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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141492
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/06
A61K8/63
A61K8/44
A61K8/55
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053181
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】伊達(藤原) 美乃里
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB371
4C083AB372
4C083AB381
4C083AB382
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC682
4C083AC852
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD222
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD662
4C083BB05
4C083BB13
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便に高いパック後感が得られ、さらに安定性に優れる水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)~(E)を含有し、かつ乳化滴の平均粒子径が500nm以下であることを特徴とする、水中油型乳化化粧料。
(A)水膨潤性粘土鉱物
(B)コレステロール、フィトステロールから選択される少なくとも1種以上
(C)アニオン系界面活性剤
(D)直鎖構造を有する一価の高級アルコール
(E)液状油
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(E)を含有し、かつ乳化滴の平均粒子径が500nm以下であることを特徴とする、水中油型乳化化粧料。
(A)水膨潤性粘土鉱物
(B)コレステロール、フィトステロールから選択される少なくとも1種以上
(C)アニオン系界面活性剤
(D)直鎖構造を有する一価の高級アルコール
(E)液状油
【請求項2】
前記成分(A)が、ベントナイト、ケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(C)がN-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム、セチルリン酸カリウムから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(D)がセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
エアゾールスプレー型またはノンエアゾールスプレー型である、請求項1~4いずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関し、更に詳細には、特定成分を含むことにより高いパック後感が得られ、さらに安定性に優れる水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スペシャルケアの位置付けであるスキンケア方法の一つに、シートマスクを用いたパックがある。シートマスクは、化粧水等のパック用化粧料を、化粧用コットン等の不織布製のシート等に含浸させたものであり、シートによる閉塞効果によって高い保湿効果が得られる。より具体的には、シートマスクを使用することにより、通常のスキンケアに用いる薬液量と比較してより多くの薬液を肌上に適用して保持することができ、さらにその薬液をシートによって長時間密閉することができるため、結果として高い保湿効果が得られる。また、一般に化粧水は、単に皮膚に塗布しただけの場合には満足感が得られにくいが、化粧水を含浸させたシートマスクという形態で使用した場合には、その使用後において高い満足感を得ることができる。本願では、このシートマスクを使用した後に得られる高い満足感(使用感)を「パック後感」と称する。多くのシートマスク愛用者が、このパック後感を体感的に認識しているが、何が起因してこのパック後感が得られるのかは知られていなかった。本願発明者らは、このパック後感が得られる原理を解明したので、詳細は後述する。
【0003】
シートマスクは、使用感においては高い評価があるものの、その使用方法については、不織布を顔面に貼り付ける手間がかかるため、簡便さの観点で課題があった。昨今の共働き家庭の割合が増加している情勢などを鑑みると、スキンケアにおける簡便さへの需要は高まっており、使用方法の簡便性は重要なファクターの一つである。また、敏感肌の方がシートマスクを使用する場合においては、不織布による皮膚刺激を誘発されることがあるという問題があった。
【0004】
簡便さを叶えるには、シートマスクを使用した後のような満足感すなわちパック後感を、不織布を用いることなく、一つの製剤を肌に塗布することで達成する必要がある。
一つの製剤で行う簡便なスキンケア方法の一例として、オールインワンゲルの使用が挙げられる。オールインワンゲルとは、一般に、化粧水、乳液、クリームなどの複数の製剤の役割を一つで達成することが可能であることを謳った製剤であり、一つの製剤で簡便にケアできるという特長がある。しかしながら、オールインワンゲルは、一般的にさっぱりした感触であることが多いためか、シートマスクを使用した後のような高いパック後感が得られにくく、スペシャルケアとしては満足度が低いという課題があった。
