(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141493
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20241003BHJP
B64U 70/93 20230101ALI20241003BHJP
B64U 20/83 20230101ALI20241003BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20241003BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20241003BHJP
B64U 50/30 20230101ALI20241003BHJP
B64U 70/83 20230101ALI20241003BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20241003BHJP
【FI】
G01M3/20 L
B64U70/93
B64U20/83
B64U20/87
B64U50/19
B64U50/30
B64U70/83
B64U101:31
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053183
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暢規
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA14
2G067BB17
2G067BB40
2G067CC04
2G067DD17
2G067EE12
(57)【要約】
【課題】高所に設置されている構造物の検査を、比較的単純な制御で実施する。
【解決手段】床面上を走行可能な地上機2と、検査装置31を有し、地上機2を発着可能な飛行体3と、を備え、床面に対して位置固定された所定の基準点に対する地上機2の相対位置である第一相対位置を特定する第一位置特定機能、および、地上機2に対する飛行体3の相対位置である第二相対位置を特定する第二位置特定機能、を実現可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を走行可能な地上機と、
検査装置を有し、前記地上機を発着可能な飛行体と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置が、
前記床面に対して位置固定された所定の基準点に対する前記地上機の相対位置である第一相対位置を特定する第一位置特定機能、および、
前記地上機に対する前記飛行体の相対位置である第二相対位置を特定する第二位置特定機能、を実現可能である検査システム。
【請求項2】
前記第一相対位置と前記第二相対位置とに基づいて、前記基準点に対する前記飛行体の相対位置である第三相対位置を特定する第三位置特定機能をさらに実現可能である請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
撮影装置をさらに備える請求項1に記載の検査システム。
【請求項4】
前記第一位置特定機能において、前記撮影装置が撮影した画像に基づいて前記第一相対位置を特定する請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記演算装置が、前記撮影装置が撮影した画像に基づいて前記地上機の通行可否を判定する通行判定機能をさらに実現可能である請求項3に記載の検査システム。
【請求項6】
前記撮影装置が前記飛行体に設けられている請求項3に記載の検査システム。
【請求項7】
前記撮影装置が前記検査装置を兼ねる請求項6に記載の検査システム。
【請求項8】
前記演算装置が、検査の対象物の位置を特定する対象物位置特定機能をさらに実現可能である請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項9】
前記演算装置が、前記飛行体の飛行可否を判定する飛行判定機能をさらに実現可能である請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項10】
前記地上機が前記飛行体に給電できる請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項11】
前記地上機が、複数の検査装置を保持可能であり、前記飛行体が、当該複数の検査装置から選択される少なくとも一つの検査装置を着脱自在である請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項12】
前記地上機と前記飛行体とを接続し、前記地上機から前記飛行体に給電する給電線をさらに備える請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項13】
前記地上機と前記飛行体とを接続する通信線をさらに備える請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項14】
前記飛行体を複数備え、
複数の前記飛行体が同一の前記地上機を発着する請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項15】
前記飛行体が、空気中において前記飛行体を飛行させうる浮力を生ずる浮力体を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項16】
前記飛行体が飛行しているときに警報を発する警報部を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項17】
