(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141489
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20241003BHJP
G01L 9/12 20060101ALI20241003BHJP
G01L 9/04 20060101ALI20241003BHJP
G01L 11/02 20060101ALI20241003BHJP
G01L 21/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01L19/00 Z
G01L9/12
G01L9/04
G01L11/02
G01L21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053176
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】新村 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】山内 凱偉
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE12
2F055EE25
2F055EE31
2F055FF07
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】複数のダイアフラムを用いても、センサパッケージ容積の増大を抑制する。
【解決手段】導入室101には、測定対象の流体が導入口113を介して導入される。第1ダイアフラム102は、導入室101に導入された流体の圧力を第1受圧面102aで受ける。第2ダイアフラム103は、導入室101に導入された流体の圧力を第2受圧面103aで受ける。第1ダイアフラム102の第1受圧面102a、第2ダイアフラム103の第2受圧面103aは、導入室101に向けられて配置されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体が導入される導入室と、
前記流体の圧力を受ける各々の受圧面が前記導入室に向けられて配置された第1ダイアフラムおよび第2ダイアフラムと、
前記第1ダイアフラムの変位を測定する第1測定部と、
前記第2ダイアフラムの変位を測定する第2測定部と
を備える圧力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとは、異なる張力を有する圧力センサ。
【請求項3】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとは、異なる厚さとされている圧力センサ。
【請求項4】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとは、異なる面積とされている圧力センサ。
【請求項5】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1測定部は、
前記第1ダイアフラムの可動領域に形成された第1可動電極と、
前記第1可動電極に向かい合って形成された第1固定電極と
を備え、
前記第2測定部は、
前記第2ダイアフラムの可動領域に形成された第2可動電極と、
前記第2可動電極に向かい合って形成された第2固定電極と
を備え、
前記第1ダイアフラムの変位による前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力し、前記第2ダイアフラムの変位による前記第2可動電極と前記第2固定電極との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える圧力センサ。
【請求項6】
請求項5記載の圧力センサにおいて、
少なくとも前記第1可動電極は前記第1ダイアフラムの中央に形成された第1可動測定電極と、前記第1ダイアフラムの周縁に形成された第1可動参照電極とで構成され、かつ、前記第1固定電極は前記第1可動測定電極と対向する位置に設けられる第1固定測定電極と、前記第1可動参照電極と対向する位置に設けられた第1固定参照電極とで構成される圧力センサ。
【請求項7】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1測定部は、前記第1ダイアフラムの変位によって発生する歪みを電気素子を用いて計測し、
前記第2測定部は、前記第2ダイアフラムの変位によって発生する歪みを電気素子を用いて計測するとともに、
前記第1測定部による前記第1ダイアフラムの歪みの計測値を第1圧力値に変換して出力し、前記第2測定部による前記第2ダイアフラムの歪みの計測値を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える圧力センサ。
【請求項8】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記第1測定部は、前記第1ダイアフラムの変位を光学手段を用いて計測し、
前記第2測定部は、前記第2ダイアフラムの変位を光学手段を用いて計測するとともに、
前記第1測定部による前記第1ダイアフラムの変位の計測値を第1圧力値に変換して出力し、前記第2測定部による前記第2ダイアフラムの変位の計測値を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える圧力センサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記第1ダイアフラムの周縁部と接合して前記第1ダイアフラムの前記導入室と反対面側に第1基準圧力室を囲隔する第1ハウジングと、