【0005】
そこで、製剤中に油分を多く含むクリームやクリームパックを用いるという手段が考えられるが、この場合においては、油分は十分に含まれるためか、一定の満足感が得られるものの、製剤中の水分が少ないからか、パック後感が得られない。そこで、シートマスクを使用した後のようなパック後感を得るために、事前に化粧水などで水分を与える方法が考えられるが、それでは一つの製剤で十分なパック後感を得ることができず、簡便さに欠けるという問題があった。
【0006】
一般的な水中油型乳化化粧料では、粒子径を小さくすることで、安定性や、肌になじんで浸透するような使用感を満たしている。
油性成分の粒子径が小さく、かつ皮膚表面を油性成分で覆うことができる技術として、特許文献1が開示されている。該発明は、微粒子化された固形油分を水相中に安定に分散させた組成物を外用剤として皮膚に適用した際に、微粒子を形成した油性成分が水性成分の皮膚への浸透を阻害しないため、最初に肌にみずみずしさを付与でき、次第に油の微粒子がつぶされて皮膚表面の全体を油性成分が覆うため、最後には肌にしっとり感をもたらすことができるとされている。しかし、該発明においては、パック後感については何ら検討されておらず、また油性粒子は微細に分散されており、油性粒子が小さい場合においては皮膚に浸透しやすくなることから、油性成分の皮膚表面への残留性は期待できない。加えて、後述するパック後感が得られる原理からすれば、水性成分の皮膚への浸透よりも早く油の微粒子がつぶされて皮膚表面の全体を油性成分が覆うため、大部分の水は皮膚に浸透することなく空気中に蒸散して失われることから、十分なパック後感が得られない。さらには、油相が常温で固形となるように固形油や半固形油が高配合されていることから、肌なじみが良くなりすぎてしまい、水分の上を油分で覆っている等の感触、すなわちパック後感は期待できない。
【0007】
他には、皮膚に水性成分を浸透させるとともに、皮膚表面を油性成分で覆うことができる技術として、特許文献2が開示されている。該発明は、大粒子の固形油分を水相中に安定分散させた組成物に関するもので、油相成分を大粒子とすることで皮膚への油性成分の浸透を阻害し、油相成分を固形油分とすることで油性成分を皮溝と皮丘に均一に分布させることができる。また、水膨潤性粘土鉱物を含むことで、組成物中の油性成分と水性成分が共に皮膚表面に付着して水性成分の皮膚への浸透が阻害されないよう、水性成分と油性成分が混在した状態で皮膚表面に付着する配置に制御することができる。これらを組み合わせることで、結果として、皮膚閉塞性と皮膚への水分供給を同時に満たし、高い保湿効果を得ることができるとされている。しかし、該発明においては、油相が常温で固形となるように固形油や半固形油が高配合されていることから、後述するパック後感が得られる原理からすれば、肌なじみが良くなりすぎてしまい、水分の上を油分で覆っている等の感触、すなわちパック後感は期待できない。また、大粒子を安定分散させるためには、粘度を付与するなど特段の処方上の工夫が必要となるため、処方の制約が大きく、実施可能な製剤が限定されてしまうなど、汎用的に応用可能な技術とは言い難い。
【0008】
以上より、従来技術においては、シートマスクを使用した後のような満足感すなわちパック後感を、一つの製剤の使用のみで達成可能な水中油型乳化化粧料が得られる術は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-256971号公報
【特許文献2】特開2022-84033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、一つの製剤の使用のみで高いパック後感が得られ、さらに安定性に優れる水中油型乳化化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者が鋭意研究した結果、
下記成分(A)~(E)
(A)水膨潤性粘土鉱物
(B)コレステロール、フィトステロールから選択される少なくとも1種以上
(C)アニオン系界面活性剤
(D)直鎖構造を有する一価の高級アルコール
(E)液状油
を含有し、かつ乳化滴の平均粒子径が 500nm以下であることを特徴とする、水中油型乳化化粧料を提供することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚への油相成分の浸透を阻害するとともに、皮膚表面において油相成分を密に均一配置することができ、結果として、肌に適用した際に高いパック後感が得られ、さらに安定性に優れる水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。なお、特段注釈のない限り、以下で成分の配合量を「%」で表示する場合は質量%を意味する。
【0014】
本願でいう、パック後感とは、シートマスクを使用した後、すなわちシートマスクを使用した後に得られる高い満足感(使用感)を指す。
本願発明者らは、過去に行われたシートマスクをはじめとする化粧品の使用テストと、パネルの自由評価を公知の解析手法を用いて分析した結果、パック後感は、皮膚に十分な水分を与えるとともに、その上の皮膚表面を油分で均一に覆うことでシートマスクを使用した後のような高いパック後感が得られるということを見出した。本発明は、本原理を具現化したものである。
【0015】