前記演算装置が、前記地上機および前記飛行体の少なくとも一つに搭載されている請求項1~7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項18】
床面上を走行可能な地上機と、
検査装置を有し、前記地上機を発着可能な飛行体と、を備える検査システムを用いる検査方法であって、
前記飛行体を前記地上機に着機させた状態で、前記地上機を走行させて、検査の対象物の下方の検査地点に到達させる工程と、
前記検査地点において、前記床面に対して位置固定された所定の基準点に対する前記地上機の相対位置である第一相対位置を特定する工程と、
前記飛行体を飛行させて、前記対象物の検査を行う工程と、
前記検査を行ったときの、前記地上機に対する前記飛行体の相対位置である第二相対位置を特定する工程と、を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築等の現場において、施工途中および施工後に、機器設置状態や施工品質などの検査が必要になる場合がある。この類の検査を支援する装置が、種々提案されている。たとえば特開2022-128846号公報(特許文献1)には、周囲に存在する物体を検知するセンサを有し、検査対象の構造物を検知可能な位置まで自走する自走ロボットを用いる管理支援方法が開示されている。また、特開2019-78033号公報(特許文献2)には、撮影装置が搭載された飛行体を備えるオフセット図作成支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-128846号公報
【特許文献2】特開2019-78033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調機器等を対象とする検査を行う場合、建築物等の天井付近の構造物が検査対象となる。そのため、特許文献1に記載の技術では、検査対象物が地上を走行する自走ロボットから遠く、有効な検査を行えない場合があった。また、特許文献2に記載の技術では、配管等が複雑に設置されている天井付近において、飛行体の制御が難しく、かつ、飛行体が行方不明になった場合の捜索が困難である場合があった。さらに、特許文献2に記載の技術では、検査を継続できる時間が飛行体の航続時間に限られるため、こまめな充電が必要になって効率的な検査を行えない場合があった。
【0005】
そこで、高所に設置されている構造物の検査を比較的単純な制御で実施しうる検査システムおよび検査方法の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査システムは、床面上を走行可能な地上機と、検査装置を有し、前記地上機を発着可能な飛行体と、演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記床面に対して位置固定された所定の基準点に対する前記地上機の相対位置である第一相対位置を特定する第一位置特定機能、および、前記地上機に対する前記飛行体の相対位置である第二相対位置を特定する第二位置特定機能、を実現可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る検査方法は、床面上を走行可能な地上機と、検査装置を有し、前記地上機を発着可能な飛行体と、を備える検査システムを用いる検査方法であって、前記飛行体を前記地上機に着機させた状態で、前記地上機を走行させて、検査の対象物の下方の検査地点に到達させる工程と、前記検査地点において、前記床面に対して位置固定された所定の基準点に対する前記地上機の相対位置である第一相対位置を特定する工程と、前記飛行体を飛行させて、前記対象物の検査を行う工程と、前記検査を行ったときの、前記地上機に対する前記飛行体の相対位置である第二相対位置を特定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、検査の対象物の付近に移動させた地上機から飛行体を発着させるので、飛行体の飛行区域を地上機の直上の領域に限定しながら、高所に設置されている構造物の検査を行うことができる。また、飛行区域が限られることによって、飛行体の制御が比較的容易である。加えて、水平方向の移動を地上機が担うことによって、飛行体の飛行距離を抑制できるため、検査を継続できる時間を長くしやすい。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態に係る検査システムの概略を示す図である。
【
図2】第一の実施形態に係る検査システムの構成図である。
【
図3】第一の実施形態の変形例に係る検査システムの概略を示す図である。
【
図4】第二の実施形態に係る検査システムの概略を示す図である。
【
図5】第二の実施形態に係る検査システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る検査システムおよび検査方法の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る検査システムを、工事途中の施工現場の巡回監視に使用される検査システム1に適用した例について説明する。
【0013】
(検査システムの構成)
本実施形態に係る検査システム1は、地上機2、飛行体3、および外部演算装置4(演算装置の一例である。)を備える(
図1、
図2)。地上機2は、自律的に床面上を走行可能なロボットであり、本実施形態では四足歩行型ロボットである。飛行体3は、地上機2を発着可能なドローンであり、本実施形態では回転翼を有する回転翼型ドローンである。
【0014】
地上機2は、飛行体3が発着可能な発着ポート21と、地上を走行する走行具22と、警報を発することができる警報部23と、地上機2の各部に電力を供給する電源24と、地上機2の各部を制御する制御部25と、本体部26と、を有する。発着ポート21は本体部26の上面に設けられており、警報部23、電源24、および制御部25は本体部26に収容されている。走行具22は四本の脚部22aがモータ(不図示)によって駆動されるものであり、脚部22aは本体部26から下方(床面方向)に延びている。
