(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141503
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建具及び建具の施工方法
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E05D15/06 125C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053196
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 小春
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034DA18
(57)【要約】
【課題】上レールを含む建具を施工するにあたり、施工性が向上するとともに資材の削減を図ることができる建具及び建具の施工方法を提供する。
【解決手段】建具1の施工方法は、開口部2Aの両側の側縁に一対の縦枠20を固定する工程と、一対の縦枠20のうちの一方の縦枠20の上端部に保持部材50を上下動可能に装着する工程と、この保持部材50に上レール30の一端部を仮保持する工程と、他方の縦枠20の上端部に他の保持部材50を上下動可能に装着する工程と、この他の保持部材50に上レール30の他端部を仮保持する工程と、各保持部材50の上下方向位置を調整して上レール30の上下方向位置に定めた状態で、各保持部材50を縦枠20に固定する工程と、上レール30を開口部2Aの上縁に固定する工程と、上レール30に吊車15を介して障子10を開閉可能に設置する工程と、を備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に形成される開口部の両側の側縁に固定される一対の縦枠と、
一対の前記縦枠のそれぞれの上端部に装着されるとともに、前記開口部の前記側縁に固定可能な保持部材と、
前記保持部材で保持されることにより一対の前記縦枠のそれぞれの上端部の間に架け渡されるとともに、前記開口部の上縁に固定される上レールと、
前記開口部の内側に開閉可能に配置される障子と、
前記障子に設けられ前記上レールに配置される吊車と、を備え、
前記保持部材は、一対の前記縦枠の少なくとも一方の上端部において、所定方向に可動に装着される、建具。
【請求項2】
前記保持部材は、一対の前記縦枠のそれぞれの上端部において、所定方向に可動に装着される、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
可動する前記保持部材は、上下方向に可動する、請求項1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記保持部材は、上下方向に延びる長孔を有し、当該長孔により上下方向の任意の位置で前記縦枠に固定可能である、請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記保持部材は、前記上レールの下面を受けて当該上レールを保持する受け部を有する、請求項1または2に記載の建具。
【請求項6】
前記受け部は、前記上レールの下面が係合して当該上レールの見込み方向を位置決めする係合部を有する、請求項5に記載の建具。
【請求項7】
前記上レールの一端及び他端には、前記受け部に載置されるキャップ部材が装着される、請求項5に記載の建具。
【請求項8】
前記縦枠は、前記保持部材の少なくとも一部が嵌合する凹部を備える、請求項1または2に記載の建具。
【請求項9】
躯体に形成される開口部に建具を施工する方法であって、
前記開口部の両側の側縁に一対の縦枠を固定する工程と、
一対の前記縦枠のうちの一方の縦枠の上端部に、第1保持部材を上下動可能に装着する工程と、
前記第1保持部材に、上レールの一端部を仮保持する工程と、
一対の前記縦枠のうちの他方の縦枠の上端部に、前記上レールの他端部を保持した第2保持部材を、所定の上下方向位置に定めた状態で固定する工程と、
前記第1保持部材の上下方向位置を調整して前記上レールの前記一端部を所定の上下方向位置に定めた状態で、前記第1保持部材を前記一方の縦枠に固定する工程と、
前記一端部及び前記他端部の上下方向位置が定まった前記上レールを前記開口部の上縁に固定する工程と、
前記上レールに、吊車を介して障子を開閉可能に設置する工程と、を備える、建具の施工方法。
【請求項10】
一対の前記縦枠のうちの他方の縦枠の上端部に、前記上レールの他端部を保持した第2保持部材を、所定の上下方向位置に定めた状態で固定する工程を行う前に、
前記第2保持部材に、前記上レールの他端部を仮保持する工程と、