前記第2ダイアフラムの周縁部と接合して前記第2ダイアフラムの前記導入室と反対面側に第2基準圧力室を囲隔する第2ハウジングと、
前記導入室への前記流体の導入口を備えるとともに前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングとを収容する内部空間を有するセンサ収納ケースを備える圧力センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の圧力センサにおいて、
前記第1ハウジングには前記第1基準圧力室と前記センサ収納ケースの内部空間とを連通する第1連通路が形成されているとともに、
前記第2ハウジングには前記第2基準圧力室と前記センサ収納ケースの内部空間とを連通する第2連通路が形成されている圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、例えば成膜やエッチングなどの工程中のチャンバ圧力制御、あるいは装置の状態検知やインターロックなどで様々な圧力レンジの真空測定要求がある。また、半導体装置の製造においては、製造技術の高度化要求に伴い、装置内計装は複雑化する傾向にあり、個々の構成要素部品にはコンパクト化に向けた改善が求められている。このため、半導体製造装置に用いられる圧力センサにおいても、サイズ縮小が求められている。そこで、各々面積が異なる複数のダイアフラムを用いることで、測定レンジの異なる複数の圧力を測定可能とする圧力センサが開発されている(特許文献1)。この種の圧力センサは、半導体装置を製造する製造装置に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、複数のダイアフラムを同一の平面(層)に配置しているため、面積の増加によりセンサパッケージ容積が大きくなり、サイズ縮小の要求に応えられない場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、複数のダイアフラムを用いても、センサパッケージ容積の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧力センサは、測定対象の流体が導入される導入室と、流体の圧力を受ける各々の受圧面が導入室に向けられて配置された第1ダイアフラムおよび第2ダイアフラムと、第1ダイアフラムの変位を測定する第1測定部と、第2ダイアフラムの変位を測定する第2測定部とを備える。
【0007】
上記圧力センサの一構成例において、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムとは、異なる張力を有する。
【0008】
上記圧力センサの一構成例において、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムとは、異なる厚さとされている。
【0009】
上記圧力センサの一構成例において、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムとは、異なる面積とされている。
【0010】
上記圧力センサの一構成例において、第1測定部は、第1ダイアフラムの可動領域に形成された第1可動電極と、第1可動電極に向かい合って形成された第1固定電極とを備え、第2測定部は、第2ダイアフラムの可動領域に形成された第2可動電極と、第2可動電極に向かい合って形成された第2固定電極とを備え、第1ダイアフラムの変位による第1可動電極と第1固定電極との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力し、第2ダイアフラムの変位による第2可動電極と第2固定電極との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える。
【0011】
上記圧力センサの一構成例において、少なくとも第1可動電極は第1ダイアフラムの中央に形成された第1可動測定電極と、第1ダイアフラムの周縁に形成された第1可動参照電極とで構成され、かつ、第1固定電極は第1可動測定電極と対向する位置に設けられる第1固定測定電極と、第1可動参照電極と対向する位置に設けられた第1固定参照電極とで構成される。
【0012】
上記圧力センサの一構成例において、第1測定部は、第1ダイアフラムの変位によって発生する歪みを電気素子を用いて計測し、第2測定部は、第2ダイアフラムの変位によって発生する歪みを電気素子を用いて計測するとともに、第1測定部による第1ダイアフラムの歪みの計測値を第1圧力値に変換して出力し、第2測定部による第2ダイアフラムの歪みの計測値を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える。
【0013】
上記圧力センサの一構成例において、第1測定部は、第1ダイアフラムの変位を光学手段を用いて計測し、第2測定部は、第2ダイアフラムの変位を光学手段を用いて計測するとともに、第1測定部による第1ダイアフラムの変位の計測値を第1圧力値に変換して出力し、第2測定部による第2ダイアフラムの変位の計測値を第2圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える。
【0014】