本発明に用いる成分(A)の水膨潤性粘土鉱物は、層状無機添加剤として知られている。特に限定はされないが、具体的にはベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、およびスチーブンサイト等のスメクタイト類を挙げることができ、天然物であっても合成物であってもいずれもよい。これらの中でも、ベントナイトや、ヘクトライトであるケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)やフルオロケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)、サポナイトであるケイ酸(アルミニウム/マグネシウム)の配合が好ましく、中でも、ベントナイトまたはケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)の配合がさらに好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明における成分(A)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料全量中0.05質量%~5.0質量%が好ましく、0.1質量%~3.0質量%がより好ましい。この範囲であれば、パック後感が非常に優れている。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)であるコレステロール、フィトステロールは、構造中にステロール骨格を持つ物質である。例えば、ステロール骨格を持つ物質としては、コレステロール、フィトステロール(β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等)等が挙げられる。これらは、少なくとも1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明における成分(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料全量中0.05質量%~1.0質量%が好ましく、0.1質量%~0.8質量%がより好ましい。この範囲であれば、安定性が非常に優れている。
【0019】
本発明に用いられる成分(C)アニオン系界面活性剤は、特に限定されないが、N-アシルグルタミン酸塩(N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等)、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、高級アルキルリン酸エステル塩(セチルリン酸カリウム等)、高級アルキル硫酸エステル塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等)、N-アシルサルコシン酸(ラウロイルサルコシンナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等)、リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、硫酸化油(ロート油等)、POE-アルキルエーテルカルボン酸、POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、カゼインナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、N-アシルグルタミン酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩の配合が好ましく、中でも、N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム、セチルリン酸カリウムの配合がさらに好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明における成分(C)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料全量中0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.05質量%~2.0質量%がより好ましい。この範囲であれば、安定性が非常に優れている。
【0021】
本発明に用いられる成分(D)直鎖構造を有する一価の高級アルコールの炭素数は特に限定されない。例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、アラキジルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、パック後感を高める観点から、炭素数16~22の一価の直鎖状飽和アルコールが好ましく、中でもセチルアルコール、ステアリルアルコールまたはベヘニルアルコールの配合が好ましい。
【0022】
本発明における成分(D)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料全量中0.01質量%~5.0質量%が好ましく、0.05質量%~3.0質量%がより好ましい。この範囲であれば、パック後感が非常に優れている。
【0023】
本発明に用いられる成分(E)液状油は、常温(25℃)で流動性を有する油性成分であり、特に限定されない。具体的には、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ウンデカン、トリデカンなどの炭化水素油、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸プロピルヘプチル、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、炭酸ジカプリリルなどのエステル油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリルなどのアシルグリセロール、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ラノリンなどの動植物油、ジメチコン、フェニルトリメチコン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、カプリリルメチコンなどのシリコーン油が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明における成分(E)の配合量は、特に限定されるものではないが、化粧料全量中5.0質量%~50.0質量%が好ましく、10.0質量%~40.0質量%がより好ましい。この範囲であれば、パック後感および安定性が非常に優れている。