前記第2保持部材の上下方向位置を調整して前記上レールの前記他端部を所定の上下方向位置に定める工程と、を行う、請求項9に記載の建具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具及び建具の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居等の建物内の建具として、躯体に設けた開口部の三方の縁である左右の側縁及び上縁に枠体をそれぞれ取り付け、上側の枠体の下面に固定した上レールに、吊車を介して障子をスライド可能に設置する構造が知られている。例えば特許文献1には、天井側の躯体の下面に固定される上枠の溝に上レールを嵌合して固定し、その上レールに、障子を吊り下げる吊車をスライド可能に配置した吊戸が開示されている。躯体の開口部に三方枠を組み込んで固定する方法としては、左右の縦枠と上枠とをそれぞれ個別に設置していく個別工法と、左右の縦枠と上枠とを予め三方枠組みし、一括して設置する枠組み工法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個別工法の場合、高さや幅寸法を正確に設置することに手間がかかる。また、開口寸法が大きいと、長い上枠を支えながら上方の躯体に固定する作業が困難となり、施工性が悪い。一方、枠組み工法は、高さや幅寸法を正確に出しやすい反面、開口寸法が大きいと一人では三方枠体を持てなくなる事態になり、複数の作業員が必要となる。また、狭い作業スペースでは取り回しが困難になる。さらに、上レールを固定する上枠は天井に隠れる構造の場合もあるため、上枠が無駄な不要資材になる場合があった。そこで本開示は、上レールを含む建具を施工するにあたり、施工性が向上するとともに資材の削減を図ることができる建具及び建具の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、躯体に形成される開口部の両側の側縁に固定される一対の縦枠と、一対の前記縦枠のそれぞれの上端部に装着されるとともに、前記開口部の前記側縁に固定可能な保持部材と、前記保持部材で保持されることにより一対の前記縦枠のそれぞれの上端部の間に架け渡されるとともに、前記開口部の上縁に固定される上レールと、前記開口部の内側に開閉可能に配置される障子と、前記障子に設けられ前記上レールに配置される吊車と、を備え、前記保持部材は、一対の前記縦枠の少なくとも一方の上端部において、所定方向に可動に装着される、建具に関する。
【0006】
本開示は、躯体に形成される開口部に建具を施工する方法であって、前記開口部の両側の側縁に一対の縦枠を固定する工程と、一対の前記縦枠のうちの一方の縦枠の上端部に、第1保持部材を上下動可能に装着する工程と、前記第1保持部材に、上レールの一端部を仮保持する工程と、一対の前記縦枠のうちの他方の縦枠の上端部に、前記上レールの他端部を保持した第2保持部材を、所定の上下方向位置に定めた状態で固定する工程と、前記第1保持部材の上下方向位置を調整して前記上レールの前記一端部を所定の上下方向位置に定めた状態で、前記第1保持部材を前記一方の縦枠に固定する工程と、前記一端部及び前記他端部の上下方向位置が定まった前記上レールを前記開口部の上縁に固定する工程と、前記上レールに、吊車を介して障子を開閉可能に設置する工程と、を備える、建具の施工方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】実施形態に係る建具の縦枠及び上レールが躯体に固定された状態を抜粋して示す正面図である。
【
図4】上レールに組み込まれる吊車の取付け構造を示す側断面図である。
【
図5】実施形態の縦枠の上端部を示す斜視図である。
【
図6】実施形態の上レールの端部及びキャップ部材を示す斜視図である。
【
図7】上記キャップ部材が上レールに装着される状態を示す斜視図である。
【
図8】上記キャップ部材の内面側を示す斜視図である。
【
図9】上記上レールのキャップ部材を縦枠に嵌合した状態を示す平面図である。
【
図10】実施形態に係る建具の施工方法を示す図であって、左右の縦枠間の床に上レールを配置した正面図である。
【
図11】実施形態に係る建具の施工方法を示す図であって、一方の縦枠の上端部に保持部材を仮固定した状態を示す斜視図である。
【
図13】
図11に示す保持部材の上に上レールの一端部を載せて仮保持した状態を示す斜視図である。
【
図14】実施形態に係る建具の施工方法を示す図であって、他方の縦枠の上端部に上レールの他端部を下方から差し入れて配置する工程を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示した工程により、他方の縦枠の上端部に上レールの他端部が配置された状態を示す斜視図である。