上記圧力センサの一構成例において、第1ダイアフラムの周縁部と接合して第1ダイアフラムの導入室と反対面側に第1基準圧力室を囲隔する第1ハウジングと、第2ダイアフラムの周縁部と接合して第2ダイアフラムの導入室と反対面側に第2基準圧力室を囲隔する第2ハウジングと、導入室への流体の導入口を備えるとともに第1ハウジングおよび第2ハウジングとを収容する内部空間を有するセンサ収納ケースを備える。
【0015】
上記圧力センサの一構成例において、第1ハウジングには第1基準圧力室とセンサ収納ケースの内部空間とを連通する第1連通路が形成されているとともに、第2ハウジングには第2基準圧力室とセンサ収納ケースの内部空間とを連通する第2連通路が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、第1ダイアフラムおよび第2ダイアフラムの流体の圧力を受ける各々の受圧面を、測定対象の流体が導入される導入室に向けて配置したので、複数のダイアフラムを用いても、センサパッケージ容積の増大を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態2に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態2に係る他の圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る他の圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る他の圧力センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の原理について説明する。複数のダイアフラムを採用する構造として、平面上に複数のダイアフラムを配置するような構造(特許文献1)や、ダイアフラムを保持する基板を積層する構造を考えてみる。このような基板平面上に複数のダイアフラムを配置する場合、面積の増加によりセンサパッケージ容積が大きくなり、計測媒体のダイアフラム表面までの導入経路が長くなるので圧力応答性が低下する。
【0019】
上記のような観点から、隔膜真空計において、例えば圧力レンジの拡大を目的として異なる圧力レンジの真空計を複合化して単一のセンサ構造にするのであれば、測定媒体の導入口を共有化できる点に、コンパクト化に向けた改善の余地があることを見出した。そこで、導入口を複数の真空計で共有する場合、各真空計のダイアフラムの受圧面が圧力導入室に向き合う配置にすることで、コンパクト化の効果が得られることに想到した。この結果、複数のセンサが重なった形状となり、かつ圧力導入経路をダイアフラムまでと短くできるのでコンパクト化において効果的である。すなわち、パッケージ形状を例えばコンパクトな平板状にすることが可能になる。コンパクト化に加え、単一の真空計と同様にそれぞれのセンサが別体で存在するので、特許文献1とは異なりセンサ間での干渉を抑え高精度な計測が可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る圧力センサについて説明する。
【0021】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る圧力センサについて、
図1A、
図1Bを参照して説明する。この圧力センサは、導入室101、第1ダイアフラム102、第2ダイアフラム103を備える。また、この圧力センサは、第1ダイアフラム102の変位を測定する第1測定部100a、および第2ダイアフラム103の変位を測定する第2測定部100bを備える。
【0022】
導入室101、第1ダイアフラム102、第2ダイアフラム103、第1測定部100a、および第2測定部100bは、筐体121に形成されている。筐体121は、配線部品141に接続され、センサ収納ケース131の内部空間に収容されている。配線部品141は、よく知られた実装基板などと同様のセラミックスあるいは樹脂から構成することができる。
【0023】
導入室101には、測定対象の流体が導入口113を介して導入される。第1ダイアフラム102は、導入室101に導入された流体の圧力を第1受圧面102aで受ける。第2ダイアフラム103は、導入室101に導入された流体の圧力を第2受圧面103aで受ける。第1ダイアフラム102の第1受圧面102a、および第2ダイアフラム103の第2受圧面103aは、導入室101に向けられて配置されている。この例では、第1受圧面102aと第2受圧面103aとは、導入室101を挾んで互いに向かい合って配置されている。この例において、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とは、異なる厚さとされている。また、例えば、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とは、互いに平行に配置することができる。
【0024】
また、この圧力センサは、第1測定部100aに、第1可動電極105および第1固定電極106を備え、第2測定部100bに、第2可動電極109および第2固定電極110を備える。例えば、第1固定電極106は、第1貫通電極114aにより配線部品141に形成されている配線層(不図示)に接続している。また、第2固定電極110は、第2貫通電極114bにより配線部品141に形成されている配線層(不図示)に接続している。配線部品141の一部は、センサ収納ケース131の外部に取り出されており、この部分において、上述した各配線層が外部に取り出され、例えば、後述する圧力値出力部112に接続している。第1可動電極105や第2可動電極109についても同様である。