【0015】
発着ポート21は、飛行体3が発着可能な部位である。すなわち、飛行体3が発着ポート21に着機でき、かつ、飛行体3が発着ポート21から離機できる。発着ポート21は、着機状態の飛行体3を固定する固定具(不図示)を有し、これによって、飛行体3を地上機2に着機させた状態で地上機2を走行させることができる。また、発着ポート21は給電コイル(不図示)を有し、飛行体3に対して非接触で給電できる。
【0016】
警報部23は、飛行体3が飛行しているときに警報を発する装置である。警報の態様は音、光、およびこれらの組合せ等の公知の態様から選択され、警報部23は選択された警報を発することができる装置として実装される。すなわち警報部23は、音による警報を発するアラームや、光による警報を発する警告灯、などでありうる。
【0017】
電源24は、公知のバッテリである。ただし、電源24は地上機2の各部に電力を供給する役割に加えて、飛行体3に電力を供給する役割も果たす。そのため電源24は、地上機2と同程度の寸法および機能を有する同種のロボットに搭載される電源に比べて容量が大きいものであることが好ましい。
【0018】
制御部25としては、この種のロボットを制御するために搭載される装置として通常使用されるものを使用できる。すなわち、地上機2の各部を制御するための演算処理を行う演算装置、制御に用いられるデータを記憶する記憶装置、および、外部機器と通信するための通信装置、などが制御部25に含まれうる。
【0019】
飛行体3は、カメラ31と、三次元カメラ32と、地上機2の発着ポート21に固定される被固定部33と、飛行体3を飛行させる回転翼34と、飛行体3の各部に電力を供給する電源35と、飛行体3の各部を制御する制御部36と、本体部37と、を有する。被固定部33は本体部37の下面に設けられており、電源35および制御部36は本体部37に収容されている。回転翼34は、本体部37の腕部に設けられている。
【0020】
カメラ31は、飛行体3の周囲の可視光画像を撮影可能なカメラであり、公知のデジタルカメラを使用できる。カメラ31は、二つの役割を果たす。カメラ31の第一の役割は、施工現場の巡回監視を実現する検査装置である。検査システム1が目的とする巡回監視は、概して、カメラ31によって定期的にまたは不定期に撮影された新旧の撮影画像を比較して、施工の進捗状況を把握するものである。また、カメラ31の第二の役割は、検査システム1の制御に使用される画像を撮影する撮影装置である。かかる制御については後述する。このように本実施形態では、飛行体3に設けられたカメラ31が、検査装置としての役割と撮影装置としての役割とを兼ねる。
【0021】
三次元カメラ32は、飛行体3の周囲の三次元画像を撮影可能なカメラであり、公知の三次元カメラを使用できる。三次元カメラ32によって撮影される三次元画像は、地上機2に対する飛行体3の相対位置の特定に利用される。
【0022】
被固定部33は、地上機2の発着ポート21に固定される部位である。着機状態の飛行体3の被固定部33が発着ポート21に固定されることで、地上機2が飛行体3を搭載して走行できるようになる。また、被固定部33は受電コイル(不図示)を有し、地上機2から非接触で受電できる。加えて、被固定部33が発着ポート21に固定されたときに、地上機2(制御部25)と飛行体3(制御部36)との間で、データの授受が可能な無線通信が確立される。
【0023】
電源35は、公知のバッテリであり、この種のドローンに通常使用されるものを使用できる。本実施形態では、飛行体3が地上機2に着機したときに給電を受けることができるので、電源35の容量を過度に大きくすることなく、航続時間を比較的長くできる。
【0024】
制御部36としては、この種のドローンを制御するために搭載される装置として通常使用されるものを使用できる。すなわち、飛行体3の各部を制御するための演算処理を行う演算装置、制御に用いられるデータを記憶する記憶装置、および、外部機器と通信するための通信装置、などが制御部36に含まれうる。
【0025】
外部演算装置4は、地上機2および飛行体3の制御、およびカメラ31が撮影した画像の処理を行う演算装置である。外部演算装置4として通常のコンピュータ等を使用することができる。すなわち外部演算装置4は、演算処理を行うCPUなどの演算装置、制御に用いられるデータを記憶するハードディスクドライブ等の記憶装置、ならびに、地上機2および飛行体3と通信する通信装置、などを含みうる。
【0026】
(検査システムの機能および検査方法)
次に、本実施形態に係る検査システム1の諸機能を、検査方法の例示とともに説明する。以下では便宜上、各機能に係る演算処理を行う主体を、地上機2の制御部25、飛行体3の制御部36、および外部演算装置4のいずれであるのかを特定して説明するが、本発明において各機能を実現する主体の所在を限定するものではない。また、以下では、施工現場の天井付近に設置されている配管の有無を確認する検査を例として説明することとする。ここで、検査の対象となる配管、またはその設置予定箇所を、まとめて「対象物」と称する。
【0027】
なお、以下の諸機能において、カメラ31によって撮影された画像が利用される。したがって諸機能における判断は、当該判断が行われた瞬間の状態に対する判断ではなく、カメラ31によって画像が撮影された瞬間の状態に対する判断である。この点について、以下では注記しない。
【0028】
(1)検査方法の概要
天井付近の配管の有無を確認する例について、検査方法の概要を説明する。まず、飛行体3を地上機2に着機させた状態で地上機2を走行させて、対象物の下方の検査地点に到達させる。次に、カメラ31による一回目の撮影を行う。この撮影は、飛行体3が地上機2に着機した状態で行われるものであり、撮影される画像(以下、第一画像と称する。)は地上機2の周囲を撮影した画像である。第一画像は、後述する第一位置特定機能において、地上機2の位置を表す第一相対位置を特定する際に使用される。
