱可能に設けられた筒状の部材である。
図2には
図1(c)のうちノズル12及びフタ15の部位に注目して拡大した図を示した。
図2からもわかるように、フタ15は、本体16、底板17、及び、凸部18を有している。
【0040】
本体16は、筒状の部材であり、その内側にノズル12が入り込むことができるように構成されている。そのため本体16の一端側は開口しており、ここからノズル12を本体16の内側に差し込むことができる。
【0041】
底板17は、本体16の端部のうちノズル12を差し込む開口が設けられた側とは反対側の端部を塞ぐように配置された板状部材である。これによりノズル12の開口が閉鎖される。従ってフタ15は本体16と底板17とで、一方に底に有する有底の筒状体である。
【0042】
凸部18は、底板17の面のうち、本体16の内側に向けて突出する突起状の部位である。凸部18は後述するようにノズル12の内側に存するペースト状材料13の端部に接触し、ペースト状材料13の当該部位を押圧する押圧面18aを具備している。当該押圧面18aは凸部18の先端、すなわち底板17側とは反対側に形成されている。
【0043】
従って凸部18は、ノズル12の内側12aに挿入することができるような大きさであり、押圧面18aがペースト状材料13に接触する高さを有している。凸部18は押圧面18aが多くのペースト状材料13に接触できることが好ましいことから、押圧面18aは、ノズル12の内側12aの断面積(軸線L2に直交する断面の断面積)の50%以上の比率で占めるような大きさであることが好ましく、より好ましくは90%以上である。ただし、この比率は100%未満であることが好ましい。この比率を100%とすると含まれている空気等の気体が逃げ場を失ってフタ15を押し戻す等の不具合を生じる可能性がある。
【0044】
また、押圧面18aの形状は本形態では平坦面である。平坦面とすることで、ノズル12から吐出したときのペースト状材料13の表面が平滑となり、施術のし易さ及び外観の観点から好ましい。
ただし、押圧面18aに凹凸を設けたり、押圧面18aを粗面にすることを妨げるものではない。これらによれば押圧面18aとペースト状材料13との接触面積を増やすことができ、押圧面18aからペースト状材料13への押圧力を高めることができる。
【0045】
凸部18を構成する材料は特に限定されることはなく、他の部位と同様に樹脂により形成することができる。ただし、ペースト状材料13をより効率よく効果的に押圧する観点から、凸部18をエラストマ樹脂やゴムにより形成してもよい。これらは弾性材料であるため、凸部18がペースト状材料13を押圧した際に弾性変形し、ペースト状材料13の端部の全体を安定してムラなく押圧することができる。
【0046】
1.6.各部の関係
上記したディスペンサ10の各構成要素の関係は上記した通りである。すなわち、シリンダ11の内側11a及びノズル12の内側12aにペースト状材料13が配置されており、シリンダ11の軸線L1方向端部の開口には栓14が挿入されている。ここで栓14の面のうちシリンダ11の内側11aに差し込まれた側の端面はペースト状材料13に接触して配置されており、当該ペースト状材料13を押圧している。これにより栓14側のペースト状材料13の端部も硬化が抑制される。
【0047】
一方、ノズル12にはフタ15が被されており、ノズル12の開口が底板17で閉鎖されている。このとき、フタ15の凸部18がノズル12の内側12aに挿入され、押圧面18aがペースト状材料13に接触してペースト状材料13を押圧するように配置されている。
【0048】
2.効果等
2.1.ペースト状材料の排出
本形態のディスペンサ10では、フタ15を取り外してノズル12の開口を露出させ、不図示のピストンで栓14をシリンダ11の内側11aにさらに押し込むように移動させる。これによりピストンからの押圧力をペースト状材料13に伝えてペースト状材料13がノズル12の開口(先端)から排出される。
【0049】
2.2.凸部による効果
上記したように、本開示ではフタ15がノズル12に配置された姿勢で、フタ15の凸部18がペースト状材料13の先端を押圧した状態となるため、時間が経過しても当該部分においてペースト状材料13が硬くなることを抑制することができる。これによりペースト状材料13のより円滑な排出が可能となる。
発明者らの促進試験によれば、凸部の有無のみが異なるディスペンサにおいて、凸部を設けない場合にはノズル内のペースト状材料の先端部が試験前に比べて試験後に308%硬くなったのに対し、凸部18を設けた場合にはペースト状材料の先端部が試験前に比べて試験後で180%硬くなることに抑えることができた。
【0050】
ここで促進試験は次のように行った。
ペースト状材料が充填されているディスペンサを45℃の環境に置き、1週間静置し、取り出したディスペンサからペースト状材料を吐出させて棒状(直径約2mm)のペースト状材料を得た。この棒状のペースト状材料の先端側5mmをサンプリングし、長さ方向中央部の4mm(両端0.5mmずつは除外)に対してレオメータを用いて押圧して粘度を測定し、これを硬さとした。
【符号の説明】
【0051】
10…ディスペンサ、11…シリンダ、12…ノズル、13…ペースト状材料、14…栓、15…フタ、18…凸部