【0025】
第1可動電極105は、第1基準圧力室104の中で第1ダイアフラム102の第1内側面102bに形成されている。第1可動電極105は、第1ダイアフラム102の可動領域に形成されている。また、第1固定電極106は、第1基準圧力室104の中で第1可動電極105に向かい合って配置されている。例えば、第1ダイアフラム102は、第1ハウジングに接合している。第1ハウジングは、第1ダイアフラム102の周縁部と接合しており、第1ダイアフラム102の導入室101と反対面側に第1基準圧力室104を囲隔している。
【0026】
また、第1ダイアフラム102の第1内側面102bとともに第1基準圧力室104を形成する第1固定面107に、第1固定電極106が形成されている。第1内側面102bと第1固定面107とは、互いに平行な状態とすることができる。また、第1可動電極105と第1固定電極106との各々の向き合う面は、互いに平行な状態とすることができる。
【0027】
第2可動電極109は、第2基準圧力室108の中で第2ダイアフラム103の第2内側面103bに形成されている。第2可動電極109は、第2ダイアフラム103の可動領域に形成されている。第2固定電極110は、第2基準圧力室108の中で第2可動電極109に向かい合って配置されている。例えば、第2ダイアフラム103は、第2ハウジングに接合している。第2ハウジングは、第2ダイアフラム103の周縁部と接合しており、第2ダイアフラム103の導入室101と反対面側に第2基準圧力室108を囲隔している。
【0028】
また、第2ダイアフラム103の第2内側面103bとともに第2基準圧力室108を形成する第2固定面111に、第2固定電極110が形成されている。第2内側面103bと第2固定面111とは、互いに平行な状態とすることができる。また、第2可動電極109と第2固定電極110との各々の向き合う面は、互いに平行な状態とすることができる。
【0029】
上述したように、筐体121は、第1ダイアフラム102、第1ハウジング、第2ダイアフラム103、第2ハウジングから構成され、センサ収納ケース131の内部空間に収容されている。
【0030】
なお、少なくとも、第1可動電極105は、第1ダイアフラム102の中央に形成された第1可動測定電極(不図示)と、第1ダイアフラム102の周縁に形成された第1可動参照電極(不図示)とから構成することができる。一方、第1固定電極106は、第1可動測定電極と対向する位置に設けられる第1固定測定電極(不図示)と、第1可動参照電極と対向する位置に設けられた第1固定参照電極(不図示)とで構成することができる。
【0031】
第1ダイアフラム102に変位が発生しても第1可動参照電極と第1固定参照電極との間隔はほとんど変化しない。従って、第1可動参照電極と第1固定参照電極との間の容量変化を基準として、第1可動測定電極と第1固定測定電極との間の容量変化をとらえれば、第1ダイアフラム102の変位量をばらつき無く検出できるようになる。なお、第2可動電極109、第2固定電極110についても同様の構成とすることができるが、両両者が上述した参照電極を用いる構成とする必要はなく、一方が上述した参照電極を用いる構成とすることができる。
【0032】
導入室101、第1基準圧力室104、第2基準圧力室108は、筐体121の内部に形成された空間である。導入室101と第1基準圧力室104とが、第1ダイアフラム102により空間的に仕切られている。また、導入室101と第2基準圧力室108とが、第2ダイアフラム103により空間的に仕切られている。また、筐体121に形成された導入口113により、導入室101が外部と連通している。この例では、筐体121は、センサ収納ケース131に収容され、センサ収納ケース131に形成されたケース導入口135に連続して形成され、導入口113、ケース導入口135により、導入室101が外部と連通している。
【0033】
センサ収納ケース131に収容された筐体121は、導入口113が形成されている上面と、ケース導入口135が形成されているセンサ収納ケース131の上部内壁とが接合されている。また、センサ収納ケース131の内部は、密閉空間とすることができる。この圧力センサは、センサ収納ケース131を測定対象の流体が存在する雰囲気に配置して用いられる。センサ収納ケース131が配置された領域の測定対象の流体は、ケース導入口135および導入口113により導入室101に導入されて第1受圧面102a、第2受圧面103aに作用する。一方、センサ収納ケース131の他の内部空間は、センサ収納ケース131の外部空間とは隔たれており、測定対象の流体に触れることがない。例えば、第1基準圧力室104、第2基準圧力室108の内部が、測定対象の流体に触れることはない。
【0034】
また、第1基準圧力室104,第2基準圧力室108の各々は、真空が維持された空間とすることができる。例えば、筐体121は、第1基準圧力室104と外部とを連通する第1連通路122a、および第2基準圧力室108と外部とを連通する第2連通路122bを備えることができる。第1連通路122aは、密閉空間とされているセンサ収納ケース131の内部空間と、第1基準圧力室104とを連通する。また、第2連通路122bは、密閉空間とされているセンサ収納ケース131の内部空間と、第2基準圧力室108とを連通する。従って、センサ収納ケース131の内部空間を真空状態とすることで、第1基準圧力室104,第2基準圧力室108の各々を、真空が維持された空間とすることができる。センサ収納ケース131の内部空間を真空状態として用いる場合、センサ収納ケース131の内部に、内部の残留ガスを除去する吸着材(ゲッター)142を配置することができる。