【
図16】実施形態に係る建具の施工方法を示す図であって、上レールの他端部を載せた保持部材を他方の縦枠の上端部に仮保持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る建具1の正面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
【0009】
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る建具1は、吊戸式の片引き戸を構成する障子10を含む。障子10は、躯体2に形成される開口部2Aの内側にスライド可能に配置される。開口部2Aは、床3、左右の壁4、天井5により正面視矩形状に形成される。実施形態の躯体2は、左右の壁4及びまぐさ6を含む。なお、以下でいう左右、上下、前後、といった方向に関する表現は、注釈しない限り、開口部2Aに建具1が設置された状態での方向をいう。
【0010】
図2に示すように、壁4は、壁柱7及び壁パネル8を含む。天井5は、まぐさ6及び天井ボード5aを含む。開口部2Aの左右の側縁は、上下方向に延在する左右の壁柱7により形成される。開口部2Aの上縁は、左右方向に延在するまぐさ6により形成される。
図1及び
図2の右側の壁4からは小壁9が平行に延びている。小壁9と左側の壁柱7との間に形成される間口9Aが障子10により開閉される。障子10は小壁9と見込み方向にオフセットされ、開いた際には小壁9に重なって間口9Aが開く。
【0011】
実施形態に係る建具1は、
図3に示すように、左右の壁柱7の見込み面にそれぞれ固定される一対の縦枠20と、まぐさ6の見込み面に固定される上レール30と、上記障子10と、を備える。
図3は、左右の壁柱7に縦枠20がそれぞれ固定され、まぐさ6に沿って上レール30が固定された状態を抜粋して示しており、障子10の図示を省略している。上レール30には、障子10を上レール30に吊るした状態で、上レール30に沿ってスライド可能とする複数の吊車15が装着される。縦枠20及び上レール30は、例えばアルミニウム等の金属の押出材が用いられる。
【0012】
図4は、障子10の上端部に装着される吊車15の上レール30に対する取付け構造を示している。
図4に示すように、吊車15は、ローラ支持部16の両側に回転可能に配置されたローラ17と、障子10の上端部に固定される固定部18と、固定部18とローラ支持部16とを連結する連結軸19と、を有する。吊車15は、上レール30内にローラ17が回転可能に挿入され、上レール30に沿って滑走する。実施形態の吊車15、障子10の幅方向両端に一対の状態で配置される。なお、障子10の下端部には、床3に設けられる図示しない下レールに装着されて障子10を下側から支持するローラが設けられるが、ここではそれらの図示を省略する。
【0013】
以下に、
図3に示すように縦枠20及び上レール30を躯体2に取り付ける施工方法を説明する。
【0014】
実施形態の施工方法の概要としては、はじめに、開口部2Aの側縁である左右の壁柱7に、縦枠20をそれぞれ固定し、次いで、上レール30を左右の縦枠20の上に架け渡し、この後、まぐさ6に上レール30を固定する。
【0015】
図5は、実施形態の縦枠20の上端部を拡大して示す斜視図である。
図6は、実施形態の上レール30の一端部を拡大して示す斜視図であり、上レール30の端部に装着されるキャップ部材40も示している。
【0016】
図5に示すように、縦枠20は長尺な型材である。縦枠20は、壁柱7に沿ってその見込み面に固定される。縦枠20は、壁柱7に固定された状態での内面に、長手方向(上下方向)に延びる溝部21を有する。溝部21は2段状であって、幅の広い外溝22と、外溝の底部中央の幅の狭い中溝23と、を含む。中溝23には図示せぬ戸当たりがはめ込まれる。中溝23の幅方向両側のそれぞれから、さらに一対の幅の狭い小溝24が形成されている。中溝23の底部の、上端部からやや下側の箇所には、縦枠20の延在方向に長い楕円状の凹部25が形成されている。この凹部25の中央に、ねじ挿通孔26が形成されている。なお、凹部25は必要に応じて形成されるものであり、形成されていなくてもよい。縦枠20の中溝23には、ここ以外の箇所に、長手方向に間隔をおいて同様のねじ挿通孔26が複数形成されている。縦枠20は、内面側からそれらねじ挿通孔26に通したねじを壁柱7にねじ込んで締結することにより、壁柱7に固定される。
【0017】