【0025】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記の必須成分のほかに、必要に応じ一般的に化粧料などに用いられる成分を配合することも可能である。例えば、パール剤、保湿剤、成分(B)、(D)、(E)以外の油剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、油溶性ゲル化剤、皮膜形成剤、成分(C)以外の界面活性剤、成分(A)以外の水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、抗炎症剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類等の添加物を適時配合することができる。これら成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0026】
本発明の水中油型乳化化粧料は、以上に示した成分に対して、混合および乳化滴を微細化することにより得られる。乳化滴を微細化する手段としては、特に限定はされないが、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置、超音波乳化機などを用いて処理することにより、より安定なものが得られる。
【0027】
本発明の水中油型乳化化粧料は、株式会社島津製作所製のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano)を使用して乳化滴の平均粒子径(メディアン径)を測定することができる。本発明では、本装置を使用して測定した結果である。本発明品の平均粒子径は、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。この範囲であれば、パック後感が非常に優れている。
【0028】
本発明の水中油型乳化化粧料の形態は特に限定されず、例えば、ジェル剤、ローション剤、スプレー剤(エアゾール型、ノンエアゾール型)等であってもよい。
上記の中でも、本発明の水中油型乳化化粧料の形態としては、簡便さや、パック後感を高める観点から、スプレー剤が好ましく、その中でもエアゾールスプレー型水中油型乳化化粧料がより好ましい。
【0029】
エアゾールスプレー型として実施する場合、エアゾール容器には、本発明の化粧料を原液とし、当該原液と噴射剤をともに充填する。噴射剤は、エアゾール製品全般に用い得る噴射剤であれば、特に限定されない。例えば、窒素ガスや炭酸ガスのような圧縮ガスや、各種の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物のような液化ガス等が用いられ得る。LPGはプロパン、ブタン、イソブタンを主成分とする液化石油ガスである。
これらの噴射剤はそれぞれ単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。化粧料原液と噴射剤の配合比率は、例えば窒素ガスであれば、化粧料原液90.0質量%~99.5質量%に対し、噴射剤を0.5質量%~10.0質量%とすることができる。
【0030】
また、本発明における水中油型乳化化粧料の粘度は、特に限定されないが、スプレー剤として使用する場合には、充填した際の吐出性の観点から、20℃において水溶液状の物性を示すことが好ましい。B型粘度計により測定した粘度範囲は、ローターNo.1・回転数12rpm・1分間・20℃で測定したときに500mPa・s未満であることが好ましく、ローターNo.1・回転数30rpm・1分間・20℃で測定したときに200mPa・s未満であることが更に好ましい。この範囲であれば、スプレー剤として充填した際に、薬液を均一に噴霧することができ、パック後感が非常に優れている。
【0031】
必要に応じて、本発明品を皮膚に適用する前もしくは後に、別の化粧料を肌に適用しても差し支えない。例えば、本発明品を皮膚に適用する前に化粧水を適用することや、本発明品を皮膚に適用した後に美容液やクリームを適用することができる。
【実施例0032】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
<パック後感の評価方法>
表1~表3に示す処方につき、シートマスク使用と比較したときのパック後感の有無を、以下の方法で評価し、判定した。なお、シートマスクで閉塞することにより発現するパック後感を比較対象とするため、シートマスクに含侵させる薬液の処方は、標準的な化粧水処方とし、不織布は市場で広く流通している汎用的なものを使用した。
[シートマスクの詳細および薬液含侵量]
不織布としてオイコスAP2060(材質:コットン100%、目付量:60g/m)を使用し、以下に示す薬液を不織布重量の10倍量含侵させたものを、比較対象として用いた。
[薬液の処方]
(成分) (配合量)
1,3-ブチレングリコール 6.0%
グリセリン 4.0%
ポリソルベート20 0.5%
メチルパラベン 0.2%
エチルパラベン 0.2%
精製水 残余
合計 100.0%
[評価方法]
10人の専門パネルに実際に使用してもらい、パック後感について、官能評価により以下の基準に従って判定を行なった。
比較対象:
上記シートマスクを顔面に貼り付け、5分間おき、はがしてから3分後のパック後感
評価対象:
(実施例1~18、比較例1~14)実施例および比較例の薬液を、適量顔面に塗布し、塗布完了してから3分後のパック後感
(実施例19、比較例15)薬液をエアゾールに充填したものを、顔面に対して鼻を中心に円を描くように3秒間噴霧し、噴射完了してから3分後のパック後感
[評価基準]
◎:8~10人が、評価対象について、比較対象よりもパック後感が高いと回答した。
○:5~7人が、評価対象について、比較対象よりもパック後感が高いと回答した。
△:2~4人が、評価対象について、比較対象よりもパック後感が高いと回答した。
×:0~1人が、評価対象について、比較対象よりもパック後感が高いと回答した。
【0034】
製剤を40度で1か月静置させ、熟練した技術者が目視により状態を評価した。
[評価基準]
◎:分離・クリーミングがまったく起こっていない。
〇:分離・クリーミングがほどんど起こっていない。
△:分離・クリーミングがわずかに起こっている。
×:分離・クリーミングが顕著に起こっている。
【0035】
<製法>
実施例1~16、比較例1~12の薬液:
油相および水相をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行った。
実施例17の薬液:
油相および水相をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて30MPaの圧力で高圧処理を行った。
実施例18の薬液:
油相と、水相(カルボマーおよび水酸化カリウムを除く)をそれぞれ加熱混合し、それらを80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行った。次いで、得られた乳化物に対し、最終的に薬液中のカルボマーの純分が0.05%となるようにカルボマー水溶液を添加した後、水酸化カリウム水溶液で中和した。
比較例13の薬液:
油相および水相をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて30MPaの圧力で高圧処理を行った。
比較例14の薬液:
油相および水相をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合した後冷却し、乳化物を得た。
実施例19、比較例15:実施例19には実施例4の薬液を、比較例15には比較例2の薬液を用いた。噴射剤として窒素ガスを使用し、薬液:噴射剤=99.0:1.0の比率となるよう、薬液と窒素ガスをエアゾール容器に充填した。
【0036】
<平均粒子径>
平均粒子径(メディアン径)は、株式会社島津製作所製のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano)を用いて測定した。
【0037】
<粘度測定方法>
得られた水中油型乳化化粧料について、調製後24時間後の20℃における粘度を、B型粘度計により測定した。詳細な測定条件は以下に示す通りである。
100mPa・s未満:ローターNo.1・回転数60rpm・1分間
100mPa・s以上200mPa・s未満:ローターNo.1・回転数30rpm・1分間
200mPa・s以上500mPa・s未満:ローターNo.1・回転数12rpm・1分間
500mPa・s以上1000mPa・s未満:ローターNo.1・回転数6rpm・1分間
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
実施例1~18によると、本願構成の水中油型乳化化粧料ではパック後感、安定性、すべて良好な結果が得られた。
成分Aをカットした比較例1、および成分Aを類似の化合物に置き換えた比較例2~4では、いずれもパック後感が著しく悪化し、本願課題を達成することができなかった。成分Bをカットした比較例5、および成分Bを類似の化合物に置き換えた比較例6では、いずれも安定性が損なわれる結果であった。成分Cをカットした比較例7、および成分Cを類似の化合物に置き換えた比較例8、9においても、いずれも安定性が損なわれ、本願課題を達成することができなかった。成分Dをカットした比較例10、および成分Dを類似の化合物に置き換えた比較例11では、いずれもパック後感が著しく悪化し、本願課題を達成することができなかった。比較例12は成分Eをカットした例であるが、パック後感が著しく悪化する結果となり、かつ、均一な組成物が得られなかった。比較例13、14は乳化滴の平均粒子径が大きい例であるが、安定性が悪化する傾向であり、かつパック後感が著しく悪化し、本願課題を達成することができなかった。
実施例4の薬液をエアゾールに充填した実施例19では、薬液のみを使用した実施例4と比較して、より高いパック後感が得られる結果となったことから、エアゾールに充填することでより高いパック後感が得られることが分かる。一方、比較例2の薬液をエアゾールに充填した比較例15においては、薬液をエアゾールに充填することによってパック後感が高まることはなかった。
以上の結果からも、本願構成の水中油型乳化化粧料であれば、本願課題をすべて達成することができ、従来の技術では到底到達できない機能を付与した新たな水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【0042】
常法にて、以下に示す各処方の水中油型乳化化粧料を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0043】
高保湿ローション
(成分) (質量%)
1.スクワラン 15.0
2.ホホバ種子油 5.0
3.コレステロール 0.5
4.ベヘニルアルコール 0.2
5.トコフェロール 0.01