【0035】
また、第1連通路122aを設けずに、例えば、第1基準圧力室104を、第1ダイアフラム102の第1受圧面102aの反対側の第1内側面102bを1の面として形成された密閉空間とすることで、真空を維持することができる。同様に、第2連通路122bを設けずに、例えば、第2基準圧力室108を、第2ダイアフラム103の第2受圧面103aの反対側の第2内側面103bを1の面として形成された密閉空間とすることで、真空を維持することができる。
【0036】
例えば、センサ収納ケース131は、ニッケル系合金などの耐食金属から構成することができる。また、例えば、筐体121は、サファイア(コランダム)から構成することができる。例えば、固相接合、ロウ付け、拡散接合などの各種接合方法により、筐体121の上面を、センサ収納ケース131の上部内側面に接合して固定することができる。
【0037】
また、この圧力センサは、圧力値出力部112を備える。圧力値出力部112は、まず、第1ダイアフラム102の変位による第1可動電極105と第1固定電極106との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力する。また、圧力値出力部112は、第2ダイアフラム103の変位による第2可動電極109と第2固定電極110との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力する。第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とを異なる厚さとしているので、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。
【0038】
なお、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103と、各々異なる面積としても、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。また、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とを、各々異なる張力を持つように設置しても、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。
【0039】
上述した圧力センサは、導入室101を第1測定部100aと第2測定部100bとで共有し、各測定部のダイアフラムの受圧面を向き合わせて配置しているので、センサ全体をコンパクトに構成することができる。従来技術のように、複数のダイアフラムを同一の層に形成する場合、異なるダイアフラムの間の干渉が問題となるが、上述した圧力センサは、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とを、異なる層に形成しているので干渉が発生せず、高精度な計測が可能となる。
【0040】
また、上述した圧力センサは、共通の導入口を介した圧力の導入経路を、各測定部のダイアフラムに対して同じ長さとすることが容易であり、同一の圧力応答性を確保しやすい。また、各測定部のダイアフラムの受圧面を、向き合わせて対称配置することができ、各々のダイアフラムにおける力学的バランスを確保しやすい。また、この種のセンサがパッケージされる際に、半導体製造プロセスの副次的生成物を堆積防止するために捕集のためのバッフルがダイアフラムの手前に設置されることがあるが、上述した圧力センサは圧力導入口を共有しているために、効率的な小型バッフルが設計可能となる。
【0041】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る圧力センサについて、
図2を参照して説明する。この圧力センサは、第1導入室101a、第2導入室101b、第1ダイアフラム102、第2ダイアフラム103を備える。また、この圧力センサは、第1ダイアフラム102の変位を測定する第1測定部100a、および第2ダイアフラム103の変位を測定する第2測定部100bを備える。
【0042】
第1ダイアフラム102、第1測定部100aは、第1筐体121aに形成され、第2ダイアフラム103、第2測定部100bは、第2筐体121bに形成されている。第1筐体121a、第2筐体121bは、配線部品141に接続され、センサ収納ケース131aに収容されている。また、第1測定部100a(第1筐体121a)および第2測定部100b(第2筐体121b)は、センサ収納ケース131aに固定されている。なお、
図2では、センサ収納ケース131aの一部を示している。センサ収納ケース131aは、前述したセンサ収納ケース131と同様の構造とされ、センサ収納ケース131aの内部は、密閉空間とすることができる。
【0043】
センサ収納ケース131aは、一体に形成された仕切板132を備える。第1測定部100aおよび第2測定部100bは、仕切板132を挾んで配置されている。また、仕切板132の第1接合面132aに第1測定部100aが接合(固定)され、仕切板132の第2接合面132bに第2測定部100bが接合(固定)されている。
【0044】
また、第1ダイアフラム102の第1受圧面102aと第1接合面132aとの間に第1測定部100aの第1導入室101aが形成され、第2ダイアフラム103の第2受圧面103aと第2接合面132bとの間に第2測定部100bの第2導入室101bが形成されている。