図6に示すように、上レール30は長尺な筒状の型材である。上レール30は、まぐさ6に沿ってその見込み面に固定される。上レール30は、まぐさ6に固定される上板部31と、幅方向(前後方向、奥行方向)に離間する一対の側板部32と、各側板部32の下端に設けられる一対の底板部33と、を有する。まぐさ6に固定された状態での上レール30の下面であって一対の底板部33の間には、長手方向に延びるスリット34が形成される。このスリット34に、吊車15が端から挿入される。
【0018】
一対の底板部33のそれぞれは、各側板部32の下端から前後方向に突出している。これら底板部33は、上レール30の幅方向中央側から外側に向かうにつれてしだいに上方に斜めに延びるように傾斜している。これにより上レール30の断面形状における下面は、下側に凸の略凸形状を有する。上板部31の幅方向両側には、長手方向の延びる溝部35がそれぞれ形成され、これら溝部35の間に、長手方向に延びる凸条部36が形成されている。凸条部36には、長手方向に間隔をおいて複数のねじ挿通孔37が形成されている。上レール30は、内面側からそれらねじ挿通孔37に通したねじをまぐさ6にねじ込んで締結することにより、まぐさ6に固定される。
【0019】
上レール30の長手方向両端に、
図6~
図8に示すキャップ部材40が装着される。キャップ部材40が装着された状態で、上レール30はまぐさ6に固定される。キャップ部材40は、上レール30の端面を塞ぐ矩形板状のカバー部41と、カバー部41の上部内面から内側(上レール30側)に突出する一対の外側突出片42と、これら外側突出片42の間の中央に配置されてカバー部41の上部内面から内側に延びる中央突出片43と、を有する。外側突出片42は、上レール30における幅方向に間隔をおいて配置されている。中央突出片43は、外側突出片42の間の中央であってやや下側寄りに配置されている。外側突出片42は、中央突出片43よりも長い。
【0020】
図8に示すように、カバー部41の内面には、上レール30の横断面における内壁面の輪郭に沿った外形形状を有する輪郭凸部44が形成されている。キャップ部材40は、上レール30の端面に対し、外側突出片42が各溝部35にそれぞれ嵌め込まれ、中央突出片43が凸条部36の内側に嵌め込まれ、輪郭凸部44が上レール30の端面の内壁面に嵌め込まれる状態で、着脱可能に装着される。
図9に示すように、キャップ部材40は、カバー部41が縦枠20の外溝22に嵌合し、その状態で縦枠20に沿って摺動可能な形状及び寸法を有する。
【0021】
一対の縦枠20を壁柱7に固定するには、上記のように両端にキャップ部材40が装着された上レール30を利用する。
図10に示すように、開口部2Aの両側の壁柱7の見込み面に縦枠20をそれぞれ立てる。次いで、縦枠20の間の床3に上レール30を置き、両端のキャップ部材40のカバー部41に、左右の縦枠20の外溝22の下端部を嵌め込む。これにより、床3における左右の縦枠20間が定まるとともに、各縦枠20を立てる位置が定まる。次いで、上レール30を左右の縦枠20から一旦取り外す。次いで、各縦枠20を直立させた状態で、壁柱7との間に隙間が生じる場合には、その隙間をかい木等のスペーサ部材で埋めながら、縦枠20を壁柱7に固定する。この固定は、縦枠20の奥行方向を位置決めしつつ、下側から上側に向かって行う。
【0022】
次に、
図11に示すように、壁柱7に固定した一方の縦枠20(ここでは、
図10で左側の縦枠20とする)の上端部に、保持部材50を装着する。保持部材50は、略T字状の形状を有する部材であって、縦枠20に固定される上下方向に延びる固定板部51と、固定板部51の上端から前後方向に延びる受け部53と、を含む。固定板部51は、縦枠20の上端部の楕円状の凹部25に、ある程度の範囲を上下動可能に嵌合する形状及び寸法を有する。固定板部51は、その中央に、上下方向に延びる長孔52を有する。なお、一方の縦枠20の上端部に装着する保持部材50は1つ目の保持部材50であって、本開示の第1保持部材である。
【0023】
図12に示すように、受け部53は、上記キャップ部材40のカバー部41を受ける外側受け部54と、キャップ部材40が装着された上レール30の端部を受ける内側受け部55と、を有する。外側受け部54は平坦な上面54aを含み、この上面54aでキャップ部材40のカバー部41の下面を受ける。外側受け部54の内側に、内側受け部55が一体に形成されている。内側受け部55は、中央の前後方向に延びる平坦面55aと、この平坦面55aの両端から、端に向かうにつれて上り斜面となる前後一対の傾斜面55bと、を含む。これにより内側受け部55は、下側にへこむ凹形状を有する。その凹形状は、上レール30の下面の凸形状が嵌合する形状となっている。保持部材50は、