【0029】
続いて、飛行体3を飛行させて、対象物を撮影できる高さまで上昇させる。このとき、警報部23が警報を発する。これは、飛行中の飛行体3の下に人が立ち入ることを避けるためである。
【0030】
飛行体3が飛行している状態で、カメラ31による二回目の撮影を行う。このとき、撮影される画像(以下、第二画像と称する。)の範囲に、対象物が含まれるようにする。なお、一度の飛行で複数の画像を撮影してもよい。
【0031】
また、このとき同時に、三次元カメラ32による三次元画像の撮影が行われる。具体的には、地上機2および対象物を撮影範囲に含めるように、三次元画像の撮影が行われる。なお、地上機2と対象物とを同時に撮影範囲に含めることが難しい場合は、両者を別々の三次元画像として撮影してもよい。
【0032】
なお、飛行体3が水平方向に移動する場合は、当該移動に応じて地上機2を移動させてもよい。すなわち、地上機2と飛行体3との水平方向の位置が常に一致するように制御が行われてもよい。
【0033】
第二画像が撮影された後に、飛行体3を地上機2に着機させる。このとき、被固定部33が発着ポート21に固定されて、地上機2から飛行体3への給電が開始される。また、第二画像および三次元画像に係るデータが、飛行体3から地上機2に転送される。その後、地上機2は、飛行体3を地上機2に着機させた状態で、他の検査対象または初期位置に移動する。
【0034】
第一画像、第二画像、および三次元画像は、外部演算装置4に転送され、外部演算装置4に蓄積される。この転送が行われる時期は任意であり、たとえば、各画像が撮影される都度、第二画像に係るデータが飛行体3から地上機2に転送された後、地上機2が初期位置に戻った後、などでありうる。同一の検査対象について撮影された新旧の第二画像を比較することによって、検査対象の配管が設置されているか否か、および、設置されている場合にその設置状態が適切であるか、を判定できる。この判定は、人為的に行われてもよいし、外部演算装置4等による演算処理として行われてもよい。
【0035】
(2)第一位置特定機能
第一位置特定機能は、地上機2が走行する床面に対して位置固定された所定の基準点に対する地上機2の相対位置である第一相対位置を特定する機能である。第一位置特定機能は、外部演算装置4によって実現される。第一相対位置は、たとえば、施工現場における三次元座標として特定されうる。この場合は、当該三次元座標系の原点が基準点にあたる。基準点は、床面に対して位置固定されている限りにおいて限定されず、上記の三次元座標系の原点のように実体物を伴わない仮想的な点であってもよいし、床面上に位置固定される実体物が基準点として取り扱われてもよい。また、絶対座標系(経度、緯度、高度)によって第一相対位置が表されてもよい。この場合は赤道と子午線との交点が基準点にあたり、当該基準点が移動することはないから、床面に対して位置固定された基準点に該当する。
【0036】
飛行体3が地上機2に着機した状態でカメラ31によって撮影される画像は、地上機2の現在地の周囲を撮影した画像である。第一位置特定機能では、当該画像中に顕れる特徴点(たとえば、施工現場における構造物の角や配置などである。)と、あらかじめ外部演算装置4が記憶している施工現場のCADデータ上における当該特徴点と、を照合することによって、当該画像が撮影された時点における第一相対位置を特定する。
【0037】
(3)第二位置特定機能
第二位置特定機能は、地上機2に対する飛行体3の相対位置である第二相対位置を特定する機能である。第二位置特定機能は、外部演算装置4によって実現される。第二相対位置は、たとえば、地上機2の位置から飛行体3の位置へのベクトルとして特定される。
【0038】
飛行体3が飛行している状態で三次元カメラ32によって撮影される三次元画像は、飛行中の飛行体3から見た地上機2を含むものであるので、当該三次元画像が撮影した時点における地上機2と飛行体3との位置関係を、当該三次元画像に基づいて特定できる。第二位置特定機能では、三次元画像中に顕れる地上機2に基づいて、当該三次元画像が撮影された時点における第二相対位置を特定する。
【0039】
(4)第三位置特定機能
第三位置特定機能は、第一位置特定機能によって特定される第一相対位置と、第二位置特定機能によって特定される地上機2に対する第二相対位置と、に基づいて、上記の基準点に対する飛行体3の相対位置である第三相対位置を特定する機能である。第三位置特定機能は、外部演算装置4によって実現される。上記に例示したように、第一相対位置が施工現場における三次元座標として特定され、第二相対位置が地上機2の位置から飛行体3の位置へのベクトルとして特定されている場合は、第一相対位置を表す三次元座標に、第二相対位置を表すベクトルを加算すれば、第三相対位置が特定される。
【0040】
(5)対象物位置特定機能
対象物位置特定機能は、検査の対象物の位置を特定する機能であり、外部演算装置4によって実現される。本実施形態では、対象物を含む三次元画像に基づいて、地上機2に対する対象物の相対位置(対象物および地上機2が同一の三次元画像に写っている場合。)、または飛行体3に対する対象物の相対位置(対象物および地上機2が別々の三次元画像に写っている場合。)を特定できる。また、第一相対位置および第三相対位置(基準点に対する地上機2および飛行体3の相対位置)がすでに特定されている。したがって、第一相対位置または第三相対位置と、地上機2または飛行体3に対する対象物の相対位置と、に基づいて、基準点に対する対象物の相対位置を特定できる。
【0041】