【0045】
センサ収納ケース131aには導入口113aが形成され、仕切板132に形成された導入路133に接続している。また、仕切板132には、仕切板132の板厚方向に貫通する分岐路134が形成され、分岐路134に導入路133が接続している。第1導入室101aと第2導入室101bとが、分岐路134で連通している。
【0046】
第1ダイアフラム102は、導入口113a、導入路133、および分岐路134を経由して第1導入室101aに導入された流体の圧力を第1受圧面102aで受ける。第2ダイアフラム103は、導入口113a、導入路133、および分岐路134を経由して第2導入室101bに導入された流体の圧力を第2受圧面103aで受ける。第1ダイアフラム102の第1受圧面102aは、第1導入室101aに向けられて配置されている。また、第2ダイアフラム103の第2受圧面103aは、第2導入室101bに向けられて配置されている。この例では、第1受圧面102aと第2受圧面103aとは、仕切板132を挾んで互いに向かい合って配置されている。また、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とは、互いに平行に配置することができる。
【0047】
また、この圧力センサは、第1測定部100aに、第1可動電極105および第1固定電極106を備え、第2測定部100bに、第2可動電極109および第2固定電極110を備える。
【0048】
第1可動電極105は、第1基準圧力室104の中で第1ダイアフラム102の第1内側面102bに形成されている。また、第1固定電極106は、第1基準圧力室104の中で第1可動電極105に向かい合って配置されている。第1ダイアフラム102の第1内側面102bとともに第1基準圧力室104を形成する第1固定面107に、第1固定電極106が形成されている。
【0049】
第2可動電極109は、第2基準圧力室108の中で第2ダイアフラム103の第2内側面103bに形成されている。第2固定電極110は、第2基準圧力室108の中で第2可動電極109に向かい合って配置されている。第2ダイアフラム103の第2内側面103bとともに第2基準圧力室108を形成する第2固定面111に、第2固定電極110が形成されている。
【0050】
例えば、第1固定電極106は、第1貫通電極114a(
図2に不図示)により配線部品141に形成されている配線層(不図示)に接続している。また、第2固定電極110は、第2貫通電極114b(
図2に不図示)により配線部品141に形成されている配線層(不図示)に接続している。配線部品141の一部は、センサ収納ケース131aの外部に取り出されており、この部分において、上述した各配線層が外部に取り出され、例えば、後述する圧力値出力部112に接続している。第1可動電極105や第2可動電極109についても同様である。
【0051】
第1導入室101aは、第1筐体121aに形成された凹部であり、第1基準圧力室104は、第1筐体121aに形成された空間である。また、第2導入室101bは、第2筐体121bに形成された凹部であり、第2基準圧力室108は、第2筐体121bに形成された空間である。第1導入室101aと第1基準圧力室104とが、第1ダイアフラム102により空間的に仕切られている。また、第2導入室101bと第2基準圧力室108とが、第2ダイアフラム103により空間的に仕切られている。
【0052】
また、第1基準圧力室104,第2基準圧力室108の各々は、真空が維持された空間とすることができる。例えば、筐体121は、第1基準圧力室104と外部とを連通する第1連通路122a、および第2基準圧力室108と外部とを連通する第2連通路122bを備えることができる。第1連通路122aは、密閉空間とされているセンサ収納ケース131aの内部空間と、第1基準圧力室104とを連通する。また、第2連通路122bは、密閉空間とされているセンサ収納ケース131aの内部空間と、第2基準圧力室108とを連通する。従って、センサ収納ケース131aの内部空間を真空状態とすることで、第1基準圧力室104,第2基準圧力室108の各々を、真空が維持された空間とすることができる。
【0053】
また、第1連通路122aを設けずに、例えば、第1基準圧力室104を、第1ダイアフラム102の第1受圧面102aの反対側の第1内側面102bを1の面として形成された密閉空間とすることで、真空を維持することができる。同様に、第2連通路122bを設けずに、例えば、第2基準圧力室108を、第2ダイアフラム103の第2受圧面103aの反対側の第2内側面103bを1の面として形成された密閉空間とすることで、真空を維持することができる。
【0054】
例えば、センサ収納ケース131a、仕切板132は、ニッケル系合金などの耐食金属から構成することができる。また、例えば、第1筐体121a、第2筐体121bは、サファイア(コランダム)から構成することができる。例えば、固相接合、ロウ付け、拡散接合などの各種接合方法により、第1筐体121a、第2筐体121bを、仕切板132に接合して固定することができる。
【0055】
また、この圧力センサは、圧力値出力部112を備える。圧力値出力部112は、まず、第1ダイアフラム102の変位による第1可動電極105と第1固定電極106との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力する。また、圧力値出力部112は、第2ダイアフラム103の変位による第2可動電極109と第2固定電極110との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力する。