図11に示すように、固定板部51を縦枠20の上端部の凹部25に嵌合し、長孔52に通したねじ59を壁柱7にねじ込んで締結することにより、縦枠20とともに壁柱7に固定される。一対の傾斜面55bは、上レール30の見込み方向を位置決めする本開示の係合部を構成する。
【0024】
保持部材50は、上下方向の位置調整が可能なように、縦枠20に仮固定の状態とされる。次いで、
図13に示すように、保持部材50上に上レール30の一端部(左端部)を載せて上レール30を仮保持する。上レール30の一端部を保持部材50上に載せるには、保持部材50を下げた位置で仮固定し、まぐさ6と保持部材50との間に上レール30の一端部を差し入れる。ここで、上レール30の仮保持の前に、上レール30に装着されていた一方のキャップ部材40を一旦取り外し、吊車15をスリット34に通して上レール30内に滑走可能に予め配置し、取り外したキャップ部材40を再び上レール30の端部に装着する。
【0025】
上レール30は、キャップ部材40のカバー部41が外側受け部54で受けられ、上レール30の端部が内側受け部55で受けられる。内側受け部55の傾斜面55bに上レール30の底板部33が載ることにより、上レール30の見込み方向の移動が規制され、見込み方向が位置決めされる。この時点で、上レール30の端部は保持部材50を上下動させることにより、上下方向位置が調整可能となる。
【0026】
次いで、
図14に示すように、まぐさ6の下方において、一方の保持部材50に載せた一端部を支点として、上レール30を下方から上方に旋回させるようにして動かし、
図15に示すように上レール30の他端部(右端部)を他方の縦枠20(
図14で右側の縦枠20)の上端部の内側に配置する。次いで、もう1つの保持部材50を他方の縦枠20の上端部に装着する態勢をとるとともに、その保持部材50の上に上レール30の他端部を載せる。この状態から、保持部材50を他方の縦枠20に仮固定する。これにより、
図16に示すように上レール30の他端部を載せた保持部材50が縦枠20に仮固定される。これで、上レール30は、左右の縦枠20の上端部に仮固定された保持部材50上に載り、それら保持部材50により上下方向の位置が調整可能となる。なお、他方の縦枠20の上端部に装着する保持部材50は2つ目の保持部材50であって、本開示の第2保持部材である。
【0027】
次いで、左側の保持部材50の上下方向位置を調整して上レール30の一端部を所定の上下方向位置に定め、その状態で、長孔52に通していたねじ59を壁柱7にさらにねじ込んで固定板部51を縦枠20とともに壁柱7に締結し、保持部材50を不動状態とする本固定を行う。例えば、長孔52の上端または下端でねじ59を固定すると上レール30が正しい高さ位置(縦枠20の上端に揃う位置)に配置されるように長孔52の長さ及び位置等が設計されていると、縦枠20を正しい高さ位置に容易に配置でき施工性が向上するので好ましい。
【0028】
続いて、右側の保持部材50の上下方向位置を調整して、上レール30の他端部を一端部と同じ位置に定め、その状態で保持部材50を縦枠20とともに壁柱7に本固定する。これにより、左右の保持部材50に載っている上レール30の一端部及び他端部の上下方向位置が同じ位置に定まり、上レール30が水平に設置される。次いで、
図3に示したようにまぐさ6の下面に上レール30を固定する。
【0029】
この後、上レール30に配置した吊車15に障子10の上端部を装着し、吊車15を介して障子10を上レール30に開閉可能に設置して、
図1に示す建具1を得る。
【0030】
以上の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0031】
実施形態に係る建具1は、躯体2に形成される開口部2Aの両側の側縁を構成する各壁柱7に固定される一対の縦枠20と、一対の縦枠20のそれぞれの上端部に上下動可能に装着されるとともに、開口部2Aの側縁に固定可能な保持部材50と、保持部材50で保持されることにより一対の縦枠20のそれぞれの上端部の間に架け渡されるとともに、開口部2Aの上縁であるまぐさ6に固定される上レール30と、開口部2Aの内側に開閉可能に配置される障子10と、障子10に設けられ上レール30に配置される吊車15と、を備える。
【0032】