上記の通り、第一位置特定機能、第二位置特定機能、第三位置特定機能、および対象物位置特定機能は、いずれも外部演算装置4によって実現される。ここで、第一画像、第二画像、および三次元画像の外部演算装置4への転送が撮影の都度行われる場合以外は、第二画像が撮影される時期と、外部演算装置4が各画像を取得する時期とが異なることになる。この場合、第一位置特定機能、第二位置特定機能、第三位置特定機能、および対象物位置特定機能は、第二画像が撮影された瞬間に行われるのではなく、各画像が外部演算装置4に転送された後に事後的に行われることになる。本実施形態において行われる巡回監視は、たとえば一日程度の期間に行われた施工の実績を把握する等の目的で行われるので、即時の検査を行う性質のものではなく、位置の特定が事後的に行われることに差し支えはない。なお、事後的に特定された各相対位置は、対象物を撮影した第二画像に関連付けられて、外部演算装置4に記憶される。
【0042】
(6)通行判定機能
続いて、地上機2または飛行体3の移動中に実現される機能について説明する。通行判定機能は、カメラ31が撮影した画像に基づいて地上機2の通行可否を判定する機能である。通行判定機能は、地上機2の走行中に、制御部25によって実現される。
【0043】
制御部25は、まず、地上機2の走行中にカメラ31によって撮影された画像に基づいて、地上機2の進路上の障害物や狭窄部等を認識する。なお、地上機2が走行する際は飛行体3が地上機2に着機しているため両者が近接しており、地上機2(制御部25)と飛行体3(制御部36)との間のデータの授受が妨げられにくい状態にあるので、カメラ31が撮影した画像が即時に地上機2に転送され、制御部25がこれを利用できる。
【0044】
制御部25は、次に、飛行体3が着機している地上機2の寸法や可動範囲等を考慮して、画像に基づいて認識された障害物等が地上機2の通行を妨げるか否かを判定する。地上機2の通行が妨げられないと判定した場合は地上機2の走行を継続し、地上機2の通行が妨げられると判定した場合は、可能であれば障害物等を回避する回避行動(進路の変更など)を取り、回避行動が不可能な場合は地上機2の走行を停止する。なお、このとき、警報部23から警報を発して、検査システム1の管理者等に地上機2が走行できない状態にあることを知らせてもよい。
【0045】
(7)飛行判定機能
飛行判定機能は、飛行体3の飛行可否を判定する機能である。飛行判定機能は、飛行体3の飛行中に、制御部36によって実現される。なお、この機能の実現の根拠として利用される情報は限定されず、たとえば、カメラ31によって撮影された画像、三次元カメラ32によって撮影された三次元画像、飛行体3の周囲の風速、などが例示される。
【0046】
(検査システムの作用効果)
以上の機能を実現することで、対象物について撮影した画像(第二画像)を得るとともに、当該画像が撮影された際の地上機2、飛行体3、および対象物の所定の基準点に対する相対位置を特定することができる。この撮影を定期的にまたは不定期に複数回行い、撮影された新旧の撮影画像を比較することで、施工の進捗状況を把握できる。また、対象物の相対位置が特定されることから、それぞれの画像について、施工現場のどの位置を撮影したものであるのかを特定でき、したがって把握される施工の進捗状況が施工現場のいずれの位置についてのものであるのかを特定できる。
【0047】
また、対象物の撮影を飛行体3が行うため、天井付近の対象物について、作業員が脚立等を用いて直接に撮影する必要がない。また、飛行体3の飛行区域が地上機2の直上の領域に限られるため、飛行体3の水平方向の移動は限定的である。そのため、配管等を回避するための飛行体3の制御が比較的容易になる。加えて、仮に飛行体3が制御不能に陥る等して天井付近において行方不明になった場合であっても、飛行区域が限られているため発見が容易である。さらに、通行判定機能および飛行判定機能を実現することで、地上機2および飛行体3の往来が妨げられる自体を未然に防ぎやすい。
【0048】
なお、検査システム1は、天井付近の対象物に限らず、床面付近の対象物も検査対象とすることができる。この場合は、飛行体3が地上機2に着機した状態のままでカメラ31による撮影を行うとともに、第一位置特定機能および対象物位置特定機能を実現して対象物の位置を特定すればよい。飛行体3が地上機2に着機しており、両者の位置を同一視できることから、第二位置特定機能および第三位置特定機能を実現する必要はない。
【0049】
(変形例)
変形例に係る検査システム1Aでは、一基の地上機2Aに二基の飛行体3が発着する構成としてある(
図3)。なお、二基の飛行体3が同時に着機した状態で地上機2Aが走行できるように、発着ポート21が二つ設けられている。この構成では、二基の飛行体3が交替で飛行することによって、飛行体3が一基の場合に比べて天井付近などの高所における稼働時間を長くすることができる。天井付近の構造物が複雑な場合や検査対象の構造物が多い場合などに比較的長い時間の飛行を要する場合があるが、このような場合には検査システム1Aのように複数の飛行体3を備える構成が有利である。
【0050】
また、変形例に係る検査システム1Aでは、二基の飛行体3が連携して行う検査を行いやすい。たとえば、二基の飛行体3に、センサを有する渡り線の両端を保持して飛行させ、当該センサを検査装置として利用する検査を行ってもよい。
【0051】
〔第二の実施形態〕
本発明に係る検査システムおよび検査方法の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る検査システムを、工事が完了した施工現場の品質検査に使用される検査システム5に適用した例について説明する。
【0052】
(検査システムの構成)
本実施形態に係る検査システム5は、地上機6、飛行体7、および外部演算装置8(演算装置の一例である。)を備える(
図4,