【0056】
上述した圧力センサは、第1導入室101aおよび第2導入室101bが分岐路134で連通し、連続した空間として第1測定部100aと第2測定部100bとで共有し、各測定部のダイアフラムの受圧面を向き合わせて配置しているので、センサ全体をコンパクトに構成することができる。従来技術のように、複数のダイアフラムを同一の層に形成する場合、異なるダイアフラムの間の干渉が問題となるが、上述した圧力センサは、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とを、異なる層に形成しているので干渉が発生せず、高精度な計測が可能となる。
【0057】
また、上述した圧力センサは、共通の導入口を介した圧力の導入経路を、各測定部のダイアフラムに対して同じ長さとすることが容易であり、同一の圧力応答性を確保しやすい。また、各測定部のダイアフラムの受圧面を、向き合わせて対称に配置することができ、各々のダイアフラムにおける力学的バランスを確保しやすい。また、この種のセンサがパッケージされる際に、半導体製造プロセスの副次的生成物を堆積防止するために捕集のためのバッフルがダイアフラムの手前に設置されることがあるが、上述した圧力センサは圧力導入口を共有しているために、効率的な小型バッフルが設計可能となる。
【0058】
また、
図3に示すように、導入口113aの内側にサファイア(コランダム)などの結晶材料から構成した板部材136を設けることができる。このように、機械的な強度が高い結晶材料を併用することで、微細な導入口113a分岐路134の構造が作製しやすくなり、また、機械的な耐久性を向上させることができる。
【0059】
なお、上述では、ダイアフラムの変位を可動電極および固定電極を用いた容量変化として測定したが、これに限るものではない。例えば、
図4に示すように、ピエゾ素子(電気素子)201を用いて第1ダイアフラム102,第2ダイアフラム103の変位によって発生する歪みを計測する構成することができる。ピエゾ素子201は、ワイヤなどにより配線部品141の図示しない配線層に接続し、この配線層により圧力値出力部112に接続している。
【0060】
第1測定部100aは、第1ダイアフラム102に設けたピエゾ素子201により第1ダイアフラム102の歪みを計測し、第2測定部は、第2ダイアフラム103に設けたピエゾ素子201により第2ダイアフラム103の歪みを計測する。圧力値出力部112は、第1測定部による第1ダイアフラム102の歪みの計測値を第1圧力値に変換して出力し、第2測定部による第2ダイアフラム103の歪みの計測値を第2圧力値に変換して出力する。なお、
図4において、
図1A、
図1Bと同一の符号で示すものは、
図1A、
図1Bと同様であるので、重複した説明は省略する。
【0061】
また、ダイアフラムの変位は光学手段を用いて計測することができる。例えば、
図5に示すように、第1測定部100aは、第1ダイアフラム102の変位を、光ファイバ202aを含む光学手段を用いてダイアフラム表面と固定面の干渉光として光学的に測定することができる。同様に、第2測定部100bは、第2ダイアフラム103の変位を、光ファイバ202bを含む光学手段を用いてダイアフラム表面と固定面の干渉光として光学的に測定することができる。この場合、第1ダイアフラム102の表面に反射構造105aを形成し、第2ダイアフラム103の表面に反射構造109aを形成することができる。なお、
図5において、
図1A、
図1Bと同一の符号で示すものは、
図1A、
図1Bと同様であるので、重複した説明は省略する。
【0062】
また、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103とを異なる厚さとすることで、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。なお、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103と、各々異なる面積としても、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。また、第1ダイアフラム102と第2ダイアフラム103と、各々異なる張力を持つように設置しても、第1測定部100aと第2測定部100bとで、異なる測定レンジとすることができる。
【0063】
以上に説明したように、本発明によれば、第1ダイアフラムおよび第2ダイアフラムの流体の圧力を受ける各々の受圧面を、測定対象の流体が導入される導入室に向けて配置したので、複数のダイアフラムを用いても、センサパッケージ容積の増大を抑制することができる。
【0064】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0065】
100a…第1測定部、100b…第2測定部、101…導入室、102…第1ダイアフラム、102a…第1受圧面、102b…第1内側面、103…第2ダイアフラム、103a…第2受圧面、103b…第2内側面、104…第1基準圧力室、105…第1可動電極、106…第1固定電極、107…第1固定面、108…第2基準圧力室、109…第2可動電極、110…第2固定電極、111…第2固定面、112…圧力値出力部、113…導入口、121…筐体。