実施形態に係る建具1の施工方法は、躯体2に形成された開口部2Aの両側の側縁を構成する各壁柱7に一対の縦枠20を固定する工程と、一対の縦枠20のうちの一方の縦枠20の上端部に、1つ目の保持部材50(第1保持部材)を上下動可能に装着する工程と、この1つ目の保持部材50に、上レール30の一端部を仮保持する工程と、一対の縦枠20のうちの他方の縦枠20の上端部に、2つ目の保持部材50(第2保持部材)を上下動可能に装着する工程と、この2つ目の保持部材50に、上レール30の他端部を仮保持する工程と、1つ目の保持部材50の上下方向位置を調整して上レール30の一端部を所定の上下方向位置に定めた状態で当該保持部材50を一方の縦枠20に固定する工程と、2つ目の保持部材50の上下方向位置を調整して上レール30の他端部を所定の上下方向位置に定めた状態で当該保持部材50を他方の縦枠20に固定する工程と、一端部及び他端部の上下方向位置が定まった上レール30を開口部2Aの上縁に固定する工程と、上レール30に、吊車15を介して障子10を開閉可能に設置する工程と、を備える。
【0033】
この実施形態によれば、まぐさ6に上枠を固定し、その上枠に上レール30を固定するといった従来構造に替えて、上レール30を直接まぐさ6に固定し、上枠を使用していない。このため、施工するにあたり、上枠を使用する場合と比べて工程が減るので施工性が向上するとともに、資材の削減を図ることができる。また、2つの縦枠20及び1つの上レール30を三方枠組みせずにそれぞれ個別に設置しながら、高さや幅寸法を正確に設置しやすい。保持部材50の上に上レール30を載せて仮保持するため、三方枠組みした場合と同様に高精度に施工できる。また、一方の縦枠20の保持部材50上に上レール30の一端部を載せて上レール30を仮保持した状態で、上レール30の他端部を持ちながら他方の縦枠20の上端部に保持部材50を仮固定の状態に装着し、上レール30の他端部をその保持部材50上に載せることで、一人で施工できる。このため、施工性の向上とともに作業員の削減を図ることができる。
【0034】
実施形態に係る建具1においては、保持部材50は上下方向に延びる長孔52を有し、この長孔52により上下方向の任意の位置で縦枠20に固定可能であることを含む。これにより、保持部材50の上下方向位置の調整を簡素な構成で容易に行うことができる。
【0035】
実施形態の建具1においては、保持部材50は、上レール30の下面を受けて上レール30を保持する受け部53を有することが好ましい。これにより、保持部材50で上レール30を安定して保持することができ、安全、かつ高精度に施工できる。
【0036】
実施形態の建具1においては、保持部材50の受け部53は、上レール30の下面が係合して上レール30の見込み方向を位置決めする係合部としての傾斜面55bを有することが好ましい。これにより、保持部材50の見込み方向の位置決めを高精度、かつ容易に行うことができる。
【0037】
実施形態の建具1においては、上レール30の一端及び他端には、保持部材50の受け部53に載置されるキャップ部材40が装着されることが好ましい。これにより、上レール30の端面が露出せず、端面が露出することによって作業員が傷を負うなどの危険性を排除することができる。また、キャップ部材40が緩衝材となって上レール30により縦枠20を傷つけるおそれが解消される。
【0038】
実施形態の建具1においては、縦枠20は、保持部材50の少なくとも一部が嵌合する凹部25を備えることが好ましい。これにより、縦枠20の所定箇所に保持部材50を容易に位置決めした状態で固定することができる。
【0039】
本開示のパネルの固定構造及び施工方法は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、本開示の障子としては、上記実施形態の引き戸に限定されず、例えば吊戸式の折れ戸等、吊車で上レールに吊り下げて支持される形式の障子であってよい。
【0040】
保持部材50は、キャップ部材40及び上レール30の少なくとも一方を保持可能であれば、形状等は特に限定されない。キャップ部材40は、上レール30の端部に装着可能、かつ保持部材50に係合可能であれば、形状等は特に限定されない。そのキャップ部材40は、必要に応じて設けてよく、特に備えていなくてもよい。
【0041】
右側の保持部材50(第2保持部材)は、仮保持せずに縦枠20に固定する段階で上下方向位置を定めて直接本固定してもよい。また、上記実施形態では、左側の縦枠20に装着した保持部材50に上レール30の一端部を仮保持してから、右側の縦枠20に上レール30の他端部を、保持部材50を介して仮保持しているが、左右の順番は任意であり、実施形態の逆の手順で施工してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…建具、2…躯体、2A…開口部、6…まぐさ(開口部の上縁)、7…壁柱(開口部の側縁)、10…障子、15…吊車、20…縦枠、25…凹部、30…上レール、40…キャップ部材、50…保持部材(第1保持部材、第2保持部材)、52…長孔、53…受け部、55b…傾斜面(係合部)。