図5)。地上機6は、自律的に床面上を走行可能なロボットであり、本実施形態では車両型ロボットである。飛行体7は、地上機6を発着可能なドローンであり、本実施形態では浮力体を有する飛行船型ドローンである。
【0053】
地上機6は、飛行体7が発着可能な発着ポート61と、発着ポート61と飛行体7とを接続する係留線62と、地上を走行する走行具63と、地上機6の各部に電力を供給する電源64と、地上機2の各部を制御する制御部65と、複数の検査装置(後述する。)を保持するツールホルダ66と、本体部67と、を有する。発着ポート61およびツールホルダ66は本体部67の上面に設けられており、電源64および制御部65は本体部67に収容されている。走行具63は無限軌道63aがモータ(不図示)によって駆動されるものであり、無限軌道63aは本体部67の側面下部に装着されている。
【0054】
発着ポート61、電源64、および制御部65の構成は、第一の実施形態における発着ポート21、電源24、および制御部25と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0055】
係留線62は、発着ポート61と飛行体7(被固定部73)とを接続する線状の部材である。係留線62は、地上機6から飛行体7に給電する給電線62aと、地上機6と飛行体7とをデータ通信可能に接続する通信線62bと、を含む。なお、係留線62の巻取装置(不図示)が本体部67に内蔵されている。
【0056】
ツールホルダ66は、複数の検査装置を保持するものであり、たとえば産業用ロボット等に使用される類のツールホルダを使用できる。本実施形態では、飛行体7に装着される検査装置である気流検査装置71a、ガス検査装置71b、およびガス採取装置71cのうち使用されていないものが、ツールホルダ66に保持される。
【0057】
飛行体7は、ツールチェンジャ71と、レーザーセンサ72と、地上機6の発着ポート61に固定される被固定部73と、飛行体7を飛行させうる浮力を生ずる浮力体74と、飛行体7の各部を制御する制御部75と、本体部76と、を有する。被固定部73は本体部76の下面に設けられており、前述の通り係留線62を介して地上機6(発着ポート61)と接続されている。制御部75は、本体部76に収容されている。浮力体74は、本体部76の上面に接続されている。
【0058】
制御部75の構成は、第一の実施形態における制御部36と概ね同様である。ただし本実施形態では、制御部75が外部演算装置8と直接に通信することがない構成としてある。
【0059】
ツールチェンジャ71は、気流検査装置71a、ガス検査装置71b、およびガス採取装置71cから選択される一つの検査装置を着脱自在に把持できる装置であり、たとえば産業用ロボット等に使用される類のツールチェンジャを使用できる。ツールチェンジャ71は、飛行体7が地上機6に着機しているときに、ツールホルダ66に保持されている検査装置のうちの一つを把持する。すなわちツールチェンジャ71が把持する検査装置によって、飛行体7が実施できる検査が変わる。
【0060】
気流検査装置71aは、温度計、湿度計、および風速計を含み、飛行体7の周囲の温度、湿度、および風速を測定可能である。ガス検査装置71bは、飛行体7の周囲におけるガス漏れの有無を検査できる装置である。ガス検査装置71bの仕様は、検知対象とするガスの種類によって適宜選択されうる。ガス採取装置71cは、飛行体7の周囲に存在するガスをサンプルとして採取できる装置である。なお、ガス採取装置71cは自身が検査を行うものではないが、検査に供される試料を採取するという意味で、検査装置にあたる。これらの検査装置として、いずれも公知の仕様の装置を用いることができる。
【0061】
レーザーセンサ72は、レーザー光を用いて飛行体7の周囲の物体を検知できるセンサであり、公知のレーザーセンサを使用できる。レーザーセンサ72の検出結果は、地上機6に対する飛行体7の相対位置の特定に利用される。
【0062】
浮力体74は、飛行体7が飛行するための駆動力を浮力によって与えるものである。浮力体74は、具体的には、空気より密度が小さい気体(たとえばヘリウムガスである。)が封入された気球である。浮力体74が受ける浮力が、飛行体7が受ける重力を上回るため、飛行体7は、固定されていない場合は上昇する。
【0063】
なお、浮力体74は、検査システム5の起動当初から気体が封入されている態様であってもよいし、飛行体7が飛行する直前に気体が充填される態様であってもよい。前者の場合は地上機6に充填装置を設ける必要がないため地上機6の構成を単純化する点で有利であり、後者の場合は飛行体7が地上機6に着機した状態で地上を走行する際の検査システム5の体積を抑制できるため地上での移動を行いやすい点で有利である。本実施形態では前者の構成を前提として説明する。
【0064】
飛行体7は、係留線62に接続されている。これによって飛行体7は、給電線62aを介して地上機6から給電を受けることができる。より詳細には、給電線62aを通じて被固定部73に供給された電力が、飛行体7の各部に配電される。そのため飛行体7には電源が搭載されていない。また、飛行体7は、通信線62bを介して地上機6と通信可能である。
【0065】
外部演算装置8の構成は、第一の実施形態における外部演算装置4と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
(検査システムの機能および検査方法)
次に、本実施形態に係る検査システム5の諸機能を、検査方法の例示とともに説明する。なお、第一の実施形態に係る機能及び検査方法の説明と同様に、本発明において各機能を実現する主体の所在は限定されない。
【0067】
(1)検査方法の概要
本実施形態に係る検査システム5は、気流検査装置71a、ガス検査装置71b、およびガス採取装置71cにそれぞれ対応する三つの検査を行うことができる。
【0068】