6.N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム 1.0
7.セチルリン酸カリウム 0.5
8.1,3-ブチレングリコール 8.0
9.グリセリン 4.0
10.ソルビトール 1.0
11.ベントナイト 0.3
12.ジェランガム 0.1
13.ニコチンサンアミド 2.0
14.タベブイアインペチギノサ樹皮エキス 0.1
15.フェノキシエタノール 0.2
16.メチルパラベン 0.2
17.エチルパラベン 0.2
18.精製水 残余
合計 100.0
<製法>
油相(1~5)および水相(6~18)をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行った。得られた高保湿ローションの乳化滴の平均粒子径をSALD-7500nano(株式会社島津製作所)を用いて測定した結果、126 nmであった。
【0044】
オールインワンスプレー用薬液
(成分) (質量%)
1.水添ポリイソブテン 18.0
2.エチルヘキサン酸セチル 4.0
3.コレステロール 0.5
4.セチルアルコール 0.1
5.ベヘニルアルコール 0.1
6.トコフェロール 0.01
7.N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム 1.5
8.1,3-ブチレングリコール 8.0
9.グリセリン 4.0
10.ベントナイト 0.3
11.キサンタンガム 0.1
12.コンフリー葉エキス 0.1
13.メチルパラベン 0.2
14.エチルパラベン 0.2
15.フェノキシエタノール 0.2
16.精製水 残余
合計 100.0
<製法>
油相(1~6)および水相(7~16)をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行った。得られたオールインワンスプレー用薬液の乳化滴の平均粒子径をSALD-7500nano(株式会社島津製作所)を用いて測定した結果、105 nmであった。
【0045】
高保湿ミルク
(成分) (質量%)
1.水添ポリイソブテン 3.0
2.ホホバ種子油 4.0
3.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2.5
4.コレステロール 0.1
5.フィトステロール 0.1
6.セチルアルコール 1.0
7.ステアリルアルコール 0.15
8.ミリスチン酸ポリグリセリル-5 1.2
9.ステアリン酸グリセリル 0.5
10.ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10 0.5
11.ミツロウ 1.0
12.トコフェロール 0.01
13.グリチルレチン酸ステアリル 0.05
14.N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム 0.6
15.1,3-ブチレングリコール 12.0
16.ジグリセリン 1.0
17.ヒドロキシエチルウレア 0.5
18.エチルヘキシルグリセリン 0.15
19.ベントナイト 1.0
20.スクレロチウムガム 0.05
21.カルボマー 0.8
22.アルギニン 0.05
23.メタリン酸ナトリウム 0.005
24.メチルパラベン 0.15
25.エチルパラベン 0.15
26.精製水 残余
合計 100.0
<製法>
油相(1~13)および水相(14~20、23~26)をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行ったのち、21と均一混合し、22で中和した。得られた高保湿ミルクの乳化滴の平均粒子径をSALD-7500nano(株式会社島津製作所)を用いて測定した結果、110 nmであった。
【0046】
オールインワンゲルクリーム
(成分) (質量%)
1.水添ポリイソブテン 5.0
2.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
3.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2.0
4.ジメチコン 1.0
5.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 1.0
6.フィトステロール 0.2
7.セチルアルコール 2.0
8.ベヘニルアルコール 1.0
9.ステアリン酸グリセリル 1.4
10.ステアリン酸PEG-10 0.1
11.ステアリン酸グリセリル(SE) 0.02
12.PEG-50水添ヒマシ油 1.0
13.シメチコン 0.05
14.トコフェロール 0.05
15.N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム 0.5
16.ステアリン酸スクロース 0.1
17.1,3-ブチレングリコール 10.0
18.グリセリン 5.0
19.エチルヘキシルグリセリン 0.2
20.アラントイン 0.1
21.ケイ酸(ナトリウム/マグネシウム) 0.5
22.カルボマー 0.1
23.アルギニン 0.05
24.メチルパラベン 0.15
25.エチルパラベン 0.15
26.精製水 残余
合計 100.0
<製法>
油相(1~14)および水相(15~21、24~26)をそれぞれ加熱混合した。次に、油相と水相を80℃で混合して得られた乳化物について、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社)を用いて100MPaの圧力で高圧処理を行ったのち、22と均一混合し、23で中和した。得られたオールインワンゲルクリームの乳化滴の平均粒子径をSALD-7500nano(株式会社島津製作所)を用いて測定した結果、176 nmであった。