第一の検査は天井付近の温度、湿度、および風速の測定であり、検査装置として気流検査装置71aが使用される。たとえば天井付近に空調機が設置された場合に、温度等の測定をもって、空調機が想定通りの性能を発揮しているか否かを確認できる。この検査は、工事が完了した施工現場の品質検査の一種である。
【0069】
ツールチェンジャ71が気流検査装置71aを把持した状態で、発着ポート61の固定具による飛行体7(被固定部73)の固定を解除すると、飛行体7が飛行可能な状態になる。この状態で、係留線62を徐々に送り出すと、飛行体7が浮力体74の浮力によって浮上する。
【0070】
飛行体7が検査対象の天井付近まで上昇したら、気流検査装置71aを運転して温度、湿度、および風速を測定する。測定された温度、湿度、および風速の値は、通信線62bを介して即時に地上機6へ転送される。
【0071】
天井付近の温度等の測定が完了したら、係留線62を引き込んで飛行体7を降下させ、地上機6に着機させる。飛行体7の着機後、地上機6および飛行体7を他の場所に移動させて他の場所の検査を行ってもよいし、同じ場所において検査装置を交換して他の検査を行ってもよい。
【0072】
第二の検査は、天井付近のガス漏れ検査であり、検査装置としてガス検査装置71bが使用される。この検査は、天井付近に敷設されている配管を流通するガス(たとえば都市ガスなど)の漏洩の有無を検査し、漏洩がない場合に当該配管の施工が適切であると判断するものである。この検査も、工事が完了した施工現場の品質検査の一種である。
【0073】
ツールチェンジャ71が把持する検査装置がガス検査装置71bであること、および、天井付近で測定される測定値がガス濃度であること、の他は、上記の気温等の測定と同様である。すなわち、飛行体7を天井付近へ浮上させて、ガス濃度の測定を行い、飛行体7を降下させる。
【0074】
第三の検査は、天井付近のガス採取検査であり、検査装置としてガス採取装置71cが使用される。この検査は、第二の検査においてガス漏れが検出された場合等に、天井付近のガスを採取して詳細な分析を行うためのものである。この検査も、工事が完了した施工現場の品質検査の一種である。
【0075】
ツールチェンジャ71が把持する検査装置がガス採取装置71cであること、および、天井付近で測定を行う替わりにガスの採取を行うこと、の他は、上記の気温等の測定と同様である。すなわち、飛行体7を天井付近へ浮上させて、ガスの採取を行い、飛行体7を降下させる。
【0076】
なお、いずれの検査においても、第一の実施形態における三次元画像の撮影と同様に、飛行体7の飛行前および飛行中に、レーザーセンサ72によるスキャンが行われる。飛行中のスキャンにおいては、スキャン範囲に地上機6が含まれるようにする。
【0077】
また、第一の検査および第二の検査において検査装置が取得した測定値、および、各検査におけるレーザーセンサ72のスキャンデータが、外部演算装置8に転送される。この転送が行われる時期は任意である。転送された測定値は、測定対象とした箇所における施工の品質の判定に使用される。この判定は、人為的に行われてもよいし、外部演算装置8等による演算処理として行われてもよい。
【0078】
(2)第一位置特定機能および第二位置特定機能
第一位置特定機能および第二位置特定機能について、カメラ31が撮影した画像を用いる替わりにレーザーセンサ72によるスキャンデータを用いるほかは、概ね第一の実施形態と同様である。すなわち、飛行体7の飛行前に取得したスキャンデータ(以下、第一スキャンデータと称する。)における特徴点と、あらかじめ外部演算装置8が記憶している施工現場のCADデータ上における当該特徴点と、を照合することによって、第一スキャンデータが取得された時点における第一相対位置(基準点に対する地上機6の相対位置)を特定する。また、飛行体7の飛行中に取得したスキャンデータ(以下、第二スキャンデータと称する。)に基づいて、第二スキャンデータが取得された時点における第二相対位置(地上機6に対する飛行体7の相対位置)を特定する。なお、第一の実施形態と同様に、第三位置特定機能および対象物位置特定機能を実現することも可能である。
【0079】
(検査システムの作用効果)
本実施形態に係る検査システム5の、第一の実施形態に係る検査システム1と異なる作用効果について説明する。まず、飛行体7の周囲の気流を乱しにくい点が挙げられる。飛行体7を浮上させる駆動力を浮力体74が担っていることによって、回転翼等の動的な装置を用いる場合に比べて、飛行体7の周囲の空気の流れが穏やかである。そのため、気流の影響を受けやすい測定値(たとえば温度、湿度、および風速など)を正確に測定しやすい。
【0080】
また、地上機6と飛行体7とが係留線62によって接続されているので、飛行体7に電源を搭載する必要がない。これによって飛行体7の重量を抑制できるので、飛行体7の航続時間を長くしやすい。すなわち、連続的な検査に有利である。また、地上機6に搭載した電源64から飛行体7に給電するから、電源64は飛行体7の飛行を前提とした制約を受けない。そのため、電源64の大型化が容易であり、このことも連続的な検査に有利に働く。
【0081】
さらに、ツールホルダ66とツールチェンジャ71とを有することによって、一組の地上機6および飛行体7が、複数の種類の検査を実施できる。そのため、複数の種類の検査を要する施工現場等の検査を効率よく実施できる。
【0082】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る検査システムおよび検査方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0083】
上記の実施形態では、地上機が四足歩行型ロボットである例(第一の実施形態)および
無限軌道を有する車両型ロボットである例(第二の実施形態)について説明した。しかしこれらは例示に過ぎず、本発明に係る地上機が地上を移動する態様は限定されない。ただし、本発明が工事途中の施工現場の検査に使用される場合、地上機が走行する範囲に窪み、突起、障害物などが存在する場合が少なくない。そのため地上機は、障害物等が存在しても走行しやすい類の走行具を有することが好ましく、四足歩行型ロボットおよび無限軌道を有する車両型ロボットは、その具体例だといえる。
【0084】
上記の実施形態では、飛行体が回転翼型ドローンである例(第一の実施形態)および飛行船型ドローンである例(第二の実施形態)について説明した。しかしこれらは例示に過ぎず、本発明に係る飛行体が飛行する態様は限定されない。なお、飛行体の飛行の態様は、飛行体に搭載される検査装置を用いて行われる検査の内容を考慮して決定されうる。
【0085】
上記の実施形態では、検査装置がカメラ31である例(第一の実施形態)、ならびに、気流検査装置71a、ガス検査装置71b、およびガス採取装置71cから選択される一つの検査装置である例(第二の実施形態)について説明した。しかし、本発明に係る検査装置は任意である。かかる検査装置として、上記に例示したものも含め、撮影装置、気流検査装置、ガス検査装置、ガス採取装置、液採取装置、酸素濃度計、液位計、水準器、照度計、粒子分布測定器、などが例示されるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明に係る検査システムによって実施されうる検査の例として、機器の型番の確認、機器の設置の有無、配置、および設置姿勢などの確認、配管および配線の接続の有無、経路、勾配などの確認、断熱施工の有無および状態の確認、振れ止め施工の有無および適否の確認、防火区画貫通処理の有無の確認、計器の指示値や機器の運転状態表示等の確認、機器や配管などの温度の確認、サイトグラス撮影による配管内の流通状態、燃焼室内の燃焼状態、液漏れの有無などの確認、ガス漏れの有無の確認、検査員立ち入り前の酸素濃度測定、タンク等の液位確認、液やガスなどのサンプル採取、環境温度測定、環境湿度測定、照度測定、風速測定、風速分布測定、施工写真撮影、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
上記の各実施形態における、地上機の態様、飛行体の態様、および検査装置の態様、の組合せは一例にすぎず、これらの三者の態様は任意に組み合わされうる。たとえば、第一の実施形態において例示した四足歩行型ドローンを地上機として、第二の実施形態において例示した飛行船型ドローンを飛行体としてもよく、さらにこのとき飛行体に搭載される検査装置が任意に選択されうる。
【0088】
上記の実施形態では、地上機および飛行体がそれぞれ演算装置を備え、かつ、これらと別体の外部演算装置を有する検査システムを例として説明した。しかし本発明において、演算装置が地上機または飛行体に搭載されているか、これらと別体で設けられているかは任意である。すなわち、第一位置特定機能および第二位置特定機能を実現できる限りにおいて、演算装置の構成および配置を任意に選択できる。
【0089】
上記の実施形態では、第一位置特定機能について、カメラ31を用いる例(第一の実施形態)およびレーザーセンサ72を用いる例(第二の実施形態)について説明した。しかし本発明において、第一位置特定機能を実現するための具体的な方式は限定されない。第一位置特定機能の態様として、たとえば、LiDARセンサの検出値に基づく自己位置推定および環境地図作成(SLAM)を用いる態様が例示される。
【0090】
上記の実施形態では、第二位置特定機能について、三次元カメラ32を用いる例(第一の実施形態)およびレーザーセンサ72を用いる例(第二の実施形態)について説明した。しかし本発明において、第二位置特定機能を実現するための具体的な方式は限定されない。第二位置特定機能の態様として、たとえば、飛行体の水平方向の位置を維持する公知の技術(原点マーカーとカメラとの組合せなど)と、飛行体の高度を特定する公知の技術(高度計など)とを組合せて、地上機に対する飛行体の相対位置を特定する態様が例示される。また、地上機の側から飛行体の相対位置を把握するための装置として、たとえばカメラや超音波センサなどが搭載されてもよい。
【0091】
上記の第一の実施形態では、検査システム1が、第三位置特定機能、対象物位置特定機能、通行判定機能、および飛行判定機能を実現可能である構成を例として説明した。しかし本発明において、これらの機能の一部または全部を実現できなくてもよい。
【0092】
上記の第一の実施形態では、飛行体3が地上機2に着機しているときに、地上機2から飛行体3に給電される構成を例として説明した。しかし本発明において、地上機から飛行体に対する給電の可否は任意である。
【0093】
上記の第一の実施形態では、地上機2が警報部23を有する構成を例として説明した。しかし本発明において、警報部の有無は任意である。また、飛行体が警報部を有する構成としてもよい。
【0094】
上記の第二の実施形態では、地上機6と飛行体7とが給電線62aおよび通信線62bを含む係留線62によって接続されている構成を例として説明した。しかし本発明において、給電線および通信線の有無は、それぞれ独立して任意である。また、これらの有無は、地上機および飛行体の態様と無関係に選択されうる。たとえば、第一の実施形態において例示した回転翼型ドローンを飛行体とする場合に、給電線および通信線の一方または双方を設けてもよい。
【0095】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
〔第一の実施形態〕
1 :検査システム
2 :地上機
3 :飛行体
31 :カメラ
1A :検査システム(変形例)
2A :地上機(変形例)
〔第二の実施形態〕
5 :検査システム
6 :地上機
7 :飛行体
71 :ツールチェンジャ
71a :気流検査装置
71b :ガス検査装置
71c :ガス採取装置